特許第6162077号(P6162077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162077
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 7/06 20060101AFI20170703BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20170703BHJP
   F27B 9/04 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F27D7/06 C
   G05B11/36 J
   F27B9/04
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-120313(P2014-120313)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-1064(P2016-1064A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 知昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝彦
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255056(JP,A)
【文献】 特開平04−254527(JP,A)
【文献】 特開平05−141870(JP,A)
【文献】 特開2012−021186(JP,A)
【文献】 特開平03−101296(JP,A)
【文献】 特開平05−231641(JP,A)
【文献】 特開2000−148253(JP,A)
【文献】 特開昭58−217191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 7/00−15/02
F27B 9/00− 9/40
G05B 11/00−13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の熱処理を行う処理空間を内部に有する炉体と、
前記処理空間の酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記処理空間へ流す水素の流量を上限流量から下限流量までの流量範囲内で調整可能であり、入力した操作流量となるように前記水素の流量を調整する流量調整手段と、
前記酸素センサが検出した酸素濃度と、該酸素濃度の目標値とに基づいて、フィードバック制御により操作量上限値から操作量下限値までの操作量範囲内で前記流量調整手段の制御に関する操作量を決定する操作量決定手段と、
前記操作量範囲の上限から下限までを、前記流量範囲から上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした範囲である制限範囲の上限から下限まで対応させたときの、前記決定された操作量に対応する前記制限範囲内の値である操作流量を、下記式(1)の関係に基づいて導出し、該導出した操作流量を前記流量調整手段に出力する導出手段と、
MV2=(b−a)/(B−A)×(MV1−A)+a (1)
(ただし、MV1は前記操作量,MV2は前記操作流量,Aは前記操作量下限値,Bは前記操作量上限値,aは前記制限範囲の下限値,bは前記制限範囲の上限値)
を備えた熱処理炉。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理炉であって、
前記酸素センサを複数備え、
前記操作量決定手段は、前記複数の酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度と、前記目標値と、に基づいて前記操作量を決定する、
熱処理炉。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理炉であって、
前記複数の酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された酸素濃度と前記複数の酸素センサが検出した現在の酸素濃度とに基づいて、前記複数の酸素センサの故障の有無を判定する故障判定手段と、
を備えた熱処理炉。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理炉であって、
前記故障判定手段は、判定タイミング毎に前記故障の有無を判定し、該判定タイミングで故障がないと判定した場合には該判定に用いた前記現在の酸素濃度を前記記憶手段に記憶し、前記判定タイミングでは、前記故障がないと判定された直近の判定タイミングで記憶された前記酸素濃度と前記複数の酸素センサが検出した現在の酸素濃度とに基づいて前記故障の有無を判定する、
熱処理炉。
【請求項5】
前記操作量決定手段は、前記故障判定手段により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、前記複数の酸素センサのうち該故障はないと判定された酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度と、前記目標値と、に基づいて前記操作量を決定し、
前記導出手段は、前記故障判定手段により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、前記制限範囲に代えて、前記制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした故障時制限範囲を用いて前記操作流量を導出する、
請求項3又は4に記載の熱処理炉。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱処理炉であって、
前記導出手段により導出された前記操作流量前記流量調整手段入力されるか、該導出された前記操作流量に代えて所定の操作流量前記流量調整手段入力されるか、の切替を行う切替手段、
を備えた熱処理炉。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱処理炉であって、
前記流量調整手段よりも下流且つ前記処理空間よりも上流に設けられ、前記処理空間に複数箇所から水素が流入するように途中で分岐した流路を形成する分岐流路形成部、
を備えた熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調整された炉内雰囲気中で被処理物の熱処理を行う熱処理炉が知られている。例えば、特許文献1では、炉内に水素を送入することで、水素と炉内の酸素とを反応させて酸素濃度を低減させることが記載されている。そして、分析計で検出した炉内の酸素濃度と酸素濃度目標値との偏差に応じた調節信号を、水素を炉内に送入する流量調整弁に出力することで、酸素濃度を目標値以下にフィードバック制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−255056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フィードバック制御により定まる調節信号などの操作量を流量調整弁等の制御に用いる場合に、水素の流量が多すぎたり少なすぎたりするなどの極端な制御がなされる場合があった。その結果、炉内の酸素濃度が十分低くならなかったり、水素濃度が高くなりすぎてしまったりするなど、炉内の雰囲気が極端な状態になる場合があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方をより抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した主目的を達成するために以下の手段を採った。
