(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの透過型画像表示装置では、バックライトとして直下型の面光源装置を使用することがある。近年、光源として複数の発光素子を有する、直下型の面光源装置が使用されるようになってきている。
【0003】
たとえば、直下型の面光源装置は、複数の発光素子、複数の光束制御部材(レンズ)および光拡散部材を有する。発光素子は、例えば白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。複数の発光素子は、面光源装置内部の底面にマトリックス状に配置されている。各発光素子の上には、各発光素子から出射された光を基板の面方向に拡げる光束制御部材が配置されている。光束制御部材から出射された光は、光拡散部材により拡散され、被照射部材(例えば液晶パネル)を面状に照らす。
【0004】
従来の面光源装置は、一の発光素子と他の発光素子の間の領域が暗くなることによる輝度ムラを抑制するために、発光素子から光束制御部材を介して出射される光が、発光素子の光軸から離れる方向(水平方向)に広く拡がるように設計されている。
【0005】
図1は、従来の面光源装置の一部の構成を示す断面図である。
図1に示されるように、従来の面光源装置1は、発光素子2と、第1光束制御部材3と、第2光束制御部材4とを含む(例えば特許文献1参照)。第1光束制御部材3は、発光素子2から出射された光が入射する入射面3Aと、入射面3Aに入射した光を外部に出射する出射面3Bとを有する。第2光束制御部材4は、第1光束制御部材3から出射した光が入射する入射面4Aと、入射面4Aで入射した光を外部に出射する出射面4Bとを有する。第2光束制御部材4の入射面4Aは、発光素子2に対して凹形状の面であり、発光素子2の発光面と対向するように形成されている。そして、第2光束制御部材4の裏面は、発光素子2を保持するケーシングボディ5と接している。
【0006】
そして、発光素子2から出射した光は、第1光束制御部材3に入射し、光軸LAから離れる方向に屈折して出射される(点線)。第1光束制御部材3から出射した光は、第2光束制御部材4に入射し、光軸LAからさらに離れる方向に屈折して出射される(点線)。それにより、発光素子2からの光を光軸LAから離れる方向に広く拡げることができる。
【0007】
ところで、近年、ローカルディミング機能を有する面光源装置が普及しつつある。ローカルディミング機能とは、ディスプレイの表示画面をいくつかの区画に分け、それぞれの区画に映し出される映像の明るさに合わせてバックライトの明るさを調整する技術である。つまり、ローカルディミング機能を発揮させるためには、面光源装置を構成する複数の発光素子の発光量を個々に制御する必要がある。したがって、発光素子から出射される光を拡げつつも、1つの発光素子から出射される光が、隣の発光素子から出射される光と干渉しないことが求められる。即ち、発光素子から光束制御部材を介して出射される光が、発光素子の光軸LA近傍に適度に拡がりやすく、かつ光軸LAから離れる方向(水平方向)には拡がりすぎないことが求められる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光速制御部材、発光装置、面光源装置および表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、本発明に係る面光源装置の代表例として、液晶表示装置のバックライトなどに適する面光源装置について説明する。これらの面光源装置は、面光源装置からの光を照射される被照射部材(例えば液晶パネル)と組み合わせることで、表示装置として使用されうる。
【0017】
[面光源装置および発光装置の構成]
図2〜
図4は、本発明に係る面光源装置の構成を示す図である。
図2Aは、平面図であり、
図2Bは、正面図である。
図3Aは、
図2Bに示される3A−3A線の断面図であり、
図3Bは、
図2Aに示される3B−3B線の断面図である。
図4は、
図3Bの一部を拡大した部分拡大断面図である。
【0018】
図3、
図4に示されるように、本発明に係る面光源装置100は、筐体110、複数の発光装置200および光拡散部材120を有する。筐体110は、底板112と、天板114とを有する。筐体110の底板112の内面は、拡散反射面として機能する。筐体110の底板112上には、複数の基板210が配置されており、各基板210上には、複数の発光装置200がさらに配置されている。また、筐体110の天板114には、開口部が設けられている。光拡散部材120は、この開口部を塞ぐように配置されており、発光面として機能する。発光面の大きさは、例えば約400mm×約700mmとすることができる。
