特許第6161812号(P6161812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6161812運転者が電動自転車のペダルに適用したトルクを測定する方法、及び、電動自転車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161812
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】運転者が電動自転車のペダルに適用したトルクを測定する方法、及び、電動自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/50 20100101AFI20170703BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20170703BHJP
   G01L 5/13 20060101ALI20170703BHJP
   G01L 5/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B62M6/50
   B62J99/00 J
   G01L5/13
   G01L5/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-523948(P2016-523948)
(86)(22)【出願日】2014年10月14日
(65)【公表番号】特表2016-534924(P2016-534924A)
(43)【公表日】2016年11月10日
(86)【国際出願番号】EP2014072047
(87)【国際公開番号】WO2015055673
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】102013220871.5
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ヴァイグル
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−531394(JP,A)
【文献】 特開2010−264772(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/138202(WO,A1)
【文献】 特開2013−36990(JP,A)
【文献】 特開2000−283864(JP,A)
【文献】 特開2003−335291(JP,A)
【文献】 特開平8−99686(JP,A)
【文献】 特開平8−99685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/50
B62J 99/00
G01L 5/00 − 5/13
G01L 1/00 − 1/12
G01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が電動自転車のペダル(1)に適用したトルクを測定する方法であって、
前記電動自転車のチェーンに作用する力を、ボトムブラケット締結部の弾性変形又は偏向を測定することによって求め、ここから適用された前記トルクを計算する、方法において、
偏心回転可能に支承されたボトムブラケット(10)の作用を受けるばね(23)の変形又は偏向を測定する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記変形又は偏向の測定を、磁気方式で行う、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記変形又は偏向の測定を、磁石及びホールセンサによって行う、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記変形又は偏向の測定を、誘導性近接センサ方式で行う、
請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記変形又は偏向の測定を、ストレインゲージによって行う、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
ボトムブラケット(10)を有する電動自転車であって、
前記ボトムブラケットは、運転者がペダル(1)を介してチェーンに適用した張力が測定可能な弾性変形を締結部に生じさせるように、自転車フレームに締結されており、
前記締結部の変形又は偏向を測定するセンサ(15)を備える、電動自転車において、
前記ボトムブラケット(10)は、偏心回転可能に前記フレームに支承されて、ばね(23)に作用し、
該ばね(23)の変形又は偏向が、前記センサ(15)によって測定される、
ことを特徴とする電動自転車。
【請求項7】