すなわち、本発明の熱処理炉は、
対象物の熱処理を行う処理空間を内部に有する炉体と、
前記処理空間の酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記処理空間へ流す水素の流量を上限流量から下限流量までの流量範囲内で調整可能であり、入力した操作流量となるように前記水素の流量を調整する流量調整手段と、
前記酸素センサが検出した酸素濃度と、該酸素濃度の目標値とに基づいて、フィードバック制御により操作量上限値から操作量下限値までの操作量範囲内で前記流量調整手段の制御に関する操作量を決定する操作量決定手段と、
前記操作量範囲の上限から下限までを、前記流量範囲から上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした範囲である制限範囲の上限から下限までに対応させたときの、前記決定された操作量に対応する前記制限範囲内の値である操作流量を、下記式(1)の関係に基づいて導出し、該導出した操作流量を前記流量調整手段に出力する導出手段と、
MV2=(b−a)/(B−A)×(MV1−A)+a (1)
(ただし、MV1は前記操作量,MV2は前記操作流量,Aは前記操作量下限値,Bは前記操作量上限値,aは前記制限範囲の下限値,bは前記制限範囲の上限値)
を備えたものである。
【0007】
明細書において参考的に開示する参考発明の熱処理炉は、
対象物の熱処理を行う処理空間を内部に有する炉体と、
前記処理空間の酸素濃度を検出する酸素センサと、
前記処理空間へ流す水素の流量を上限流量から下限流量までの流量範囲内で調整可能であり、入力した操作流量となるように前記水素の流量を調整する流量調整手段と、
前記酸素センサが検出した酸素濃度と、該酸素濃度の目標値とに基づいて、フィードバック制御により操作量上限値から操作量下限値までの操作量範囲内で操作量を決定する操作量決定手段と、
前記流量範囲から上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした範囲である制限範囲に前記操作量範囲を換算したときの、前記決定された操作量の前記換算後の値である操作流量を導出し、該導出した操作流量を前記流量調整手段に出力する換算手段と、
を備えたものである。
【0008】
この参考発明の熱処理炉では、酸素センサが検出した処理空間の酸素濃度と、酸素濃度の目標値とに基づいて、フィードバック制御により操作量上限値から操作量下限値までの操作量範囲内で操作量を決定する。次に、流量調整手段が水素の流量を調整可能な流量範囲から上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした範囲である制限範囲に操作量範囲を換算したときの、決定された操作量の換算後の値である操作流量を導出する。そして、導出した操作流量を流量調整手段に出力する。このため、流量調整手段が処理空間へ流す水素の流量は、流量範囲よりも上限側と下限側との少なくとも一方が狭い制限範囲内の流量となる。したがって、制限範囲が流量範囲の上限側を狭くした範囲であれば、水素の流量が過剰になることをより抑制して、処理空間の水素濃度が高くなりすぎることをより抑制できる。また、制限範囲が流量範囲の下限側を狭くした範囲であれば、水素の流量が不足することをより抑制して、処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることをより抑制できる。このように、処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方をより抑制できる。この場合において、制限範囲は、流量範囲から上限側と下限側との両方を狭くした範囲としてもよい。
【0009】
本発明の熱処理炉は、前記酸素センサを複数備え、前記操作量決定手段は、前記複数の酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度と、前記目標値と、に基づいて前記操作量を決定してもよい。この場合において、前記操作量決定手段は、前記複数の酸素センサのうち信頼性のより高い酸素センサが検出した酸素濃度に基づいて前記操作量を決定してもよい。また、前記複数の酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された酸素濃度と前記複数の酸素センサが検出した現在の酸素濃度とに基づいて、前記複数の酸素センサのうち信頼性の最も高い酸素センサを判定する信頼性判定手段と、を備え、前記操作量決定手段は、前記複数の酸素センサのうち信頼性が最も高いと判定された酸素センサが検出した酸素濃度と、前記目標値と、に基づいて前記操作量を決定してもよい。
【0010】
酸素センサを複数備える態様の本発明の熱処理炉において、前記複数の酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された酸素濃度と前記複数の酸素センサが検出した現在の酸素濃度とに基づいて、前記複数の酸素センサの故障の有無を判定する故障判定手段と、を備えていてもよい。こうすれば、複数の酸素センサを備える場合に、酸素センサが検出した過去の酸素濃度と現在の酸素濃度とに基づいて、酸素センサの故障の有無を判定することができる。この場合において、前記故障判定手段は、複数の酸素センサのうち、前記記憶手段に記憶された酸素濃度と検出された現在の酸素濃度との差が所定の閾値を超えている酸素センサについて、故障していると判定してもよい。
【0011】
故障判定手段を備える態様の本発明の熱処理炉において、前記故障判定手段は、判定タイミング毎に前記故障の有無を判定し、該判定タイミングで故障がないと判定した場合には該判定に用いた前記現在の酸素濃度を前記記憶手段に記憶し、前記判定タイミングでは、前記故障がないと判定された直近の判定タイミングで記憶された前記酸素濃度と前記複数の酸素センサが検出した現在の酸素濃度とに基づいて前記故障の有無を判定してもよい。こうすれば、故障がないと判定したときの酸素濃度を記憶しておいて後の故障の判定に用いるため、故障の判定精度が向上する。例えば、判定タイミングとは別のタイミングで記憶した酸素濃度と現在の酸素濃度とに基づいて故障を判定すると、記憶しておいた酸素濃度自体が既に故障した酸素センサが検出した値であり正しく判定が行えない場合があるが、そのようなことをより抑制できる。この場合において、前記故障判定手段は、前記判定タイミングで故障があると判定した場合には該判定に用いた前記現在の酸素濃度を前記記憶手段に記憶しないものとしてもよい。
【0012】
故障判定手段を備える態様の本発明の熱処理炉において、前記操作量決定手段は、前記故障判定手段により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、前記複数の酸素センサのうち該故障はないと判定された酸素センサのうち1以上が検出した酸素濃度と、前記目標値と、に基づいて前記操作量を決定し、前記導出手段は、前記故障判定手段により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、前記制限範囲に代えて、前記制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした故障時制限範囲を用いて前記操作流量を導出してもよい。こうすれば、故障と判定された酸素センサがある場合に、故障のない他の酸素センサを用いて、フィードバック制御に基づく水素の流量の調整を継続できる。しかも、制限範囲に代えて制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした故障時制限範囲を用いて操作流量を導出する。そのため、故障と判定された酸素センサがある場合に、制限範囲をそのまま用いる場合と比較して、処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方をより抑制できる。
