(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御部は、前記目標積載位置、現在の前記ブームの長さ、及び前記単位ウエイトの重量による前記ブームの撓みに基づいて前記目標起伏角を算出することを特徴とする請求項3に記載のクレーン作業補助装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。本実施の形態では、本発明に係るクレーン作業補助装置を適用したカウンタウエイト組立補助装置Aについて説明する。
本発明の一実施形態に係るカウンタウエイト組立補助装置Aは、例えば
図6に示す移動式クレーンCに設けられる。なお、本実施形態のカウンタウエイト組立補助装置Aは、
図6に示す移動式クレーンCに限定されず、種々のクレーンに設けることができる。
【0012】
(移動式クレーンC)
まず、移動式クレーンCの基本的構造を説明する。
移動式クレーンCは、走行車体11を有する。走行車体11には、走行のための車輪や、クレーン作業中の安定を確保するためのアウトリガが設けられている。走行車体11を構成する車体フレーム11fの上面には、前方にエンジンルーム12が設けられている。
【0013】
車体フレーム11fの上面には、後方に旋回台13が搭載されている。旋回台13は油圧モータなどにより車体フレーム11fに対して水平面内で360°旋回できるようになっている。旋回台13には、運転室14やウインチ(図示略)その他の設備が設けられている。
【0014】
旋回台13には、ブーム15が起伏自在に取付けられている。ブーム15の基端部は、ピンで旋回台13に枢支されている。ブーム15と旋回台13との間には、起伏シリンダが取付けられている。起伏シリンダを伸長させるとブーム15が起立し、起伏シリンダを収縮させるとブーム15が倒伏する。ブーム15は、テレスコピック状に構成されており、伸縮シリンダにより伸縮動作する。
【0015】
ブーム15の先端からはフック16を備えたワイヤロープが吊り下げられている。ワイヤロープは、ブーム15に沿って旋回台13に導かれてウインチで巻き取られている。ウインチによるフック16の上げ下げと、ブーム15の伸縮、起伏、旋回を組み合わせることにより、立体空間内での荷揚げと荷降ろしが可能となっている。
【0016】
本明細書において、「クレーン装置」とは、ブーム15、フック16、旋回台13、ワイヤロープ、ウインチなどで構成され、荷揚げと荷降ろしを行うための装置をいう。クレーン装置は、運転室14内の作業員により操作される。また、「クレーン作業」とは、クレーン装置を動作させることにより、対象物を目標位置まで移動させる作業であり、カウンタウエイトWの組立作業を含む。
【0017】
移動式クレーンCは、旋回台13の後部にカウンタウエイトWを装着できるように構成されている。カウンタウエイトWは複数の単位ウエイトを組み合わせて構成される。
【0018】
車体フレーム11fの上面には、エンジンルーム12と旋回台13との間に積載領域が確保されている。この積載領域は、カウンタウエイトWを組み立てる際にカウンタウエイトWを一時的に積載するために用いられる。
【0019】
移動式クレーンCにカウンタウエイトWを装着する場合、以下の作業が行われる。
図6に示すように、作業員は、単位ウエイトを自己のクレーン装置で吊り下げて車体フレーム11f上の積載領域に降ろす。作業員は、これを繰り返して複数の単位ウエイトを積み重ねてカウンタウエイトWを組み立てる。そうすると、
図7に示すように、完成したカウンタウエイトWが積載領域に載せられた状態となる。
【0020】
つぎに、
図8に示すように、作業員は、旋回台13を旋回させて、旋回台13の後部を車体フレーム11f上のカウンタウエイトWに対応する位置に配置する。つづいて、作業員は、旋回台13の後部に設けられた着脱装置を動作させて、カウンタウエイトWを旋回台13の後部に装着する。
【0021】
(カウンタウエイトW)
つぎに、カウンタウエイトWを説明する。
図9は、カウンタウエイトWの組合せを示す説明図である。
図10は、カウンタウエイトWの斜視図である。
図11は、単位ウエイト21〜27の平面図(水平投影図形)である。
【0022】
図9〜
