(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹部が設けられた層間絶縁層と、前記凹部の底面の少なくとも一部にその表面の少なくとも一部が露出している銅を含む配線と、を有する半導体基板の少なくとも前記凹部の底面及び側面に、請求項1に記載のシール組成物を付与するシール組成物付与工程と、
前記シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも前記凹部の側面及び底面を洗浄する洗浄工程と、
を有する、半導体装置の製造方法。
層間絶縁層と、銅を含む配線と、を有する半導体基板の少なくとも前記層間絶縁層及び前記配線の表面に、請求項2に記載のシール組成物を付与するシール組成物付与工程と、
前記シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも前記層間絶縁層及び前記配線の表面を洗浄する洗浄工程と、
を有する、半導体装置の製造方法。
前記多価カルボン酸モノマーは、芳香環を二つ有すること、及び分子量が342以上であることの少なくとも一方を満たす、請求項5又は請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
前記シール組成物は、ナトリウム及びカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10質量ppb以下である、請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
前記シール組成物付与工程後、前記洗浄工程の前に、前記半導体基板を温度70℃〜125℃で加熱する加熱工程を有する、請求項5〜請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態(第1実施形態、第2実施形態)について、
図1〜
図6を用いて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。図面(
図1〜
図6)では、本発明において必須ではない構成(例えばエッチングストッパー層等)については図示を省略している。また、以下では、同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略することがある。
【0022】
≪第1実施形態≫
<半導体装置の製造方法>
第1実施形態に係る半導体装置の製造方法は、凹部が設けられた層間絶縁層と、凹部の底面の少なくとも一部にその表面の少なくとも一部が露出している銅を含む配線と、を有する半導体基板の少なくとも凹部の底面及び側面に、シール組成物を付与するシール組成物付与工程と、シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも凹部の側面及び底面を洗浄する洗浄工程と、を有し、シール組成物が、カチオン性官能基を有し、重量平均分子量が2000〜1000000であるポリマー(A)と、ベンゾトリアゾール化合物と、を含み、ポリマー(A)の含有量が、シール組成物100質量部に対して0.05質量部〜0.20質量部であり、シール組成物中におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量が、3質量ppm〜200質量ppmであり、シール組成物のpHが3.0〜6.5である。
上記の半導体装置の製造方法によれば、銅などの配線材料の減少を抑制して電気伝導性を維持することが可能な半導体装置を製造することができる。
【0023】
つまり、第1実施形態の半導体装置の製造方法では、上述したポリマー(A)及びベンゾトリアゾール化合物を組み合わせ、かつ、それぞれを所定の濃度に調整したシール組成物を、半導体基板の少なくとも凹部の底面及び側面に付与する。このとき、シール組成物による凹部の側面のシール性を維持しつつ、凹部の底面及び配線上にシール組成物のポリマー(A)が残存し難いという効果が得られる。さらに、銅などの配線材料が溶出してしまうことが抑制され、配線材料の減少が抑制されるため、配線の電気伝導性が損なわれずに維持され、特に、微細化された半導体装置の製造において有用である。
より詳細には、シール組成物のpHが3.0以上であることにより、シール組成物のポリマー(A)がより層間絶縁層と吸着しやすくなることで、凹部の側面のシール性を維持することができ、シール組成物のpHが6.5以下であることにより、銅を含む配線にポリマー(A)が付着し難く、配線上にポリマー(A)が残存し難くなる。さらに、シール組成物におけるポリマー(A)の含有量は、0.05質量部以上であることにより、シール組成物のシール性を好適に維持することができ、シール組成物におけるポリマー(A)の含有量が0.20質量部以下であることにより、凹部の底面及び配線表面上に付着するシール組成物の量を低減することができ、凹部の底面及び配線表面のシール組成物(シール層)の除去性が向上する。
また、シール組成物中におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量が、3質量ppm以上であることにより、銅などの配線材料が溶出することを抑制でき、200質量ppm以下であることにより、シール組成物のシール性の低下を抑制することができる。
【0024】
図1は、シール組成物付与工程前の半導体基板の断面を模式的に示す概略断面図である。
図1に示すように、半導体基板10上に、第1層間絶縁層14と、第1層間絶縁層14よりも下層側(半導体基板10に近い側)に配された第2層間絶縁層12と、第2層間絶縁層12に埋め込まれた配線20と、が設けられている。配線20は少なくとも銅を含んでいる。
第1層間絶縁層14には、ドライエッチング等のエッチングにより予め凹部16が設けられており、凹部16の底面の少なくとも一部には、配線20が露出している。即ち、凹部16の底面の少なくとも一部は、配線20の露出面20aによって構成されている。
【0025】
但し、シール組成物付与工程前の半導体基板は、この一例に限定されることはない。
例えば、凹部16の側面の少なくとも一部には、バリア層等が設けられていてもよい。
また、第1層間絶縁層14と第2層間絶縁層12との間には、エッチングストッパー層等の他の層が存在していてもよい。また、第1層間絶縁層14と第2層間絶縁層12とが一体となって一つの層間絶縁層を構成していてもよい。
また、
図1に示す凹部16の断面形状は、2種の深さを持つ(階段状の)断面形状となっているが、第一の発明における凹部の断面形状はこの一例に限定されず、1種のみの深さを持つ(即ち、深さが一定の)断面形状であってもよいし、3種以上の深さを持つ断面形状であってもよい。また、層間絶縁層には、前記凹部16に加え、前記凹部16とは最深部の深さが異なる別の凹部が設けられていてもよい。
また、半導体基板10と配線20及び第2層間絶縁層12との間には、必要に応じ、トランジスタ等の半導体回路等が設けられていてもよい。
【0026】
[シール組成物付与工程]
シール組成物付与工程は、凹部16が設けられた層間絶縁層(第1層間絶縁層14、第2層間絶縁層12)と、凹部16の底面の少なくとも一部にその表面の少なくとも一部が露出している銅を含む配線20と、を有する半導体基板10の少なくとも凹部16の底面及び側面に、シール組成物を付与する工程である。
【0027】
図2は、シール組成物付与工程後の半導体基板の断面を模式的に示す概略断面図である。
図2に示すように、シール組成物付与工程では、
図1に示した半導体基板10の第1層間絶縁層14等が設けられた側にシール組成物が付与され、少なくとも凹部16の底面及び側面に、半導体用シール層としてシール層30が形成される。このとき、シール層30は、配線20の露出面20a上にも形成される。
以下、半導体基板、層間絶縁層、配線などの構成について説明する。
【0028】
(半導体基板)
半導体基板10としては、通常用いられる半導体基板であれば制限なく用いることができるが、具体的にはシリコンウエハや、シリコンウエハ上にトランジスタなどの回路を形成されたものを用いることができる。
この半導体基板10上には、少なくとも、凹部16が設けられた層間絶縁層と、凹部16の底面の少なくとも一部にその表面の少なくとも一部が露出している銅を含む配線20と、が設けられている。半導体基板10上には、底面に銅を含む配線が設けられていない凹部が形成されていてもよい。
【0029】
(層間絶縁層)
層間絶縁層としては、例えば、シリカを含む絶縁層を用いることができるが、その少なくとも一部は、多孔質層間絶縁層であることが好ましい。
かかる形態では、多孔質層間絶縁層の細孔をシール組成物によって被覆できるので、細孔への金属成分(銅等)やプラズマ成分の侵入により生じることがある、誘電率の上昇やリーク電流の発生をより抑制できる。
【0030】
さらに、前記多孔質層間絶縁層は、多孔質シリカを含み、その表面(好ましくは、凹部16の側面等、シール組成物が付与される面)に前記多孔質シリカに由来するシラノール残基を有することが好ましい。このシラノール残基と後述するポリマー(A)に含まれるカチオン性官能基とが相互作用することにより、ポリマー(A)による細孔被覆性がより向上する。
前記多孔質層間絶縁層における細孔半径(ポア半径)には特に限定はないが、シール層30によるシール性の効果をより効果的に奏する観点から、前記細孔半径は、0.5nm〜3.0nmが好ましく、1.0nm〜2.5nmがより好ましい。
【0031】
前記多孔質シリカとしては、半導体装置の層間絶縁層に通常用いられる多孔質シリカを特に制限なく用いることができる。例えば、国際公開第91/11390号に記載されたシリカゲルと界面活性剤等とを用いて、密封した耐熱性容器内で水熱合成する有機化合物と無機化合物との自己組織化を利用した均一なメソ細孔を持つ酸化物や、Nature誌、1996年、379巻(703頁)又はSupramolecular Science誌、1998年、5巻(247頁等)に記載されたアルコキシシラン類の縮合物と界面活性剤とから製造される多孔質シリカ等を挙げることができる。
前記多孔質シリカとしては、国際公開第2009/123104号や国際公開第2010/137711号に記載された多孔質シリカ(例えば、特定のシロキサン化合物を含む組成物を用いて形成された多孔質シリカ)を用いることも好ましい。
多孔質層間絶縁層は、例えば、上記の多孔質シリカの形成用組成物を半導体基板上に塗布した後、適宜、加熱処理等を行うことにより形成することができる。
【0032】
層間絶縁層に設けられた凹部16は、エッチング等によって層間絶縁層に形成された凹部(空隙)である。凹部16は、後の工程で、例えば配線材料を埋め込むために設けられるものである。凹部16の具体例としては、トレンチ、ビア等が挙げられる。
凹部16の幅は、例えば、10nm〜32nmとすることができる。
【0033】
なお、凹部16の底面とは、凹部16の壁面のうち、凹部16の最深部に位置する面(即ち、半導体基板10表面からの距離が最も近い面)であって、半導体基板10表面と略平行な面を指す。また、凹部16の側面とは、凹部16の壁面のうち、前記底面以外の面を指す。
【0034】
凹部16の底面及び側面にシール組成物を付与することで、後の工程で配線材料を凹部16に埋め込むときに、配線材料を構成する成分が前記多孔質層間絶縁層の孔部に拡散するのを効果的に抑制することができ、有用である。
【0035】
層間絶縁層に凹部16を形成する工程は、通常用いられる半導体装置の製造プロセス条件に従って行うことができる。例えば、層間絶縁層上に、ハードマスクとフォトレジストとを形成し、フォトレジストのパターン通りにエッチングすることで、所望のパターンを有する凹部16を形成することができる。また上述のように多孔質層間絶縁層が多孔質シリカを含む場合、凹部16の形成に伴って多孔質シリカの表面が削られるため、前記表面のシラノール基の密度が増える傾向にある。
【0036】
半導体基板10には、銅を含む配線20が設けられており、配線20の表面の少なくとも一部が、凹部16の底面の少なくとも一部に露出している。即ち、凹部16の底面の少なくとも一部は、銅を含む配線20の露出面20aとなっている。露出面20aにより、露出面20aを有する配線20と、後の工程で凹部16に埋め込まれる配線(第1配線40)と、が電気的に接続される。