【0019】
図4に示されるように、複数の発光装置200は、それぞれ発光素子220および光束制御部材300を有している。
【0020】
発光素子220は、面光源装置100の光源であり、基板210上に実装されている。発光素子220は、例えば白色発光ダイオードなどの発光ダイオード(LED)である。
【0021】
光束制御部材300は、基板210上に固定されている。光束制御部材300は、発光素子220から出射された光の配光を制御し、上記光の進行方向を面光源装置100の面方向に拡げる。光束制御部材300は、その中心軸CAが発光素子220の光軸LAに一致するように配置される。
【0022】
本発明に係る面光源装置100は、発光素子220に対する光束制御部材300の配置と光束制御部材300の構成とに主たる特徴を有する。そこで、まず発光素子220に対する光束制御部材300の配置について、以下でさらに詳細に説明する。
【0023】
図5は、発光素子220から出射される光のうち、光束制御部材300の裏面340(
図6D参照)に入射する光の割合を示すイメージ図である。
【0024】
仮想半球体Qは、発光素子220の発光中心を含み、かつ光軸LAと直交する平面を底面とする半球体である。光束制御部材300は、さらに、発光素子220から出射する光のうち、仮想半球体Qの球冠表面積の少なくとも底面側から15%までの領域(塗りつぶし部分)の上限ラインL1を通る光が、後述する光束制御部材300の裏面340に入射するように、発光素子220の上に配置されている(構成1、
図4および
図5参照)。
【0025】
「仮想半球体Qの球冠表面積の少なくとも底面側から15%までの領域の上限ラインL1を通る光」は、
図4において、発光素子220の発光中心から光軸LAに対してθ1=81°の角度で出射する光に相当する。即ち、少なくとも発光素子220の発光中心から光軸LAに対してθ1=81°の角度(好ましくはθ1≧77°)で出射する光が、後述する光束制御部材300の裏面340に入射するように、光束制御部材300が配置されている。θ1は、発光素子220の発光中心を起点として光軸LAに対してなす角度である。
【0026】
つまり、本発明に係る発光装置200では、発光素子220から出射された光のうち後述する光束制御部材300の裏面340に入射する光の割合が、従来の発光装置よりも多い。後述する光束制御部材300の裏面340に入射する光は、光束制御部材300内で立ち上がりやすいので、後述する出射面330から出射される光は、光軸LAから離れる方向に拡がりにくい。光束制御部材300の裏面340に入射する光を多くするためには、例えば発光素子220からの光束制御部材300の裏面340の高さを高くすればよい。
【0027】
なお、後述する光束制御部材300の入射面320および出射面330はいずれも回転対称(円対称)であり、かつこれらの回転軸は一致する。この入射面320および出射面330の回転軸を「光束制御部材の中心軸CA」という。また、「発光素子の光軸LA」とは、発光素子220からの立体的な出射光束の中心の光線を意味する。
【0028】
光束制御部材300は、一体成形により形成することができる。光束制御部材300の材料は、所望の波長の光を通過させ得る材料であればよい。たとえば、光束制御部材300の材料は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂(EP)、シリコーン樹脂などの光透過性樹脂、またはガラスである。
【0029】
光束制御部材300については、別途詳細に説明する。
【0030】
光拡散部材120は、光拡散性を有する板状の部材(拡散板)であり、発光装置200からの出射光を拡散させつつ透過させる。通常、光拡散部材120は、液晶パネルなどの被照射部材とほぼ同じ大きさである。たとえば、光拡散部材120は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、スチレン・メチルメタクリレート共重合樹脂(MS)などの光透過性樹脂により形成される。光拡散性を付与するため、光拡散部材120の表面に微細な凹凸が形成されているか、または光拡散部材120の内部にビーズなどの光拡散子が分散している。
【0031】
