特許第6162005号(P6162005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デピュー インターナショナル リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6162005-外科器具の取り付け 図000002
  • 特許6162005-外科器具の取り付け 図000003
  • 特許6162005-外科器具の取り付け 図000004
  • 特許6162005-外科器具の取り付け 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162005
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】外科器具の取り付け
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   A61B17/56
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-187226(P2013-187226)
(22)【出願日】2013年9月10日
(62)【分割の表示】特願2010-525427(P2010-525427)の分割
【原出願日】2008年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-23942(P2014-23942A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2013年9月10日
【審判番号】不服2016-6499(P2016-6499/J1)
【審判請求日】2016年5月2日
(31)【優先権主張番号】0718416.1
(32)【優先日】2007年9月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500353989
【氏名又は名称】デピュー インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ケクマン・マヤ
(72)【発明者】
【氏名】ストロウクス・リサ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルテラモ・アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】アシュビー・アラン
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 平瀬 知明
【審判官】 二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4841975(US,A)
【文献】 国際公開第2005/110249(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/104945(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/14-17/17
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科器具において、
遠位端部および近位端部を有し、前記遠位端部に取り付けられた構成要素を脛骨の長さ方向軸に対して整列させるための、整列ガイドと、
前記外科器具を患者の1つの脚に取り付けるための、前記整列ガイドの前記近位端部の方に取り付けられたブレースと、
を含み、
前記ブレースは、一対の対向部材を含み、前記一対の対向部材は、前記患者の前記脚の第1の側で前記患者の第1のくるぶしを取り囲んで受容するようにサイズ決めされ成形された第1の部材と、前記患者の前記脚の第2の側で前記患者の第2のくるぶしを取り囲んで受容するようにサイズ決めされ成形された第2の部材と、を含み、使用中に前記ブレースが前記患者の脚をつかむことを可能にするように、前記ブレースの少なくとも一部が弾性材料で作られている、外科器具。
【請求項2】
請求項1に記載の外科器具において、
各対向部材は、丸みを帯びた三角形状を有する、外科器具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の外科器具において、
各対向部材は、横方向寸法にわたって湾曲したバンドから形成される、外科器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の外科器具において、
前記ブレースの前記一対の対向部材は、前記第1の部材と前記第2の部材との間に位置する中央部分に取り付けられ、前記ブレースは前記中央部分において前記整列ガイドの遠位端に取り付けられ、前記ブレースは前記中央部分を中心に実質的に180°にわたって回転されうる、外科器具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の外科器具において、
