特許第6161821号(P6161821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6161821圧力制限弁を製造する方法、圧力制限弁及び、燃料噴射系用の部材
<>
  • 特許6161821-圧力制限弁を製造する方法、圧力制限弁及び、燃料噴射系用の部材 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161821
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】圧力制限弁を製造する方法、圧力制限弁及び、燃料噴射系用の部材
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20170710BHJP
   F02M 59/46 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   F02M59/44 N
   F02M59/46 Q
   F02M59/46 Y
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-537352(P2016-537352)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公表番号】特表2016-532817(P2016-532817A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】EP2015059254
(87)【国際公開番号】WO2015173013
(87)【国際公開日】20151119
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】102014208891.7
(32)【優先日】2014年5月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ シュタイナート
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−イェルク コッホ
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−241974(JP,A)
【文献】 特開昭60−119366(JP,A)
【文献】 実開昭63−151972(JP,U)
【文献】 特開昭57−176355(JP,A)
【文献】 特開平5−272430(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102011089797(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 59/46
F02M 37/00
F02M 69/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射系用の圧力制限弁(100)を製造する方法であって、
予め設定された誤差内において一定の直径(117)を長手方向軸線(102)に沿って有する、収容孔(116)を備えたハウジング(115)を準備するステップと、
シールエレメント(108)とばね(105)と固定ピン(103)を備えたスリーブ(101)とを準備するステップであって、このとき前記固定ピン(103)が前記スリーブ(101)によって取り囲まれた中空室(104)内を前記長手方向軸線(102)に沿って延在し、且つ前記長手方向軸線(102)に沿った前記スリーブ(101)の両側において前記スリーブ(101)を越えて突出している、ステップと、
前記シールエレメント(108)と前記ばね(105)と固定ピン(103)を備えたスリーブ(101)とを、前記ばね(105)が第1の端部(106)で前記スリーブ(101)に支持されかつ第2の端部(107)でシールエレメント(108)に支持されるように、前記収容孔(116)内に配置するステップと、
前記ハウジング(115)に対して前記長手方向軸線(102)に沿って前記スリーブ(101)を移動させ、かつこれによって前記ばね(105)の予荷重を変化させるステップと、
前記ばね(105)の予荷重の値が前記圧力制限弁(100)用の開放圧の予め設定された値に相当した時に、前記ハウジング(115)に前記スリーブ(101)を圧着させるために、前記固定ピン(103)を前記長手方向軸線(102)に沿って前記スリーブ(101)に対して移動させ、かつこれによって前記スリーブ(101)を塑性変形させるステップと、
を有することを特徴とした、燃料噴射系用の圧力制限弁(100)を製造する方法。
【請求項2】
前記スリーブ(101)は、前記予荷重を変化させるために、前記長手方向軸線(102)に沿って1mmよりも長い距離を移動可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃料噴射系用の圧力制限弁(100)であって、
長手方向軸線(102)に沿ったスリーブ(101)と、