【0013】
本発明の熱処理炉は、前記導出手段により導出された前記操作流量を前記流量調整手段が入力するか、該導出された前記操作流量に代えて所定の操作流量を前記流量調整手段が入力するか、の切替を行う切替手段を備えていてもよい。ここで、「所定の操作流量」は、例えば固定の操作流量であり、予め酸素濃度が目標値付近に保たれるように定められた固定の値としてもよい。また、「所定の操作流量」は、ユーザーが設定(変更)可能な値としてもよい。前記切替手段は、ユーザーからの切替指示を入力した場合に前記切替を行ってもよい。また、前記切替手段は、切替を行うか否かを判定して、切替を行うと判定した場合に前記切替を行ってもよい。例えば、全ての酸素センサ(1つしか酸素センサを備えない場合には、その1つの酸素センサ)が故障と判定された場合に、前記所定の操作流量を前記流量調整手段が入力するように前記切替を行ってもよい。こうすれば、故障した酸素センサが検出した酸素濃度を用いたフィードバック制御に基づいて水素の流量を調整してしまうことをより抑制できる。これにより、全ての酸素センサが故障したときに処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方の状態になることをより抑制することができる。
【0014】
本発明の熱処理炉は、前記流量調整手段よりも下流且つ前記処理空間よりも上流に設けられ、前記処理空間に複数箇所から水素が流入するように途中で分岐した流路を形成する分岐流路形成部、を備えていてもよい。こうすれば、流路が分岐せず1箇所から処理空間に水素を流入させる場合と比べて、処理空間内で水素濃度のムラが生じにくい。そのため、処理空間の一部の酸素濃度が高くなりすぎたり処理空間の一部の水素濃度が高くなりすぎたりすることをより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】熱処理炉10の縦断面図。
図2図1のA−A断面図。
図3】故障判定ルーチンの一例を示すフローチャート。
図4】酸素濃度出力ルーチンの一例を示すフローチャート。
図5】水素主制御ルーチンの一例を示すフローチャート。
図6】水素副制御ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態である熱処理炉10の縦断面図である。図2は、図1のA−A断面図である。熱処理炉10は、炉体11の処理空間11a内で複数の被処理物96を載置したセッター95を搬送しながら被処理物96に対する熱処理を行うローラーハースキルンとして構成されている。熱処理炉10は、炉体11と、炉体11内に配置された複数のヒーター20及び複数の搬送ローラー25と、炉体11に取り付けられた複数(本実施形態では2つ)の第1,第2酸素センサ28,29と、炉体11に排気管19を介して接続された排気弁27と、炉体11に給気管18を介して接続されたガス供給部30と、を備えている。また、熱処理炉10は、制御装置40と、水素主制御装置50と、水素副制御装置60と、操作パネル74と、を備えている。
【0017】
炉体11は、略直方体に形成された断熱構造体であり、内部で被処理物96の熱処理を行う処理空間11aと、炉体の前端面12(図1の左端面)及び後端面13(図1の右端面)にそれぞれ形成され外部から処理空間11aへの出入口となる開口14,15を有している。この炉体11は、前端面12から後端面13までの長さが例えば2〜15mである。炉体11の前端付近の天井部分には、排気弁27と接続され処理空間11aの雰囲気を排気可能な排気管19が形成されている。また、炉体11の後端付近の底部には、ガス供給部30と接続され処理空間11aにガスを供給可能な給気管18が形成されている。給気管18は、ガス供給部30よりも下流且つ処理空間11aよりも上流に設けられ、図2に示すように処理空間11aに複数箇所(本実施形態では4箇所)からガスが流入するように途中で分岐した流路を形成している。なお、開口14,15は気密構造の図示しない置換室内に開口していてもよい。
【0018】
ヒーター20は、長手方向が搬送方向に直交する左右方向(図2の左右方向)に沿うように処理空間11a内に配置されており、搬送方向に沿って複数配置されている。なお、搬送方向は、前方から後方に向かう方向であり、図1の左から右に向かう方向である。また、ヒーター20は、複数の搬送ローラー25を上下から挟むように、炉体11の天井付近と底部付近とに計2列が配置されている。ヒーター20は、処理空間11a内を通過する被処理物96を上下から加熱するものであり、例えばSiCヒーターなどのセラミックスヒーターとして構成されている。なお、ヒーター20に限らず、ガスバーナーなど、被処理物96の熱処理を行うことができる加熱装置であればよい。
【0019】
搬送ローラー25は、長手方向が搬送方向に直交する左右方向に沿うように処理空間11a内に配置されており、搬送方向に沿って開口14から開口15に亘って複数配置されている。この搬送ローラー25が回転することによって、複数の被処理物96が載置されたセッター95は、開口14から処理空間11a内を通過して開口15まで搬送される。なお、搬送ローラー25は、図2に示すように、搬送方向と直交する左右方向(図2の左右方向)に炉体11を貫通している。炉体11を貫通した搬送ローラー25の両端は、炉体11の左右にそれぞれ取り付けられた略直方体のカバー22内に位置している。カバー22は、搬送ローラー25の両端が熱処理炉10の外部空間に露出しないように搬送ローラー25の端部を覆っている。また、カバー22内には、搬送ローラー25を下側から支持する支持ローラー24が配置されている。支持ローラー24は、例えば搬送ローラー25の下側且つ搬送ローラー25の中心軸から前後(図2の紙面手前及び奥)にずらした位置に2つのローラーを並べたものであり、この複数のローラーによって搬送ローラー25を回転可能に支持している。また、複数の搬送ローラー25は、図示しないモーターに接続されており、このモーターからの駆動力によって回転する。
【0020】
第1,第2酸素センサ28,29は、処理空間11aの酸素濃度を検出するセンサである。この第1,第2酸素センサ28,29は、いずれも炉体11の前後方向の略中央に取り付けられており、左右方向に並べて配置されている。また、第1,第2酸素センサ28,29の検出部(図1,2の下端)はセッター95の搬送を妨げず且つ被処理物96が搬送される高さ付近に配置されている。特に限定するものではないが、例えば搬送される被処理物96の上方20mm〜30mmに第1,第2酸素センサ28,29の検出部が位置するように配置されている。これにより、第1,第2酸素センサ28,29は処理空間11aのうち被処理物96周辺の酸素濃度を検出できるようになっている。第1,第2酸素センサ28,29は、それぞれ処理空間11aの酸素濃度に応じた信号(例えば0〜1000mVの電圧)を発生させ、検出した酸素濃度としてこの信号を制御装置40に出力する。
【0021】
排気弁27は、弁の開度を調整することにより、処理空間11aから排気管19を介して流れる雰囲気ガスの流量を調整する装置である。なお、本実施形態では、処理空間11a内の圧力によって排気弁27から雰囲気ガスが流出するものとしたが、排気弁27の下流に処理空間11a内の雰囲気を吸引する排気ファンを備えていてもよい。