図11に示すように、カウンタウエイトWは、第1〜第7単位ウエイト21〜27の一部または全部を組み合わせて構成されている。第1〜第7単位ウエイト21〜27はそれぞれ形状や重量が異なる。例えば、第1〜第7単位ウエイト21〜27の重量は、それぞれ2.7t、3.4t、8.9t、10.0t、3.1t、6.1t、6.1tである。以下、第1〜第7単位ウエイト21〜27の種類を区別しない場合、これらを「単位ウエイト20」と称する。
【0023】
単位ウエイト20の組合せとして第1〜第5組合せがある。第1〜第5組合せのカウンタウエイトWはそれぞれ重量が異なる。例えば、第1、第2単位ウエイト21、22を組み合わせた第1組合せのカウンタウエイトWの重量は6.1tである。第1〜第3単位ウエイト21〜23を組み合わせた第2組合せのカウンタウエイトWの重量は15.0tである。第1〜第4単位ウエイト21〜24を組み合わせた第3組合せのカウンタウエイトWの重量は25.0tである。第1〜第5単位ウエイト21〜25を組み合わせた第4組合せのカウンタウエイトWの重量は28.1tである。第1〜第7単位ウエイト21〜27を組み合わせた第5組合せのカウンタウエイトWの重量は40.3tである。
【0024】
単位ウエイト20の組合せは、クレーン作業に必要とされるカウンタウエイトWの重量により選択され、必要に応じて変更される。例えば、カウンタウエイトWを装着していない状態から特定の組合せのカウンタウエイトWを装着する場合がある。逆に、装着されている特定の組合せのカウンタウエイトWを取り外す場合がある。また、特定の組合せのカウンタウエイトWから重量の重い組合せのカウンタウエイトWに変更する場合がある。さらに、特定の組合せのカウンタウエイトWから重量の軽い組合せのカウンタウエイトWに変更する場合がある。
【0025】
作業員は、上記のいずれの場合においても、車体フレーム11f上で単位ウエイト20の取り付けまたは取り外しを行い、目的の組合せのカウンタウエイトWを組み立てた後に、カウンタウエイトWを旋回台13の後部に装着する。
【0026】
(カウンタウエイト組立補助装置A)
つぎに、カウンタウエイト組立補助装置Aの構成を説明する。
図1に示すように、カウンタウエイト組立補助装置Aは、起伏角検出器31と、旋回角検出器32と、長さ検出器33と、カウンタウエイト検出器34と、制御装置35と、表示装置36と、入力装置37と、記憶部381とを備えている。
【0027】
起伏角検出器31は、ブーム15の起伏角を検出する検出器である。起伏角検出器31の構成は特に限定されないが、ポテンショメータに振り子を取り付けた振子式の角度測定器が挙げられる。
【0028】
旋回角検出器32は、ブーム15の旋回角を検出する検出器である。旋回角検出器32の構成は特に限定されないが、例えば旋回台13を旋回させる油圧モータの回転角度をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。
【0029】
長さ検出器33は、ブーム15の長さを検出する検出器である。長さ検出器33の構成は特に限定されないが、例えばブーム15の先端部にコードの端部が固定されたコードリールの回転角度をポテンショメータで読み取る構成が挙げられる。
【0030】
カウンタウエイト検出器34は、旋回台13に装着されているカウンタウエイトWの重量又は単位ウエイト20の組合せを検出する検出器である。カウンタウエイト検出器34の構成は特に限定されないが、例えばカウンタウエイトWの重量をロードセルなどで検出する構成や、各単位ウエイト20の着脱状態を検出し、単位ウエイト20の組合せを判別する構成が挙げられる。
【0031】
以上の各種検出器31〜34の検出値は、制御装置35に入力されている。制御装置35は、CPUやメモリなどで構成された車載コンピュータであり、後述の処理を行う機能を有する。
【0032】
制御装置35は、現在位置特定部35A及び表示制御部35Bとして機能する。現在位置特定部35Aは、起伏角検出器31、旋回角検出器32及び長さ検出器33からの検出信号に基づいて、フック16に吊り下げられた対象物(例えば、単位ウエイト20)の現在位置を特定する。表示制御部35Bは、対象物の移動作業時に、目標位置と現在位置とに基づいて、対象物を目標位置に誘導するための操作支援情報を表示装置36に表示させる。この操作支援情報とは、後述するように、対象物の目標位置、現在位置を特定するための、ブーム15の長さ、起伏角、旋回角、対象物の目標位置と現在位置それぞれにおけるクレーンの起伏角、旋回角の差分、これらに基づく対象物のイメージ画像、又は数値情報とイメージ情報との組合せなど、対象物の目標位置と現在位置とを特定するための情報を用いる様々な態様が考えられる。
