(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。各図において、共通する機能を有する装置は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。また、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、実施形態の超純水製造装置の構成を示すブロック図である。
図1に示す超純水製造装置1は、原水を処理する前処理システム10と、使用済み超純水を処理する回収処理システム20とを備えている。前処理システム10及び回収処理システム20はそれぞれ処理水ピットT1に接続されている。回収処理システム20は、逆浸透膜装置(RO)21及び電気脱イオン装置(EDI)22を備えている。
【0018】
処理水ピットT1の下流には、原水及び使用済み超純水を一次純水とする一次純水システム30、一次純水を貯留する一次純水タンクT2、一次純水を二次純水とする二次純水システム40が接続され、二次純水システム40は、ユースポイント(POU)50に接続されている。一次純水システム30は、逆浸透膜装置(RO)31、電気脱イオン装置(EDI)32を備えている。
【0019】
前処理システム10は、原水中の濁質分やコロイド成分を除去して原水を前処理水とする。前処理システム10は、前処理水のpHを6〜8程度とする。この前処理水は、処理水ピットT1に供給されて貯留される。前処理システム10が処理する原水としては、市水、井水、河川水、工業用水等が挙げられる。このような原水は通常、硬度成分(カルシウム、マグネシウム等)、イオン成分(ナトリウム、塩素イオン、イオン性有機物等)、溶存気体(溶存炭酸、溶存酸素等)、非イオン性有機物、微粒子成分等を含んでいる。前処理システム10は、具体的には、精密ろ過膜や限外ろ過膜等を用いた膜分離装置、生物ろ過装置、紫外線照射装置、活性炭装置等を適宜選択して用いることができる。
【0020】
回収処理システム20は、半導体製造工場等(ユースポイント)で使用された使用済み超純水を回収処理する。使用済み超純水としては、例えば、半導体洗浄工程における洗浄排水を用いる。このような使用済み超純水は、半導体製造工程で使用された薬剤類、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素、アンモニア、水酸化ナトリウム、過酸化水素、イソプロピルアルコールや界面活性剤などの有機物等、剥離したレジスト等の有機物を含み、pHは1〜3程度である。
【0021】
逆浸透膜装置21は、被処理水中の塩類やイオン性の有機物、コロイド性の有機物を除去する。すなわち、逆浸透膜装置21は、使用済み超純水中の硫酸、塩酸、硝酸、酢酸等やイオン性有機物等を除去して透過水とする。この透過水は、後段の電気脱イオン装置22に供給される。逆浸透膜装置21の濃縮水の一部は電気脱イオン装置22の電極室に電極水として供給され、残部は系外に排出される。逆浸透膜装置21としては、例えば、酢酸セルロース、ポリアミド等からなる逆浸透膜を、スパイラル型、チューブラー型、ホローファイバ型等、任意の形式としたモジュールを備えたものを用いることができる。
【0022】
逆浸透膜装置21の脱塩率(ナトリウムイオンの除去率)は96〜99.8%であることが好ましい。また、逆浸透膜装置21での水回収率は、60〜98%が好ましく、80〜95%がより好ましい。
【0023】
なお、逆浸透膜装置21の脱塩率を高めるために、逆浸透膜装置を2段直列に接続して2段逆浸透膜装置としてもよい。これにより、原水と比較してイオン成分の濃度が高い使用済み超純水中のイオン成分を十分に除去し、後段の電気脱イオン装置22への負荷を軽減することができる。なお、この場合、第1段の逆浸透膜装置での脱塩率(ナトリウムイオンの除去率)は、好ましくは96〜99.8%、第2段の逆浸透膜装置での脱塩率は好ましくは96〜99.8%である。水回収率は、第1段の逆浸透膜装置では60〜98%が好ましく、80〜95%がより好ましい。第2段の逆浸透膜装置では、80〜95%が好ましく、85〜95%がより好ましい。
【0024】
電気脱イオン装置22は、逆浸透膜装置21の透過水中に残留するイオン成分を除去するものである。電気脱イオン装置22は、陽極と陰極の間に交互に配置された陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを有している。また、電気脱イオン装置22は、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜によって仕切られた脱塩室と、除去されたイオン成分を含む濃縮水が流入する濃縮室とを交互に有している。電気脱イオン装置22は、脱塩室内に充填された陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合体と、直流電圧を印加するための電極を有している。