本発明に係る面光源装置100では、各発光素子220から出射された光は、光束制御部材300により光軸LA近傍に拡がり、光軸LAから離れた方向に拡がりすぎない。したがって、1つの発光素子220から出射された光は、隣の発光素子220から出射する光との干渉が最小限に抑えられた状態で光拡散部材120に入射する。光拡散部材120に入射した光は、さらに光拡散部材120により拡散される。その結果、本発明に係る面光源装置100は、面状の被照射部材(例えば液晶パネル)を、区画毎に個々に照らすことができる。
【0032】
[光束制御部材の構成]
図6は、本発明に係る光束制御部材300の構成を示す図である。
図6Aは、平面図であり、
図6Bは、正面図であり、
図6Cは、底面図であり、
図6Dは、
図6Aに示される6D−6D線の断面図である。
【0033】
図6Dに示されるように、光束制御部材300は、入射面320を形成する凹部310、出射面330、裏面340、鍔部350、および脚部360を有する。
【0034】
凹部310は、光束制御部材300の裏側(発光素子220側)の中央部に形成されている。凹部310の内面は、入射面320として機能する。入射面320は、発光素子220から出射された光の大部分を、その進行方向を制御しつつ光束制御部材300の内部に入射させる。入射面320は、光束制御部材300の中心軸CAと交わり、中心軸CAを軸として回転対称(円対称)である。光軸LAから離れる方向に光が拡がりすぎるのを抑制する観点から、入射面320の頂点付近(光軸LA近傍)の傾斜は、従来の光束制御部材の入射面の頂点付近の傾斜よりも緩やかに形成されていることが好ましい(構成2)。
【0035】
出射面330は、光束制御部材300の表側(光拡散部材120側)に、鍔部350から突出するように形成されている。出射面330は、光束制御部材300内に入射した光を、進行方向を制御しつつ外部に出射させる。出射面330は、中心軸CAと交わり、中心軸CAを軸として回転対称(円対称)である。
【0036】
出射面330は、光軸LA(または中心軸CA)と交わる位置に配置された第1出射面330aと、第1出射面330aの周囲に連続して配置された第2出射面330bと、第2出射面330bと鍔部350とを接続する第3出射面330cとを有する(
図6D参照)。第1出射面330aは、表側に凹の曲面である。第2出射面330bは、第1出射面330aの周囲に位置する、表側に凸の滑らかな曲面である。第2出射面330bの形状は、円環状の凸形状である。第3出射面330cは、第2出射面330bの周囲に位置する曲面である。
図6Dに示される断面において、第3出射面330cの断面は、直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。また、1つの発光装置200からの出射光による被照射領域が狭い場合には、第1出射面330aにおける光を拡げる効果は弱くてもよいため、第1出射面330aを表側に凹の曲面にする必要はなく、光軸LAに直交する平面や、第2出射面330bよりも曲率半径の大きな凸曲面であってもよい。
【0037】
出射面330は、従来の出射面よりも傾斜が緩やかに形成されている。
図7は、本発明に係る発光装置の光軸LAを含む断面において、θ2を定義する説明図である。
【0038】
θ2は、出射面330の傾きを示すものであり、発光素子220の発光中心から光軸LAに対して角度θ1で出射し、入射面320から光束制御部材300へ入射する光の出射面330上への到達点Pにおける出射面330の接線L2と、点Pを通り、かつ光軸LAと直交する線L3とがなす角度のうち小さい方として規定される(
図7参照)。本実施の形態では、発光素子220の発光中心から出射する光のうち、θ1が0°〜75°の範囲の光が入射面320へ入射する。この入射面320を経由した光の出射面330上への到達点Pにおける出射面の傾きθ2は、本実施の形態では約−40°〜5°の範囲である。θ2の符号は、
図7において、点Pにおける出射面330の接線L2と光軸LAとの交点が、線L3(点Pを通り、かつ光軸LAと直交する線)よりも上にある場合を負とし、点Pにおける出射面330の接線L2と光軸LAとの交点が、線L3よりも下にある場合を正とする。そして、出射面330は、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点(例えば
図10Aの点X)を有するように形成されている(構成3、後述する
図10A参照)。
【0039】
変曲点とは、上に凸の曲線部分と下に凸の曲線部分とを有する曲線において、上に凸の曲線部分から下に凸の曲線部分へと切り替わる点、または下に凸の曲線部分から上に凸の曲線部分へと切り替わる点をいう。変曲点は、曲線を二階微分して平均変化率(曲線の傾き)の変化を算出したときに、平均変化率(曲線の傾き)が増加から減少に切り替わる点、または平均変化率(曲線の傾き)が減少から増加へ切り替わる点として求めることができる。
