【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年 3月 8日 北部墓地公園運動施設場(三重県)において試験 平成24年 3月 8日 日本放送協会が、テレビ番組「ほっとイブニングみえ」にて公開 平成24年 3月13日 株式会社シー・ティー・ワイが、ケーブルテレビ番組「NEWSエリア便」にて公開 平成24年 3月14日 株式会社シー・ティー・ワイにより、下記ウェブサイトにて公開「http://www.cty−net.ne.jp/streaming/cms/top.cgi」 平成24年 4月18日 日本放送協会により、テレビ番組「ほっとイブニングみえ東海モノ語り」にて公開 平成24年 4月23日 日本放送協会により、テレビ番組「NHKニュースおはよう日本」にて公開 平成24年 4月24日 日本放送協会により、テレビ番組「NHKBS列島ニュース」にて公開 平成24年 5月 6日 株式会社毎日新聞社発行の毎日新聞第25面にて公開 平成24年 6月11日 株式会社ヤマナカ製作所発行のパンフレット「yamanaka株式会社ヤマナカ製作所+三重大学大学院 工学研究科 川口研究室 川口淳准教授 共同研究 耐震シェルター」にて公開 平成24年 6月30日 公益財団法人三重県産業支援センター発行の「MIESC(ミエスク)2012夏号 Vol.45」の第10頁〜第11頁にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記各特許文献には、木造建築物と鉄鋼構造のシェルターとを連結して一体の構造物とする発明が開示されている。一般的に、建築物の設計においては、耐震性を考慮し、重心と剛心とが略一致するように設計が行なわれる。これにより、地震時に受ける振動に対しても、不要な外力(モーメント)が建築物に加わることを抑制し、建築物の耐震性を確保している。
【0005】
しかし、既設木造建築物に鉄鋼構造のシェルターを後から付加し一体化した場合には、木造建築物とシェルターとからなる構造物において、重心と剛心とがずれる場合が生じる。構造物の重心と剛心とがずれると、地震時に発生する振動に対し不要な外力(モーメント)が構造物に加わる。
【0006】
特に、木造建築物側においては、本来損傷が発生しない大きさの地震の振動に対しても、重心と剛心とがずれた結果、強度が弱い木造建築物側に大きな外力(モーメント)が加わることが考えられる。その結果、本来損傷が発生しない大きさの地震が発生した場合でも、木造建築物に損傷を生じさせるおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、既設木造建築物の内部に、木造住宅用地震シェルターを設けた場合であっても、本来損傷が発生しない大きさの地震が発生した場合には、既設木造建築物に損傷を与えることのない、木造住宅用地震シェルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に基づいた木造住宅用地震シェルターにおいては、地層部の地層表面上に建設された既設木造建築物の内部に、上記既設木造建築物とは連結されることなく独立に組み立てられる木造住宅用地震シェルターであって、上記地層部に埋設されるとともにその表面が上記地層表面上に露出するシェルター用基礎部材と、上記シェルター用基礎部材上に固定され、複数の鉄骨鋼材を用いて箱状に組み立てられる鉄骨枠組構造体とを備える。
【0009】
上記既設木造建築物は、上記地層部に埋設されるとともにその表面が上記地層表面上に露出する木造建築物用基礎部材上に建設されており、上記既設木造建築物は、水平方向において上記鉄骨枠組構造体の外側に位置する側壁部材、および、上方向において上記鉄骨枠組構造体の上側に位置する天井部材を有する。
【0010】
上記シェルター用基礎部材の上記木造建築物用基礎部材に対向する端面は、上記木造建築物用基礎部材の上記シェルター用基礎部材に対向する端面に対して、第1の寸法以上の隙間を設けるように組み立てられている。
【0011】
上記鉄骨枠組構造体の上記側壁部材に対向する側面は、上記側壁部材の上記鉄骨枠組構造体に対向する側面に対して、第2の寸法以上の隙間を設けるように組み立てられている。
【0012】
上記鉄骨枠組構造体の上記天井部材に対向する上面は、上記天井部材の上記鉄骨枠組構造体に対向する下面に対して、第3の寸法以上の隙間を設けるように組み立てられている。
上記シェルター用基礎部材の底面は、上記木造建築物用基礎部材の底面よりも上記地層表面側に位置している。
【0013】
他の形態においては、上記第1の寸法は、上記
