(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二次電池に充電電圧または充電電流を供給する充電手段と、前記二次電池の端子電圧を検知する電圧検知手段と、前記二次電池に通電される充電電流の電流値を検知する電流検知手段と、前記充電手段の前記充電電圧または前記充電電流を制御する充電制御装置を備え、前記充電制御装置が、充電対象となっている前記二次電池の定格電圧と定格充電電流を用いて定電流定電圧充電制御を行う急速充電装置において、
前記充電制御装置が前記二次電池の充電状態において熱逸走の発生を予測または検知する熱逸走検知手段を備え、
前記充電制御装置が、前記熱逸走検知手段が前記熱逸走の発生を予測または検知しない平常時に適用される前記定電流定電圧充電制御と、前記熱逸走検知手段の熱逸走発生予測または検知されれば前記定電流定電圧充電制御から切り替えて適用される熱逸走制御を備え、
前記熱逸走制御が、前記定電流定電圧充電制御の定電圧域において、前記電流検知手段により前記充電電流の増加を検知したことをもって切り替えて開始するものであり、
前記熱逸走制御が、定電流域または前記定電圧域での前記定電流定電圧充電制御における充電電流制限値を一定幅低下させる充電電流制限値更新手順と、その後前記電流検知手段において再度前記充電電流が増加するかを監視する監視手順と、前記監視手順において再度前記充電電流が増加すれば前記充電電流制限値更新手順において直近の充電電流制限値を一定幅低下させるという手順を繰り返し、前記充電電流制限値更新手順の実行が一定回数以上になれば前記充電手段を介した前記二次電池への充電を停止させるものであることを特徴とする熱逸走防止機能付き急速充電装置。
二次電池に充電電圧または充電電流を供給する充電手段と、前記二次電池の端子電圧を検知する電圧検知手段と、前記二次電池に通電される充電電流の電流値を検知する電流検知手段と、前記充電手段の前記充電電圧または前記充電電流を制御する充電制御装置を備え、前記充電制御装置が、充電対象となっている前記二次電池の定格電圧と定格充電電流を用いて定電流定電圧充電制御を行う急速充電装置において、
前記充電制御装置が前記二次電池の充電状態において熱逸走の発生を予測または検知する熱逸走検知手段を備え、
前記充電制御装置が、前記熱逸走検知手段が前記熱逸走の発生を予測または検知しない平常時に適用される前記定電流定電圧充電制御と、前記熱逸走検知手段の熱逸走発生予測または検知されれば前記定電流定電圧充電制御から切り替えて適用される熱逸走制御を備え、
前記熱逸走制御が、前記定電流定電圧充電制御の定電流域または定電圧域において、前記電圧検知手段により前記充電電圧の低下を検知したことをもって切り替えて開始するものであり、
前記熱逸走制御が、前記定電圧域での前記定電流定電圧充電制御における充電電流制限値を一定幅低下させる充電電流制限値更新手順と、その後前記電圧検知手段において再度前記充電電圧が減少するかを監視する監視手順と、前記監視手順において再度前記充電電圧が減少すれば前記充電電流制限値更新手順において直近の充電電流制限値を一定幅低下させるという手順を繰り返し、前記充電電流制限値更新手順の実行が一定回数以上になれば前記充電手段を介した前記二次電池への充電を停止させるものであることを特徴とする熱逸走防止機能付き急速充電装置。
【背景技術】
【0002】
電子機器の利用が増える中、特に、携帯型電子機器の小型電源や、停止できないシステム向けの無停電電源(UPS)、電気自動車の電源向けなど、多種多様の電池が数多く使用されている。携帯型電子機器の電池はいわゆる使い捨ての電池ではなく、二次電池、すなわち繰り返し充放電可能な再充電可能な電池となっており、各々の用途に合わせて各社、電池の特性改善や劣化防止などの開発が進められている。
【0003】
二次電池は仕様通りの性能を発揮するためには、それら電子機器の使用環境条件のみならず、二次電池の繰り返し充電の充電条件も制御する必要がある。特に、充電条件は放電後の電池にダメージを与えることなく、如何に“急速に”かつ“充電容量いっぱいまで”充電するかが重要である。このため、充電完了時の検出方法、過充電を防止する方法等を含めて、二次電池の種類および用途別に適した充電方法が研究されている。
従来技術における充電方法のうち代表的なものを説明する。
二次電池は、コバルト複合酸化物を正極とするリチウムイオン電池を例として説明する。なお、リチウムイオン電池の最大充電電圧は4.2Vとされている。
【0004】
