特許第6162103号(P6162103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162103負圧創傷治療包帯に負圧を提供するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162103
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】負圧創傷治療包帯に負圧を提供するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170703BHJP
   A61L 15/16 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61M27/00
   A61L15/16
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-512071(P2014-512071)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-519905(P2014-519905A)
(43)【公表日】2014年8月21日
(86)【国際出願番号】US2012039103
(87)【国際公開番号】WO2012162370
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】61/490,118
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/299,783
(32)【優先日】2011年11月18日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513295205
【氏名又は名称】カリプト・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ブアン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ウィレムス
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0008179(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/023275(WO,A1)
【文献】 特表2010−531698(JP,A)
【文献】 特表2010−504805(JP,A)
【文献】 特表2002−517288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61M 1/00
A61L 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧創傷治療システムであって、
負圧創傷治療包帯に負圧を提供するよう構成されたポンプと、
ユーザーからの治療負圧設定値を受け取るよう構成されたインターフェースと、
前記負圧創傷治療包帯の下の負圧を特定するよう構成された圧力センサーと、
コントローラーであって、
前記治療負圧と関連付けられた目標負圧であって前記治療負圧よりも低い目標負圧を決定し、
前記負圧創傷治療包帯の下に負圧を形成するために前記ポンプをオン・オフサイクル動作させ、
各サンプルが第1の時間間隔で取得されるように、前記圧力センサーから、前記負圧創傷治療包帯の下の負圧の複数のサンプルを取得し、
複数の連続したサンプルの平均値を計算し、
計算された平均値を前記目標負圧と比較し、
計算された平均値が前記目標負圧よりも大きくなるまで前記ポンプをオン・オフサイクル動作させることを継続するよう構成されたコントローラーと、
を具備し、
前記コントローラーは、さらに、
完全なポンプサイクルが終了した後、計算されている平均値が計算されてしまうまでは前記第1の時間間隔を維持し、その後、平均値の計算が完了し、この計算された平均値が前記目標負圧よりも大きいことが特定された後に、前記第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔で前記負圧創傷治療包帯の下の負圧をサンプリングする
よう構成されていることを特徴とする負圧創傷治療システム。
【請求項2】
前記コントローラーは、さらに、前記完全なポンプサイクルが終了した後に前記ポンプが、ある時間にわたって停止させられた後、前記第2の時間間隔で前記負圧創傷治療包帯の下の負圧をサンプリングするよう構成されていることを特徴とする請求項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項3】
前記時間は300ミリ秒であることを特徴とする請求項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項4】
