(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161880
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】自動電圧調整器及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
H02J3/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-167414(P2012-167414)
(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公開番号】特開2014-27811(P2014-27811A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000164483
【氏名又は名称】株式会社キューヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀樹
【審査官】
永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−042546(JP,A)
【文献】
特開2002−204575(JP,A)
【文献】
特開2007−006674(JP,A)
【文献】
特開2001−190025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F1/12−1/44
1/45−7/00
H02J3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タップ切替器付きの調整用変圧器と、
前記調整用変圧器の二次側の電圧を検出する計器用変圧器と、
前記調整用変圧器を通して流れる電流を検出する計器用変流器と、
前記計器用変圧器の検出電圧に基づいて前記タップ切替器を切り替えて前記調整用変圧器の二次側電圧を調整するタップ切替指令を発生する電圧調整継電器と、
タップ切替前の前記計器用変圧器の検出電圧とタップ切替後の前記計器用変圧器の検出電圧との電圧差が予め定めた閾値より大きい場合には電源から前記調整用変圧器の一次側に電力が供給される順送電が行われているものと判定し、前記電圧差が前記閾値より小さい場合は前記電源から前記調整用変圧器の二次側に電力が供給される逆送電が行われているものと判定する電源方向判定部と、
前記計器用変圧器の検出電圧と前記計器用変流器の検出電流とに基づいて前記検出電圧と前記検出電流の位相の変化を検出する位相変化検出部と、
前記タップ切替器に与えるタップ切替指令を制御するタップ切替制御回路と、
前記計器用変流器の検出電流に基づいて、前記調整用変圧器の一次側から二次側に電流が流れている場合を順潮流、前記調整用変圧器の二次側から一次側に電流が流れている場合を逆潮流として検出する電力方向継電器とを具備し、
前記タップ切替制御回路は、
前記電源方向判定部が前記順送電を判定しているときには、前記電圧調整継電器からのタップ切替指令を前記タップ切替器に与え、前記電源方向判定部が逆送電を判定しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、
前記タップ切替器のタップが前記予め指定したタップ位置に固定された後、前記位相変化検出部が位相の変化を検出すると潮流が変化したものと判定して前記電圧調整継電器からのタップ切替指令を前記タップ切替器に与え、
停電が回復した直後に限り、前記電力方向継電器が前記逆潮流を検出しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、前記電力方向継電器が前記順潮流を検出しているときは、前記電源方向判定部を順送電を判定しているものとする初期状態にし、停電が回復した直後に前記予め指定したタップ位置に前記タップを切り替えて固定した後に、前記電力方向継電器が前記順潮流を検出したときには、前記電源方向判定部を順送電を判定しているものとする初期状態にすることを特徴とする自動電圧調整器。
【請求項2】
タップ切替器付きの調整用変圧器と、
前記調整用変圧器の二次側の電圧を検出する計器用変圧器と、
前記調整用変圧器を通して流れる電流を検出する計器用変流器と、
前記計器用変圧器の検出電圧に基づいて前記タップ切替器を切り替えて前記調整用変圧器の二次側電圧を調整するタップ切替指令を発生する電圧調整継電器とを備えた自動電圧調整器の制御方法であって、
