特許第6161857号(P6161857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6161857
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】オルゴール装置
(51)【国際特許分類】
   G10F 1/06 20060101AFI20170703BHJP
   G10F 5/04 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G10F1/06 R
   G10F5/04
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-513156(P2017-513156)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2016088338
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-253905(P2015-253905)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516001395
【氏名又は名称】塚田 有人
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】塚田 有人
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−15467(JP,A)
【文献】 特開平9−101775(JP,A)
【文献】 実開平6−69996(JP,U)
【文献】 アンティークオルゴールの魅力(2),[online],2012年 9月26日,[検索日 2017.02.08],インターネット,URL,http://kenthouse.exblog.jp/16414154
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10F 1/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏用係合部を有するとともに駆動手段によって回転するシートと、該シートに対向配置され外周面に二以上の爪部を有するスターホイールと、該スターホイールに隣接配置される振動弁とを備え、該駆動手段による該シートの回転に伴って、該演奏用係合部が一の爪部に連係して該スターホイールを回転させるとともに他の爪部が該振動弁を弾いて演奏を行うオルゴール装置において、
前記シートは、螺旋板状であるオルゴール装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記シートの一端部に連結する第一回転盤と、該シートの他端部に連結する第二回転盤と、該第一回転盤と該第二回転盤とを同期して回転させる同期機構とを備える請求項1に記載のオルゴール装置。
【請求項3】
前記第一回転盤及び前記第二回転盤の少なくとも一方に対向して設けられる渦巻き溝を備えたカバー板と、該渦巻き溝内を移動可能なピンとを備え、
該カバー板に対向する該第一回転盤及び該第二回転盤の少なくとも一方は、半径方向に沿って延在するとともに該ピンを移動可能に保持する半径方向溝を有する請求項2に記載のオルゴール装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記スターホイールを空転可能に保持するとともに該スターホイールと同軸上に設けられるスペーサを一体的に回転させるシャフトを備え、
前記スペーサとの間で前記シートを挟むとともに前記駆動手段によって回転して該シートを送り出す駆動ローラと、該駆動ローラとともに回転する駆動シャフトに装着され、該スペーサに向かって該シートを寄せる押えローラとを有するシート押え機構を更に備える請求項2又は3に記載のオルゴール装置。
【請求項5】
前記駆動ローラを、前記第一回転盤及び前記第二回転盤と一致した回転速度で前記シートを回転させるよう構成してなる請求項4に記載のオルゴール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオルゴール装置に関するものであって、特に、長時間の演奏が可能なオルゴール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音階の異なる振動弁を所定のタイミングで弾くことにより曲を演奏するオルゴール装置としては、各振動弁に係合するピンを所定のピッチでシリンダーの外周面に設けたシリンダー式オルゴール装置が既知である。このようなシリンダー式オルゴール装置において長時間の演奏を行うには、シリンダーの直径を大きくしなければならないため、オルゴール装置の厚みが非常に厚くなるという問題を抱えている。
【0003】
一方、シリンダーのピンで直接振動弁を弾く構成に代えて、回転可能に保持されるとともに外周面に複数の爪を有するスターホイールと、所定のピッチで穿孔された貫通孔を有するテープを備え、テープの送り出しに伴って、スターホイールの一の爪を貫通孔に係合させてスターホイールを回転させ、これによってスターホイールの他の爪で振動弁を弾いて演奏できるようにした、テープ式オルゴール装置も知られている(例えば特許文献1参照)。このようなテープ式オルゴール装置によれば、テープの長さを長くすることによって、長時間の演奏を行うことが可能である。また、上記のテープに変えて、円板状のディスクによって演奏を行うディスク式オルゴールも既知である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−101775号公報