前記第2の時間間隔は1000ミリ秒であることを特徴とする請求項ないし請求項のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項5】
前記第1の時間間隔は100ミリ秒であることを特徴とする請求項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項6】
前記コントローラーは、前記ポンプを80ミリ秒にわたって作動させ、続いて、前記ポンプを80ミリ秒にわたって停止させることによって、前記負圧創傷治療包帯の下に負圧を形成するために、前記ポンプをオン・オフサイクル動作させるよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項7】
前記第1の時間間隔は100ミリ秒であることを特徴とする請求項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項8】
前記治療負圧が125mmHgであり、かつ、前記目標負圧が約115mmHgであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項9】
前記治療負圧が90mmHgであり、かつ、前記目標負圧が約85mmHgであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項10】
前記治療負圧が60mmHgであり、かつ、前記目標負圧が約54mmHgであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項11】
前記治療負圧が40mmHgであり、かつ、前記目標負圧が約34mmHgであることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項12】
前記コントローラーは、さらに、前記計算された平均値が前記目標負圧よりも大きくない場合に、前記計算された平均値が前記目標負圧よりも大きくなるまで、前記ポンプをオン・オフサイクル動作させ、複数のサンプルを取得し、前記平均値を計算し、そして前記計算された平均値を比較することを継続するよう構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項13】
前記コントローラーは、さらに、少なくとも前記圧力センサーによる前記サンプリングの速度である前記平均値を計算する速度よりも高い速度で前記計算された平均値を比較するよう構成されることを特徴とする請求項12に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項14】
前記コントローラーは、さらに、前記計算された平均値が前記目標負圧よりも大きい場合に、
前記第1の時間間隔よりも大きな第2のセット時間間隔で前記負圧創傷治療包帯の下の負圧の複数の連続した第2のサンプルを取得し、
各第2のサンプルを前記目標負圧と比較し、
第2のサンプルが前記目標負圧よりも大きい場合に前記第2のサンプルの取得および前記目標負圧との比較を継続することによって前記目標負圧を維持するよう構成されており、
前記複数の連続した第2のサンプルのそれぞれを取得するための時間間隔が第2の時間間隔であり、かつ、複数の前記第2の時間間隔が集合して前記第2のセット時間間隔を形成することを特徴とする請求項12に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項15】
前記コントローラーは、さらに、第2のサンプルが前記目標負圧よりも大きくない場合に、前記ポンプをオン・オフサイクル動作させ、前記複数の連続した第2のサンプルを取得し、前記複数の連続した第2のサンプルの平均値を計算し、前記複数の連続した第2のサンプルの前記平均値が前記目標負圧よりも大きくなるまで前記平均値を比較することを継続するよう構成されることを特徴とする請求項14に記載の負圧創傷治療システム。
【請求項16】
前記治療負圧は、40mmHg、60mmHg、90mmHgおよび125mmHgからなる群から選択されることを特徴とする請求項1ないし請求項15のいずれか1項に記載の負圧創傷治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2011年11月18日に出願された米国特許出願第13/299,783号に対する、そして2011年5月26日に出願された米国仮出願第61/490,118号に対する優先権を主張し、その両方はこの引用により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、負圧創傷治療包帯に負圧を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