【0037】
(配線)
銅を含む配線(例えば、後述の第1配線40、第2配線50)は、銅を主成分として含むことが好ましい。
ここで、主成分とは、含有比率(原子%)が最も高い成分を指す。
前記含有比率は50原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましく、90原子%以上がさらに好ましい。
前記配線には、必要に応じ、その他の元素(例えば、Cu、Al、Ni、Fe、Sn、Cr、Pt、Zn、Mg、Ta、Ti、Mn、Co、W、Ruなどの金属元素、N、Oなどの非金属元素)が含まれていてもよい。
【0038】
凹部16の底面の少なくとも一部にその表面の少なくとも一部が露出している銅を含む配線(例えば、後述の第2配線50)も、後の工程で凹部16に埋め込まれる配線(例えば、後述の第1配線40)も、公知のプロセス条件に従って形成することができる。例えば、シリコンウエハ上に直接、又は、凹部16が形成された層間絶縁層の上に、メタルCVD法、スパッタリング法又は電解メッキ法により銅配線を形成し、ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)により膜を平滑化する。また、必要であれば、その膜の表面にキャップ膜を形成し、次いで、ハードマスクを形成し、層間絶縁層の形成及び配線形成工程を繰り返すことで多層化することができる。
【0039】
上述した半導体基板(半導体装置)の構成については、例えば、国際公開第2009/153834号(特に、段落0040〜0041、
図2E)に記載の半導体装置の構成を参照することもできる。
【0040】
<シール組成物>
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法にて用いるシール組成物について説明する。
第1実施形態にて用いられるシール組成物は、半導体基板10の少なくとも凹部16の底面及び側面に付与することで、少なくとも凹部16の底面及び側面に、半導体用シール層としてシール層30を形成するためのものである。
シール組成物は、カチオン性官能基を有し、重量平均分子量が2000〜1000000であるポリマー(A)と、ベンゾトリアゾール化合物と、を含み、ポリマー(A)の含有量は、シール組成物100質量部に対して0.05質量部〜0.20質量部であり、シール組成物中におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量は、3質量ppm〜200質量ppmであり、シール組成物のpHが3.0〜6.5である。
【0041】
(ポリマー(A))
ポリマー(A)は、カチオン性官能基を有し、重量平均分子量が2000〜1000000である。また、ポリマー(A)は、カチオン性官能基を少なくとも1種有していればよく、必要に応じて、アニオン性官能基やノニオン性官能基をさらに有していてもよい。
カチオン性官能基は、正電荷を帯びることができる官能基であれば特に限定されない。カチオン性官能基としては、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基等を挙げられる。中でも金属成分の拡散抑制の観点から、1級アミノ基及び2級アミノ基から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0042】
ノニオン性官能基は、水素結合受容基であってもよく、水素結合供与基であってもよい。ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、エーテル基等が挙げられる。
アニオン性官能基は、負電荷を帯びることができる官能基であれば特に限定されない。アニオン性官能基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基等が挙げられる。
【0043】
ポリマー(A)は、カチオン性官能基を有する繰り返し単位構造を有するものであってもよく、また特定の繰り返し単位構造を持たず、ポリマー(A)を構成するモノマーが分岐的に重合して形成されるランダムな構造を有するものであってもよい。金属成分の拡散抑制の観点から、ポリマー(A)は特定の繰り返し単位構造を持たず、ポリマー(A)を構成するモノマーが分岐的に重合して形成されるランダムな構造を有するものであることが好ましい。
【0044】
ポリマー(A)は、1分子中にカチオン性官能基を有することで、金属成分の拡散を抑制することができる。また、金属成分の拡散抑制の観点から、カチオン密度が高いポリマーであることが好ましい。具体的には、カチオン性官能基当量が、27〜430であることが好ましく、43〜430であることがより好ましく、200〜400であることがさらに好ましい。
さらに、多孔質の層間絶縁層の表面を公知の方法、例えば、国際公開第04/026765号、国際公開第06/025501号などに記載の方法で疎水化処理した場合は、前記表面の極性基の密度が減少するので、200〜400であることもまた好ましい。
ここで、カチオン性官能基当量とは、カチオン性官能基当たりの重量平均分子量を意味し、ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)を、1分子に相当するポリマー(A)が含むカチオン性官能基数(n)で除して得られる値(Mw/n)である。このカチオン性官能基当量が大きいほどカチオン性官能基の密度が低く、一方、カチオン性官能基当量が小さいほどカチオン性官能基の密度が高い。
【0045】
ポリマー(A)が、カチオン性官能基を有する繰り返し単位構造(以下、「特定単位構造」ともいう)を有するものである場合、カチオン性官能基は、特定単位構造において、主鎖の少なくとも一部として含まれていても、側鎖の少なくとも一部として含まれていてもよく、さらに、主鎖の少なくとも一部及び側鎖の少なくとも一部として含まれていてもよい。
さらに、前記特定単位構造がカチオン性官能基を2以上含む場合、2以上のカチオン性官能基は同一であっても異なっていてもよい。
また前記カチオン性官能基は、多孔質層間絶縁層の表面に存在するカチオン性官能基の吸着点(例えば、シラノール残基)間の平均距離に対する、特定単位構造の主鎖長の比(以下、「カチオン性官能基間の相対距離」ともいう)が、0.08〜1.2となるように含まれていることが好ましく、0.08〜0.6となるように含まれていることがより好ましい。かかる態様であることでポリマー(A)が多孔質層間絶縁層の表面に、より効率的に多点吸着しやすくなる。
【0046】
前記特定単位構造は、層間絶縁層への吸着性の観点から、分子量が30〜500であることが好ましく、40〜200であることがより好ましい。尚、特定単位構造の分子量とは、特定単位構造を構成するモノマーの分子量を意味する。
特定単位構造は、層間絶縁層への吸着性の観点から、カチオン性官能基間の相対距離が0.08〜1.2であって、分子量が30〜500であることが好ましく、カチオン性官能基間の相対距離が0.08〜0.6であって、分子量が40〜200であることがより好ましい。
【0047】
カチオン性官能基を含む特定単位構造として、具体的には、エチレンイミンに由来する単位構造、アリルアミンに由来する単位構造、ジアリルジメチルアンモニウム塩に由来する単位構造、ビニルピリジンに由来する単位構造、リジンに由来する単位構造、メチルビニルピリジンに由来する単位構造、p−ビニルピリジンに由来する単位構造等を挙げることができる。中でも、層間絶縁層への吸着性の観点から、エチレンイミンに由来する単位構造及びアリルアミンに由来する単位構造の少なくとも一方であることが好ましい。
【0048】
また、ポリマー(A)は、ノニオン性官能基を含む単位構造及びアニオン性官能基を含む単位構造の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。
前記ノニオン性官能基を含む単位構造として、具体的には、ビニルアルコールに由来する単位構造、アルキレンオキシドに由来する単位構造、ビニルピロリドンに由来する単位構造等を挙げることができる。
【0049】
さらに、アニオン性官能基を含む単位構造として、具体的には、スチレンスルホン酸に由来する単位構造、ビニル硫酸に由来する単位構造、アクリル酸に由来する単位構造、メタクリル酸に由来する単位構造、マレイン酸に由来する単位構造、フマル酸に由来する単位構造等を挙げることができる。
【0050】
ポリマー(A)が特定単位構造を2種以上含む場合、それぞれの特定単位構造は、含有する極性基の種類又は数、分子量等のいずれかが異なっていればよい。また前記2種以上の特定単位構造は、ブロックコポリマーとして含まれていても、ランダムコポリマーとして含まれていてもよい。
【0051】
また、ポリマー(A)は前記特定単位構造以外の繰返し単位構造(以下、「第2単位構造」ともいう)の少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。ポリマー(A)が第2単位構造を含む場合、特定単位構造と第2単位構造とは、ブロックコポリマーとして含まれていても、ランダムコポリマーとして含まれていてもよい。
前記第2単位構造としては、前記特定単位構造を構成するモノマーと重合可能なモノマーに由来する単位構造であれば特に制限はない。例えば、オレフィンに由来する単位構造等を挙げることができる。
【0052】
また、ポリマー(A)が、特定の繰り返し単位構造を持たず、ポリマー(A)を構成するモノマーが分岐的に重合して形成されるランダムな構造を有するものである場合、前記カチオン性官能基は、主鎖の少なくとも一部として含まれていても、側鎖の少なくとも一部として含まれていてもよく、さらに、主鎖の少なくとも一部及び側鎖の少なくとも一部として含まれていてもよい。
かかるポリマー(A)を構成し得るモノマーとしては、例えば、エチレンイミン及びその誘導体を挙げることができる。
【0053】
カチオン性官能基を含むポリマー(A)として具体的には、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン(PAA)、ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジン、ポリメチルピリジルビニル(PMPyV)、プロトン化ポリ(p−ピリジルビニレン)(R−PHPyV)、及びこれらの誘導体を挙げることができる。中でも、ポリエチレンイミン(PEI)又はその誘導体、ポリアリルアミン(PAA)などが好ましく、より好ましくはポリエチレンイミン(PEI)又はその誘導体である。
【0054】
ポリエチレンイミン(PEI)は、一般にはエチレンイミンを通常用いられる方法で重合することにより製造することができる。重合触媒、重合条件なども、エチレンイミンの重合に一般的に用いられるものから適宜選択することができる。具体的には例えば、有効量の酸触媒、例えば塩酸の存在下に0℃〜200℃で反応させることができる。さらにポリエチレンイミンをベースにしてエチレンイミンを付加重合させてもよい。またポリエチレンイミンは、エチレンイミンの単独重合体であっても、エチレンイミンと共重合可能な化合物、例えばアミン類とエチレンイミンとの共重合体であってもよい。このようなポリエチレンイミンの製造方法については、例えば、特公昭43−8828号公報、特公昭49−33120号公報等を参照することができる。
またポリエチレンイミンは、モノエタノールアミンから得られる粗エチレンイミンを用いて得られたものであってもよい。具体的には例えば特開2001−2123958号公報等を参照することができる。
【0055】
上記のようにして製造されるポリエチレンイミンは、エチレンイミンが開環して直鎖状に結合した部分構造のみならず、分岐状に結合した部分構造、直鎖状の部分構造同士が架橋連結された部分構造等を有する複雑な骨格を有している。かかる構造のカチオン性官能基を有するポリマー(A)を用いることで、ポリマー(A)がより効率的に多点吸着される。さらにポリマー間の相互作用により、より効果的にシール層が形成される。
【0056】
また、ポリエチレンイミン誘導体であることも好ましい。ポリエチレンイミン誘導体としては、上記ポリエチレンイミンを用いて製造可能な化合物であれば特に制限はない。具体的には、ポリエチレンイミンにアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)やアリール基を導入したポリエチレンイミン誘導体、ポリエチレンイミンに水酸基等の架橋性基を導入して得られるポリエチレンイミン誘導体等を挙げることができる。