前記ブレースは、前記外科器具の長さ方向軸を中心として非対称である、外科器具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の外科器具において、
前記ブレースは、前記整列ガイドの長さ方向軸の脇にオフセットされている、外科器具。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の外科器具において、
前記ブレースは、プラスチック材料から作られる、外科器具。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の外科器具において、
前記ブレースは、複合構造体で作られる、外科器具。
【請求項9】
請求項8に記載の外科器具において、
前記ブレースの前記対向部材は、プラスチック材料で作られ、前記対向部材は、金属部品により結合されている、外科器具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の外科器具において、
前記ブレースは、異なる剛性または機械特性を有する2つの材料で作られている、外科器具。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の外科器具において、
前記各対向部材は、開口部を画定するループの形状を有し、前記ループが対応するくるぶしを取り囲むことができるように形成されている、外科器具。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
本発明は、外科器具に関し、具体的には、外科器具を患者に取り付けるための機構に関する。
【0002】
様々な器具および装置が、例えば膝関節形成処置など、整形外科の関節形成処置中に使用されて、その処置中に使用される様々な器具および装置の位置付けを助けてガイドする。
【0003】
例えば、図1は、膝関節形成処置中に使用されうる、患者の下肢に取り付けられた先行技術の外部脛骨整列ガイド10の側面図を示す。整列ガイド10は、近位脛骨切断を実行するために脛骨結節に対して脛骨切断ブロック12を位置付けるのに使用される。整列ガイドは足首クランプ14を含み、足首クランプ14によって、ガイド10は、患者の下肢16に対して遠位に固定される。足首クランプは、ブロックと、足首の周りに係合する一対のクランプと、を含む。切断ブロックは、入れ子式に延びることができる支持部材18に取り付けられる。支持体18は、外部整列ガイドを提供し、取り付けられた切断ブロックは、外部整列ガイドにより、脛骨の長さ方向の下方−上方軸に対して位置付けられ整列されることができる。すなわち、支持部材は、脛骨の軸と整列されうる。
【0004】
脛骨の切除位置は、切断ブロック12と組み合わせて針(stylus)を用いて設定されてよく、いったん高さが選択されたら、切断ブロックを所定の場所にピンで留めて、脛骨の切断を実行することができる。
【0005】
しかしながら、足首クランプ14は、いくつかの問題を引き起こす。足首クランプは、自由かつ偶発的な並進運動および回転を生じる場合があり、これによって、整列ガイドが動かされることになる。また、足首クランプは実際に使用するのが困難な場合がある。これは、足首クランプを患者の周りでクランプするために手動の操作および作業を必要が必要とされるためである。さらに、患者の周りに位置付ける間、使用者の手袋がクランプの中に絡まる場合があり、これにより、手術が遅れるか、または手袋を傷つける必要が生じ、そのために取替が必要になる場合があり、さらなる遅延を引き起こす。
【0006】
したがって、器具を正確かつ確実に患者に取り付けることを可能にする、使いやすい機構が必要とされている。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、外科器具が提供され、この外科器具は、遠位端部および近位端部を有する構成要素と、患者の手足に器具を取り付けるため、構成要素の近位端部に向けて取り付けられたブレースと、を含み、ブレースは、一対の対向部材を含み、各部材は、患者のそれぞれの骨部分を患者の両側に保持するように成形され、ブレースの少なくとも一部は、使用中にブレースが患者をつかむことを可能にする弾性材料で作られている。
【0008】
ブレースの少なくとも一部を弾性材料から作り、患者の骨部分を保持するように部材を成形することによって、器具は、使用中に「押し嵌められ(push fitted)」、患者をつかみ、患者の特定の部分に器具をしっかりと確実に取り付けることができる。したがって、器具は、患者に設置するのが容易であり、ブレースが患者をつかみ、部材が患者の解剖学的構造の骨部分にロックする際に、患者に対する動きに抵抗する。
【0009】