【特許文献2】特開平11−15467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなテープ式オルゴール装置では、演奏前のテープを巻いておく送り側ロールと演奏後のテープを巻き取る受け側ロールの2つのロールを設ける必要があるため、部品点数の増加を招くことになる。しかもテープの送り出しに伴って、送り側ロールのテープ直径は小さくなる一方で受け側ロールのテープ直径は大きくなるため、テープの送り速度を一定にするには2つのロールの回転速度を徐々に変えなければならず、機構の複雑化につながっている。更に、長時間の演奏を行うには、テープの長さが長くなる分、ロールのテープ直径も大きくなることから、部品点数の増加や機構の複雑化と相俟ってオルゴール装置の全体の厚みも厚くなる傾向にあった。これに対してディスク式オルゴールは薄いディスクを用いているため、オルゴール装置全体の厚みを薄くすることができるものの、演奏可能な曲の長さはディスクの周方向長さに依存するため、演奏時間を延ばすにも限度があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、長時間の演奏が可能であって厚みも抑えることができる、新規のオルゴール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、演奏用係合部を有するとともに駆動手段によって回転するシートと、該シートに対向配置され外周面に二以上の爪部を有するスターホイールと、該スターホイールに隣接配置される振動弁とを備え、該駆動手段による該シートの回転に伴って、該演奏用係合部が一の爪部に連係して該スターホイールを回転させるとともに他の爪部が該振動弁を弾いて演奏を行うオルゴール装置において、
前記シートは、螺旋板状であるオルゴール装置である。
【0008】
前記駆動手段は、前記シートの一端部に連結する第一回転盤と、該シートの他端部に連結する第二回転盤と、該第一回転盤と該第二回転盤とを同期して回転させる同期機構とを備えることが好ましい。
【0009】
前記駆動手段は、駆動部によって回転するとともに前記スターホイールを空転可能に保持するシャフトと、該シャフトに設けられ、該シャフトの回転力を前記第一回転盤につながる回転盤駆動ギヤに伝えて該第一回転盤を回転させるシャフトギヤとを備え、
前記オルゴール装置は、該第一回転盤の中心軸に沿って移動可能且つ該中心軸を中心として回転可能に設けられる摘まみを備え、
該摘まみは、該第一回転盤に設けた駆動用係合部に係合して該第一回転盤を回転させる駆動用被係合部と、該摘まみとともに該シャフトを移動させるシャフト移動用係合部とを備え、該摘まみを該第一回転盤から離反する向きに移動させた場合は、該オルゴール装置を、該駆動用係合部と該駆動用被係合部とが非係合であるとともに該回転盤駆動ギヤと該シャフトギヤとが係合する演奏可能状態とする一方、該摘まみを該第一回転盤に接近する向きに移動させた場合は、該オルゴール装置を、該駆動用係合部と該駆動用被係合部とが係合するとともに該シャフト移動用係合部が該シャフトを移動させて該回転盤駆動ギヤと該シャフトギヤとが非係合且つ該スターホイールが該シートから離反するシート送り状態とすることが好ましい。
【0010】
前記第一回転盤及び前記第二回転盤の少なくとも一方に対向して設けられる渦巻き溝を備えたカバー板と、該渦巻き溝内を移動可能なピンとを備え、
該カバー板に対向する該第一回転盤及び該第二回転盤の少なくとも一方は、半径方向に沿って延在するとともに該ピンを移動可能に保持する半径方向溝を有することが好ましい。
【0011】
前記駆動手段は、前記スターホイールを空転可能に保持するとともに該スターホイールと同軸上に設けられるスペーサを一体的に回転させるシャフトを備え、
前記スペーサとの間で前記シートを挟むとともに前記駆動手段によって回転して該シートを送り出す駆動ローラと、該駆動ローラとともに回転する駆動シャフトに装着され、該スペーサに向かって該シートを寄せる押えローラとを有するシート押え機構を更に備えることが好ましい。
【0012】
前記駆動ローラを、前記第一回転盤及び前記第二回転盤と一致した回転速度で前記シートを回転させるよう構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従うオルゴール装置では、スターホイールを介して振動弁を弾く媒体として螺旋板状のシートを用いているため、長時間演奏を行うことが可能である。しかも螺旋板状のシートでは、未演奏部分と演奏終了部分のそれぞれを、層をなすように重ねることが可能であるため、オルゴール装置の厚みを抑えることができる。
【0014】
また、シートを回転させる駆動手段として、シートの一端部に連結する第一回転盤と、シートの他端部に連結する第二回転盤と、第一回転盤と第二回転盤とを同期して回転させる同期機構とを設ける場合は、シート全体を一体的に回転させることができるため、シートに局所的な負荷が加わることがないうえ、シートを安定的に回転させることができる。
【0015】
そして、このオルゴール装置に、第一回転盤の中心軸に沿って移動可能且つ中心軸を中心として回転可能に設けられる上述した摘まみを設ける場合は、摘まみを第一回転盤から離反する向きに移動させることで、オルゴール装置を、駆動用係合部と駆動用被係合部とが非係合であるとともに回転盤駆動ギヤとシャフトギヤとが係合する演奏可能状態とすることができる一方、摘まみを第一回転盤に接近する向きに移動させた場合は、オルゴール装置を、駆動用係合部と駆動用被係合部とが係合するとともに回転盤駆動ギヤとシャフトギヤとが非係合且つスターホイールがシートから離反するシート送り状態とすることができる。すなわち、摘まみを第一回転盤から離反する向きに移動させることで通常通り演奏を行うことができ、また摘まみを第一回転盤に接近する向きに移動させて回転すれば、シートの早送りや巻き戻しを高速に行うことができる。