前記スリーブ(101)によって取り囲まれた中空室(104)内を前記長手方向軸線(102)に沿って延在し、且つ前記長手方向軸線(102)に沿った前記スリーブ(101)の両側において前記スリーブ(101)を越えて突出している固定ピン(103)と、
第1の端部(106)で前記スリーブ(101)に支持されたばね(105)と、
前記ばね(105)の第2の端部(107)を支持するシールエレメント(108)と、
当該圧力制限弁(100)を通る流体の流れを閉鎖ポジションにおいて遮断し、かつ別のポジションでは開放するためのシール座(109)であって前記閉鎖ポジションにおいて、前記シールエレメント(108)が接触しているシール座(109)と、
を有しており、
前記スリーブ(101)は、外周部(110)を有していて、該外周部(110)は、第1の状態において前記長手方向軸線(102)に沿って、予め設定された誤差内において等しい大きさであり、
前記固定ピン(103)は、前記シールエレメント(108)に向けられた端部(111)に設けられるとともに前記中空室(104)の直径よりも大きい直径を有する突出領域(112)と、該突出領域(112)の直径よりも小さな直径を有するとともに前記中空室(104)内を延在する軸部と、該軸部及び前記突出領域(112)の間に設けられた傾斜面(123)と、を有する
ことを特徴とする、燃料噴射系用の圧力制限弁。
【請求項4】
前記固定ピン(103)は、前記ばね(105)を半径方向においてガイドするために、前記シールエレメント(108)に向かって前記スリーブ(101)を越えて突出している、請求項3記載の圧力制限弁。
【請求項5】
前記中空室(104)が前記シールエレメント(108)に向けられた端部において、前記シールエレメント(108)とは反対側の端部の直径よりも大きな直径(113)を有するように、前記スリーブ(101)は前記中空室(104)を取り囲んでいる、請求項3又は4記載の圧力制限弁。
【請求項6】
前記固定ピン(103)は、流体に対するシール作用をもって前記スリーブ(101)と結合するために、テクスチャリング(114)を有している、請求項3からまでのいずれか1項記載の圧力制限弁。
【請求項7】
請求項3からまでのいずれか1項記載の圧力制限弁(100)を有する、燃料噴射系用の部材(124)であって、
ハウジング(115)が収容孔(116)を有しており、該収容孔(116)内にスリーブ(101)、ばね(105)及びシールエレメント(108)が配置されていて、前記収容孔(116)が長手方向軸線(102)に沿って、予め設定された誤差内において一定の直径(117)を有していることを特徴とする、燃料噴射系用の部材。
【請求項8】
前記ばね(105)の予荷重を、予め設定された値に調節するために、前記スリーブ(101)は、該スリーブ(101)が前記ハウジング(115)に結合されていない状態において前記ハウジング(115)に対して移動可能である、請求項記載の部材。
【請求項9】
前記スリーブ(101)は、全外周部(110)に沿って前記ハウジング(115)と直に接触している、請求項又は記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力制限弁を製造する方法に関する。本発明はさらに、燃料噴射系用の圧力制限弁、特に自動車の燃料噴射系用の圧力制限弁に関する。本発明はさらにまた、このような圧力制限弁を有する、燃料噴射系用の部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関用の噴射系は、通常、圧力制限弁を有している。圧力制限弁は、例えば高圧燃料ポンプに組み込まれていて、部材を、熱膨張時又は故障時に過度に高い燃料圧に対して保護する。例えば圧力制限弁は、ガソリン噴射系では燃料圧が250バールを超えた場合に開放する。このとき圧力制限弁は、高圧側から低圧側への経路を開放する。
【0003】
噴射系の確実な運転のためには、圧力制限弁の開放圧の精度に対して極めて高い要求が課せられる。誤差範囲を小さく保つために、例えば、液圧を測定する調節方法が開放圧を調節するために使用される。このとき通常は例えば、ねじによる回転運動によって、圧力制限弁の閉鎖体に対するばね力が、所望の開放圧が調節されるまで長く変化させられる。そのために必要なねじの製造及び別体のシール部材のためのスペースは、製造技術的なコストを含み、相応の構造空間を必要とする。
【0004】
さらに圧力制限弁は、取り付けられた状態において400バールまでの圧力に対して、測定可能な漏れなしにシールされていなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開放圧に対して大きな調節範囲を可能にする圧力制限弁を製造する方法を提供することが、望まれている。さらに、開放圧の大きな調節範囲を可能にする圧力制限弁を提供することが、望まれている。さらにまた、このような圧力制限弁を備えた部材を提供することが、望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、燃料噴射系用の圧力制限弁を製造する方法は、予め設定された誤差内において一定の直径を長手方向軸線に沿って有する、収容孔を備えたハウジングを準備するステップを有する。さらに、シールエレメントとばねと固定ピンを備えたスリーブとが準備される。固定ピンは、中空室を貫いて突出している。中空室は、スリーブによって取り囲まれている。シールエレメントとばねと固定ピンを備えたスリーブとは、ばねが第1の端部でスリーブに支持されかつ第2の端部でシールエレメントに支持されるように、収容孔内に配置される。スリーブは、ハウジングに対して長手方向軸線に沿って移動させられる。これによってばねの予荷重が変化させられる。ばねの予荷重の値が圧力制限弁用の開放圧の予め設定された値に相当した時に、スリーブをハウジングに圧着させるために、固定ピンは長手方向軸線に沿ってスリーブに対して移動させられ、これによってスリーブが塑性変形させられる。