ブレースは、3つ以上の部材を含みうる。例えば、ブレースは、二対以上の対向部材を含むことができる。異なる数の部材がブレースの両側に設けられてもよい。例えば、ブレースの第1の側面が1つの部材を有してよく、ブレースの対向側面が2つの部材を有してよい。ブレースの両側に3つ以上の部材を有することが可能である。部材の数および形状は、ブレースが取り付けられる予定の、患者上の位置において、患者の局所的な骨の解剖学的構造に適合するか、またはそれを利用するように選択されてよい。
【0010】
構成要素は、好適な位置で患者に取り付けられなければならない、あらゆるタイプの外科器具または用具であってよい。例えば、構成要素は、脛骨整列ガイドなどの外部整列ガイドであってよい。
【0011】
いずれかの部材または各部材は、概ね凹状の形状を有することができる。部材の凹状の形状は、使用中に患者のそれぞれの骨部分を受容するように構成されうる。
【0012】
いずれかの部材または各部材は、概ね閉じた形態を有することができる。例えば、各部材は、骨部分を囲むことができるカップまたはキャップの形態であってよい。
【0013】
いずれかの部材または各部材は、概ね開いた形態を有することができる。すなわち、各部材は、内部に開口部もしくは穴を画定することができ、その開口部もしくは穴を通して、患者の骨部分は、器具の取り付け中に外科医によって触診されることができる。穴または開口部は、部材によって、全体的にまたは部分的に囲まれてよい。例えば、部材は、材料の閉じたループ、または概ねU字型もしくはC字型を有する材料の開いたループであってよい。
【0014】
いずれかの部材または各部材は、骨部分の周りで少なくとも部分的に延びるように成形されうる。いずれかの部材または各部材は、骨部分を取り囲むように成形されてよい。
【0015】
各部材は、概して丸みを帯びた三角形、または西洋梨、または涙滴の形状を有することができる。
【0016】
各部材は、バンド材料から形成されうる。バンド材料は、その横方向寸法(transverse dimension)にわたって湾曲していてよい。これにより、ブレースを患者の上に押し嵌めることを容易にすることができる。
【0017】
好ましくは、ブレースは、実質的に180°にわたって回転されうる。このことにより、非対称の身体部分に同じブレースを用いることができる。ブレースは、構成要素に旋回可能に取り付けられうるか、または構成要素に取り外し可能に取り付けられうる。
【0018】
ブレースは、器具の長さ方向軸を中心に非対称であってよい。これにより、ブレースが非対称の骨部分と位置合わせすることができる。
【0019】
好ましくは、各部材は、くるぶしを保持するように成形される。このことにより、器具は、ブレースを足首の上に押し嵌めることによって患者の脚に取り付けられる。
【0020】
ブレースは、構成要素の長さ方向軸の脇にオフセットされてよい。このことにより、構成要素は、身体部分の軸に対する骨部分の位置を補正するために構成要素に対してブレースを位置付けることによって、身体部分と自動的に整列される。例えば、構成要素を身体部分の外側面から60%のところ、また内側面から40%のところに位置付けるために、ブレースの60%が、構成要素の一方の側にあってよく、ブレースの40%が、構成要素の他方の側にあってよい。
【0021】
好ましくは、ブレースはプラスチック材料から作られる。例えば、ブレースは、生体適合性の熱可塑性物質または熱硬化性ポリマーから作られうる。
【0022】
いずれかの部材または各部材の全体もしくは一部が、弾性材料から作られてよい。部材は、弾性材料から作られたブレースの一部により結合されうる。ブレース全体が弾性材料から作られてよい。
【0023】
適切な弾性材料には、ポリマー、例えば、ポリウレタン、ABS、ナイロン、またはポリプロピレンが含まれる。
【0024】
ブレースは、複合構造体で作られてよい。複合構造体は、金属およびプラスチックなど、異なる種類またはタイプの材料を含みうる。ブレースの部材は、プラスチック材料で作られてよく、これらの部材は、プラスチックでない部品により結合されうる。部材は、金属部品によって結合されうる。
【0025】
ブレースの材料特性および/または材料のタイプは、ブレースが異なる足首サイズの範囲にわたって自己センタリングするように、選択されうる。部材は、異なるタイプのプラスチックで作られてよい。部材は、異なる剛性または他の機械特性を有することができる。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、患者の手足に外科器具を取り付ける方法が提供され、器具は、遠位端部および近位端部を有する構成要素、ならびに整列ガイドの近位端部に向けて取り付けられたブレースを含み、ブレースは、一対の対向部材を含んでいる。この方法は、患者の手足に隣接して構成要素を位置付けることと、ブレースを患者に押し嵌めることであって、各部材が患者の両側で患者のそれぞれの骨部分を保持して、ブレースが患者をつかむようにする、押し嵌めることと、を含む。
【0027】