まず、従来技術における充電方法の1つとしては定電圧充電法がある。
定電圧充電法は、充電器から一定電圧(この例では4.2V)を電池に印加する方法である。この定電圧充電法によれば、定電圧である4.2Vを充電器から印加するのみであるので簡単な装置構成で済むというメリットがある。
【0005】
図11(a)は、定電圧充電法を用いて充電する場合の二次電池電圧の時間変化と充電電流の時間的変化の充電特性の概略を簡単に示した図である。図中、縦軸は充電電池電圧または充電電流であり、横軸が時間となっている。
しかし、この定電圧充電法には大きな欠点がある。
図11(a)に示したように、充電初期に大きな電流が流れてしまい二次電池を傷めてしまうおそれがあるという問題である。また、充電期間の後半において電流が減衰してゆくが、十分に充電容量が満たされるまでには時間がかかるという問題もある。そのため、初期電流を抑制し、後半の電流を大きくする工夫が必要となってくる。
【0006】
定電圧充電法において、印加電圧を定格電圧(定格満充電平衡電圧値)とし、初期電流を抑制するよう工夫するものもある。この定格電圧充電の場合、その充電特性は
図11(b)に示すようになる。
図11(b)は、定格電圧充電にて充電する場合の二次電池電圧の時間変化と充電電流の時間的変化の充電特性の概略を簡単に示した図である。図中、縦軸は充電電池電圧または充電電流であり、横軸が時間となっている。
定格電圧充電にて充電する場合、充電初期における大電流の通電が抑制されているが、その充電特性は時間経過とともに緩やかに減衰してゆくいわゆるロングテール形となっており、十分に充電容量が満たされるまでには時間がかかるという問題は依然残されている。
【0007】
次に、従来技術における充電方法の1つとして定電流・定電圧充電法がある。
定電流・定電圧充電法は、充電開始後しばらくは定電流充電とし、二次電池の電圧が所定電圧に到達した後、定格電圧(定格満充電平衡電圧値)による定電圧充電に切り換える方法である。この定電流・定電圧充電法によれば、比較的高速に充電することができるというメリットがあり、かつ、充電期間の初期においても過充電がなく、充電期間の終期においても定格電圧(定格満充電平衡電圧値)の印加である限り、過充電が発生することはないというメリットがある。
高い電圧の過充電状態において有機電解質が分解する恐れの高いリチウム系二次電池では、定電流・定電圧充電技術が採用される。
定電流充電時の電流値が大きくても許容されるよう、電池構成を工夫することができれば、さらに充電時間を短縮することができる。
【0008】
図12は、定電流・定電圧充電法を用いて充電する場合の二次電池電圧の時間変化と充電電流の時間的変化の充電特性の概略を簡単に示した図である。図中、縦軸は充電電池電圧または充電電流であり、横軸が時間となっている。なお、コバルト複合酸化物を正極とするリチウムイオン電池の場合、4.2Vまでは定電流充電であり、二次電池の電圧が4.2Vとなった後は4.2Vで定電圧充電となっている。
図12に示すように、定電流・定電圧充電法によれば、
図11に示した定電圧充電法に比べて、充電期間の初期から中盤あたりである定電流域における充電量が大きく確保することができ、充電期間が比較的短くて済むというメリットが得られる。
【0009】
しかし、定電流定電圧充電法でも、やはり充電時間が長くなってしまうという問題は残っている。
図12に示したように、充電初期の定電流域では定格電流で充電されるため、充電初期における大電流の通電が抑制され、その後の定電圧域においても電流値は低下してゆくため、その充電特性は、定格電圧充電よりも充電時間は短くなるが、やはり充電時間がまだ長く、十分に充電容量が満たされるまでには時間がかかるという問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開平06−225466号公報
【実施例1】
【0031】
最初に、熱逸走現象の発生の概要について説明し、次に、熱逸走防止機能付き急速充電装置1の各構成要素の説明をし、次に、熱逸走防止機能付き急速充電装置1の動作の流れを鳥瞰する。
請求項1における熱逸走制御は、下記では第2の熱逸走制御として例示され、請求項2における熱逸走制御は、第4の熱逸走制御として例示されている。
また「制御基準」という言葉は、単に「制御」または「制御の手順」という程度の意味である。
【0032】
まず、
図1は、熱逸走現象の発生の概要を説明する図である。
熱逸走現象は様々な充電方式において発生し得るが、ここでは、定電流定電圧充電方式を採用している充電装置において生じる熱逸走現象について説明する。
