(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161721
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ホストからストレージ装置への削除されたデータの示唆
(51)【国際特許分類】
G06F 12/00 20060101AFI20170703BHJP
G06F 3/06 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
G06F12/00 501B
G06F3/06 301Z
G06F3/06 304N
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-545058(P2015-545058)
(86)(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-537312(P2015-537312A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013068753
(87)【国際公開番号】WO2014088749
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年6月8日
【審判番号】不服2016-17762(P2016-17762/J1)
【審判請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】13/693,196
(32)【優先日】2012年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503260918
【氏名又は名称】アップル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100134474
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】メイア, エイブラハム ポザ
【合議体】
【審判長】
高瀬 勤
【審判官】
土谷 慎吾
【審判官】
山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−186556(JP,A)
【文献】
特開平10−222989(JP,A)
【文献】
特開2006−072441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/06-3/08
G06F12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレージ装置であって、
メモリと、
プロセッサであって、ホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶し、前記論理アドレスのアクセス頻度を評価することにより、前記論理アドレスの第1のサブセットをアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ前記論理アドレスの第2のサブセットをアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別し、前記アクセス頻度が高い論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理し、ユーザによって削除されたものとして前記ホストによって識別されたデータの記憶に用いられる1つ以上の論理アドレスの通知を前記ホストから受信し、前記通知を受信したことに応じて、前記通知内で示された前記論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスに追加するように構成された、プロセッサと、
を備える、ストレージ装置。
【請求項2】
前記識別されたデータが、前記1つ以上の論理アドレスに記憶され、かつ前記ユーザによって削除されたファイルを含む、請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記通知が、前記データが削除されたことを前記プロセッサに指定する、請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項4】
前記通知が、前記データがアクセス頻度が低いものとして処理されるべきであることを前記プロセッサに指定する、請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項5】
前記プロセッサが、削除されたものとして前記ホストによって識別された前記データを記憶するための区画を前記メモリ内で画定するように構成された、請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記メモリ内の前記区画の位置を前記ホストから受信するように構成された、請求項5に記載のストレージ装置。
【請求項7】
コンピュータであって、
ホストであって、ユーザによって削除されたデータを識別し、かつ前記識別されたデータが前記ホストによって記憶されたストレージ装置上の1つ以上の論理アドレスを報告する通知を送信するように構成された、ホストと、
前記ストレージ装置であって、前記ホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶し、前記論理アドレスのアクセス頻度を評価することにより、前記論理アドレスの第1のサブセットをアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ前記論理アドレスの第2のサブセットをアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別し、前記アクセス頻度が高い論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理し、前記ホストから前記通知を受信し、前記通知を受信したことに応じて、前記通知内で示された前記1つ以上の論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスに追加するように構成された、ストレージ装置と、