前記計器用変流器の検出電流に基づいて、前記調整用変圧器の一次側から二次側に電流が流れている場合を順潮流、前記調整用変圧器の二次側から一次側に電流が流れている場合を逆潮流として検出する電力方向継電器を更に設け、
タップ切替前の前記計器用変圧器の検出電圧とタップ切替後の前記計器用変圧器の検出電圧との電圧差が予め定めた閾値より大きい場合には電源から前記調整用変圧器の一次側に電力が供給される順送電が行われているものと判定し、前記電圧差が前記閾値より小さい場合は前記電源から前記調整用変圧器の二次側に電力が供給される逆送電が行われているものと電源方向判定部で判定し、
前記計器用変圧器の検出電圧と前記計器用変流器の検出電流とに基づいて前記検出電圧と前記検出電流の位相の変化を位相変化検出部で検出し、
前記電源方向判定部が前記順送電を判定しているときには、前記電圧調整継電器からのタップ切替指令を前記タップ切替器に与え、前記電源方向判定部が逆送電を判定しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、
前記タップ切替器のタップが前記予め指定したタップ位置に固定された後、前記位相変化検出部が位相の変化を検出すると潮流が変化したものと判定して前記電圧調整継電器からのタップ切替指令を前記タップ切替器に与え、
停電が回復した直後に限り、前記電力方向継電器が前記逆潮流を検出しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、前記電力方向継電器が前記順潮流を検出しているときは、前記電源方向判定部を順送電を判定しているものとする初期状態にし、停電が回復した直後に前記予め指定したタップ位置に前記タップを切り替えて固定した後に、前記電力方向継電器が前記順潮流を検出したときには、前記電源方向判定部を順送電を判定しているものとする初期状態にすることを特徴とする自動電圧調整器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動電圧調整器及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電系統においては、電力の需給バランスを図ったり、工事の際の停電を防いだりするために、通常の配電系統から系統切替を行って他の系統から電力を融通することがある。このような配電系統においては、配電線の系統切替により、自動電圧調整器の二次側から一次側に電力が逆送される(電力の逆潮流が生じる)ことがある。更に系統に分散型電源が配置されている場合、系統切替がなされていなくても、分散型電源の出力変動により、頻繁に逆潮流が発生することがある。自動電圧調整器は配電線で分散型電源による電力の逆潮流が生じたときには、系統切替による電力の潮流が逆方向であるときと同じようにタップ切替を行っても正しい電圧調整を行うことはできない。そのため、従来の分散型電源対応型の自動電圧調整器では、系統の各部の電圧が異常になるのを防ぐために、電力方向継電器(67リレー)を用いて逆潮流時に自動電圧調整器の電源方向を判定し、系統の逆送電時のみタップを固定したり、調整用変圧器の一次側の電圧を目標電圧に近付けるようにタップ切替を行うなどの対策を講じている。このような対策のために、特許第4224309号公報(特許文献1)には、遠隔制御機能を有する分散型電源対応自動電圧調整器に電算機から電源方向の情報を与えて、順送電時及び逆送電時における適切なタップ切替を行わせる技術が開示されている。
【0003】
また、特許第3992212号公報(特許文献2)には、一次電圧及び二次電圧の変化量を比較して、電源方向を判定して逆潮流に対応する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4224309号公報
【特許文献2】特許第3992212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術では、通信機能を有さず、遠隔制御されることがない自動電圧調整器には、適用することが出来ない。
【0006】