【0033】
二次電池の充電時おける熱逸走とは以下のような現象を言う。
バッテリに対し充電を行った場合、通常は充電の進行によるバッテリ起電圧の上昇に伴い定電圧領域で暫時充電電流が低下していくが、バッテリの劣化などの要因により、充電時におけるバッテリ温度上昇に伴って、ある程度充電電流低下した時点から逆に電流増加現象を生じたり、または、電流低下せずに高電流のまま充電電圧が低下していく現象が生じたりすることがある。二次電池の温度が高い時に大電流で充電を続けると、二次電池には内部抵抗があるため大電流により二次電池の温度がさらに上昇し、その温度上昇によりさらに電流増加現象が生じたり充電電圧の低下現象が生じたりするという悪循環を起こすことがある。この現象を“熱逸走”と言う。バッテリの充電において熱逸走が起こるとバッテリ温度は急激に上昇し、バッテリの劣化をさらに急進させ、バッテリの寿命を短くする不具合を起こす可能性がある。
【0034】
図1は、定電流定電圧充電方式を採用した場合の充電特性を表わす図である。
図1に見るように、大きな劣化のない二次電池に対して充電している場合には、充電初期から中盤まで“定電流域”であり、その後充電終期まで“定電圧域”となっている。
【0035】
定電流域では、充電手段から二次電池に流される充電電流Icは、定格電流Ioの値にて定電流として二次電池に流される。その際、充電手段から二次電池に印加される充電電圧Ecは、二次電池に定格電流Ioが流れるよう、漸増するように制御される。
【0036】
充電手段から二次電池に印加される充電電圧Ecは、定格電流Ioが流れるように漸増してゆくにつれ、いずれ定格電圧Eoに到達する。ここで、二次電池の端子に現れる内部電圧Eも徐々に増加しており、例えば、E(1)にまで到達しているものとする。ここで、充電手段から二次電池に印加される充電電圧Ecの増加は停止され、定格電圧値Eoを定電圧として維持する定電圧域に移行する。
【0037】
定電圧域では、二次電池への充電電流Icは、充電手段から二次電池に印加される充電電圧である定格電圧値Eoと、二次電池の端子に現れる内部電圧E(1)との電位差により流れ、二次電池の端子に現れる内部電圧E(1)が充電の進行により徐々に昇圧されるため、二次電池への充電電流Icは、
図1に示すような漸減してゆくように流れることとなる。
二次電池の個体差や二次電池の劣化などの要因により、定電圧域における二次電池への充電電流Icは、Ic1、Ic2、Ic3など充電特性に応じた曲線に従って低下して行くこととなる。
【0038】
しかし、ここで、上記した熱逸走という現象が発生すると、
図1において様々なパターンが起こり得る。
【0039】
例えば、
図1に示す曲線Aのような熱逸走曲線がある。曲線Aのような熱逸走曲線は、定電流定電圧充電制御の定電圧域において、充電電流が一旦減少した後、増加に転じているような曲線である。このようにある程度充電電流低下した時点から逆に電流増加現象は、充電時における二次電池の温度上昇に伴って熱暴走を始めた可能性があると判断できるのである。本発明の急速充電装置では、この曲線Aの熱逸走曲線を描く現象が発生していることを熱逸走制御基準の一つとする(以下、「熱逸走制御基準1」として参照することがある)。
【0040】
また、例えば、
図1に示す曲線Bのような熱逸走曲線がある。曲線Bのような熱逸走曲線は、定電流定電圧充電制御の定電圧域において、一旦、電流が少し低下し、そのあと上昇して最大電流に戻る現象が発生した場合であり、充電電圧が定格電圧Eoを維持できずに低下しているような曲線となっている。そこで、このように充電電圧が定格電圧Eoを維持できずに低下してしまう電圧低下現象を検知すれば、充電電流は最大電流が流れており充電時における二次電池の温度上昇に伴って熱暴走を始めた可能性があると判断できるのである。本発明の急速充電装置では、この曲線Bの熱逸走曲線を描く現象が発生していることを熱逸走制御基準の一つとする(以下、「熱逸走制御基準2」として参照することがある)。
【0041】
ここで、
図1に示したような充電特性の曲線を解析すれば、二次電池内でまだ熱逸走は発生していないが、このまま充電を継続すると熱逸走が発生するおそれがあると予測できる場合もある。
【0042】
例えば、
図1に示す熱逸走曲線Aを解析すると、以下のことが予測できる。
