特許第6161921号(P6161921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6161921
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】車両用バッテリーモジュールの安全装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/34 20060101AFI20170703BHJP
   H01M 2/20 20060101ALI20170703BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01M2/34 A
   H01M2/20 A
   H01M2/34 B
   H01M2/10 M
   H01M2/10 S
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-47706(P2013-47706)
(22)【出願日】2013年3月11日
(65)【公開番号】特開2014-130794(P2014-130794A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0154747
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 相 睦
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−544439(JP,A)
【文献】 特開2008−103268(JP,A)
【文献】 特開2012−104459(JP,A)
【文献】 特開2003−242956(JP,A)
【文献】 特開2009−087761(JP,A)
【文献】 特開2006−019140(JP,A)
【文献】 特開2007−265753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/34
H01M 2/20
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ッテリーセルの陽極端子と陰極端子に該当するセル端子と、
前記バッテリーセルのうち2つの別のバッテリーセルに対角線に配置された2つのセルのセル端子を電気的に連結するように形成され、前記バッテリーセルが膨張していない正常状態である時には前記2つのセルのセル端子間の電気的連結を維持し、前記バッテリーセルの少なくとも一方が膨脹する異常状態の時には前記セル端子間に電気が流れないように回路を開放する安全バスバーと、を有し、
前記安全バスバーは、
前記セル端子に貫通して固定設置され、導体と不導体が形成された固定子と、
前記セル端子に貫通されて、前記固定子に面接触すると同時に、前記セル端子を中心に回転可能に設置され、導体と不導体が形成された回転子と、
前記回転子の導体と電気的に連結する連結バーと、を含み、
前記バッテリーセルが膨脹していない正常状態の時には、前記固定子の導体と前記回転子の導体が互いに連結し、
前記バッテリーセルが膨脹する異常状態の時には、前記回転子が回転して前記固定子の導体と前記回転子の不導体が互いに接触し、同時に前記固定子の不導体と前記回転子の導体が互いに接触して電気が流れないようにすることを特徴とする車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項2】
前記安全バスバーは、
前記固定子の側面と前記セル端子を一体に貫通して設置され、前記固定子を前記セル端子に固定させる固定ピンを、さらに含むことを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項3】
前記安全バスバーは、
前記セル端子に分離可能に結合して、前記回転子が前記セル端子から離脱するのを防止する回転子キャップを、さらに含むことを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項4】
前記安全バスバーは、前記回転子と前記回転子キャップの間に設置された絶縁部材を、さらに含むことを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項5】
前記セル端子と前記回転子キャップは、ボルトとナットの結合方式で互いに分離可能に結合されていることを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項6】
前記固定子の導体と不導体は、前記固定子の上面に、円周方向に交互に放射状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項7】
前記固定子の内周面には、前記固定子の上面に備えられた導体と電気的に連結している内部導体がさらに備えられていることを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項8】
前記回転子の導体と不導体は、前記回転子の下面に、円周方向に交互に放射状に形成されていることを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【請求項9】
前記回転子の内周面には、前記セル端子との電気的遮断のために内部不導体がさらに備えられたことを特徴とする請求項に記載の車両用バッテリーモジュールの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリーモジュールの安全装置に関するものであり、より詳しくは、バッテリーセルの異常時(過充電、過放電、内部短絡、異常高温等)に電気回路を開放して安定性を確保することができる車両用バッテリーモジュールの安全装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、電気自動車は、電気モーターを利用して車両を駆動させる構成であり、電気モーターに駆動電力を提供するのに高電圧バッテリーパックを使用している。
【0003】
高電圧バッテリーパックは、次世代エネルギー貯蔵体として注目されているリチウムイオン二次電池を利用したものがあり、車両用リチウムイオン二次電池は製造社により多様な形態があるが、大きくカンタイプとパウチタイプに分けられ、バッテリーセルの個数及び形態に従ってバッテリーモジュールあるいはバッテリーパックとしている。