【0033】
表示装置36は、液晶ディプレイなどであり、運転室14内に設けられている。後述のごとく制御装置35の処理により表示装置36に画面表示が行われる。作業員は、表示装置36の表示内容を確認しながらクレーン操作を行う。
【0034】
入力装置37は、制御装置35に対して入力操作を行うためのスイッチやレバーなどであり、運転室14内に設けられている。作業員が入力装置37を用いて入力操作を行うことで、制御装置35に指示を与えることができる。表示装置36と入力装置37とを一体化したタッチパネルを採用してもよい。
【0035】
記憶部381には、カウンタウエイトデータ38が記憶されている。
図2に示すように、カウンタウエイトデータ38はテーブル形式のデータであり、単位ウエイト、重量、組立順、積載位置(半径)、積載位置(角度)、図形の各カラムから構成されている。すなわち、記憶部381には、それぞれの単位ウエイト20の重量、組立順、積載位置及び図形が記憶されている。
【0036】
「重量」は、各単位ウエイト20の重量である。「組立順」は、カウンタウエイトWを組み立てる際の順番である。一般に、カウンタウエイトWは、下層の単位ウエイト20から順番に組み立てられる(
図9参照)。「積載位置」は、カウンタウエイトWを組み立てる際に単位ウエイト20を載せる車体フレーム11f上の位置である。積載位置は、旋回台13の旋回中心を原点とした円柱座標系で表される。「積載位置(半径)」は、旋回台13の旋回中心と積載位置との距離(作業半径)である。「積載位置(角度)」は積載位置の旋回中心周りの角度(旋回角)である。なお、積載位置を円柱座標系以外の座標系で表してもよい。「図形」は、各単位ウエイト20の概形を示す図形データである。より具体的には、単位ウエイト20の概形は、
図11に示すように、単位ウエイト20を水平面に投影した平面図形(水平投影図形)である。後述のごとく、図形データは、単位ウエイト20の目標積載位置及び現在位置を図形で表示する際に用いられる。
【0037】
(処理)
つぎに、カウンタウエイトWの組立作業の手順とともに、カウンタウエイト組立補助装置Aの処理を説明する。
【0038】
カウンタウエイトWの組立作業に際し、作業員は、ブーム15を全縮するか、カウンタウエイトWの組立作業に必要十分な長さにする。一般に、カウンタウエイトWの組立作業中は、作業員はブーム15を伸縮する操作を行わない。ここでは、カウンタウエイトWの組立作業中のブーム長さは一定であるものとして説明する。
【0039】
図3に示すように、まず、制御装置35は、単位ウエイト20の組合せパターンを示す組合せ選択画面を表示装置36に表示させる(ステップS11)。
図4に示すように、組合せ選択画面には、単位ウエイト20の組合せパターンである第1〜第5組合せが、カウンタウエイトWの重量として表示されている。本実施形態では、0.0t(カウンタウエイトWなし)、6.1t(第1組合せ)、15.0t(第2組合せ)、25.0t(第3組合せ)、28.1t(第4組合せ)、40.3t(第5組合せ)が表示されている。
【0040】
図4に示すように、組合せ選択画面には、「現在のカウンタウエイト重量」が表示されてもよい。ここで、「現在のカウンタウエイト重量」とは、カウンタウエイトWの組立作業を行う直前に旋回台13に装着されていたカウンタウエイトWの重量である。
【0041】
図4に示す画面イメージでは、表示が0.0tとなっており、カウンタウエイトWが装着されていないことを示している。カウンタウエイトWの組立作業を行う直前に旋回台13にカウンタウエイトWが装着されていた場合には、そのカウンタウエイトWの重量が「現在のカウンタウエイト重量」として表示される。
【0042】
旋回台13に装着されているカウンタウエイトWを取り外す場合や、重量を増減させる場合には、作業員は、旋回台13の後部がカウンタウエイトWの積載領域に位置するように旋回台13を旋回させる。作業員は、カウンタウエイトWを積載領域に降ろした後に、単位ウエイト20の取り付け又は取り外しを行う。そのため、ステップS11の段階では、旋回台13に装着されていたカウンタウエイトWが積載領域に降ろされている場合がある。そこで、制御装置35はカウンタウエイトWの組立作業を行う直前のカウンタウエイト検出器34の検出値を記憶しておき、その検出値を「現在のカウンタウエイト重量」とする。