これらのポリエチレンイミン誘導体は、ポリエチレンイミンを用いて通常行われる方法により製造することができる。具体的には例えば、特開平6―016809号公報等に記載の方法に準拠して製造することができる。
【0057】
また、前記ポリエチレンイミン及びその誘導体は、市販のものであってもよい。例えば、(株)日本触媒、BASF社等から市販されているポリエチレンイミン及びその誘導体から、適宜選択して用いることもできる。
【0058】
ポリマー(A)の重量平均分子量は2000〜1000000であるが、2000〜600000であることが好ましく、2000〜300000であることがより好ましく、2000〜100000であることがさらに好ましく、10000〜80000であることがさらに好ましく、20000〜60000であることが特に好ましい。ポリマー(A)の重量平均分子量が2000〜1000000であることにより、層間絶縁層の凹部16に対する優れた被覆性(シール性)が得られ、ポリマー層(シール層)を形成したときの誘電率の低下が抑制される。
例えば、ポリマー(A)の重量平均分子量が1000000よりも大きいと、ポリマー分子の大きさが凹部16よりも大きくなり、ポリマー(A)が凹部16に入り込めず、凹部16に対する被覆性が低下する場合がある。
ポリマー(A)の重量平均分子量が2000未満であると、ポリマー(A)の分子が層間絶縁層に多点で吸着しない場合がある。また、層間絶縁層の細孔直径よりもポリマー分子の大きさが小さくなり、樹脂分子が層間絶縁層の細孔に入り込んで層間絶縁層の誘電率が上昇する場合がある。
なお、重量平均分子量及び分子量分布は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定された、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量及び分子量分布を指す。
具体的には、重量平均分子量及び分子量分布は、展開溶媒として酢酸濃度0.5mol/L、硝酸ナトリウム濃度0.1mol/Lの水溶液を用い、分析装置Shodex GPC−101及びカラムAsahipak GF−7M HQを用いて測定し、ポリエチレングリコールを標準品として算出される。
【0059】
また、ポリマー(A)は、水溶媒中における臨界ミセル濃度が1質量%以上であるか、実質的にミセル構造を形成しないポリマーであることもまた好ましい。ここで実質的にミセル構造を形成しないとは、常温の水溶媒中等の通常の条件下ではミセルを形成しない、すなわち臨界ミセル濃度が測定できないことをいう。かかるポリマーであることにより、厚さが分子レベルの薄いポリマー層(例えば、5nm以下)を形成することができ、層間絶縁層の誘電率の上昇を効果的に抑制することができる。さらに層間絶縁層と配線材料との密着性がより効果的に向上する。
【0060】
さらに、ポリマー(A)は、重量平均分子量が2000〜600000であって、カチオン性官能基当量が43〜430のポリエチレンイミンであることが好ましく、重量平均分子量が10000〜80000であって、カチオン性官能基当量が200〜400のポリエチレンイミンであることがより好ましい。かかる態様であることにより、層間絶縁層への金属成分の拡散がより効果的に抑制され、層間絶縁層と配線材料との密着性がより向上する。
【0061】
シール組成物におけるポリマー(A)の含有量は、シール組成物100質量部に対して、0.05質量部〜0.20質量部であり、0.08質量部〜0.19質量部であることが好ましく、0.11質量部〜0.18質量部であることがより好ましい。また前記シール組成物を用いてポリマー層を形成する面の面積及び細孔密度に基づいて、前記シール組成物におけるポリマー(A)の含有量を調整することもできる。シール組成物におけるポリマー(A)の含有量が0.05質量部以上であることにより、シール組成物のシール性を好適に維持することができ、シール組成物におけるポリマー(A)の含有量が0.20質量部以下であることにより、凹部底面及び配線表面上に付着するシール組成物の量を低減することができ、凹部底面及び配線表面上のシール組成物の除去性が向上する。
【0062】
(ベンゾトリアゾール化合物)
シール組成物は、ベンゾトリアゾール化合物を含むことにより、銅などを含む配線の表面に付与された際に、その表面に疎水基が形成される。疎水基が形成されることにより、配線表面へのポリマー(A)の付着がより効果的に阻害され、配線表面にシール組成物中のポリマー(A)が付着し難くなると考えられる。
ここで、ベンゾトリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物である。ベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には、ベンゾトリアゾール(BTA:1,2,3−ベンゾトリアゾール)、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール(DBTA)、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール(DCEBTA)、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(HEABTA)、1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール(HMBTA)、5−メチルベンゾトリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、カルボキシベンゾトリアゾール、4,5−ジメチルベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール又はこれらの誘導体などが挙げられる。なお、シール組成物に含まれるベンゾトリアゾール化合物としては、上に例示された1種の化合物であってもよく、2種以上の化合物であってもよい。
【0063】
さらに、シール組成物中におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量は、3質量ppm〜200質量ppmであり、3質量ppm〜100質量ppmであることが好ましく、3質量ppm〜30質量ppmであることがより好ましい。ベンゾトリアゾール化合物の含有量が、3質量ppm以上であることにより、銅などの配線材料が溶出することを抑制でき、200質量ppm以下であることにより、シール組成物のシール性の低下を抑制することができる。
【0064】
(酸)
第1実施形態のシール組成物は、酸を少なくとも1種を含有することが好ましい。
この形態は、第1実施形態のシール組成物のpHを酸性よりに調整する場合に好適である。シール組成物のpHの好ましい範囲については後述のとおりである。
酸としては特に制限はなく、例えば、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物、オキシジカルボン酸化合物が挙げられる。
モノカルボン酸化合物としては、脂肪族モノカルボン酸化合物(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸等)、芳香族モノカルボン酸化合物(例えば、安息香酸、ピコリン酸、サルチル酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸等)が挙げられる。
上記のうち、配線表面へのポリマー(A)の残存し難さと層間絶縁層へのポリマー(A)の残存し易さとをより効果的に両立させる観点から、モノカルボン酸化合物が好ましく、脂肪族モノカルボン酸化合物がより好ましく、ギ酸、酢酸が特に好ましい。
【0065】
上記モノカルボン酸化合物としては、水酸基及びアミノ基を有さず、かつファンデルワールス体積が40cm
3/mol以上であるモノカルボン酸化合物(以下、「特定モノカルボン酸化合物」ともいう)も好ましい。
シール組成物が特定モノカルボン酸化合物を含有することにより、配線の表面にポリマー(A)を含有するシール組成物を付与するシール組成物付与工程において、配線の表面にシール組成物中のポリマー(A)が付着し難くなるという利点を有する。この理由は明らかではないが、以下のように推測される。ファンデルワールス体積が40cm
3/mol以上である特定モノカルボン酸化合物は、嵩高い疎水基と一個のカルボキシル基とから構成されている。この特定モノカルボン酸化合物及びポリマー(A)を含有するシール組成物が銅などを含む配線の表面に付与されると、特定モノカルボン酸化合物のカルボキシル基と配線表面の銅とが反応し、配線の表面が嵩高い疎水基で被覆され、その結果、配線の表面が疎水化されると考えられる。ここで、配線の表面を被覆する疎水基が嵩高いことにより、配線の表面がより強く疎水化される(即ち、表面エネルギーがより低くなる)と考えられる。更に、特定モノカルボン酸が水酸基及びアミノ基を有しないことにより、配線の表面がより疎水的に保たれると考えられる。これらの理由により、配線の表面へのポリマー(A)の付着がより効果的に阻害され、配線の表面にシール組成物中のポリマー(A)が付着し難くなると考えられる。
シール組成物が特定モノカルボン酸化合物を含有する場合について、例えば、
図1を用いて説明すると、この場合、シール組成物が露出面20aに付与される工程において、露出面20aにポリマー層が形成され難くなるという利点を有する。
従って、例えば、露出面20a上のポリマー層の除去処理を省略することもできる。例えば、ポリマー層の除去処理を省略した場合でも、各絶縁層の露出面にポリマー層が形成され、かつ、露出面20aはポリマー層で被覆されていない状態とすることができる。
【0066】
上記特定モノカルボン酸化合物のファンデルワールス体積の数値は、"CHEMICAL PROPERTIES handbook"(YAWS編、McGrawHill発行)に記載の値を用いる。
上記特定モノカルボン酸化合物のファンデルワールス体積は、40cm
3/mol以上85cm
3/mol以下であることがより好ましい。
【0067】
特定モノカルボン酸化合物(水酸基及びアミノ基を有さず、かつファンデルワールス体積が40cm
3/mol以上であるモノカルボン酸化合物)として、具体的には、プロピオン酸、ピコリン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、アクリル酸、ピコリン酸などが好ましい。特に、プロピオン酸、ピコリン酸が好ましい。
【0068】
また、シール組成物には、ベンゾトリアゾール化合物が含まれているため、上記特定モノカルボン酸化合物ではなく、蟻酸や酢酸を用いた場合でも、シール組成物付与工程において、配線の表面にポリマー(A)を付着し難くさせることができる。
【0069】
前記シール組成物は、ナトリウム及びカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10ppb以下である。10ppb以下とは、ナトリウム及びカリウムを積極的には含まないことをいう。ナトリウム及びカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10ppb以下であるため、リーク電流の発生を抑制することができる。
【0070】
前記シール組成物は、ポリマー(A)に加えて必要に応じて溶媒を含んでもよく、少なくともシール組成物付与工程においては、溶媒が含まれる。前記溶媒としては、ポリマー(A)が均一に溶解し、ミセルを形成しにくい溶媒であれば特に限定されない。例えば、水(好ましくは、超純水)、水溶性有機溶剤(例えば、アルコール類等)等を挙げることができる。ミセル形成性の観点から、水、又は水と水溶性有機溶剤の混合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0071】
また、前記溶媒の沸点は特に制限されないが、210℃以下であることが好ましく、160℃以下がさらに好ましい。溶媒の沸点が前記範囲であることで、例えば、シール組成物付与工程の後、洗浄工程や乾燥工程を設けた場合、層間絶縁層の絶縁性を大きく損なうことなく、また前記シール組成物を層間絶縁層から剥離させることがない低い温度で、前記溶媒を除去し、半導体用シール層を形成することができる。