を備える、コンピュータ。
【請求項8】
方法であって、
ストレージ装置において、ホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶することと、
前記ストレージ装置において、前記論理アドレスのアクセス頻度を評価することにより、前記論理アドレスの第1のサブセットをアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ前記論理アドレスの第2のサブセットをアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別し、前記アクセス頻度が高い論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理することと、
前記ストレージ装置において、ユーザによって削除されたものとして前記ホストによって識別されたデータの記憶に用いられる1つ以上の論理アドレスの通知を前記ホストから受信することと、
前記通知を受信したことに応じて、前記通知内で示された前記論理アドレスを前記アクセス頻度が低い論理アドレスに追加することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記識別されたデータが、前記1つ以上の論理アドレスに記憶され、かつ前記ユーザによって削除されたファイルを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記通知が、前記データが削除されたことを前記ストレージ装置に指定する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記通知が、前記データがアクセス頻度が低いものとして処理されるべきであることを前記ストレージ装置に指定する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記データ項目を記憶することが、削除されたものとして前記ホストによって識別された前記データを記憶するための区画を前記ストレージ装置内で画定することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記ストレージ装置内の前記区画の位置を前記ホストから受信することを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してシステムに関し、特にストレージ装置内のデータを管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野では、データの使用パターンに従ってデータをメモリに記憶するための様々な技術が知られている。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2009/0049234号は、第1及び第2のメモリ層を含むソリッドステートメモリにデータを記憶するストレージの仕組みについて説明している。受信したデータがホットデータであるかコールドデータであるかを判定するために、第1の評価が実施される。ホットデータと評価された受信済みデータは第1のメモリ層に記憶され、コールドデータと評価された受信済みデータは第2のメモリ層に記憶される。更に、第1のメモリ層に記憶されたデータがホットデータであるかコールドデータであるかを判定するために、第2の評価が実施される。その後、第2の評価中にコールドデータと評価されたデータが、第1のメモリ層から第2のメモリ層に移行される。
【0003】
別の実施例として、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2011/0010489号は、フラッシュメモリ装置の複数の論理ブロックを管理するための論理ブロック管理方法について説明している。この方法は、フラッシュメモリコントローラを提供することと、論理ブロックを複数の論理ゾーンにグループ化することと、を含み、各論理ブロックが論理ゾーンのうちの1つにマッピングされる。また、この方法は、各論理ブロックの使用カウント値をカウントすることと、使用カウント値に従って論理ブロックと論理ゾーンとの間のマッピング関係を動的に調整することと、を含む。したがって、この論理ブロック管理方法は、論理ブロックの使用パターンを判定するために論理ゾーンを効果的に利用し、かつデータを書き込むために異なる機構を用いることができるため、フラッシュメモリストレージ装置の性能が向上する。
【0004】
ホット及びコールドデータを管理する更に別の実施例が、参照により本明細書に組み込まれている、Hong及びShinによる「NAND Flash−based Disk Cache Using SLC/MLC Combined Flash Memory」(2010 International Workshop on Storage Network Architecture and Parallel I/Os,May,2010)で説明されている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されている本発明の一実施形態は、メモリ及びプロセッサを含むストレージ装置を提供する。プロセッサは、ホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶し、論理アドレスの第1のサブセットをアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ論理アドレスの第2のサブセットをアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別し、アクセス頻度が高い論理アドレスをアクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理し、ユーザによって削除されたものとしてホストによって識別されたデータの記憶に用いられる1つ以上の論理アドレスの指示をホストから受信し、ホストによって示された論理アドレスをアクセス頻度が低い論理アドレスに追加するように構成される。
