(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162308
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】塩類製造システム
(51)【国際特許分類】
C01D 3/06 20060101AFI20170703BHJP
C01D 3/22 20060101ALI20170703BHJP
F26B 17/20 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
C01D3/06 G
C01D3/22
F26B17/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-210708(P2016-210708)
(22)【出願日】2016年10月27日
【審査請求日】2017年3月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502145988
【氏名又は名称】日中東北物産有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】近藤 賢市
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−128525(JP,A)
【文献】
特開2014−117653(JP,A)
【文献】
特開2014−202199(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/035174(WO,A1)
【文献】
特開2012−213767(JP,A)
【文献】
特開2004−262676(JP,A)
【文献】
特開2002−306118(JP,A)
【文献】
特開2004−244277(JP,A)
【文献】
特開2015−227266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 3/00 − 3/26
F26B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを燃料とするボイラー装置(10)と、
前記ボイラー装置(10)の燃焼熱によって海水を濃縮し、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下の濃縮海水(W)を生成する海水濃縮部(20)と、
前記海水濃縮部(20)で生成した前記濃縮海水(W)を前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水(W)中の水分を蒸発させ、当該濃縮海水(W)に浸漬したままの状態で塩類の結晶(C)を成長させる結晶成長部(30)と、
前記結晶成長部(30)で成長した塩類の結晶(C)を乾燥させる結晶乾燥部(40)と、
を備え、
前記濃縮海水(W)から取り出した塩類の結晶(C)に、当該濃縮海水(W)を噴射する成長促進部(36)、
をさらに備えた塩類製造システム。
【請求項2】
バイオマスを燃料とするボイラー装置(10)と、
前記ボイラー装置(10)の燃焼熱によって海水を濃縮し、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下の濃縮海水(W)を生成する海水濃縮部(20)と、
前記海水濃縮部(20)で生成した前記濃縮海水(W)を前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水(W)中の水分を蒸発させ、当該濃縮海水(W)に浸漬したままの状態で塩類の結晶(C)を成長させる結晶成長部(30)と、
前記結晶成長部(30)で成長した塩類の結晶(C)を乾燥させる結晶乾燥部(40)と、
を備え、
前記結晶成長部(30)が、前記濃縮海水(W)中に設けられた搬送装置(33)と、当該搬送装置(33)の搬送速度を制御する搬送速度制御部(34)とを有し、前記搬送装置(33)による搬送中に、塩類の結晶(C)が所定の大きさに成長するように、当該搬送速度制御部(34)が前記搬送速度を制御する塩類製造システム。
【請求項3】
バイオマスを燃料とするボイラー装置(10)と、
前記ボイラー装置(10)の燃焼熱によって海水を濃縮し、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下の濃縮海水(W)を生成する海水濃縮部(20)と、
前記海水濃縮部(20)で生成した前記濃縮海水(W)を前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水(W)中の水分を蒸発させ、当該濃縮海水(W)に浸漬したままの状態で塩類の結晶(C)を成長させる結晶成長部(30)と、
前記結晶成長部(30)で成長した塩類の結晶(C)を乾燥させる結晶乾燥部(40)と、