負圧創傷療法は、人々の特定の創傷または潰瘍を治療するために使用される一方法である。一般に、この治療は、創傷部位上に配置され、ポンピングデバイスに接続される包帯を必要とする。ポンピングデバイスは吸引力を提供し、創傷部位において包帯の下に負圧を形成する。滲出液およびその他の物質は創傷部位から除去され、創傷が周囲の圧力下でよりも早期に回復することを可能とする。
【0004】
ポンピングデバイスは、とりわけ、ポンプを含んでいる。通常、ユーザーが、患者のための特定の負圧治療に関連するポンピングデバイスに関して適切な負圧を選択(あるいはさもなければ入力)する。ポンプおよびポンピングデバイスは、迅速かつ正確に、負圧創傷治療に関連して使用される治療圧力を実現することが重要である。
【0005】
ポンプが治療圧力を達成することができる速度は重要である。というのは、この速度は治療に悪影響を及ぼすことがあるからである。さらに、治療圧力が実現されたことを認識するためのポンプの機能は、過小なあるいは過大な負圧を加えるのを回避するために重要である。したがって、ポンプデバイスに関して、それが治療圧力を実現する速度および精度は重要な特性である。
【0006】
正確かつ迅速に治療圧力を実現するために、あるポンプは連続的に作動状態に置かれる。あるデバイスでは、これは問題となり得る。例えば、あるポンプは迅速に治療圧力を実現することができるが、ポンプおよびシステムは、治療圧力値をオーバーシュートする傾向がある。このために、適切な負圧が実現されるまで、ポンピングデバイスが負圧を解放することを可能とする追加のバルブおよびその他のコンポーネントが必要となる。
【0007】
さらに、ポンプを連続的に作動状態にしておくと電力の浪費となることがあり、そして電池あるいはその他のポータブル電源で作動するデバイスに関して、これは電源の寿命に悪影響を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記およびその他の問題の解決を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態において、本発明は、ポンプを有するポンピングデバイスを提供することによって負圧創傷治療包帯に負圧を提供すると共に、ポンピングデバイスの治療負圧を設定するための方法を対象とする。ポンピングデバイスは、治療負圧と関連付けられた目標負圧を特定し、かつ、この目標負圧は治療負圧よりも低いものである(本明細書中で説明するように、「〜よりも低い」とは、それがいっそうマイナスあるいはより低い程度の負圧、すなわち、よりゼロに近いことを意味する)。ポンピングデバイスは、負圧創傷治療包帯に対して接続される。目標負圧は、負圧創傷治療包帯内に負圧を形成するためにポンプをオン・オフサイクル動作させることと、負圧創傷治療包帯内で負圧の複数のサンプルを取得することであって、各サンプルは第1のセット時間間隔で取得されることと、所定の数の連続したサンプルの平均値を計算することと、平均値を目標負圧と比較することと、平均値が目標圧力よりも大きくなるまでポンプをオン・オフサイクル動作させることを継続することとによって達成される。
【0010】
この方法はまた、完全なオフサイクルの後にサンプルの平均値が目標圧力よりも多くなるまでポンプをオン・オフサイクル動作させた後に、第1のセット時間間隔よりも大きな第2のセット時間間隔で負圧創傷治療包帯内の負圧をサンプリングすることを含んでいてもよい。
【0011】
本発明の別の実施形態では、ポンプが所定時間にわたってオフであった場合に、第2のセット時間間隔での負圧創傷治療包帯内の負圧のサンプリングが始まる。
【0012】
所定時間は300ミリ秒であってもよい。
【0013】
第2のセット時間間隔は1000ミリ秒であってもよく、そして第1のセット時間間隔は100ミリ秒である。
【0014】
ある実施形態では、負圧創傷治療包帯内に負圧を形成するためにポンプをオン・オフサイクル動作させることは、80ミリ秒の間、ポンプを作動させ、続いて80ミリ秒の間、ポンプを停止させることによって実施される。
【0015】
本発明のある実施形態では、治療負圧は125mmHgであり、かつ、目標負圧は約115mmHgである。
【0016】
本発明のある実施形態では、治療負圧は90mmHgであり、かつ、目標負圧は約85mmHgである。
【0017】
本発明のある実施形態では、治療負圧は60mmHgであり、かつ、目標負圧は約54mmHgである。
【0018】
本発明のある実施形態では、治療負圧は40mmHgであり、かつ、目標負圧は約34mmHgである。
【0019】