【0072】
さらに、前記シール組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてセシウムイオン等の陽イオンをさらに含んでいてもよい。セシウム等の陽イオンを含むことで、シール組成物中の樹脂がより均一に層間絶縁層の表面に拡がりやすくなる。
【0073】
さらに、前記シール組成物は、層間絶縁層を腐食や溶解させる化合物(フッ素化合物など)を添加しないことが好ましい。具体的には、例えば、層間絶縁層の主材がシリカなどの無機化合物である場合、フッ素化合物等がシール組成物中に含まれると、層間絶縁層が溶解して絶縁性が損なわれ、比誘電率が増加する場合がある。
【0074】
前記シール組成物は、210℃以下、好ましくは160℃以下の沸点を有する化合物か、250℃まで熱処理しても分解性を有さない化合物のみを含むことが好ましい。
なお、前記「250℃まで熱処理しても分解性を有さない化合物」とは、25℃で測定した質量に対する、250℃、窒素下で1時間保持した後の質量の変化が50%未満の化合物のことをいう。
【0075】
前記シール組成物のpHは、3.0〜6.5であり、3.5〜6.0であることが好ましい。ポリマー(A)が、極性基としてカチオン性官能基を有しており、前記シール組成物のpHは、前記カチオン性官能基がカチオンの状態であるpHの範囲内にある。そのため、層間絶縁層とポリマー(A)との静電相互作用により、ポリマー(A)が層間絶縁層の表面に、より効率的に吸着する。また、シール組成物のpHが上記範囲にあることにより、銅などを含む配線にポリマー(A)がより付着し難くなり、配線の表面にポリマー(A)がより残存し難くなる。
なお、前記カチオン性官能基がカチオンの状態であるpHの範囲とは、シール組成物のpHが、カチオン性官能基を含む樹脂のpKa以下であることをいう。例えば、カチオン性官能基を含む樹脂がポリアリルアミンである場合、pKaは8〜9であり、ポリエチレンイミンである場合、pKaは7〜11である。
pH(25℃)は通常用いられるpH測定装置を用いて測定される。
【0076】
[前処理工程]
銅などを含む配線の表面のうち少なくともシール組成物が付与される面には、シール組成物付与工程の前に、前処理を施す前処理工程を設けてもよい。
上記前処理は、ベンゾトリアゾール化合物、フェナントロリン、ビピリジン、トリピリジン、アセチルアセトン、トリアミノプロパン、8−キノリロール等の配線の表面に疎水基を形成するキレート剤、又は、飽和脂肪族モノカルボン酸(プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸等)、不飽和脂肪族モノカルボン酸(アクリル酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸等)、芳香族モノカルボン酸(安息香酸、サリチル酸等)、フタル酸、ピコリン酸等の配線の表面に疎水基を形成する酸を用いて行うことが好ましい。特に、上記前処理は、ベンゾトリアゾール化合物を用いて行うことが好ましい。
上記前処理は、液相法、気相法のいずれの方法で行ってもよく、通常行われる方法が用いられる。
上記前処理によれば、配線の表面のみを疎水性にすることができ、これにより、配線の表面とシール組成物との相互作用がより低減され、ひいては、配線の表面への組成物の付着がより抑制される。その結果、層間絶縁層にポリマー(A)を残存させる際の選択性をより向上させることができる。
【0077】
[洗浄工程]
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、前記シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも前記凹部の側面及び底面を洗浄する洗浄工程を有する。
この洗浄工程を有することにより、配線の露出面上のシール層の除去性が更に向上する。
【0078】
前記リンス液は、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有する液体である。リンス液が230ミリモル/リットル以下の多価カルボン酸モノマーを含有することにより、配線に含まれる銅及び層間絶縁層の溶解をより低減できる。リンス液が0.3ミリモル/リットル以上の多価カルボン酸モノマーを含有することにより、後述するシール層のプラズマ耐性を向上させることができる。
リンス液における多価カルボン酸モノマーの含有量としては、0.5ミリモル/リットル〜200ミリモル/リットルであることが好ましく、0.6ミリモル/リットル〜100ミリモル/リットルであることがより好ましい。
【0079】
前記リンス液は、所定量の多価カルボン酸モノマーを含有していれば特に制限はないが、洗浄効率向上の観点から、極性が高い溶媒を含むことが好ましい。
前記シール組成物は、カチオン性官能基を有するポリマー(A)を含んでおり極性が高いため、極性の高い溶媒に溶けやすい。このため、極性が高い溶媒を含むリンス液を用いることで、配線の露出面上のシール層の除去性が更に向上する。
具体的には、前記リンス液は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの極性溶媒を含むことが好ましい。
また、このような極性溶媒は、層間絶縁層とシール組成物との相互作用を大きく損ねることはない。このため、かかる極性溶媒を含むリンス液によって洗浄を行なっても、層間絶縁層上のシール層(有効に機能しているシール層)は除去されにくい点で好ましい。
前記リンス液は、極性溶媒を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0080】
本工程におけるリンス液の温度は、15℃〜100℃が好ましく、30℃〜100℃がより好ましく、40℃〜100℃がさらに好ましく、50℃〜100℃が特に好ましい。
前記リンス液の温度が15℃以上(より好ましくは30℃以上)であると、配線の露出面上のシール層の除去性が更に向上する。
前記リンス液の温度が100℃以下であると、リンス液の蒸発をより抑制できる。
【0081】
また、本工程における洗浄は、リンス液に超音波を印加しながら行なってもよい。
【0082】
また、前記リンス液は、銅を含む配線材料の酸化を抑制するという観点から、還元剤や還元作用がある化合物を含むことも好ましい。還元剤や還元作用がある化合物として、例えばホルマリンが挙げられる。
【0083】
また、前記リンス液は、シール組成物のポリマー(A)中の炭素結合等の解裂を防止し、層間絶縁層の表面に設けられたシール層(有効に機能しているシール層)の剥離を抑制する観点から、酸化性化合物(例えば、過酸化水素、硝酸)の含有量が10質量%以下であることが好ましく、酸化性化合物を含まないことがさらに好ましい。
【0084】
また、前記リンス液は、イオン強度が0.003以上であることが好ましく、0.01以上であることが好ましい。
イオン強度が0.003以上であると、前記シール層(前記ポリマー層)をより溶解させ易い一方、層間絶縁層とシール層との相互作用を大きく損ねることがない点で好ましい。
また、イオン強度の上限については特に限定はなく、イオン性化合物が溶解できる濃度のイオン強度であればよい。
なお上記イオン強度は、下記式で表されるものである。
イオン強度=1/2×Σ(c×Z
2)
(cはリンス液に含まれるイオン性化合物のモル濃度、Zはリンス液に含まれるイオン性化合物のイオン原子価を表す)
【0085】
また、イオン強度を調整するために、後述する酸や、有機塩基(アンモニア、ピリジン、エチルアミンなど)などのイオン性化合物を必要に応じて添加することもできる。
【0086】
また、前記リンス液は、25℃におけるpHが7.0以下(好ましくは6.0以下)であるリンス液であることも好ましい。かかるリンス液を用いることで、配線の露出面上のシール層の除去性が更に向上する。更には、配線の露出面に形成された酸化銅を溶解させ、除去することができる。
また、この場合のリンス液のpHの下限には特に限定はないが、pHは4.0以上が好ましく、5.0以上がより好ましい。pHが4.0以上であれば、層間絶縁層の凹部側面のシール層を維持しやすく、その結果、層間絶縁層中への配線材料(銅など)の進入を防ぐシール性を維持することができる。さらにpHが5.0以上であれば、配線に含まれる銅の溶解をより低減できる。
前記リンス液のpHは、配線の露出面上のシール層の除去性と、層間絶縁層の表面に設けられたシール層の維持と、をより効果的に両立させる観点より、4.0〜7.0が好ましく、5.0〜6.0がより好ましい。
【0087】
また、半導体装置の製造工程においては、シール層が露出した状態でプラズマにより半導体装置がクリーニングされたり、プラズマCVD法などでシール層上に層を形成したりする場合がある。
このため、シール層にはプラズマ耐性が要求される場合がある。
シール層のプラズマ耐性を向上させるという観点から、前記リンス液は、少なくとも1種類の多価カルボン酸モノマーを含んでいる。前記多価カルボン酸モノマーとしては、モノマー中にカルボン酸基を複数有するものであれば特に限定はないが、層間絶縁層を汚染又は破壊しにくいもので、かつ、半導体基板上に残留しにくいものが好ましい。
【0088】
多価カルボン酸モノマーは、カルボキシル基を含んでいるため、例えば、シール層が、1級アミノ基及び2級アミノ基(イミノ基)の少なくとも一方を含むポリマー(例えばポリエチレンイミン)を含む場合には、カルボキシル基が、このポリマー中の1級アミノ基及び2級アミノ基(イミノ基)の少なくとも一方と反応して、アミド結合やイミド結合が形成される。
これにより、シール層のプラズマ耐性がより向上する。
多価カルボン酸モノマーにおいて、カルボキシル基の1分子内における数は、2つ以上がより好ましく、3つ以上が更に好ましく、4つ以上が特に好ましい。
この数の上限には特に制限はないが、この数は、例えば、6つ以下とすることができる。
【0089】
前記多価カルボン酸モノマーとしては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸;トリメリット酸、トリカルバリリル酸等のトリカルボン酸;リンゴ酸、酒石酸等のオキシジカルボン酸;クエン酸等のオキシトリカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノカルボン酸;を挙げることができる。これらの多価カルボン酸モノマーを含むことにより、シール層のプラズマ耐性を好適に向上させることができる。
多価カルボン酸モノマーとしては、更に好ましくは、ナフタレンテトラカルボン酸(例えば、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸)、ビフェニルテトラカルボン酸(例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸)、ベンゼンヘキサカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸(即ち、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸(3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸)、フェニレン二酢酸(例えば、メタフェニレン二酢酸、オルトフェニレン二酢酸)、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ポリアクリル酸、4,4−オキシジフタル酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸などの多価カルボン酸モノマーである。
ポリアクリル酸の重量平均分子量としては、1000〜800000が好ましく、1000〜600000がより好ましく、1000〜200000が更に好ましく、5000〜80000が更に好ましく、10000〜50000が更に好ましく、20000〜30000であることが特に好ましい。ポリアクリル酸の重量平均分子量は、シール層に含まれるポリマーの重量平均分子量と同様にして測定される。
【0090】