また、特許文献2に記載の従来技術では、自動電圧調整器の二次側から一次側へ電力の逆潮流が発生した場合にのみ電源方向を判定するために、配電系統が逆送電で、分散型電源が自動電圧調整器の一次側にあり、一次側から二次側へ電力の逆潮流(逆送電に対して逆方向)が発生した場合における電圧調整を考慮できない。そのため、この場合では自動電圧調整器の一次側が電圧管理値を逸脱する恐れがあった。さらに特許文献2の発明では、分散型電源の出力変動により、頻繁に電力方向継電器(67リレー)が逆潮流検出を繰り返すことにより、無駄なタップ切替動作を繰り返して、自動電圧調整器のタップ切替器の運用寿命を縮めてしまう問題があった。
【0007】
また、逆潮流でも二次側電圧調整を行う従来の電力方向継電器(67リレー)を用いない一般型自動電圧調整器を利用する方法では、配電自動化システムによる配電系統の事故区間切り離しによる系統の停電回復後に、自動電圧調整器の潮流方向が逆潮流になっても、二次側電圧調整をするために、不要なタップ切替動作をして、即座に配電線の電圧を安定に保つことができない問題が発生する恐れがある。
【0008】
本発明の目的は、電力方向継電器(67リレー)によるタップ固定動作をしないことで、分散型電源の出力変動により、無駄なタップ切替動作をすることがない自動電圧調整器及びその制御方法を提供することにある。
【0009】
上記目的に加えて、本発明の他の目的は、配電系統の停電回復後においても潮流方向によらず配電線の電圧を安定に保つことができる自動電圧調整器及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の自動電圧調整器は、タップ切替器付きの調整用変圧器と、調整用変圧器の二次側の電圧を検出する計器用変圧器と、調整用変圧器を通して流れる電流を検出する計器用変流器と、計器用変圧器の検出電圧に基づいて前記タップ切替器を切り替えて調整用変圧器の二次側電圧を調整するタップ切替指令を発生する電圧調整継電器(90リレー)と、電源方向判定部(V2判定)と位相変化検出部と、タップ切替器に与えるタップ切替指令を制御するタップ切替制御回路とを具備している。タップ切替制御回路が、電圧調整継電器(90リレー)からのタップ切替指令をタップ切替器に与える。電源方向判定部(V2判定)は、タップ切替前の計器用変圧器の検出電圧とタップ切替後の計器用変圧器の検出電圧との電圧差が予め定めた閾値より大きい場合には電源(すなわち変電所)から調整用変圧器の一次側に電力が供給される順送電が行われているものと判定し、電圧差が閾値より小さい場合は電源(すなわち変電所)から調整用変圧器の二次側に電力が供給される逆送電が行われているものと判定する。位相変化検出部は、計器用変圧器の検出電圧と計器用変流器の検出電流とに基づいて検出電圧に対する検出電流の位相の変化を検出する。そしてタップ切替制御回路は、電源方向判定部(V2判定)が順送電を判定しているときには、電圧調整継電器(90リレー)からのタップ切替指令をタップ切替器に与え、電源方向判定部(V2判定)が逆送電を判定しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定する。そしてタップ切替制御回路は、タップ切替器のタップが予め指定したタップ位置に固定された後、位相変化検出部が電圧と電流の位相差の変化から潮流変化を判定して電圧調整継電器(90リレー)からのタップ切替指令をタップ切替器に与える。
【0011】
このようにタップ切替制御回路を構成すると、通常の動作時に逆送電が発生したことを電源方向判定部(V2判定)で判定して、タップの固定を行う。そしてタップを固定した後は、位相変化検出部の出力に基づいて潮流の変化を判定すると、固定タップから電圧調整継電器(90リレー)の出力に基づくタップ切替に切り替わる。したがって本発明によれば、通常の動作時において電力方向継電器(67リレー)を用いることなく、電源方向判定部(V2判定)の判定によりタップ固定動作をするので、分散型電源の出力変動による潮流変化によって、無駄なタップ切替動作をすることがない。
【0012】