本発明の別の実施形態においては、本発明は、ポンプを有するポンピングデバイスを提供することによって負圧創傷治療包帯に負圧を提供し、そしてポンピングデバイスの治療負圧を設定するための方法に関する。ポンピングデバイスは、治療負圧と関連付けられた目標負圧を特定し、かつ、この目標負圧は治療負圧よりも低いものである。ポンピングデバイスは負圧創傷治療包帯に接続される。目標負圧は、負圧創傷治療包帯内に負圧を形成するためにポンプをオン・オフサイクル動作させることと、負圧創傷治療包帯内で負圧の複数のサンプルを取得することであって、各サンプルは第1のセット時間間隔で取得されることと、所定の数の連続したサンプルの平均値を計算することと、平均値を目標負圧と比較することと、平均値が目標圧力よりも大きくない場合に、平均値が目標負圧よりも大きくなるまで、ポンプをオン・オフサイクル動作させ、複数のサンプルを取得し、平均値を計算し、そして平均値を比較するステップを繰り返すことによって実現される。
【0020】
ある実施形態では、平均値の比較は、平均を計算する速度よりも高い速度で行われる。
【0021】
ある実施形態では、平均値が目標負圧よりも大きい場合、目標負圧は、第1の時間間隔よりも大きな第2の時間間隔で負圧創傷治療包帯内の負圧の複数の第2のサンプルを取得し、各第2のサンプルを目標負圧と比較し、そして第2のサンプルが目標負圧よりも大きい場合に取得および比較のステップを繰り返すことによって維持される。
【0022】
ある実施形態では、第2のサンプルが目標負圧より大きくない場合、ポンプをオン・オフサイクル動作させ、複数のサンプルを取得し、平均値を計算し、そして平均値が目標負圧より大きくなるまで平均値を比較することによって目標負圧を達成するステップが繰り返される。
【0023】
本発明のさまざまな実施形態では、治療負圧は、40mmHg、60mmHg、90mmHg、そして125mmHgからなる群から選択することができる。
【0024】
開示された実施形態の一つ以上に基づく発明は、ポンプが合理的に迅速に負圧治療/目標負圧を実現することを、そして実際と同じくらいに治療負圧/目標負圧を上回るのを制限することを可能とする。
【0025】
さらに、実施形態の少なくとも一つはまた、漏れによって過度に頻繁に包帯圧力が「上積み」されていたかどうかを検出するために信頼性の高い方法を提供する(すなわち、たいていは、負圧を増大させるためにポンプをオン・オフサイクル動作させることに帰着する)。例えばシステム内の不完全な配管接続によって、ある時間にわたってシステムから少量が漏れることが予測される。毎分1回の「上積み」の漏れ速度は正常である。だが、その4倍の漏れ速度は宣言されるべき微小漏れに関する原因である。そうした漏れ速度は、依然として、システムを長期的に扱うための範囲内であるが、それが修正され、システムのバッテリー寿命が延びるようにユーザーに告知されるべきである。漏れが通常のレベルに戻ったことが明らかになるや否や、障害をクリアすることも望ましい。
【0026】
上述の本発明の態様および目的は組み合わせ可能であってもよく、そして本発明の他の利点および態様は、図面の以下の説明および本発明の詳細な説明から明らかとなる。
【0027】
本発明は、図面と共に、以下の詳細な説明と特許請求の範囲の記載からより明らかとなるであろう。図面は典型的な実施形態を示しているに過ぎず、したがって本発明の範囲の制限であると解釈すべきではないことを理解し、実施形態について図面を参照して具体的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一つ以上の実施形態に関連して使用されるデバイスの正面斜視図である。
図2】本発明の一つ以上の実施形態に基づいて提供されるデバイスの正面破断図である。
図3】本発明の一つ以上の実施形態に基づく方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は多くの異なる形態で実施が可能であり、以下では、一つ以上の実施形態を図示し、詳しく説明するが、以下の説明は本発明の原理の例示として解釈すべきであり、かつ、本発明を図示の実施形態へと限定することを意図していない。
【0030】
特徴、利点、目的または同様の記述に対する、本明細書を通じての言及は、本発明により実現可能な特徴および利点の全てが本発明の単一の実施形態に存在すべき、あるいは存在することを意味するものではない。むしろ、特徴および利点に対する記述は、ある実施形態に関連して説明された特定の特徴、利点または特性が本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味するものと理解すべきである。したがって、本明細書を通じての特徴および利点、および同様の記述の説明は、必ずしもではないが、同じ実施形態に関連してもよい。
【0031】
図1および図2に示すように、本発明は、ポンプ20を有するポンピングデバイス10と共に使用される方法を対象とする。ポンピングデバイス10は、概して、圧力センサ22と、チェックバルブ24と、(マイクロコントローラーを備えた)制御回路26と、内部配管28と、LED30と、電源32とを備えている。
【0032】
創傷に負圧を提供するために、ポンピングデバイス10は、通常はチューブ14を用いて、負圧創傷治療包帯12に接続される。
【0033】
目標負圧を達成するために、ポンピングデバイス10は、圧力が目標圧力を下回る場合、短時間だけポンプ20を作動させる。