定電圧域に移行後、予定される定格充電時間よりも早い時間帯(例えば、図中T1からT2)において、充電電流の低下速度が急に小さくなることを検知すれば、熱逸走が発生するおそれがあると予測するものである。熱逸走曲線Aに沿う充電電流の変化がある場合、実際には充電電流が増加していなくとも、充電電流が増加に転じる前には、充電電流の低下速度が急に小さくなることが分かる。なお、この充電電流の低下速度が急に小さくなる現象が定格充電時間の終了付近であれば、通常の低下現象と言えるが、予定される定格充電時間よりも早い時間帯にその低下現象が検知されれば、充電電流が増加に転じて熱逸走に向かう直前にあると予測できる。この予測を熱逸走制御基準の一つとする(以下、「熱逸走制御基準3」として参照することがある)。
【0043】
例えば、
図1に示す熱逸走曲線Bを解析すると、以下のことが予測できる。
定電圧域に移行後、充電電流が所定時間(例えば、図中T2)を経過しても所定値(例えば、図中Ia)まで低下しないことを検知したこと、または、充電電流が所定値(例えば、図中Ia)まで低下する時間が予定される定格充電時間(例えば、図中T2)よりも長くかかっている(例えば、図中T3)ことを検知した場合に、熱逸走が発生するおそれがあると予測するものである。熱逸走の一つのパターンとしては、充電電流が予定通りに収束に向かわずになかなか充電電流が低下せずにそのまま熱逸走してしまうパターンや、充電電流が所定値まで低下したものの異常に長く掛かっておりその後熱逸走に転じてしまうパターンなどがある。これらの現象が検知できれば熱逸走に向かう直前にあると予測できる。この予測を熱逸走制御基準の一つとする(以下、「熱逸走制御基準4」として参照することがある)。
【0044】
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置では、上記の種々の熱逸走制御基準を用いて熱逸走制御を行う。この実施例では、熱逸走検知手段において、上記の熱逸走制御基準1から熱逸走制御基準4を装備しているものとする。
【0045】
図2は、実施例1にかかる熱逸走防止機能付き急速充電装置1の基本構成を模式的に示した図である。各構成物を分かりやすくするため適宜図示を簡略化している。
図2に示すように、本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100は、充電手段110、電圧検知手段120、電流検知手段130、充電制御装置140、熱逸走検知手段150の各構成要素を備えている。なお、二次電池200が併せて示されている。
【0046】
充電手段110は、二次電池200に対して、後述する充電制御装置140の制御に従って、指定された充電電圧E、充電電流Iの値にて充電電圧または充電電流を供給することができる電気的構成要素である。
【0047】
電圧検知手段120は、二次電池200の接続端子に接続され、二次電池200の内部電圧を検知することができる電気的構成要素である。
【0048】
電流検知手段130は、二次電池200に流れる充電電流の値を検出できるよう二次電池200の周辺に配置され、二次電池200への充電電流を検知することができる電気的構成要素である。
【0049】
充電制御装置140は、充電手段110を制御して二次電池200に対して供給する充電電圧または充電電流を制御する電気的構成要素である。充電制御装置140と充電手段110の連動により充電制御装置140が指定した充電電圧E、充電電流Iの値にて充電が行われる。
【0050】
この構成例では、充電制御装置140は基本的には充電対象となっている二次電池200の定格電圧Eoと定格充電電流Ioを用いて定電流定電圧充電制御を行うものであり、
平常時に適用される定電流定電圧充電
制御(平常時の制御)を備えている。
【0051】
熱逸走検知手段150は、充電制御装置140が二次電池200の充電状態において熱逸走の発生を予測または検知するものであり、熱逸走の検知のため熱逸走制御基準を備えている。この構成例では、熱逸走検知手段150は充電制御装置140に包含されている。
【0052】
この構成例では、
図2に示すように、充電制御装置140が熱逸走検知手段150を備え、定電流定電圧充電
制御と、熱逸走検知手段150の熱逸走発生予測または検知に基づく熱逸走
制御を
切り替えて熱逸走の検知または予測を行うことができる仕組みとなっている。
【0053】
以下、本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100による二次電池200の充電制御の流れを説明する。
図3および