【0043】
つぎに、作業員は、入力装置37を用いて、組合せ選択画面に表示された単位ウエイト20の組合せパターンの中から、所望の組合せパターンを選択する(ステップS12)。
図4に示す画面イメージでは、40.3t(第5組合せ)が選択されている。選択された組合せパターン(
図4では第5組合せ)は、例えば、組合せ選択画面においてハイライト表示される。
【0044】
つぎに、制御装置35は、現在の単位ウエイト20の組合せとカウンタウエイトデータ38に記憶された組立順とから、今回移動させる単位ウエイト20、すなわち移動すべき単位ウエイト20を特定する(ステップS13)。ここで、「移動させる」とは、カウンタウエイトWの重量を増加させる場合には単位ウエイト20を仮置き位置から積載位置まで移動させること(単位ウエイト20の取り付け)を意味し、カウンタウエイトWの重量を減少させる場合には単位ウエイト20を積載位置から仮置き位置まで移動させること(単位ウエイト20の取り外し)を意味する。
【0045】
「現在の単位ウエイト20の組合せ」とは、現在、積載領域に載せられている単位ウエイト20の組合せを意味する。後述のごとく、ステップS13からステップS16の処理は、一つの単位ウエイト20を移動させるごとに繰り返し行われる。したがって、「現在の単位ウエイト20の組合せ」はステップS13の処理回数により変化する。
【0046】
ステップS13の初回の処理において、「現在の単位ウエイト20の組合せ」はカウンタウエイト検出器34から取得できる。より詳細には、制御装置35は、カウンタウエイトWの組立作業を行う直前のカウンタウエイト検出器34の検出値を記憶しておき、その検出値から「現在の単位ウエイト20の組合せ」を特定する。例えば、カウンタウエイト検出器32の検出値が「6.1t」を示す場合、「第1組合せ」が現在の単位ウエイト20の組合せとなる。
【0047】
ステップS13の2回目以降の処理において、「現在の単位ウエイト20の組合せ」は、前回の取り付け又は取り外し処理の直前の単位ウエイト20の組合せに、前回取り付けた単位ウエイト20を加えた組合せ、又は直前の単位ウエイト20の組合せから前回取り外した単位ウエイト20を除いた組合せとする。
【0048】
「今回移動させる単位ウエイト20」は、「現在の単位ウエイト20の組合せ」と「組立順」とから特定される。単位ウエイト20を取り付ける場合には、カウンタウエイトデータ38から現在の組合せを構成する単位ウエイト20の「組立順」のうち最大の組立順を取得し、それより1つ大きい組立順の単位ウエイト20を特定し、それを「今回移動させる単位ウエイト20」とする。単位ウエイト20を取り外す場合には、カウンタウエイトデータ38から現在の組合せを構成する単位ウエイト20のうち「組立順」が最大の単位ウエイト20を特定し、それを「今回移動させる単位ウエイト20」とする。
【0049】
例えば、カウンタウエイトWを装着していない状態から第5組合せのカウンタウエイトWを組み立てる場合、最初に移動させる単位ウエイト20は、組立順が「1」である第1単位ウエイト21である。その後、制御装置35は、現在の組合せを構成する単位ウエイト20(第1単位ウエイト21)の組立順のうち最大の組立順「1」を取得し、それより組立順が1つ大きい単位ウエイト20(第2単位ウエイト22)を特定し、それを「今回移動させる単位ウエイト20」として提示する。作業員が、提示された単位ウエイト20の移動作業を行うことにより、移動すべき単位ウエイト20が確実に移動される。同様に、組立順に従って特定された「今回移動させる単位ウエイト20」が提示され、第2〜第7単位ウエイト22〜27が順に移動される(
図5参照)。
【0050】
つぎに、制御装置35は、今回移動させる単位ウエイト20の積載位置(以下「目標積載位置」と称する)を求める(ステップS14)。目標積載位置は、単位ウエイト20の高さ位置を含んでもよいが、ここでは、単位ウエイト20の水平面における積載位置だけを対象とする。この場合、目標積載位置は、ブーム15の作業半径と旋回角で表される。ブーム長さが一定であれば、目標積載位置は、目標起伏角と目標旋回角とで表される。
【0051】
