(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、
前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設けたリンク作動装置本体を備え、
密閉空間を形成して内部に前記リンク作動装置本体を収容するカバーを設け、
このカバーは、前記リンク作動装置本体の基端側および先端側にそれぞれ膨らむ形状の基端側カバー部材および先端側カバー部材を共通のカバー被取付部材に取り付けてなり、
前記先端側カバー部材は、シート状の材料からなり、かつ前記カバー被取付部材に取り付ける取付部を有する基端側の平面部と、前記先端側のリンクハブに取り付ける取付部を有する先端側の平面部と、これら2つの平面部の外周同士をつなぎ合わせる外周部とからなることを特徴とするリンク作動装置。
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のリンク作動装置において、前記先端側カバー部材の前記2つの平面部は、これら2つの平面部の並び方向を中心軸とする円周方向位相が互いに異なるリンク作動装置。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のリンク作動装置において、前記カバー被取付部材は、前記基端側のリンクハブおよび前記アクチュエータが固定される円形のベース部材であり、前記基端側カバー部材は、円筒部とこの円筒部の一方端側の開口を塞ぐ平面部とを有し、前記ベース部材の外周面に前記基端側カバー部材の前記円筒部の他方端の内周面を嵌合させ、かつ前記ベース部材の先端側の面に前記先端側カバー部材を取り付けたリンク作動装置。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のリンク作動装置において、前記基端側のリンクハブおよび前記アクチュエータが固定されるベース部材と、このベース部材に対して平行に設置され中央部に貫通孔を持つ円形部材とを有し、この円形部材が前記カバー被取付部材であり、前記基端側カバー部材は、円筒部とこの円筒部の一方端側の開口を塞ぐ平面部とを有し、前記円形部材の外周面に前記基端側カバー部材の前記円筒部の他方端の内周面を嵌合させ、かつ前記円形部材の先端側の面に前記先端側カバー部材を取り付けたリンク作動装置。
請求項7に記載のリンク作動装置において、前記円形部材と前記先端側カバー部材との間に、前記円形部材の貫通孔よりも小径の貫通孔を持つシート状の弾性材からなる干渉防止部材を設けたリンク作動装置。
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のリンク作動装置において、前記先端側カバー部材の前記2つの平面部の各取付部は、弾性部材を介して取付対象となる他の部材に固定されるリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さいため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定するには、リンク長さを長くする必要がある。それにより、機構全体の寸法が大きくなって、装置が大型になってしまうという問題がある。また、リンク長を長くすると、機構全体の剛性の低下を招く。そのため、トラベリングプレートに搭載されるツールの重量、つまりトラベリングプレートの可搬重量も小さいものに制限されるという問題もあった。これらの理由から、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作業範囲の動作が要求される医療機器や産業機器等に用いるのは難しい。
【0005】
特許文献2のリンク作動装置は、3節連鎖のリンク機構を3組以上設けた構成としたことにより、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能である。しかし、このリンク作動装置は、特にモータの回転駆動力を端部リンク部材に伝達する駆動機構部の防塵対策を施すことが難しい。特許文献2には、防塵対策についての記述はない。
【0006】
この発明の目的は、高速で広い動作範囲の動作を実現でき、かつ安価に製作できて動作を阻害しない防塵対策が施されたリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設けたリンク作動装置本体を備える。このリンク作動装置において、密閉空間を形成して内部に前記リンク作動装置本体を収容するカバーを設け、このカバーは、前記リンク作動装置本体の基端側および先端側にそれぞれ膨らむ形状の基端側カバー部材および先端側カバー部材を共通のカバー被取付部材に取り付けてなり、前記先端側カバー部材は、シート状の材料からなり、かつ前記カバー被取付部材に取り付ける取付部を有する基端側の平面部と、前記先端側のリンクハブに取り付ける取付部を有する先端側の平面部と、これら2つの平面部の外周同士をつなぎ合わせる外周部とからなることを特徴とする。前記カバー被取付部材は、例えば基端側のリンクハブに直接または間接的に取り付けられる。
【0008】
リンク作動装置本体は、基端側のリンクハブと、先端側のリンクハブと、3組以上のリンク機構とで、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブが直交2軸方向に移動自在な2自由度機構として構成される。言い換えると、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブを、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブの中心軸と先端側のリンクハブの中心軸の折れ角は最大で約±90°であり、基端側のリンクハブに対する先端側のリンクハブの旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。