を備え、
前記結晶成長部(30)が、前記濃縮海水(W)中に設けられ、当該濃縮海水(W)中に沈んでいる塩類の結晶(C)を掃引して回収する回収装置(37)を有する塩類製造システム。
【請求項4】
前記結晶成長部(30)が、側壁と天井を有する結晶成長室(30)であって、前記側壁又は前記天井の少なくとも一部が、当該結晶成長室(30)外の太陽光を透過可能な素材からなる請求項1から3のいずれか1項に記載の塩類製造システム。
【請求項5】
前記結晶乾燥部(40)が、スクリュフィーダ式の乾燥装置(44)を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の塩類製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海水から塩化ナトリウムなどの塩類を製造する塩類製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食塩(塩化ナトリウムが主成分)、融雪剤(塩化カルシウムが主成分)、にがり(塩化マグネシウムが主成分)などの海水由来の塩類の製造には、従来、入浜式塩田、流下式枝条架式塩田などの塩田において行う方法、平釜を用いて海水を加熱蒸発する方法、イオン交換膜を用いる方法などが採用されてきた。例えば、入浜式塩田法は、海に隣接する塩田に碁盤目状の溝(浜溝)を形成し、潮の干満を利用して、この浜溝に海水を引き込む。この海水は、毛細管現象によって砂の表面に浸み出し、この表面に塩分を多く含む砂の層が形成される。この塩分を多く含む砂を集めて、海水とともに沼井(ぬい)と呼ばれる水路に投入する。この砂に含まれる塩分は、共に投入された海水中に溶け出し、海水の塩分濃度よりも高い塩分濃度の塩水(かん水)となる。このかん水を塩釜で加熱し、水分を蒸発させると、塩釜内に塩が残る。
【0003】
この塩田から製造された食塩(天然天日塩)は、ミネラルなどのうまみ成分を含み高い品質を有している。その一方で、塩田には広い土地を必要とするため、実施場所の制約を受ける問題がある。しかも、雨天が少ない時期に行う必要があるなどの気象条件の制約も受け、年数回程度しか実施できない(安定供給が難しい)という問題もある。この実施場所や気象条件の制約を受けない方法として、海水を加熱して煮詰める平釜法やイオン交換膜法がある。しかしながら、平釜法は、海水中に僅か3%程度しか含まれない塩分を取り出すために、大量の燃料を用いて水を蒸発させなければならず、エネルギー効率上問題がある。また、イオン交換膜法は、塩化ナトリウム以外の、塩のうまみの元になるミネラル分を除去してしまうため、うまみのない塩辛いだけの塩となってしまう問題がある。
【0004】
これらの問題を解決し得る方法の一つとして、例えば、特許文献1に示す淡水化システムを採用し得る。この淡水化システムは、主に海水から淡水を取り出すために用いられるが、淡水の副産物として塩化ナトリウムなどの塩類が生成される。この塩類は、海水由来の成分をそのまま含むため、うまみを有している。また、逆浸透膜によって海水の濃度を高める工程を経るため、海水をそのまま煮詰める平釜法と比較して、必要なエネルギーを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−117653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す淡水化システムにおいては、逆浸透膜を透過した濃縮塩水の塩分濃度は、5.5〜6%とそれほど高くないため(特許文献1の段落[0029])、この濃縮塩水を製塩装置に通したときの食塩回収効率を高めるのは困難である。また、この製塩装置においては、ローラにより回転するベルトに付着した濃縮塩水が液面上で乾燥し、析出した塩を回収するが(本文献の
図4)、この塩が濃縮塩水中で成長する時間がほとんど与えられないため、小粒の塩しか生成することができない。このため、少なくとも1mmの直径が必要な融雪剤などの塩類を製造する工程には適用できないという問題がある。
【0007】
そこで、この発明は、海水中の塩類を、効率良く粗大な結晶に成長させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明は、バイオマスを燃料とするボイラー装置と、前記ボイラー装置の燃焼熱によって海水を濃縮し、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下の濃縮海水を生成する海水濃縮部と、前記海水濃縮部で生成した前記濃縮海水を前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水中の水分を蒸発させ、当該濃縮海水に浸漬したままの状態で塩類の結晶を成長させる結晶成長部と、前記結晶成長部で成長した塩類の結晶を乾燥させる結晶乾燥部と、を備えた塩類製造システムを構成した。