したがって、ブレースは、かなりの手動操作もしくは作業または浪費時間を必要とすることなく、好適な位置および向きで患者の手足に構成要素を取り付ける容易な方法を提供する。
【0028】
本発明の実施形態を、ほんの一例として、添付図面を参照して説明する。
【0029】
異なる図面中の同様のアイテムは、特に指定しない限り、共通の参照符号を共有している。
【0030】
図2は、本発明の実施形態による器具20の斜視図を示す。図3は、器具20の側面図を示し、図4は、分解した器具の斜視図を示し、その構成部品を示している。
【0031】
器具20は、以下にさらに詳細に説明するように、一般的に、患者に器具を取り付けるための、器具の近位端部の方を向いたブレース30を含む。構成要素40が、器具20の遠位端部に取り付けられ、例示された実施形態では、この構成要素は、切断ガイドの形態をしている。器具20はまた、さらなる構成要素50を含み、この構成要素50を介して、切断ガイドおよびブレースは、それぞれの端部で取り付けられる。例示された実施形態では、さらなる構成要素50は、外部整列ガイドである。整列ガイド50は、ピボット機構90を含み、ピボット機構90は、以下にさらに詳細に説明するように、整列ガイドの第1の上部が整列ガイドの第2の下部に対して旋回することを可能にする。
【0032】
ブレース30は、ブレースを器具に解放可能に取り付けるスナップ嵌め機構により、ベース部材80に取り付けられる。ベース80は、概ね平坦な部材82を有し、この部材82は、後方部分から延びて、湾曲縁部84をもたらす。部材82の形状および寸法は、器具の使用中に患者の脛の表面の一部に湾曲縁部84を隣接させるように選択される。ベース80は、概ね側方または横方向にベースを横切って延びる溝86および湾曲トラフ88を含む。
【0033】
整列ガイド構成要素の下部または下方部分56は、足部分58を含み、足部分58は、概ねU字型の構成を有しており、リブ59がトラフ86に係合した状態でベース80と係合して、ベース80に対するスライド並進運動を可能にするように構成されている。クランプ組立体60が、第1の部材62および第2の部材64ならびにバネ66を含み、これらは金属ピンにより足部58に取り付けられ、スライドを防ぐため使用中にトラフ88と係合することができる。
【0034】
整列ガイドの下部56は、一対の対向する平坦な側面と一対の対向する湾曲側面とを備えた概ね矩形の形状を有する足部58から延びる、中実で細長い部材68を含む。
【0035】
ピボット機構90の第1の部品70は、概ね中空の支持体72を含み、湾曲部材74が支持体72から離れて延びている。湾曲部材74は、その最上表面の近くに複数の角度のしるし76を有している。ピボット機構の第1の部品70は、その下方端部の方を向いたクリップ組立体78を含む。クリップ組立体は、下方表面に開口部を有する概ね中空のハウジング77と、同様の開口部を含むクリッププレート79とを含む。バネ構成要素もクリップ機構内部に設けられる。
【0036】
整列ガイドの下方部分56の部材68は、ピボット組立体の第1の部品のそれらの開口部および中空部分を通り抜ける。クリッププレート79がバネの作用に対抗して押し下げられると、ピボット組立体は、部材68の長さ方向軸に沿って並進運動させられて、器具の高さ全体を調節することができる。バネ部材は、クリッププレート79に対抗して作用し、クリッププレートの開口部の縁部に部材68を閉じ込めて、並進運動を妨げ、したがって、器具の高さを固定する。
【0037】
ピボット組立体90は、整列ガイドの第2の部品54の端部に向けて設けられた第2の部品を含む。ピボット組立体90の第2の部品は、丸みを帯びた湾曲スリーブ92の形態をしており、スリーブ92は、湾曲部材74の対応する凹部と噛み合うための突出部94をその内側部分に有する。湾曲部材74に沿ったスリーブ92の現在位置に応じて角度のしるし76のうちの1つを表示させることができる開口部96が、上部表面に設けられる。第1および第2のクランプ牽引具(clamp drawers)100、102と、バネ104とを含むクランプ組立体98も設けられる。クランプ組立体98は、クランプ牽引具100、102を通過してスリーブ92の受容開口部内に入るピンによって、スリーブ92に取り付けられる。湾曲部材74の自由端に取り付けられ、湾曲部材74の自由端がスリーブ92から出るのを妨げるようにサイズ決めされた、端部停止プレート106も設けられている。
【0038】
整列ガイドの第2の上方部品54は、その長さ全体に沿って延びる中央開口部110を含む、概ね円形の円筒構造を有する。開口部は、部材68を受容するように成形され寸法決めされており、上方部品54は、部材68の長さ方向軸に沿ってスライドすることができる。上方領域112は、閉じた円筒形態を有するが、下方領域114は、図3に最も良く示されるように、開いた後方部分を有し、概ねCまたはU字型の断面を有する。開いた部分は、上方部品54が下部56に対して傾けられたときに部材68が上方部品54内部から出ることができるような寸法に成形されている。
