(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161917
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】車両用クーリングファン用制御システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20170703BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
B60R16/02 650J
B60R16/02 650P
B60R16/023 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-32187(P2013-32187)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-162252(P2014-162252A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】313000645
【氏名又は名称】三菱重工オートモーティブサーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】中野 浩児
(72)【発明者】
【氏名】上谷 洋行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦
【審査官】
岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−080384(JP,A)
【文献】
特開2005−299407(JP,A)
【文献】
特開2007−049835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載の熱交換器に空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置と、前記ファン制御装置の上位の車両を制御する第1制御装置と、前記車両の空気調和装置を制御する第2制御装置とを備える車両用クーリングファン用制御システムであって、
前記ファン制御装置と、前記第1制御装置と、前記第2制御装置とが車両ネットワークを介して相互に情報の授受可能に接続されており、
前記ファン制御装置は、前記モータ制御装置が備えるスイッチング素子に、火災や感電につながる危険性のある重要度の高い異常を検出した場合に、前記車両ネットワークを介して異常情報を出力し、
前記第1制御装置は、前記異常情報を取得した場合には、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置及び前記第2制御装置を保護制御する車両用クーリングファン用制御システム。
【請求項2】
前記第2制御装置は、前記重要度の高い異常が検出される場合以外の通常状態である場合に、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置を制御する請求項1に記載の車両用クーリングファン用制御システム。
【請求項3】
前記ファン制御装置と、前記第2制御装置とは、前記ファン制御装置内の前記スイッチング素子をデューティに応答して制御させるPWM(pulse width modulation)信号を授受する通信ネットワークで接続されており、
前記ファン制御装置は、PWM制御に基づいて、前記通信ネットワークを介して前記モータ制御装置の前記スイッチング素子を制御するPWM制御手段と、前記車両ネットワークを介して情報を授受する通信制御手段とを有しており、前記PWM制御手段及び前記通信制御手段のうち少なくともどちらか一方を介して、前記三相モータの回転数指示を取得する請求項1または請求項2に記載の車両用クーリングファン用制御システム。
【請求項4】
車載の熱交換器に空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置と、前記ファン制御装置の上位の車両を制御する第1制御装置と、前記車両の空気調和装置を制御する第2制御装置とを備える制御システムの制御方法であって、
前記ファン制御装置と、前記第1制御装置と、前記第2制御装置とが車両ネットワークを介して相互に情報の授受可能に接続されている場合に、
前記モータ制御装置に備えられるスイッチング素子に、火災や感電につながる危険性のある重要度の高い異常が検出された場合に、前記車両ネットワークを介して前記モータ制御装置から異常情報を出力させ、
前記異常情報を取得した場合には、前記第1制御装置によって、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置及び前記第2制御装置を保護制御する車両用クーリングファン用制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用クーリングファン用制御システム及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載の熱交換器のクーリングファンを制御するファン制御装置は、車両用ECU(Electronic Control Unit)の配下に配置されており、クーリングファン制御は、車両用ECUから出力されるPWM(pulse width moduration)信号のデューティ比によってモータの回転数制御が行われている。