目標起伏角は、今回移動させる単位ウエイト20を、対応する目標積載位置に配置したときのブーム15の起伏角である。目標旋回角は、今回移動させる単位ウエイト20を、対応する目標積載位置に配置したときのブーム15の旋回角である。つまり、単位ウエイト20をフック16に吊り下げ、ブーム15の起伏角を目標起伏角に一致させ、ブーム15の旋回角を目標旋回角に一致させたときに、単位ウエイト20が目標積載位置に配置される。
【0052】
制御装置35は、カウンタウエイトデータ38から今回移動させる単位ウエイト20の積載位置(半径)を取得するとともに、長さ検出器33から現在のブーム長さを取得する。制御装置35は、積載位置(半径)とブーム長さとから、ブーム15の先端が積載位置の鉛直上に配置されるときの起伏角を求め、それを目標起伏角とする。例えば、下式(1)より、単位ウエイト20を目標積載位置に配置する場合の起伏角θ(目標起伏角)を求めることができる。なお、ブーム長さLは、作業員によって入力装置37を通じて入力されてもよい。
r=L・cosθ ・・・(1)
r:作業半径、L:ブーム長さ、θ:起伏角
【0053】
ここで、制御装置35は、単位ウエイト20の重量によるブーム15の撓みを考慮して目標起伏角を求めてもよい。単位ウエイト20の重量は、カウンタウエイトデータ38から取得される。吊荷の重量によりブーム15が撓むと、ブーム15の先端位置(吊荷の位置)が旋回台13の旋回中心から離れる。そこで、制御装置35は、撓んだブーム15の先端が積載位置の鉛直上に配置されるときの起伏角を求め、それを目標起伏角とする。これにより、ブーム15の撓みによる位置ズレを補正する。具体的には、下式(2)より、ブーム15の撓みを考慮した場合の目標起伏角θを求めることができる。この場合、撓み角φは、例えば単位ウエイト20ごとに実験的に設定され、カウンタウエイトデータ38に記憶される。撓み角φは、単位ウエイト20ごとに、ブーム長さLに応じて、複数設定されてもよい。
r=L・cos(θ−φ) ・・・(2)
φ:撓み角
【0054】
制御装置35は、カウンタウエイトデータ38から今回移動させる単位ウエイト20の積載位置(角度)を取得し、それを目標旋回角とする。
【0055】
つぎに、制御装置35は、積載位置画面を表示装置36に表示する(ステップS15)。
図5に示すように、積載位置画面には、「指定CW」の欄に「今回移動させる単位ウエイト20」の識別子が表示されている。ここで、「識別子」は、単位ウエイト20の種類を識別できれば特に限定されず、単位ウエイト20の重量、種類名、又は図形などが用いられる。
図5に示す画面イメージでは、識別子として単位ウエイト20の重量が用いられている。単位ウエイト20の重量は、カウンタウエイトデータ38から取得できる。
【0056】
このように、制御装置35は、単位ウエイト20を目標積載位置に誘導するための操作支援情報として、積載位置画面に、単位ウエイト20の目標積載位置及び現在位置を表示する。具体的には、積載位置画面には、単位ウエイト20の目標積載位置として目標起伏角と目標旋回角とが表示されている。また、単位ウエイト20の現在位置として、ブーム15の現在起伏角と現在旋回角とが表示されている。現在起伏角は起伏角検出器31から取得される。現在旋回角は旋回角検出器32から取得される。
【0057】
ステップS14において、今回移動させる単位ウエイト20を対応する目標積載位置に配置する際のブームの目標起伏角および目標旋回角を求めているので、単位ウエイト20ごとに目標積載位置が異なる場合でも、適切な目標起伏角および目標旋回角を表示できる。
【0058】
積載位置画面には、操作支援情報として、単位ウエイト20の目標位置図形41と現在位置図形42とが表示されている。目標位置図形41は、目標積載位置に配置された単位ウエイト20、すなわち移動対象である単位ウエイト20の移動先を示す。ここで、目標積載位置は、カウンタウエイトデータ38から取得される。現在位置図形42は、現在位置の単位ウエイト20を示す。ここで、現在位置は、起伏角検出器31、旋回角検出器32及び長さ検出器33の検出値から求められる。ブーム15の撓みを考慮して、現在位置を補正してもよい。目標位置図形41および現在位置図形42として用いられる図形データはカウンタウエイトデータ38から取得される。このように、積載位置画面では、目標積載位置及び現在位置に、移動対象の単位ウエイト20の概形が同時に表示される。
【0059】