【0025】
電気脱イオン装置22において、被処理水は脱塩室及び濃縮室に並行して供給され、脱塩室の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体が被処理水中のイオン成分を吸着する。吸着されたイオン成分は直流電流の作用により濃縮室に移行されて、濃縮室の濃縮水は系外に排出される。
【0026】
電気脱イオン装置22は、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の混合体に吸着されたイオン成分を直流電流の作用により濃縮室へ連続的に移行させることで、同時にこの混合体を再生する。そのため、電気脱イオン装置22では、酸やアルカリのようなイオン交換樹脂を再生するための薬品を一切使用せずに連続的にイオン成分の除去を行うことができる。
【0027】
また、電気脱イオン装置22では、逆浸透膜装置21の濃縮水が電極水として電極室に供給される。そのため、電気脱イオン装置22の電極としては一般的に、耐食性のあるステンレス鋼等が用いられる。また、耐腐食性向上の観点から白金族金属電極又は白金族金属コーティングを施した電極を用いてもよく、電極水として、一次純水システム30の逆浸透膜装置31の透過水、濃縮水又は電気脱イオン装置32の濃縮水を供給することもできる。これらによって、電気脱イオン装置22の腐食を抑制して長期間安定した水質の透過水を得ることができる。
【0028】
電気脱イオン装置22は、一般的に、イオン交換樹脂よりもイオン成分の除去率が若干低いため、使用済み超純水のような酸性の水を処理する場合には、その透過水中に少量のフッ化水素等の酸成分が残留することになる。本実施形態では、この残留する酸成分によって、前処理水中の炭酸の少なくとも一部を被処理水中に気体として溶存させることができる。
【0029】
そのため、電気脱イオン装置22は、透過水のpHが4〜6程度となるような条件で運転することが好ましい。一般的に使用されている電気脱イオン装置を用いる場合には、透過水のpHはおおむね上記した好ましい範囲となる。また、電力量を10〜40W/hとすることで、透過水のpHを上記した好ましい範囲とすることができる。また、回収処理システム20に供給される使用済み超純水の水質又は逆浸透膜装置21の透過水の水質をあらかじめ測定し、測定値に基いて手動で、又は制御装置を用いてフィードバック制御することで運転条件を調節することも可能である。具体的には、使用済み超純水等の水質に基いて、運転条件として、電気脱イオン装置22への供給流量や、電気脱イオン装置22で印加する電圧の大きさを調節することができる。
【0030】
このように、回収処理システム20は、使用済み超純水を処理して、フッ素濃度が0.2〜0.5mg/L程度、pHが4〜6程度の回収処理水とする。この回収処理水は、処理水ピットT1に供給されて貯留される。
【0031】
上記したように、使用済み超純水は、種々の薬剤類を含んでいるため、本実施形態の回収処理システム20は、逆浸透膜装置21の上流側に、逆浸透膜を保護する目的で、使用済み超純水中の過酸化水素等を分解除去するための活性炭装置や有機物を酸化分解するための紫外線酸化装置を備えることが好ましい。
【0032】
紫外線酸化装置は、例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射可能な紫外線ランプを有し、この紫外線ランプによって紫外線を被処理水に照射することで、被処理水中のTOCを酸化分解する。紫外線酸化装置に用いられる紫外線ランプは、185nmの紫外線のみを発生するランプである必要はなく、本実施形態では、例えば、185nmの紫外線とともに254nm付近の紫外線を放射する低圧水銀ランプを使用することができる。
【0033】
紫外線酸化装置では、波長185nm付近の紫外線により、水が分解してOHラジカルが生成し、このOHラジカルが被処理水中の有機物を有機酸にまで酸化分解する。なお、回収処理システ20の紫外線酸化装置における紫外線照射量は、被処理水の水質によって適宜変更する。後述する一次純水システム30、二次純水システム40においても同様である。
【0034】