【0009】
このように、バイオマスを燃料とするボイラー装置の燃焼熱を用いることで海水を速やかに濃縮することにより、塩類濃度を7%以上飽和濃度以下の濃度に高めて、結晶成長部での塩類の結晶成長を速やかに行うことができる。また、濃縮海水に浸漬したままの状態で塩類の結晶を成長させるようにしたので、この結晶を容易に粗大化することができる。この塩類濃度は、15%以上飽和濃度以下とするのがさらに好ましく、25%以上飽和濃度以下とするのがさらに好ましく、28%以上飽和濃度以下とするのがさらに好ましい。
【0010】
前記構成においては、前記濃縮海水から取り出した塩類の結晶に、当該濃縮海水を噴射する成長促進部、をさらに備えた構成とするのが好ましい。このように、ある程度の大きさに成長した塩類の結晶に、濃縮海水を噴射することにより、この結晶をさらに大きくすることができ、商品価値をさらに高めることができる。
【0011】
前記各構成においては、前記結晶成長部が、側壁と天井を有する結晶成長室であって、前記側壁または前記天井の少なくとも一部が、当該結晶成長室外の太陽光を透過可能な素材からなる構成とすることができる。このように構成することにより、この太陽光を透過可能な素材から太陽光を取り込んで、結晶成長室(結晶成長部)の室温を上昇させ、濃縮海水からの水分の蒸発を促進することができる。これにより、塩類の結晶の成長をさらに早めることができる。
【0012】
前記各構成においては、前記結晶成長部が、前記濃縮海水中に設けられた搬送装置と、当該搬送装置の搬送速度を制御する搬送速度制御部とを有し、前記搬送装置による搬送中に、塩類の結晶が所定の大きさに成長するように、当該搬送速度制御部が、前記搬送速度を制御する構成とすることができる。このように、搬送速度を制御することにより、結晶成長部において、塩類の結晶を所定の大きさに成長させることができる。
【0013】
あるいは、前記結晶成長部が、前記濃縮海水中に設けられ、当該濃縮海水中に沈んでいる塩類の結晶を掃引して回収する回収装置を有する構成とすることもできる。このように、回収装置を設けることにより、濃縮海水中で所定の大きさに成長した塩類の結晶を容易かつ確実に回収することができる。
【0014】
前記各構成においては、前記結晶乾燥部が、スクリュフィーダ式の乾燥装置を有する構成とすることができる。このように、スクリュフィーダ式の乾燥装置を用いることにより、塩類の結晶を速やかに乾燥して、回収までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、バイオマスを用いたボイラー装置で、海水を濃縮し、塩類の結晶が濃縮海水に浸漬したままの状態とすることにより、この結晶を速やかに粗大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係る塩類製造システムの一実施形態を示す全体図
【
図2】
図1に示す塩類製造システムの結晶成長部を示す図
【
図4】
図1に示す塩類製造システムの結晶乾燥部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る塩類製造システムの一実施形態を
図1に示す。この塩類製造システムは、海水から、食塩、融雪剤、にがりなどの塩類を所定の大きさ(例えば1mm以上)の結晶状態として生成するためのシステムであり、ボイラー装置10、海水濃縮部20、結晶成長部30、および、結晶乾燥部40を主要な構成要素としている。
【0018】
海水濃縮部20には、ポンプ1を用いて海Sから汲み上げた海水をろ過する第一濾過器2、第二濾過器3と、ろ過した海水を一時的に貯めておく貯水槽4が併設されている。各濾過器2、3および貯水槽4には、ドレン管2a、3a、4aが設けられるとともに、送水管5によって、海水濃縮部20まで順次接続されている。
【0019】
ボイラー装置10は、バイオマスを燃料としている。このバイオマスとして、木材チップを採用することができる。この木材チップは、森林の整備において大量に発生する間伐材を加工することによって得られる。このように、間伐材を使用することで、環境負荷を抑制しつつボイラー装置10を低コストで稼働することができる。ボイラー装置10から発生した燃焼熱は、海水濃縮部20において利用されるほか、この燃焼熱によって発生した水蒸気により、発電を行うことができる。この電力は、後述するベルトコンベア33などの装置を駆動するために用いられるほか、余剰電力は売電することも可能である。また、ボイラー装置10から発生した灰は、農業用土壌改良剤(肥料)などとして利用することができる。
【0020】