シェルター用基礎部材の端面の底面側から下方に延びる鉛直線に対して上記地層表面側に向かって45度の角度範囲よりも上記地層表面側に上
記木造建築物用基礎部材の上記端面が位置する寸法であり、上記第2の寸法は、上記鉄骨枠組構造体の高さの60分の1〜20分の1であり、上記第3の寸法は、上記鉄骨枠組構造体の最少幅の60分の1〜20分の1である。
【0014】
他の形態においては、上記鉄骨枠組構造体はラーメン構造であ
り、上記既設木造建築物に設けられていたドア、ふすま戸、窓等をそのまま利用することができ、上記複数の鉄骨鋼材を用いて箱状に組み立てられる上記鉄骨枠組構造体の基礎側底面に平行に設けられた複数の下部補強部材と、上記鉄骨枠組構造体の天井側にある平行に設けられた上部補強部材を有し、上記上部補強部材と上記下部補強部材の配置方向が直交する方向に配置されており、上記上部補強部材の本数は上記下部補強部材の本数より多く設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設木造建築物の内部に、木造住宅用地震シェルターを設けた場合であっても、本来損傷が発生しない大きさの地震が発生した場合には、既設木造建築物に損傷を与えることのない、木造住宅用地震シェルターを提供することを可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に基づいた実施の形態における木造住宅用地震シェルターについて、以下、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態において、鋼材、個数、量などに言及する場合、あくまでも一例であって、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその鋼材、個数、量などに限定されない。また、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。また、各実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。
【0018】
(木造住宅用地震シェルター100)
図1から
図6を参照して、本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100の構造について説明する。
図1は、本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100の構造を示す斜視図、
図2は、
図1中の矢印II方向(水平方向)から見た側面図、
図3は、
図1中の矢印III方向(水平方向)から見た側面図、
図4は、本実施の形態における木造住宅用地震シェルターに用いられる継手の構造を示す斜視図、
図5は、
図2中のV−V線矢視断面図、
図6は、
図2中のVI−VI線矢視端面図である。
【0019】
まず、
図1を参照して、本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100は、地層部に埋設されるとともにその表面が地層表面上に露出するシェルター用基礎部材120と、シェルター用基礎部材120上にアンカーボルト等の締結部材を用いて固定され、複数の鉄骨鋼材を用いて箱状に組み立てられる鉄骨枠組構造体110とを備える。
【0020】
シェルター用基礎部材120は、内部に鉄筋、メッシュ筋等が配設された鉄筋コンクリート基礎である。厚さ(H2(
図2、
図3参照))は、約10cmから約20cm程度であり、本実施の形態では、平面視において正四角形の形状を有している。一辺の長さ(W12(
図2、
図3参照))は、設置すべき現場によって様々ではあるが、本実施の形態では、約2.5m程度である。また、シェルター用基礎部材120の表面には、鉄骨枠組構造体110を固定するためのアンカーボルトAB10が、所定の間隔で埋設されている。なお、シェルター用基礎部材120の形状は、正方形に限定されず、長方形等の他の形状を採用することも可能である。
【0021】
図2から
図4に示すように、鉄骨枠組構造体110は、複数の鉄骨鋼材を用いて箱状に組み立てられている。本実施の形態においては、鉄骨枠組構造体110には、門形のラーメン構造を用いている。大きさは、高さ(H1)が約3m、幅(W1)が約3mmである。
【0022】
鉄骨枠組構造体110は、下部の4辺に下部梁鋼材111が配置され、下部梁鋼材111同士は、角部において、
図4に示す継手114を用いて連結されている。下部梁鋼材111には、本実施の形態では、H−198mm×99mm×4.5mm×7mmのH型鋼が用いられている。H型鋼には、強度を補強する目的から適宜スチフナー(補強プレート)を、フランジ内面に設けるとよい(以下に示すH型鋼も同様)。継手114には、下部梁鋼材111と同様のH型鋼と角径鋼管(200mm×200mm×4.5mm)が用いられている。