【0004】
一例として、8つのバッテリーセルが直列に連結されて1つのバッテリーモジュールをなし、9つのバッテリーモジュールと、1つのバッテリー管理システム(BMS;Battery Management System)、そして1つの電力継電アッセンブリ(PRA;Power Relay Assembly)が加えられて1つのバッテリーパックをなすようになる。
【0005】
上記のような車両用リチウムイオン二次電池は、耐久性はもちろん安全性を確保する技術が必ず適用されており、この安定性確保のための技術として異常時に電気的な遮断を行うことができる安全装置がある〔特許文献1〕。
【0006】
従来の安全素子として使用されている部品は、正温度係数(PTC;Positive Temperature Coeffcient)を応用した部品、温度ヒューズ(Thermal Fuse)、バイメタルPTC(Bi−metal with PTC)等があるが、PTC部品は、温度が上昇したときに抵抗が増加する素子で、作動温度以下でも抵抗が大きくてバッテリーの充放電効率を低下させ、大電流が瞬間的に流れるときに電圧が下がってバッテリー使用領域が減少する問題があり、また水分、高熱等に長期間放置時、信頼性が低下する問題が発生して10年以上使用する車両用としては適さない。
【0007】
温度ヒューズ(Thermal Fuse)は、温度が上ったとき内部回路が熱によって溶断される素子で、PTCに比べて抵抗が低く、短絡等による大電流の発生時に良好な動作特性を示すが、低い電流で過充電がされる場合、セルに発生する熱だけで溶断されなければならないのに、設置位置等の制約によって溶断温度まで温度が上がらない場合が多く、低い温度で動作する素子を使用している場合には、車両の瞬間加速時に発生する大電流によって素子が作動することがあり、車両用には適さない。
【0008】
バイメタルPTCは、一般的なPTCに比べて抵抗を改善されているが、振動/衝撃によってバイメタルが誤作動することが多く、車両用として適さない。
【0009】
バッテリーモジュールの異常時対策として、温度が高くなった時、あるいは大量の電流が流れた時にきれる回路を備えたバッテリーモジュールの安全装置〔特許文献2〕、バッテリーセルが異常で膨潤したときに、電極端子接続区域で電気的切断を起す安全性を改善したバッテリーモジュール〔特許文献3〕などの提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報10−0585380号明細書
【特許文献2】特表2011−505664号公報
【特許文献3】特表2011−504285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、過充電、過放電、内部短絡、異常高温等バッテリーセルに異常が発生したときにバッテリーセルが膨脹する現象を勘案してなされたものであり、バッテリーセルが膨脹したときに電気回路を開放してそれ以上の充電あるいは放電がないようにして、安全を確保することができる車両用バッテリーモジュールの安全装置を提供するところにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するためになされた本発明の車両用バッテリーモジュールの安全装置は、バッテリーセルの陽極端子と陰極端子に該当するセル端子と、バッテリーセルのうち2つの別のバッテリーセルに対角線に配置された2つのセルのセル端子を電気的に連結するように形成され、バッテリーセルが膨張していない正常状態である時には、2つのセルのセル端子間の電気的連結を維持し、バッテリーセルの少なくとも一方が膨脹する異常状態の時には、セル端子間に電気が流れないように回路を開放する安全バスバーと、を有して構成される。
【0013】
以下、好ましい課題解決手段となる本発明の車両用バッテリーモジュールの安全装置の形態を挙げる。
安全バスバーは、セル端子に貫通して固定設置され、導体と不導体が形成された固定子と、セル端子に貫通されて、固定子に面接触すると同時に、セル端子を中心に回転可能に設置され、導体と不導体が形成された回転子と、回転子の導体と電気的に連結する連結バーと、を含む構成である。
【0014】
安全バスバーは、固定子の側面とセル端子を一体に貫通して設置され、固定子をセル端子に固定させる固定ピンをさらに含んで構成される。
安全バスバーは、セル端子に分離可能に結合して、回転子がセル端子から離脱するのを防止する回転子キャップをさらに含んで構成される。
安全バスバーは、回転子と回転子キャップの間に設置された絶縁部材を、さらに含んで構成される。
【0015】
セル端子と回転子キャップは、ボルトとナットの結合方式で互いに分離可能に結合される。
【0016】
固定子の導体と不導体は、固定子の上面に、円周方向に交互に放射状に形成され、固定子の内周面には、固定子の上面に備えられた導体と電気的に連結が可能な内部導体がさらに備えられている。
【0017】
また、回転子の導体と不導体は、回転子の下面に、円周方向に交互に放射状に形成され、回転子の内周面には、セル端子との電気的遮断のために内部不導体がさらに備えられる。
【0018】
バッテリーセルが膨脹していない正常状態の時には、固定子の導体と回転子の導体が互いに連結し、バッテリーセルが膨脹する異常状態の時には、回転子が回転して固定子の導体と回転子の不導体が互いに接触し、同時に固定子の不導体と回転子の導体が互いに接触して電気が流れないようにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による車両用バッテリーモジュールの安全装置によれば、バッテリーセルが異常となって膨脹したとき、安全バスバーを構成する回転子の回転動作によってバッテリーセル間の電気的連結を遮断して電気が流れないように回路を開放することができるようになり、これによってバッテリーセルの充電あるいは放電がそれ以上進まなくなることにより安定性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による安全バスバーが設置された車両用バッテリーモジュールの斜視図である。
図2】本発明による安全バスバーの設置構造を説明する断面図である。
図3】本発明による固定子を説明する図面である。