配電系統の停電回復直後に、潮流方向が逆潮流になっている場合でも二次側電圧調整を続けると二次側電圧が電圧調整継電器(90リレー)の動作電圧の不感帯内にあると、タップ切替動作が行われないため、電源方向判定部(V2判定)による判定が行われず、その時のタップ位置によっては一次側電圧が電圧管理値を逸脱する恐れがある。そこでこれを防ぐために、停電回復時のみ動作する電力方向継電器(67リレー)を設けておく。そして、タップ切替制御回路は、停電が回復した直後に限り、電力方向継電器(67リレー)が逆潮流を検出しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、電力方向継電器(67リレー)が順潮流を検出しているときは、電源方向判定部(V2判定)を順送電を判定しているものとする初期状態にすればよい。さらにタップ切替制御回路は、停電が回復した直後に予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定した後には、電力方向継電器(67リレー)が順潮流を検出したときに、電源方向判定部(V2判定)を順送電を判定しているものとする初期状態にする。このようにすると停電回復直後に直ぐに電源方向判定部(V2判定)が動作できないときでも、電力方向継電器(67リレー)が、停電回復時における逆潮流を検出してタップ固定動作を実施する。そして停電回復時に、電力方向継電器(67リレー)が順潮流を検出するか、タップ固定動作後に逆潮流から順潮流への変化を検出すると、電源方向判定部(V2判定)を初期状態(順送電を判定する状態)にして、通常動作を行えるようにしている。したがって配電系統の停電回復後においても潮流方向によらず配電線の電圧を安定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は本発明の自動電圧調整器の実施の形態の一例の構成を示すブロック図であり、(B)は判定制御部の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の実施の形態を制御する制御方法を実施するために用いるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図3】
図2のステップST10の「V2判定」の詳細フローチャートを示すフローチャートである。
【
図4】(A)及び(B)は、電源方向の誤判定が起きる場合を説明するために用いる二次電圧と分散型電源の出力の時間変化の対比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の自動電圧調整器の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1(A)は、本発明の自動電圧調整器の実施の形態の一例の構成を示すブロック図である。
図1(A)に示す自動電圧調整器1において、2は負荷時タップ切替器3を備えた調整用変圧器であり、4及び5はそれぞれ調整用変圧器2の一次側及び二次側に接続された配電線(例えば6.6kV配電線)である。また6は自動電圧調整器1の二次側の電圧を検出する計器用変圧器(PT)、7は自動電圧調整器1の二次側を流れる電流を検出する計器用変流器(CT)、8は計器用変圧器6により検出される二次側の電圧を目標電圧に保つようにタップ切替器3にタップ切替指令を与える電圧調整継電器(90リレー)である。電圧調整継電器8は、計器用変圧器6の検出電圧から自動電圧調整器1の二次側の電圧を検出して、二次側の電圧を目標電圧に保つようにタップ切替器3にタップ切替指令を与える。
【0015】
9は計器用変圧器6の検出電圧と計器用変流器7の検出電流とを入力として調整用変圧器2を通して流れる電力の潮流の方向を検出する電力方向継電器(67リレー)である。電力方向継電器9は、自動電圧調整器1の二次側の電圧位相を基準にして電流位相を監視することにより、潮流方向の判定を行っている。
【0016】
10は、判定制御部である。本実施の形態の判定制御部10は、
図1(B)に示すように、電源方向判定部11と、位相変化検出部12とタップ切替制御回路13とを備えている。電源方向判定部11は、タップ切替前の計器用変圧器6の検出電圧とタップ切替後の計器用変圧器6の検出電圧との電圧差が予め定めた閾値より大きい場合には配電線4の図示しない電源(すなわち変電所)から調整用変圧器2の一次側に電力が供給される順送電が行われているものと判定し、電圧差が閾値より小さい場合は電源(すなわち変電所)から調整用変圧器2の二次側に電力が供給される逆送電が行われているものと判定する。逆送電は、電力系統の変更により発生する。なお電源方向判定部11は、停電回復後には電圧差を検出することができない。したがって初期状態では、順送電が行われているものと判定する状態になる。
【0017】