【0023】
下部梁鋼材111と継手114との連結には、添え板P10とボルト/ナットB10とが用いられる。ボルト/ナットB10には、高張力の鋼で作られた摩擦接合用の高強度ボルトを用いるとよい。また、下部梁鋼材111および継手114と添え板P10との接合面には、ショットブラスト処理を施し、摩擦係数を高めることで、下部梁鋼材111および継手114と添え板P10との間の滑り防止を高めることができる。以下、他の枠鋼材と継手114との連結も同様である。
【0024】
鉄骨枠組構造体110の四隅には、上方に延びる柱鋼材112が設けられている。柱鋼材112には、下部梁鋼材111と同じ、H−198mm×99mm×4.5mm×7mmのH型鋼が用いられている。柱鋼材112と継手114とは溶接により接合される。
【0025】
柱鋼材112の上部には、上部の4辺に上部梁鋼材113が配置され、上部梁鋼材113同士は、角部において、継手114を用いて連結されている。上部梁鋼材113には、下部梁鋼材111と同じ、H−198mm×99mm×4.5mm×7mmのH型鋼が用いられている。
【0026】
図5を参照して、下部梁鋼材111および継手114によって取り囲まれる下部枠111Aの内部には、水平方向に延びる下部補強鋼材115が所定の間隔で配置されている。本実施の形態では、3本の下部補強鋼材115が略均等間隔で配置されている。下部補強鋼材115には、H−175mm×90mm×5mm×8mmのH型鋼が用いられている。下部補強鋼材115には、所定の位置にアンカーボルトAB10を締結するためのアンカープレートAP10が取り付けられている。
【0027】
図6を参照して、上部梁鋼材113および継手114によって取り囲まれる上部枠113Aの内部には、下部補強鋼材115に対して直交する方向に延びる上部補強鋼材116が所定の間隔で配置されている。本実施の形態では、5本の上部補強鋼材116が略均等間隔で配置されている。上部補強鋼材116には、H−150mm×75mm×5mm×7mmのH型鋼が用いられている。
【0028】
下部補強鋼材115と上部補強鋼材116とが直交するように配置することで、鉄骨枠組構造体110に加わる外力(特にねじれ力)に対する対抗力を高めることができる。また、下部補強鋼材115に比べて上部補強鋼材116のサイズを下げ、本数を増加させているのは、上部補強鋼材116の本数を増加し、間隔を小さくすることで、既設木造建築物200が崩壊した場合に、既設木造建築物200の構成部材の鉄骨枠組構造体110内部への侵入を防止し易くするためである。また、サイズを下げるのは、本数が増加することによる重量の増加を抑制するためである。
【0029】
(防護性能確認試験)
上記構成を有する鉄骨枠組構造体110に対して、防護性能確認試験を行なった、試験は、地表に鉄骨枠組構造体110を載置し、地表から6mの高さから、袋詰めした4t分の砕石を鉄骨枠組構造体110の天面に落下させた。その結果、鉄骨枠組構造体110の内部空間は確保され、鉄骨枠組構造体110の強度に問題はなく、既設木造建築物200よりも耐震性能が高いことが確認できた。
【0030】
(施工方法)
次に、
図7から
図11を参照して、本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100の既設木造建築物200への施工方法について説明する。なお、
図7から
図11は、木造住宅用地震シェルター100の既設木造建築物200への施工方法を示す第1図から第5図である。
【0031】
図7を参照して、本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100を施工する既設木造建築物200は、一般的には、木造軸組構造を有していることが多く、1階床部材210、天井部材220、側壁部材230、および屋根240を備える。この既設木造建築物200は、通常、地層部(BU:
図12参照)に埋設されるとともにその表面が地層表面(BS:
図12参照)に露出する木造建築物用基礎部材(300:
図12参照(布基礎等、独立基礎等のコンクリート基礎))上に建設されている。
【0032】
既設木造建築物200の内部に、木造住宅用地震シェルター100を組み立てるため、1階床部材210および天井部材220に、木造住宅用地震シェルター100の設置用の開口部210h,220hを設ける。
【0033】
次に、
図8を参照して、地層部(BU:
図12参照)に埋設されるとともにその表面が地層表面(BS:
図12参照)上に露出するシェルター用基礎部材120を、地層部(BU)に設ける。シェルター用基礎部材120は、上記したように、内部に鉄筋、メッシュ筋等が配設された鉄筋コンクリート基礎である。
【0034】
次に、
図9を参照して、シェルター用基礎部材120の上に、上記構成を有する鉄骨枠組構造体110を組み立てる。これにより、既設木造建築物200の内部に、木造住宅用地震シェルター100が完成する。この際、既設木造建築物200との間に設ける隙間の寸法関係については、
図12を用いて後述する。
【0035】
次に、
図10を参照して、既設木造建築物200の1階床部材210に設けた開口部210h、および天井部材220に設けた開口部220hの修復を行なう。
【0036】
図11を参照して、このように、鉄骨枠組構造体110に門形のラーメン構造を用いた場合、ラーメン構造は、ブレース(筋交い)を用いないことから、既設木造建築物200に設けられていたドア250、ふすま戸260、窓270等をそのまま利用することができる。その結果、既設の木造住宅の床と木造住宅用地震シェルター100が設けられた箇所の床とは分離しているものの、住居者は施工後も施工前とほぼ同じ住居環境の中で生活を行なうことができる。
【0037】
(施工状態)
次に、
図12を参照して、木造住宅用地震シェルターの既設木造建築物への施工状態について説明する。
図12は、木造住宅用地震シェルターの既設木造建築物への施工状態を示す側面図である。
【0038】
本実施の形態における木造住宅用地震シェルター100は、既設木造建築物200とは連結されることなく独立に建設される。したがって、既設木造建築物200と、この既設木造建築物200の外側に位置する木造住宅用地震シェルター100との間には、以下に示す隙間が設けられている。
【0039】
(基礎に設けられる第1の寸法S1)
まず、本実施の形態の木造住宅用地震シェルター100は、シェルター用基礎部材120の木造建築物用基礎部材300に対向する端面120tが、木造建築物用基礎部材300のシェルター用基礎部材120に対向する端面310tに対して、第1の寸法S1以上の隙間を設けるように組み立てられる。
【0040】
ここで、
図12においては、木造建築物用基礎部材300として、フーチング310を有する布基礎を図示し、フーチング310から上方に延び、地層表面BSから露出する起立部320の上に既設木造建築物200が建設されている場合を示している。フーチング310の幅は、約450mm程度、厚さは120mm程度である。フーチング310の埋め込み深さ(地層表面BSからフーチング310上面までの距離)は、約120mm程度である。なお、フーチング310の下方には、通常割栗石が施設されているが、図示を省略している。
【0041】
ここで、上記第1の寸法S1は、シェルター用基礎部材120の端面120tと、フーチング310の端面310tとの間の距離(隙間)を意味している。シェルター用基礎部材120の端面120tと、フーチング310の端面310tとの間に第1の寸法S1以上の隙間を、シェルター用基礎部材120の端面120tの全体にわたって設けておくことで、シェルター用基礎部材120に加わった荷重の木造建築物用基礎部材300への影響を低減させることができる。
【0042】
通常、シェルター用基礎部材120に加わった荷重の影響範囲は、木造建築物用基礎部材300の端面120tの底面側から下方に延びる鉛直線V1に対して地層表面BS側に向かって45度の角度範囲(ラインC1)内であると考えられている。したがって、このラインC1よりも地層表面BS側に木造建築物用基礎部材300の端面120tが位置するように、シェルター用基礎部材120を設けることが好ましい。
【0043】
具体的には、木造建築物用基礎部材300の内側にシェルター用基礎部材120を設ける場合の作業性も考慮して、第1の寸法S1は、300mmから500mmの距離を隔てて設けられる。これにより、上記45度の角度範囲(ラインC1)よりも地層表面BS側に木造建築物用基礎部材300が位置する状態で、シェルター用基礎部材120を設けることができる。
【0044】
なお、既設木造建物の木造建築物用基礎部材300には、フーチング310が設けられていない現場も存在する。この場合には、第1の寸法S1は、起立部320のシェルター用基礎部材120側の面とシェルター用基礎部材120の端面120tと間の距離となる。
【0045】
(側壁に設けられる第2の寸法S2)
また、本実施の形態の木造住宅用地震シェルター100は、鉄骨枠組構造体110の側壁部材230に対向する側面112sは、側壁部材230の鉄骨枠組構造体110に対向する側面230sに対して、第2の寸法S2以上の隙間を設けるように組み立てられている。