このように、本実施形態の純水製造装置1は、逆浸透膜装置21と電気脱イオン装置22をこの順に組み合わせた回収処理システム20を備えることで、イオン成分を効率よく除去することができる。
【0035】
また、本実施形態の純水製造装置1は、電気脱イオン装置22を用いているので、回収処理システム20における使用済み超純水のpHの調節が簡便であり、pHの調整のための酸、アルカリ薬品の使用量を削減することができる。また、逆浸透膜装置21と電気脱イオン装置22を用いてイオン成分を除去することができるので、従来のようなイオン交換樹脂の再生のための酸、アルカリ等の薬品の使用量を低減することができ、さらにはこれらの薬品を使用しないことも可能である。
【0036】
本実施形態の超純水製造装置1において、処理水ピットT1は、前処理システム10から得られた前処理水と、回収処理システム20から得られた回収処理水を貯留することで、これらを混合して混合処理水とするものである。処理水ピットT1は、例えばポリテトラフルオロエチレン製の容器を用いる。処理水ピットT1の大きさは特に限定されず、製造される超純水の流量や水質に合わせて適宜設計する。処理水ピットT1内では、混合処理水のpHは5〜6.5程度とされることが好ましい。
【0037】
原水中の溶存炭酸のほとんどは前処理システムを通過して前処理水中に溶存する。また、上述したように、排水処理システム20において、使用済み超純水のpHが4未満では、電気脱イオン装置22でのフッ素の除去率が低いので、除去されないフッ素が回収処理水中に残存することになる。処理水ピットT1は、この前処理水と回収処理水とを混合することで、上述したように混合処理水のpHを5〜6.5程度とすることができる。これにより溶存炭酸が炭酸イオンや炭酸水素イオンとして溶存することで、pH緩衝作用を有することになり、一次純水システム30系内での被処理水のpHの変動を小さくすることができる。一方、フッ化水素の酸解離定数がpKa=3.5程度であるので、回収処理水中に残存するフッ素は、混合処理水中でほとんどがフッ素イオンとして溶存することで、一次純水システム30の逆浸透膜装置31及び電気脱イオン装置32を経ることでそのほとんどが除去される。
【0038】
なお、処理水ピットT1内の混合処理水のpHは、前処理水及び回収処理水の水質を測定し、これらに基いて処理水ピットT1への前処理水の供給流量及び回収処理水の供給流量を調節することで、上記した好ましいpHの値の範囲に保つことができる。具体的には、前処理水流量/回収処理水流量で示される比を30/70〜70/30とすることで、混合処理水のpHを上記した好ましい値の範囲に安定に維持することができる。これにより、酸やアルカリ等の薬品を使用することなく、混合処理水のpHを調節することができる。
【0039】
一次純水システム30は、上記で得られた混合処理水を被処理水として、一次純水を製造する。一次純水システム30は、逆浸透膜装置31と、電気脱イオン装置32を備えている。
【0040】
逆浸透膜装置31は、回収処理システム20で用いられる逆浸透膜装置21と同様の装置を用いることができる。上述したように、逆浸透膜装置31の被処理水(混合処理水)中では、フッ化水素はそのほとんどが解離して、フッ素イオンとして溶存している。そのため、逆浸透膜装置31において、酸やアルカリ等の薬品を用いてpHを調整することなく、フッ素を効率よく除去することができる。逆浸透膜装置31の脱塩率(ナトリウムイオンの除去率)は、96〜99.8%であることが好ましい。逆浸透膜装置31の水回収率は、60〜98%が好ましく、80〜95%がより好ましい。
【0041】
なお、逆浸透膜装置31を、逆浸透膜装置を2段直列に接続した2段逆浸透膜装置としてもよい。これにより、脱塩率を向上させ、被処理水中の硬度成分をほぼ完全に除去することができるので、後段の電気脱イオン装置32における硬度スケールの生成を抑制することができる。
【0042】
この場合、第1段の逆浸透膜装置での脱塩率(ナトリウムイオンの除去率)は、好ましくは96〜99.8%、第2段の逆浸透膜装置での脱塩率は、好ましくは96〜99.8%である。また、水回収率は、第1段の逆浸透膜装置では60〜98%が好ましく、80〜95%がより好ましい。第2段の逆浸透膜装置では、80〜95%が好ましく、85〜95%がより好ましい。
【0043】
電気脱イオン装置32は、逆浸透膜装置31の透過水中のイオン成分(塩類、イオン性有機物等)を除去するものであり、回収処理システム20で用いられる電気脱イオン装置22と同様のものを使用することができる。本実施形態の一次純水システム30では、逆浸透膜装置31において、イオン化したフッ素のほとんどが除去されており、電気脱イオン装置32への負荷を軽減することができる。そのため、電気脱イオン装置32でのイオン成分の除去率を向上させることができる。
