(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162287
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 3/04 20060101AFI20170703BHJP
F16D 65/22 20060101ALI20170703BHJP
B66D 5/30 20060101ALI20170703BHJP
F16D 121/22 20120101ALN20170703BHJP
【FI】
H02P3/04 B
F16D65/22
B66D5/30 B
F16D121:22
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-90408(P2016-90408)
(22)【出願日】2016年4月28日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100090011
【弁理士】
【氏名又は名称】茂泉 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100194939
【弁理士】
【氏名又は名称】別所 公博
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 博行
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠司
【審査官】
▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭49−012418(JP,U)
【文献】
特開2008−161049(JP,A)
【文献】
実開昭63−182699(JP,U)
【文献】
米国特許第04582174(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/04
B66D 5/30
F16D 65/22
F16D 121/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源からの電力が、1つのスイッチによってモータおよびブレーキ装置に供給されるシステムにおいて、前記モータの回転を制動する前記ブレーキ装置であって、
前記モータの回転軸の回転を制動する制動部と、
前記制動部による制動力を通電により解除するブレーキコイルと、
前記ブレーキコイルに供給する電力を制御するブレーキ制御部と、を備え、
前記ブレーキ制御部は、
前記交流電源からの交流電圧を整流する整流器と、
スイッチング素子と、前記スイッチング素子に並列に接続された放電抵抗とからなり、前記ブレーキコイルへの電力遮断時に、前記放電抵抗を介して前記ブレーキコイルに蓄積されたエネルギーを放出する放電部と、を有し、
前記放電抵抗は、放電時において、放電電流が前記放電抵抗、前記モータの巻線、前記整流器の順で流れる経路に接続される
ブレーキ装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタである
請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記整流器は、サイリスタである
請求項1または請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記ブレーキ制御部は、前記交流電源からの交流電圧の位相に応じて、前記サイリスタを点弧制御することで、前記ブレーキコイルに供給する電力を制御する
請求項3に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばクレーンに適用されるモータに設けられるブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレーン用のブレーキ装置として、単相交流電源により直流電磁石を動作させる無電圧作動のブレーキ装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
図5は、クレーンシステムにおける従来のブレーキ装置を周辺機器とともに示す回路構成図である。
図5において、このクレーンシステムは、交流電源50からの電力が、1つのコンタクタスイッチ60によってモータ70およびブレーキ装置80に供給されるシステムである。モータ70は、モータコイルおよびモータコイルの抵抗成分を有しており、抵抗値Rmとして表される。
【0004】
ブレーキ装置80は、モータ70の回転を制動する装置であって、モータ70の回転軸の回転を制動する制動部81と、制動部81による制動力を通電により解除するブレーキコイル82と、ブレーキコイル82に供給する電力を制御するブレーキ制御部90とを備えている。ブレーキコイル82は、抵抗値Rbの抵抗成分を有している。
【0005】
一般的に、クレーンシステムにおけるブレーキ装置80は、ブレーキコイル82に通電しない状態では、モータ70の回転軸に取り付けられたブレーキドラムに対して、ばねの機械力により、制動部81であるブレーキシューが押し付けられて、回転軸の回転を制動する制動力が働くようになっている。
【0006】
また、このブレーキ装置80は、ブレーキコイル82に通電した状態では、ブレーキコイル82に発生する電磁力により、ばねの機械力に抗して、ブレーキシューを吸引してブレーキドラムから離間させることにより、回転軸への制動力が解放されて、ブレーキが解除されるようになっている。なお、ブレーキ機構は、ドラムブレーキに限定されず、ディスクブレーキやその他のブレーキ機構であってもよい。
【0007】