【0046】
ここで、鉄骨枠組構造体110の側面112sの位置は、既設木造建築物200の側壁部材230に最も近接する位置となる継手114のプレート端面の位置を意味する。なお、たとえば、柱鋼材112の側面が最も既設木造建築物200の側壁部材230の側面230sに近接するような場合には、柱鋼材112の側面位置が鉄骨枠組構造体110の側面112sの位置となる。
【0047】
このように、既設木造建築物200の側面230sと鉄骨枠組構造体110の側面112sとの間に第2の寸法S2以上の隙間を、鉄骨枠組構造体110の側面112sの全体にわたって設けておくことで、地震による外力が既設木造建築物200に加わり、既設木造建築物200に倒れが生じた場合であっても、既設木造建築物200と鉄骨枠組構造体110への接触を防止し、既設木造建築物200の主たる構造体への損傷を防ぐことができる。
【0048】
ここで、既設木造建築物200に対する地震時の変形量としては、以下のように考えることができる。
【0049】
ランク1(軽微)・・・残留変形なし
ランク2(小破)・・・1/60以下
ランク3(中破)・・・1/60以上1/20以下
ランク4(大破)・・・1/20以上1/10以下
ランク5(破壊)・・・1/10以上
そこで、第2の寸法S2としては、既設木造建築物200対してランク3(中破)の変形量が生じた場合でも、既設木造建築物200の主たる構造体への損傷を防ぐ観点から、第2の寸法S2は、鉄骨枠組構造体110の高さH1の60分の1〜20分の1であるとよい。
【0050】
(天井に設けられる第3の寸法S3)
また、本実施の形態の木造住宅用地震シェルター100は、鉄骨枠組構造体110の天井部材220に対向する上面113sは、天井部材220の鉄骨枠組構造体110に対向する下面220sに対して、第3の寸法S3以上の隙間を設けるように組み立てられている。
【0051】
ここで、鉄骨枠組構造体110の上面113sの位置は、既設木造建築物200の天井部材220に最も近接する位置となるボルト頭の位置を意味する。なお、たとえば、上部梁鋼材113の上面が最も既設木造建築物200の天井部材220の下面220sに近接するような場合には、上部梁鋼材113の上面位置が鉄骨枠組構造体110の上面113sの位置となる。
【0052】
このように、既設木造建築物200の天井部材220の下面220sと鉄骨枠組構造体110の上面113sとの間に第3の寸法S3以上の隙間を、鉄骨枠組構造体110の上面113sの全体にわたって設けておくことで、地震による外力が既設木造建築物200に加わり、既設木造建築物200に倒れが生じた場合であっても、既設木造建築物200と鉄骨枠組構造体110への接触を防止し、既設木造建築物200の主たる構造体への損傷を防ぐことができる。
【0053】
ここで、既設木造建築物200に対する地震時の変形量としては、上述のランク1から5が考えられ、第3の寸法S3としては、上記第2の寸法S2と同様に、既設木造建築物200対してランク3(中破)の変形量が生じた場合でも、既設木造建築物200の主たる構造体への損傷を防ぐ観点から、第3の寸法S3は、鉄骨枠組構造体110の最少幅W1の60分の1〜20分の1であるとよい。本実施の形態の鉄骨枠組構造体110の幅寸法は、平面視において縦横寸法が同じW1であるが、縦横寸法が異なる長方形形状のような場合には、最少幅を基準にして第3の寸法S3を決定するとよい。
【0054】
以上、本実施の形態に基づいた木造住宅用地震シェルターによれば、地層部BUの地層表面BS上に建設された既設木造建築物200の内部に、既設木造建築物200とは連結されることなく独立に建設されている。これにより、既設木造建築物200の重心および剛心位置は変化しないため、本来損傷が発生しない大きさの地震が発生した場合には、既設木造建築物に損傷を与えることはない。
【0055】
一方、既設木造建築物200に損傷を与えるような大きな地震が発生した場合には、既設木造建築物200には、大きな損傷が発生するものの、木造住宅用地震シェルター100は崩壊することがないために木造住宅用地震シェルター100内での居住者の安全性を確保することができる。
【0056】
なお、上記実施の形態では、既設木造建築物200の住居者に対する住居環境を、施工後も施工前と同じ生活を行なうことができるように、鉄骨枠組構造体110に門形のラーメン構造を採用する場合につて説明したが、施工の前後で、住居環境に変化が生じても良い場合には、ブレース(筋交い)を用いた鉄骨枠組構造体を用いることも可能である。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。