また、多価カルボン酸モノマーとしては、1分子内に、カルボキシル基を2つ以上有し、かつ、隣り合う2個の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が結合した構造、又は、3個並ぶ炭素原子のうちの両端の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が結合した構造を有する化合物であることも好ましい。
これにより、特に、シール層が1級アミノ基及び2級アミノ基(イミノ基)の少なくとも一方を含むポリマー(例えばポリエチレンイミン)を含む場合において、多価カルボン酸モノマー中のカルボキシル基と上記ポリマー中の1級アミノ基及び2級アミノ基(イミノ基)の少なくとも一方との反応により、イミド結合がより効果的に形成される。その結果、シール層のプラズマ耐性がより向上する。
ここで、隣り合う2個の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が結合した構造としては、例えば、クエン酸の構造や、ベンゼン環のオルト位にカルボキシル基が結合した構造、ナフタレン環の2位及び3位(又は6位及び7位)にカルボキシル基が結合した構造などが挙げられる。
また、3個並ぶ炭素原子のうちの両端の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が結合した構造としては、例えば、ナフタレン環の1位及び8位(又は4位及び5位)にカルボキシル基が結合した構造などが挙げられる
この場合の多価カルボン酸モノマーとしては、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、クエン酸、が特に好ましい。
【0091】
多価カルボン酸モノマーとしては、芳香環多価カルボン酸モノマーであることが好ましく、芳香環多価カルボン酸モノマーとしては、例えば、ナフタレンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、フェニレン二酢酸が特に好ましい。さらに、上記の多価カルボン酸モノマーとしては、一分子内にベンゼン環及びナフタレンのいずれか一方を一つ以上含有し、かつカルボキシル基を三つ以上含有し、かつ隣り合う二個の炭素原子のそれぞれにカルボキシル基が結合した構造を有する化合物がより好ましい。また、多価カルボン酸モノマーは、芳香環を二つ有すること、及び分子量が342以上であることの少なくとも一方を満たす化合物であることが特に好ましい。
特に好ましい多価カルボン酸モノマーとしては、ナフタレンテトラカルボン酸(例えば、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸)、ビフェニルテトラカルボン酸(例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸)、ベンゼンヘキサカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸(例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸)などが挙げられる。
【0092】
なお、上述の多価カルボン酸モノマーは、一部がエステル化されていても良い。
【0093】
上述したリンス液は、シール層にプラズマ耐性を付与する観点からは、凹部以外の部分に設けられたシール層や、銅を含む配線が露出していない半導体基板に設けられたシール層に対して使用することもできる。
【0094】
なお、前記プラズマとしては、例えば、水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガス等から生成されたプラズマが挙げられる。前記プラズマを発生させる条件には特に限定はないが、前記凹部の少なくとも側面に堆積している、シール機能への寄与が大きいポリマー層(シール層)を除去しすぎない程度の条件が好ましい。このような条件の例として、例えば、全圧20mTorr〜200mTorr、ガス流量20sccm〜100sccm、カソード電極直径5cm〜15cm、放電電力20W〜200W、処理時間(放電時間)10秒〜60秒、といった条件を例示できる。
【0095】
前記リンス液に含まれることがある、上述の溶媒、多価カルボン酸、還元剤、イオン性化合物などの量は、特に制限がなく、例えば、前記リンス液のpHとイオン強度が上述の好ましい範囲になるように適宜調整してもよい。
【0096】
また、前記リンス液は、例えば、上述の溶媒、多価カルボン酸、還元剤、イオン性化合物などを混合することで調製することができるが、半導体回路への汚染を防ぐために、クリーンルームなど清浄な環境下で作製するか、リンス液を作製後、精製やろ過などにより半導体回路への汚染成分を除去するのが好ましい。
【0097】
洗浄工程の後、後述する温度200℃〜425℃で加熱する工程(高温加熱工程)と組み合わせることで、前記リンス液により、配線上に形成された余分なシール層を、層間絶縁層をシールしている有効なシール層を維持しつつ、迅速に除去洗浄(リンス)することができる。さらには、上述のように、配線材料の酸化物を除去することもでき、それにより配線材料と低誘電率材料や配線材料同士の剥離を抑制することができる。
【0098】
また、本工程における洗浄は、非酸化性雰囲気下で行なうことも好ましい。洗浄を非酸化性雰囲気下で行うことにより、リンスする前に存在した配線表面の酸化銅がリンス液で除去された後、さらに配線表面の銅が酸化されて酸化銅となりこの酸化銅をリンス液がまた溶解(除去)する、という繰り返しにより、銅配線が過剰に除去されることを防ぐことができる。非酸化性雰囲気下とするには、例えば、還元雰囲気ガスを使用すれば良い。
【0099】
本工程における洗浄は、通常用いられる方法で行なうことができ、その方法には特に制限はない。
洗浄時間は特に限定はないが、例えば0.1分〜60分とすることができ、0.1分〜10分がさらに好ましい。
【0100】
[加熱工程]
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、シール組成物付与工程後、前記洗浄工程の前に温度70℃〜125℃で加熱する加熱工程(ソフトベーク工程)を有することが好ましい。また、前記温度は、半導体基板のシール層が形成された側の面の温度である。
加熱工程を有することにより、配線へのポリマー(A)の残存し難さと、層間絶縁層へのポリマー(A)の残存し易さと、をより効果的に両立させることができる。
具体的には、温度が70℃以上であることにより、層間絶縁層に付与されたポリマー(A)の残存性が好適に維持される。また、温度が125℃以下であることにより、配線にポリマー(A)がより残存し難くすることができる。
上記温度は、80℃〜120℃がより好ましく、85℃〜120℃がより好ましく、90℃〜115℃がさらに好ましく、90℃〜110℃が特に好ましい。
【0101】
本工程における加熱は通常の方法によって行うことができるが、例えばホットプレートを用いて行うことができる。
本工程における加熱を行う雰囲気には特に制限はなく、例えば、大気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なってもよい。
【0102】
加熱の時間については特に制限はないが、300秒以下が好ましく、200秒以下がより好ましく、120秒以下が更に好ましく、80秒以下が特に好ましい。
加熱の時間の下限には特に制限はないが、下限は、例えば10秒(好ましくは20秒、より好ましくは30秒)とすることができる。
【0103】
[高温加熱工程]
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、洗浄工程後に温度200℃〜425℃で加熱する高温加熱工程を有することが好ましい。
本工程により、銅を含む配線の露出面上に形成されたシール層が、前記露出面以外の部分(例えば、前記凹部の側面)に形成されたシール層よりも優先的に(好ましくは前記露出面以外の部分に形成されたシール層に対して選択的に)除去される。
ここで、温度は、半導体基板のシール層が形成された側の面の温度である。
【0104】
前記温度が200℃以上であると、配線の露出面上のシール層を好適に除去することができる。
また、前記温度が425℃以下であると、配線に含まれる銅のマイグレーションを抑制できる。
前記温度は、250℃〜400℃が好ましく、300℃〜400℃がより好ましい。
【0105】
また、高温加熱工程における加熱が行なわれる圧力(加熱時にシール層が曝される雰囲気の圧力)には特に制限はないが、絶対圧17Pa超大気圧以下が好ましい。
前記絶対圧が17Paを超えると、配線の露出面上のシール層を除去する際の除去速度がより向上する。
前記絶対圧が大気圧以下であると、配線の露出面上のシール層を除去する際の除去速度をより調整し易い。
前記絶対圧は、1000Pa以上大気圧以下がより好ましく、5000Pa以上大気圧以下が更に好ましく、10000Pa以上大気圧以下が特に好ましい。
【0106】
本工程における加熱は、炉やホットプレートを用いた通常の方法により行なうことができる。炉としては、例えば、アペックス社製のSPX−1120や、光洋サーモシステム(株)製のVF−1000LPを用いることができる。
また、本工程における加熱は、大気雰囲気下で行なってもよいが、配線材料である銅の酸化を抑制する観点等からは、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なうことがより好ましく、窒素ガス雰囲気下で行なうことが特に好ましい。
【0107】
高温加熱工程における加熱の時間については特に制限はないが、例えば1時間以下であり、30分間以下が好ましく、10分間以下がより好ましく、5分間以下が特に好ましい。加熱時間の下限には特に制限はないが、例えば0.1分間とすることができる。
加熱時間が1時間以下であると、シール層による層間絶縁層に対するシール性がより高く維持される。
【0108】
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、前述の加熱工程(ソフトベーク工程)、及びこの高温加熱工程(ハードベーク工程)を有する場合、工程順としては、シール組成物付与工程、加熱工程(ソフトベーク工程)、洗浄工程、高温加熱工程(ハードベーク工程)の順が好ましい。
【0109】
図3は、配線の露出面上に形成された半導体用シール層を除去したときの半導体基板の断面を模式的に示す概略断面図である。
図2に示したシール組成物付与工程後の半導体基板のシール層30が形成された側の面を、洗浄工程にてリンス液により洗浄することにより、配線20の露出面上のシール層30の除去性が向上し、さらに、高温加熱処理によってシール層30を除去することができる。
【0110】
ここで、露出面20a上の半導体用シール層は、全てが除去される必要はなく、後の工程で凹部16に埋め込まれる配線(例えば、後述の
図4中の第1配線40)と、配線20と、の接続抵抗を上昇させない程度に除去されればよい。
以上のように、凹部16の側面のシール層30を残しながら、配線20上のシール層の少なくとも一部を除去することができる。
これにより、凹部16の側面の少なくとも側面にシール層30を備えるとともに、配線20上へのシール層の形成が抑制された半導体装置100が製造される。
【0111】
[その他の工程]
第1実施形態の半導体装置の製造方法は、その他の工程として、必要に応じて、前述したプラズマ処理を行うプラズマ処理工程、配線形成工程、バリア層形成工程など、電子デバイス(例えば半導体装置)の製造において行われる工程をさらに含んでいてもよい。
【0112】
配線形成工程は、メタルCVD法、スパッタリング法、電解メッキ法等の公知のプロセスによって行うことができる。
半導体装置の製造方法が配線形成工程を有する場合、配線形成工程前にバリア層(銅バリア層)形成工程をさらに設けることができる。バリア層を形成することで層間絶縁層への金属成分やプラズマ成分の拡散をより効果的に抑制することができる。
前記バリア層形成工程は、通常用いられるプロセス条件に従って行うことができ、例えば気相成長法(CVD)により、チタン化合物(窒化チタン等)、タンタル化合物(窒化タンタル等)、ルテニウム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物(CoW等)、タングステン化合物等からなるバリア層を形成することができる。