図4は、熱逸走防止機能付き急速充電装置100による熱逸走抑制処理の流れの例を説明する図(その1、その2)である。
【0054】
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100がこれから充電しようとする二次電池200の充電が
図3(a)に示すような充電曲線Aの変化を示したものとする。
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100と二次電池200との正常な電気的接続が確保され、二次電池200に対する充電が開始される(
図3(b)ステップS301)。なお、二次電池200の充電の進行状況は、電圧検知手段120および電流検知手段130によりモニタされている。
【0055】
ここで、充電が進み、定電流域から定電圧域に移行し、さらに、
図3(a)の充電特性の点aに到達したとする。この点aが検知されることにより、定電流定電圧充電制御の定電圧域において、電流検知手段130により充電電流Icの増加が検知される(
図3(b)ステップS302:Y)。
【0056】
熱逸走検知手段150が装備している「熱逸走制御基準1」は、「定電流定電圧充電制御の定電圧域において充電電流Icの増加が検知された場合、熱逸走抑制制御を開始する」というものである。
【0057】
熱逸走検知手段150が熱逸走の発生を検知したことを受けて、充電制御装置140は熱逸走制御基準1に基づいて「熱逸走抑制制御」を開始する(
図3(b)ステップS303)。
【0058】
ここでは、「熱逸走抑制制御」として「第1の熱逸走抑制制御」と「第2の熱逸走抑制制御」の2通りを説明する。充電制御装置140内にいずれか一方の処理プログラムが搭載されたものでも良く、いずれか一方を選択するものでも良い。
【0059】
「第1の熱逸走抑制制御」の例は、充電手段110を介した二次電池200への充電を即座に停止させるものである。
図3(b)に示すようにもっとも簡単な処理である。
【0060】
「第2の熱逸走抑制制御」の例は、充電電流の増加が見られても即座に充電を停止するものではなく、一時的な誤動作や一時的な化学現象で熱逸走に至らない場合もあるため、充電電流制限値を変動しながら監視を続けて様子を見る期間を設ける工夫をしているものである。
【0061】
「第2の
熱逸走制御」を行う場合の処理の流れを
図4に示す。
図4において、ステップS301からステップS303までは再掲している。「第2の
熱逸走制御」が開始されると、しばらく様子を見るべく、平常時の制御である定電流定電圧充電制御(平常時の制御)における充電電流制限値を一定幅低下させる「充電電流制限値更新手順」(ステップS401)と、その後に電流検知手段130における充電電流が増加するかを監視する「充電電流監視手順」(ステップS402)とを繰り返し行い、再度、電流検知手段130により充電電流Icの増加が検知されたか否かを調べ(ステップS404)、充電電流Icの増加が解消されれば充電電流Icの増加は一時的な現象として再度二次電池200に対する充電を再開し(ステップS404:N、ステップS301へ)、充電電流Icの増加が解消されなければ再度「充電電流制限値更新手順」(ステップS401)と「充電電流監視手順」(ステップS402)の実行が繰り返されることとなり、それが一定回数以上になれば(ステップS403:Y)、熱逸走が発生しているものと判断し、充電制御装置140が充電手段110を介した二次電池200への充電処理を終了させるものである。回数については運用基準に従うが、例えば3回程度とする。3回連続して電流検知手段130における充電電流の増加が検出されれば、誤動作や一時的な化学現象ではなく、熱逸走が発生したと判断でき、充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させる処理とする。
上記の
図3(b)に示す「第1の
熱逸走制御」または
図4に示す「第2の
熱逸走制御」が実行された後、充電制御装置140は、充電手段110を制御して充電処理を終了する。
【0062】
次に、他の熱逸走抑制処理の流れの例を説明する。
図5および
図6は、熱逸走防止機能付き急速充電装置100による熱逸走抑制処理の流れの一例を説明する図(その3、その4)である。
【0063】
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100がこれから充電しようとする二次電池200の充電が
図5(a)に示すような充電曲線B1またはB2の変化を示したものとする。
