特許第6162029号(P6162029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162029
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】比重測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 9/18 20060101AFI20170703BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G01N9/18 B
   H01M10/48 102
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242127(P2013-242127)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-102388(P2015-102388A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 篤
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 道夫
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−176440(JP,U)
【文献】 特開2006−185833(JP,A)
【文献】 実開平07−032860(JP,U)
【文献】 特開2005−025954(JP,A)
【文献】 米国特許第4680965(US,A)
【文献】 特開平04−369436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 9/12 − 9/18
H01M 10/48
G01F 23/64
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の電解液が取り込まれる管と、当該管内に配置され、前記電解液の比重により前記電解液中で浮き沈みする浮き子とを備えた比重測定装置において、
前記管内の前記電解液の液面を検出する反射型センサと、前記浮き子の高さ位置を検出する透過型センサとを備え、検出された前記液面と前記浮き子の前記高さ位置との差を前記電解液の比重に換算することを特徴とする比重測定装置。
【請求項2】
前記反射型センサ及び前記透過型センサは、同一のフレーム体に一体に支持されており、単一の駆動部によって前記管の軸方向に走査されて検出を行うことを特徴とする請求項1記載の比重測定装置。
【請求項3】
前記浮き子は、前記電解液の比重を測定可能に浮力が調整された浮き子本体と、当該浮き子本体の上端から上方に延びる目盛りを備えた表示部とを備え、前記透過型センサは、前記比重の換算に際し、前記浮き子本体の下端の位置を検出することを特徴とする請求項1または2記載の比重測定装置。
【請求項4】
前記蓄電池の前記電解液を前記管内に吸引するとともに、前記比重の検出後に前記電解液を前記蓄電池に排出するポンプ部を備え、当該ポンプ部は、排出時には吸引時よりもポンピング回数が大きく設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の比重測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛蓄電池の電解液の比重を浮き子を用いて測定する比重測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、電解液に浮いた浮き子の目盛りと、電解液の液面との位置関係を作業者が目視で読み取ることで、比重を測定している。
また、比重測定装置において、管内の電解液に浮いた浮き子の下端の位置を、センサで検出し、この検出の有無により、電解液の比重の良否を判別するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−25954号公報
【特許文献2】特開2006−185833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の比重測定装置では、人間が浮き子の目盛りを目視で読み取るため、長時間の作業により読み取り精度に誤差が生じ易いという課題がある。また、比重を測定する方法は種々の方法があるが、浮き子を使用する方法は精度が高い方法であり、好ましい。浮き子の目盛りを読み取る方法としては、画像処理等の手法を採用することも可能であるが、構造や制御が複雑になってしまうという課題がある。また、上記特許文献2の比重測定装置では、電解液の比重の正確な値をセンサに基づいて測定することはできないとともに、良否の判別を正しく行うためには、管内の電解液の量を厳密に管理する必要があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、蓄電池の電解液の比重測定装置において、簡単な構造で電解液の比重を正確に測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、蓄電池の電解液が取り込まれる管と、当該管内に配置され、前記電解液の比重により前記電解液中で浮き沈みする浮き子とを備えた比重測定装置において、前記管内の前記電解液の液面を検出する反射型センサと、前記浮き子の高さ位置を検出する透過型センサとを備え、検出された前記液面と前記浮き子の前記高さ位置との差を前記電解液の比重に換算することを特徴とする。