【0034】
ポンプデバイス10は、通常、以下のように動作する。マイクロコントローラーは、デジタル出力によってポンプ20を作動させる。ポンプ20は真空を形成し始める。真空度は圧力センサ22により電圧に変換される。電圧は、アナログ−デジタル変換器(「A /D」)によって、標準的な公認圧力工学単位に変換される。マイクロコントローラーはモニターされた圧力を目標圧力と比較する。
【0035】
短時間で目標負圧を実現し、そして、目標負圧のオーバーシュートを避けるために、ポンプ20はサイクル動作させられる。デューティサイクル、ポンプオフ時間に対するポンプオン時間のパーセンテージは、動作中の複数のポンプを検査した後、さまざまなポンプ20に関して一定とすることができる。短時間で、どの程度の真空をポンプ20が形成できるかがポンプオン時間に影響を与える。さらに、包帯14および配管28の弾力性と、どの程度迅速に圧力センサ22およびA/Dが測定を行うことができるかが、ポンプオフ時間に影響を与える。
【0036】
ある実施形態では、圧力センサ22の測定時間は20ミリ秒であり、一方、A/D測定時間は16マイクロ秒である。したがって、圧力の変化は、まず圧力センサ22によって、次いでA/Dによって変換される必要があるので、最小測定時間は20.016ミリ秒である。
【0037】
それらが、一時的測定システム異常を軽減するために使用される前に、示度を平均化するのが有利であると考えられる。一方で、平均値におけるサンプル数は、それが低くなる傾向があるとき、異常軽減を行うだけでなく、それらが測定しているパラメーターの急速な変化に対して最も敏感なままである。最良の異常軽減は、サンプルの数が多いときに生じるようであるが、その後、平均化は、それらが測定しているパラメーターの急速な変化に対して、あまり敏感ではない。
【0038】
変動する五つのサンプルの平均を使用するのが有利であろうことが特定された。圧力が連続的にサンプリングされた場合、完全な平均値は、5×20.016=100.090ミリ秒内で準備ができる。しかしながら、ポンプ制御決定が値に関してなされる前に、取得される全ての五つのサンプルのために待機することが必要であろう。なぜなら、僅かいくつかのサンプルでさえ、依然として、システム異常を十分に軽減するからである。しかしながら、圧力の継続的なサンプリングは、特に圧力センサ22がシステムの(ポンプ20以外の)コンポーネントに最大mAの負荷を加えるので、ポンプ制御の極めて僅かな利益のためにバッテリーの寿命を不必要に短くするであろう。
【0039】
したがって、ポンプオン/オフサイクルに非同期の測定プロセスが使用され、ここで、圧力サンプルは100ミリ秒毎に平均値に寄与させられ、そしてポンプオン/オフ制御ロジックが80ミリ秒ごとに平均値と比較される場合、それは、当該平均値とされたまさに最後の寄与によって影響された平均値を決定するのに十分なほど頻繁にそれを比較するであろう。これは、100ミリ秒ごとにプロセスを開始し、20ミリ秒の圧力センサ測定時間だけ待機し、続いてA/Dを用いて圧力を測定することによって達成できる。
【0040】
ポンプオン/オフ制御ロジックに対してA/D測定の終了を正確に同期させることが考えられるが、ソフトウェア設計のベストプラクティスによれば、可能な場合にはソフトウェアモジュール間の依存関係を回避すべきでありかつ同期がここでは不要であり、ポンプオン/オフ制御ロジック(サイクル)は、任意の寄与が平均値に対してなす全ての変化を認識する。
【0041】
ポンプ20が、その目標圧力を満たした場合、先に説明したA/Dサンプリングおよび比較プロセスは、ポンプが十分な時間だけオフであったとき、例えば、100ミリ秒のリピート速度から1000ミリ秒のリピート速度へと変化する。これによって、さらに、圧力があまり変化しそうにないときに、バッテリー寿命がセーブされる。より遅い繰り返し速度へと切り替えるためにポンプ20をオフにしなければならない時間は、例えば、300ミリ秒であってもよいが、それは、(より後のデューティサイクルでの)ポンプオン/オフデューティサイクルのオフ期間よりも長い、いかなる値であってもよい。さらに、それは、目標圧力に到達したポンプ20に起因する「オフ」と、ポンプ制御デューティサイクルの「オフ」とを区別するために、少なくともその長さであるべきである。(300ミリ秒が使用されるが、それは、ポンプが停止された後にそれがバッテリー電圧をサンプリングする前にA/Dが待機するために十分な時間であるからである。バッテリーは、ポンプ20が停止させられたときにのみサンプリングされる。というのは、ポンプがシステムに加えるmA負荷はそれがオフのときとは著しく異なり、かつ、バッテリー寿命はポンプがシステムに負荷を加えていないときには、より簡単に予測されるからである。)
【0042】