【0016】
更に、第一回転盤及び第二回転盤の少なくとも一方に対向して設けられる渦巻き溝を備えたカバー板と、渦巻き溝内を移動可能なピンとを設け、カバー板に対向する該第一回転盤及び該第二回転盤の少なくとも一方に、半径方向に沿って延在するとともにピンを移動可能に保持する半径方向溝を設ける場合は、シートの回転に伴ってピンも移動するため、演奏される曲の経過をピンの位置で把握することができる。
【0017】
駆動手段に、スターホイールを空転可能に保持するとともにこのスターホイールと同軸上に設けられるスペーサを一体的に回転させるシャフトを設け、またスペーサとの間でシートを挟むとともに駆動手段によって回転してシートを送り出す駆動ローラと、駆動ローラとともに回転する駆動シャフトに装着され、スペーサに向かってシートを寄せる押えローラとを有するシート押え機構を設ける場合は、スペーサと駆動ローラとでシートを送り出すことができるため、シートをより安定的に回転させることができる。またシートは平面視において円板状であるため、半径方向内側と外側では速度が異なることになるものの、シートを送り出すローラは駆動ローラのみであって、押えローラはシートを積極的に送り出すものではないため、シートに皺や縒が生じることはない。
【0018】
そして駆動ローラを、第一回転盤及び第二回転盤と一致した回転速度でシートを回転させるよう構成することによって、第一回転盤、第二回転盤及びシートを全て同期させて回転させることができるため、シートに余計な負荷が加わることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に従うオルゴール装置の一実施形態につき、各構成部品(シート等を除く)を概略的に示した分解斜視図である。
図2図1に示す構成部品(シートを含む)を部分的に組み立てた状態を示す斜視図である。
図3図1に示すオルゴール装置の側面視での断面図である。
図4図2に示す矢印Aに沿う概略図である。
図5図3に示すB−Bに沿う断面図である。
図6】半径方向溝と渦巻き溝とを示した平面図である。
図7図3に示す状態から摘まみを下方に押下げた状態を示す断面図である。
図8図7に示す矢印Cに沿う矢視図を、摘まみを押下げる前(仮想線)と押下げた後(実線)とを重ねて示した図であって、(a)はシャフト押下げ補助機構の関係を示す図であり、(b)は駆動手段の関係を示す図である。
図9】本発明に従うオルゴール装置の他の実施形態を示す、側面視での断面図である。
図10図9に示すD−Dに沿う断面図である。
図11図10の部分拡大図であって、(a)はE部、(b)はF部を示す。
図12図9に示すオルゴール装置の演奏可能状態を示した断面図であって、(a)は図11に示すa−aに沿う断面図であり、(b)は図11に示すb−bに沿う断面図であり、(c)は図11に示すc−cに沿う断面図であり、(d)は図11に示すd−dに沿う断面図である。
図13図9に示すオルゴール装置の演奏可能状態を示した断面図であって、(a)は図11に示すe−eに沿う断面図であり、(b)は図11に示すf−fに沿う断面図である。
図14図9に示すオルゴール装置のシート送り状態を示した断面図であって、(a)は図11に示すa−aに沿う断面図であり、(b)は図11に示すb−bに沿う断面図であり、(c)は図11に示すc−cに沿う断面図であり、(d)は図11に示すd−dに沿う断面図である。
図15図9に示すオルゴール装置のシート送り状態を示した断面図であって、(a)は図11に示すe−eに沿う断面図であり、(b)は図11に示すf−fに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に従うオルゴール装置の一実施形態について説明する。なお、本明細書において「上側」とは、図1において底板(符号13)に対して保護板(符号12)が位置する側であり、「下側」とはその反対側である。
【0021】
図面中、符号1は本実施形態のオルゴール装置を示す。オルゴール装置1は、図1において概略的に示すように、オルゴール本体2と、上側仕切板3と、下側仕切板4と、上側回転盤(第一回転盤)5と、下側回転盤(第二回転盤)6と、同期用ギヤ7と、連結部材8と、摘まみ9と、天板(カバー板)10と、ピン11と、保護板12と、底板13とを備えている。またオルゴール装置1は、図1では図示を省略しているが、図2に示すようにシート14を備えている。更にオルゴール装置1は、図3図5に示すロック機構15と、シャフト押下げ補助機構16を備えている。
【0022】
オルゴール本体2は、図1に示すように中心軸に沿って並んだ複数のスターホイール2aと、スターホイール2aに対して隣接して配置されるとともに各スターホイール2aに対応する位置に並んだ複数の振動弁2bと、シート14に回転力を付与するための駆動手段2cとを備えている。スターホイール2aは、図4に示すように外周面に二以上の爪部2a1を備えている。なお、隣り合うスターホイール2aの間には、図1に示すように円板状のスペーサ2dがスターホイール2aと同軸上に設けられている。
【0023】