【0022】
ガス供給部30は、処理空間11a内にガスを供給して処理空間11a内の雰囲気を調整する装置であり、水素供給源31と、窒素供給源32と、水供給源33と、マスフローコントローラー(MFC)34〜37と、気化器38とを備えている。水素供給源31は、MFC34に水素ガスを供給する装置である。水素供給源31から供給された水素ガスは、MFC34によりMFC34を通過する流量(質量流量)が調整された上で、気化器38に送られる。窒素供給源32は、MFC35,36に窒素ガスを供給する装置である。窒素供給源32から供給された窒素ガスは、MFC35,36によりそれぞれMFC35,36を通過する流量(質量流量)が調整された上で、気化器38に送られる。なお、MFC34を通過した水素と、MFC35を通過した窒素とは、予め配管内で混合された上で、気化器38内に送られるようになっている。水供給源33は、MFC37に水を供給する装置である。水供給源33から供給された水は、MFC37によりMFC37を通過する流量(質量流量)が調整された上で、気化器38に送られる。なお、MFC37を通過した水は、MFC36を通過した窒素に押し出されて気化器38の入り口で霧状の状態とされて、気化器38内に送られるようになっている。MFC34〜37は、自身を通過する流体の質量流量の測定と質量流量の調整との両方が可能である。また、MFC34〜37は、それぞれ所定の上限流量から下限流量までの流量範囲内で、自身を通過する流体の質量流量の調整が可能である。気化器38は、図示しないヒーターを備えており、このヒーター(例えば500℃など)によりMFC37側から流入した霧状の水を加熱して気化する装置である。また、上述したように気化器38にはMFC34からの水素、MFC35,36からの窒素も送られる。そのため、水素,窒素及び気化した水がこの気化器38内で混合されて混合ガスとなり、この混合ガスが給気管18を介して処理空間11a内部に流入する。こうすることで、水素,窒素,水を別々に処理空間11aに供給する場合と比べて、処理空間11aでのこれらの各濃度が部分的に高くなることを抑制している。
【0023】
制御装置40,水素主制御装置50,水素副制御装置60は、いずれも図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、起動プログラムなどを記憶したROMと、処理プログラムや各種データを記憶可能なフラッシュメモリーと、一時的にデータを記憶するRAMと、を備えている。制御装置40は、熱処理炉10全体の制御を司る装置である。制御装置40は、機能ブロックとして、熱処理炉10全体の制御を行う制御部41と、記憶部46と、を備えている。また、制御部41は、故障判定部42と、酸素濃度出力部44と、を備えている。制御部41は、水素副制御装置60と各種制御信号やデータのやりとりを行ったり、第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度(信号)を入力したりする。また、制御部41は、ヒーター20,搬送ローラー25の図示しないモーター,及びMFC35〜MFC37に制御信号を出力して、ヒーター20の温度,搬送ローラー25の回転速度,及びMFC35〜MFC37を通過する流体の質量流量を制御する。また、制御部41は、MFC34〜37が測定した流体の質量流量を入力する。故障判定部42は、第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度に基づいて第1,第2酸素センサ28,29の故障の有無を判定する機能を有する。酸素濃度出力部44は、第1,第2酸素センサ28,29のうち信頼性の最も高い酸素センサを判定して、判定した酸素センサが検出した酸素濃度を水素主制御装置50に出力する機能を有する。記憶部46は、第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度を記憶する機能を有する。
【0024】
水素主制御装置50及び水素副制御装置60は、MFC34を制御してMFC34を通過する水素の質量流量を調整する装置である。水素主制御装置50は、機能ブロックとして、操作量決定部52と、導出部54と、記憶部56とを備えている。操作量決定部52は、制御装置40から入力した処理空間11a内の酸素濃度と酸素濃度の目標値Ctとに基づいて、フィードバック制御によりMFC34の制御に関する操作量MV1を決定する機能を有する。導出部54は、操作量MV1に基づいて操作流量MV2を導出し、導出した操作流量MV2を水素副制御装置60を介してMFC34に出力する機能を有する。記憶部56は、操作量決定部52や導出部54が用いる各種パラメーターを記憶する機能を有する。水素副制御装置60は、機能ブロックとして、切替部62と、記憶部64とを備えている。切替部62は、水素主制御装置50から入力した操作流量MV2と記憶部64に記憶された流量設定値MV3(所定の操作流量)とのいずれをMFC34に出力するかの切替を行う機能を有する。記憶部64は、流量設定値MV3などの各種パラメーターを記憶する機能を有する。
【0025】
操作パネル74は、表示部と、表示部を含んで構成された操作部とを備えている。表示部は、タッチパネル式の液晶ディスプレイとして構成されており、メニューや項目を選択する選択/設定ボタン、各種数値を入力するための数字ボタン、熱処理を開始するスタートボタンなどを表示してタッチ操作を受け付け、タッチ操作に基づく操作信号を制御装置40に送信する。また、制御装置40からの表示指令を受信すると、表示指令に基づく画像や文字,数値などを表示部に表示する。
【0026】
被処理物96は、炉体11内を通過する際にヒーター20からの熱により例えば焼成などの熱処理が行われるものである。特に限定するものではないが、本実施形態では、被処理物96は、セラミックス製の誘電体と電極とを積層した積層体(寸法は例えば縦横が1mm以内)であり、焼成後にMLCC(積層セラミックスコンデンサ)のチップとなるものとした。
【0027】
次に、こうして構成された熱処理炉10を用いて被処理物96の熱処理を行う様子について説明する。まず、ユーザーが操作パネル74を介して処理開始指示などを入力すると、制御装置40は、図示しないモーターを動作させて複数の搬送ローラー25を回転駆動させると共に、ヒーター20に通電してヒーター20を発熱させる。搬送ローラー25の回転速度は、本実施形態では熱処理に要する時間に基づいて予め定められているものとした。ヒーター20の出力は、処理空間11a内での被処理物96の熱処理時の温度(例えば1000℃前後など)に基づいて予め定められているものとした。続いて、複数の被処理物96を載置したセッター95を複数用意し、開口14側の端部の搬送ローラー25の上に順次載置していく。セッター95は、搬送方向と垂直な方向(図2の左右方向)に複数列載置してもよい。搬送ローラー25に載置されたセッター95は、複数の搬送ローラー25の回転により炉体11内に搬入されて搬送方向に順次搬送されていく。そして、セッター95は、処理空間11aを通過して開口15側から搬出される。このように、熱処理炉10では、搬送ローラー25を回転駆動させることで処理空間11a内で被処理物96を順次搬送しながら、ヒーター20により熱処理を行う。
【0028】