【0039】
切断ブロック40は、雄コネクタ(mail connector)により取り付けられたバネ付きクリップ120によって整列ガイド50の遠位端部に取り付けられており、バネ付きクリップ120は上方部品54の孔110の中で係合する。バネクリップ120により、様々な異なる構成要素を器具に選択的に取り付けることができる。例示された実施形態では、構成要素は、膝関節形成処置中に脛骨切断を行うのに適した切断ブロック40である。切断ブロック40は、主要本体46に取り付けられた概ねプレート状の湾曲した上方部分44を通り抜けるスロット42を含む。本体46は、切断ガイド40を患者に取り付けるピンを受容するために使用中に患者の骨に穴をあけることができるように、ドリルビットを受容する複数の穴を含む。
【0040】
ピボット機構90の湾曲部材74は、切断ブロックのある点を中心とした曲率半径を有する。この幾何学的形状のために、スリーブ92が湾曲部材74に沿ってスライドされると、整列ガイドの上方部品54は、下部56に対して傾くが、器具の全長は変わらない、すなわち、ブレースより上の切断ブロック40の少なくとも一部の高さは、整列ガイドの上方部品が構成要素に位置するある点の周りを効果的に旋回するにつれて著しく増大も減少もしない。したがって、構成要素40の、器具の残部に対する角度は、器具の全長または全高を変えずに、変更されうる。したがって、使用中、外科医は、後で器具の全高を再調節する必要なく、切断ブロック40の角度を変更することができる。ピボット機構は、線(先行技術の装置で行われる)ではなく円弧(したがって適切な角度)を用いて後方の傾斜を設定し、かつ、近位旋回基準を有して脛骨の長さとは無関係の後方の傾斜を設定することができるように、設けられ構成されることができる。
【0041】
器具20は、ブレース30を含み、ブレース30により、器具は、患者に取り付けられ、患者上で支持されることができる。本発明を例示する実施形態は、整列ガイドを含むが、他の実施形態では、ブレース30が他のタイプの器具もしくは構成要素を患者の身体に対して支持していてもよいことが理解されるであろう。この例示的な実施形態では、器具20は、脛骨切断ブロック40を含む外部整列ガイドである。整列ガイド50により、切断ブロックは、脛骨の長さ方向軸に対して整列され、また、切断ブロック40の高さおよび角度位置が調節されて、予定の、または好ましい位置および/または向きで脛骨切断を行うことができる。
【0042】
ブレース30は、ブレース30の概ね両側に設けられた第1の部材32および第2の部材34を含む。部材32、34は、スナップ嵌めファスナーの開口部品を含む共通の中央またはブリッジ部分36に取り付けられ、ブリッジ部分36により、ブレース30は、ベース80の協働部品に解放可能に取り付けられることができる。各部材32、34は、ループの形をしており、開いた穴もしくは開口部がそれらのループにより画定されている。ループは、リボンまたはバンド材料から形成されている。バンド材料は、複雑な形状を有しており、いくつかの方向に湾曲する。まず、バンド材料は、その横方向寸法がいくらかのバネ力をもたらすので、湾曲する。さらに、バンド材料は、概ね凹状の形態を画定するように湾曲する。各ループは、患者のそれぞれのくるぶしを受容するようにサイズ決めされ成形された概ね西洋梨型または涙滴型の開口部38を画定するように形成される。
【0043】
ブレース構成要素30全体は、弾性プラスチック材料から作られ、ブレースは概して弾力があり、ブレースを患者の足首の上に押し嵌めることができ、部材32、34がくるぶしを取り囲み、ブレースの弾性材料により、ブレースが患者の足首をしっかりとつかみ、器具を所定の場所に保持する。
【0044】
ブレースは、ポリウレタン、ABS、ナイロンまたはポリプロピレンを含む様々なタイプのポリマーなど、適切なプラスチック材料から作られることができる。プラスチック材料は、使用中に異なるサイズの範囲の足首に取り付けられてその足首をつかむために、適切な弾力および可撓性を有するように選択される。他の実施形態では、ブレースは、金属、合金、複合材、高降伏応力金属(high yield stress metals)、ならびにハイブリッド金属およびプラスチックといった、任意の適切な弾力のある材料から作られてよい。
【0045】
前記の通り、部材の形状は、部材が使用中にくるぶしに確実に巻き付くように適応または構成されている。ブレースの開口部により、外科医はくるぶしに触れることができるので、外科医は器具の正確な位置付けを再確認する。開口部の寸法は、集団で全般に見られるくるぶしの約95%にブレースが適するように設計される。
【0046】