また駆動手段2cは、図5及び図8(b)に示すように、手で回転させるハンドル2c1と、ハンドル2c1の回転力を伝える第一ギヤ2c2とを備えていて、更に3つのギヤ(第二ギヤ2c3、第三ギヤ2c4、第四ギヤ2c5)を介して回転するシャフト2c6を備えている(第四ギヤ2c5とシャフト2c6は一体的に回転する)。シャフト2c6は、図3及び図5に示すように、オルゴール装置1の半径方向外側から内側に向かって長く延在するものであって、シャフト2c6を第四ギヤ2c5の近傍で回転可能に支持する柱状の第一支持部2c7と、シャフト2c6と一体になって回転するシャフトギヤ2c8を備えるとともに、複数のスターホイール2aを串差しするようにして空転可能に保持している。なおシャフト2c6は、スターホイール2aとともにスペーサ2dも串差しするようにして保持しているが、スペーサ2dは締まりばめの如き手段でシャフト2c6に取り付けられていて、シャフト2c6と一体的に回転する。更にシャフト2c6は、オルゴール装置1の中心部において、柱状になる一対の第二支持部2c9に回転可能に支持されていて、これら第二支持部2c9の間には、シャフト2c6と一体になって回転するロック用ギヤ2c10が設けられている。ここで第二支持部2c9のそれぞれは、オルゴール装置1の中心軸Oに対向する面において半径方向内側から外側へ凹む凹部2c11を備えている。なお凹部2c11は、第二支持部2c9を貫く貫通孔であってもよい。そして、図3に示すように第一支持部2c7と一対の第二支持部2c9の下部にはスプリングS1が設けられていて、シャフト2c6には下から上に向かって付勢力が働いている。なお、シャフト2c6とともに第四ギヤ2c5は上下方向に移動可能であるが、図8(b)に示すようにシャフト2c6が下がった場合でも第四ギヤ2c5と第三ギヤ2c4とは噛合うようにしている。
【0024】
上側仕切板3は、図1に示すように駆動手段2cの上方に設けられていて、その内側には、穴3aが設けられている。また、駆動手段2cの下方には下側仕切板4が設けられていて、その内側には穴4aが設けられている。
【0025】
シート14は、図2に示すようにオルゴール装置1の中心軸Oに対して旋回するようにして延在する螺旋板状に形成されている。本実施形態のシート14は薄いプラスチック製であるが、この材質に限定されるものではない。また本実施形態のシート14は、ドーナツ型に形成しておいたものを半径方向に切断して、それを複数つなぎ合わせて螺旋板状に形成しているが、形成方法はこれに限定されるものではない。ここでシート14には、シート14を回転させた際にスターホイール2aの爪部2a1に係合する演奏用係合部14aが所定の位置に複数設けられている。本実施形態の演奏用係合部14aはシート14を貫く貫通孔であるが、爪部2a1に向かって突出する突起であってもよい。
【0026】
そしてシート14は、図4に示すように、その上部部分は上側仕切板3上において層をなすように重ねて載置されていて、そこから穴3aを通してスターホイール2aの上方を経由し、下側仕切板4の穴4aに至る。穴4aを経由したシート14の下部部分は、下側仕切板4の下方において層をなすように重ねて載置される。
【0027】
なお図示は省略するが、シート14の上端部は、図1及び図3に示す、上側仕切板3の上方に位置する上側回転盤(第一回転盤)5に連結し、シート14の下端部は、下側仕切板4の下方に位置する下側回転盤(第二回転盤)6に連結している。本実施形態の上側回転盤5及び下側回転盤6は、中心部に位置する小径のドーナツ状部と半径方向外側に位置する大径のドーナツ状部とを、半径方向に延在する合計4本のフレームでつないだ形状になるものである。また上側回転盤5の1本のフレームには、図6に示すように、そのフレームを貫通するとともに半径方向に延在する半径方向溝5aが設けられている。なお、詳細な構成についての説明は省略するが、上側回転盤5及び下側回転盤6は、上側仕切板3及び下側仕切板4に対して回転するように支持されていている。
【0028】
上側回転盤5の下方には、図3に示すように、上側仕切板3によって回転可能に支持されるとともにシャフトギヤ2c8によって回転する回転盤駆動ギヤ5bが設けられている。ここで上側回転盤5の半径方向外側の下面には、回転盤駆動ギヤ5bと噛合う凹凸状の歯部(不図示)が設けられていて、シャフトギヤ2c8が回転すると、回転盤駆動ギヤ5bを介して上側回転盤5が回転する。なお、図3ではシャフトギヤ2c8と回転盤駆動ギヤ5bとが離れて図示されているが、シャフトギヤ2c8と回転盤駆動ギヤ5bとの間には不図示のギヤが設けられていて、図3の状態(シャフト2c6がスプリングS1によって上方へ付勢された状態)ではシャフトギヤ2c8と回転盤駆動ギヤ5bとは間接的に噛合っている。更に上側回転盤5は、図3に示すように半径方向内側の上面にも、凹凸状の歯部(駆動用係合部5c)を備えている。
【0029】
また上側回転盤5と下側回転盤6との間には、これらを同期して回転させる同期機構が設けられている。本実施形態では、図1及び図3に示すように2つの同期用ギヤ7を設けるとともに、同期用ギヤ7の一つが上述の回転盤駆動ギヤ5bと噛合う凹凸状の歯部(不図示)と噛合うようにし、またもう一つの同期用ギヤ7が下側回転盤6の半径方向外側の上面に設けた歯部(不図示)と噛合うようにしている。これによって上側回転盤5が回転すると、下側回転盤6も同期して回転することができる。なお、同期機構は同期用ギヤ7に限定されるものではなく、例えば歯部付きベルト(歯部無しベルトでもよい)を介して上側回転盤5と下側回転盤6とつなぐようにしてもよい。
【0030】
上側回転盤5と下側回転盤6の半径方向内側には、図1に示すように概略円筒状になる連結部材8が設けられている。連結部材8は、上側仕切板3と下側仕切板4とに連結する一方、上側回転盤5と下側回転盤6とを回転可能に支持している。
【0031】