ブレーキ制御部90は、交流電源50からの交流電圧を整流する整流器であるサイリスタ91と、逆流防止のダイオード92と、スイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)93およびIGBT93に並列に接続された放電抵抗94からなる放電部と、サイリスタ91およびIGBT93の駆動を制御する制御回路95を有している。
【0008】
放電抵抗94は、抵抗値Rを有している。また、放電部は、ブレーキコイル82への電力遮断時に、放電抵抗94を介してブレーキコイル82に蓄積されたエネルギー(残留電圧)を放出する。また、ブレーキ制御部90は、抵抗値rの配線抵抗を有している。なお、ブレーキ制御部90は、交流電源50からの交流電圧の位相に応じて、サイリスタ91を点弧制御することで、ブレーキコイル82に供給する電力を制御する。
【0009】
以下、上記構成のブレーキ装置80の動作について説明する。まず、コンタクタスイッチ60がオンされるブレーキ解除時について説明する。コンタクタスイッチ60がオンである場合には、制御回路95に交流電源50から電力が供給され、制御回路95は、IGBT93に対して、IGBT動作信号をオンで出力する。
【0010】
また、制御回路95は、交流電源50からの正弦波形を有する交流電圧の位相に応じて、正の電圧が供給される任意のタイミングで、サイリスタ91を点弧させる、すなわちオンとなるサイリスタ点弧信号を出力する。
【0011】
なお、制御回路95は、ブレーキ解除時には、ブレーキコイル82に大電流を流して早く動作させるために、例えば0.5sec程度の期間、強励磁状態になるようにサイリスタ点弧信号を出力する。具体的には、制御回路95は、IGBT動作信号がオフになった次のタイミングで、強励磁状態になるようにサイリスタ点弧信号を出力する。
【0012】
また、制御回路95は、ブレーキ解除後には、ブレーキ解除状態を保持すべく、ブレーキ解除時よりも小さな電流をブレーキコイル82に流すために、弱励磁状態になるようにサイリスタ点弧信号を出力する。
【0013】
ここで、サイリスタ点弧信号がオンである場合には、
図6に示した破線の経路でブレーキコイル82に励磁電流が流れ、ブレーキが解除される。これに対して、サイリスタ点弧信号がオフである場合には、
図7に示した破線の経路で、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。
【0014】
次に、コンタクタスイッチ60がオフされるブレーキ動作時について説明する。コンタクタスイッチ60がオフされた直後は、交流電源50からの電力の供給はなくなるものの、モータコイルに蓄積されたエネルギー(残留電圧)により、制御回路95に電力が供給される。
【0015】
そのため、制御回路95は、IGBT93に対して、IGBT動作信号をオンで出力する。その後、モータコイルに蓄積されたエネルギーが低減し、制御回路95に印加される電圧がIGBT93の動作に係る所定の最低電圧を下回ると、IGBT動作信号はオフとなる。
【0016】
また、制御回路95は、モータコイルに蓄積されたエネルギーによる交流電圧の位相に応じて、正の電圧が供給される任意のタイミングで、サイリスタ点弧信号を出力する。なお、制御回路95は、モータコイルに蓄積されたエネルギーが低減し、制御回路95に印加される電圧がサイリスタ91の動作に係る所定の最低電圧を下回ると、サイリスタ点弧信号は出力されなくなる。
【0017】
ここで、コンタクタスイッチ60がオフされた直後において、サイリスタ点弧信号がオンである場合には、モータコイルおよびブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーにより、
図8に示した破線の経路でブレーキコイル82に励磁電流が流れ、ブレーキの解除状態が維持される。これに対して、サイリスタ点弧信号がオフである場合には、上記
図7に示した破線の経路で、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。
【0018】
なお、IGBT動作信号がオフになると、
図9に示した破線の経路で、放電抵抗94を介してブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れ、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーが放出される。その後、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーの放出が完了すると、ブレーキが閉動作(制動動作)する。
【0019】
このとき、ブレーキコイル82の放電時定数Tは、ブレーキコイル82のインダクタンスをLとすると、次式で表される。
【0020】
T=L/(R+Rb)
【0021】
続いて、
図10のタイミングチャートを参照しながら、コンタクタスイッチ60がオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態について説明する。
図10では、横軸に、コンタクタスイッチ60がオフされてからの時間を示し、縦軸に、上からサイリスタ点弧信号、IGBT動作信号およびブレーキコイル両端電圧を示している。なお、ブレーキコイル両端電圧には、制御回路95に印加される電圧を破線で併せて示している。
【0022】
図10において、コンタクタスイッチ60がオフされた後、制御回路95に印加される電圧が次第に低減する。このとき、IGBT動作信号がオフするまでは、サイリスタ点弧信号のオンまたはオフに応じて、上記
図8または
図7に示した破線の経路で電流が流れ、ブレーキの解除状態が維持される。
【0023】
次に、IGBT動作信号がオフになると、上記
図9に示した破線の経路で、放電抵抗94を介してブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。このとき、放電抵抗94を放電電流が流れることにより、ブレーキコイル82の両端には、放電抵抗94の電圧とは逆の電圧が現れる。
