【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
<原料>
・タングステン粉末(99%)(和光純薬工業株式会社製)
・過酸化水素(33%、H
2O
2)(和光純薬工業株式会社製)
・塩酸(35.5%、HCl)(和光純薬工業株式会社製)
・ヘキサデシル−2−ピリジニルメチルアミン(PAL2−16)(D. Chandra, A. Bhaumik, Microporous Mesoporous Mater. 2008, 112, 533−541に従って合成)
・フッ素ドープ酸化錫(FTO)ガラス基板(旭硝子株式会社製)
その他の物質については、分析用の物質を用いた。全ての溶液は、Millipore waterで調製した。
【0054】
<構造のキャラクタリゼーション>
メソポーラス構造と結晶相を特定するための分析は、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL社製、JEOL2010、200kV)及び粉末X線回折(XRD、リガク社製、MiniFlexII、モノクロ化CuKα(λ=1.54Å))により行った。
粒子の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL社製、JSM−6500F)観察により決定した。
窒素吸着脱着等温線は、BELSORP−miniII(BEL社製)を用いて77Kで測定した。ガス吸着より前に、サンプルを150℃で4時間、真空中で脱ガスした。表面積の計算には、Brunauer−Emmett−Teller(BET)法を用いた。孔のサイズ分布は、Barrett−Joyner−Halenda(BJH)法を用いて、等温線の吸着の枝の分析により得た。
紫外−可視光拡散反射スペクトル(DRS)は、V−670 spectrophotometer(JASCO社製)を用いて測定した。
ラマンスペクトルは、Horiba−Jobin−Yvon LabRAM HR(HORIBA社製)を用いて測定した。
熱重量(TG)分析は、Rigaku TG 8120 analyzer(リガク社製)を用い、5℃/分間の昇温速度で25℃から800℃まで行った。
【0055】
<光電気化学的測定>
光電気化学的測定は、ポテンシオスタット(potentiostat、北斗電工株式会社製)と二室型電気化学セルを用いて、25℃で行った。パイレックスガラス製のセルを用い、二室はナフィオン膜で分離されている。3電極型システムは、1室内に作用電極及び参照電極として、それぞれFTO/WO
3及びAg/AgCl電極を用い、他の1室内に対電極としてPtワイヤーを用いた。リン酸緩衝液(PBS,pH=6)0.1Mを電気化学セルの両方の区画に電解液として用いた。電気化学セルは、電気化学測定の前に密封しArで飽和させた。
Co
2+イオンの光電気化学的特性の検討においては、Co(NO
3)
2・6H
2O凝集体0.1mMを作用電極の電解液中に保持した。
可視光(λ>420nm)の照射は、作用電極の背面から行った。光源として、UVカットフィルター(L42)と液体フィルター(Liquid Filter、0.2MCuSO
4)を備えた500Wキセノンランプ(Optical Module X、ウシオ電機株式会社製)を用いた。光強度のアウトプットは、スペクトロ放射メーター(USR−40、ウシオ電機株式会社製)を用いて100mW/cmで較正した。
サイクリックボルタモグラム(cyclic voltammogram、CV)は、0.2V−1.5Vの範囲で50mV/sのスキャン速度で記録した。
光子−対−電流 変換効率(incident photon conversion efficiencies、IPCEs)は、次式より計算した。
IPCE(%)=1241・Ip/(λ・φ)×100 (1)
ここで、Ipは、光電流を示し、λは、フォトンの波長を示し、φは、フォトンの強度を示す。単色照射は、モノクロメーター(M10、Jasco社製)とキセノンランプとを組み合わせて行った。
H
2ガスとO