連結部材8の上方には、図1及び図3に示すように摘まみ9が設けられる。本実施形態の摘まみ9は、小径円筒状部分9aの内側に、上方へ向けて延在する板状部分を備える円板状部分を連結するとともに、小径円筒状部分9aの上端に連結するフランジの外端に、下方へ向けて延在する大径円筒状部分9bを連結した形態をなすものである。摘まみ9は、小径円筒状部分9aの下端が第二支持部2c9の上端に当接し、小径円筒状部分9aの外面が連結部材8の内面に当接していて、中心軸Oに沿って上下動可能、且つ中心軸Oを中心に回転可能に支持されている。ここで摘まみ9を押下げると、小径円筒状部分9aが第二支持部2c9を押下げるため、シャフト2c6も下方へ移動する(小径円筒状部分9aは、シャフト2c6を移動させるシャフト移動用係合部として機能する)。なお図示は省略するが、摘まみ9は第二支持部2c9及び連結部材8に対して移動するものであるため、それらの間の摩擦(摺動抵抗)を下げるように、例えば小径円筒状部分9aの下端や第二支持部2c9の上端を円弧状にしたり、接触する部分に小突起を設けたりすることが好ましい。
【0032】
また詳細な図は省略するが、摘まみ9は、大径円筒状部分9bの下端において、上側回転盤5に設けた凹凸状の歯部である駆動用係合部5cに係合する駆動用被係合部9cを備えている。これにより、摘まみ9を押下げて回転させると、駆動用係合部5cと駆動用被係合部9cとが噛合って、上側回転盤5を回転させることができる。
【0033】
そして上側回転盤5の上方には、図1及び図3に示すように天板(カバー板)10が設けられる。天板10には、図6に示すように天板10を貫通するとともに、中心軸Oを中心に渦巻き状に延在する渦巻き溝10aが設けられている。
【0034】
更に、図1及び図3に示すように上側回転盤5と天板10の間には、中央部が大径円柱状であって、上下が小径円柱状になるピン11が設けられる。ピン11は、図3及び図6に示すように、半径方向溝5aと渦巻き溝10aに収まっていて、上側回転盤5の回転に応じて半径方向内側或いは外側へ移動する。
【0035】
そして天板10の上方には、保護板12が設けられる。保護板12は渦巻き溝10aを覆っているので、オルゴール装置1の内部への埃等の浸入を防止することができる。また本実施形態の保護板12は透明であって、ピン11の位置が外から分かるようにしている。
【0036】
底板13は、天板10及び保護板12とともにオルゴール装置1の筐体をなすものであって、図3に示すようにその内側に上述した部材を収めている。
【0037】
図3図5に示すロック機構15は、摘まみ9を押し下げた際にシャフト2c6を下方位置で維持するものであって、本実施形態では、底板13の中央部で回転可能に保持される円板15aと、円板15aに軸支される一対のレバー15bと、レバー15bに対して半径方向外側に向かう付勢力を与えるスプリングS2と、レバー15bに軸支されるとともに先端が第二支持部2c9の凹部2c11に挿入されるロック部材15cとを備えている。ここで円板15aの上面には、摘まみ9を押し下げた際にシャフト2c6に設けたロック用ギヤ2c10に噛合う凹凸状の歯部(不図示)が設けられている。そしてロック用ギヤ2c10と円板15aとの歯部が噛合った状態において、シャフト2c6の回転に伴ってロック用ギヤ2c10が回転すると、円板15aはロック部材15cを半径方向内側に戻すように回転する。
【0038】
図3図5に示すシャフト押下げ補助機構16は、摘まみ9を押し下げた際にシャフト2c6が全体的に(特に摘まみ9から遠い第四ギヤ2c5等を設けている部分)下がるように補助するものである。本実施形態のシャフト押下げ補助機構16は、シャフト2c6と平行に延在する第二シャフト16aを備えるとともに、第二シャフト16aの両端に、シャフト2c6を挿通する長穴を有する一対のアーム16bを備え、全体的にコ字状になるものである。なお第二シャフト16aは、図示は省略するが底板13に設けた支持部によって揺動可能に支持されているため、図8(a)に示すように、両方のアーム16bを同じ角度で動かすことができる。
【0039】
このような構成になるオルゴール装置1にあっては、図3に示すように摘まみ9が上方に位置する状態(演奏可能状態)で演奏を行うことができる。演奏を行うには、まず手でハンドル2c1を回転させる。これにより、第一ギヤ2c2、第二ギヤ2c3、第三ギヤ2c4が順に回転し、第四ギヤ2c5とともにシャフト2c6及びシャフトギヤ2c8が回転し、これによって回転盤駆動ギヤ5bを介して上側回転盤5が回転する。この時、下側回転盤6は、同期用ギヤ7によって上側回転盤5とともに同期して回転するため、上端部及び下端部が上側回転盤5及び下側回転盤6に連結する螺旋板状のシート14も、同期して回転する。すなわち、シート14に局所的な負荷を与えることなく安定的に回転させることができる。
【0040】
シート14が回転すると、図4に示すように、上側仕切板3上に載置されている螺旋板状のシート14の上部部分(未演奏部分)が、穴3aを通してスターホイール2aの上方を通過する。これに伴い、演奏用係合部14aがスターホイール2aの一の爪部2a1に連係してスターホイール2aを回転させ、他の爪部2a1が振動弁2bを弾くことで音を出すことができる。シート14は螺旋板状であって全長が長いため、長時間演奏を行うことができる。そしてスターホイール2aを通過したシート14の下部部分(演奏終了部分)は、穴4aを通って下側仕切板4の下方に載置されていく。このようにシート14は、未演奏部分と演奏終了部分を上側仕切板3の上方と下側仕切板4の下方に層をなすように重ねることができるため、オルゴール装置1の厚みを抑えることが可能になる。
【0041】