位相変化検出部12は、通常動作時において、電力方向継電器9を利用せずに、潮流の変化を位相変化から検出する目的で設けられている。位相変化検出部12は、計器用変圧器6の検出電圧と計器用変流器7の検出電流とに基づいて検出電圧と検出電流の位相の変化を検出する。
【0018】
タップ切替制御回路13は、停電対応復帰機能を有するタップ切替制御回路であり、14は制御用の電源回路である。電源回路14は、系統で停電が発生した場合、電源供給を停止し、停電復帰直後に電源復帰信号(パワーオンリセット信号)をタップ切替制御回路13へ送出し、タップ切替制御回路13が回復動作モードで復帰動作する。
【0019】
タップ切替制御回路13は、通常時の動作では電源方向判定部11が順送電を判定しているときには、電圧調整継電器8からのタップ切替指令をタップ切替器3に与え、電源方向判定部11が逆送電を判定しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定する。そしてタップ切替制御回路13は、電圧調整継電器8からのタップ切替指令をタップ切替器3に与える。このように構成されたタップ切替制御回路13を用いると、配電系統が逆送電で、分散型電源が自動電圧調整器1の一次側にあり、一次側から二次側へ電力の逆潮流(逆送電に対して逆方向)が発生したことを電源方向判定部11で判定して、タップの固定を行うことができる。したがって本実施の形態によれば、分散型電源の出力変動による潮流変化によって、無駄なタップ切替動作をすることがない。
【0020】
配電系統の停電回復直後に、潮流方向が逆潮流になっている場合に、二次側電圧調整を続けると二次側電圧が電圧調整継電器8の動作電圧の不感帯内にあると、タップ切替動作が行われないため、電源方向判定部11による判定が行われず、その時のタップ位置によっては一次側電圧が電圧管理値を逸脱する恐れがある。そこで本実施の形態では、停電回復時のみ動作する電力方向継電器9を設けている。なお停電回復の有無(停電情報)は、電源回路14の出力が発生するか否かに基づいて判断する。
【0021】
タップ切替制御回路13は、停電が回復した直後に限り、電力方向継電器9が逆潮流を検出しているときには、予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定し、電力方向継電器9が順潮流を検出しているときは、電源方向判定部11を順送電を判定しているものとする初期状態にする。さらにタップ切替制御回路13は、停電が回復した直後に予め指定したタップ位置にタップを切り替えて固定した後には、電力方向継電器9が順潮流を検出したときに、電源方向判定部11を順送電を判定しているものとする初期状態にする。このようにすると停電回復直後に直ぐに電源方向判定部11が動作できないときでも、電力方向継電器9が、停電回復時における逆潮流を検出してタップ固定動作を実施する。そして停電回復時に、電力方向継電器9が順潮流を検出するか、タップ固定動作後に逆潮流から順潮流への変化を検出すると、電源方向判定部11を初期状態(順送電を判定する状態)にして、通常動作を行えるようにしている。したがって配電系統の停電回復後においても、無駄なタップ切替動作を行うことなく、潮流方向によらず配電線の電圧を安定に保つことができる。
【0022】
図2は、
図1の実施の形態の判定制御部10をコンピュータを用いて実現する場合に用いるソフトウエアのアルゴリズムを示すフローチャートである。ステップST1では、停電情報(停電から回復したか否かの情報)の有無が確認される。停電及び停電の回復の検知は、電源回路14からの電源復帰信号(パワーオンリセット信号)の有無によって検知できる。ステップST1で停電からの回復が検知されると、ステップST2では電力方向継電器9の出力に基づいて調整用変圧器2を流れる電力の潮流の方向を判定する。ステップST2で、順送電(順潮流)が検知されると、ステップST3へと進んで後述するステップST5の「V2判定」の初期状態を「順送電」にセットする。ステップST2で、逆送電(逆潮流)が検知されると、ステップST4へ進んで逆相タップ固定(タップ切替器3のタップを、所定のタップに固定するタップ切替指令をタップ切替器3に出力する動作)が実施される。ステップST2へ戻り、電力方向継電器9による潮流方向の変化が判定される。潮流方向の変化が無く、逆潮流の間は逆送タップ固定が継続される。そして潮流方向が変化して、潮流方向が順潮流になると、ステップST3へ進む。以後は、ステップST1へ戻り、ステップST1からステップST5へと進む。ステップST5〜ステップST12は、停電が回復した後の通常の動作モードを実施するステップである。