そして、被処理物96を搬送している間、すなわち熱処理を行っている間は、ガス供給部30から上記混合ガス(水素,窒素,水)を供給し、処理空間11aの雰囲気を所定の状態に保つようにする。特に限定するものではないが、例えば、露点が+30℃〜+60℃、酸素濃度が1ppm、の不活性ガス(本実施形態では窒素)雰囲気に保つようにする。本実施形態では、ガス供給部30から処理空間11aに供給する窒素ガス及び水の量は、予め設定されているものとした。そのため、制御装置40はMFC35〜MFC37に所定の操作流量(固定値)を出力し、操作流量を入力したMFC35〜37は自身を通過する流体の質量流量がこの操作流量になるように調整を行うものとした。MFC35〜37の操作流量は、予め上記の雰囲気を保つことができるように例えば実験により定められており、記憶部46などに記憶されているものとした。一方、ガス供給部30から処理空間11aに供給する水素の量は、通常は、処理空間11a内の酸素濃度が目標値Ct(本実施形態では1ppm)となるように、第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度に基づくフィードバック制御を行って調整される。これについては後述する。また、排気弁27からは処理空間11aの雰囲気が排気される。排気弁27の開度は、処理空間11aの圧力が所望の状態に保たれるように、予め定められているものとした。
【0029】
以下、水素の流量を調整する際の熱処理炉10の動作について説明する。まず、制御装置40の動作について説明する。図3は、制御装置40の故障判定部42が実行する故障判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。図4は、酸素濃度出力部44が実行する酸素濃度出力ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0030】
まず、図3の故障判定ルーチンについて説明する。このルーチンは、例えば制御装置40の記憶部46に記憶され、ユーザーが操作パネル74を介して処理開始指示を入力したことを示す操作信号を操作パネル74から制御装置40が入力すると、故障判定部42により所定の判定タイミング毎(例えば数秒毎)に繰り返し実行される。
【0031】
この故障判定ルーチンが開始されると、故障判定部42は、まず、第1酸素センサ28が検出した現在の処理空間11aの酸素濃度である第1現在濃度Cn1を取得する(ステップS100)。そして、第1現在濃度Cn1と第1基準濃度Cs1との差の絶対値である差ΔCs1を導出し、導出した値が閾値Cref11以下であるか否かを判定する(ステップS110)。ここで、第1基準濃度Cs1は、第1酸素センサ28が故障しているか否かを判定する基準となる値である。本実施形態では、熱処理炉10が今回の熱処理を開始してから最初に第1酸素センサ28の酸素濃度が目標値Ct以下になったときの第1酸素センサ28が検出した酸素濃度の値を第1基準濃度Cs1として記憶部46に記憶しておくものとした。なお、目標値Ct付近に到達したとみなせる所定範囲内の値に最初に到達したときの第1酸素センサ28の酸素濃度の値を第1基準濃度Cs1としてもよい。また、閾値Cref11は、第1基準濃度Cs1からのずれが大きく、第1酸素センサ28が故障しているとみなせる所定の閾値である。この閾値Cref11は、例えば後述するフィードバック制御を行っている場合に通常生じうる酸素濃度の変化幅よりも大きい値として、実験により定められている。差ΔCs1が閾値Cref11を超えていれば第1酸素センサ28は故障であると判定する(ステップS120)。一方、差ΔCs1が閾値Cref11以下であれば、次のステップS130に進む。なお、ステップS110で、第1酸素センサ28の酸素濃度が目標値Ct以下に一度もなっておらず第1基準濃度Cs1がまだ記憶部46に記憶されていないときにも、次のステップS130に進む。
【0032】
続くステップS130では、故障判定部42は、第1現在濃度Cn1と第1過去濃度Cp1との差の絶対値である差ΔCp1を導出し、導出した値が閾値Cref12以下であるか否かを判定する(ステップS130)。ここで、第1過去濃度Cp1は、後述するステップS150で記憶部46に記憶した値であり、故障がないと判定された直近の判定タイミングで記憶された第1酸素センサ28の酸素濃度である。また、閾値Cref12は、第1過去濃度Cp1からのずれが大きく、第1酸素センサ28が故障しているとみなせる所定の閾値である。そして、差ΔCp1が閾値Cref12を超えていれば第1酸素センサ28は故障であると判定し(ステップS120)、差ΔCp1が閾値Cref12以下であれば、第1酸素センサ28は正常であると判定する(ステップS140)。なお、第1過去濃度Cp1がまだ記憶部46に記憶されていないとき(例えば今回の熱処理を開始してから最初に故障判定ルーチンを行うとき)にも、ステップS140に進んで第1酸素センサ28は正常と判定する。また、ステップS110とステップS130とでは異なる閾値Cref11,Cref12を用いるものとしたが、同じ閾値を用いてもよい。
【0033】
そして、ステップS140で正常であると判定すると、故障判定部42は、今回のステップS100で取得した第1現在濃度Cn1の値を第1過去濃度Cp1として記憶部46に記憶する(ステップS150)。これにより、次回のステップS130では、今回記憶した第1過去濃度Cp1が用いられる。このように、ステップS110,S130を行って故障ではないと判定したときの第1現在濃度Cn1を第1過去濃度Cp1として記憶しておき、次回以降のステップS130での故障の判定に用いるのである。
【0034】
ステップS150又はステップS120の後、故障判定部42は、第2酸素センサ29についてもステップS100〜S150と同様の処理を行って、故障の有無を判定する(ステップS200〜250)。すなわち、第2現在濃度Cn2を取得し(ステップS200)、第2現在濃度Cn2と第2基準濃度Cs2との差の絶対値である差ΔCs2と閾値Cref21との比較(ステップS210)や、第2現在濃度Cn2と第2過去濃度Cp2との差の絶対値である差ΔCp2と閾値Cref22との比較(ステップS230)を行って、第2酸素センサ29が故障である(ステップS220)か又は正常である(ステップS240)かを判定する。そして、ステップS240で正常であると判定すると、故障判定部42は、今回のステップS200で取得した第2現在濃度Cn2の値を第2過去濃度Cp2として記憶部46に記憶する(ステップS250)。なお、閾値Cref21は閾値Cref11と同じ値としてもよい。閾値Cref22は閾値Cref12と同じ値としてもよい。また、第1酸素センサ28と第2酸素センサ29との個体差やセンサの種類の違いなどに応じて、閾値Cref21と閾値Cref11とを異なる値としたり、閾値Cref22と閾値Cref12とを異なる値としたりしてもよい。
【0035】
そして、ステップS250又はステップS220の後、故障判定部42は、第1,第2酸素センサ28,29の故障有無の判定結果を水素主制御装置50に出力して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。なお、故障判定部42が第1,第2酸素センサ28,29の少なくともいずれかに故障がある旨の判定をした場合には、制御部41は、表示指令を出力し、操作パネル74にその旨を表示させたり、警報を出力させたりして、ユーザーに酸素センサの故障を報知する。
【0036】
次に、図4の酸素濃度出力ルーチンについて説明する。このルーチンは、例えば制御装置40の記憶部46に記憶され、故障判定ルーチンが終了する毎に酸素濃度出力部44により実行される。この酸素濃度出力ルーチンが開始されると、酸素濃度出力部44は、まず、故障判定ルーチンで第1,第2酸素センサ28,29のいずれかが故障と判定されたか否かを調べる(ステップS300)。そして、いずれかが故障と判定されていたときには、第1,第2酸素センサ28,29のうち故障と判定されていない正常な酸素センサの現在の酸素濃度を水素主制御装置50に出力して(ステップS310)、本ルーチンを終了する。例えば、第1酸素センサ28が故障して第2酸素センサ29が正常であるときには、直前の故障判定ルーチンで取得された第2現在濃度Cn2を水素主制御装置50に出力する。これにより、第1,第2酸素センサ28,29のうち故障していない方、すなわち信頼性の高い方の酸素センサが検出した現在の酸素濃度を水素主制御装置50に出力するのである。