図4】本発明による回転子を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の車両用バッテリーモジュールの安全装置を、好ましい実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明による車両用バッテリーモジュールの安全装置は、図1ないし図4に図示したように、
ッテリーセル10のセル端子11と、バッテリーセル10のうち2つの別のバッテリーセルに対角線に配置された2つのセルのセル端子11を電気的に連結するように形成され、バッテリーセル10が膨張していない正常状態である時には、これら2つのセル端子11間の電気的結を維持し、バッテリーセル10の少なくとも一方が膨脹する異常状態の時には、2つのセル端子11間に電気が流れないように回路を開放する安全バスバー20とを有している。
つまり、バッテリーセル10が並んでバッテリーモジュールを構成して、上記のようにバッテリーモジュールを構成するバッテリーセルのうち、同じバッテリーセルではなく、2つの異なるバッテリーセルに斜めに配置された2つのセル端子11間を、安全バスバー20が接続するように設定されている。
ここで、上述の安全バスバー20が接続されているセル端子11を備えた2つのバッテリーセルは、図1に示すように、互いに隣接する2つのバッテリーセルのものであってもよく、あるいは他のバッテリーセルによって互いに離隔された場合も可能である。
セル端子11は、バッテリーセル10の陽極端子と陰極端子に対応する。
【0023】
図1に示すように、隣合うバッテリーセル10において一方のバッテリーセル10の陽極端子と他方のバッテリーセル10の陰極端子が異なる側となるときにそれら陽極端子と陰極端子を結ぶバッテリーセルの対角線方向に安全バスバー20が配置され、それら陽極端子と陰極端子が同じ側となるときには従来からある通常のバスバー30で電気的に連結する。
【0024】
安全バスバー20は、セル端子11に貫通されて固定設置され、導体21aと不導体21bそれぞれの部分を有する固定子21と、セル端子11に貫通され、固定子21に面接触すると同時にセル端子11を中心として回転可能に設置され、導体22aと不導体22bそれぞれの部分を有する回転子22と、及び回転子22の導体22aを電気的に連結する連結バー23、を有する構成である。
【0025】
安全バスバー20は、固定子21の側面とセル端子11を一体に貫通して設置されて、固定子21をセル端子11に固定させる固定ピン24と、セル端子11に分離可能に結合してセル端子11からの回転子22の離脱を防止する回転子キャップ25、及び回転子22と回転子キャップ25間に設置された絶縁部材26をさらに含んでいる。
【0026】
セル端子11はボルトの形状で、回転子キャップ25はナットの形状であり、セル端子11と回転子キャップ25は、ボルトとナットの結合方式で互いに分離可能に結合されている。
【0027】
絶縁部材26は、電気的絶縁の役割だけでなく、回転子22と回転子キャップ25間での摩擦を小さくする役割もする。
【0028】
固定子21には、その上面に導体21aと不導体21bがそれぞれ円周方向に交互に放射状に形成され、かつその内周面には導体21aと電気的に連結が可能な内部導体21cが形成されている。
【0029】
回転子22には、その下面に導体22aと不導体22bがそれぞれ円周方向に交互に放射状に形成され、かつその内周面には、セル端子11との電気的遮断のために内部不導体22cが形成されている。
【0030】
以下、上記した実施形態の作用について説明する。
車両用高電圧バッテリーパックを構成するバッテリーモジュールは、複数個のバッテリーセル10が安全バスバー20と通常のバスバー30で電気的に連結されている構成である。
【0031】
すなわち、バッテリーセル10が正常状態である時には、回転子22がセル端子11を中心に回転せず、固定子21の導体21aと回転子22の導体22aが互いに電気的に連結されており、バッテリーモジュールは正常な充電及び放電ができる。
【0032】
過充電、過放電、内部短絡、異常高温等バッテリーセル10に異常が発生したとき、バッテリーセル10は膨脹して外形が膨れ上がる。バッテリーセル10が膨脹すると、安全バスバー20を構成する回転子22は、セル端子11を中心に時計方向または反時計方向に回転し、これにより固定子21の導体21aと回転子22の不導体22bが互いに接触し、同時に固定子21の不導体21bと回転子22の導体22aが互いに接触するようになり、固定子21と回転子22の間に電気が流れず、電気回路が開放される。
【0033】
電気回路が開放されると、バッテリーセル10はそれ以上充電あるいは放電ができなくなり、これによって安定性が確保されることになる。
【0034】
上記したように本発明によるバッテリーモジュールの安全装置は、バッテリーセル10が異常によって膨脹したとき、安全バスバー20を構成する回転子22の回転動作によってバッテリーセル10間の電気的連結を遮断させて電気が流れないようにすることができ、これによってバッテリーセル10の充電及び放電がそれ以上進まず、安定性が確保される。
【0035】
本発明のバッテリーモジュールの安全装置は、部品自体の抵抗が低く、温度や湿度、振動等の外部要因に影響をほとんど受けないことにより、誤動作のおそれが少なく、回転子22の回転トルクを利用してバッテリーセル10間の電気の流れを遮断するので、その作動は正確である。
【0036】
固定子21と回転子22の導体及び不導体の面積比率を調整することによって動作時点の調整が可能であり、さらに、固定子21と絶縁部材26間に温度センサー、電圧センサー等のセンサーを設置することができ、これらセンサー設置のために別途の空間及び器具が必要なくなるという長所がある。
【0037】
以上、特定の実施形態を挙げて本発明を説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想を脱しない範囲で、本発明が多様に改良及び変化することができるということは当業界で通常の知識を有した者にとって自明なことである。
【符号の説明】
【0038】
10;バッテリーセル
11;セル端子
20;安全バスバー
21;固定子
21a,22a;導体
21c;内部導体
22a,22b;不導体
22c;内部不導体
23;連結バー
24;固定ピン
25;回転子キャップ
26;絶縁部材
30;従来からある通常のバスバー
図1
図2
図3
図4