【0006】
一部の実施形態では、識別されたデータが、1つ以上の論理アドレスに記憶されており、かつユーザによって削除されたファイルを含む。他の実施形態では、通知が、データが削除されたことをプロセッサに指定する。更に他の実施形態では、通知が、データがアクセス頻度が低いものとして処理されるべきであることをプロセッサに指定する。
【0007】
一部の実施形態では、プロセッサが、ユーザによって削除されたものとしてホストによって識別されたデータを記憶するための区画をメモリ内で画定するように構成される。他の実施形態では、プロセッサが、メモリ内の区画の位置をホストから受信するように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、ストレージインタフェース及びプロセッサを含むホストが更に提供される。ストレージインタフェースはストレージ装置と通信する。プロセッサは、ストレージ装置に記憶されており、かつホストのユーザによって削除されたデータを識別し、識別されたデータがホストによって記憶されたストレージ装置上の1つ以上の論理アドレスをストレージ装置に報告するように構成される。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ホスト及びストレージ装置を含むコンピュータが更に提供される。ホストは、ユーザによって削除されたデータを識別し、識別されたデータがホストによって記憶されたストレージ装置上の1つ以上の論理アドレスを報告する通知を送信するように構成される。ストレージ装置は、ホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶し、論理アドレスの第1のサブセットをアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ論理アドレスの第2のサブセットをアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別し、アクセス頻度が高い論理アドレスをアクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理し、通知をホストから受信し、通知内で示された1つ以上の論理アドレスをアクセス頻度が低い論理アドレスに追加するように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、ストレージ装置においてホスト用のデータ項目をそれぞれの論理アドレスに記憶することを含む方法が更に提供される。ストレージ装置において、論理アドレスの第1のサブセットはアクセス頻度が高い論理アドレスとして、かつ論理アドレスの第2のサブセットはアクセス頻度が低い論理アドレスとして識別され、アクセス頻度が高い論理アドレスはアクセス頻度が低い論理アドレスとは別個に管理される。ストレージ装置では、ユーザによって削除されたものとしてホストによって識別されたデータの記憶に用いられる1つ以上の論理アドレスの指示がホストから受信される。ホストによって示された論理アドレスは、アクセス頻度が低い論理アドレスに追加される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ホストによってデータ項目がストレージ装置に記憶されることを含む方法が更に提供される。ホストでは、ストレージ装置に記憶されており、かつホストのユーザによって削除されたデータが識別される。ストレージ装置には、識別されたデータがホストによって記憶された、ストレージ装置上の1つ以上の論理アドレスの通知が報告される。
【0012】
本発明は、下記の図面と併せて以下の本発明の実施形態の詳細な説明からより完全に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、データをストレージ装置に記憶するホスト装置の概要を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、ストレージ装置内のデータをホスト装置による削除後に管理する方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概要
一部のストレージ装置は、アクセス頻度が高い(「ホット」)データ及びアクセス頻度が低い(「コールド」)データに別個の処理を適用する。このような管理により、ストレージ装置の効率及び性能が改善される。ただし、別個の処理を正常に適用するには、ストレージ装置がホットデータ及びコールドデータを確実に区別することができるべきである。本明細書に記載されている本発明の実施形態は、ストレージ装置がより適切にアクセス頻度が高いデータ及びアクセス頻度が低いデータを区別することを可能にする方法及びシステムを提供する。
【0015】
一部のホストでは、ユーザによって削除されたデータが、例えばユーザにそれを復旧する機会を与えるために、ストレージ装置内で保持される。削除されたデータは、長期間にわたってストレージ内で保持されてもよい。この期間中、削除されたデータがアクセスされる可能性は非常に低いため、このデータはコールドとして扱うことができる。ただし従来は、ストレージ装置はデータが削除されたという事実を認識できないため、この情報を利用することができない。
【0016】
開示される実施形態では、ユーザがホスト内の特定のデータを削除すると、ホストがストレージ装置に、このデータを識別する通知を送信する。ストレージ装置は、通知内で示されたデータをコールドとして分類し、しかるべく処理する。通知は通常、ホスト内で削除されたデータの論理アドレスを示す。一部の実施形態では、通知が、論理アドレスが削除されたデータに属することを明示的に示す。他の実施形態では、通知が、論理アドレスがコールドとして処理されるべきであることを示し、その理由は提示しない。
【0017】