【0009】
基端側カバー部材および先端側カバー部材を共通のカバー被取付部材に取り付けることで密閉空間が形成され、この密閉空間にリンク作動装置本体を配置することによりリンク作動装置本体に対する防塵がなされる。これにより、リンク作動装置を悪環境下で使用した場合でも、リンク作動装置本体等の寿命低下を防ぐことができる。また、カバー内にリンク作動装置本体を収容すると、駆動機構部や軸受部のグリースが外部に飛散することも防止できる。防塵対策として基端側カバー部材および先端側カバー部材を設けるだけであるので、安価に製作することができる。
【0010】
先端側カバー部材を、基端側および先端側の平面部と、これら2つの平面部の外周同士をつなぎ合わせる外周部とからなる構成としたことにより、先端側カバー部材の内部に広い空間が形成される。リンク作動装置本体は基端側に比べ先端側の動作が大きいが、その動作の大きいリンク作動装置本体の先端側も先端側カバー部材内に収容することができる先端側カバー部材は、シート状の材料からなるため、容易に変形できる。また、先端側カバー部材の先端側取付部を先端側のリンクハブに固定の先端側固定部材に取り付けたため、先端側カバー部材の先端側の平面部が先端側のリンクハブと同じに動く。そのため、リンク作動装置本体が広い作動範囲を持ち、先端側のリンクハブの移動量が大きい場合でも、先端側カバー部材の屈曲抵抗が小さて済む。
【0011】
この発明において、前記基端側の平面部の外形よりも前記先端側の平面部の外形を小さくすると良い。ここで言う外形は、外周の形状のことである。
基端側の平面部の外形よりも先端側の平面部の外形を小さくすることで、先端側カバー部材の先端側部分の移動量が小さくなる。それにより、リンク作動装置を設置する架台等の、リンク作動装置の周辺にある部材に先端側カバー部材が干渉することを防止できる。
【0012】
この発明において、前記先端側カバー部の前記2つの平面部は、いずれも外形が正方形であると良い。
平面部が正方形であると、外観が良い。また、正方形の辺の長さと円の直径とが同じである場合、正方形の方が円よりも面積が広いため、平面部が正方形であると、リンク作動装置本体の動作に伴う先端側カバーの変形が、外周部だけでなく平面部でも起き易い。そのため、先端側カバーの屈曲抵抗がより小さくなる。
【0013】
この発明において、前記先端側カバー部材を構成するシート状の材料は、ターポリンであると良い。
ターポリンは、耐候性や強度に優れ、安価に製作できるため、先端側カバー部材の材料に適する。
【0014】
この発明において、前記先端側カバー部材の前記2つの平面部は、これら2つの平面部の並び方向を中心軸とする円周方向位相が互いに異なっていても良い。
2つの平面部の円周方向位相を互いに異ならせることで、2つの平面部をつなぎ合わせる外周部が先端側カバー部材の内側に折りたたまれるようになる。それにより、リンク作動装置本体の動作時に、外周部が撓んで先端側のリンクハブに設置した部材と干渉することを防止できる。
【0015】
この発明において、前記外周部に蛇腹状に折りたたむ折り目を付けても良い。
外周部に蛇腹状に折りたたむ折り目を付けることにより、外周部が先端側カバー部材の内側に折りたたまれるようになる。それにより、リンク作動装置本体の動作時に、外周部が撓んで先端側のリンクハブに設置した部材と干渉することを防止できる。また、先端側のリンクハブが移動するときに外周部が伸びたり縮んだりして変形するため、先端側カバーの屈曲抵抗が小さくなる。
【0016】
この発明において、前記カバー被取付部材は、前記基端側のリンクハブおよび前記アクチュエータが固定される円形のベース部材であり、前記基端側カバー部材は円筒部とこの円筒部の一方端側の開口を塞ぐ平面部とを有し、前記ベース部材の外周面に前記基端側カバー部材の前記円筒部の他方端の内周面を嵌合させ、かつ前記ベース部材の先端側の面に前記先端側カバー部材を取り付けると良い。
この構成とすると、基端側カバー部材と先端側カバー部材とで、リンク作動装置本体を収容する密閉空間を容易に形成することができる。また、カバー被取付部材であるベース部材に基端側カバー部材を取り付けた状態であっても、任意の架台にリンク作動装置を設置することができる。
【0017】
この発明において、前記基端側のリンクハブおよび前記アクチュエータが固定されるベース部材と、このベース部材に対して平行に設置され中央部に貫通孔を持つ円形部材とを有し、この円形部材が前記カバー被取付部材であり、前記基端側カバー部材は、円筒部とこの円筒部の一方端側の開口を塞ぐ平面部とを有し、前記円形部材の外周面に前記基端側カバー部材の前記円筒部の他方端の内周面を嵌合させ、かつ前記円形部材の先端側の面に前記先端側カバー部材を取り付けても良い。
この構成とすると、ベース部材にアクチュエータ等が設置されている場合でも、基端側カバー部材と先端側カバー部材とで、リンク作動装置本体を収容する密閉空間を容易に形成することができる。また、カバー被取付部材である円形部材に基端側カバー部材を取り付けた状態であっても、任意の架台にリンク作動装置を設置することができる。
【0018】
前記円形部材と前記先端側カバー部材との間に、前記円形部材の貫通孔よりも小径の貫通孔を持つシート状の弾性材からなる干渉防止部材を設けると良い。