【0037】
一方、ステップS30で第1,第2酸素センサ28,29のいずれも故障と判定されていたとき、あるいはいずれも正常と判定されていたときには、差ΔCp1が差ΔCp2以下であるか否かを判定する(ステップS320)。そして、差ΔCp1が差ΔCp2以下であるときには、直前の故障判定ルーチンで取得された第1現在濃度Cn1を水素主制御装置50に出力して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。一方、差ΔCp1が差ΔCp2超過であるときには、直前の故障判定ルーチンで取得された第2現在濃度Cn2を水素主制御装置50に出力して(ステップS340)、本ルーチンを終了する。すなわち、ステップS320〜S340では、第1,第2酸素センサ28,29のうち、差ΔCp1と差ΔCp2とを比較して、値の小さい方(=酸素濃度の変動の少ない方)の酸素センサの方が信頼性が高いとみなして、信頼性の高い方の酸素センサが検出した現在の酸素濃度を水素主制御装置50に出力するのである。

【0038】
以上のように故障判定ルーチン及び酸素濃度出力ルーチンを行うことで、第1,第2酸素センサ28,29の故障の有無や、第1酸素センサ28,29のうちいずれかが検出した現在の処理空間11aの酸素濃度が水素主制御装置50に出力される。続いて、水素主制御装置50が行う処理について説明する。図5は、水素主制御装置50が行う水素主制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、例えば水素主制御装置50の記憶部56に記憶され、上述した故障判定ルーチン及び酸素濃度出力ルーチンの結果を水素主制御装置50が入力すると操作量決定部52及び導出部54により実行される。
【0039】
この水素主制御ルーチンが開始されると、操作量決定部52は、まず、処理空間11aの現在の酸素濃度を取得する(ステップS400)。これは、図4の酸素濃度出力ルーチンのステップS310,S330,S340のいずれかで制御装置40から出力された値を取得することで行う。続いて、ステップS400で取得した現在の酸素濃度と処理空間11aの酸素濃度の目標値Ctとに基づいて、フィードバック制御により操作量MV1を決定する(ステップS410)。目標値Ctは、予め定められて記憶部56に記憶されているものであり、本実施形態では上述したように1ppmである。なお、フィードバック制御に用いるパラメーターも、記憶部56に予め記憶されているものとした。ステップS410のフィードバック制御は、例えば目標値CtとステップS400で取得した現在の酸素濃度との差分がゼロになるようにPID制御により操作量MV1を決定する。操作量MV1は、MFC34を通過する水素の質量流量に関する値であり、操作量下限値0%〜操作量上限値100%の範囲(操作範囲)で決定される。なお、ステップS410では、PID制御に限らずPI制御など他のフィードバック制御を採用してもよい。
【0040】
次に、導出部54は、第1,第2酸素センサ28,29の少なくともいずれかに故障があるか否かを調べる(ステップS420)。これは、図3の故障判定ルーチンのステップS260で制御装置40から出力された判定結果を取得することで行う。そして、第1,第2酸素センサ28,29のいずれにも故障がない場合には、導出部54は、MFC34の流量範囲から上限側と下限側とを狭くした範囲である制限範囲に操作量範囲を換算したときの、操作量MV1の換算後の値として、操作流量MV2を導出する(ステップS430)。換言すると、ステップS430では、導出部54は、操作量範囲の上限から下限までを、制限範囲の上限から下限までに対応させたときの、操作量MV1に対応する制限範囲内の値として、操作流量MV2を導出する。ここで、操作量の下限値を値A,上限値を値B,制限範囲の下限値を値a,上限値を値bとしたときに、MV2は以下の式(1)により導出するものとした。なお、式(1)及び値A,B,a,bは、例えば記憶部56に記憶されているものとした。
【0041】
MV2=(b−a)/(B−A)×MV1−A)+a (1)
【0042】
本実施形態では、MFC34の流量範囲は、下限流量0cc/min〜上限流量1000cc/minの範囲であるものとした。そして、本実施形態では、制限範囲は、100cc/min〜300cc/minの範囲であるものとした。すなわち、制限範囲は、操作流量の上限側を1000cc/minより小さい300cc/minまで狭くし、下限側を0cc/minから100cc/minまで狭くしたものとした。そのため、例えばステップS410で導出された操作量MV1が値50%であった場合には、上記式(1)によりMV2=200cc/min{=(300−100)/(100−0)×50−0)+100}となる。
【0043】
一方、ステップS420で第1,第2酸素センサ28,29の少なくともいずれかに故障がある場合には、導出部54は、故障時制限範囲を用いて、操作量MV1の換算後の値として、操作流量MV2を導出する(ステップS440)。換言すると、ステップS440では、導出部54は、操作量範囲の上限から下限までを、故障時制限範囲の上限から下限までに対応させたときの、操作量MV1に対応する故障時制限範囲内の値として、操作流量MV2を導出する。ここで、故障時制限範囲は、ステップS430で用いた制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くしたものである。本実施形態では、制限範囲(100cc/min〜300cc/min)の上限側と下限側との両方を狭くした150cc/min〜250cc/minの範囲を故障時制限範囲とするものとした。なお、ステップS440における操作流量MV2は、上述した式(1)における制限範囲の下限値a,上限値bの代わりに故障時制限範囲の下限値及び上限値を代入すれば、導出することができる。
【0044】
そして、ステップS430又はステップS440で操作流量MV2を導出すると、導出部54は、導出した操作流量MV2を水素副制御装置60に出力して(ステップS450
)、本ルーチンを終了する。
【0045】
続いて、水素副制御装置60が行う処理について説明する。図6は、水素副制御装置60が行う水素副制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、例えば水素副制御装置60の記憶部64に記憶され、ユーザーが操作パネル74を介して処理開始指示を入力したことを制御装置40から通知されると、繰り返し実行される。この水素副制御ルーチンが開始されると、切替部62は、まず、現在の制御モードが酸素濃度制御モードと設定値制御モードとのいずれに設定されているかを調べる(ステップS500)。ここで、水素副制御装置60は、第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度に基づくフィードバック制御を行ってMFC34の質量流量を制御する酸素濃度制御モードと、検出した酸素濃度に関わらず一定の値(流量設定値MV3)に基づいてMFC34の質量流量を制御する設定値制御モードとのいずれかを切替可能になっている。本実施形態では、切替モードは、操作パネル74を介したユーザーからの指示により変更可能であるものとした。また、切替部62は制御装置40から第1,第2酸素センサ28,29の故障の有無に関する情報(ステップS260で出力された判定結果)を例えば判定タイミングと同じタイミング毎に入力し、入力した情報に基づいて第1,第2酸素センサ28,29がいずれも故障しているか否かを判定するものとした。そして、いずれも故障していると判定し且つ現在の制御モードが酸素濃度制御モードであるときには、設定値制御モードに切り替えるものとした。また、現在の制御モードが酸素濃度制御モードと設定値制御モードとのいずれであるかを示す値が、例えば記憶部64に記憶されているものとした。ステップS500の判定は、この値を調べることで行う。