前記ボトムブラケット(10)は、垂直方向ではできるかぎり堅固に固定されるが、水平方向では力に依存した変形又は偏向が許容されるように、前記フレームに取り付けられている、
請求項6記載の電動自転車。
【請求項8】
前記センサ(15)は、磁気センサとして構成されている、
請求項6又は7記載の電動自転車。
【請求項9】
前記センサは、ストレインゲージによって構成されている、
請求項6から8までのいずれか1項記載の電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の特徴を有する、運転者が電動自転車のペダルに適用したトルクを測定する方法に関する。
【0002】
こうした電動自転車(Eバイク、電気駆動機構付き自転車)では、電気駆動機構の最適な制御が重要である。このために、運転者がペダルを介して適用したトルクを測定するセンサの信号を用いることができる。
【0003】
ここで、ペダルから前チェーンホイールへトルクを伝達するシャフトの応力を測定するトルクセンサが公知である。この場合、シャフトは回転軸であるから、測定方式は非接触でかつ回転から独立していなければならない。使用される方式は、磁気的に適切な金属から形成されているか又は適切にコーティングされている特殊なシャフトを要する。また、磁気測定のために複雑なコイル及び電気信号処理部も必要である。
【0004】
低コストの手段では、モータによるアシストをボトムブラケット又はスプロケットでの回転数検出によって制御している。ただし、この手段は、応答時間及び補助力の調整能の点で欠点を有する。
【0005】
請求項1の上位概念の特徴を有する方法が、DE102010001775A1から公知である。当該公知の方法では、ボトムブラケットに作用する力がペダル力によって形成される。この力に基づいてボトムブラケットが補助軸受内で運動し、これにより圧力測定室内のピストンが前進する。このように構成された力センサによって検出される圧力変化が制御ユニットへ供給され、トルクを求めるために用いられる。
【0006】
EP2511165A1からは、ペダル力の作用のもとで自転車の取り付けエレメント及びリアアクスルに作用する力をセンサで測定してトルク計算に利用するトルク測定方法が公知である。
【0007】
EP2682335A1には、ペダル力検出装置が、ストレインゲージを用いて、ペダル力によって金属体に形成された応力を測定し、そこからトルクを求める方法が記載されている。
【0008】
DE102012215022A1の対象発明では、ボトムブラケット締結部に加えて設けられた測定スリーブが用いられる。この測定スリーブは自身を同軸状に包囲する評価ユニットと協働する。
【0009】
DE102011089559A1から、自転車用のクランク駆動機構が公知である。この機構は、なかんずく、プラネタリギヤと、このプラネタリギヤの中空ホイールに配置された、中空ホイールの支持モーメントを求めるためのセンサとを有する。この場合、中空ホイールの支持モーメントは、中空ホイールの周方向での運動をセンサで測定することにより求められ、ここから生じた力が計算され、この力から運転者が適用したトルクを計算することができる
【0010】
DE202012006698U1から、自転車のボトムブラケットアセンブリに取り付けられる力測定装置が公知である。この装置は、スリーブハウジングと環状体とセンサ保持ユニットと力伝達支承部とホール測定ユニットとを含む。環状体は、回転力に応じた変形運動を生じるように構成された変形領域を有し、当該変形運動が配設されたセンサによって検出される
【0011】
本発明の基礎とする課題は、特に簡単な要素を用いて容易に実現できる、冒頭に言及した形式の方法を提供することである。
【0012】
この課題は、本発明にしたがって、請求項1の特徴部分の特徴を有する上述した形式の方法において解決される。
【0013】
本発明で提案される解決手段は、前輪又は後輪に補助モータを設けた自転車に適する。本発明によれば、回転軸での直接のトルク測定は行われず、これに代えて力測定が行われる。ここではチェーンに作用する張力が測定される。これは、後輪ハブとボトムブラケットとに作用する力である。チェーン張力を測定するために、ボトムブラケット締結部の弾性変形又は偏向が測定される。このことは、後述するように、種々の方式で実行可能である。
【0014】
トルク測定に代えて力測定を行うことで、力によって生じる弾性変形又は偏向の測定に必要なセンサエレメントを定置状態で取り付けることができる。回転軸での測定は不要である。このために簡単なセンサエレメントを使用できる。ボトムブラケット締結部及び/又はホイールハブ締結部の弾性変形又は偏向を測定することにより、リアアクスルとボトムブラケットとの間の力成分のみが測定される。つまり、前進を生じさせる力のみの検出が達成される。運転者が例えば両方のペダルを同時に下方又は上方へ押したとしても(例えば運転者がペダル上に立ち上がっても)、後輪方向への力成分は生じないはずである。よってセンサは駆動モーメントを識別せず、自転車が意図しない加速を行うことはない。