干渉防止部材が設けられていると、先端側カバー部材の平面部や外周部が内側に変形した場合に、その変形が一定以上になると、先端側カバー部材の変形部分がシート状の弾性材からなる干渉防止部材に接触する。これにより、先端側カバー部材に損傷を与えることなく、先端側カバー部材の変形を抑制され、先端側カバー部材とリンク作動装置本体とが干渉することを防止できる。
【0019】
この発明において、前記先端側カバー部材の前記2つの平面部の各取付部は、弾性部材を介して取付対象となる他の部材に固定すると良い。
例えばブーツバンド等を用いて平面部の取付部と取付対象となる他の部材とを面接触で密着させて固定する場合、両者間に弾性部材を介在させることで密着性が増し、防塵性が向上する。また、弾性部材を介することで、取付部と他の部材の嵌合隙間を大きく取ることができるため、組立性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構のうち2組以上のリンク機構に、前記基端側のリンクハブに対する前記先端側のリンクハブの姿勢を任意に変更させるアクチュエータを設けたリンク作動装置本体を備え、密閉空間を形成して内部に前記リンク作動装置本体を収容するカバーを設け、このカバーは、前記リンク作動装置本体の基端側および先端側にそれぞれ膨らむ形状の基端側カバー部材および先端側カバー部材を共通のカバー被取付部材に取り付けてなり、前記先端側カバー部材は、シート状の材料からなり、かつ前記カバー被取付部材に取り付ける取付部を有する基端側の平面部と、前記先端側のリンクハブに取り付ける取付部を有する先端側の平面部と、これら2つの平面部の外周同士をつなぎ合わせる外周部とからなるため、高速で広い動作範囲の動作を実現でき、かつ安価に製作できて動作を阻害しない防塵対策が施される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明にかかるリンク作動装置の一実施形態を
図1〜
図8と共に説明する。
図1に示すように、このリンク作動装置51は、リンク作動装置本体1と、このリンク作動本体1を架台52に支持させる支持機構53と、前記リンク作動本体1を作動させる複数のアクチュエータ54と、それぞれで前記リンク作動本体1が収容される密閉空間56を形成するカバー57とを備える。カバー57は、基端側カバー部材58および先端側カバー部材59からなる。
【0023】
前記架台52は、内部にリンク作動装置本体1が配置される貫通孔52aを有する。前記支持機構53は、円形部材60と、複数本の支柱61と、円形のベース部材62とで構成される。円形部材60は、架台52の貫通孔52aに対し同心かつ小径で内部にリンク作動装置本体1が配置される貫通孔60aを有し、架台52の上面にボルト63で結合される。複数本の支柱61は、円形部材60の上面に例えば円周方向等配で設けられる。図の例では、支柱61の下端に設けた雄ねじ部61aを円形部材60にねじ込んで、支柱61を円形部材60に固定しているが、他の方法で固定してもよい。支柱61の位置は、ベース部材62に取り付けられる部品(図示せず)が配置されていない位置とするのが良い。ベース部材62は、各支柱61の上端にボルト64で固定され、下面中央部にリンク作動装置本体1が吊り下げ状態で設置される。
【0024】
図2は、リンク作動装置本体1および駆動機構部の正面図である。リンク作動装置本体1は、前記ベース部材62にスペーサ65を介して基端側のリンクハブ2が固定され、この基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。ベース部材62には、後記大歯車77が嵌り込む開口62aが形成されている。なお、
図1、
図2では、3組のリンク機構4のうち1組のリンク機構4のみが図示されている。
図1と
図2とで異なるリンク機構4を図示しているため、それぞれのリンク機構4の向きが互いに逆になっている。
【0025】
図3は、リンク作動装置本体1を三次元的に表わした斜視図である。各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる4節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、一方端が基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3にそれぞれ回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他方端がそれぞれ回転自在に連結されている。基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3は六角柱状で、外周面を構成する6つの側面2a,3aのうちの1つ置きに離れた各3つの側面2a,3aに、基端側および先端側の端部リンク部材5,6がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0026】
3組のリンク機構4の各基端側および先端側の端部リンク部材5,6は、球面リンク構造と呼ばれる構造であって、それぞれの球面リンク中心PA,PB(
図4に図示)は一致しており、また、その球面リンク中心PA,PBからの距離も同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶の中心軸は、ある交差角γをもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0027】