ポンプ制御オン/オフデューティサイクルは、好ましくは、80ミリ秒オンおよび80ミリ秒オフである。40または80ミリ秒の「オン」時間がさまざまな包帯12に関するオーバーシュートを抑止するために十分であったことが特定された。40ミリ秒の値は、それをより良く抑止し、目標圧力により近い最終圧力をもたらしたが、目標圧力に到達するためにより長い時間がかかった。80ミリ秒よりも長い「オン」時間は、「オフ」時間がいかなるものであっても、ある種の包帯に関して、範囲外のオーバーシュートを生じた。上記のように、「オフ」時間は制御/測定アルゴリズムの測定部分に影響を与える。さらに、配管および包帯弾力性は、僅かであっても、短時間、平均あるいは「定常」圧力を歪めることがある。そうした圧力歪みを測定前に安定させるのが有利であると考えられている。さらに、圧力センサ22およびA/D測定も、やはり上記のように時間が必要である。
【0043】
約30ミリ秒の「オフ」時間は両方をカバーするであろうが、オン時間およびオフ時間の両方を制御するために同じ80ミリ秒タイマーを使うのが簡便であった。さらに、80ミリ秒の一つ以上の倍数の間、システムをより長く安定させることは、測定の質を改善するであろう。というのは、それによって、限界圧力に達するために、より長い時間がかかるという犠牲を払って、変動する平均値がより完全に満たされるからである。上記時間について説明してきたが、本発明がこれらの時間に限定されると解釈すべきではない。
【0044】
使用時、ユーザーは、ポンピングデバイスに治療負圧を入力する。もちろん、これは、ポンピングデバイスがプリセット治療負圧を有することによって実現されてもよく、ユーザーは単に一つを選択するだけである。
【0045】
本発明の一つ以上の実施形態では、目標負圧は、ポンピングデバイスにユーザーにより入力された治療負圧よりも僅かに小さく設定される。本発明の実施形態の動作例では、以下のパラメーターが、15秒内で40/60/90/125mmHgの治療負圧を得るために、そして治療負圧の+/−10%までにオーバーシュートを制限するために、対象と共に使用された。だが、40mmHgの治療負圧に関して、許容範囲は、好ましくは、+/−10mmHg(+/−10%ではない)である。
【0046】
40/60/90/125治療負圧よりも僅かに低く設定される目標負圧を用いることによって、包帯内で実際の負圧を過小評価するシステムの傾向の補償が可能となる。したがって、先に述べた治療負圧値と共に使用されるように意図された目標圧力は、34, 54,85および115mmHg(それぞれ)である。他の目標圧力は、本発明の趣旨から逸脱することなく、上記のさまざまなパラメーター(ポンプ、包帯、弾力性など)に応じて使用することができる。
【0047】
本発明の一つ以上の実施形態に基づくデバイスにおいて、ポンプ20は、合理的に迅速に、目標負圧を達成し、停止し、1回あるいは数秒後に2回の「上積み」を行い、そして、それがもっぱら毎分の上積みを行うかあるいはシステム漏れを補償するような状態へと移行する。最初の1回または2回の上積みは圧力完全安定によるものである。
【0048】
要するに、本発明の一つ以上の実施形態に基づくデバイスにおいて、圧力は100ms毎にサンプリングされ、ここで、圧力センサおよびA/Dによるサンプリングは20.016ミリ秒を要する。サンプルは、変動する五つの要素平均に入る。ポンピングデバイス10は、非同期的に、80ミリ秒毎に(圧力がサンプリングされるよりも僅かに速く)平均値を比較する。ポンピングデバイス10は、圧力が目標圧力を下回る場合には、1回以下のサイクルの間(80ミリ秒)ポンプ20を作動させる。1回のオフサイクル(80ミリ秒)を待った後、圧力が依然として目標圧力未満であれば、ポンプ20は再度作動させられる。これら最後の二つのステップは、圧力が目標圧力よりも大きくなるまで繰り返され、この時点で、システム中の通常漏れが目標圧力を下回るまで圧力を低下させるまで、ポンプ20は停止状態に置かれる。圧力が目標圧力を上回っている期間中、ポンプ20が300ミリ秒の間、継続的にオフであったときを起点として、サンプリングは1000ミリ秒レートまで(バッテリー寿命を伸ばすために)に減少させられてもよい。
【0049】
ある実施形態のステップを実施するためのフローチャートを図3に示す。図示のように、そして上述したように、本発明の一つ以上の実施形態に基づく方法は、治療負圧の設定100と共に開始できる。これに応答して、ポンピングデバイスは目標負圧102を決定する。先に説明したように、この目標負圧は治療負圧よりも低いものである。
【0050】
この時点で、ポンピングデバイスは、ポンプをオン・オフサイクル動作させること104を開始する。さらに、ポンピングデバイスはまた、包帯において圧力をサンプリングすること106を開始する。このサンプリングは、好ましくは、設定時刻においてなされる。図3において、これは、「タイミングA」として示されている。五つ未満のサンプルしか取集できなかった場合、ポンピングデバイスは包帯において圧力をサンプリングすること106を継続する。