モータ回転数は、車速、エンジン冷却水温、AC圧力に基づき速度制御される。エアコンがオン状態の場合は、エアコンの圧力信号と車両側から受けた車速信号に基づき、エアコンECUで必要ファン制御を演算し、車両用ECUに出力する。車両用ECUはその信号に、さらに車速とエンジン冷却水温を加味してファンモータの回転数を決定し、ファン駆動用PWM信号を出力する。一方、エアコンがオフ状態の場合は、車速とエンジン冷却水温に基づき車両用ECUでファン回転数を決定し、ファン駆動用PWM信号を出力する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような車両システム構成においては、クーリングファンを駆動させるファンモータに異常が発生した場合であっても、車両用ECUからファン制御装置側へPWM信号を一方的に送るだけであり、ファン制御装置側と車両用ECUとは通信手段が設けられておらず、車両側でファンモータの異常を発見できないという問題があった。また、個別のハーネスを介して車両用ECUとファン制御装置とが繋がれており、車両内配線が煩雑になるためファン制御装置側の異常を車両側に通知させることが困難であった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、簡便な配線でファンモータの異常を車両側で検出することのできる車両用クーリングファン用制御システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
【0006】
本発明は、車載の熱交換器に空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置と、前記ファン制御装置の上位の車両を制御する第1制御装置と、前記車両の空気調和装置を制御する第2制御装置とを備える車両用クーリングファン用制御システムであって、前記ファン制御装置と、前記第1制御装置と、前記第2制御装置とが車両ネットワークを介して相互に情報の授受可能に接続されており、前記ファン制御装置は、前記モータ制御装置が備えるスイッチング素子に
、火災や感電につながる危険性のある重要度の高い異常を検出した場合に、前記車両ネットワークを介して異常情報を出力し、前記第1制御装置は
、前記異常情報を取得した場合には、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置及び前記第2制御装置を保護制御する車両用クーリングファン用制御システムを提供する。
【0007】
このような構成によれば、車載の熱交換器に空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置と、ファン制御装置の上位の車両を制御する第1制御装置と、車両の空気調和装置を制御する第2制御装置とが車両ネットワークを介して相互に情報の授受可能に接続されており、モータ制御装置に備えられているスイッチング素子に異常が検出された場合に、モータ制御装置から車両ネットワークを介して異常情報が出力され、異常情報を取得した第1制御装置は、異常情報が重要度の高い異常である場合に、車両ネットワークを介してファン制御装置及び第2制御装置を保護制御する。
ここで、スイッチング素子は、半導体素子で構成されるパワートランジスタであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、及びIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が使用される。また、半導体材料としては、Si(シリコン)系半導体やSiC(炭化珪素)系半導体が用いられる。
【0008】
これにより、車両ネットワークを介して三相モータの異常情報が車両側に報告されるので、車両側でクーリングファンを駆動する三相モータの異常を検出でき、重要度の高い異常が生じた場合には車両側の制御装置(第1制御装置)から、空気調和装置を制御する第2制御装置とモータ制御装置とが保護制御されることにより、重大な事故を未然に防止することができ、原因究明に役立てることができる。ここで、重要度の高い異常情報とは、人に危害を加える可能性のある異常であり、例えば、過電流が頻繁に生じる、三相モータの絶縁不良・断線、短絡破壊など、火災や感電につながる危険性のある異常である。
また、ファン制御装置と第1制御装置と第2制御装置とはそれぞれ相互に車両ネットワークを介して情報の授受可能に接続されているので、ファン制御装置は、従来のPWM制御による回転数制御と比較してきめ細やかで速やかな反応が望めるので、三相モータの状態に応じて空気調和装置を精度よく制御でき、快適・緻密なエアコン制御につながる。
【0009】
上記車両用クーリングファン用制御システムの前記第2制御装置は、前記第2制御装置は、
重要度の高い異常が検出される場合以外の通常状態である場合に、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置を制御することが好ましい。
これにより、通常状態である場合は、車両側の上位系やCAN等の通信系に負荷をかけない。