2ガスの発生を検出するために、光電気触媒作用の前に、Arガスを1時間パージして残っている空気を取り除き、反応系を完全に脱ガスした。作用区画の電解質は5mLとし、ヘッドスペースの体積は87.3mLとした。光電気触媒作用は、0.5Vのバイアス電圧で行った。最初の3分間を暗条件で行い、その後1時間、可視光(λ>420nm)を照射した。定電圧の条件での電気分解の間、光電流を記録した。H
2とO
2の発生量は、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、TCD検出器と、モルキュラーシーブ5Aと、Arキャリアガスとを備えたGC−8A)を用いて、対電極と作用電極の区画のガス相(ヘッドスペース領域)の分析から決定した。
【0056】
(調製例)
メソポーラスWO
3は、タングステン前駆体としての過酸化タングステン酸(PA)と、PAL2−16のエタノール性の自己集合体とから調製した。
タングステン粉末1.46g(8mmmol)にH
2O
215mLをゆっくり加え、氷冷浴中で撹拌しながら注意深く溶解した。得られた透明の溶液をホットスターラー上で素早く蒸発させて過剰のH
2O
2を分解し、結晶性のPA[WO
2(O
2)H
2O]
nH
2Oを得た。熱水10mL中でPA粉末を再溶解し、70℃で約5mLまで体積を減らした後、PAL2−16(1.33g,4mmol)及びHCl(0.5mL)を含んだエタノール(30mL)に、撹拌及び超音波処理下で、得られた溶液を滴下した。PA溶液約2mLを加えた後、沈殿物が現れ始めた。超音波処理及び撹拌を更に1時間行った後、得られた混合物をシャーレに注ぎ、完全な凝集及びPAの分解によるアモルファスWO
3メソ複合体の生成のために、50℃で2日間で溶媒を蒸発させた。
【0057】
In situ界面活性剤熱的炭化法(in situ surfactant−thermal−carbonization method)を採用し、N
2フロー中で結晶化温度(450℃及び550℃,昇温速度1℃/分間)を2時間を維持し、PAL2−16の同時炭化を行った。O
2フロー下でさらにその温度で4時間焼成し、炭素を燃焼した。In situ界面活性剤熱的炭化法により調製したWO
3サンプル(表1におけるWO
3−meropore)は、メソポーラスWO
3を示した。
【0058】
また、PAL2−16を炭化しないサンプルを調製した。具体的には、結晶化温度(450℃及び550℃,1℃/分間)で空気中で直接焼成し、6時間その温度を維持し、粒子間(interparticle)WO
3(表1におけるWO
3−interparticle)を得た。
また、リファレンスのサンプルを、PAL2−16を加えない同一の合成手順で調製し、それをバルクWO
3(表1におけるWO
3−bulk)と名付けた。
【0059】
(物理化学特性)
異なる結晶化条件で調製したWO
3サンプルの物理化学特性を表1に示した。
【0060】
【表1】
a)d−間隔(d−spacing)は、小角XRDパターンの最大値から計算した。
b)WO
3/PAL2−16複合体は、N
2雰囲気下でのIn situ界面活性剤熱的炭化法、及び、続くO
2雰囲気下での焼成によって、結晶化した。
c)WO
3/PAL2−16複合体は、空気雰囲気下で直接結晶化した。
d)WO
3−バルク(bulk)サンプルは、PAL2−16を用いず調製し、In situ界面活性剤熱的炭化法と同様の条件で結晶化した。
【0061】
<TEM像、及びX線回折>
メソポーラス酸化タングステンサンプルのTEM像を示した。
図2Aは、アモルファスWO
3/PAL2−16複合体(表1中サンプルNo.1)のTEM像である。
図2Bは、450℃で焼成したWO
3−mesopore(表1中サンプルNo.2)のTEM写真である。
図2Cは、550℃で焼成したWO
3−mesopore(表1中サンプルNo.3)のTEM写真である。
【0062】
アモルファスWO
3/PAL2−16複合体のTEMは、約3nmでよく整列された2D六方晶系のメソ構造(空間群P6mm)を示した(
図2A)。細孔は、低電子密度点に配列した。
In situ界面活性剤熱的炭化法による450℃での結晶化は、短距離秩序をもった2D六方晶系のメソ構造の変形をもたらした(
図2B)。
550℃で結晶化している間、整列したメソ構造から無秩序な相への完全な変形が見られた(