3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
図5は、一組のリンク機構4を直線で表現した図である。
【0028】
この実施形態のリンク機構4は回転対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心線Cに対して回転対称となる位置構成になっている。
図4(A)は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBとが同一線上にある状態を示し、
図4(B)は、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離dは変化しない。
【0029】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。言い換えると、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を、回転が2自由度で姿勢変更自在な機構である。この2自由度機構は、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動き、また基端側のリンクハブ2の中心軸QA、先端側のリンクハブ3の中心軸QB、および中央リンク部材7の中心線Cの交点Pを中心として、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3が姿勢を変更する。
【0030】
上記2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ2の中心軸QAと先端側のリンクハブ3の中心軸QBの折れ角θ(
図3)の最大値を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(
図3)を0°〜360°の範囲に設定できる。折れ角θは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ2の中心軸QAに対して先端側のリンクハブ3の中心軸QBが傾斜した水平角度のことである。
【0031】
図6は基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部の断面図、
図7はその部分拡大図である。なお、
図6、
図7では、1組のリンク機構4の基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部のみが図示されている。
【0032】
図7の部分拡大図に示すように、基端側のリンクハブ2の側面2aから軸部材35が突出し、この軸部材35に2つの軸受12の内輪(図示せず)が外嵌し、基端側の端部リンク部材5の基端側のリンクハブ側の端部に軸受12の外輪(図示せず)が内嵌している。つまり、内輪は基端側のリンクハブ2に固定され、外輪が基端側の端部リンク部材5と共に回転する構造である。軸受12は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット37による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受12としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部も、同様の構造である。
【0033】
また、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部も、2つの軸受24を介して互いに回転自在に連結されている。すなわち、基端側の端部リンク部材5に軸受24の外輪(図示せず)が内嵌し、中央リンク部材7の軸部7aに軸受24の内輪(図示せず)が外嵌している。軸受24は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受であって、ナット47による締付けでもって所定の予圧量を付与して固定されている。軸受24としては、図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部も、同様の構造である。
【0034】
この実施形態の場合、
図6に示すように、リンク作動装置本体1を作動させる前記アクチュエータ54が、3組のリンク機構4のすべてに設けられている。但し、3組のリンク機構4のうちの少なくとも2組にアクチュエータ54を設ければ、リンク作動装置本体1の動作を規定することができる。各アクチュエータ54は、制御装置67により制御される。制御装置67は、例えば
図2のように、リンク作動装置51を操作する操作具(図示せず)を有するコントローラ68に設けられるが、制御装置67はコントローラ68と別に設けてもよい。
【0035】
図6において、アクチュエータ54はロータリアクチュエータ、より詳しくは減速機71付きのサーボモータであって、モータ固定部材72によりベース部材62に固定されている。アクチュエータ54の回転は、前記減速機71と歯車式の減速部73を介して基端側の端部リンク部材5へ伝達される。減速機71と歯車式の減速部73とで減速機構70を構成する。
【0036】
歯車式の減速部73は、アクチュエータ54の出力軸54aにカップリング75を介して回転伝達可能に連結された小歯車76と、基端側の端部リンク部材5に固定され前記小歯車76と噛み合う大歯車77とで構成されている。図示例では、小歯車76および大歯車77は平歯車であり、大歯車77は、扇形の周面にのみ歯が形成された扇形歯車である。大歯車77は小歯車76よりもピッチ円半径が大きく、アクチュエータ54の出力軸54aの回転が基端側の端部リンク部材5へ、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶中心軸O1回りの回転に減速して伝達される。その減速比は10以上とされている。この例では、減速部73に平歯車を使用しているが、その他の機構、例えばかさ歯車やウォーム機構等を使用してもよい。