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100と二次電池200との正常な電気的接続が確保され、二次電池200に対する充電が開始される(
図5(b)ステップS501)。なお、二次電池200の充電の進行状況は、電圧検知手段120および電流検知手段130によりモニタされている。
【0064】
ここで、熱逸走するパターンとして、
図5(a)には2つのパターンが示されている。一つはB1のパターンによる充電電圧の低下がみられる場合である。B1のパターンは、本来定電流域にあり、また定電圧域に移行する前であるにもかかわらず充電電圧Ecが落ち始める現象がみられる場合である。
図5(a)の充電特性のEoに達していないにもかかわらず、充電電圧Ecが点b1に低下したことが検知されたとする。この点b1が検知されることにより、定電流定電圧充電制御の定電流域において、電圧検知手段120により充電電圧Ecの低下が検知される(
図5(b)ステップS502)。
もう一つのパターンは、B2のパターンによる充電電圧の低下がみられる場合である。B2のパターンは、定電流域から定電圧域に移行した後に充電電圧Ecが落ち始める現象がみられる場合である。
図5(a)の充電特性のEoに達した後、定電圧域における充電が開始されたが、充電電圧Ecが低下を始めて点b2に到達したとする。この点b2が検知されることにより、定電流定電圧充電制御の定電圧域において、電圧検知手段120により充電電圧Ecの低下が検知される(
図5(b)ステップS502)。
熱逸走検知手段150が装備している「熱逸走制御基準2」は、「定電流定電圧充電制御の定電圧域において充電電圧Ecの低下を検知された場合、熱逸走抑制制御を開始する」というものである。
熱逸走検知手段150が熱逸走の発生を検知したことを受けて、充電制御装置140は熱逸走制御基準2に基づいて「熱逸走抑制制御」を開始する(
図5(b)ステップS503)。
【0065】
ここでは、「熱逸走抑制制御」として「第3の熱逸走抑制制御」と「第4の熱逸走抑制制御」の2通りを説明する。充電制御装置140内にいずれか一方の処理プログラムが搭載されたものでも良く、いずれか一方を選択するものでも良い。
【0066】
「第3の熱逸走抑制制御」の例は、充電手段110を介した二次電池200への充電を即座に停止させるものである。
図5(b)に示すようにもっとも簡単な処理である。
【0067】
「第4の熱逸走抑制制御」の例は、充電電圧Ecの低下が見られても即座に充電を停止するものではなく、一時的な誤動作や一時的な化学現象で熱逸走に至らない場合もあるため、充電電流制限値を変動しながら充電電圧Ecの監視を続けて様子を見る期間を設ける工夫をしているものである。
【0068】
「第4の
熱逸走制御」を行う場合の処理の流れを
図6に示す。
図6において、ステップS501からステップS503までは
図5のものを再掲している。「第4の
熱逸走制御」が開始されると、しばらく様子を見るべく、平常時の制御である定電流定電圧充電制御(平常時の制御)における充電電流制限値を一定幅低下させる「充電電流制限値更新手順」(ステップS601)と、その後に電圧検知手段120における充電電圧Ecが低下するかを監視する「充電電圧監視手順」(ステップS602)とを繰り返し行い、再度、電圧検知手段120により充電電圧Ecの低下が検知されたか否かを調べ(ステップS604)、充電電圧Ecの低下が解消されれば充電電圧Ecの低下は一時的な現象として再度二次電池200に対する充電を再開し(ステップS602:Y、ステップS501へ)、充電電圧Ecの低下が解消されなければ再度「充電電流制限値更新手順」(ステップS601)と「充電電圧監視手順」(ステップS602)の実行が繰り返されることとなり、その繰り返しが一定回数以上になれば(ステップS603:Y)、熱逸走が発生しているものと判断し、充電制御装置140が充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させるものである。回数については運用基準に従うが、例えば3回程度とする。3回連続して電圧検知手段120における充電電圧の低下が検出されれば、誤動作や一時的な化学現象ではなく、熱逸走が発生したと判断でき、充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させる処理とする。
上記の
図5に(b)示す「第3の
熱逸走制御」または
図6に示す「第4の