【0113】
また、第1実施形態において、前記洗浄工程の後に、半導体装置上に残る前記リンス液をさらに洗浄する後リンス工程を含んでもよい。後リンス工程については、国際公開第2012/033172号の段落0093の記載を適宜参照することもできる。
【0114】
以上で説明した、第1実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体装置としての各種の電子デバイス(プリント配線基板、半導体装置、表示装置用基板等)の製造方法として特に好適である。
次に、第1実施形態の製造方法によって製造される半導体装置の一例について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法によって製造される、半導体装置200の断面を模式的に示す概略断面図である。
図4に示すように、半導体装置200は、半導体基板10上に、凹部が設けられた第1層間絶縁層14と、第1層間絶縁層14の下層側に配された第2層間絶縁層12と、からなる層間絶縁層を備えている。半導体装置200は、更に、第2層間絶縁層12に埋め込まれた銅を含む第2配線50と、前記凹部に埋め込まれた、銅を含む第1配線40と、を備えている。半導体装置200は、更に、少なくとも第1層間絶縁層14の凹部の側面と第1配線40との間に設けられたシール層30を備えている。
第1配線40と第2配線50とは電気的に接続されており、この接続部にはシール層30が存在していない。
【0115】
かかる半導体装置200は、前述の半導体装置100(
図3)の凹部16に第1配線40が埋め込まれた構成の半導体装置である。
半導体装置200における、半導体基板10、第1層間絶縁層14、第2層間絶縁層12、第2配線50、シール層30の構成は、それぞれ、半導体装置100における、半導体基板10、第1層間絶縁層14、第2層間絶縁層12、配線20、シール層30の構成と同一である。半導体装置200の変形例も、半導体装置100の変形例と同様である。
また、半導体装置200では、第1層間絶縁層14の凹部の側面と第1配線40との間以外の部分(即ち、第1層間絶縁層14上)にもシール層30が存在しているが、この第1層間絶縁層14上のシール層30は、存在していなくてもよい。例えば、この第1層間絶縁層14上のシール層30は、第1配線40を形成する際の平坦化処理(例えばCMP)により除去されていてもよい。
【0116】
≪第2実施形態≫
以下、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法及びシール組成物について説明する。なお、前述の第1実施形態と共通する事項については、その説明を省略する。
【0117】
<半導体装置の製造方法>
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法は、層間絶縁層と、銅を含む配線と、を有する半導体基板の少なくとも前記層間絶縁層及び前記配線の表面に、シール組成物を付与するシール組成物付与工程と、前記シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも前記層間絶縁層及び前記配線の表面を洗浄する洗浄工程と、を有し、重量平均分子量が2000〜1000000であるポリマー(A)と、ベンゾトリアゾール化合物と、を含み、シール組成物中におけるベンゾトリアゾール化合物の含有量が、3質量ppm〜200質量ppmであり、シール組成物のpHが3.0〜6.5である。
上記の半導体装置の製造方法によれば、銅などの配線材料の減少を抑制して電気伝導性を維持することが可能な半導体装置を製造することができる。
【0118】
つまり、第2実施形態の半導体装置の製造方法では、上述したポリマー(A)及びベンゾトリアゾール化合物を組み合わせ、かつ、それぞれを所定の濃度に調整したシール組成物を、層間絶縁層及び配線の表面に付与する。このとき、シール組成物による表面のシール性を維持しつつ、配線上にシール組成物のポリマー(A)が残存し難いという効果が得られる。さらに、銅などの配線材料が溶出してしまうことが抑制され、配線材料の減少が抑制されるため、配線の電気伝導性が損なわれずに維持され、特に、微細化された半導体装置の製造において有用である。
第2実施形態に係る半導体装置の製造方法にて用いるシール組成物におけるポリマー(A)の含有量は、第1実施形態にて用いるシール組成物と異なり、0.05質量部〜0.20質量部に限定されない。例えば、この実施形態で用いるシール組成物におけるポリマー(A)の含有量は、シール組成物100質量部に対して、0.05質量部〜0.70質量部であることが好ましく、0.11質量部〜0.50質量部であることがより好ましい。また前記シール組成物を用いてポリマー層を形成する面の面積及び細孔密度に基づいて、前記シール組成物におけるポリマー(A)の含有量を調整することもできる。シール組成物におけるポリマー(A)の含有量が0.05質量部以上であることにより、シール組成物のシール性を好適に維持することができ、シール組成物におけるポリマー(A)の含有量が0.70質量部以下であることにより、配線表面上に付着するシール組成物の量を低減することができ、配線表面上のシール組成物の除去性が向上する。また、第2実施形態では、第1実施形態と異なり、凹部の底面にシール組成物中のポリマー(A)が付着するポリマー溜りの問題が生じないため、シール組成物におけるポリマー(A)の含有量を、第1実施形態にて用いるシール組成物の含有量である0.20質量部よりも多くすることが可能である。シール組成物におけるポリマー(A)の含有量を0.20質量部超とすることにより、層間絶縁層の細孔半径がより大きい場合(例えば、0.5nm〜3.0nm)にもシール組成物のシール性をより好適に維持することができる。
【0119】
図5は、第2実施形態に係る半導体装置の製造方法を模式的に示す概略断面図である。まず、基板10上に形成された層間絶縁層22には、ドライエッチング等のエッチングにより配線を設けるためのトレンチ、ビア等が形成され、このトレンチ、ビア等に銅を含む配線材料が埋め込まれる。これにより、
図5(a)に示すような、層間絶縁層22と、配線60とを有する半導体基板10が得られる。
【0120】
[シール組成物付与工程]
シール組成物付与工程は、半導体基板10の少なくとも層間絶縁層22の表面及び配線60の表面に、シール組成物を付与する工程である。
【0121】
図5(b)に示すように、シール組成物付与工程では、半導体基板10の層間絶縁層22等が設けられた側にシール組成物が付与され、層間絶縁層22の表面及び配線60の表面に、半導体用シール層としてシール層31が形成される。
【0122】
[洗浄工程]
第2実施形態の半導体装置の製造方法は、前記シール組成物付与工程の後、多価カルボン酸モノマーを0.3ミリモル/リットル〜230ミリモル/リットル含有するリンス液で、少なくとも層間絶縁層の表面及び配線の表面を洗浄する洗浄工程を有する。
この洗浄工程を有することにより、配線の表面上のシール層の除去性がさらに向上する。
【0123】
ここで、第2実施形態の半導体装置の製造方法は、前述のシール組成物付与工程及び洗浄工程以外の工程を含んでいてもよく、例えば、前述の前処理工程、加熱工程、高温加熱工程、その他の工程などの各工程を含んでいてもよい。
【0124】
図5(c)及び
図6は、配線上の表面上に形成された半導体シール層を除去したときの半導体基板を模式的に示す概略断面図であり、また、第2実施形態にかかる半導体装置の製造方法によって製造される、半導体装置の断面を模式的に示す概略断面図である。
図5(b)に示したシール組成物付与工程後の半導体基板のシール層31が形成された側の面を、洗浄工程にてリンス液により洗浄することにより、配線60の表面上のシール層の除去性が向上し、さらに、高熱加熱処理によってシール層31を除去することができ、半導体装置300が得られる。
【0125】
図5(c)及び
図6に示すように、層間絶縁層22の表面にシール層31が形成されており、層間絶縁層22の細孔がシールされている。そのため、層間絶縁層22の表面上に絶縁層、キャップ膜などを積層した場合や、層間絶縁層22と配線60の表面上をプラズマでクリーニングする場合に、シール層31によって層間絶縁層22の表面が保護された状態となっている。
【0126】
また、必要であれば、層間絶縁層22の表面にキャップ膜を形成し、次いで、ハードマスクを形成し、絶縁層の形成及び配線形成工程を繰り返すことで多層化してもよい。例えば、
図5(d)、(e)に示すように、層間絶縁層22及び配線60上に絶縁層(層間絶縁層24)を形成した後、ドライエッチング等のエッチングにより配線を設けるためのトレンチ、ビア等を層間絶縁層22及び配線60上の絶縁層に形成し、さらに、このトレンチ、ビア等に銅を含む配線材料を埋め込んでもよい。これにより、
図5(f)に示すように、半導体基板10上に、層間絶縁層22及び配線60が設けられ、さらにそれらの上に、層間絶縁層24と、配線70とが積層された半導体装置400が得られる。
【実施例】
【0127】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
以下において、「水」としては、超純水(Millipore社製Milli−Q水、抵抗18MΩ・cm(25℃)以下)を使用した。
【0128】
〔実施例1〕
以下のようにしてポリエチレンイミン1を合成し、次いで、得られたポリエチレンイミン1を含むシール組成物を調製した。詳細を以下に説明する。
【0129】
<ポリエチレンイミン1の合成>
(変性ポリエチレンイミン1の合成)
下記反応スキーム1に従い、ポリエチレンイミンを出発物質とし、変性ポリエチレンイミン1を合成した。なお、下記反応スキーム1及び反応スキーム2におけるポリマー構造は模式的に表した構造であり、3級窒素原子及び2級窒素原子の配置や、後述するBoc化アミノエチル基により置換される2級窒素原子の割合については、合成条件により種々変化するものである。
【0130】
【化1】
【0131】
上記反応スキーム1の詳細な操作は以下の通りである。
MP−Biomedicals社製ポリエチレンイミン(50%水溶液)61.06gをイソプロパノール319mL中に溶解し、N−t−ブトキシカルボニル(本実施例において、t−ブトキシカルボニル基を「Boc」ともいう)アジリジン102g(710mmol)を加え、3時間加熱還流を行い、ポリエチレンイミンにBoc化アミノエチル基が導入された構造の変性ポリエチレンイミン1を得た。薄層クロマトグラフィー(TLC)で原料のN−Bocアジリジンがなくなったことを確認し、少量サンプリングして
1H−NMRで構造を確認した。
1H−NMRより、ポリエチレンイミンに対するBoc化アミノエチル基の導入率は95%と算出された。
〜変性ポリエチレンイミン1のNMR測定結果〜
1H−NMR(CD
3OD);δ3.3−3.0(br.s,2),2.8−2.5(
Br.s,6.2),1.45(s,9)
【0132】
(ポリエチレンイミン1の合成)
上記変性ポリエチレンイミン1を出発物質とし、下記反応スキーム2に従ってポリエチレンイミン1を合成した。
【0133】
【化2】
【0134】
上記反応スキーム2の詳細な操作は以下の通りである。
上記変性ポリエチレンイミン1のイソプロパノール溶液に12N塩酸124mLをゆっくり加えた。得られた溶液を、ガスの発生に注意しながら50℃で4時間加熱撹拌した。ガスの発生と共に、反応系内にガム状の反応物が生成した。ガスの発生が終了した後に冷却し、冷却後、このガム状の反応物から分離した溶媒を除き、メタノール184mLで3回洗浄した。洗浄後の反応物を水に溶解し、陰イオン交換高分子で塩素イオンを取り除き、ポリエチレンイミン1を58g含有する水溶液を得た。
〜ポリエチレンイミン1のNMR測定結果〜
1H−NMR(D
2O);δ2.8−2.4(br.m)
13C−NMR(D
2O);δ(積分比) 57.2(1.0),54.1(0.38
),52.2(2.26),51.6(0.27),48.5(0.07),46.7(
0.37),40.8(0.19),38.8(1.06).