くるぶしの形状は、使用される特定の材料と共に、足首の周りで必要な固定またはグリップ力を与えるように選択され、器具は、患者に押し嵌めて取り付けられることができる。器具は、ブレースの弾性材料により及ぼされるバネ力によって、ブレースが概して独自の位置で足首上にロックされるにつれて、少なくとも部分的に自己配置される(self-locating)。
【0047】
本発明の他の適用では、部材は、ブレースが取り付けられるべき特徴部の他の骨部分を捕捉するために、異なる形状および寸法を有するであろうことが認識されるはずである。
【0048】
また、ブレースの材料は、ブレースが集団中に存在する足首サイズの約95%に適合するよう、ブレースの十分な可撓性および弾力性をもたらすように選択される。
【0049】
ブレースは、足首の左側および右側のくるぶしのわずかに異なる解剖学的構造を考慮に入れるために、第1および第2の部材が異なる形状およびサイズを有するので、非対称である。単にブレースを器具から取り外し、ブレースを180°にわたって回転させ、ブレースを器具に再び取り付けることによって、器具を左側および右側の足首に使用することができる。したがって、患者の左側および右側の足首両方に単一の器具を使用することができる。さらに、ブレースは、典型的な患者の脛骨により整列ガイドを自動的に位置付けるように設計される。典型的には、脛骨は、脚の外側から約60%、内側から40%のところに位置している。したがって、ブレースは、整列ガイド50がブレースの外側から約60%、内側から40%の位置でブレースに取り付けられる(ブレースの内側および外側は、内側および外側のくるぶしのわずかに異なる解剖学的構造を受容するように異なる形状およびサイズの部材によって定められる)ように設計される。よって、器具が最初に患者に取り付けられると、ブレースは、患者の内側‐外側方向において60/40の割合で自動的に位置付けられ、整列ガイドは、脛骨と自動的におおよそ整列される。
【0050】
他の実施形態では、ブレースの60%‐40%(または任意の他の割合)の位置付けは、同じ構成要素に2つの異なる材料を使用することによって達成されることもできる。例えば、ブレースは、異なる剛性または機械特性を有する2つの材料で作られてよく、1つは内側部分用、もう1つは外側部分用である。このように、ブレースは、任意の所定の足首サイズに合わせて自己センタリングすることができる。
【0051】
器具の残りの部品は、適切な生体適合性金属で作られたクランプおよびクリップの様々なバネおよびピン部品を除いて、ABS、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリカーボネート、およびナイロンといった、様々なプラスチック材料で作られてよい。さらに、切断ガイド40は、典型的には、ステンレス鋼または類似のものといった、適切な生体適合性金属で作られる。
【0052】
器具の使用について説明する。前記に説明したように、本発明は、説明した特定の外部脛骨整列ガイドに限定されるものではなく、他のタイプの外科器具にも使用されてよく、同様に本発明を使用する方法も前述の特定の器具に限定されるものではない。
【0053】
最初に、外科医は、器具の長さ方向軸を患者の下肢の長さ方向軸と、すなわち下‐上方向に概ね整列させることにより、器具を患者の下肢と概ね整列させる。ブレースは、足首の前方かつ足首の上で、くるぶし付近に位置付けられる。外科医は、ブレースが患者の足首に対して正確な向きにあるかどうかを確認することができ、正確な向きにない場合は、ブレースを取り外し、180°だけ回転させ、その後、器具に再び取り付けることができる。ブレースは、患者の足首の上で押され、ブレースは変形して、部材により画定された概ね内曲しているかまたはC字型の断面空間の口部分に足首を入れる。部材の湾曲した前縁部は、部材がくるぶしの後方まで通過しくるぶしを囲むようにブレースが足首上に十分に押されるまで、くるぶしの上に載る。部材82の湾曲縁部84は、患者の脛の前部の一部と隣接させられ、脛骨から離れた好適な位置で整列ガイドを保持する。
【0054】
ブレースが弾性材料で作られるので、ブレースは、足首の周りを自動的にクランプし足首をしっかりとつかむ。また、部材の穴は、くるぶしの骨部分を受容するように成形されているので、ブレースは、くるぶし周辺に自動的に据えられ、ゆえに、特定の位置にブレース自体を自己設置する。ブレースの弾性材料により及ぼされる握力はまた、ブレースを概ね前方方向に足首から引き離すことでブレースを取り外すために十分な力が加えられない限り、ブレースが大きく動くことを防ぐ。さらに、整列ガイドがブレースの幅に沿って60:40で位置するので、整列ガイドは、異常な解剖学的構造がなければ、脛骨の中央と主として整列されるであろう。
【0055】