図5に示す画面イメージでは、単位ウエイト20の平面視の略図(水平投影図形)が目標位置図形41および現在位置図形42として用いられている。目標位置図形41及び現在位置図形42は、対応する図形データは同じであるが、単位ウエイト20の目標積載位置及び現在位置における旋回角に応じて、適宜回転して表示される。また、
図5に示すように、目標位置図形41と現在位置図形42は、異なる表示態様であることが好ましい。
図5では、目標位置図形41は点線で表示され、現在位置図形42は実線で表示されている。さらに、目標積載位置においては、移動対象の単位ウエイト20の概形が、当該単位ウエイト20を含むカウンタウエイトWの一部として表示されている。
【0060】
作業員は、表示装置36に表示された積載位置画面を確認しながら、単位ウエイト20の取り付け又は取り外しを行う。具体的には、作業員は、積載位置画面の「指定CW」の欄の表示から、今回移動させる単位ウエイト20の種類を確認する。そして、作業員は、指定された単位ウエイト20の玉掛けを行い、その単位ウエイト20を吊り上げる。
【0061】
このように、表示装置36に今回移動させる単位ウエイト20の識別子が表示されるので、作業員は、指定された単位ウエイト20の作業を行えばよく、カウンタウエイトWの組立順を間違えることがない。
【0062】
作業員は、積載位置画面に表示された目標起伏角、目標旋回角、現在起伏角及び現在旋回角を確認しつつ、単位ウエイト20を積載位置まで移動させる。ここで、作業員は、現在起伏角を目標起伏角に一致させ、現在旋回角を目標旋回角に一致させるようにクレーン操作をする。
【0063】
このように、表示装置36にブーム15の目標起伏角と現在起伏角とが表示されるので、作業員は、現在起伏角を目標起伏角に合わせるようにクレーン操作すれば、単位ウエイト20を積載位置に配置できる。また、表示装置36にブーム15の目標旋回角と現在旋回角とが表示されるので、作業員は現在旋回角を目標旋回角に合わせるようにクレーン操作すれば、単位ウエイト20を積載位置に配置できる。
【0064】
そのため、エンジンルーム12や旋回台13とカウンタウエイトWの積載領域との隙間が狭い場合であっても、クレーン操作の指標を確認することで、カウンタウエイトWの組立作業が容易になる。
【0065】
移動式クレーンCの機種によっては、エンジンルーム12や旋回台13とカウンタウエイトWの積載領域との隙間が数十cmである。一方、ブーム15の撓みにより単位ウエイト20の位置が数十cmズレることがある。ステップS14で個々の単位ウエイト20の重量を考慮してブーム15の撓みを求め、ブーム15の撓みを考慮して目標起伏角を求めるよう構成すれば、単位ウエイト20ごとに精度の高い目標起伏角を表示できる。作業員は、現在起伏角を目標起伏角に一致させるだけでよく、ブーム15の撓みによる位置ズレを意識する必要がない。そのため、このような機種であっても、カウンタウエイトWの組立作業が容易になる。
【0066】
また、積載位置画面においては、単位ウエイト20の目標積載位置及び現在位置に、移動対象の単位ウエイト20の概形が同時に表示されているので、作業員は、積載位置画面に表示された目標位置図形41と現在位置図形42とを確認しつつ、単位ウエイト20を目標積載位置まで移動させることができる。ここで、作業員は、現在位置図形42を目標位置図形41に一致させるようにクレーン操作をする。
【0067】
このように、表示装置36に単位ウエイト20の目標位置図形41と現在位置図形42とが表示されるので、作業員は現在位置図形42を目標位置図形41に合わせるようにクレーン操作すれば、単位ウエイト20を積載位置に配置できる。そのため、カウンタウエイトWの組立作業が容易である。
【0068】
なお、現在位置図形42と目標位置図形41とが一致した場合に、現在位置図形42の色を変化させてもよい。そうすれば、作業員にとって単位ウエイト20が積載位置に達したことを認識しやすい。
【0069】
単位ウエイト20の取り付け又は取り外しを行った後、作業員は入力装置37を用いて、次の単位ウエイト20の作業に移ったことを入力する(ステップS16)。そうすると、制御装置35の処理はステップS13に戻る。ステップS13では、次の組立順の単位ウエイト20が特定され、作業員に対して提示される。
図5に示す積載位置画面では、次の組立て順の単位ウエイト20として第7単位ウエイト27を移動させることが、作業員に対して提示されている。
【0070】