【0040】
後述する
図10Aにおいては、θ1=0°でのθ2は、第1出射面330aの中心におけるθ2に対応し、θ1=20°付近でのθ2は、第2出射面330bの基板210からの高さが最も高くなる最高点におけるθ2に対応する(
図6D参照)。θ1が約44°以上に大きくなると、θ1の増加に伴い、θ2の変化率が徐々に減少している。つまり、第2出射面330bの最高点付近から出射面330の外縁(第3出射面330c)へと向かうにつれ、出射面330の傾斜の変化率が徐々に減少している。それにより、出射面330に到達した光が、光軸LAの近傍で出射する光は適度に拡がり、かつ光軸LAから離れた位置で出射する光は拡がりにくくなる。
【0041】
裏面340は、光束制御部材300の裏側に形成されており、凹部310の開口縁部から径方向に延在する平面である。
図6Cでは、裏面340が、プリズム形状を有している。
【0042】
鍔部350は、出射面330の外周部と光束制御部材300の裏面340の外周部との間に位置し、中心軸CAに対して外側に突出している。鍔部350の形状は、略円環状である。鍔部350は、必須の構成要素ではないが、鍔部350を設けることで、光束制御部材300の取り扱いおよび位置合わせが容易になる。鍔部350の厚みは、出射面330の必要面積や鍔部350の成形性などを考慮して決定されうる。
【0043】
入射面320、出射面330および鍔部350の表面の少なくとも一つは、粗面であることが好ましい(構成4)。これらの表面が粗面であると、これらの面に入射した光が、その近傍で散乱されるため、光軸LAから離れる方向に拡がる光を少なくすることができる。粗面の表面粗さRa(JIS B 0601;2001)は、0.05〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.3μmであることがより好ましい。また、鍔部350の表面粗さRaは、入射面320と出射面330の表面粗さRaよりも大きいことが好ましい。鍔部350の表面粗さRaを大きくすることで、鍔部350から出射する光を散乱させやすくし、光軸LAから離れる方向に拡がりにくくしうるからである。鍔部350の表面粗さRaは、0.1〜0.5μmであることが好ましい。粗面の表面粗さRaは、表面粗さ測定機により測定できる。
【0044】
鍔部350の表面が粗面であるとき、鍔部350の上端部350Aは、入射面320の頂点よりも高いことが好ましい(
図6D参照)。鍔部350の上端部350Aを、入射面320の頂点よりも高くすると、鍔部350の粗面の面積を増やすことができるので、散乱効果をより高めることができる。それにより、光軸LAから離れる方向に拡がる光をより低減しうる。鍔部350の領域まで出射面330を延長し、出射面330の延長部分を粗面化するよりも、出射面330とは区分して鍔部350を形成し、鍔部350の表面を粗面化するほうが製造も容易である。
【0045】
このように、発光装置200から出射される光が、光軸LA近傍では光が拡がりやすく、かつ光軸LAから離れる位置では光が拡がりにくくするためには、前述の通り、少なくとも1)光束制御部材が、少なくとも発光素子220からθ1=81°で出射する光が後述する光束制御部材300の裏面に入射するように配置されており(構成1)、かつ2)出射面330が、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点を有するように形成されていること(構成3)が好ましい。さらに、3)入射面320、出射面330および鍔部350の表面の少なくとも一つが粗面であること(構成4)、4)入射面320の頂点付近(光軸LA近傍)の傾斜が従来よりも緩やかに形成されていること(構成2)、の少なくとも一方をさらに満たすことがより好ましい。
【0046】
任意に形成される複数の脚部360は、光束制御部材300の裏側から突出している略円柱状の部材である。複数の脚部360は、発光素子220に対して適切な位置に光束制御部材300を支持する(
図6Bおよび
図6C参照)。
【0047】
本実施の形態に係る光束制御部材の作用について、
図8と
図9を対比しながら説明する。
図8は、
図6に示される光束制御部材の光路図であり、
図9は、比較用の光束制御部材の光路図である。なお、
図8および
図9において、発光素子の発光中心から出射される光の光軸LAに対する角度は同じである。
【0048】