本発明によれば、透過型センサ及び光学式の反射型センサによって検出された液面と浮き子の高さ位置との差から電解液の比重を換算でき、簡単な構造で電解液の比重を測定できる。
【0006】
また、上記構成において、前記反射型センサ及び前記透過型センサは、同一のフレーム体に一体に支持されており、単一の駆動部によって前記管の軸方向に走査されて検出を行うことを特徴とする。
本発明によれば、反射型センサ及び透過型センサの支持構造、駆動構造及び検出構造を簡単な構成で実現できる。
【0007】
また、上記構成において、前記浮き子は、前記電解液の比重を測定可能に浮力が調整された浮き子本体と、当該浮き子本体の上端から上方に延びる目盛りを備えた表示部とを備え、前記透過型センサは、前記比重の換算に際し、前記浮き子本体の下端の位置を検出することを特徴とする。
本発明によれば、目盛りを比重の換算の較正に用いることができるとともに、目盛りが邪魔にならない下端を透過型センサで検出して比重を正確に算出できる。
【0008】
さらに、上記構成において、前記蓄電池の前記電解液を前記管内に吸引するとともに、前記比重の検出後に前記電解液を前記蓄電池に排出するポンプ部を備え、当該ポンプ部は、排出時には吸引時よりもポンピング回数が大きく設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、比重の検出に使用した電解液を蓄電池に確実に戻すことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る比重測定装置では、簡単な構造で電解液の比重を正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る比重測定装置に鉛蓄電池をセットした状態を示す概略図である。
図2】比重検出部を示す図である。
図3】反射型センサが液面を検出する状態の比重検出部を示す図である。
図4】透過型センサが下端を検出する状態の比重検出部を示す図である。
図5】比重測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る比重測定装置に鉛蓄電池をセットした状態を示す概略図である。
比重測定装置10は、鉛蓄電池5の電解液の比重を検出する比重検出部12と、鉛蓄電池5から電解液を比重検出部12に取り込むポンプ部13と、比重検出部12及びポンプ部13を制御する制御部14とを備える。
【0012】
鉛蓄電池5は、正極板と負極板とセパレータとを積層した極板群(不図示)と、この極板群が収納される電槽5aと、電槽5aに満たされる希硫酸からなる電解液と、電槽を塞ぐ蓋5bと、端子5cとを備える。正極板は、例えば、鉛合金格子基板に過酸化鉛の活物質が充填されたものであり、負極板は、例えば、鉛合金格子基板に海綿状金属鉛の活物質が充填されたものである。
鉛蓄電池5は、上記極板群を電槽5aに収納した後、電槽5aに希硫酸を注液して充放電を繰り返すことで電槽化成され、充電状態となる。電槽化成工程では、極板の硫酸成分が電解液中に溶け出して電解液の比重が増加するため、電槽化成前の電解液は、電槽化成工程の完了後に所定の比重が得られるように比重が低く調整されている。
【0013】
図2は、比重検出部12を示す図である。
図1及び図2に示すように、比重検出部12は、鉛蓄電池5から吸引された電解液が貯留される管15と、管15内で電解液に浮いて上下に移動自在に配置される浮き子16と、浮き子16及び電解液の液面の位置を検出する位置検出機構17とを備える。また、比重検出部12は、管15の下端から引き出されて鉛蓄電池5内の電解液中に挿入される吸引管18と、管15の上端から引き出されてポンプ部13に接続されるポンプ接続管19と、電解液の温度を計測する温度センサ20bとを備える。なお、温度センサ20bは、後述する接続部20aに取り付けてある。
管15は、アクリル等の樹脂やガラス等の耐酸性を有し且つ透明な材料により構成された断面円形の管であり、上下方向に真っ直ぐに延びて配置される。管15の下端は、下蓋20によって塞がれており、吸引管18の一端は、下蓋20に設けられた接続部20aに接続されて管15の内部に連通する。管15の上端は、上蓋21によって塞がれており、ポンプ接続管19の一端は、上蓋21に設けられた接続部21aに接続されて管15の内部に連通する。
【0014】
浮き子16は、電解液の比重を測定可能に浮力が調整された浮き子本体22と、浮き子本体22の上端から上方に延びて電解液の液面Lと一致する位置により電解液の比重を表示する目盛りを備えた棒状の比重表示部23とを備える。浮き子16は、電解液の比重が大きいほど、より上方に浮き上がる。このため、比重表示部23に付されている目盛りの値は、下端側ほど大きく、上端側ほど小さい。