【0044】
なお、一次純水システム30は、逆浸透膜装置31の逆浸透膜面でのファウリングやスケール生成を抑制するために、逆浸透膜装置31の前段に、従来公知の紫外線照射装置やプレフィルターを備えていてもよい。また、一次純水システム30は、逆浸透膜装置31の後段に被処理水中の溶存炭酸ガスを除去する膜脱気装置を備えることが好ましく、これにより逆浸透膜装置31の被処理水の溶存炭酸濃度を低くすることで、下流側の電気脱イオン装置32のイオン交換膜面でのスケールの生成を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の一次純水システム30は、電気脱イオン装置32の後段に紫外線酸化装置、混床式イオン交換装置及び膜脱気装置を備えることが好ましい。
【0046】
紫外線酸化装置は、回収処理システム20における紫外線酸化装置とその構成、作用は同様であり、例えば、185nm付近の波長を有する紫外線を照射することにより、被処理水中の有機物を酸化分解する。
【0047】
混床式イオン交換装置としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合して充填した装置を用いることができ、再生式、非再生式のいずれであってもよい。混床式イオン交換装置は、前段の紫外線酸化装置で有機物が酸化分解して生成した低分子量のイオン成分を吸着除去する。また、膜脱気装置は、紫外線酸化装置の処理水中の溶存炭酸及び溶存酸素を除去する。
【0048】
このように一次純水システム30はその後段側に、紫外線酸化装置と混床式イオン交換装置を備えることで、被処理水中の微量の有機物を分解するとともに、イオン成分を吸着除去して、より高純度の一次純水を製造することができる。
【0049】
なお、一次純水システム30は、長期間運転する間には、逆浸透膜装置31を構成する膜部材にスケールが生成することがある。そのため、一次純水システム30の逆浸透膜装置31では、被処理水の供給管に分岐管等の形態で注入管を設け、逆浸透膜面へのスケール生成を抑制する機能を有する公知の化合物を分散剤やキレート剤として注入することが好ましい。
【0050】
分散剤やキレート剤等としては、カルシウムやフッ素に対して分散効果を有するものであれば特に限定されず、例えば、ホスホン酸、ポリアクリル酸、重合リン酸系分散剤等が挙げられる。また、キレート剤としては、Caに対してキレート効果を有するものであれば特に限定されず、エチレンジアミン四酢酸等を用いることができる。
【0051】
また、逆浸透膜面へのスケール生成を抑制するものとして、市販品を用いることもできる。市販品として、具体例には、Trisep社製の商品「TriPol 8010」、「TriPol 9010」、「TriPol 9510」、GE社製の商品「Hypersperse AF 200」、「Hypersperse SI 300」、BioLab社製の商品「Flocon 100」、「Flocon 200」、片山Nalco社製の商品「PermaTreat PC191」、「PermaTreat PC510」等が挙げられる。本実施形態においては、これらの市販品を適宜選択して使用することができる。
【0052】
一次純水タンクT2は、一次純水を貯留する。貯留された一次純水は、二次純水システム40に供給される。
【0053】
二次純水システム40は、例えば、紫外線酸化装置、非再生式ポリッシャー、膜脱気装置及び限外ろ過装置を備えている。二次純水システム40において、これらの装置が一次純水を順に処理し、全有機炭素(TOC)濃度が数十μgC/Lまで低減された一次純水中の有機物をさらに数μgC/Lまで低減して超純水とする。
【0054】
二次純水システム40における紫外線酸化装置の構成及び作用は一次純水システムの紫外線酸化装置と同様であり、被処理水に185nm付近の紫外線を照射することにより、被処理水中の有機物を酸化分解する。
【0055】
非再生式ポリッシャーは、紫外線酸化装置で有機物が分解して生成したイオン成分を吸着除去する。
【0056】
非再生式ポリッシャーとしては、ボンベ等の容器に強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂が混合充填されたものを用いることができる。また、膜脱気装置は、一次純水中の微量溶存酸素を除去して溶存酸素濃度を1μg/L以下程度まで低減し、限外ろ過膜装置は、イオン交換樹脂からの微量溶出物や微粒子成分を除去して0.05μm以上の微粒子数を250Psc./L以下程度まで低減する。