【0010】
上記車両用クーリングファン用制御システムは、前記ファン制御装置と、前記第2制御装置とは、前記ファン制御装置内の前記スイッチング素子をデューティに応答して制御させるPWM信号を授受する通信ネットワークで接続されており、前記ファン制御装置は、PWM制御に基づいて、前記通信ネットワークを介して前記モータ制御装置の前記スイッチング素子を制御するPWM制御手段と、前記車両ネットワークを介して情報を授受する通信制御手段とを有しており、前記PWM制御手段及び前記通信制御手段のうち少なくともどちらか一方を介して、前記三相モータの回転数指示を取得することとしてもよい。
【0011】
ファン制御装置は、通信ネットワークを介しても、車両ネットワークを介しても、回転数指示を取得することができるので、従来型のPWMデューティによる制御であっても、近年主流になっている車両ネットワーク(例えば、CAN(Controller Area Network)通信、LIN(Local Interconnect Network)通信等)による制御であっても、対応できる。
【0012】
本発明は、車載の熱交換器に空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置と、前記ファン制御装置の上位の車両を制御する第1制御装置と、前記車両の空気調和装置を制御する第2制御装置とを備える制御システムの制御方法であって、前記ファン制御装置と、前記第1制御装置と、前記第2制御装置とが車両ネットワークを介して相互に情報の授受可能に接続されている場合に、前記モータ制御装置に備えられるスイッチング素子に
、火災や感電につながる危険性のある重要度の高い異常が検出された場合に、前記車両ネットワークを介して前記モータ制御装置から異常情報を出力させ、 前記異常情報
を取得した場合には、前記第1制御装置によって、前記車両ネットワークを介して前記ファン制御装置及び第2制御装置を保護制御する車両用クーリングファン用制御システムの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便な配線でファンモータの異常を車両側で検出するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る車両用クーリングファン用制御システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るファン制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係るファン制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る車両用クーリングファン用制御システムのファン制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る車両用クーリングファン用制御システム及びその制御方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の車両用クーリングファン用制御システムのファン制御装置は、車両の熱交換器(ラジエータ)用のクーリングファンを駆動するモータの制御に用いることを例に挙げて説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は、本実施形態に係る制御システム(車両用クーリングファン用制御システム)1の概略構成図を示している。
図1に示されるように、制御システム1は、ラジエータに空気を供給するクーリングファンを駆動する三相モータを制御するモータ制御装置を有するファン制御装置2と、ファン制御装置2の上位にある、車両を制御する車両側ECU(第1制御装置)3と、車両の空気調和装置を制御するエアコン系ECU(第2制御装置)4と、内装などのボディ系を制御するボディ系ECU5と、エンジンで発生したエネルギーを駆動輪に伝えるパワートレイン6とを備えている。なお、
図1に示されていないその他車両コンポーネントが車両ネットワークに接続されているシステムであっても本発明が適用できることはいうまでもない。
【0017】
制御システム1は、ファン制御装置2と、車両側ECU3と、エアコン系ECU4と、ボディ系ECU5と、パワートレイン6とが車両ネットワークCAN7を介して相互に情報の授受可能に接続されている。
なお、本実施形態においては、車両ネットワークとしてCANを利用することを例に挙げて説明するが、これに限定されず、例えば、LINや、FlexRay等の他の方式であってもよく、特に限定されない。
【0018】
図2は、本実施形態に係るファン制御装置2の機能ブロック図が示されている。
ファン制御装置2は、三相モータ30と、三相モータ30を駆動するインバータシステム20とを備えている。
インバータシステム20は、スイッチング素子22を有するモータ制御装置21と、計測部23と、第3制御部24と、絶縁部8とを備えている。モータ制御装置21は、高電圧バッテリや発電機等の高電圧電源40から供給される直流電流を三相の交流電流に変換し、三相モータ30を駆動する。高電圧電源40は、例えば、200〔V〕や400〔V〕の電圧であり、HVフィルタ26を介してモータ制御装置21に電力供給している。低電圧電源50は、車載バッテリ電源等であり、例えば、12〔V〕の電圧を供給する。