【0037】
大歯車77のピッチ円半径は、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としてある。前記アーム長Lは、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸O1の軸方向中心点P1から、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶中心軸O2の軸方向中心点P2を基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸O1に直交してその軸方向中心点P1を通る平面に投影した点P3までの距離である。この実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上である。そのため、高い減速比を得るのに有利である。
【0038】
小歯車76は、大歯車77と噛み合う歯部76aの両側に突出する軸部76bを有し、これら両軸部76bが、ベース部材62に設置の回転支持部材79に設けられた2つの軸受80によりそれぞれ回転自在に支持されている。軸受80は、例えば深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受等の玉軸受である。図示例のように玉軸受を複列で配列する以外に、ローラ軸受や滑り軸受を用いてもよい。2つの軸受80の各外輪(図示せず)間にはシム(図示せず)を設け、軸部76bに螺合したナット81を締め付けることにより、軸受80に予圧を付与する構成としてある。軸受80の外輪は、回転支持部材79に圧入されている。
【0039】
この実施形態の場合、大歯車77は、基端側の端部リンク部材5と別部材であり、基端側の端部リンク部材5に対してボルト等の結合具82により着脱可能に取付けられている。大歯車77は基端側の端部リンク部材5と一体であってもよい。
【0040】
アクチュエータ54の回転軸心O3および小歯車76の回転軸心O4は同軸上に位置する。これら回転軸心O3,O4は、基端側のリンクハブ24と基端側の端部リンク部材5の回転対偶中心軸O1と平行で、かつベース部材62からの高さが同じとされている。
【0041】
このリンク作動装置51は、3組のリンク機構4のすべてにアクチュエータ54および減速機構70を設けたことで、リンク作動装置本体1や減速機構70のガタを詰めるように制御することが可能となり、先端側のリンクハブ3の位置決め精度が向上すると共に、リンク作動装置本体1の高剛性化を実現できる。
【0042】
また、歯車式の減速部73は、小歯車76と大歯車77の組合せからなり、10以上の高い減速比が得られる。減速比が高いと、エンコーダ等による位置決め分解能が高くなるため、先端側のリンクハブ3の位置決め分解能が向上する。また、低出力のアクチュエータ54を使用することができる。この実施形態では減速機71付きのアクチュエータ54を使用しているが、歯車式の減速部73の減速比が高ければ、減速機無しのアクチュエータ54を使用することも可能となり、アクチュエータ54を小型化できる。
【0043】
大歯車77のピッチ円半径を、基端側の端部リンク部材5のアーム長Lの1/2以上としたことで、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の曲げモーメントが小さくなる。そのため、リンク作動装置本体1の剛性を必要以上に高くしなくて済むと共に、基端側の端部リンク部材5の軽量化を図れる。例えば、基端側の端部リンク部材5をステンレス鋼(SUS)からアルミに変更できる。また、大歯車77のピッチ円半径が比較的大きいため、大歯車77の歯部の面圧が減少し、リンク作動装置本体1の剛性が高くなる。
また、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長の1/2以上であると、大歯車77が、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶に設置する軸受12の外径よりも十分大きな径となるため、大歯車77の歯部と軸受12との間にスペースができ、大歯車77の設置が容易である。
【0044】
特にこの実施形態の場合、大歯車77のピッチ円半径が前記アーム長L以上であるため、大歯車77のピッチ円半径がさらに大きくなり、前記作用・効果がより一層顕著に現れる。加えて、小歯車76をリンク機構4よりも外径側に設置することが可能となる。その結果、小歯車76の設置スペースを容易に確保することができ、設計の自由度が増す。また、小歯車76と他の部材との干渉が起こり難くなり、リンク作動装置本体1の可動範囲が広くなる。
【0045】
小歯車76および大歯車77は、それぞれ平歯車であるため、製作が容易であり、しかも回転の伝達効率が高い。小歯車76は軸方向両側で軸受80により支持されているため、小歯車76の支持剛性が高い。それにより、先端負荷による基端側の端部リンク部材5の角度保持剛性が高くなり、リンク作動装置本体1の剛性や位置決め精度の向上に繋がる。また、アクチュエータ54の回転軸心O3、小歯車76の回転軸心O4、および基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5との回転対偶中心軸O1が同一平面上にあるため、全体的なバランスが良く、組立性が良い。