図2C)。この変形は、ナノ結晶のサイズ増加のためと考えられる。
X線小角回折パターンもまた、2D六方晶系WO
3/PAL2−16メソ複合体の4つのよく分解された反射が、結晶化後に無秩序なメソ相のシングルピークへと変化していることを示した(
図3)。それはTEM観察と同様であった。
なお、
図3中、a)は、アモルファスWO
3/PAL2−16複合体のX線小角回折パターンである。b)は、450℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法による結晶化後のサンプルのX線小角回折パターンである。c)は、550℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法による結晶化後のサンプルのX線小角回折パターンである。d)は、空気雰囲気下450℃で直接結晶化後のサンプルのX線小角回折パターンである。e)は、450℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法と同条件で結晶化したバルクWO
3のX線小角回折パターンである。
【0063】
メソポーラスWO
3の代表的な高解像度のTEM(HRTEM)像は、薄い細孔壁が推定された4nm〜6nmのサイズのランダムに配向した小さな粒子から構成されていることを示した(
図4A)。同一のメソ構造の制限視野電子回折(Selected−area electron diffraction、SAED)パターンは、ナノ結晶の性質がある多結晶を示唆する、いくつかのよく分解された回折リングと多くの回折スポットを示した(
図4B)。
SAEDパターンから計算したd−間隔(d−spacing)は、相が純粋な単斜晶のWO
3(JCPDS:43−1305)とよく一致していた。
【0064】
X線広角回折パターンは、高温で単斜晶WO
3の結晶化度の増加を示唆している(
図5)。
なお、
図5中、a)は、アモルファスWO
3/PAL2−16複合体のX線広角回折パターンである。b)は、450℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法による結晶化後のサンプルのX線広角回折パターンである。c)は、550℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法による結晶化後のサンプルのX線広角回折パターンである。d)は、空気雰囲気下450℃で直接結晶化後のサンプルのX線広角回折パターンである。e)は、450℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法と同条件で結晶化したバルクWO
3のX線広角回折パターンである。
【0065】
高い結晶化温度(550℃)でのメソ構造の保持は、In situ界面活性剤熱的炭化法に起因する。なぜなら、450℃、空気中での直接結晶化後のWO
3/PAL2−16のTEM像(
図6A及び
図6B)は、小さなメソ孔の完全な崩壊と、固定された結晶WO
3粒子間の大きな粒子間メソ孔のみの存在を示しているためである(X線小角回折ピークではまったく検出されなかった)。
【0066】
<表面積、及び細孔分布>
In situ界面活性剤熱的炭化法により調製したWO
3サンプルのN
2吸着等温線(
図7Aにおける「a)」及び「b)」)は、均一な細孔の構造を持ったメソポーラス物質の特徴的なタイプIVを示した(相対圧力、最大P/P
0=0.75まで)。メソ孔に対するN
2の吸収量は、毛管凝縮ステップを通じて明らかにし、P/P
0=約0.2から始めた。P/P
0>0.75にある、もう一つの鋭いN
2の吸収量は、2番目の粒子間の孔を示した。H2型ヒステリシスループは、細孔及び粒子表面の粗さに関係していると考えられる。Barrett−Joyner−Halenda(BJH)法により測定した細孔サイズの分布は、テンプレートに起因する小さいメソ孔と、粒子間メソ孔との2峰の多孔性を示した(表1)。
なお、
図7A及び
図7Bにおいて、a)は、450℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法により調製したWO
3サンプルを示す。b)は、550℃でのIn situ界面活性剤熱的炭化法により調製したWO