ここで、スイッチング素子22は、半導体素子で構成されるパワートランジスタであり、例えば、MOSFET、バイポーラトランジスタ、及びIGBT等が使用される。また、半導体材料としては、Si系半導体やSiC系半導体が用いられる。
【0019】
絶縁部8は、低電圧電源50から電力が供給される低電圧系統9と、高電圧電源40から電力が供給される高電圧系統10とを電気的に絶縁させる。また、絶縁部8は、低電圧電源50から供給される電力によって作動し、具体的には、絶縁型のDC−DCコンバータ81と、絶縁型のCANドライバ(通信制御手段)82とを備えている。
【0020】
絶縁型のDC−DCコンバータ81は、モータ制御装置21及び第3制御部24に対し、低電圧電源50の電力を供給する。また、絶縁型のDC−DCコンバータ81が供給する電力は、第3制御部24の駆動電圧(例えば、5〔V〕)や、モータ制御装置21の駆動電圧(例えば、15〔V〕)として用いられる。
絶縁型のCANドライバ82は、車両ネットワークCAN7と接続されており、車両ネットワークCAN7を介して車両側ECU3に接続され、車両側ECU3と第3制御部24との間で情報を授受する。
【0021】
ファン制御装置2は、モータ制御装置21が備えるスイッチング素子22に異常が検出された場合に、車両ネットワークCAN7と接続されるCANドライバ82を介して異常情報を出力する。
車両側ECU3は、異常情報が重要度の高い異常である場合には、車両ネットワークCAN7を介してファン制御装置2及びエアコン系ECU4を保護制御する。ここで、重要度の高い異常情報とは、人に危害を加える可能性のある異常であり、例えば、スイッチング素子22に過電流が頻繁に生じる、三相モータの絶縁不良・断線、短絡破壊など、火災や感電につながる危険性のある異常である。
エアコン系ECU4は、重大な異常が検出される場合以外の通常状態である場合に、車両ネットワークCAN7を介して、ファン制御装置2を制御する。これにより、通常状態である場合は、車両側の上位系やCAN等の通信系に負荷をかけずに済む。
【0022】
第3制御部24は、モータ制御装置21を制御する。具体的には、第3制御部24は、CANドライバ82を介して、三相モータ30の回転数指示を取得し、取得した回転数指示に基づいて三相モータ30を制御する。
【0023】
第3制御部24は、判定部25を備えている。判定部25は、計測部23から取得した温度値、電流値、及び電圧値のうち少なくともいずれか一に基づいて、スイッチング素子22の異常有無を判定する。具体的には、判定部25は、温度値、電流値、及び電圧値に関する閾値を有しており、所定の閾値を超過した場合に重要度が高い異常と判定し、判定結果を車両ネットワークCAN7を介して車両側ECU3に出力する。なお、判定部25が備える閾値は、温度値、電流値、及び電圧値に関する値そのものに限定されず、それらを検出する繰り返し回数によって決められていてもよい。
また、第3制御部24は、スイッチング素子22に重要度が高い異常が検出された場合に、CANドライバ82を介して、車両側ECU3に対して、三相モータ30の制御に異常がある旨を通知する異常情報を出力する。
【0024】
計測部23は、モータ制御装置21のスイッチング素子22の温度値、電流値、及び電圧値のうち少なくともいずれか一を計測し、第3制御部24に出力する。例えば、三相モータ30やモータ制御装置21のスイッチング素子22が故障している場合、スイッチング素子22の温度が高温となるので、計測部23によりスイッチング素子22の温度変化を検出し、第3制御部24において故障有無を判定させる。
【0025】
次に、本実施形態に係る制御システム1の作用について説明する。
車両に搭載される高電圧電源40からモータ制御装置21に供給された直流電力は、三相の交流電流に変換され、三相モータ30に給電されて三相モータ30を駆動させる。CANドライバ82を介して車両側に設けられている車両側ECU3から取得される三相モータ30の回転数指示に基づいて、モータ制御装置21が制御される。これにより、三相モータ30が回転駆動され、ラジエータ用クーリングファンが作動する。
スイッチング素子22の温度値、電流値、及び電圧値が計測されており、計測結果は第3制御部24に出力される。計測結果が所定の閾値と比較され、閾値を超過せず通常状態の場合は、エアコン系ECU4がファン制御装置2を制御する。また、計測結果が所定の閾値を超過している場合に、重要度が高い異常と判断されて、車両ネットワークCAN7を介して車両側ECU3に対して、異常情報が通知される。
【0026】
車両側の制御回路である車両側ECU3において、車両ネットワークCAN7を介してファン制御装置2から異常情報が取得されると、ラジエータ用クーリングファンにおいて異常が発生したことが検出される。提示部(図示略)等を介してラジエータ用クーリングファンに異常が発生したことが提示されることにより、車両の運転者によって異常を把握させることができる。
また、車両側ECU3は、異常情報を検出すると、エアコン系ECU4と、ファン制御装置2と、ボディ系ECU5と、パワートレイン6とを含む車両全体を保護制御し、これにより、異常情報に起因する重大な事故を未然に防止できる。