開示される技術を用いると、ストレージ装置はより適切に、アクセス頻度が高いデータ及びアクセス頻度が低いデータを区別することができる。その結果、スループット、待ち時間及び信頼性などの性能指標を改善し、ストレージ装置の稼働寿命を延長することができる。
【0018】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態に係る、ストレージ装置20にデータを記憶するホスト装置10の概要を示すブロック図である。不揮発性ストレージ装置を用いてストレージ装置にデータを記憶するホストは、例えば、パーソナルコンピュータ、エンタープライズストレージコントローラ、モバイル電話機、デジタルカメラ、メディアプレーヤ、取り外し可能メモリカード又は装置及びその他の多くを含んでもよい。
【0019】
ホスト装置10は、中央演算処理装置(CPU)25を含む。CPU25は、通常はソフトウェア内にプログラム化されたオペレーティングシステム(OS)30を実行し、かつホストの機能を実施する。オペレーティングシステム30は、データがストレージ装置20に記憶されるファイルに関する情報を記憶する、ファイルシステム33を含む。具体的には、ファイルシステム33は、各ファイルが記憶されるストレージ装置20上の論理アドレス(例えば、論理ブロックアドレス、LBA)を記録する。ファイルシステムは、ストレージインタフェース35を介してストレージ装置20と通信する。
【0020】
本明細書に記載されている実施例では、ストレージ装置20はソリッドステートドライブ(SSD)を含む。SSD20は、ホストと1つ以上のフラッシュメモリ装置45との間でデータを中継し、かつSSDの様々なストレージ管理機能を実施する、SSDコントローラ(SSD CNTRL)40を含む。コントローラ40は、ホスト10と通信するためのホストインタフェース50、開示される管理技術を実施するプロセッサ55及びフラッシュ装置45と通信するためのメモリインタフェース60を含む。
【0021】
SSD20は、LBAをそれぞれの物理アドレス、すなわちフラッシュ装置45のメモリセルブロック内にある、データが記憶される物理的な記憶位置にマッピングする、論理物理(L2P)アドレスマッピング70を管理する。
【0022】
SSD20は、ホスト10用のデータを、不揮発性メモリ、本実施例では1つ以上のNANDフラッシュメモリ装置45に記憶する。代替実施形態では、SSD20内の不揮発性メモリが、任意の他の好適な種類の不揮発性メモリ、例えば、NORフラッシュ、電荷トラップフラッシュ(CTF)、相転移RAM(PRAM)、磁気抵抗RAM(MRAM)又は強誘電体RAM(FeRAM)などであってよい。
【0023】
図1の構成は、純粋に概念を理解しやすくするために示された例示的な構成であり、本発明の実施形態を限定するものではない。任意の他の好適なホスト及び/又はストレージ装置の構成を用いることもできる。
図1に示された例示的なシステム構成では、メモリ装置45及びSSDコントローラ40が別個の集積回路(IC)として実装される。ただし、代替実施形態では、メモリ装置及びSSDコントローラが、単一のマルチチップパッケージ(MCP)又はシステムオンチップ(SoC)内の別個の半導体ダイに組み込まれるか、内部バスによって相互接続されてもよい。更に代替として、SSDコントローラ回路の一部又は全体が、1つ以上のメモリ装置45が配置された同じダイ上に設けられてもよい。更に代替として、SSDコントローラ40の機能の一部又は全体が、ソフトウェア内に実装され、かつホスト内のCPU25又は他のプロセッサによって実施されてもよい。一部の実施形態では、CPU25及びSSDコントローラ40が、同じダイ上又は同じ装置パッケージ内の別個のダイ上に製造されてもよい。
【0024】
SSDコントローラ40のプロセッサ55及び/又はCPU25は、ハードウェア内に実装されてもよい。代替として、SSDコントローラ及び/又はCPUは、好適なソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ又はハードウェア及びソフトウェア要素の組み合わせを含んでもよい。一部の実施形態では、プロセッサ55及び/又はCPU25は、本明細書に記載されている機能を実施するためにソフトウェア内にプログラム化される、汎用プロセッサを備える。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク経由で電子的形態によりプロセッサにダウンロードされるか、代替として又は追加で、磁気、光、又は電子メモリなどの永続的な有形メディア上で提供及び/又は記憶されてもよい。
【0025】
ホット及びコールドデータの分離によるSSDの性能の向上
通常、ホスト10は、SSD20に記憶する各データアイテム(例えば、ファイル)を、そのデータが記憶されるべき1つ以上のLBAと共に送信する。実際には、一部のLBAは評価頻度が高いデータに対応し、他のLBAは評価頻度が低いデータに対応する。評価頻度が高いデータは一般にホット又は動的データと呼ばれ、評価頻度が低いデータは一般にコールド又は静的データと呼ばれる。それゆえ、評価頻度が高いデータに対応するLBAは、本明細書においてホット又は動的LBAと呼ばれ、アクセス頻度が低いデータに対応するLBAは、本明細書においてコールド又は静的LBAと呼ばれる。
【0026】
一部の実施形態では、SSDコントローラ40内のプロセッサ55が、ホット及びコールドLBAを別個に処理するように構成されてもよい。このような処理により、SSDの性能が大幅に改善される。例えば、フラッシュメモリ内のデータは、その場所で上書きすることができない。更に通常、データはページ単位で書き込まれるが、ブロック単位でのみ消去される。このような理由から、フラッシュ装置45内のメモリブロックには、新しい物理的な記憶位置に最新バージョンが書き込まれた、無効なデータの領域が徐々に蓄積される。プロセッサ55は通常、断片化したブロックから有効なデータを新しいブロックにコピーし、かつ断片化したブロックを消去及び新しいプログラミングのために解放する、ブロック圧縮(「ガベージコレクション」)プロセスを実施する。
【0027】