【0051】
だが、五つ超のサンプルが収集された場合112には、ポンピングデバイスは、取得された最後の五つのサンプルの平均値を計算する。ポンピングデバイスは、続いて、最後の五つのサンプルの平均値を目標負圧と比較すること116を行う。最後の五つのサンプルの平均値が目標負圧よりも低い場合118には、ポンピングデバイスは、包帯106において圧力をサンプリングし続ける。
【0052】
最後の五つのサンプルの平均値が目標圧力よりも大きい場合120には、ポンピングデバイスは、ポンプのサイクル動作を停止させる。必要とはされないが、ポンプがサイクルの途中にある場合に、ポンピングサイクルが停止させられる前に、この特定のサイクルを完了させることが考えられる。これに代えて、平均値が目標負圧よりも大きいと判定された場合にポンプサイクル動作を直ちに停止させることができる。
【0053】
ポンプサイクル動作が停止された後、デバイスは包帯において圧力のサンプリング124を開始する。このサンプリングは、好ましくは所定の時間間隔で実施され、そして図示されるように「タイミングB」でなされる。先に述べたように、ポンピングデバイスに電力を供給することができるバッテリーの寿命を増大させるために、タイミングBはタイミングAよりも大きいことが好ましい。
【0054】
最後に、デバイスは、目標負圧126と、(ステップ124で得た)圧力のサンプルを比較し続ける。最新のサンプルが目標負圧128よりも大きい場合、デバイスは、包帯124における圧力をサンプリングし続ける。
【0055】
最新のサンプルが目標圧力130未満である場合、デバイスは、1サイクル132の間、ポンプを作動させ、包帯124の下の圧力をサンプリングし続けることができる。これに代えて、デバイスは、ポンプをオン・オフサイクル動作させること104、そして目標負圧を達成するために先に行われたその後のステップへと戻ることができる。
【0056】
負圧を実現し、維持することに加えて、本発明の一つ以上の実施形態はまた、漏れを検出する方法を含む。例えば、目標負圧に到達し、かつ、少なくとも20回の上積みが目標負圧において生じ、かつ、最後のN(=3)の上積み間隔の平均値が15秒未満である場合には、漏れがポンプデバイスによって宣言されてもよい。ポンプがユーザーにより無効にされるかあるいは上積み間隔が15秒以上である場合、微小漏れ検出はクリアされてもよい。
【0057】
15秒の時間値は、最適であると特定された許容できない漏れ速度(毎分4回の上積み)に関連付けられる。ポンピングデバイスは、N個の要素の円形列に全ての上積みの(ユニットリセットからの)時間を記録し、そして全ての上積みにおいてあるいは80ミリ秒ごとに(いずれか早い方)上積み間隔をチェックする。(「あるいは80ミリ秒」のファセットは、それを宣言するよりも障害をクリアするためにより有用である。)
【0058】
列要素の最も古いものにおける時間が現在の時間から減算され、続いて、最後のN回の上積みの平均(あるいはチェックを促した80ミリ秒タイマーティックが上積みであった場合に平均値が何であったであろうか)を得るためにNで除される。障害の設定ならびに障害のクリアの実例を以下に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
80ミリ秒タイマー終了によって呼び起こされるチェックは上記表には示されていない。というのは、それらはいかなる影響も持たず、その省略は、ただの上積みによるチェックがどのように起こるかを理解するのをより容易にするからである。
【0061】
【表2】
【0062】
上記例において、障害は、最後の上積みの25秒、3の分数掛ける15秒閾値(障害を宣言するために使用された閾値)以内にクリアされた。障害が修正されたように見える場合、これは障害を迅速にクリアする目標と一致する。システム時間が最も古いものに代えて最も新しく記録された上積みと比較された場合、それは、さらに迅速に、15秒以内で素早くクリアされることか可能であった。だが、一つ以上の上積み時間を使用することで、障害が実際にクリアされたというより大きな確かさがもたらされる。
【0063】
本明細書に記載された本発明のさらなる実施形態には当業者であれば想到可能でありかつ本発明の範囲は開示された実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。本発明の特定の実施形態を図示・説明してきたが、本発明の趣旨から著しく逸脱することなくさまざまな改変が可能であり、保護範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0064】
10 ポンピングデバイス
12 負圧創傷治療包帯
14 チューブ
20 ポンプ
22 圧力センサ
24 チェックバルブ
26 制御回路
28 内部配管
32 電源
図1
図2
図3