【0023】
ステップST5では、電源方向判定部11により「V2情報」の内容が「順送電」であるのか「逆送電」であるのかの判定が実施される。ステップST5で、「逆送電」が判定されると、ステップST6で逆送タップ固定のタップ切替指令が出力される。その後は、ステップST7で位相変化検出部12が位相の変化を検出すると「潮流変化」があったものと判定してステップST8へと進む。ステップST7で位相変化検出部12が位相の変化を検出しない場合には、「潮流変化」が無いものと判定してステップST1へと戻る。ステップST5で、後述するV2情報により「順送電」を判定したとき、そしてステップST7で「潮流変化」が有ることを検出すると、ステップST8へ進んで二次側電圧調整を実施する。ステップST8でタップ切り替えが実行されたか否かが、ステップST9で判定される。そしてタップ切り替えが実施されたときには、ステップST10で「V2情報」の判定が実施される。ステップST10では、タップ切替前の計器用変圧器6の検出電圧とタップ切替後の計器用変圧器6の検出電圧との電圧差が予め定めた閾値より大きい場合には配電線4の図示しない電源(すなわち変電所)から調整用変圧器2の一次側に電力が供給される順送電が行われているものと判定し、電圧差が閾値より小さい場合は電源から調整用変圧器2の二次側に電力が供給される逆送電が行われているものと判定する。ステップST11は、ステップST10で順送電であることが判定されると、ステップST5における「V2情報」として順送電をセットする。ステップST12は、ステップST10で逆送電であることが判定されると、ステップST5における「V2情報」として逆送電をセットする。ステップST5の「V2情報」が「逆送電」になると、ステップST6で逆送タップ固定が実施される。
【0024】
本実施の形態では、タップ切替器3は、タップ切替制御回路13から与えられるタップ切替指令に応じて調整用変圧器2のタップを切り替えて、自動電圧調整器1の二次側の電圧を目標電圧に近付けるように(二次側の電圧と目標電圧との差を許容範囲に収めるように)調整する。電源方向が順方向のときは、二次側の電圧が目標電圧よりも低くなったときに電圧調整継電器8が昇圧指令を発生し、これにより調整用変圧器2のタップを昇圧側に切り替えて二次側の電圧と目標電圧との差を許容範囲以下にするように電圧を調整する。また二次側の電圧が目標電圧を超えたときには電圧調整継電器8が降圧指令を発生し、これにより調整用変圧器2のタップを降圧側に切り替えて二次側の電圧と目標電圧との差を許容範囲以下とするように電圧を調整する。電源方向が逆方向のときは、二次側電圧が目標電圧より低くなると、計器用変圧器6の検出電圧も低下するため、電圧調整継電器8は昇圧指令を発生することになる。これによりタップ切替器3は調整用変圧器2のタップを電力順送時の昇圧側に切り替えるが、このタップ切替方向は逆送時には一次側の電圧を低下させる方向(降圧側)となるため、一次側の電圧が低下する。このときタップ切替は配電線4側で行われるため、タップが切り替えられても計器用変圧器6の検出電圧は変化せず、電圧調整継電器8に加わる電圧は目標電圧よりも低いままの状態にある。そのため、電圧調整継電器8は昇圧指令を発生し続けることになり、タップ切替器3はタップを電力順送時の昇圧側(逆送時の降圧側)の最終タップまで切り替えることになる。このようにすると、自動電圧調整器1で電力の逆潮流が生じている状態では、タップが逆送時の降圧側の最終タップまで切り替えられるため、一次側の電圧が異常に低下することになり、配電系統の電圧が乱れることになる。そこでこのような異常状態が生じるのを防ぐため、本実施の形態では、ステップST5で逆送電を判定すると、電力の逆送時に調整用変圧器2のタップを予め指定したタップ(例えば素通しタップ)に固定するようにしている。
【0025】