制御装置35は、ステップS13からステップS16までの処理を、一つの単位ウエイト20を移動させるごとに、繰り返し行う。カウンタウエイトWの組み立てが完了したら、制御装置35は処理を終了する。
【0071】
その後、
図8に示すように、旋回台13を旋回させて旋回台13の後部を車体フレーム11f上のカウンタウエイトWに対応する位置に配置させる。そして、旋回台13の後部に設けられた着脱装置でカウンタウエイトWを旋回台13の後部に装着する。
【0072】
以上では、主にカウンタウエイトWを装着していない状態からカウンタウエイトWを組み立てる場合を説明したが、カウンタウエイト組立補助装置Aは、装着していたカウンタウエイトWを取り外して解体する場合にも用いることができる。
【0073】
この場合、ステップS12において、作業員は、例えば0.0t(カウンタウエイトWなし)を選択する。ステップS13では、制御装置35は、カウンタウエイトWを構成する単位ウエイト20の中から取り外す単位ウエイト20を特定し、提示する。
【0074】
例えば、第5組合せのカウンタウエイトWを取り外す場合、最初に移動させる単位ウエイト20は、組立順が「7」である第7単位ウエイト27である。その後、第6〜第1単位ウエイト26〜21を順に移動させる。
【0075】
ステップS15では、まず、作業員は、積載位置画面を確認しつつ、現在起伏角を目標起伏角に一致させ、現在旋回角を目標旋回角に一致させるようにクレーン操作する。つぎに、該当の単位ウエイト20の玉掛けを行い、その単位ウエイト20を取り外す。
【0076】
単位ウエイト20を取り外す際にも、単位ウエイト20の重量によりブーム15が撓み、単位ウエイト20が位置ズレする。ステップS14でブーム15の撓みを考慮して目標起伏角を求めるよう構成すれば、単位ウエイト20が位置ズレすることなく吊り上げることができる。そのため、単位ウエイト20とエンジンルーム12などとの接触を抑制できる。
【0077】
特定の組合せのカウンタウエイトWから重量の重い組合せのカウンタウエイトWに変更する場合や、特定の組合せのカウンタウエイトWから重量の軽い組合せのカウンタウエイトWに変更する場合にもカウンタウエイト組立補助装置Aを用いることができる。
【0078】
この場合、ステップS12では、作業員は、変更後の組合せを選択する。現在の組合せはカウンタウエイト検出器34から取得される。なお、現在の組合せと変更後の組合せとを作業員が入力するよう構成してもよい。この場合には、カウンタウエイト検出器34を含まない構成としてもよい。
【0079】
ステップS13では、現在の単位ウエイト20の組合せとカウンタウエイトデータ38に記憶された組立順とから、カウンタウエイトWに取り付ける、又は取り外す単位ウエイト20を特定する。
【0080】
このように、実施形態のカウンタウエイト組立補助装置A(クレーン作業補助装置)は、ブーム15及びブーム15の先端に昇降可能に取り付けられるフック16を有する移動式クレーンCによる作業を補助するクレーン作業補助装置である。カウンタウエイト組立補助装置Aは、対象物の目標位置を記憶する記憶部381と、フック16に吊り下げられた対象物の現在位置を特定する現在位置特定部35Aと、対象物の移動作業時に、目標位置と現在位置とに基づいて、対象物を目標位置に誘導するための操作支援情報を表示装置36(表示部)に表示させる表示制御部35Bと、を備える。
【0081】
具体的には、カウンタウエイト組立補助装置A(クレーン作業補助装置)は、少なくとも一つの単位ウエイト20を含むカウンタウエイトWを所定の積載領域に組み立てる作業を補助するクレーン作業補助装置である。記憶部381は、目標位置として、単位ウエイト20ごとの目標積載位置を予め記憶し、現在位置特定部35Aは、フック16に吊り下げられた単位ウエイト20の現在位置を特定し、表示制御部35Bは、カウンタウエイトWの組立作業時に、目標積載位置と現在位置とに基づいて、操作支援情報を表示装置36(表示部)に表示させる。
【0082】
カウンタウエイト組立補助装置Aによれば、カウンタウエイトWの組立作業時に、目標積載位置と現在位置とに基づいて、単位ウエイト20を目標積載位置に誘導するための操作支援情報が表示装置36に表示され、作業員は操作支援情報に従ってクレーン操作すれば、単位ウエイト20を目標積載位置に配置できるので、カウンタウエイトの組立作業が容易になる。