【0024】
その後、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーが放出され、ブレーキコイル82に発生する電磁力が、ばねの機械力よりも小さくなると、ばねの機械力により、ブレーキシューがブレーキドラムに押しつけられて、ブレーキが動作する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】三菱電機エンジニアリング株式会社カタログ、「三菱クレーン用電機品」、2015年2月作成、p38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、従来のブレーキ装置において、コンタクタスイッチ60をオフするタイミングによっては、モータコイルに蓄積されたエネルギーにより、IGBT動作信号がオフになった後に、サイリスタ点弧信号がオンになることがある。
【0027】
IGBT動作信号がオフになった後に、サイリスタ点弧信号がオンになると、モータコイルおよびブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が、放電抵抗94よりもインピーダンス(抵抗値)の低い(Rm+r<<R)モータコイルを経由して、上記
図8に示した破線の経路で流れることになる。
【0028】
この場合、サイリスタ91は、上記
図8に示した破線の経路で流れる電流が、保持電流以下になるまでターンオフせず、継続して点弧した状態になり、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が、放電抵抗94を流れなくなる。そのため、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーの放出が完了するまでに長時間を要するという問題がある。
【0029】
このとき、ブレーキコイル82から見ると、放電抵抗94とモータコイルの抵抗成分とが並列になっており、その合成抵抗値は、次式で表される。
【0030】
Rg=(Rm+r)・R/(Rm+r+R)
【0031】
この結果、ブレーキコイル82の放電時定数Tは、ブレーキコイル82のインダクタンスLを用いて、次式で表される。
【0032】
T=L・(Rm+r+R)/{(Rm+r)・R+Rb(Rm+r+R)}
【0033】
続いて、
図11のタイミングチャートを参照しながら、この場合において、コンタクタスイッチ60がオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態について説明する。
図11では、横軸に、コンタクタスイッチ60がオフされてからの時間を示し、縦軸に、上からサイリスタ点弧信号、IGBT動作信号およびブレーキコイル両端電圧を示している。なお、ブレーキコイル両端電圧には、制御回路95に印加される電圧を破線で併せて示している。
【0034】
図11において、コンタクタスイッチ60がオフされた後、制御回路95に印加される電圧が次第に低減する。このとき、IGBT動作信号がオフするまでは、サイリスタ点弧信号のオンまたはオフに応じて、上記
図8または
図7に示した破線の経路で電流が流れ、ブレーキの解除状態が維持される。
【0035】
次に、IGBT動作信号がオフになると、上記
図9に示した破線の経路で、放電抵抗94を介してブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。このとき、放電抵抗94を放電電流が流れることにより、ブレーキコイル82の両端には、放電抵抗94の電圧とは逆の電圧が現れる。
【0036】
その後、サイリスタ点弧信号が再びオンになると、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーの放出が中断され、再度上記
図8に示した破線の経路で電流が流れ、ブレーキの解除状態が維持されることになる。なお、このタイミングでは、強励磁状態になるようにサイリスタ点弧信号が出力される。
【0037】
続いて、サイリスタ点弧信号がオフになった後も、サイリスタ91がターンオフせず、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流は、放電抵抗94を流れない。そのため、ブレーキ動作遅延が生じ、ブレーキコイル82に発生する電磁力が、ばねの機械力よりも小さくなり、ブレーキが動作するまでに長時間を要することになる。
【0038】
なお、IGBT動作信号がオフになった後に、サイリスタ点弧信号がオンになる場合以外にも、サイリスタ91の点弧信号が、IGBT動作信号がオフになる前の僅かな時間までに出力された場合(例えば、
図10において、IGBT動作信号がオフになる直前までにサイリスタ点弧信号がオンされた場合)にも、ブレーキコイル82に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が、モータコイルを経由して、上記
図7に示した破線の経路で流れることになる。
【0039】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ブレーキコイルへの電力遮断時に、ブレーキ動作遅延を生じることなく、速やかにブレーキを動作させることができるブレーキ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