従来の発光装置10は、光束制御部材14の裏面20の発光素子12からの高さが低く、θ1=81°で出射する光は、光束制御部材14の裏面20に入射せず、入射面16に入射する。したがって、光束制御部材14の裏面20に入射する光の割合は少ない。また、入射面16に入射した光は、光束制御部材14内を通った後、鍔部22に入射し、光軸LAから離れる方向(水平方向)に拡がるように出射される(
図9参照)。さらに、光束制御部材14の出射面18は、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点を有しない(後述する
図10B参照)。つまり、出射面18(特に第2出射面18bの最高点から第3出射面18cにわたる部分)の傾斜の変化率が徐々に増大するように形成されている。したがって、入射面16の上方に入射した光は、出射面18で光軸LAから離れる方向に拡がるように出射されやすい。
【0049】
これに対し、本実施の形態に係る発光装置200では、光束制御部材300の裏面の発光素子220からの高さが高く、θ1=81°で出射する光が、光束制御部材300の裏面340に入射する。したがって、発光素子220から出射する光のうち光束制御部材300の裏面340に入射する光の割合が、従来の発光装置よりも多い。光束制御部材300の裏面340に入射した光は、光束制御部材300内で立ち上がるように屈折される(
図8参照)。
さらに、本実施の形態に係る発光装置200では、光束制御部材300の出射面330が、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点を有するように形成されている(
図10A参照)。つまり、出射面330(特に、
図6Dの第2出射面330bの最高点から第3出射面330cにわたる部分)の傾斜の変化率が徐々に減少するように形成されている。したがって、入射面320で入射して光軸LA近傍で出射面330から出射する光は適度に拡がりやすく、かつ入射面320で入射して光軸LAから離れた位置で出射する光は拡がりにくい。このように、出射面330の形状を、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点を有するように形成することで、入射面320から光束制御部材300に入射した光を出射面330から出射させるときに、拡がり過ぎないようにすることができる。
【0050】
[シミュレーション]
(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)
図8の発光装置200において、入射面320、出射面330を表面粗さRa0.1μmの粗面とし、鍔部350の表面を表面粗さRa0.4μmの粗面とし、光束制御部材300の裏面340の発光素子220の発光中心からの高さ(光束制御部材300と発光素子220との隙間)を0.4mmとし、実施の形態1に係る発光装置Aとした。さらに、比較のため、光束制御部材300を
図9に示される光束制御部材に変更した以外は発光装置Aと同様に構成したものを、比較用の発光装置Dとした。
【0051】
そして、実施の形態1に係る発光装置Aと比較用の発光装置Dについて、θ1を0°から75°まで変化させたときのθ2の変化をシミュレーションした。各発光装置における光束制御部材のパラメーターを以下のように設定した。
(共通のパラメーター)
・光束制御部材の外径:15mm
・出射面の外径:14mm
・凹部の開口径:3.5mm
・発光素子の高さ:0.5mm
・発光素子の大きさ:2.5mm×2.5mm
【0052】
図10Aは、実施の形態1に係る発光装置Aのシミュレーション結果であり、
図10Bは、比較用の発光装置Dのシミュレーション結果である。
【0053】
図10Bに示される曲線は、変曲点を有しない。特に、θ1が20°付近を超えてからは、θ1の増加に伴い、θ2の変化率が徐々に増大している。つまり、第2出射面18bの最高点から第3出射面18cにわたる面の傾斜の変化率が、θ1の増加に伴い、徐々に増大していることがわかる(
図8参照)。
【0054】
これに対して、
図10Aに示される曲線は、変曲点を有している。特に、変曲点を過ぎて下に凸となる曲線付近では、θ1の増加に伴い、θ2の変化率が徐々に減少している。つまり、第2出射面330bの最高点から第3出射面330cにわたる面の傾斜の変化率が、θ1の増加に伴い、徐々に減少していることがわかる(
図6D参照)。
【0055】
(2.配向分布のシミュレーション)