【0007】
スリーブは単に軸方向において収容孔内を移動させられる。ハウジングに対するスリーブの回転は、省くことができる。これによって、圧力制限弁の開放圧のための調節範囲を大きくすることができる。特に、ばねの予荷重を変化させるために、スリーブは、長手方向軸線に沿って1mmよりも長い距離を移動可能である。
【0008】
本発明の別の観点によれば、燃料噴射系用の圧力制限弁が、長手方向軸線に沿ったスリーブを有している。圧力制限弁は、中空室を貫いて突出している固定ピンを有している。中空室は、スリーブによって取り囲まれている。ばねは、第1の端部でスリーブに支持され、かつ反対側に位置する第2の端部でシールエレメントに支持されている。圧力制限弁は、圧力制限弁を通る流体の流れを、シールエレメントがシール座と接触している閉鎖ポジションにおいて遮断し、かつ別のポジションにおいては開放するために、シール座を有している。スリーブは、外周部を有していて、該外周部は、第1の状態において長手方向軸線に沿って、予め設定された誤差内において等しい大きさである。固定ピンは、長手方向軸線に沿ったスリーブに対する固定ピンの移動によって、スリーブが塑性変形可能であり、これによってハウジングにスリーブが圧着され得るような形状を有している。
【0009】
第1の状態は、特に、スリーブがまだハウジングに圧着されていない本来の状態に相当している。スリーブの外周部は、段部、ねじ山又はこれに類したものを有していない。外周部の変化は例えば単に、製造に基づく誤差によってしか発生しない。本発明の別の態様によれば、ハウジングに圧着されたスリーブのより良好な保持のために、スリーブは、溝又はこれに類したもののようなテクスチャリングを有している。このとき外周部は、テクスチャリングの最大外周部である。特に、外周部は予め設定された誤差内において最大で0.5mmだけ変化する。
【0010】
弁スリーブは塑性変形によってハウジングに圧着されるので、スリーブとハウジングとの間におけるねじ結合部は不要である。これによって、ハウジング内におけるスリーブの取付けを簡単かつ迅速に実施可能になる。さらに、弁スリーブを安価に製造することが可能になる。弁スリーブは、例えば深絞り加工によって製造されている。スリーブに対する固定ピンの移動は、もしハウジングがない場合には、スリーブの外周部を増大させることになる。固定ピンはスリーブを外方に向かって押圧し、このときスリーブを、第1の状態における形状に比べて変形させる。
【0011】
本発明の態様によれば、固定ピンは、ばねのためのガイドを形成するために、シールエレメントに向かってスリーブを越えて突出している。固定ピンは、半径方向において、圧力制限弁の組立て中においてもかつ運転中においても、ばねを固定する。
【0012】
本発明の態様によれば、固定ピンは、シールエレメントに向けられた端部に突出領域を有していて、該突出領域を用いてスリーブは塑性変形可能である。固定ピンは、その直径が長手方向軸線に沿って変化する形状を有している。第1の状態において、小径の領域は中空室の内部に配置されている。プレス固定のために、突出領域が中空室内に引き込まれるように、ピンはスリーブに対して移動させられる。これによってスリーブは塑性変形する。
【0013】
本発明の態様によれば、中空室がシールエレメントに向けられた端部において、シールエレメントとは反対側の端部の直径よりも大きな直径を有するように、スリーブは中空室を取り囲んでいる。これによって、シールエレメントとは反対側の端部においても、固定ピンの小径部との遊びのない接触が実現される。さらに、より確実なプレス固定が可能になる。
【0014】
別の態様によれば、固定ピンは、流体に対するシール作用をもってスリーブと結合するために、テクスチャリング(Strukturierung)を有している。固定ピンは例えば、突出領域に食い付きエッジ又はこれに類したものを有しており、これによって、プレス固定後に圧力制限弁の長い運転時間にわたって固定ピンとスリーブとの結合状態を確実に維持することができる。さらに、これによって、スリーブにおける圧力制限弁のシール性も保証される。
【0015】
本発明の別の観点によれば、燃料噴射系用の部材は、本発明に係る圧力制限弁を有している。当該部材はさらに、収容孔を備えたハウジングを有している。収容孔内には、スリーブ、ばね及びシールエレメントが配置されている。収容孔は、長手方向軸線に沿って、予め設定された誤差内において一定の直径を有している。例えば当該部材は、燃料圧送のための高圧ポンプ、特に高圧ピストンポンプである。別の態様によれば、当該部材は、コモンレール、又は燃料噴射系のその他のエレメントである。