熱逸走制御」が実行された後、充電制御装置140は、充電手段110を制御して充電処理を請求する。
【0069】
次に、他の熱逸走抑制処理の流れの例を説明する。
図7は、熱逸走防止機能付き急速充電装置100による熱逸走抑制処理の流れの一例を説明する図(その5)である。
【0070】
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100がこれから充電しようとする二次電池200の充電が
図7(a)に示すような充電曲線Cの変化を示したものとする。
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100と二次電池200との正常な電気的接続が確保され、二次電池200に対する充電が開始される(
図7(b)ステップS701)。なお、二次電池200の充電の進行状況は、電圧検知手段120および電流検知手段130によりモニタされている。
【0071】
ここで、充電が進み、定電流域から定電圧域に移行し、さらに、
図7(a)の充電特性の点cに到達したとする。この点cに到達した状態では、充電電流Icの低下速度が既定値以下となったこと(つまり充電電流Icが十分に低下して充電特性曲線の底部付近に到達したこと)が検知され得る(
図7(b)ステップS702:Y)。
【0072】
熱逸走検知手段150が装備している「熱逸走制御基準3」は、「定電流定電圧充電制御の定電圧域において、充電電流Icの低下速度が既定値以下となったことが検知されたことと、検知に係る時間帯との関係をもって、熱逸走抑制制御を開始する」というものである。検知に係る時間帯は、例えば、定電圧域の開始時刻T1から定格充電時間T3に至るまでの間の時刻T2の間とする。つまり、定格充電時間T3に比べて比較的に早い時間帯において、充電電流Icの低下速度が既定値以下に落ちてきたことを持って熱逸走が発生することを“予測”し、熱逸走抑制制御を開始するものである。
【0073】
熱逸走検知手段150が熱逸走の発生を検知したことを受けて、充電制御装置140は「熱逸走抑制制御」を開始する(
図7(b)ステップS703)。
ここでは、「熱逸走抑制制御」として「第5の熱逸走抑制制御」と「第6の熱逸走抑制制御」の2通りを説明する。充電制御装置140内にいずれか一方の処理プログラムが搭載されたものでも良く、いずれか一方を選択するものでも良い。
【0074】
「第5の熱逸走抑制制御」の例は、充電手段110を介した二次電池200への充電を即座に停止させるものである。もっとも簡単な処理である。
【0075】
「第6の熱逸走抑制制御」の例は、充電電流Icの低下速度が既定値以下に低下しても即座に充電を停止するものではなく、一定時間経過後に充電制御装置140が充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させるものである。
この熱逸走制御基準3は、熱逸走が現実に発生しているものではなく、熱逸走が発生することを検知した段階であるため、即座に停止するまではせずに、しばらくの時間は充電が可能であることを考慮し、所定の時間にわたり充電を継続して行うものである。所定の時間はバッテリ容量やバッテリの種類などを考慮して定めれば良い。
図8は、熱逸走防止機能付き急速充電装置100による熱逸走抑制処理の流れの一例を説明する図(その6)である。ステップS801からステップS803までは
図7に示した「第5の熱逸走抑制制御」の例と同様となっている。
第6の熱逸走抑制制御の場合は、第5の熱逸走抑制制御とは異なり、所定時間を経過するまでしばらく充電を継続し、所定時間経過後に充電を停止するものである。つまり、所定時間経過したことを検知すれば(ステップS804:Y)、充電制御装置140が充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させる。
上記の「第5の熱逸走抑制制御」または「第6の熱逸走抑制制御」が実行された後、充電制御装置140は、充電手段110を制御して充電処理を終了する。
【0076】
次に、他の熱逸走抑制処理の流れの例を説明する。
図9は、熱逸走防止機能付き急速充電装置100による熱逸走抑制処理の流れの一例を説明する図(その7)である。
【0077】
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100がこれから充電しようとする二次電池200の充電が
図9(a)に示すような充電曲線D1またはD2の変化を示したものとする。