【0015】
本発明によれば、変形又は偏向の測定はボトムブラケットで行われる。なぜなら、後輪ハブには、ペダル力によって生じる力が作用するだけでなく、後輪ブレーキの操作もしくは駆動モータによる力も重なりうるからである。さらに、ボトムブラケットハウジングにより、測定に必要な部品の組み込み空間もより多く提供される。
【0016】
水平方向に適用されるチェーン張力によるボトムブラケットの弾性変形又は偏向は障害として受け取られるおそれがあるため、この変形又は偏向はできるだけ小さくなるべきである。したがって、好ましくは、変形又は偏向の測定は磁気方式で行われる。なぜなら、この場合、1mmのオーダーの変化のみで充分な分解能の測定が可能となるからである。ここでの測定は例えば磁石及びホールセンサによって行うことができる。また、誘導性近接センサ方式による測定、例えば鉄心を備えたコイルによる測定を行ってもよい。2つの方式のどちらにおいても、信号処理部を含めて、きわめて低コストの手段を利用できる。
【0017】
本発明の方法の別のバリエーションでは、変形又は偏向の測定はストレインゲージによって行われる。
【0018】
本発明によれば、好ましくは、運転者が適用して電動自転車のチェーンに作用する力を検出するために、ボトムブラケット締結部の水平方向での弾性変形又は偏向が測定される。この場合、測定は、偏心回転可能に支承されたボトムブラケットの作用を受けるばねの変形又は偏向を測定することにより実現される
【0019】
本発明はさらに、ボトムブラケットを有する電動自転車に関する。ボトムブラケットは、運転者がペダルを介してチェーンに適用した張力が測定可能な弾性変形又は偏向を締結部に生じさせるように、自転車フレームに締結されている。また、電動自転車には、当該変形又は偏向を測定するセンサが備えられている。
【0020】
後輪ハブでの測定に比べたボトムブラケットでの変形又は偏向の測定の利点は、上述した通りである。この実施形態では、ボトムブラケットは、好ましくは、垂直方向ではできるかぎり堅固に固定されるが、水平方向では力に依存した変形又は偏向が許容されるように、フレームに取り付けられる。このようにすれば、チェーン張力に対応する水平方向の変形成分又は偏向成分のみが測定されることが保証される。
【0021】
ボトムブラケット締結部の変形又は偏向の測定を実現可能にするために、ボトムブラケットは、例えばスウィングアームを介して偏心回転可能にフレームに支承されて、ばねに作用し、このばねの変形又は偏向がセンサによって測定される。
【0022】
センサは磁気センサとして構成可能である。本発明の別の実施形態として、センサをストレインゲージによって形成してもよい。
【0023】
本発明を以下に、図に関連する実施形態に即して、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自転車のチェーン駆動機構の概略図である。
図2弾性締結部を含む自転車のボトムブラケットの縦断面図である
【0025】
図1に概略的に示されている自転車のチェーン駆動機構では、例えば、垂直方向にペダル力がかかったペダル位置が示されている。ペダル1を介して、(ベクトルとして示されている)力2が適用される。当該力2は、トルクをペダル軸4に作用させる力成分3を有する。当該トルクは、スプロケット6の半径に対するクランク長さの比の分だけ力成分3よりも大きいチェーン力5を生じさせる。力2,5はボトムブラケットにおいて支持され、そこに、垂直方向で下方に向かう、トルク情報を含まない力7と、スプロケット径9との乗算によってトルクをなす力8とを生じさせる。ここで力8は力5に相応する。したがって、力8を測定することにより、運転者が適用したトルクを求めることができる。
【0026】
図2には、ボトムブラケットの一実施形態が縦断面図で示されている。この実施形態では、ボトムブラケット10が短いスウィングアーム22を介して偏心回転可能に懸架されている。スウィングアームの回転軸18は、ここではボトムブラケットシャフト11に対して平行に延在しており、さらに、自転車フレームの、ヘッドチューブ19とシートチューブ20とチェーンステー21との接続部に締結されている。通常の環状のボトムブラケットハウジングに代わり、成形部24がヘッドチューブ19とシートチューブ20とチェーンステー21とを接続している。この場合、ボトムブラケット10は、力8によって後方へ旋回可能である。当該運動は、力8に1次比例する偏向を許容するばねエレメント23によって制限される。ここでの偏向がホールセンサ(又は誘導性センサ)15によって測定され、力8の尺度量として用いられる。後者の幾分複雑な手段の利点は、踏み込み力が大きい場合にもボトムブラケットが後輪ハブに対して平行なままにとどまるということである。
図1
図2