この発明に係るブレーキ装置は、交流電源からの電力が、1つのスイッチによってモータおよびブレーキ装置に供給されるシステムにおいて、モータの回転を制動するブレーキ装置であって、モータの回転軸の回転を制動する制動部と、制動部による制動力を通電により解除するブレーキコイルと、ブレーキコイルに供給する電力を制御するブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御部は、交流電源からの交流電圧を整流する整流器と、スイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続された放電抵抗とからなり、ブレーキコイルへの電力遮断時に、放電抵抗を介してブレーキコイルに蓄積されたエネルギーを放出する放電部と、を有し、放電抵抗は、
放電時において、放電電流が放電抵抗、モータの巻線、整流器の順で流れる経路に接続されるものである。
【発明の効果】
【0041】
この発明に係るブレーキ装置によれば、モータの回転軸の回転を制動する制動部と、制動部による制動力を通電により解除するブレーキコイルと、ブレーキコイルに供給する電力を制御するブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御部は、交流電源からの交流電圧を整流する整流器と、スイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続された放電抵抗とからなり、ブレーキコイルへの電力遮断時に、放電抵抗を介してブレーキコイルに蓄積されたエネルギーを放出する放電部と、を有し、放電抵抗は、モータおよび整流器を通る経路に接続されている。
そのため、ブレーキコイルへの電力遮断時に、ブレーキ動作遅延を生じることなく、速やかにブレーキを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置を周辺機器とともに示す回路構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置おける電流経路を示す説明図である。
【
図3】この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置おける電流経路を示す説明図である。
【
図4】この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置において、コンタクタスイッチがオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態を示すタイミングチャートである。
【
図5】従来のブレーキ装置を周辺機器とともに示す回路構成図である。
【
図6】従来のブレーキ装置における電流経路を示す説明図である。
【
図7】従来のブレーキ装置における電流経路を示す説明図である。
【
図8】従来のブレーキ装置における電流経路を示す説明図である。
【
図9】従来のブレーキ装置における電流経路を示す説明図である。
【
図10】従来のブレーキ装置において、コンタクタスイッチがオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態を示すタイミングチャートである。
【
図11】従来のブレーキ装置において、コンタクタスイッチがオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、この発明に係るブレーキ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。なお、この発明に係るブレーキ装置は、クレーンに適用されるモータに設けられるものに限定されず、エレベータの巻上機に適用されるモータに設けられてもよい。
【0044】
実施の形態1.
図1は、クレーンシステムにおけるこの発明の実施の形態1に係るブレーキ装置を周辺機器とともに示す回路構成図である。
図1において、このクレーンシステムは、交流電源1からの電力が、1つのコンタクタスイッチ2によってモータ3およびブレーキ装置4に供給されるシステムである。モータ3は、モータコイルおよびモータコイルの抵抗成分を有しており、抵抗値Rmとして表される。
【0045】
ブレーキ装置4は、モータ3の回転を制動する装置であって、モータ3の回転軸の回転を制動する制動部11と、制動部11による制動力を通電により解除するブレーキコイル12と、ブレーキコイル12に供給する電力を制御するブレーキ制御部20とを備えている。ブレーキコイル12は、抵抗値Rbの抵抗成分を有している。
【0046】
ブレーキ制御部20は、交流電源1からの交流電圧を整流する整流器であるサイリスタ21と、逆流防止のダイオード22と、自己消弧型のスイッチング素子(例えば、IGBT23)およびIGBT23に並列に接続された放電抵抗24からなる放電部と、サイリスタ21およびIGBT23の駆動を制御する制御回路25を有している。なお、スイッチング素子は、IGBTに限定されず、自己消弧型であれば、他のスイッチング素子であってもよい。
【0047】
放電抵抗24は、抵抗値Rを有している。また、放電部は、ブレーキコイル12への電力遮断時に、放電抵抗24を介してブレーキコイル12に蓄積されたエネルギー(残留電圧)を放出する。ここで、放電抵抗24は、モータ3およびサイリスタ21を通る経路に接続されている。
【0048】
また、ブレーキ制御部20は、抵抗値rの配線抵抗を有している。なお、ブレーキ制御部20は、交流電源1からの交流電圧の位相に応じて、サイリスタ21を点弧制御することで、ブレーキコイル12に供給する電力を制御する。
【0049】
制御回路25は、交流電源1から電力が供給され、IGBT23に対して、IGBT動作信号を出力する。また、制御回路25は、交流電源1からの正弦波形を有する交流電圧の位相に応じて、正の電圧が供給される任意のタイミングで、サイリスタ21を点弧させる、すなわちオンとなるサイリスタ点弧信号を出力する。
【0050】