浮き子本体22は、管15の内径よりも小径に形成されるとともに上下方向に長い円柱状に形成されている。浮き子本体22の上端部22a及び下端部22bは、電解液中で姿勢が安定し易いように半球状に形成されている。
【0015】
位置検出機構17は、液面Lを検出する光学式の反射型センサ25と、浮き子本体22の下端22cを検出する光学式の透過型センサ26と、反射型センサ25及び透過型センサ26を一体に支持するフレーム体27とを備える。また、位置検出機構17は、フレーム体27を上下方向に移動するように駆動する駆動部28を備える。
駆動部28は、モーター等の動力源を備える駆動部本体(不図示)と、駆動部本体の動力によってフレーム体27を管15に沿って上下方向にスライド移動させる単一のスライド部(不図示)と、機械的変位量をデジタル量に変換するエンコーダー部(不図示)とを備える。このエンコーダー部は、ロータリーエンコーダーであり、上記モーターの回転角度から上記スライド部上でのフレーム体27の位置を検出し、この位置をデジタル量に変換して制御部14に出力する。また、上記エンコーダー部は、例えば、リニアエンコーダーであっても良く、リニアエンコーダーで上記スライド部上でのフレーム体27の位置を検出し、この位置をデジタル量に変換して制御部14に出力する構成としても良い。
また、上記スライド部は、例えば、一軸のNCスライダにより構成することができる。
【0016】
図3は、反射型センサ25が液面Lを検出する状態の比重検出部12を示す図である。
反射型センサ25は、管15の外周面に対向して配置される発光素子及び受光素子を一体に備えた光センサである。
上記発光素子は、管15の軸線に略直交する位置関係で管15に向かって発光し、上記受光素子は、管15側から反射した発光素子の反射光を受光し、この受光量に応じた検出値を出力する。反射型センサ25は、フレーム体27のスライド移動に伴って管15の軸方向にスライドし、管15を外周面側から走査する。
【0017】
管15において、管15内に電解液が満たされていない位置と、液面Lの位置とでは、光の反射率が異なる。このため、反射型センサ25は、走査した際、電解液が満たされていない位置と液面Lの位置とでは、異なる検出値を出力する。この異なる検出値の差に基づき、制御部14は、液面Lの位置を判別できる。
詳細には、図3に示すように、反射型センサ25が液面Lを検出した場合、駆動部28の上記エンコーダー部は、液面Lが検出された位置に対応するフレーム体27の位置を、液面Lの位置として制御部14に出力する。
本実施の形態では、反射型センサ25で液面Lを検出する場合、反射型センサ25に近い位置の管15の内周面側からの反射光により液面Lを判別でき、管15の径方向に光が透過しなくとも液面Lを判別できる。このため、電解液の透明度が低い場合や管15が汚れている場合であっても、液面Lを正しく検出できる。
【0018】
図4は、透過型センサ26が下端22cを検出する状態の比重検出部12を示す図である。
透過型センサ26は、管15の外周面に対向して配置される発光部26aと、管15を跨いで発光部26aに対向して配置される受光部26bとを備えた光センサである。発光部26a及び受光部26bは、フレーム体27に一体に支持されており、上下方向において略同一の高さに位置している。また、透過型センサ26は、反射型センサ25の下方に位置している。
発光部26aは、管15の軸線に略直交する位置関係で管15に向かって発光し、受光部26bは、管15を透過した発光部26aの透過光を受光し、この受光量に応じた検出値を出力する。透過型センサ26は、フレーム体27のスライド移動に伴って管15の軸方向にスライドし、管15を外周面側から走査する。
【0019】
管15において、管15内に電解液のみが存在する位置と、管15内の浮き子16によって発光部26aの発光が遮断される位置とでは、発光部26aの発光の透過率が異なり、受光部26bの受光量が異なる。このため、透過型センサ26は、走査した際、電解液のみが存在する位置と浮き子16が存在する位置とでは、異なる検出値を出力する。この異なる検出値の差に基づき、制御部14は、浮き子16の下端22cの位置を判別できる。
詳細には、図4に示すように、透過型センサ26が下端22cを検出した場合、駆動部28(図1参照)の上記エンコーダー部は、下端22cが検出された位置に対応するフレーム体27の位置を、下端22cの位置として制御部14に出力する。
【0020】
図1に示すように、ポンプ部13は、ポンプ接続管19の他端が接続されるチャンバー30と、チャンバー30内の空気を排出可能であるとともに、チャンバー30内の空気を圧縮可能であるポンプ31とを備える。
チャンバー30には、チャンバー30の内部空間の外部に対する連通及び遮断を切り替える切替弁32が設けられている。切替弁32は、制御部14によって切り替えられる。
ポンプ31は、筒状のシリンダ31aと、制御部14の制御によってシリンダ31a内を軸方向に移動するピストン31bとを備える。また、ポンプ部13には、必要に応じて逆止弁(不図示)が設けられる。