ホット及びコールドデータが、混在する形式で同じメモリブロックに記憶されている場合、ガベージコレクションプロセスは、ホットデータと混在していることのみを理由に、アクセス頻度が低いデータを頻繁にコピーする必要がある。その結果、大量の不要なコピー動作が発生するため、性能が低下する。一方、SSDがホット及びコールドデータを分離した場合、ガベージコレクションの実行効率を向上させることができる。それゆえ、一部の実施形態では、プロセッサ55が、ホットLBAをメモリブロックの第1のサブセットに、かつコールドLBAをメモリブロックの第2のサブセットに記憶し、ブロックの圧縮をブロックの各サブセット内で別個に実施する。
【0028】
別の実施例として、一部の実施形態では、SSDが、メモリセルごとに複数のビットを記憶するマルチレベルセル(MLC)フラッシュ装置を用いて動作するように構成される。1セルあたり2ビットの装置では、例えば、最下位ビット(LSB)及び最上位ビット(MSB)ページが、メモリセルのグループのそれぞれのビットに記憶される。通常、LSBの記憶及び取得は、MSBの記憶及び取得よりも大幅に速い。それゆえ、一部の実施形態では、プロセッサ55がホットデータをLSBページに記憶し、かつコールドデータをMSBページに記憶する。その結果、プログラミング及び読み出しの平均待ち時間が短縮される。
【0029】
上記のシナリオは、ホットデータ及びコールドデータを互いとは別個に処理することの利点を示すために、純粋に例として提示されたものである。代替実施形態では、プロセッサ55が任意の他の好適な方法で、ホットLBA及びコールドLBAを別個に処理してもよい。ただし、ホット及びコールドデータを分離するには、プロセッサ55が、アクセス頻度が高いLBA及びアクセス頻度が低いLBAを区別することができるべきである。プロセッサ55は、様々なLBAのアクセス頻度を評価するなど、様々な技術を用いて、ホット及びコールドデータのLBAを識別してもよい。
【0030】
ホストからストレージ装置への削除されたファイルの指示
通常のホストでは、ユーザが、ファイルシステム33によって管理されるファイルを削除してもよい。削除されたファイルのデータは、例えば、ユーザにそのファイルを復旧する機会を与えるために、引き続きSSD内で保持されるべきである。それにもかかわらず、削除されたファイルのデータが再度アクセスされる可能性は非常に低く、したがってこのデータはコールド又は静的として扱うことができる。ただしSSDは通常、ファイル構造、例えばどのLBAがどのファイルに対応するかを認識しないため、どのファイルが削除されたかに関する情報を有さない。
【0031】
一部の実施形態では、ファイルシステム33内の特定のファイルがユーザによって削除されると、CPU25が、そのファイルのLBAをコールドとみなして処理すべきであることを示す通知を、SSDコントローラ40に送信する。この通知を受信すると、プロセッサ55は、報告されたLBAをコールドとして分類し、それらをしかるべく処理する。さもなければ、多くの場合、これらのLBAはSSDによってコールドとして識別されないか、かなり後になってコールドとして識別される可能性がある。何れの場合も、ホストの通知(「示唆」とも呼ばれる)により、SSDの性能の大幅な改善が可能になる。
【0032】
削除されたファイルのLBAがSSD内でコールドとして分類された後、プロセッサ55はそれらを、上述の技術を用いるなど、任意の好適な方法でホットLBAと別個に処理してもよい。
【0033】
ホストは任意の好適な方法で、かつ任意の好適なインタフェースを用いて、削除されたファイルのLBAをSSDに示してもよい。一部の実施形態では、通知が、LBAが削除されたファイルに属することを示す。他の実施形態では、通知が、LBAがコールドとして処理されるべきであることを示し、その理由は指定しない。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係る、ストレージ装置内のデータファイルをホスト装置による削除後に管理する方法の概要を示すフローチャートである。識別ステップ100では、ホスト装置10が、特定のファイルがユーザによって削除されたことを識別する。報告ステップ110では、ホストが、削除されたファイルの論理ブロックアドレス(LBA)を、ストレージインタフェース35を介してストレージ装置に報告する。受信ステップ120では、ストレージ装置が、削除されたファイルのLBAの指示をホストから受信する。処理ステップ130では、ストレージ装置が、削除されたファイルのLBAを静的として処理する。
【0035】
代替実施形態では、SSD20が、ホスト内で削除されたデータのアーカイブに用いられる、メモリ内の区画を含む。この実施形態では、SSD20が、LBAの範囲又はメモリ内の区画の位置を識別する区画の専用名前空間を含む指示を、ホスト10から受信する。この区画は動的又は静的であってよい。
【0036】
本明細書に記載されている実施形態は、主に削除されたファイルに対応しているが、本明細書に記載されている方法及びシステムは、ファイル又はファイルシステムを必ずしも伴わない他の適用例で用いることもできる。すなわちホストが、削除された任意の種類のデータのLBAをストレージ装置に報告してもよい。例えば、ホストは、データベースから削除されたファイルのLBAを報告してもよく、これにより、ファイルの古いコピーをストレージ装置に記憶する必要がなくなる。
【0037】
したがって、上述の実施形態が例として引用されていること、及び本発明が先に具体的に示され説明された内容に限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに上述の説明を参照したときに当業者に想起される可能性があり、かつ先行技術で開示されていない変形形態及び修正形態を含む。この参照により本特許出願に組み込まれる文献は、何らかの用語が、これらの組み込まれた文献の中で本明細書内で明示的又は暗示的になされた定義と対立する方法で定義されている範囲において、本明細書内の定義のみが考慮されるべきである点を除き、本願と一体化した部分であるとみなされるべきである。