【0027】
以上説明してきたように、本実施形態に係る制御システム1及びその制御方法において、車載のラジエータ用クーリングファンを駆動する三相モータ30を制御するモータ制御装置21を有するファン制御装置2と、ファン制御装置2の上位の車両側ECU3と、車両の空気調和装置を制御するエアコン系ECU4とが車両ネットワークCAN7を介して情報の授受可能に接続されており、モータ制御装置21に備えられているスイッチング素子22に異常が検出された場合には、モータ制御装置21から車両ネットワークCAN7を介して異常情報が出力され、異常情報を取得した車両側ECU3は、異常情報が重要度の高い異常である場合に、車両ネットワークCAN7を介してファン制御装置2及びエアコン系ECU4を保護制御する。
【0028】
これにより、車両ネットワークCAN7を介して三相モータ30の異常情報が車両側に報告されるので、車両側でクーリングファンを駆動する三相モータ30の異常を検出でき、重要度の高い異常が生じた場合には車両側ECU3から、エアコン系ECU4とモータ制御装置21とが保護制御されることにより、重大な事故を未然に防止することができ、原因究明に役立てることができる。
また、ファン制御装置2と車両側ECU3とエアコン系ECU4とはそれぞれ相互にCAN(車両ネットワーク)7を介して情報の授受可能に接続されることにより、従来のPWM制御による回転数制御と比較してきめ細やかで速やかな反応が望めるので、三相モータ30の状態に応じて空気調和装置を精度よく制御でき、快適・緻密なエアコン制御につながる。
【0029】
〔変形例〕
なお、本実施形態においては、ファン制御装置2が通常状態である場合に、エアコン系ECU4が車両ネットワークCAN7を介してファン制御装置2を制御することとして説明していたが、これに限定されない。例えば、
図3に示されるように、ファン制御装置2が、低電圧電源50から供給される電力によって作動し、デューティに応答してPWM制御を行って、モータ制御装置21のスイッチング素子22を制御する絶縁型のPWMドライバ83を有している場合には、エアコン系ECU4は、PWM信号を用いて三相モータ30の回転数制御をすることとしてもよい。
【0030】
具体的には、ファン制御装置2と、エアコン系ECU4とは、ファン制御装置2内のスイッチング素子22をデューティに応答して制御させるPWM信号を授受する通信ネットワーク84で接続させる。また、ファン制御装置2は、PWM制御に基づいて、モータ制御装置21のスイッチング素子22を制御するPWMドライバ83と、車両ネットワークCAN7を介して情報を授受するCANドライバ82とを有しており、PWMドライバ83及びCANドライバ82のうち少なくともどちらか一方を介して、三相モータ30の回転数指示を取得する。
このように、ファン制御装置2とエアコン系ECU4とが、車両ネットワークCAN7に加え、PWM信号の授受可能に接続されていれば、従来車両に用いられている空調システムのハード、ソフトを流用することができる。また、CAN通信の場合は、PWM信号を用いる場合と比較してノイズに強いので、CAN通信を用いることによりノイズの影響を抑えて回転数指示を正確に行うことができる。
【0031】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について
図4を用いて説明する。
本実施形態の制御システムが第1の実施形態と異なる点は、モータ制御装置が低電圧電源から給電される点で、上記第1の実施形態と異なる。以下、本実施形態の制御システムについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0032】
図4に示されるように、本実施形態に係るファン制御装置2´は、単相モータ30´と、モータ制御装置21´と、第3制御部24とを備えており、車内ネットワークである車両ネットワークCAN7と接続されている。また、ファン制御装置2´は、低電圧電源50から電力を得ており、モータ制御装置21´は、非絶縁型のDC−DCコンバータ81´を介して低電圧電源50の電力を得て単相モータ30´に供給している。このように、低電圧電源50の電力が単相モータ30´の駆動用電源となっている。
【0033】
このように、モータ駆動に低電圧電源50を用いるファン制御装置2´であっても、車両ネットワークCAN7を介して車両側ECU3と接続されるので、車両側に単相モータ30´の異常を検出できる。また、重要度の高い異常が生じた場合には車両側ECU3から、エアコン系ECU4とモータ制御装置21とが保護制御されることにより、重大な事故を未然に防止することができ、原因究明に役立てることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 制御システム
2 ファン制御装置
3 車両側ECU(第1制御装置)
4 エアコン系ECU(第2制御装置)
7 車両ネットワークCAN(車両ネットワーク)
8 絶縁部
20 インバータシステム
21 モータ制御装置
22 スイッチング素子
24 第3制御部
81 DC−DCコンバータ
82 CANドライバ(通信制御手段)
83 PWMドライバ(PWM制御手段)