図3は、ステップST10の「V2判定」の詳細フローチャートを示している。ステップST20は、V2判定を実行するか否かを切替信号の有無により判定する。ステップST20で切替信号がない場合には、タップ切替が実施されていないので、「V2判定」は実行されない。ステップST20で切替信号がある場合には、ステップST21に進む。ステップST21では、タップ切替前の計器用変圧器6の検出電圧を設定変更可能な測定期間における移動平均値とし演算する。具体的には1秒間における移動平均値を演算している。測定期間が例えば2秒あれば、電源周波数60Hzにおいて120サイクルの平均値を演算することになる。なお測定期間を設定変更可能にすれば、後述する設置状態の違いによる電源方向の誤判定を防止できる。この演算が終了すると、ステップST22でステップST8及びステップST9で決定されたタップ切替が実行される。次にステップST23で、経過期間(ウエイト2秒)の経過を待つ。このような経過期間を設けることにより、電源方向の誤判定を防止している。タップ切替後の計器用変圧器6の検出電圧は、設定変更可能な経過期間(ウエイト2秒)が経過した後、ステップST24で設定変更可能な測定期間における移動平均値として演算する。この測定期間は、前述のステップST21における測定期間と同じである。ステップST25では、タップ切替前の計器用変圧器6の検出電圧とタップ切替後の計器用変圧器6の検出電圧との電圧差を求め、予め定めた閾値より大きい場合には電源方向が順方向であると判定し(ステップST26)、電圧差が閾値より小さい場合は電源方向が逆方向であると判定する(ステップST27)。ここで閾値は、タップ間電圧の中間値付近とするのが好ましい。閾値は、系統が順送電であれば、電圧差はほぼタップ間電圧程度となり、系統が逆送電であれば電圧差は0V付近となるため、その中間値を閾値とすれば問題がないとの考えにより定めた。
【0026】
タップ切替後の計器用変圧器6の検出電圧を、設定変更可能な経過期間が経過した後の設定変更可能な測定期間における移動平均値とするのが好ましい。移動平均値を用いて、測定期間の間に経過期間をおくと、ノイズの影響を殆ど受けることなく、電圧差を求めることができる。特に各期間を設定変更可能にすることにより、タップ切替器3の機構の違いによる切替時間の差異や、設置状況に応じた適切な期間の設定が可能になる。
【0027】
本実施の形態では、図示しない設定器の操作により、ステップST21及びステップST24における測定期間、ステップST23における経過期間、及びステップST25における閾値を設定変更可能なものとしている。本実施の形態では、これらのパラメータを設定変更することにより誤判定を防止することができる。
図4(A)及び(B)は誤判定が起きる場合を説明するために用いる二次電圧と分散型電源の出力の時間変化の対比を示している。自動電圧調整器1の二次側に太陽光発電インバータからなる分散型電源が設けられている場合、太陽光発電インバータが連系した直後は、系統に影響を与えないように、0kW連系から徐々に出力を上げる。そして出力上昇に合わせて、連系点を中心に配電線の全体の電圧も上昇していき,最大点で電圧は安定する。太陽光発電インバータの出力上昇中に、自動電圧調整器1の設置点の潮流方向が変わるときに、二次側電圧調整中の自動電圧調整器1のタップ切替のタイミングがちょうど重なる場合に誤判定が発生する恐れがある。
図4の場合には、5番タップから4番タップに1タップ降圧している。そして
図4の例では、自動電圧調整器1の二次電圧は1タップ下がるが、太陽光発電インバータの出力が上昇中のため、また電圧はその後も上昇する。この場合には、タップ切替前後の移動平均値を測定期間N1及びN2で演算して電圧差をとると、0V付近になってしまい、電源方向を逆送電状態と誤判定することがある。誤判定の原因は、タップ切替前後の移動平均値を測定する測定期間N1及びN2と判定レベル(閾値)が不適切な場合が考えられる。そこで本実施の形態のように、図示しない設定器により、配電線の設置状況に応じて測定期間及び閾値を変更できるようにしておけば、適切な設定を行うことにより誤判定を少なくすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、電力方向継電器によるタップ固定動作をしないことで、分散型電源の出力変動により、無駄なタップ切替動作をすることなく、さらに配電系統の停電回復後においても潮流方向によらず配電線の電圧を安定に保つことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 自動電圧調整器
2 調整用変圧器
3 タップ切替器
6 計器用変圧器
7 計器用変流器
8 電圧調整継電器
9 電力方向継電器
10 判定制御部
11 電源方向判定部
12 位相変化検出部
13 タップ切替制御回路
14 電源回路