【0046】
そして、ステップS500で酸素濃度制御モードであったときには、切替部62は、水素主制御装置50から出力された操作流量MV2を入力し、入力した操作流量MV2をMFC34に出力して(ステップS510)、本ルーチンを終了する。一方、ステップS500で設定値制御モードであったときには、切替部62は、記憶部64に記憶された流量設定値MV3をMFC34に出力して(ステップS520)、本ルーチンを終了する。MFC34は、自身を通過する水素の質量流量が、ステップS510又はS520で入力した操作流量に一致するように、水素の質量流量を調整する。このように、酸素濃度制御モードのときには、MFC34の水素の質量流量がフィードバック制御に基づく操作流量MV2となるように制御し、設定値制御モードのときにはMFC34の水素の質量流量が一定値(流量設定値MV3)となるように制御するのである。そして、MFC34を通過する水素の量に応じて、処理空間11a内の酸素が反応し酸素濃度が低減される。
【0047】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の熱処理炉10が本発明の熱処理炉に相当し、被処理物96が対象物に相当し、処理空間11aが処理空間に相当し、炉体11が炉体に相当し、第1,第2酸素センサ28,29が酸素センサに相当し、MFC34が流量調整手段に相当し、操作量決定部52が操作量決定手段に相当し、導出部54が導出手段に相当する。また、記憶部46が記憶手段に相当し、故障判定部42が故障判定手段に相当し、切替部62が切替手段に相当し、給気管18が分岐経路形成部に相当する。また、酸素濃度出力部44が信頼性判定手段に相当する。
【0048】
以上説明した本実施形態の熱処理炉10では、第1,第2酸素センサ28,29が検出した処理空間11aの酸素濃度と、酸素濃度の目標値Ctとに基づいて、フィードバック制御により操作量上限値から操作量下限値までの操作量範囲内で操作量MV1を決定する。次に、MFC34が水素の流量を調整可能な流量範囲から上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした範囲である制限範囲に操作量範囲を換算したときの、決定された操作量MV1の換算後の値である操作流量MV2を導出する。すなわち、操作量範囲の上限から下限までを、制限範囲の上限から下限までに対応させたときの、操作量MV1に対応する制限範囲内の値として、操作流量MV2を導出する。そして、導出した操作流量MV2をMFC34に出力する。このため、MFC34が処理空間11aへ流す水素の質量流量は、MFC34の流量範囲よりも上限側と下限側との少なくとも一方が狭い制限範囲内の流量となる。したがって、制限範囲が流量範囲の上限側を狭くした範囲であれば、水素の流量が過剰になることをより抑制して、処理空間11aの水素濃度が高くなりすぎることをより抑制できる。また、制限範囲が流量範囲の下限側を狭くした範囲であれば、水素の流量が不足することをより抑制して、処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることをより抑制できる。このように、処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方をより抑制できる。例えば、操作量MV1を換算せずに(操作流量MV2を導出せずに)そのままMFC34に出力すると、MFC34は0cc/min(=0%)〜1000cc/min(=100%)の間で水素の質量流量を変化させることになる。これに対し、本実施形態では、操作量MV1に基づいて導出した操作流量MV2をMFC34に出力しているため、100cc/min〜300cc/minの間でしか水素の質量流量が変化しない。そのため、水素の質量流量が小さくなりすぎたり大きくなりすぎたりするような極端な制御を抑制して、処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることをより抑制できる。また、操作量MV1から操作量MV2への換算(操作量MV1に基づく操作流量MV2の導出)を行うことで、単に操作量MV1の上下限を設定する場合と比べて、フィードバック制御の精度の低下もより抑制できる。例えば、換算(操作流量MV2の導出)を行う代わりに操作量MV1に上限を設けて80%以下に制限するような場合、80%〜100%の範囲ではMFC34の水素の質量流量は同じ値(操作量MV1が80%のときの値)になってしまう。このような制御では80%〜100%の間の制御に差が無くなることから、フィードバック制御による酸素濃度の調整の精度が低下しやすい。一方、本実施形態では、操作量MV1の操作量範囲である0%〜100%を制限範囲の下限から上限までの値に対応させたときの操作量MV1に対応する値としての操作流量MV2を導出しているため、操作量MV1が0%〜100%の間で変化すればその変化量に応じて導出後の操作流量MV2も変化する。そのため、フィードバック制御による酸素濃度の調整の精度が低下しにくい。
【0049】
また、熱処理炉10は、複数の酸素センサ(第1,第2酸素センサ28,29)を備え、操作量決定部52は、複数の酸素センサのうちいずれかが検出した酸素濃度と、目標値Ctと、に基づいて操作量MV1を決定している。このとき、操作量MV1の導出に用いるのは、ステップS310,S330,S340のいずれかで出力された酸素濃度であり、酸素濃度出力部44が第1,第2酸素センサ28,29のうち信頼性が高いと判定した方の酸素センサが検出した現在の酸素濃度である。そのため、信頼性の低い酸素センサが検出した酸素濃度を用いて操作量MV1を決定する場合と比較して、処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることの少なくとも一方をより抑制できる。
【0050】
さらに、熱処理炉10は、記憶部46が第1,第2酸素センサ28,29が検出した酸素濃度(第1基準濃度Cs1,第2基準濃度Cs2,第1過去濃度Cp1,第2過去濃度Cp2)を記憶しており、この記憶された酸素濃度と、第1,第2酸素センサ28,29が検出した現在の酸素濃度(第1現在濃度Cn1,第2現在濃度Cn2)とに基づいて、第1,第2酸素センサ28,29の故障の有無を故障判定部42が判定している。そのため、複数の酸素センサを備える場合に、第1,第2酸素センサ28,29が検出した過去の酸素濃度と現在の酸素濃度とに基づいて、第1,第2酸素センサ28,29の故障の有無を判定することができる。しかも、第1基準濃度Cs1を用いた判定と第1過去濃度Cp1を用いた判定とを行っているため、故障の判定の精度が高まる。例えば徐々に故障が進行して処理空間11aの正しい酸素濃度と検出した酸素濃度とがずれていくような場合には第1過去濃度Cp1を用いた判定では故障を検出できない場合があるが、そのような場合でも第1基準濃度Cs1を用いた判定を行うことで故障を検出しやすくなる。
【0051】