3サンプルを示す。c)は、空気中450℃で結晶化した粒子間WO
3サンプルを示す。d)は、450℃で、前記a)と同条件で結晶化したバルクWO
3サンプルを示す。
【0067】
図8A〜
図8DのSEM像は、粒子間メソ孔がWO
3粒子間の隙間の空間から生じることを示唆している。WO
3の小さなメソ孔システムのBET比表面積は、450℃で焼成した場合には197m
2g
−1であり、550℃で焼成した場合には158m
2g
−1であり、非常に高いものであった。450℃、空気中でのアモルファスWO
3/PAL2−16の直接結晶化(
図7A及び
図7Bにおける「c)」)は、粒子間メソ孔のみ(約25nm)を示し、少ないN
2吸収量(最大P/P0=0.75まで)を示していて、その結果BET比表面積が劇的に減少し(31m
2g
−1)した。バルクWO
3サンプル(
図7A及び
図7Bにおける「d)」)は、とても小さいBET比表面積(9m
2g
−1)を示し、大きな粒子間細孔(約50nm)を示した。結晶WO
3の大きな密度(7.16gcm
−3)を考慮すると、本発明者らの小さなメソ孔WO
3のBET比表面積は、配列したメソポーラスシリカと比較でき、すでに報告されている他のどんなメソポーラスWO
3よりも少なくとも2倍以上高く、本発明者らの知る限りでは最大である。
【0068】
N
2下、550℃で結晶化した代表的なメソポーラスWO
3のラマンスペクトルは、O
2下での焼成後に完全に消失する1365cm
−1と1590cm
−1のアモルファス炭素の2つのブロードな帯を示した(
図9)。
なお、
図9中、a)は、アモルファス前駆体サンプルを示す。b)は、N
2雰囲気下550℃、2時間炭化後のサンプルを示す。c)は、N
2雰囲気下550℃、2時間炭化後、更にO
2雰囲気下4時間焼成したサンプルを示す。
【0069】
アモルファスWO
3/PAL2−16複合体を用いて行ったTG分析は、550℃でN
2及び空気下でそれぞれ、約16%と約32%の重量ロスを示した(
図10)。これらの結果は、N
2下での高温下での結晶化の間、細孔の内側に大量の炭素が含まれていることを示している。
なお、
図10中、a)は、N
2雰囲気下、b)は、空気雰囲気下、5℃/分間の昇温速度でアモルファスWO
3/PAL2−16複合体を測定した結果である。
【0070】
さらに、炭素除去前、N
2雰囲気下550℃で2時間結晶化されたメソポーラスWO
3のN
2吸着等温線(
図11A及び
図11B)は、最終的なメソポーラスWO
3に比べて、かなり低いBET比表面積(64m
2g
−1)及び小さな細孔サイズ(2.2nm)を示している。それは、炭素質種が、管状の層を形成するメソポーラスチャネルのまわりに存在することを示している(
図1の中央図)。内側の炭素質層は、メソポーラス構造の保護支柱として作用し、骨格の結晶化の間の引張応力のオフセットによる望んでないWO
3の結晶成長を妨げる。最も高い結晶性のWO
3骨格が形成されると、メソ構造は、熱的に安定で、O
2下で炭素支柱を燃やした後もよく保持される。
なお、
図11Aにおいて、●は吸着を示し、○は脱離を示す。
【0071】
(光電気触媒作用)
550℃で結晶化した様々なWO
3光アノードを用いた光電気触媒作用(0.1mMリン酸緩衝液中)を表2にまとめた。
【0072】
【表2】
a)O
2生成のファラデー効率
b)H
2は、Pt対電極区画で発生した。
c)H
2生成のファラデー効率
【0073】
<電極の作製>
WO
3電極は、ドクターブレードコーティング法を用いて調製した。
コーティング前に、すべての基材をUVオゾン処理(卓上型光表面処理装置 PL16−110(セン特殊光源株式会社製)を使用)により15分間洗浄した。
WO
3粉末(結晶化前)200mg、ポリエチレングリコール(PEG、Mw=2,000、バインダー)100mg、及びマーポローズ(merpolose、増粘剤)20mgの混合物に、水600μLを加えた。30分間撹拌した後、得られた混合物を1時間超音波処理した後、すべての泡が消え、なめらかなペーストができるまで、6時間〜10時間撹拌した。得られたペーストをドクターブレードコーターでFTO基材上に押し広げ、80℃で15分間乾燥した。2回手順を繰り返した後、電極を表1及び表2に示す結晶化条件で焼成した。コーティングした面積は0.8cm×1.25cmであった。得られたフィルムの厚みは約7μmであった(