前述の(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)で設定した発光装置Aと、入射面320、出射面330および鍔部350の表面のすべてを鏡面とした以外は発光装置Aと同様に構成したものを実施の形態2に係る発光装置Bとし、光束制御部材300の裏面340の発光中心からの高さ(光束制御部材300と発光素子220との隙間)を0.2mmとした以外は発光装置Aと同様に構成したものを実施の形態3に係る発光装置Cとした。さらに、比較のため、前述の(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)で設定した比較用の発光装置Dと、出射面330および鍔部350の表面のすべてを鏡面とし、かつ光束制御部材の裏面の発光中心からの高さを0.2mmとした以外は発光装置Dと同様としたものを比較用の発光装置Eとした。
【0056】
これらの発光装置A〜Eの配向分布をシミュレーションした。まず、発光装置A〜Eの発光素子220の発光中心を原点とする仮想半球を設定した。この仮想半球の原点を通る光軸LAを含む断面(方位角0°)において、測定機と発光素子220の発光中心とを結ぶ線が光軸LAに対してなす角度(極角)が−90°〜+90°となるように、測定機を仮想半球の周面上に沿って動かしながら、2°毎に光度を測定した。さらに、前述の断面と直交する仮想半球の断面(方位角90°)についても、同様の測定を行った。そして、方位角が0°のときの分布と、方位角が90°のときの分布との平均値をとり、配向分布とした。各発光装置における発光素子と光束制御部材のパラメーターは、前述の(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)と同様とした。また、仮想半球の半径は、1mとした。
【0057】
図11Aは、配向分布を示すグラフである。
図11Aにおいて、横軸は極角(°)を、縦軸は光度(cd)を示している。
図11Bは、光度がピークとなる極角を、サンプル毎にまとめたグラフである。
図11Bにおいて、横軸はサンプルの種類を、縦軸は光度がピークとなる極角(°)を示している。
【0058】
図11Aから、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cは、極角が0°での光度が、比較用の発光装置DおよびEよりも高く、光度がピークとなる極角が、比較用の発光装置DおよびEよりも小さいことがわかる。つまり、比較用の発光装置DおよびEでは、水平方向に近い部分(−80°および80°付近)で光度がピークとなるのに対し、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cでは、直上方向に近い部分(−60°または60°付近)で光度がピークとなることがわかる(
図11B参照)。また、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cの光度は、水平方向に近い部分(約−90°〜−100°の範囲および約90°〜100°の範囲)では、比較用の発光装置DおよびEの光度よりも低いことがわかる。つまり、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cは、比較用の発光装置DおよびEよりも発光素子220の光軸LA近傍で光が拡がりやすく、かつ光軸LAから離れる方向へは光が拡がりにくいことがわかる。
【0059】
(3.光線到達面のシミュレーション)
前述の(2.配向分布のシミュレーション)における、実施の形態1に係る発光装置Aと比較用の発光装置Dの測定結果から、発光素子220から出射された光が、光束制御部材に入射する面の内訳を、それぞれシミュレーションした。各発光装置における発光素子と光束制御部材のパラメーターは、前述の(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)と同様とした。
【0060】
図12Aは、発光素子220から出射された光が光軸LAに対してなす角度(極角)を変えたときの、発光素子220から出射された光が入射する光束制御部材の面の内訳を示す計算結果である。
図12Aにおいて、横軸は発光素子から出射される光の出射位置を、縦軸は光軸に対する角度、即ち極角(°)を示している。
図12Aにおいて、中心(C)は、発光素子220の発光中心から出射された光について、+側(R)は、発光素子220の発光中心からプラス側の発光面の端部から出射された光について、−側(L)は、発光素子220の発光中心からマイナス側の発光面の端部から出射された光について、それぞれ示したものである(
図12B参照)。
図13は、発光素子から出射される光について、光軸方向(0°)から任意の極角までの円錐状の範囲内に出射される光束の全光束に対する比率を示す計算結果(積み上げグラフ)である。