【0135】
上記ポリエチレンイミン1について、重量平均分子量、分子量分布、カチオン性官能基(1級窒素原子、2級窒素原子、3級窒素原子、及び4級窒素原子)当量、1級窒素原子の量(mol%)、2級窒素原子の量(mol%)、3級窒素原子の量(mol%)、4級窒素原子の量(mol%)、分岐度(%)をそれぞれ測定した。
その結果、重量平均分子量は40575、分子量分布は17.47、カチオン性官能基当量は43、1級窒素原子の量は46mol%、2級窒素原子の量は11mol%、3級窒素原子の量は43mol%、4級窒素原子の量は0mol%、分岐度は80%であった。
【0136】
ここで、カチオン性官能基当量は、カチオン性官能基1つに対する分子量の値であり、ポリマー構造より算出することができる。
また、1級窒素原子の量(mol%)、2級窒素原子の量(mol%)、3級窒素原子の量(mol%)、4級窒素原子の量(mol%)、及び分岐度(%)は、ポリマーサンプル(ポリエチレンイミン1)を重水に溶解し、得られた溶液について、ブルカー製AVANCE500型核磁気共鳴装置でシングルパルス逆ゲート付デカップリング法により、80℃で
13C−NMRを測定した結果より、それぞれの炭素原子が何級のアミン(窒素原子)に結合しているかを解析し、その積分値を元に算出した。帰属については、European Polymer Journal, 1973, Vol. 9, pp. 559などに記載がある。
【0137】
重量平均分子量及び分子量分布は、分析装置Shodex GPC−101を使用しカラムAsahipak GF−7M HQを用い測定し、ポリエチレングリコールを標準品として算出した。また展開溶媒は酢酸濃度0.5mol/L、硝酸ナトリウム濃度0.1mol/Lの水溶液を用いた。ただし、Mark-Houwink-Sakurada式で知られているように、分岐度が大きくなるとGPCの検量線も変わることから、得られた重量平均分子量及び分子量分布はあくまでポリエチレングリコール換算の数値である。
【0138】
ここで、1級窒素原子の量(mol%)、2級窒素原子の量(mol%)、3級窒素原子の量(mol%)、及び4級窒素原子の量(mol%)は、それぞれ、下記式A〜Dで表される量である。また、分岐度は、下記式Eにより求めた。
1級窒素原子の量(mol%) = (1級窒素原子のmol数/(1級窒素原子のmol数+2級窒素原子のmol数+3級窒素原子のmol数+4級窒素原子のmol数))×100 ・・・ 式A
2級窒素原子の量(mol%) = (2級窒素原子のmol数/(1級窒素原子のmol数+2級窒素原子のmol数+3級窒素原子のmol数+4級窒素原子のmol数))×100 ・・・ 式B
3級窒素原子の量(mol%) = (3級窒素原子のmol数/(1級窒素原子のmol数+2級窒素原子のmol数+3級窒素原子のmol数+4級窒素原子のmol数))×100 ・・・ 式C
4級窒素原子の量(mol%) = (4級窒素原子のmol数/(1級窒素原子のmol数+2級窒素原子のmol数+3級窒素原子のmol数+4級窒素原子のmol数))×100 ・・・ 式D
分岐度(%) = ((3級窒素原子の量(mol%)+4級窒素原子の量(mol%))/(2級窒素原子の量(mol%)+3級窒素原子の量(mol%)+4級窒素原子の量(mol%))×100 ・・・ 式E
【0139】
<シール組成物の調製>
〔実施例1〕
上記で得られたポリエチレンイミン1(重量平均分子量40575、カチオン性官能基当量43)の水溶液に、水、酢酸及びベンゾトリアゾール(1,2,3−ベンゾトリアゾール)を加えて混合し、シール組成物1Aを得た。
シール組成物1Aでは、水、酢酸及びベンゾトリアゾールの添加量は、シール組成物中のポリエチレンイミン1の濃度が0.18質量%となり、かつ、シール組成物のpHが4.3となる量となり、かつ、ベンゾトリアゾールの濃度が10質量ppmとなる量とした。ここでいうpHは、25℃のシール組成物について測定された値である(以下、同様である)。ここで、シール組成物のpHはアズワン社製pHメーター(KR5E)をpH標準液で校正後、測定液にpHメーターを浸漬して値が自動的に安定したところでpH値を読み取った値とした。
【0140】
〔実施例2〜10〕
表1に記載の含有量及びpHに変更した以外は、シール組成物1Aと同様にしてシール組成物2A〜10A(それぞれ実施例2〜10とする)を得た。
【0141】
〔比較例1〜15〕
また、比較として、表1に記載の含有量及びpHに変更した以外は、シール組成物1Aと同様にしてシール組成物4B〜18B(それぞれ比較例1〜15とする)を得た。シール組成物4B、5Bは、ベンゾトリアゾールを含まない例である。シール組成物7B〜16Bは、ベンゾトリアゾールを含まないが、一般に防錆剤として用いられているシュウ酸、8−キノリノール、プロパルギルアミン、2,2’−ビピリジン、フェナントロリンを含む例である。シール組成物17Bは、ベンゾトリアゾールを200質量ppm超含む例である。また、シール組成物6Bは、ベンゾトリアゾールを10質量ppm未満含む例であり、シール組成物18Bは、ベンゾトリアゾールを10質量ppm未満含み、かつシール組成物のpHが6.5超となる例である。
【0142】
得られたシール組成物について、ナトリウムの含有量及びカリウムの含有量をそれぞれ、誘電結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)により測定したところ、いずれも検出限界以下(<1質量ppb)であった。
【0143】
<銅イオンの溶出量測定>
次に、銅膜にシール組成物を付与することにより、シール組成物への銅の溶出量を測定した。
まず、シリコン基板上にめっきにて銅膜を100nm成膜した基板の銅膜面をヘリウムプラズマ処理でクリーニング後、純水で洗浄した。これを、上記シール組成物1A 20ccに3分間浸漬したのち取り出した。浸漬後のシール組成物1A中の銅イオン含有量を誘電結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)で測定し、その値を銅イオンの溶出量とした。
シール組成物2A〜10A、4B〜18Bについても同様に、銅イオンの溶出量測定を行った。
【0144】
各シール組成物の組成、及び銅溶出量の結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
表1より、ベンゾトリアゾール濃度が高いほど銅溶出量が少なくなることがわかった。
また、ベンゾトリアゾールを含まない場合、又はベンゾトリアゾールをわずかに含む場合、銅溶出量が多いことがわかった。
この結果から、シール組成物中のベンゾトリアゾール濃度が3ppm以上の場合、銅溶出量が低減可能であることがわかった。ここで、銅溶出量が150ppb以下であれば、銅溶出量が低くなり、好ましい。
【0147】
〔比較例16〕
比較として、表2に記載の含有量及びpHに変更した以外は、シール組成物2Aと同様にしてシール組成物19Bを得た(ベンゾトリアゾールを含まない例である)。
【0148】
<シリコン(Si)上のポリマー層の厚さ評価>
(厚さ測定用試料の作製)
表面にシリカが存在しているシリコンウエハを準備し、このシリコンウエハを、スピンコーターの上にのせ、表2に示すシール組成物(実施例1、比較例1、4)を10秒間一定速度で1.0mL滴下し、13秒間保持した後、このシリコンウエハを2000rpmで1秒間回転させ、さらに600rpmで30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。
以上により、シリコンウエハ上に、シール層(ポリマー層)を形成し、シリコンウエハとポリマー層とが積層された構造の積層体(以下、「試料(Si/PEI)」ともいう)を得た。
【0149】
上記試料(Si/PEI)をホットプレート上に、シリコンウエハ面とホットプレートとが接触するように設置し、大気雰囲気下で、100℃のソフトベーク温度で60秒間ソフトベーク(加熱処理)した。
ここでいうソフトベーク温度は、シリコンウエハ表面の温度(成膜前シリコンウエハの成膜される面の温度)である。
【0150】
(ポリマー層の厚さ評価)
表面にシリカが存在するシリコンウエハ上のポリマー層の厚さ(nm)は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)のエリプソメーターを使用して常法により測定した。
結果を表2に示す。
【0151】
<パターンウエハのビア底面に露出している銅上のポリマー層の厚さ評価>
(厚さ測定用試料の作製)
シリコンウエハ上に100nmの銅膜がめっき法にて形成され、さらに銅膜上に100nmのSiO
2膜がCVD法にて形成されたシリコンウエハを準備し、SiO
2膜に銅膜が露出するまで110nm幅のビア貫通孔を加工し、パターンウエハを得た。
上記パターンウエハを、スピンコーターの上にのせ、パターン形成面上に、表2に示すシール組成物を10秒間一定速度で1.0mL滴下し、13秒間保持した後、このパターンウエハを2000rpmで1秒間回転させ、さらに600rpmで30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。
以上により、パターンウエハ上に、シール層(ポリマー層)を形成し、パターンウエハとポリマー層とが積層された構造の積層体(以下、「試料(VIA/PEI)」ともいう)を得た。
【0152】
上記試料(VIA/PEI)をホットプレート上に、シリコンウエハ面とホットプレートとが接触するように設置し、大気雰囲気下で、100℃のソフトベーク温度で60秒間ソフトベーク(加熱処理)した。
【0153】
(ポリマー層の厚さ評価)
また、パターンウエハのビア底面に露出している銅上のポリマー層の厚さは、次のように測定した。
ソフトベーク後のポリマー層が形成された側の表面にPt(白金)スパッタを施し、その後炭素をデポジションして保護層とし、その後、FIB加工装置SMI−2050(セイコーインスツルメント製)を用いて薄片化(銅配線の断面が現れる方向に薄片化)し、観察検体とした。
この観察検体を電界放出型透過電子顕微鏡(FE−TEM)(JEM−2200FS、日本電子(株)製)によって観察し、ビアの底面に露出している銅配線上のポリマー層の厚さを測定した。測定値はビア中央部のポリマー層の厚み(パドル量ともいう)を測定した値を示す。
結果を表2に示す。
【0154】
【表2】
【0155】
実施例2では、パドル量は5nmであり、銅上のポリマー層の厚みが十分に低減されていた。比較例1、16では、パドル量が多く観測された。ここで、パドル量が35nm以下のときをパドル量が少ないと判断した。
【0156】
<シリコン(Si)上のポリマー層の厚さ評価>
(厚さ測定用試料の作製)
表面にシリカが存在しているシリコンウエハを準備し、このシリコンウエハを、スピンコーターの上にのせ、表3に示すシール組成物を10秒間一定速度で1.0mL滴下し、23秒間保持した後、このシリコンウエハを2000rpmで1秒間回転させ、さらに600rpmで30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。
以上により、シリコンウエハ上に、シール層(ポリマー層)を形成し、シリコンウエハとポリマー層とが積層された構造の積層体(以下、「試料(Si/PEI)」ともいう)を得た。
【0157】
上記試料(Si/PEI)をホットプレート上に、シリコンウエハ面とホットプレートとが接触するように設置し、大気雰囲気下で、100℃のソフトベーク温度で60秒間ソフトベーク(加熱処理)した。
ここでいうソフトベーク温度は、シリコンウエハ表面の温度(成膜前シリコンウエハの成膜される面の温度)である。
【0158】
(洗浄処理)
上記試料(Si/PEI)を、スピンコーターを用いて600rpmで回転させながら、ポリマー層上に、リンス液として4,4’−オキシジフタル酸(0.62ミリモル/リットル)/エチルアミン水溶液(pH5.2、液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下してポリマー層を洗浄し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させ、次いで、超純水(液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させた。
【0159】
(洗浄処理後のポリマー層の厚さ評価)
次に、上記のようにして得られた洗浄処理後試料のポリマー層(PEI)の厚さを測定した。ポリマー層の厚さ(nm)は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)のエリプソメーターを使用して常法により測定した。
結果を表3に示す。
【0160】
<銅(Cu)上のポリマー層の厚さ評価>
(厚さ測定用試料の作製)
シリコン基板上にめっきにて銅膜を100nm成膜し、この銅膜面をヘリウムプラズマ処理でクリーニングした基板を用い、プラズマ処理後の銅膜面上に、シール層(ポリマー層)を形成するため、<シリコン(Si)上のポリマー層の厚さ評価>と同様の処理を行なった。
以上により、銅上に、ポリマー層を形成し、銅とポリマー層とが積層された構造の積層体(以下、「試料(Cu/PEI)」ともいう)を得た。
【0161】
(洗浄処理)