【0046】
大歯車77は、基端側の端部リンク部材5に対して着脱自在であるため、歯車式の減速部73の減速比や、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の作動範囲等の仕様の変更が容易となり、リンク作動装置51の量産性が向上する。つまり、同じリンク作動装置51を、大歯車77を変えるだけで、様々な用途に適用することが可能である。また、メンテナンス性が良い。例えば、歯車式の減速部73に障害が生じた場合に、同減速部73のみを交換するだけで対処可能である。
【0047】
次に、前記カバー57について説明する。
図1において、基端側カバー部材58は、円筒部58aとこの円筒部58aの基端側(上端側)の開口を塞ぐ平面部58bとからなり、基端側に膨らむ袋形状である。基端側カバー部材58は、前記円筒部58aの下端内周面を支持機構53の円形部材60の外周面に嵌合させて、円形部材60に取り付けられる。すなわち、この実施形態の場合、円形部材60がカバー被取付部材である。基端側カバー部材58の円筒部58aと平面部58bは、例えばボルトまたは接着剤等により結合されている。円筒部58aおよび平面部58bを一体に成型しても構わない。基端側カバー部材58の材料としては、軽量な樹脂等が良い。基端側カバー部材58の円筒部58aと円形部材60との嵌合部にOリング(図示せず)を介在させると、密閉性が高くなる。
【0048】
図8に示すように、先端側カバー部材59は、定常状態で互いに平行な基端側および先端側の平面部59a,59bと、これら2つの平面部59a,59bの外周同士をつなぎ合わせる外周部59cとからなる。基端側の平面部59aの中央部には円形の開口59aaが設けられおり、先端側カバー部材59は先端側に膨らむ袋形状である。先端側の平面部59bの中央部にも円形の開口59baが設けられているが、先端側カバー部材59の取付状態では、前記開口59baは後記先端側固定部材91によって塞がれる。
【0049】
基端側の平面部59aの開口59aaの内周縁には、円筒状の基端側取付部59abが設けられている。この基端側取付部59abを、
図1のように、円形部材60の下面に貫通孔60aの内周に沿って設けられた円環状の基端側固定部材90の外周に嵌合させることで、カバー被取付部材である円形部材60に先端側カバー部材59の基端が取り付けられる。基端側取付部59abは、例えば、基端側固定部材90にブーツバンド(図示せず)で固定される。なお、基端側固定部材90は、ボルト(図示せず)等により円形部材60に固定されている。
【0050】
また、
図8に示すように、先端側の平面部59bの開口59baの内周縁には、円筒状の先端側取付部59bbが設けられている。この先端側取付部59bbを、
図1のように、先端側のリンクハブ3の先端面に固定された円形の先端側固定部材91の外周に嵌合させることで、先端側のリンクハブ3に先端側カバー部材59の先端が取り付けられる。先端側取付部59bbは、例えば、先端側固定部材91にブーツバンド(図示せず)で固定される。なお、先端側固定部材91は、ボルト(図示せず)等により先端側のリンクハブ3に固定されている。
【0051】
先端側カバー部材59は、例えば厚さ0.01〜2.0mm程度のシート状の材料からなる。シート状の材料としては、例えばテントに使用され耐候性や強度に優れ、比較的安価なターポリンが適する。ターポリンは、ポリエステル系の繊維に塩化ビニール等の合成樹脂をコーティングしたものである。他に、ゴム等を使用しても良い。
【0052】
この実施形態の場合、基端側および先端側の平面部59a,59bはいずれも外形が正方形であって、基端側の平面部59aよりも先端側の平面部59bの方が外形を小さくしてある。よって、外周部59cは、4面の台形状面59caからなる。外周部59cは、1枚のシート状材料からなっていてもよく、または複数枚のシート状材料を組み合せたものであっても良い。例えば、4枚の台形のシート状材料をつなぎ合わせたものとする。平面部59a,59bと外周部59cとは、縫合、接着剤、圧着等により接合する。
【0053】
このように、カバー57の基端側カバー部材58および先端側カバー部材59を共通のカバー被取付部材である円形部材60に取り付けることで密閉空間56が形成され、この密閉空間56にリンク作動装置本体1を配置することによりリンク作動装置本体1に対する防塵がなされる。これにより、リンク作動装置51を悪環境下で使用した場合でも、リンク作動装置本体1等の寿命低下を防ぐことができる。また、カバー57内にリンク作動装置本体1を収容すると、リンク作動装置本体1の駆動機構部や軸受部のグリースが外部に飛散することも防止できる。防塵対策として基端側カバー部材58および先端側カバー部材59を設けるだけであるので、安価に製作することができる。
【0054】
先端側カバー部材59を、基端側および先端側の平面部59a,59bと、これら2つの平面部59a,59bの外周同士をつなぎ合わせる外周部59cとからなる構成としたことにより、先端側カバー部材59の内部に広い空間が形成される。リンク作動装置本体1は、基端側に比べて先端側の動作が大きいが、その動作の大きいリンク作動装置本体1の先端側も先端側カバー部材59内に収容することができる。
【0055】
リンク作動装置本体1の作動による先端側のリンクハブ3の位置および姿勢の変化に対して、先端側カバー部材59は、主に外周部59cが変形することで対応する。例えば、先端側のリンクハブ3が傾斜した場合は、外周部59cの4面の台形状面59caがそれぞれ異なる変形をすることで対応する。