外科医は、ガイド50の位置付けを微調整するために、必要であれば、次に、ベースクランプ60を操作し、整列ガイドを内側‐外側方向にスライドさせることができる。外科医はまた、必要な場合、ガイドの長さを伸ばすかまたは減少させるためにクリップ79を操作することができ、脛骨の遠位部分に対して正確な高さで切断ブロックを位置付けて脛骨の切断を行う。外科医はまた、ピボット機構クランプ98を操作し、ガイドの上方部品および切断ブロックを脛骨に向けて押すことにより、切断ブロックの切断角度を変えるように整列ガイドの上方部品を傾けることができる。外科医は、開口部96を通して表示される現在の傾斜度を見て、所望の傾斜度がいつ達成されたかどうか判断することができる。湾曲部材は、切断ブロックの上方プレートで概ね終端する曲率半径を有するので、上方部品が傾斜したときに、ガイドの全長、すなわち、切断ブロックの切断ガイドスロットとブレースとの間の間隔は、実質的に変化せず、そのため、脛骨に対する切断ブロックの高さを変える必要はない。
【0056】
切断ブロックは次に、所定の場所でピン留めされうる。バネクリップ120は、次に、切断ブロックを解放するように操作されてよく、外科医は、器具を引っ張って、ブレースをくるぶし周辺から解放することができる。したがって、外科医は、ブレースを使用して、より簡単に器具を取り付けおよび解放することができる。器具はまた、より大きな調節機能および使いやすさをもたらす。
【0057】
〔実施の態様〕
(1) 外科器具において、
遠位端部および近位端部を有する整列ガイドと、
前記器具を患者の手足に取り付けるための、前記整列ガイドの前記近位端部に向けて取り付けられたブレースと、
を含み、
前記ブレースは、一対の対向部材を含み、各部材は、前記患者の両側で前記患者のそれぞれの骨部分を保持するように成形され、前記ブレースの少なくとも一部が、使用中に前記ブレースが前記患者をつかむことを可能にする弾性材料で作られている、器具。
(2) 実施態様1に記載の器具において、
各部材は、使用中に前記患者のそれぞれの骨部分を受容するように構成された概ね凹状の形状を有する、器具。
(3) 実施態様1または2に記載の器具において、
各部材は、概ね閉じた形態を有する、器具。
(4) 実施態様1または2に記載の器具において、
各部材は、概ね開いた形態を有する、器具。
(5) 実施態様4に記載の器具において、
各部材は、前記骨部分の周りに少なくとも部分的に延びるように成形されている、器具。
【0058】
(6) 実施態様5に記載の器具において、
各部材は、前記骨部分を取り囲むように成形されている、器具。
(7) 実施態様1に記載の器具において、
各部材は、概して丸みを帯びた三角形状を有する、器具。
(8) 実施態様4に記載の器具において、
各部材は、横方向寸法にわたって湾曲したバンドから形成される、器具。
(9) 実施態様1に記載の器具において、
前記ブレースは、実質的に180°にわたって回転されうる、器具。
(10) 実施態様1に記載の器具において、
前記ブレースは、前記器具の長さ方向軸を中心として非対称である、器具。
【0059】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の器具において、
各部材は、くるぶしを保持するように成形されている、器具。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の器具において、
前記ブレースは、前記整列ガイドの長さ方向軸の脇にオフセットされている、器具。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載の器具において、
前記ブレースは、プラスチック材料から作られる、器具。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載の器具において、
前記ブレースは、複合構造体で作られる、器具。
(15) 実施態様14に記載の器具において、
前記ブレースの前記部材は、プラスチック材料で作られ、前記部材は、金属部品により結合されている、器具。
【0060】
(16) 実施態様1に記載の器具において、
前記ブレースの材料特性は、前記ブレースが異なる足首サイズの範囲にわたって自己センタリングするように選択されている、器具。
(17) 患者の手足に外科器具を取り付ける方法であって、前記器具は、遠位端部および近位端部を有する整列ガイド、ならびに前記整列ガイドの前記近位端部に向けて取り付けられたブレースであって、一対の対向部材を含む、ブレースを含む、方法において、
前記患者の前記手足に隣接して前記整列ガイドを位置付けることと、
前記患者上に前記ブレースを押し嵌めることであって、各部材が前記患者の両側で前記患者のそれぞれの骨部分を保持し、前記ブレースが前記患者をつかむようにする、押し嵌めることと、
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】先行技術の外部脛骨整列ガイドの側面図を示す。
図2】本発明を含む整列ガイドの斜視図を示す。
図3図2に示す整列ガイドの側面図を示す。
図4図2に示す整列ガイドの分解組立斜視図を示す。
図1
図2
図3
図4