図8C及び
図8D)。
【0074】
メソポーラスWO
3電極のサイクリックボルタモグラム(cyclic voltammogram、CV)(
図12)において、可視光の照射(λ>420nm)は、2.8と4.7のファクターによる1.5V vs. Ag/AgClで、粒子間WO
3電極及びバルクWO
3電極を用いた場合と比較して、より高い2.8mAcm
−2のアノード光電流を誘発した。
なお、
図12において、a)は、メソポーラスWO
3を示す。b)は、粒子間WO
3を示す。c)は、バルクWO
3を示す。明条件を実線で示し、暗条件を破線で示す。
【0075】
図13は、異なるFTO/WO
3電極を用いた0.5V vs. Ag/AgClでのIPCEのアクションスペクトルを示す。光電流は、用いたすべての電極に対し480nm以下で発生し、2.59eV(478nm)のバンドエネルギーギャップに一致した。それは、メソポーラスWO
3フィルムのバンドギャップの拡散反射スペクトルから推定した(
図13)。このことは、光電流がWO
3フィルムのバンドギャップ励起に基づき起こることを示している。550℃の結晶化温度では、メソポーラスWO
3の420nmのIPCE(35%)(
図13中の「a)」)は、粒子間WO
3のそれ(13%)(
図13中の「c)」)よりも約3倍高く、バルクWO
3のそれ(5%)(
図13中の「d)」)よりも約7倍高い。450℃で結晶化されたメソポーラスWO
3は、N
2吸着分析から観察される最も高い表面積(197m
2g
−1)とは対照的に、420nmで低いIPCE(21%)(
図13中の「b)」)を示している。その結果は、550℃でのメソポーラスWO
3中での高い結晶性の重要性を示している。
なお、
図13中、a)は、550℃で結晶化したメソポーラスWO
3を示す。b)は、450℃で結晶化したメソポーラスWO
3を示す。c)は、550℃で結晶化した粒子間WO
3を示す。d)は、550℃で結晶化したバルクWO
3を示す。黒い実線は、550℃で結晶化したメソポーラスWO
3の紫外−可視光拡散反射スペクトルを示す。
【0076】
異なるFTO/WO
3電極における光電気触媒作用は、0.5V vs. Ag/AgCl、1時間、定電位条件下、0.1Mリン酸緩衝液(pH=6.0)中で行った。メソポーラスWO
3の光電流密度−時間特性(
図14A中の「b)」)は、1分間で光電流0.66mAcm
−2を与え、1時間後0.50mAcm
−2まで減少した(24%減少)。1分間での比較的低い初期光電流が、粒子間WO
3(0.42mAcm
−1)(
図14A中の「c)」)及びバルクWO
3(0.19mAcm
−1)(
図14Aの「d)」)で観察され、CVのデータと一致していた。さらに、光電流は、1時間照射後、粒子間WO
3(78%)とバルクWO
3(70%)ではかなり早く減少した。メソポーラスWO
3に1時間通した電荷量(2.05C)は、粒子間WO
3のそれ(0.58C)よりも3.5倍高く、バルクWO
3のそれ(0.31C)よりも6.6倍高かった(表2)。高い電気量の結果、メソポーラスWO
3は、粒子間WO
3(0.93μmol)(
図14B中の「c)」)、バルクWO
3(0.35μmol)(
図14B中の「d)」)のO
2の量より明らかに多い量(4.21μmol)(
図14B中の「b)」)のO
2を放出した。メソポーラスWO
3のO
2放出のファラデー効果(FE
O2)(79%)も、粒子間WO
3(61%)及びバルクWO
3(44%)におけるものよりもずっと高かった。
なお、
図14A及び
図14B中、a)及びb)は、550℃で結晶化したメソポーラスWO
3電極を示す。c)は、550℃で結晶化した粒子間WO
3電極を示す。d)は、550℃で焼成したバルクWO
3を示す。a)の測定においては、電解質溶液にCo
2+が存在している。b)、c)、及びd)の測定においては、電解質溶液にCo
2+が存在していない。
【0077】
小さなメソ孔構造(550℃)でのWO
3光アノードの高い光電気化学(PEC)水酸化特性は、高表面積(159m