【0056】
先端側カバー部材59は、シート状の材料からなるため、容易に変形できる。また、先端側カバー部材59の先端側取付部59bbを先端側のリンクハブ3に固定の先端側固定部材91に取り付けたため、先端側カバー部材59の先端側の平面部59bが先端側のリンクハブ3と同じに動く。そのため、リンク作動装置本体1が広い作動範囲を持ち、先端側のリンクハブ3の移動量が大きい場合でも、先端側カバー部材59の屈曲抵抗が小さて済む。
【0057】
先端側カバー部材59は、基端側の平面部59aの外形よりも先端側の平面部59bの外形を小さくしてあるため、先端側カバー部材59の先端側部分の移動量が比較的小さい。それにより、リンク作動装置51を設置する架台52等の、リンク作動装置51の周辺にある部材に先端側カバー部材59が干渉することを防止できる。
【0058】
また、この実施形態のように、基端側および先端側の平面部59a,59bの外形を正方形とすると、外観がすっきりとして見栄えが良い。また、正方形の辺の長さと円の直径とが同じである場合、正方形の方が円よりも面積が広いため、平面部59a,59bが正方形であると、リンク作動装置本体1の動作に伴う先端側カバー59の変形が、外周部59cだけでなく平面部59a,59bでも起き易い。そのため、先端側カバー59の屈曲抵抗がより小さくなる。
【0059】
上記実施形態では、先端側カバー部材59の2つの平面部59a,59bが正方形であるが、正方形以外であっても良い。平面部59a,59bを、例えば
図9に示すように六角形としても良く、また
図10のように円形としても良い。さらに、これら以外の形状であっても良い。いずれの場合も、先端側のリンクハブ3の位置および姿勢の変化に対応して変形することができる。
【0060】
図11、
図12は、先端側カバー部材59の基端側および先端側の2つの平面部59a,59bの位相を互いにずらして設置した実施形態を示す。ここで言う位相は、2つの平面部59a,59bの並び方向を中心軸とする円周方向位相である。この例では、基端側の平面部59aに対して先端側の平面部59bが、時計回りに45°だけ位相がずれている。位相のずれは45°に限定されるものではなく、それ以外であっても良い。
【0061】
このように、2つの平面部59a,59bの位相をずらせることで、
図12に示すように、基端側の平面部59aと先端側の平面部59bの角部同士を直線で結ぶ部分が折り目92となって、外周部59cの一部が内側に折りたたまれる。そのため、
図1の実施形態のように外周部59cの上下中央部が垂れることがなく、先端側のリンクハブ3(図示せず)に搭載した部品(図示せず)と先端側カバー部材59の外周部59cが干渉することを防止できる。この例の場合、前記部品は、先端側固定部材91の下面に取り付けられる。また、リンク作動装置本体1の動作に応じて外周部59cの折りたたまれた部分が滑るように変形するため、先端側カバー部材59の屈曲抵抗が小さい。
【0062】
図の例では、基端側の平面部59aと先端側の平面部59bの角部同士を直線で結ぶ部分が外周部59cの折り目92となっているが、これ以外の部分が折り目となっても良い。また、外周部59cは、折り目を付けられた1枚のシート状材料(図示せず)からなっていても良く、または複数のシート状材料(図示せず)をつなぎ合わせ、そのつなぎ合わせ部分を折り目としても良い。
【0063】
図13は、先端側カバー部材59の外周部59cに蛇腹状に折りたたむ折り目92を付けた実施形態を示す。図の例は、2つの平面部59a,59bが円形であるが、2つの平面部59a,59bが多角形であっても良い。多角形である場合、2つの平面部59a,59bの円周方向位相が互いに同じにするのが良い。先端側カバー部材59は、シート状のゴム材を一体成型して製作する。または、複数のシート材を折り目部でつなぎ合わせて製作する。前記折り目92は、単に折る位置を示す目印ではなく、折りぐせを有するものである。
【0064】
このように、先端側カバー部材59の外周部59cに蛇腹状に折りたたむ折り目92を付けることにより、外周部59cが先端側カバー部材59の内側に折りたたまれるようになる。それにより、リンク作動装置本体1の動作時に、外周部59cが撓んで先端側のリンクハブ3に設置した部材と干渉することを防止できる。また、先端側のリンクハブ3が移動するときに外周部59cが伸びたり縮んだりして変形するため、屈曲抵抗が小さくなる。
【0065】
図14〜
図16は、前記各実施形態とはカバー被取付部材が異なる実施形態を示す。
図14に示すように、このリンク作動装置51は、リンク作動本体1を架台52に支持させる支持機構53が、架台52に直接に固定されたベース部材62のみからなり、このベース部材62の下面中央部にリンク作動装置本体1が吊り下げ状態で設置される。ベース部材62は、架台52の上面にボルト63で結合される。このリンク作動装置51の場合、前記ベース部材62が、基端側および先端側のカバー部材58,59が取り付けられるカバー被取付部材となっている。
【0066】
基端側カバー部材58は、
図1のものと同じ構成であり、円筒部58aの下端内周面をカバー被取付部材であるベース部材62の外周面に嵌合させて、ベース部材62に取り付けられる。先端側カバー部材59は、
図1、