また、図7に示すように摘まみ9を下方に押下げると、シート14を早送り、あるいは巻き戻すことができる状態(シート送り状態)に維持することができる。すなわち、摘まみ9によって第二支持部2c9がスプリングS1に抗して下がるため、図5に示すスプリングS2によって付勢されているロック部材15cが凹部2c11に挿入される。そして、第二支持部2c9とともにシャフト2c6も下がり、シャフト2c6に保持されているシャフトギヤ2c8が回転盤駆動ギヤ5bから離れ、またスターホイール2aがシート14から離れることになる。一方、摘まみ9の駆動用被係合部9cは上側回転盤5の駆動用係合部5cと係合するため、摘まみ9の回転に伴ってシート14を高速で早送り、あるいは巻き戻すことができる。
【0042】
なお、シャフト2c6は半径方向に長く延在しているため、摘まみ9を押下げても、半径方向外側の第四ギヤ2c5等を設けている部分まで均等に押下がらないおそれがある。しかし本実施形態では、第二シャフト16aの両端部に設けたアーム16bによって、シャフト2c6の半径方向外側部分にも力を加えることができるため、シャフト2c6を水平に押下げることができる。
【0043】
本実施形態のピン11は、シート14の演奏が進むにつれて、半径方向溝5aに沿って半径方向外側から内側へ移動するようにしている。すなわち、ピン11の位置でシート14の演奏過程が分かるため、例えば保護板12に対して曲の始まり毎に印をつけておけば、ピン11がその印に合うようにシート14を送ることによって、曲の頭出しを行うことができる。
【0044】
なお、摘まみ9を下方に押下げた状態では曲を演奏することはできないものの、上述したようにこの状態であっても第三ギヤ2c4と第四ギヤ2c5とは噛合っているので、ハンドル2c1を回すとシャフト2c6も回転する。この時、図7に示すように円板15aとロック用ギヤ2c10とは噛合っていて、シャフト2c6の回転に伴ってロック用ギヤ2c10と円板15aも回転し、これによってロック部材15cが半径方向内側に戻されるため、第二支持部2c9とロック部材15cとの連係が解かれ、スプリングS1の付勢力によって摘まみ9が自動的に上方へ復帰する。すなわち、摘まみ9が下方に押下げられた状態であっても、これを上方へ移動させる必要はなく、通常演奏するようにハンドル2c1を回すだけで演奏可能状態に復帰させることができる。
【0045】
次に、本発明に従うオルゴール装置の他の実施形態について、図9図15を参照しながら説明する。なお、本実施形態のオルゴール装置51は、オルゴール本体52、上側仕切板53、下側仕切板54、上側回転盤(第一回転盤)55、下側回転盤(第二回転盤)56、同期用ギヤ57、連結部材58、摘まみ59、天板(カバー板)60、ピン61、底板63、シート64を備えている。更に、図9図10に示すシート押え機構65と、モード切り替え機構66を備えている。なお、上側仕切板53、下側仕切板54、上側回転盤55、下側回転盤56、同期用ギヤ57、連結部材58、ピン61、シート64は、前述のオルゴール装置1における上側仕切板3、下側仕切板4、上側回転盤5、下側回転盤6、同期用ギヤ7、連結部材8、ピン11、シート14とほぼ同一の構成になるものであるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
オルゴール本体52は、スターホイール(図9における符号52a)と、振動弁(符号省略)、及び駆動手段(符号省略)を備えている。なお、スターホイール52a、及び振動弁は、前述のオルゴール本体2とほぼ同一の形態になるものであるが、駆動手段は前述の駆動手段2cとは一部構成が相異している。本実施形態の駆動手段は、図9に示すハンドル52c1の回転力が、図示を省略したギヤを介して第一駆動ギヤ52c2に伝わるように構成している。ここで第一駆動ギヤ52c2は、複数のスターホイール52aを串差しするようにして空転可能に保持するシャフト52c3に設けられている。なお、隣り合うスターホイール52aの間には、前述のスペーサ2dと同様に、円板状をなすとともにシャフト52c3と一体的に回転するスペーサ52dが設けられている。更にシャフト52c3には、シャフト52c3と一体的に回転する第二駆動ギヤ52c4と、第三駆動ギヤ52c5が設けられている。なお、前述の実施形態におけるシャフト2c6は上下方向に移動可能であったが、本実施形態のシャフト52c3は、上下方向へは移動しないように構成されている。
【0047】
摘まみ59は、指で摘まむ部位となる上側摘まみ部分59aと、中央部に孔を有する板状の下側摘まみ部分59bと、下側摘まみ部分59bの孔を挿通するとともに上側摘まみ部分59aと下側摘まみ部分59bとに挟まれる摘まみシャフト部分59cとを備えている。なお、摘まみシャフト部分59cの側面には、図13(b)に示すようにラックが設けられている。また図示は省略するが、摘まみ59には上側回転盤55を早送り、あるいは巻き戻しするための前述の駆動用被係合部9cに相当する部位が設けられている。
【0048】
天板60は、前述の実施形態における天板10と保護板12とを一体化した如き形態をなすものである。なお、天板60は全て透明であってもよいが、外観上、ピン61が移動する渦巻き溝だけを透明したままで他の部分は有色にすることが好ましい。
【0049】
底板63は、中央部において筒状部63aを有している。筒状部63aは、摘まみシャフト部分59cをスライド可能に保持するものである。また筒状部63aには、摘まみシャフト部分59cを上方へ向けて付勢するスプリングS3を設けている。
【0050】