【0016】
本発明の別の態様によれば、当該部材は、収容孔を備えたハウジングを有しており、この収容孔は、長手方向軸線に沿って、所定の誤差内において一定の直径を有している。スリーブは、長手方向軸線に沿って変化する外周部を有している。しかしながら、スリーブの外周部は、予め設定された誤差内において僅かしか変化しないので、収容孔内におけるスリーブの確実なプレス固定が可能である。圧力制限弁の残りのエレメントは、それとは異なり変化しないままである。
【0017】
塑性変形を用いたスリーブの固定によって、スリーブとハウジングとの間における簡単な連結が可能である。ハウジング内におけるスリーブの取付けは、簡単かつ迅速に実施可能である。さらに、ハウジングに対する種々異なったポジションで、スリーブをハウジングと固定することができる。スリーブの種々異なったポジションによって、圧力制限弁の開放圧が調節される。収容孔が、長手方向軸線に沿ってほぼ一定の直径を有していることによって、開放圧のための調節範囲を大きくすることができる。ハウジングに対するスリーブの相対移動は、もはや、収容孔の2つの異なった直径の間の差によって制限されない。さらに、ハウジングとスリーブとの間をシールするための、例えばOリングのような別体のシール部材は不要である。これにより部材の数が減じられる。さらに、部材のための取付け空間を減じることが可能である。収容孔の直径を、ねじ山のための汎用の収容孔に比べて小さくすることができる。従って、収容孔の周りにおける壁厚が同じままの場合、取付け空間を減じることができる。これによって一方では、部材の重量が低減され、ひいては特に、燃料噴射系によって燃料が供給される内燃機関の運転中に発生する排ガスが減じられる。他方において、ポンプの外寸が等しいままの場合により大きな壁厚を実現することができるので、系圧を上昇させることができる。
【0018】
本発明の態様によれば、スリーブは、全外周部に沿ってハウジングと直に接触している。スリーブは、スリーブとハウジングとの間に間隔を生ぜしめる突出部又は凹部を有していない。汎用の形式では、このような凹部には例えばOリングが設けられている。スリーブとハウジングとの間における、シール作用を有する結合は、プレス固定によって実現される。
【0019】
その他の利点、特徴及び態様は、図面とともに説明される以下の実施例にて与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る圧力制限弁を備えた部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、燃料噴射系用の部材124の1つの実施の形態が示されている。例えばこの部材124は、高圧ポンプ、特に往復動ピストンポンプである。高圧ポンプは、特に、例えばガソリン又はディーゼルのような流体を流体タンクから蓄圧器(コモンレールとも呼ばれる)に圧送するようになっている。燃料噴射系には、ガソリンの場合には150バール以上、例えば250バール又は350バール又はそれ以上までの系圧が存在している。流体は、蓄圧器から噴射弁を用いて、自動車を駆動する内燃機関の燃焼室内に噴射される。
【0022】
部材124には、圧力制限弁100が配置されている。この圧力制限弁100は、スリーブ101を有している。このスリーブ101は、長手方向軸線102に沿って延びている。
【0023】
スリーブ101の内部には固定ピン103が配置されている。この固定ピン103は、長手方向軸線102に沿って縦長に延びるように延在している。固定ピン103は、特にスリーブ101より長いので、固定ピン103はスリーブ101の両側において該スリーブ101を越えて突出している。これによって、内方に向けられた側に、固定ピン103の突出領域112が形成され、かつ外方に向けられた側に、接触領域122が形成されている。固定ピン103は、スリーブ101の中空室104を貫いて突出している。中空室104は、長手方向軸線102に沿ってスリーブ101を貫いて延びている。
【0024】
ばね105が、第1の端部106でスリーブ101に支持されている。ばね105は特にコイルばねである。ばね105は、その第2の端部107でシールエレメント108に支持されている。ばね105は、シールエレメント108をシール座109に押圧するようになっている。シール座109には、流体入口119が設けられている。
【0025】
流体入口119には、運転中に流体及び圧力が作用している。閉鎖状態において、シールエレメント108がシール座109に接触している場合、流体入口119から圧力制限弁100内への流体の流れは遮断されている。流体入口119における圧力が、主としてばね105によって予め設定されている圧力制限弁100の開放圧を超えて高まると、シールエレメント108はシール座109から持ち上がる。これによって、流体入口119から流体出口120への流体の流れが開放される。圧力制限弁100は、例えば、流体入口119の側における系圧が例えば150バール以上、特に250バール又は350バールであるような開放圧を有している。