【0057】
なお、不純物の極めて少ない一次純水を処理し、超高水質の超純水を製造するために、二次純水システム40の各水処理装置は、薬品再生等を行わない交換タイプのものを用いることが好ましい。
【0058】
このように、二次純水システム40は、一次純水を処理して超純水とし、製造された超純水はユースポイント50に供給される。
【0059】
以上、本実施形態の超純水製造装置1によれば、使用済み超純水を用いて超純水を製造するに際し、電気脱イオン装置を用いて使用済み超純水中の不純物成分を効率よく除去することができる。さらに、回収処理水や、一次純水システムに供給される被処理水のpHの調整を簡便に行うことができ、一次純水システムでの不純物の除去効率を向上させることができる。さらに、pH調整のための酸、アルカリ等の使用を極力抑えることができる。
【0060】
また、本実施形態の超純水製造装置1によれば、回収処理システム20及び一次純水システム30において、被処理水中のイオン成分を、逆浸透膜装置と電気脱イオン装置との組み合わせでほとんど除去することができる。そのため、薬品再生の必要なイオン交換樹脂を省略することができ、これによりさらに、イオン交換樹脂の再生のための酸、アルカリ等の使用を、極力低減することができる。
【0061】
また、イオン交換樹脂を省略することで、大型の脱炭酸装置を省略することができるので、超純水システム1を小規模化、簡素化することができる。さらに、通常脱炭酸装置で行われるpH調整のための酸の注入を省略することができ、このための酸の使用量を極力低減することができる。
【0062】
さらに、本実施形態の超純水製造装置1によれば、酸やアルカリ等の薬品の使用量を極めて少なくすることができるので、これらを貯留するタンクや、ポンプ等を削減して装置を簡素化することができるだけでなく、薬品使用量の削減によるランニングコストの低減、薬品取扱いのリスクの低減が可能となる。
【実施例】
【0063】
次に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
本実施例に係る超純水製造装置2の構成を
図2に示す。以下の説明において、
図1と共通の機能を有する装置は同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する。
【0064】
図2に示される超純水製造装置2は、前処理システム10と、回収処理システム20と、一次純水システム30と、二次純水システム40とを備えている。二次純水システム40は、ユースポイント(POU)50に接続され、ユースポイント(POU)50で回収された使用済み超純水は、回収処理システム20に送られるようになっている。
【0065】
回収処理システム20は、活性炭装置(AC)23と、紫外線酸化装置(TOC−UV)24と、2段逆浸透膜装置(RO)21a,21bと、電気脱イオン装置22をこの順に備えている。
【0066】
前処理システム10と回収処理システム20は、それぞれ処理水ピットT1に接続されており、処理水ピットT1の下流側には、一次純水システム30と、一次純水タンクT2と、二次純水システム40とが配管を用いてこの順に接続されている。
【0067】
一次純水システム30は、紫外線照射装置(UV)33、プレフィルター(PF)342段逆浸透膜装置(RO)31a,31b、膜脱気装置(MDG)35、電気脱イオン装置(EDI)32、紫外線酸化装置(TOC−UV)36、混床式イオン交換装置(MB)37、膜脱気装置(MDG)38をこの順に備えている。また、一次純水システム30は、余剰の一次純水が図示しない配管によって処理水ピットT1に循環されるよう構成されている。
【0068】
二次純水システム40は、紫外線酸化装置(TOC−UV)41、非再生式ポリッシャー(Polisher)42、膜脱気装置(MDG)43、限外ろ過装置(UF)44をこの順に備えている。二次純水システム40は、余剰の超純水が図示しない配管によって一次純水タンクT2に循環されるよう構成されている。
【0069】
実施例で用いた装置の仕様は次のとおりである。
【0070】
[回収処理システム20]
活性炭装置(AC)23:F400(カルゴン カーボン ジャパン株式会社製)
紫外線酸化装置(TOC−UV)24:SUV−8000TOC(日本フォトサイエンス社製)
2段逆浸透膜装置(RO)21a,21b:TML20−400(東レ株式会社製)
電気脱イオン装置22:E−CELL MK3(GE社製)
処理水ピットT1:容量500m