図8のものと同じ構成であり、基端側の平面部59aに設けられた基端側取付部59abを、ベース部材62の下面に設けられた円環状の基端側固定部材90の外周に嵌合させることで、ベース部材62に先端側カバー部材59の基端が取り付けられる。また、先端側の平面部59bに設けられた先端側取付部59bbを、先端側のリンクハブ3の先端面に固定された円形の先端側固定部材91の外周に嵌合させることで、先端側のリンクハブ3に先端側カバー部材59の先端が取り付けられる。基端側取付部59abおよび先端側取付部材59bbは、例えば、基端側固定部材90および先端側固定部材91にそれぞれブーツバンド(図示せず)で固定される。
先端側カバー部材59として、
図9、
図10に示すものを用いても良く、また
図11、
図13のように、先端側カバー部材59を設置しても良い。
【0067】
上記のように、リンク作動装置本体1が設置されるベース部材62に基端側および先端側のカバー部材58,59を取り付けることが可能であるのは、前記各実施形態と違って、ベース部材62の先端側の面にアクチュエータ54等の駆動機構部の部材がほとんど設けられていないからである。これは、リンク作動装置本体1およびこのリンク作動装置本体1を駆動する駆動機構部の構成が、前記各実施形態のものと異なることによる。
【0068】
このリンク作動装置51のリンク作動装置本体1が前記各実施形態と異なる点は、
図15に示すように、リンクハブ2,3に対して軸部材101が回転自在に支持され、この軸部材101に端部リンク部材5,6が一体回転するように取り付けられていることである。他は、細部の構造や形状の違いを除けば、前記各実施形態と同じである。したがって、
図16(A),(B)のように、リンク作動装置本体1が各実施形態と同様に動作し、各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心PA,PB間の距離dは変化しない。
【0069】
図15に示すように、このリンク作動装置51の駆動機構部は、リンク機構4と同数のアクチュエータ54が、ベース部材62の上面に垂直に起立させた状態で設置されている。アクチュエータ54はロータリアクチュエータからなり、その出力軸(図示せず)がベース部材62を貫通して下方に突出している。出力軸の先端にかさ歯車102が取り付けられ、このかさ歯車102に、基端側のリンクハブ2の軸部材101に取り付けられた扇形のかさ歯車103が噛み合っている。アクチュエータ54を回転させると、その回転が一対のかさ歯車102,103を介して軸部材101に伝達されて、基端側のリンクハブ2に対する基端側の端部リンク部材5の角度が変わる。各アクチュエータ54は、制御装置67により制御される。
【0070】
図17は、リンク作動装置本体1を設置するベース部材62がカバー被取付部材である構成において、リンク作動装置本体1を上向きに設置した実施形態を示す。このリンク作動装置51は、架台52に複数の支柱61を設け、この支柱61でベース部材62を支持し、このベース部材62の上面中央部にリンク作動装置本体1を上向きに設置している。アクチュエータ54はベース部材62の下面に吊り下げ状態で設置される。この場合、ベース部材62の下側の空間の下方が架台52によって塞がれているため、基端側カバー部材58は、平面部は無く、円筒部58aのみからなる。また、先端側カバー部材59は、自重で変形するのを避けるため、外周部59cが撓みの少ない形状とされている。
【0071】
図17はベース部材62がカバー被取付部材である例を示すが、
図1に示すリンク作動装置51等のようにベース部材62とは別の部材、例えば円形部材60がカバー被取付部材である構成についても、リンク作動装置本体1を上向きに設置することができる。また、
図11、
図13のように先端側カバー部材59を設置した構成についても、リンク作動装置本体1を上向きに設置することができる。
【0072】
図18(A)のリンク作動装置51は、同図(B)に示すように、
図1の実施形態に対して、円形部材60と基端側固定部材90との間に、中央部に円形部材60の貫通孔60aよりも小径の貫通孔93aを有するシート状の干渉防止部材93を介在させてある。干渉防止部材93は、厚さ1〜5mm程度の弾性体からなる。他は、
図1の実施形態と同じである。
【0073】
このように干渉防止部材93が設けられていると、先端側カバー部材59の先端側の平面部59bや外周部59cが内側に変形した場合に、その変形が一定以上になると、先端側カバー部材59の変形部分が干渉防止部材93に接触する。これにより、先端側カバー部材59に損傷を与えることなく、先端側カバー部材59の変形を抑制される。このため、先端側カバー部材59とリンク作動装置本体1とが干渉することを防止できる。
【0074】
図19(A)のリンク作動装置51は、同図(B)に示すように、
図1の実施形態に対して、先端側固定部材91の外周部に弾性部材94が設けられている。このため、先端側カバー部材59の先端側取付部59bbが、弾性部材94を介して先端側固定部材91に取り付けられる。図示の例では設けられていないが、基端側固定部材90の外周部にも、弾性部材(図示せず)を設けてもよい。他は、
図1の実施形態と同じである。
【0075】
先に説明したように、先端側カバー部材59の先端側取付部59bbは、先端側固定部材91の外周に嵌合させ、その周囲からブーツバンド(図示せず)で締め付けることにより固定される。先端側固定部材91の外周部に弾性部材94が設けられていると、先端側固定部材91と先端側取付部59bbの密着性が増し、防塵性が向上する。また、弾性部材94を介することで、先端側固定部材91と先端側取付部59bbの嵌合隙間を大きく取ることができるため、組立性が向上する。基端側固定部材90の外周部に弾性部材(図示せず)を設けた場合も、同様の効果が得られる。