【0026】
部材124はハウジング115を有している。このハウジング115は例えば、高圧ポンプのポンプハウジングである。このハウジング115には収容孔116が設けられている。この収容孔116は、ハウジング115の外側面126を起点として、領域127に到るまで、ほぼ一定の直径117を有している。領域127は特に、シールエレメント108が配置されていてシール座109に隣接する領域である。収容孔116は、外側面126を起点として長手方向軸線102に沿って延びている。
【0027】
直径117は、単に、製造に起因する誤差に基づく変動を有するだけである。特に収容孔116は、種々異なるドリルサイズに基づく段差なしに形成された直径117を有している。収容孔116をハウジング115内に形成するために、例えばただ1つのドリルが使用される。例えば収容孔116の直径117は、外側面126を起点として領域127に到るまで、5mmの直径を有しており、このとき変動は1%未満である。誤差に基づく直径117の変動は、特に1mm未満である。
【0028】
スリーブ101は外周部110を有している。この外周部110の直径は直径117に対応する。スリーブ101の外周部110は、長手方向軸線102に沿ってほぼ同じままである。単に製造に基づく誤差及び/又はシールを改善するためのテクスチャリングは、外周部110に設けられている。スリーブ101がまだハウジング115に結合されていない第1の状態において、スリーブ101は収容孔116内に挿入可能であり、かつ収容孔116内においてハウジング115に対して摺動可能である。スリーブ101はハウジング115の内部において、ばね105の予め設定された予荷重が得られるまで、ばね105に押し付けられる。そのためにスリーブ101は、ハウジング115の内部において調節領域121に沿って長手方向軸線102に対して軸方向に摺動可能である。スリーブ101をねじ込むための回転は、不要である。調節領域121は、特に1mmよりも長く、例えば1.5mmよりも長い。
【0029】
ばね105が予め設定された予荷重を有する、ハウジング115に対するスリーブ101の位置が得られると、スリーブ101はハウジング115に圧着させられる。そのために固定ピン103が長手方向軸線102に沿って外側に向かって引っ張られる。固定ピン103は、該固定ピン103の運動が外側に向かってスリーブ101を少なくとも部分的に塑性変形させるような形状を有する。これによってスリーブ101は、流体に対するシール作用をもってハウジング115に圧着される。これにより別のシールエレメントを省くことができる。流体に対するシール作用をもってスリーブ101をハウジング115と連結するためには、単に、一体のスリーブしか必要ない。プレス固定された状態において、スリーブ101及びハウジング115は接触面118を有している。特に接触面118は、長手方向軸線102に沿ってスリーブ101の全外周部110に沿って延びている。スリーブ101とハウジング115との間において、外周部110に空隙は設けられていない。
【0030】
ハウジング115にスリーブ101をプレス固定(verpressen)するために、固定ピン103は、シールエレメント108に向けられた端部111に突出領域112を有している。本実施の形態によれば、この突出領域112はテクスチャリング114を有している。固定ピン103の突出領域112と、この突出領域112よりも小さな直径を有する、固定ピン10の軸部との間には、傾斜面123が設けられている。プレス固定されていない第1の状態において、傾斜面123は特にスリーブ101と接触している。プレス固定のために工具が接触領域122において固定ピン103に係合し、突出領域112を中空室104内に引っ張る。このとき傾斜面123は、固定ピン103とスリーブ101との間における相対運動を容易にする。中空室104の直径113と突出領域112の直径とは、中空室104内への突出領域112の進入によってスリーブ101をプレス固定する塑性変形が可能になるように、互いに合わせられている。
【0031】
ハウジング115におけるスリーブ101の固定後においても、固定ピン103はシールエレメント108に向かってスリーブ101を越えて突出している。この突出領域は、運転中に、ばね105を半径方向において固定するばねガイドとして機能する。突出領域112は、スリーブ101と固定ピン103との間の接触面が流体に対するシール作用をもって形成されるように、スリーブ101内に挿入されている。突出領域112におけるテクスチャリング114は、流体に対してシール作用を有する結合を改善する。
【0032】
一定の外径110を有するスリーブ101と、一定の直径117を有する収容孔116を備えたハウジング115とを使用することによって、汎用の段付けされた収容孔に比べて調節領域121を増大させることができる。調節ねじ及びシールエレメントの代わりに、ただ1つの部材、つまりスリーブ101が設けられているだけである。一定の直径117に基づいて、ねじ山直径よりも大きなシール直径を備えたポンプに比べて、ポンプの所要空間を減じることができる。
図1