【0083】
また、カウンタウエイト組立補助装置Aは、複数の単位ウエイト20を含むカウンタウエイトWを所定の積載領域に組み立てる作業を補助するクレーン作業補助装置であって、単位ウエイト20ごとに、水平面における目標積載位置及び当該単位ウエイト20の概形を記憶する記憶部381と、吊り下げられた単位ウエイト20の水平面における現在位置を特定する現在位置特定部35Aと、カウンタウエイトWの組立作業時に、目標積載位置及び現在位置に、移動対象の単位ウエイト20の概形、すなわち目標位置図形41及び現在位置図形42を同時表示させる表示制御部35Bと、を備える。
【0084】
これにより、作業員は、移動対象の単位ウエイト20の移動状況を視覚的に容易に把握できるので、現在位置図形42を目標位置図形41に合わせるようにクレーン操作することで、単位ウエイト20を容易に目標積載位置に配置できる。そのため、カウンタウエイトWの組立作業が容易になる。
【0085】
〔その他の実施形態〕
前記実施形態における積載位置画面(
図5参照)の表示項目、すなわち操作支援情報に含まれる情報を追加又は削除してもよい。例えば、単位ウエイト20の目標高さと、現在高さとを表示してもよい。目標高さは単位ウエイト20を車体フレーム11f又は下層の単位ウエイト20に積み重ねたときの高さである。現在高さはブーム15の長さ、起伏角、ワイヤロープの繰り出し量から求められる。
【0086】
移動式クレーンCの機種によっては、カウンタウエイトWの高さが運転室14よりも高い。この場合、上部の単位ウエイト20を取り付ける際に運転室14内の作業員からは単位ウエイト20の積載位置が確認しにくい。積載位置画面に目標高さと、現在高さとを表示すれば、運転室14内の作業員が単位ウエイト20を積載位置まで降ろせたか否かを確認できる。
【0087】
運転室14内の作業員からみて単位ウエイト20の奥行き方向の位置は目視により精度よく確認することが困難である。一方、単位ウエイト20の左右方向の位置は目視確認しやすい。そこで、単位ウエイト20の左右方向の位置を合わせる指標である目標旋回角および現在旋回角を表示しない構成としてもよい。この場合、旋回角検出器32を含まない構成としてもよい。
【0088】
前記実施形態では、単位ウエイト20ごとに積載位置を画面表示し、組立作業の進捗にともない画面を切り換えたが、これに代えて、全ての単位ウエイト20の積載位置を一画面で表示してもよい。
【0089】
カウンタウエイトWの組立作業におけるブーム長さが定められている場合や、ブーム15が長さ固定ブームの場合には、長さ検出器33を含まない構成としてもよい。この場合、ブーム長さは制御装置35に記憶される。ただし、前記実施形態のようにブーム長さを考慮して目標起伏角を求めれば、ブーム15を任意の長さに伸長した場合でも、適切な目標起伏角を表示できる。
【0090】
実施の形態では、単位ウエイト20の目標積載位置と現在位置の双方を、表示装置36に表示するが、目標積載位置と現在位置との差分を、操作支援情報として表示装置36に表示してもよい。例えば、
図5に示すように、単位ウエイトの目標積載位置に対応する起伏角が65°で、現在位置に対応する起伏角が60°である場合、これらの差分である5°を、操作支援情報として表示してもよい。また例えば、単位ウエイトの目標積載位置に対応する旋回角が18°で、現在位置に対応する旋回が58°である場合、これらの差分である40°を、操作支援情報として表示してもよい。作業員は、目標積載位置と現在位置との差分によって、ブーム15をどの程度起伏及び旋回させればよいのか知得できるので、実施の形態と同様に、クレーンによる作業が容易化される。
【0091】
本発明のクレーン作業補助装置は、移動式クレーンにおけるカウンタウエイトの組立作業だけでなく、クレーンにより吊荷(対象物)を目標位置に移動させる場合に適用することができる。
【解決手段】クレーン作業補助装置は、ブーム及びブームの先端に昇降可能に取り付けられるフックを有するクレーンによる作業を補助するクレーン作業補助装置であって、対象物の目標位置を記憶する記憶部と、フックに吊り下げられた対象物の現在位置を特定する現在位置特定部と、対象物の移動作業時に、目標位置と現在位置とに基づいて、対象物を目標位置に誘導するための操作支援情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。