【0021】
切替弁32を閉じた状態でピストン31bが図1中のシリンダ31aの上端(一端)から下端(他端)に移動すると、チャンバー30内の空気が吸い出され、チャンバー30内が負圧になる。ピストン31bを上端に戻す際には、切替弁32が開かれる。ピストン31bが上端から下端に移動して再び上端に戻る工程が、電解液を管15内に吸引する吸引工程の1工程である。吸引工程が行われることで、管15内が負圧となり、電解液が鉛蓄電池5から管15内に吸引される。
【0022】
切替弁32を閉じた状態でピストン31bが図1中のシリンダ31aの下端から上端に移動すると、チャンバー30内の空気が圧縮され、チャンバー30内の圧力が高まる。ピストン31bを上端に戻す際には、切替弁32が開かれる。ピストン31bが下端から上端に移動して再び下端に戻る工程が、管15内の電解液を鉛蓄電池5に戻す排出工程の1工程である。吸引工程が行われることで、管15内の圧力が高くなり、電解液が管15内から鉛蓄電池5内に排出される。
【0023】
制御部14は、CPUから成る演算処理部14aと、ROMおよびRAM等から成る記憶部14bと、算出した電解液の比重等の情報を表示する表示部14cとを有する。制御部14は、記憶部14b内の制御情報に基づいて、位置検出機構17及びポンプ部13を制御するとともに、電解液の比重を算出する。ここで、比重は水を基準とした比重である。
【0024】
図5は、比重測定装置10の動作を示すフローチャートである。
比重測定装置10は、電槽化成工程の完了後の鉛蓄電池5の比重を測定する。
制御部14は、電解液の比重の測定の指示が出されると、ポンプ部13を駆動し、吸引工程を行う(ステップS1)。吸引工程は、複数回行われ、本実施の形態では、2回行われる。この吸引工程により、管15内は、図2に示すように管15に電解液が無い状態から、図3に示すように管15の上部まで電解液が満たされた状態となる。これにより、浮き子16は電解液に浮き、比重表示部23は、液面Lに一致した位置に示された目盛りにより、電解液の比重を指し示す。また、制御部14は、吸引工程において、上昇して行く液面Lを反射型センサ25で検出するとともに駆動部28を制御し、反射型センサ25を液面Lの移動に追従させる。このように、反射型センサ25を液面Lの移動に追従させるため、迅速に液面Lの位置を検出できる。
【0025】
次いで、制御部14は、液面L及び浮き子16の位置が安定した後に、図3に示すように、反射型センサ25で液面Lの高さ位置を検出し、この液面Lの高さ位置を検出した状態のフレーム体27の高さ位置を、液面Lの高さ位置P1として上記エンコーダー部を介して検出する(ステップS2)。ここで、液面L及び浮き子16の位置の安定を判断する方法は、例えば、吸引工程の終了から所定時間経過した場合に安定と見なす方法や、反射型センサ25で液面Lの動きを検出する方法が挙げられる。
続いて、制御部14は、図4に示すように、フレーム体27を下方に下降させて行き、透過型センサ26で浮き子16の下端22cの高さ位置を検出し、この下端22cの高さ位置を検出した状態のフレーム体27の高さ位置を、下端22cの高さ位置P2として上記エンコーダー部を介して検出する(ステップS3)。
【0026】
そして、制御部14は、液面Lの高さ位置P1及び下端22cの高さ位置P2との差を、所定の計算式により、電解液の比重に換算する(ステップS4)。詳細には、制御部14は、液面Lの高さ位置P1及び下端22cの高さ位置P2との差から、液面Lが比重表示部23の目盛りに一致した位置、すなわち、比重表示部23の目盛りが示す比重の値を算出する。記憶部14bには、上記所定の計算式に加えて、例えば、比重表示部23の単位目盛り当たりの比重値、比重表示部23の単位目盛りの長さ、及び、浮き子本体22の全長等のうち少なくともいずれかの情報が格納されており、制御部14はこれらの情報に基づいて比重を算出する。
事前の基準となる測定において、液面Lの高さ位置がA、下端22cの高さ位置がBの場合に、比重表示部23を用いた目視による比重の値がCであり、比重表示部23の単位目盛りの長さをD、比重表示部23の単位目盛り当たりの比重値をEとした場合、比重は、下記式(1)により換算される。
比重=C+(((B−A)−(P2−P1))/D)×E…(1)
上記式(1)は一例であり、例えば、浮き子本体22の全長を用いた他の算出方法によって比重を算出しても良い。
また、制御部14は、上記温度センサから得た電解液の温度を取得し、温度による電解液の比重変化を、最終的な比重の換算値に反映させる。
【0027】
次に、制御部14は、算出した比重の値に基づいて、補充することで鉛蓄電池5の電解液を所定の比重値(例えば、1.280)にすることができる補充液量を算出する(ステップS5)。詳細には、算出した比重が所定の比重値よりも大きい場合には、補充液としての精製水の液量を算出する。また、算出した比重が所定の比重値よりも小さい場合には、補充液としての希硫酸の液量を算出する。ここで、補充液量は、記憶部14bに格納されている鉛蓄電池5の電解液の容量や上記所定の比重値等から算出される。