3
【0071】
[一次純水システム30]
2段逆浸透膜装置(RO)31a:TML20D(東レ株式会社製)
31b:SU−720(東レ株式会社製)
膜脱気装置(MDG)35:X−40(ポリポア社製)
電気脱イオン装置(EDI)32:E−CELL MK3(GE社製)
紫外線酸化装置(TOC−UV)36:SUV−8000TOC(日本フォトサイエンス社製)
混床式イオン交換装置(MB)37:野村マイクロ・サイエンス(株)社製(イオン交換樹脂としてDuolite MBGP(ローム・アンド・ハース社製)を充填したもの)
膜脱気装置(MDG)38:X−40(ポリポア社製)
【0072】
[二次純水システム40]
紫外線酸化装置(TOC−UV)41:SUV−8000TOC(日本フォトサイエンス社製)
非再生式ポリッシャー(Polisher)42:野村マイクロ・サイエンス(株)社製(イオン交換樹脂としてDuolite MBGP(ローム・アンド・ハース社製)を充填したもの)
膜脱気装置(MDG)43:X−40(ポリポア社製)
限外ろ過装置(UF)44:OLT―6036V(旭化成株式会社製)
【0073】
[計測計器類]
TOC計:Anatel A1000XP(商品名、HACH社製)
溶存酸素計:MOCA−3600、オービスフェア社製
比抵抗率計:比抵抗モニター。
過酸化水素濃度計:NOXIA−LII(商品名(登録商標)、野村マイクロ・サイエンス(株)社製)
微粒子計測器:オンラインパーティクルカウンター(UDI−50、PMS社製)
シリカ:原子吸光光度計
ホウ素:誘導結合プラズマ質量分析計
各種金属:誘導結合プラズマ質量分析計
各種イオン:イオンクロマトグラフィー装置
【0074】
実施例では、導電率200μS/cm、pH7.3、硬度60mg/L(as CaCO
3)、炭酸濃度30mg/L(as CaCO
3)の工業用水を、一日あたりの流量10,000m
3/dで前処理システム10に供給した。また、導電率1,500μS/cm、pH1.8、フッ素濃度6mg/L(as CaCO
3)の使用済み超純水を一日あたりの流量9,500m
3/dで回収処理システム20に供給した。
実施例で用いた工業用水及び使用済み超純水の水質を表1に示す。
【0075】
【表1】
実施例において、回収処理システム20の電気脱イオン装置22の処理水(回収処理水)の水質は、pH5.2、フッ素濃度0.4mg/L(as CaCO
3)であり、処理水ピットT1の混合処理水の水質は、pH6.3、炭酸濃度15mg/L(as CaCO
3)であった。これらの結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
次いで、処理水ピットT1から、一日あたりの流量19,000m
3/dで被処理水を一次純水システム30に供給した。
逆浸透膜装置31の透過水の膜脱気装置35への供給流量は18,000m
3/dであった。また、逆浸透膜装置31bの透過水水質は、比抵抗0.1MΩ・cm、全有機炭素(TOC)濃度14μgC/L、ホウ素濃度1μg/Lであり、電気脱イオン装置32の透過水水質は比抵抗17.2MΩ・cm、全有機炭素(TOC)濃度13μgC/L、ホウ素濃度0.04μg/Lであった。これらの結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
次いで、一次純水タンクT2に貯留された一次純水の水質を測定した後、一次純水を一日あたりの流量17,000m
3/dで二次純水システム40に供給して順に処理し、得られる超純水の流量及び水質を測定した。一次純水の水質は、比抵抗17.5MΩ・cm、全有機炭素(TOC)濃度3.3μgC/Lであった。また、超純水の流量は17,000m
3/d、超純水水質は、比抵抗18.2MΩ・cm、0.05μm以上の微粒子数180Pcs./L、全有機炭素(TOC)濃度0.4μgC/Lであった。
これらの結果及び上記以外の超純水水質測定結果を表4に示す。
【0078】
【表4】
なお、超純水製造装置2全体における水回収率(超純水流量/(工業用水流量+使用済み超純水流量))は、0.87(87%)であった。また、超純水製造装置2内での水温は図示しない熱交換器等によって25℃程度に保った。
【0079】
このように、超純水製造装置2では回収処理システム20及び一次純水システム30において十分なイオン除去率を得ることができる。そのため、使用済み超純水を利用して高水質の超純水を製造することができる。また、イオン交換樹脂を省略できるので、これを再生するための薬品使用量を大幅に削減でき、コストを削減することができる。