上記試料(Cu/PEI)を、スピンコーターを用いて600rpmで回転させながら、ポリマー層上に、リンス液として4,4’−オキシジフタル酸(0.62ミリモル/リットル)/エチルアミン水溶液(pH5.2、液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下してポリマー層を洗浄し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させ、次いで、超純水(液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させた。
【0162】
(洗浄処理後のポリマー層の厚さ評価)
次に、上記のようにして得られた洗浄処理後試料のポリマー層(PEI)の厚さを測定した。銅(Cu)上のポリマー層の厚さ(nm)は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)のエリプソメーターを使用して以下の手法により測定した。
即ち、光学的に平坦な銅基板上のポリマー層の厚さは、エリプソメトリーにより測定された偏光パラメーターを、WinElli IIを用いて多層光学モデル;(空気)/(ポリマー層)/(銅基板)で回帰することにより計算した。用いた光エネルギーの範囲は、2.2〜5.0eVである。ここで、ポリマー層の屈折率には常にシリカ(SiO
2)と同じ値を用いた。また、銅基板の屈折率及び消衰係数は、ポリマー層を有しない銅基板の偏光パラメーターを測定後、解析ソフトのWinElli IIを用いて求められた値を用いた。
結果を表3に示す。
【0163】
【表3】
【0164】
表3に示すように、各実施例では、銅上のポリマー層の厚み(銅上膜厚)が1.5nm以下であり、銅上のポリマー層の厚みが十分に低減されていた。比較例14では、各実施例よりも銅上のポリマー層の厚みがやや大きく、また、シリコンウエハ上にポリマー層を成膜した際にポリマー層がまだらになっており、ウエハ上膜厚を測定することができなかった。また、比較例4、15(特に比較例15)では、各実施例よりも銅上のポリマー層の厚みが大きくなることが観測された。
【0165】
<層間絶縁層(low−k膜)付きシリコンウエハの作製>
(前駆体溶液の調製)
77.4gのビストリエトキシシリルエタンと70.9gのエタノールとを室温下で混合攪拌した後、1mol/Lの硝酸80mLを添加し、50℃で1時間撹拌した。次に、20.9gのポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテルを280gのエタノールで溶解した溶液を滴下混合した。混合後、30℃で4時間撹拌した。得られた溶液を25℃、30hPaの減圧下、105gになるまで濃縮した。濃縮後、1−プロピルアルコールと2−ブチルアルコールを体積で2:1に混合した溶液を添加し、前駆体溶液1800gを得た。
【0166】
(多孔質シリカ形成用組成物の調製)
前駆体溶液472gに、ジメチルジエトキシシラン3.4g及びヘキサメチルジシロキサン1.8gを添加し、25℃で1時間撹拌し、多孔質シリカ形成用組成物を得た。この時のジメチルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサンの添加量は、ビストリエトキシシリルエタンに対してそれぞれ10モル%、5モル%であった。
【0167】
(層間絶縁層の形成)
上記多孔質シリカ形成用組成物1.0mLをシリコンウエハ表面上に滴下し、2000rpmで60秒間回転させて、シリコンウエハ表面に塗布した後、窒素雰囲気下、150℃で1分間、次いで、350℃で10分間加熱処理した。その後、172nmエキシマランプを装備したチャンバー内で350℃まで熱処理し、圧力1Paで出力14mW/cm
2により、紫外線を10分間照射することにより、層間絶縁層(多孔質シリカ膜)を得た。
以上により、上記層間絶縁層(以下、「low−k膜」又は「low−k」ともいう)付きシリコンウエハを得た。
【0168】
得られた層間絶縁層のポア半径は、1.6nmであった。
また、得られた層間絶縁層の比誘電率kは、2.5であった。
また、得られた層間絶縁層の弾性率は、8.8GPaであった。
【0169】
上記ポア半径は、トルエンの脱離等温線から計算により求めた。ここで、トルエン脱離等温線測定は、後述するシール性評価と同様の手法により、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)を用いて行った。ポア半径の計算は、 M. R. Baklanov, K. P. Mogilnikov, V. G. Polovinkin, and F. N. Dultsey, Journal of Vacuum Science and Technology B (2000) 18, 1385-1391 に記載された手法に従って、ケルビン式を用いて行った。
また、比誘電率は、水銀プローブ装置(SSM5130)を用い、25℃、相対湿度30%の雰囲気下、周波数1MHzにて常法により測定した。
また、弾性率は、ナノインデンテーター(Hysitron社、Triboscope)により、膜厚の1/10以下の押し込み深さで常法により測定した。
【0170】
〔比較例17〕
比較として、表4に記載の含有量及びpHに変更した以外は、シール組成物1Aと同様にしてシール組成物20Bを得た(ベンゾトリアゾールを含まない例である)。
【0171】
<low−k膜上のポリマー層の厚さ測定用サンプルの作製>
上記で得られたlow−k膜付きシリコンウエハのlow−k膜面に、表4に記載のシール組成物を用いて、ポリマー層を形成し、low−k膜付きシリコンウエハとポリマー層とが積層された構造の積層体(以下、「試料(Si/low−k/PEI)」ともいう)を得た。
ポリマー層の形成は次の方法で行った。上記で得られたlow−k膜付きシリコンウエハを、スピンコーターの上にのせ、low−k膜面に、表4に示すシール組成物(シール組成物1Aまたはシール組成物20B)を10秒間一定速度で1.0mL滴下し、13秒間保持した後、このシリコンウエハを2000rpmで1秒間回転させ、さらに600rpmで30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。
【0172】
上記試料(Si/low−k/PEI)をホットプレート上に、シリコンウエハ面とホットプレートが接触するように置き、大気雰囲気下で、100℃のソフトベーク温度で60秒間ソフトベーク(加熱処理)した。
ここでいうソフトベーク温度は、シリコンウエハ表面の温度である。
【0173】
(洗浄処理1)
上記シール組成物1Aを用いた積層体のソフトベーク後の試料(Si/low−k/PEI)を、スピンコーターを用いて600rpmで回転させながら、ポリマー層上に、リンス液として4,4’−オキシジフタル酸(0.62ミリモル/リットル)/エチルアミン水溶液(pH5.2、液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下してポリマー層を洗浄し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させ、次いで、超純水(液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させた。
【0174】
(洗浄処理2)
上記シール組成物20Bを用いた積層体のソフトベーク後の試料(Si/low−k/PEI)を、スピンコーターを用いて600rpmで回転させながら、ポリマー層上に、リンス液としてピロメリット酸(pH3.4)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下してポリマー層を洗浄し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させ、次いで、超純水(液温22℃)を0.1mL/秒の滴下速度で30秒間滴下し、次いで、試料を2000rpmで60秒間回転させ乾燥させた。
【0175】
(熱処理)
次に、洗浄処理1、2を行なった後のそれぞれの試料(実施例1、比較例5)について、以下の条件で熱処理(ハードベーク処理)を行なった。まず、上記試料(Si/low−k/PEI)を炉(アペックス社製のSPX−1120)に入れ、この試料のシール層(PEI)が形成された側に対し、窒素ガス(N
2)雰囲気中、圧力10,000Paの条件下で、350℃の熱処理を2分間施した。上記温度は、試料(Si/low−k/PEI)のシール層(PEI)が形成された側の表面温度である。
以上により、プラズマ処理前のシール性評価用試料を得た。
【0176】
<熱処理後のシール層の厚さ評価>
次に、上記のようにして得られた熱処理後のシール性評価用試料(プラズマ処理前のシール性評価用試料)のシール層(PEI)の厚さを測定した。シール層の厚さ(nm)は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)のエリプソメーターを使用して常法により測定した。
結果を表4に示す。
【0177】
<プラズマ処理後のシール性評価用試料の作製>
上記熱処理後のシール性評価用試料のシール層(PEI)側に、さらに下記条件のプラズマ処理を施し、プラズマ処理後のシール性評価用試料を作製した。
【0178】
−プラズマ処理の条件−
・使用ガス … 水素ガス
・使用電極 … 平行平板型電極(φ10cm)
・到達真空度 … 2×10
−5Torr未満
・水素ガス流し … 5分
・放電電力 … 100W
・放電周波数 … 13.56MHz
・放電時の圧力 … 150mTorr
・電極の温度 … 室温
・試料表面の温度 … 室温
・水素ガス流量 … 50sccm
・サンプル設置側 … グラウンド電位(0V)が印加されたアノード電極上
・処理時間(放電時間) … 20秒
【0179】
<プラズマ処理後のシール性評価>
上記プラズマ処理後のシール性評価用試料について、以下のようにしてシール性評価を行なった。
シール性評価は、試料(Si/low−k/PEI)のシール層(PEI)表面におけるトルエン吸着測定により行った。このトルエン吸着測定では、トルエン吸着量が少ないほど、low−k膜中への配線材料(銅など)の侵入を防ぐシール性が高いことを表す。
【0180】
トルエン吸着測定は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)を用いて行った。
測定方法は、M. R. Baklanov, K. P. Mogilnikov, V. G. Polovinkin, and F. N. Dultsey, Journal of Vacuum Science and Technology B (2000) 18, 1385-1391に記載の手法に従って行った。
具体的には、温度範囲23〜26℃において、試料(Si/low−k/PEI)の入ったサンプル室を5mTorrまで排気した後、トルエンガスをサンプル室に十分にゆっくり導入した。各圧力において、low−k膜の屈折率をエリプソメータ装置によりその場測定した。この操作を、サンプル室内圧力がトルエンの飽和蒸気圧に達するまで繰り返した。同様に、サンプル室内雰囲気を徐々に排気しつつ、各圧力にて屈折率の測定を行った。以上の操作により、low−k膜へのトルエンの吸着及び脱離による屈折率変化を求めた。更に、ローレンツ−ローレンツ式を用いて、屈折率の相対圧力特性からトルエンガス吸着脱離等温線を求めた。
上記トルエンガス吸着脱離等温線は、トルエン相対圧(P/P
0;ここで、Pはトルエンの室温での分圧を表し、P
0はトルエンの室温での飽和蒸気圧を表す。)と、トルエン吸着量の体積分率(low−k膜全体の体積に対するトルエンの室温での吸着体積の比率;単位は「%」)と、の関係を示す等温線である。トルエン吸着量の体積分率は、ローレンツ・ローレンツ式を用いてlow−k膜の屈折率に基づいて求めた。
【0181】
上記トルエンガス吸着脱離等温線に基づき、トルエン相対圧(P/P
0)が1.0であるときのトルエン吸着量の体積分率(%)を求め、得られた値に基づき、シール性を評価した。この評価では、トルエン吸着量の体積分率(%)が小さい程、シール性が高いことを示す。
評価結果を表4に示す。
【0182】
<プラズマ処理後のシール層の厚さ評価>
次に、上記のようにして得られたプラズマ処理後のシール性評価用試料のシール層(PEI)の厚さを測定した。シール層の厚さ(nm)は、SEMILAB社製光学式ポロシメータ(PS−1200)のエリプソメーターを使用して常法により測定した。
結果を表4に示す。
【0183】
【表4】
【0184】
シール組成物1Aを用いて、リンス液として4,4’−オキシジフタル酸(0.62ミリモル/リットル)/エチルアミン水溶液(pH5.2、液温22℃)を用いた実施例1においては、プラズマ処理後のトルエン吸着量の体積分率が十分に低く、シール性が高いことがわかった。一方、同じポリエチレンイミン濃度でもシール組成物20Bを用いて、リンス液としてピロメリット酸(pH3.4)を用いた比較例17では、プラズマ処理後のトルエン吸着量の体積分率が高く、シール性が確保されていないことがわかった。
【0185】
2014年8月8日に出願された日本国特許出願2014−162433の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。