次に、制御部14は、算出した比重、補充液の種類及び補充液量を、表示部14cに表示する(ステップS6)。
【0028】
その後、制御部14は、ポンプ部13を駆動し、排出工程を行うとともに、フレーム体27を下方の初期位置に戻す(ステップS7)。排出工程は、複数回行われ、本実施の形態では、吸引工程よりも多く、3回行われる。この排出工程により、管15内の電解液は、鉛蓄電池5に戻される。本実施の形態では、吸引工程よりも排出工程の回数が多く設定されており、ポンピング回数は、排出工程の方が吸引工程よりも大きい。このため、鉛蓄電池5に確実に電解液を戻すことができ、鉛蓄電池5の液量を適正に維持できる。また、管15に残留した電解液が次の電解液の測定に影響することを防止でき、比重を正確に測定できる。
排出工程の完了後、作業者は、表示部14cの表示に基づいて、補充液を鉛蓄電池5に注液する。また、ステップS6で算出した補充液を自動で鉛蓄電池5に注液する構成としても良い。
【0029】
また、ステップS1に先立って、目視による比重表示部23の目盛を用いた測定を行うことで、比重表示部23の目盛りと制御部14が算出する比重の値とを較正することができる。詳細には、目視で測定される比重の値と、制御部14が算出して表示部14cに表示する比重の値とが一致するように、記憶部14bに入力する比重表示部23の単位目盛りの長さを補正する。これにより、目盛りに起因する誤差を較正でき、比重を正確に測定できる。
【0030】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、管15内の電解液の液面Lを検出する反射型センサ25と、浮き子16の高さ位置を検出する透過型センサ26とを備え、検出された液面Lと浮き子16の高さ位置との差を電解液の比重に換算する。このため、透過型センサ26及び反射型センサ25によって検出された液面Lと浮き子16の高さ位置との差から電解液の比重を換算でき、簡単な構造で電解液の比重を測定できる。センサによって比重を測定できるため、人間による目盛りの読み取り誤差等が発生することが無く、正確に電解液の比重を測定できる。また、液面Lと浮き子16の高さ位置との差から電解液の比重を換算できるため、浮き子16が完全に浮くことが可能であれば、電解液の液量は比重の測定に影響しない。このため、管15内の電解液の液量を厳密に管理する必要が無く、比重を簡単な構成で正確に測定できる。
【0031】
また、反射型センサ25及び透過型センサ26は、同一のフレーム体27に一体に支持されており、単一の駆動部28によって管15の軸方向に走査されて検出を行う。このため、反射型センサ25及び透過型センサ26の支持構造、駆動構造及び検出構造を簡単な構成で実現できる。
また、浮き子16は、電解液の比重を測定可能に浮力が調整された浮き子本体22と、浮き子本体22の上端から上方に延びる目盛りを備えた比重表示部23とを備え、透過型センサ26は、比重の換算に際し、浮き子本体22の下端22cの位置を検出する。このため、比重表示部23の目盛りを比重の換算の較正に用いることができるとともに、目盛りが邪魔にならない下端22cを透過型センサ26で検出して比重を正確に算出できる。
【0032】
さらに、鉛蓄電池5の電解液を管15内に吸引するとともに、比重の検出後に電解液を鉛蓄電池5に排出するポンプ部13を備え、ポンプ部13は、排出時には吸引時よりもポンピング回数が大きく設定されている。このため、比重の検出に使用した電解液を鉛蓄電池5に確実に戻すことができる。
【0033】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、電槽5aに電解液が満たされる鉛蓄電池5を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ゲル式の鉛蓄電池に本発明を適用することもでき、この場合、シリカゲル等に含浸させる前の電解液の比重を、比重測定装置10で測定できる。
また、上記実施の形態では、透過型センサ26は、比重の換算に際し、浮き子本体22の下端22cの位置を検出するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、透過型センサ26の光が通過可能な孔を浮き子本体22に形成し、この孔の高さ位置を透過型センサ26で検出し、この高さ位置に基づいて比重の値を算出しても良い。また、浮き子16の高さ位置と電解液の比重との対応が事前の測定等により明らかにされており、上記の較正等も必要としない場合、比重表示部23を設けなくとも良い。この場合、下端22cに替えて、浮き子本体22の上端を透過型センサ26で検出し、この上端の高さ位置及び液面Lの高さ位置から比重を算出しても良い。
【符号の説明】
【0034】
5 鉛蓄電池(蓄電池)
10 比重測定装置
13 ポンプ部
15 管
16 浮き子
22 浮き子本体
22c 下端
23 比重表示部(表示部)
25 反射型センサ
26 透過型センサ
27 フレーム体
28 駆動部
L 液面
図1
図2
図3
図4
図5