以下、上記構成のブレーキ装置4の動作について説明する。なお、コンタクタスイッチ2がオンされるブレーキ解除時、およびコンタクタスイッチ2がオフされるブレーキ動作時における通常の動作は、上述した従来のブレーキ装置と同等であるので、説明を省略する。ここでは、IGBT動作信号がオフになった後に、サイリスタ点弧信号がオンになる場合について説明する。
【0051】
IGBT動作信号がオフになった後に、サイリスタ点弧信号がオンになると、モータコイルおよびブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が、
図2に示した破線の経路で流れることになる。このとき、この放電電流は、ブレーキコイル12の抵抗成分および放電抵抗24を流れることにより、ブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーが速やかに放出される。
【0052】
その後、サイリスタ点弧信号がオフになると、ブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が、
図3に示した破線の経路で流れることになる。このとき、この放電電流は、ブレーキコイル12の抵抗成分および放電抵抗24を流れることにより、ブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーが速やかに放出される。
【0053】
続いて、
図4のタイミングチャートを参照しながら、この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置4において、コンタクタスイッチ2がオフされてから、ブレーキが動作するまでの状態について説明する。
図4では、横軸に、コンタクタスイッチ2がオフされてからの時間を示し、縦軸に、上からサイリスタ点弧信号、IGBT動作信号およびブレーキコイル両端電圧を示している。なお、ブレーキコイル両端電圧には、制御回路25に印加される電圧を破線で併せて示している。
【0054】
図4において、コンタクタスイッチ2がオフされた後、制御回路25に印加される電圧が次第に低減する。このとき、IGBT動作信号がオフするまでは、サイリスタ点弧信号のオンまたはオフに応じて、ブレーキコイル12に電流が流れ、ブレーキの解除状態が維持される。
【0055】
次に、IGBT動作信号がオフになると、上記
図3に示した破線の経路で、放電抵抗24を介してブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。このとき、放電抵抗24を放電電流が流れることにより、ブレーキコイル12の両端には、放電抵抗24の電圧とは逆の電圧が現れる。
【0056】
その後、サイリスタ点弧信号が再びオンになった場合であっても、上記
図2に示した破線の経路で、放電抵抗24を介してブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーに応じた放電電流が流れる。そのため、ブレーキコイル両端電圧は、サイリスタ点弧信号がオフの場合と同様に低減され、ブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーの放出が完了すると、ブレーキが閉動作(制動動作)する。
【0057】
すなわち、この発明の実施の形態1に係るブレーキ装置では、IGBT動作信号がオフになった後、サイリスタ点弧信号がオンになった場合であっても、必ず放電電流を放電抵抗24に流すことで、従来のブレーキ装置か部品点数を増やすことなく、ブレーキコイル12に蓄積されたエネルギーが速やかに放出することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1によれば、モータの回転軸の回転を制動する制動部と、制動部による制動力を通電により解除するブレーキコイルと、ブレーキコイルに供給する電力を制御するブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御部は、交流電源からの交流電圧を整流する整流器と、スイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続された放電抵抗とからなり、ブレーキコイルへの電力遮断時に、放電抵抗を介してブレーキコイルに蓄積されたエネルギーを放出する放電部と、を有し、放電抵抗は、モータおよび整流器を通る経路に接続されている。
そのため、ブレーキコイルへの電力遮断時に、ブレーキ動作遅延を生じることなく、速やかにブレーキを閉動作(制動動作)させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 交流電源、2 コンタクタスイッチ、3 モータ、4 ブレーキ装置、11 制動部、12 ブレーキコイル、20 ブレーキ制御部、21 サイリスタ、22 ダイオード、23 IGBT、24 放電抵抗、25 制御回路。
【要約】
【課題】ブレーキコイルへの電力遮断時に、ブレーキ動作遅延を生じることなく、速やかにブレーキを動作させることができるブレーキ装置を得る。
【解決手段】交流電源からの電力が、1つのスイッチによってモータおよびブレーキ装置に供給されるシステムにおいて、モータの回転を制動するブレーキ装置であって、モータの回転軸の回転を制動する制動部と、制動部による制動力を通電により解除するブレーキコイルと、ブレーキコイルに供給する電力を制御するブレーキ制御部と、を備え、ブレーキ制御部は、交流電源からの交流電圧を整流する整流器と、スイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続された放電抵抗とからなり、ブレーキコイルへの電力遮断時に、放電抵抗を介してブレーキコイルに蓄積されたエネルギーを放出する放電部と、を有し、放電抵抗は、モータおよび整流器を通る経路に接続されるものである。
【選択図】
図1