2g
−1)及びナノサイズの結晶性細孔壁(約4nm〜約6nm)に起因している。これは、N
2吸着とHRTEMの結果より証明される。電解質溶液とWO
3表面との間にある接触面での大量の水の酸化サイトは、高表面積により提供され、ナノサイズ細孔壁における短いキャリア拡散の長さは、再結合より先に水の酸化に関与する光生成正孔の確率を上げる。メソポーラスWO
3のより高い光安定性とFE
O2とは、光電気触媒作用の間、WO
3表面の不活性化をほとんど生じさせない。水酸化のゆっくりとした反応速度は、表面の正孔の蓄積をもたらし、不活性な過酸化タングステン化合物の形成をもたらす。しかし、メソポーラスWO
3の高い表面対体積の比は、表面での蓄積された正孔の濃度を効果的に減少させ、望ましくない過酸化化合物の形成を抑圧する。この提案される機構は、電解質緩衝液中のCo
2+イオンの付加により、メソポーラスWO
3の光安定性と触媒活性の改善によって、支持される(
図14Aの「a)」)(最近の研究では、電解質溶液中のCo
2+イオンがヘマタイト(赤鉱石)光アノードでの水の酸化に対する光電気触媒作用を強めることを示している。)。0.1mM Co
2+イオンの存在下で、0.80mAcm
−1(1分間)の高い初期光電流が観察され、光電流の95%は、1時間の光電気触媒作用後も維持されている。光電気触媒作用の間、O
2放出量(5.84μmol, FE
O2 81%, 2.79C)(
図14Bの「a)」)は、メソポーラスWO
3システム中にCo
2+イオンを加えない場合(
図14Bの「b)」)より、1.4倍高かった。このことは、電解質溶液中のCo
2+イオン(過酸化物の化合物の形成を抑制するCo
2+イオン)によってWO
3表面での水の酸化反応が促進されていることに起因している。
【0078】
(まとめ)
以上のことをまとめると、酸化半導体の小さなメソ孔における第1の高い温度(550℃)の結晶化は、かなり高い表面積及びWO
3光アノード中の短い固相キャリア拡散経路を達成することを実証した。高い結晶性を持つメソポーラスWO
3は、In situ界面活性剤熱的炭化法の1段階のプロセスを用いることにより得られ、得られたWO
3光アノード電極は、可視光による水の光電気化学的酸化特性を劇的に改善させた。本発明者らの製造手法のエッセンスは、その簡易性を含み、高い太陽エネルギー変換特性のような、他の多様なアプリケーションに対し、他に得られていない結晶性の小さなメソ孔構造物の発展に広く応用されることが期待される。
【0079】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 過酸化タングステン酸と、ヘキサデシル−2−ピリジニルメチルアミンと、酸と、有機溶媒とを混合し、メソポーラス酸化タングステン前駆体を調製する前駆体調製工程と、
前記メソポーラス酸化タングステン前駆体を焼成する焼成工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするメソポーラス酸化タングステンの製造方法である。
<2> 焼成工程における焼成温度が、400℃〜600℃である前記<1>に記載のメソポーラス酸化タングステンの製造方法である。
<3> 焼成工程が、ヘキサデシル−2−ピリジニルメチルアミンを炭化する炭化処理と、前記炭化処理で得られた炭化物を燃焼させる燃焼処理とを含む前記<1>から<2>のいずれかに記載のメソポーラス酸化タングステンの製造方法である。
<4> 炭化処理が、N
2雰囲気下で行われ、燃焼処理が、O
2雰囲気下で行われる前記<3>に記載のメソポーラス酸化タングステンの製造方法である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載のメソポーラス酸化タングステンの製造方法により製造されることを特徴とするメソポーラス酸化タングステンである。
<6> 前記<5>に記載のメソポーラス酸化タングステンを含有し、水の酸化を触媒することを特徴とする光触媒である。
<7> 導電性基体上に、前記<5>に記載のメソポーラス酸化タングステンを含有するメソポーラス酸化タングステン層を有することを特徴とするメソポーラス酸化タングステン電極である。