図13において、横軸は極角(°)を、縦軸は極角毎の全周全光束に対する光束比率(積算値)(%)を示している。
【0061】
図12Aから、実施の形態1に係る発光装置Aは、比較用の発光装置Dよりも、光束制御部材の裏面に入射する光の割合(斜線部分)が多いことがわかる。
【0062】
具体的には、比較用の発光装置Dでは、極角が0°以上86°未満の光が光束制御部材の入射面に入射し、極角が86°〜90°の光が光束制御部材の裏面に入射することがわかる(
図12Aの比較用の中心(C)参照)。また、
図13から、極角が0°以上86°未満の光は、全光束に対して約95%に相当し、極角が86°〜90°の光は、全光束に対して約5%に相当することがわかる。これらのことから、全光束に対して約95%に相当する光が光束制御部材の入射面に入射し、全光束に対して約5%に相当する光が光束制御部材の裏面に入射することがわかる。
【0063】
これに対して実施の形態1の発光装置Aでは、極角が0°以上77°未満の光が光束制御部材の入射面に入射し、極角が77°〜90°の光が光束制御部材の裏面に入射することがわかる(
図12Aの本実施の形態の中心(C)参照)。また、
図13から、極角が0°以上77°未満の光は、全光束に対して約85%に相当し、極角が77°〜90°の光は、全光束に対して約15%に相当することがわかる。これらのことから、全光束に対して約85%に相当する光が光束制御部材の入射面に入射し、全光束に対して約15%に相当する光が光束制御部材の裏面に入射することがわかる。
【0064】
(4.照度分布のシミュレーション)
前述の(2.配向分布のシミュレーション)において、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cと比較用の発光装置D〜Eをそれぞれ配置したときの、発光装置上の仮想領域(面光源装置における光拡散部材上に相当)における照度分布をシミュレーションした結果を示す。
【0065】
各発光装置における発光素子と光束制御部材のパラメーターは、前述の(1.光束制御部材の出射面形状のシミュレーション)と同様とした。さらに、各発光装置におけるパラメーターを、以下のように設定した。
(共通のパラメーター)
・基板表面から仮想領域までの距離:20mm
・発光素子の中心同士の間隔:40mm
【0066】
図14Aは、実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cおよび比較用の発光装置D〜Eの照度分布のシミュレーション結果である。
図14Bは、
図14Aにおける発光装置Aの各相対照度での分布幅を1としたときの、発光装置BおよびCの同一の相対照度での分布幅を示すシミュレーション結果である。
図14Aにおいて、横軸は光軸LAからの水平方向の距離(mm)を、縦軸は照度(lx)を示している。
図14Bにおいて、横軸は光軸LAでの照度を100としたときの相対照度(%)を、縦軸は発光装置Aの各相対照度での分布幅に対する発光装置B及びCの同一の相対照度での分布幅を示している。
【0067】
図14Aから、比較用の発光装置DおよびEは、発光素子220の光軸LA近傍の照度が低く、ブロードな照度分布を有することがわかる。これに対して実施の形態1〜3に係る発光装置A〜Cは、発光素子220の光軸LA近傍の照度が高く、シャープな照度分布を有することがわかる。
【0068】
図14Bから、発光装置Aは、発光装置BおよびCよりも相対照度90〜70%での分布幅が広く、相対照度50〜30%での分布幅が狭いことがわかる。つまり、発光装置Aは、発光装置BおよびCよりも、光軸LA近傍で照度が高く、かつ光軸LAから離れた領域では照度が低くなっている。したがって、発光装置A〜Cの中でも、発光装置Aが特に好ましい。
【0069】
なお、本実施の形態では、光束制御部材300の裏面340が、プリズム形状を有しているが、これに限定されず、プリズム形状を有しない鏡面であってもよい。
【解決手段】発光装置は、発光素子と、光束制御部材とを有する。光束制御部材は、入射面と出射面とを有する。発光素子の光軸を含む前記発光装置の断面において、光束制御部材は、その中心軸と光軸とが一致し、かつ発光素子の発光中心を基点として光軸に対する角度をθ1としたとき、少なくともθ1=81°で発光素子の発光中心から出射する光が光束制御部材の裏面に入射するように配置され、かつ発光素子の発光中心から前記光軸に対して角度θ1で出射する光の前記出射面上への到達点を点Pとし、点Pにおける出射面の接線と、光軸と直交する線とがなす角度をθ2としたとき、出射面は、横軸をθ1、縦軸をθ2とするグラフの曲線が変曲点を有するように形成されている。