さらにまた、故障判定部42は、判定タイミング毎に故障の有無を判定し、判定タイミングで故障がないと判定した場合には判定に用いた第1現在濃度Cn1,第2現在濃度Cn2を第1過去濃度Cp1,第2過去濃度Cp2として記憶部46に記憶する。そして、判定タイミングでは、故障がないと判定された直近の判定タイミングで記憶された第1過去濃度Cp1,第2過去濃度Cp2と今回検出された第1現在濃度Cn1,第2現在濃度Cn2とに基づいて故障の有無を判定する。そのため、故障がないと判定したときの第1現在濃度Cn1,第2現在濃度Cn2を記憶しておいて後の故障の判定時の第1過去濃度Cp1,第2過去濃度Cp2として用いるため、故障の判定精度が向上する。
【0052】
そして、操作量決定部52は、故障判定部42により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、第1,第2酸素センサ28,29のうち故障はないと判定された酸素センサが検出した酸素濃度と、目標値Ctと、に基づいて操作量MV1を決定する。また、導出部54は、故障判定部42により故障と判定された酸素センサと故障ではないと判定された酸素センサとがある場合には、制限範囲に代えて、制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした故障時制限範囲を用いて操作流量MV2を導出する。そのため、故障と判定された酸素センサがある場合に、故障のない他の酸素センサを用いて、フィードバック制御に基づく水素の流量の調整を継続できる。しかも、制限範囲に代えて制限範囲のうち上限側と下限側との少なくとも一方を狭くした故障時制限範囲を用いて操作流量を導出する。そのため、故障と判定された酸素センサがある場合に、制限範囲をそのまま用いる場合と比較して、処理空間の酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方をより抑制できる。
【0053】
そしてまた、熱処理炉10は、導出部54により導出された操作流量MV2をMFC34が入力する酸素濃度制御モードか、導出された操作流量MV2に代えて所定の操作流量である流量設定値MV3をMFC34が入力する設定値制御モードか、の切替を行う切替部62を備えている。そして、第1,第2酸素センサ28,29がいずれも故障と判定された場合に、流量設定値MV3をMFC34が入力するように設定値制御モードへの切替を行う。そのため、故障した酸素センサが検出した酸素濃度を用いたフィードバック制御に基づいて水素の流量を調整してしまうことをより抑制できる。これにより、全ての酸素センサが故障したときに処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることとの少なくとも一方の状態になることをより抑制することができる。
【0054】
そしてまた、熱処理炉10は、MFC34よりも下流且つ処理空間11aよりも上流に設けられ、処理空間11aに複数箇所から水素が流入するように途中で分岐した流路を形成する給気管18を備えている。これにより、流路が分岐せず1箇所から処理空間11aに水素を流入させる場合と比べて、処理空間11a内で水素濃度のムラが生じにくい。そのため、処理空間11aの一部の酸素濃度が高くなりすぎたり処理空間11aの一部の水素濃度が高くなりすぎたりすることをより抑制することができる。また、本実施形態では、給気管18を炉体11の底部に設け排気弁27を炉体11の天井部に設けているため、給気管18を介して処理空間11a内に流入した水素はセッター95を左右から回り込むようにして炉体11の天井部に向かう流れが生じ、処理空間11a全体に水素が行き渡りやすい。これによっても、処理空間11a内で水素濃度のムラが生じにくくなる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0056】
例えば、上述した実施形態では、酸素センサは2本であるものとしたが、1本としてもよいし、3本以上としてもよい。3本以上の場合、各酸素センサについて図3の故障判定ルーチンのステップS100〜S150と同様の処理を行って故障を判定してもよい。また、図4の酸素濃度出力ルーチンのステップS310では、故障していない酸素センサのうちいずれかの現在酸素濃度を水素主制御装置50に出力すればよい。また、正常な酸素センサが2以上ある場合には、ステップS320と同様にして差ΔCpを比較し、差ΔCpが最も小さい酸素センサが検出した現在酸素濃度を水素主制御装置50に出力してもよい。また、酸素センサが3本以上の場合、図5の水素制御ルーチンのステップS420では、酸素センサが1つでも故障している場合にステップS440の処理を行ってもよいし、正常の酸素センサの数が1以下である場合にステップS440の処理を行ってもよい。すなわち、正常な酸素センサの数が2以上ある場合には故障時制限範囲を用いずにステップS430の処理を行い制限範囲を用いて操作量MV2を導出してもよい。
【0057】
上述した実施形態では、第1,第2酸素センサ28,29がいずれも故障していると判定されると切替部62が設定値制御モードになるものとしたが、これに限られない。例えば、第1,第2酸素センサ28,29がいずれも故障していてもユーザーからの指示が入力されるまでは酸素濃度制御モードのままとしてもよい。この場合でも、図5の水素制御ルーチンではステップS440が行われて故障時制限範囲を用いた操作流量MV2が導出されるため、処理空間11aの酸素濃度が高くなりすぎることと水素濃度が高くなりすぎることの少なくとも一方をより抑制することはできる。また、切替部62が設定値制御モードを備えないものとし、導出部54が水素副制御装置60を介さず操作流量MV2をMFC34に出力してもよい。
【0058】
上述した実施形態において、第1酸素センサ28の故障判定は第1基準濃度Cs1を用いた判定と第1過去濃度Cp1を用いた判定とを共に行うものとしたが、いずれか一方を省略してもよい。また、故障判定を行わなくてもよい。第2酸素センサ29についても同様である。
【0059】
上述した実施形態において、制限範囲は流量範囲から上限側と下限側とを狭くした範囲としたが、上限側と下限側との少なくとも一方を狭くしたものであればよい。また、故障時制限範囲は制限範囲のうち上限側と下限側とを狭くしたものとしたが、上限側と下限側との少なくとも一方を狭くしたものであればよい。
【0060】
上述した実施形態において、制御装置40,水素主制御装置50,水素副制御装置60はそれぞれ別の装置としたが、これらのうち2以上を1の装置としてもよいし、これらの各装置の各機能ブロックを別の装置に分けてもよい。あるいは、これらの各装置の各機能ブロックを別の装置が備えるものとしてもよい。例えば、水素主制御装置50が酸素濃度出力部44を備えるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 熱処理炉、11 炉体、11a 処理空間、12 前端面、13 後端面、14,15 開口、18 給気管、19 排気管、20 ヒーター、22 カバー、24 支持ローラー、25 搬送ローラー、27 排気弁、28,29 第1,第2酸素センサ、30 ガス供給部、31 水素供給源、32 窒素供給源、33 水供給源、34〜37 マスフローコントローラー(MFC)、38 気化器、40 制御装置、41 制御部、42 故障判定部、44 酸素濃度出力部、46 記憶部、50 水素主制御装置、52 操作量決定部、54 導出部、56 記憶部、60 水素副制御装置 62 切替部、64 記憶部、74 操作パネル、95 セッター、96 被処理物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6