本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置100と二次電池200との正常な電気的接続が確保され、二次電池200に対する充電が開始される(
図9(b)ステップS801)。なお、二次電池200の充電の進行状況は、電圧検知手段120および電流検知手段130によりモニタされている。
【0078】
ここで、熱逸走するパターンとして、
図9(a)には2つのパターンが示されている。一つはD1のパターンによる充電電流の変化がみられる場合である。D1のパターンは、定電流域から定電圧域に移行した後、充電電流が所定時間を経過しても所定値まで低下しない場合である。
図9(a)の充電時間が所定時間(図中例えばT2)に達したにもかかわらず、充電電流が十分には落ち切っておらず、充電電流Icが点d1まで低下したことが検知されたとする。この点d1が検知されることにより、定電流定電圧充電制御の定電流域において、電圧検知手段120により充電電流Icの低下が不十分であることが検知される(
図9(b)ステップS902:Y)。
もう一つのパターンは、D2のパターンによる充電電流の変化がみられる場合である。D2のパターンは、定電流域から定電圧域に移行した後、充電電流が所定値に低下するまでの経過時間が所定時間よりも長い時間かかった場合である。
図9(a)において充電電流Icが所定値、たとえばd2まで低下したことが検知され、その時点における経過時間がたとえばT3であったとする。本来は経過時間T2でこのd2まで低下するものであった場合、このT3までかかったことによる遅延が検出できる。このように、定電流定電圧充電制御の定電圧域において、電圧検知手段120により充電電流Icが所定値まで低下する時間が予定される定格充電時間よりも長くかかっていることが検知される(
図9(b)ステップS902:Y)。
【0079】
熱逸走検知手段150が装備している「熱逸走制御基準4」は、「定電流定電圧充電制御の定電圧域において、充電電流Icが所定時間を経過しても所定値まで低下しないことを検知したこと、または、充電電流Icが所定値まで低下する時間が予定される定格充電時間よりも長くかかっていることを検知した場合に熱逸走抑制制御を開始する」というものである。この条件となったことを持って熱逸走が発生することを“予測”し、熱逸走抑制制御を開始するものである。
【0080】
熱逸走検知手段150が熱逸走の発生を検知したことを受けて、充電制御装置140は「熱逸走抑制制御」を開始する(
図9(b)ステップS903)。
ここでは、「熱逸走抑制制御」として「第7の熱逸走抑制制御」と「第8の熱逸走抑制制御」の2通りを説明する。充電制御装置140内にいずれか一方の処理プログラムが搭載されたものでも良く、いずれか一方を選択するものでも良い。
【0081】
「第7の熱逸走抑制制御」の例は、充電手段110を介した二次電池200への充電を即座に停止させるものである。もっとも簡単な処理である。
【0082】
「第8の熱逸走抑制制御」の例は、充電電流Icの低下幅が既定値以上に低下しても即座に充電を停止するものではなく、一定時間経過後に充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させる処理とするものである。
この熱逸走制御基準4は、熱逸走が現実に発生しているものではなく、熱逸走が発生することを検知した段階であるため、即座に停止するまではせずに、しばらくの時間は充電が可能であることを考慮し、所定の時間にわたり充電を継続して行うものである。所定の時間はバッテリ容量やバッテリの種類などを考慮して定めれば良い。
図10は、第8の熱逸走抑制制御の処理の例を示すフローチャートである。
ステップS1001からステップS1003までは
図9に示した「第7の熱逸走抑制制御」の例と同様となっている。
第8の熱逸走抑制制御の場合は、第7の熱逸走抑制制御とは異なり、所定時間を経過するまでしばらく充電を継続し、所定時間経過後に充電を停止するものである。つまり、所定時間経過したことを検知すれば(ステップS1004:Y)、充電制御装置140が充電手段110を介した二次電池200への充電を停止させる。
上記の「第7の熱逸走抑制制御」または「第8の熱逸走抑制制御」が実行された後、充電制御装置140は、充電手段110を制御して充電処理を終了する。
【0083】
以上、本発明の熱逸走防止機能付き急速充電装置における好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。