シート押え機構65は、シート64を挟んでスターホイール52a及びスペーサ52dの反対側に設けられ、スペーサ52dとの間でシート64を挟み込んでシート64を送り出すものである。本実施形態のシート押え機構65は、図9図11(a)、図12(c)に示すように、モード切り替え機構66に対して揺動可能に設けられる揺動シャフト65aと、揺動シャフト65aに一体に連結するアーム65bと、アーム65bに回転可能に保持される駆動シャフト65cと、駆動シャフト65cと一体的に回転するシャフトギヤ65dと、駆動シャフト65cと一体的に回転するとともにスペーサ52dとの間でシート64を挟み込んでシート64を送り出す駆動ローラ65eと、駆動シャフト65cに装着されてスペーサ52dに向かってシート64を寄せる押えローラ65fとを備えている。換言すると、押えローラ65fは、スペーサ52dに向かってシート64を近づける一方、シート64を積極的に送り出す機能は有さないものである。このような機能を押えローラ65fに持たせるには、例えば、駆動シャフト65cと一体的に回転するように構成する一方で、押えローラ65fの直径は駆動ローラ65eの直径よりも小さくすればよい。また、直径は駆動ローラ65eと同一であっても、駆動シャフト65cに対して空転するように構成すればよい。また押えローラ65fは、駆動ローラ65eと同幅でもよいが、シート64を積極的に送り出さないようにするべく、例えば図11(a)に示すように駆動ローラ65eよりも幅を狭くすることが好ましい。更に揺動シャフト65aは、図11(b)に示すようにシャフトギヤ65gを備えている。
【0051】
モード切り替え機構66は、前述の実施形態で説明した演奏可能状態とシート送り状態とを切り替えるものである。本実施形態のモード切り替え機構66は、図9図11(a)、図12(a)に示すように天板60の上面に沿って移動するスライドスイッチ66aと、揺動シャフト65aを中心として回転可能に設けられる第一リンク66bと、水平方向に移動可能に設けられる第二リンク66cとを備えている。また第二リンク66cには、シャフト66dが設けられていて、シャフト66dには、第一切り替えギヤ66eが設けられている。また第一切り替えギヤ66eには、第一切り替えギヤ66eと一体的に回転する第二切り替えギヤ66fが設けられている。なお、図11(a)、図12(b)に示すように第一切り替えギヤ66eの脇には、底板63から立ち上がる壁に取り付けられるアイドラー66gが設けられている。なお上側回転盤55の外縁部には、前述の上側回転盤5に設けた回転盤駆動ギヤ5bと同様の回転盤駆動ギヤが設けられていて、アイドラー66gは、この回転盤駆動ギヤに噛合っている。
【0052】
更にモード切り替え機構66は、図11(b)に示すように、切り替えシャフト66hを備えている。切り替えシャフト66hの一端には、シャフトギヤ65gに噛合う第三切り替えギヤ66jが設けられている。また切り替えシャフト66hの他端には、第四切り替えギヤ66kが設けられている。ここで第四切り替えギヤ66kは、図13(b)に示すように、摘まみシャフト部分59cのラックに噛合っている。
【0053】
このような構成になるオルゴール装置51にあっては、演奏可能状態とするべく、スライドスイッチ66aを図12(a)に示す矢印の向き(左側)に移動させると、第一リンク66bは揺動シャフト65aを中心として反時計回りに回転し、第二リンク66cは右側に移動する。この時、第二切り替えギヤ66fは第二駆動ギヤ52c4に噛合うとともに、図12(b)に示すように第一切り替えギヤ66eはアイドラー66gに噛合うことになる。このため、ハンドル52c1の回転力は、アイドラー66gを介して上側回転盤55に伝わって上側回転盤55が回転する。また、上側回転盤55が回転すると同期用ギヤ57を介して下側回転盤56も回転するため、これらに連結するシート64も回転する。
【0054】
更にこの状態においては、図12(c)に示すように揺動シャフト65aに連結するアーム65bも反時計回りに回転するため、シャフトギヤ65dは第三駆動ギヤ52c5に噛合うことになる。このため、ハンドル52c1の回転力は、シャフトギヤ65dを介して駆動シャフト65cに伝わり、図12(d)に示すように駆動ローラ65eも回転する。これにより、スペーサ52dと駆動ローラ65eで挟まれるシート64は、スペーサ52dと駆動ローラ65eの両方によって送り出されるため、シート64を安定して回転させることができる。更に、図9図11(a)に示すように、駆動シャフト65cには複数の押えローラ65fが設けられていて、シート64は、駆動ローラ65e及び押えローラ65fとによって、半径方向の全域がスペーサ52dに向かって寄せられている。すなわちシート64は、スペーサ52dに隣接するスターホイール52aにも近づけられることから、スターホイール52aに設けた爪部を、シート64に設けた演奏用係合部に確実に噛み合わせることができるため、所期した通りの演奏を行うことができる。なお、シート64は平面視において円形であるため、半径方向内側と外側では速度が異なることになる。このため、仮に押えローラ65fにも駆動ローラ65eのような駆動力を加える構成にする場合には、シート64に皺が寄ったりシート64が縒れたりすることを避けるために、それぞれのローラに対してシート64の半径方向の位置に応じた回転速度を与えるように構成する必要がある。しかし本実施形態では、シート64に駆動力を加えるローラは駆動ローラ65eの1つのみとし、他の押えローラ65fは駆動ローラ65eよりも直径を小さくするとともに幅も小さくしているため、押えローラ65fがシート64に対して余計な負荷を与えることがない。このため、簡単な構成でありながらシート64の皺や縒を防止することができる。また本実施形態では、アイドラー66gのピッチ円における円周上の速度は、駆動ローラ65eの円周上の速度に対して、(上側回転盤55の中心軸からアイドラー66gまでの半径方向長さ)/(上側回転盤55の中心軸から駆動ローラ65eまでの半径方向長さ)になるように設定している。すなわち、上側回転盤55及び下側回転盤56とシート64との回転速度が一致するため、これらを同期して回転させることができる。
【0055】
またこの状態においては、図13(a)に示すように、揺動シャフト65aに連結するシャフトギヤ65gが反時計回りに回転し、シャフトギヤ65gに噛合う第三切り替えギヤ66jが時計回りに回転するため、図13(b)に示すように、切り替えシャフト66hを介して第三切り替えギヤ66jに連結する第四切り替えギヤ66kも時計回りに回転する。ここで摘まみ59は、第四切り替えギヤ66kに噛合うラックを有する摘まみシャフト部分59cを有しているため、上方の待機位置まで上昇する。
【0056】
一方、シート送り状態とするには、スライドスイッチ66aを図14(a)に示す矢印の向き(右側)に移動させる。これにより、第一リンク66bは揺動シャフト65aを中心として時計回りに回転し、第二リンク66cは左側に移動する。この時、第二切り替えギヤ66fは第二駆動ギヤ52c4から離れるとともに、図14(b)に示すように第一切り替えギヤ66eもアイドラー66gから離れることになる。またこの状態においては、図14(c)に示すように揺動シャフト65aに連結するアーム65bも時計回りに回転するため、シャフトギヤ65dも第三駆動ギヤ52c5から離れ、駆動ローラ65eも、図14(d)に示すようにスターホイール52aから離れることになる。すなわち、ハンドル52c1の回転力は、上側回転盤55、下側回転盤56、及びシート64には伝わらないことになる。更にこの状態においては、図15(a)に示すように、揺動シャフト65aに連結するシャフトギヤ65gが時計回りに回転し、第三切り替えギヤ66jが反時計回りに回転するため、図13(b)に示すように、第四切り替えギヤ66kも反時計回りに回転する。これにより、摘まみシャフト部分59cを介して摘まみ59が下方に移動し、摘まみ59に設けた不図示の駆動用被係合部が、上側回転盤55に設けた不図示の駆動用係合部に係合するため、摘まみ59の回転に伴ってシート64を高速で早送り、あるいは巻き戻すことができる。
【0057】
本発明のオルゴール装置は、これまでに述べた実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を行ったものも含まれる。例えば本実施形態の説明に用いた図では各構成部材を簡略化して示しているが、この形状に限定されるものではない。また上述した実施形態では、シート14を回転させる駆動部として手で回すハンドル2c1を設けたが、モータで回転させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のオルゴール装置によれば、長時間の演奏が可能であって厚みも抑えることができるので、オルゴール装置単体で使用するだけでなく、他のものと組み合わせて使うにも好適である。
【符号の説明】
【0059】
1:オルゴール装置
2:オルゴール本体
2a:スターホイール
2a1:爪部
2b:振動弁
2c:駆動手段
2c1:ハンドル
2c2:第一ギヤ
2c3:第二ギヤ
2c4:第三ギヤ
2c5:第四ギヤ
2c6:シャフト
2c7:第一支持部
2c8:シャフトギヤ
2c9:第二支持部
2c10:ロック用ギヤ
2c11:凹部
2d:スペーサ
3:上側仕切板
3a:上側仕切板の穴
4:下側仕切板
4a:下側仕切板の穴
5:上側回転盤(第一回転盤)
5a:半径方向溝
5b:回転盤駆動ギヤ
5c:駆動用係合部
6:下側回転盤(第二回転盤)
7:同期用ギヤ(同期機構)
8:連結部材
9:摘まみ
9a:小径円筒状部分(シャフト移動用係合部)
9b:大径円筒状部分
9c:駆動用被係合部
10:天板(カバー板)
10a:渦巻き溝
11:ピン
12:保護板
13:底板
14:シート
14a:演奏用係合部
15:ロック機構
15a:円板
15b:レバー
15c:ロック部材
16:シャフト押下げ補助機構
16a:第二シャフト
16b:アーム
51:オルゴール装置
52:オルゴール本体
52a:スターホイール
52c1:ハンドル
52c2:第一駆動ギヤ
52c3:シャフト
52c4:第二駆動ギヤ
52c5:第三駆動ギヤ
52d:スペーサ
53:上側仕切板
54:下側仕切板
55:上側回転盤(第一回転盤)
56:下側回転盤(第二回転盤)
57:同期用ギヤ(同期機構)
58:連結部材
59:摘まみ
59a:上側摘まみ部分
59b:下側摘まみ部分
59c:摘まみシャフト部分
60:天板(カバー板)
61:ピン
63:底板
63a:筒状部
64:シート
65:シート押え機構
65a:揺動シャフト
65b:アーム
65c:駆動シャフト
65d:シャフトギヤ
65e:駆動ローラ
65f:押えローラ
65g:シャフトギヤ
66:モード切り替え機構
66a:スライドスイッチ
66b:第一リンク
66c:第二リンク
66d:シャフト
66e:第一切り替えギヤ
66f:第二切り替えギヤ
66g:アイドラー
66h:切り替えシャフト
66j:第三切り替えギヤ
66k:第四切り替えギヤ
S1:スプリング
S2:スプリング
S3:スプリング
【要約】
長時間の演奏が可能であって厚みも抑えることができる、新規のオルゴール装置を提供する。
本発明は、演奏用係合部(14a)を有するとともに駆動手段(2c)によって回転するシート(14)と、シート(14)に対向配置され外周面に二以上の爪部(2a1)を有するスターホイール(2a)と、スターホイール(2a)に隣接配置される振動弁(2b)とを備え、駆動手段(2c)によるシート(14)の回転に伴って、演奏用係合部(14a)が一の爪部(2a1)に連係してスターホイール(2a)を回転させるとともに他の爪部(2a1)が振動弁(2b)を弾いて演奏を行うオルゴール装置であって、シート(14)は、螺旋板状であることを特徴とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15