海水濃縮部20は、ボイラー装置10に併設されており、このボイラー装置10の燃焼熱によって海水を濃縮して濃縮海水Wを生成する機能を有している。この濃縮海水Wの濃度は、生成する塩類の種類によって異なり、例えば、食塩(塩化ナトリウムが主成分)の場合は、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下、好ましくは15%以上飽和濃度以下、さらに好ましくは25%以上28%以下とされる。また、にがり(塩化マグネシウムが主成分)の場合は、15%以上飽和濃度以下、好ましくは25%以上飽和濃度以下、さらに好ましくは28%以上飽和濃度以下とされる。濃縮海水Wは、濃縮管21を通って結晶成長部30に送られる。
【0021】
図2に示す結晶成長部30は、海水濃縮部20で生成した濃縮海水Wを前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水W中の水分を蒸発させ、この濃縮海水W中に溶けている塩類の結晶Cを成長させる機能を有している。この成長は、塩類の結晶Cが常に濃縮海水Wに浸漬したままの状態で行われる。このように、結晶成長を濃縮海水Wに浸漬したままの状態で行うことにより、この結晶を粗大化することが可能となり、少なくとも1mmの直径が必要な融雪剤などに適した結晶Cを容易に製造することができる。
【0022】
結晶成長部30は、側壁と天井を有する結晶成長室30となっており、外気とは隔離されている。このように、外気と隔離することにより、埃などの不純物が塩類の結晶Cに混じるのを防止して、結晶Cの高品質化を図ることができる。また、側壁には、換気装置31が設けられおり、室内温度などを適宜調整できるようになっている。この結晶成長室30の側壁および天井は、結晶成長室30外の太陽光を透過可能なガラスから構成されている。このように、側壁などをガラスで構成して太陽光を導入することにより、濃縮海水W中の水分の蒸発を促進して、結晶成長を一層スムーズに行うことができる。
【0023】
結晶成長室30は、ボイラー装置10と導熱管32によって接続されている。ボイラー装置10からこの導熱管32を経由して燃焼熱が結晶成長室30に送られるとともに、結晶成長室30の天井などから太陽光が導入されることにより、この結晶成長室30の室温は40℃程度以上に維持される。これにより、濃縮海水W中の水分の蒸発を促進して、結晶成長を一層スムーズに行うことができる。
【0024】
なお、この実施形態においては、結晶成長室30の側壁および天井の全面をガラスで構成したが、側壁または天井の少なくとも一部をガラスで構成した態様としてもよい。また、その素材はガラスに限定されず、太陽光を透過可能な素材であれば、樹脂などの他の素材を採用することもできる。また、結晶成長室30の床面は、強化ガラス、ステンレス、アクリル樹脂、コンクリート、大理石、繊維強化樹脂(ガラス繊維強化樹脂など)などによって構成されている。
【0025】
結晶成長室30に導入された濃縮海水W中には、搬送装置33が設けられるとともに、この搬送装置33には、搬送速度制御部34が併設されている。搬送装置33として、ベルトコンベア33が採用されており、このベルトコンベア33上で濃縮海水Wが結晶化するとともに、その搬送中に結晶Cが次第に成長するようになっている。搬送速度制御部34は、搬送装置33による搬送中に、結晶Cが所定の大きさ(例えば1mm)まで成長するように、この搬送装置33の搬送速度を制御する機能を有する。すなわち、搬送速度制御部34で、搬送装置33の搬送速度を大きくするように制御すると、結晶Cの大きさは小さくなる一方で、搬送装置33の搬送速度を小さくするように制御すると、結晶Cの大きさは大きくなる。
【0026】
この搬送装置33のローラには、ボイラー装置10によって発電した電力を受けて発熱するヒータ(図示せず)が併設されている。このヒータに通電することにより、濃縮海水Wの蒸発を促進して、結晶Cを一層粗大化することができる。
【0027】
この搬送装置33の終端部には、結晶成長室30で成長した結晶Cを結晶乾燥室40に送るための移送装置35が設けられている。この移送装置35として、ベルトコンベア35が採用されている。
【0028】
この移送装置35には、結晶促進部36が併設されている。結晶促進部36は、結晶成長室30内の濃縮海水Wを汲み上げるポンプ36aと、汲み上げた濃縮海水Wを噴射するシャワー部36bとを有している。シャワー部36bから噴射した濃縮海水Wは、移送装置33上の結晶Cに向けて直接噴射される。このように、結晶Cに濃縮海水Wを噴射することにより、この結晶Cをさらに大きく成長させることができ、商品価値をさらに高めることができる。なお、この結晶促進部36は、必須の構成要素ではなく、適宜、省略することもできる。
【0029】
結晶成長室30の他例を
図3に示す。この構成においては、結晶成長室30に導入された濃縮海水W中に、回収装置37が設けられている。この回収装置37は、濃縮海水W中に沈んでいる塩類の結晶Cを掃引して回収する機能を有している。この回収装置37による結晶Cの回収は、人手によって行ってもよいし、回収装置37に駆動装置(図示せず)を設け、所定時間間隔ごとにこの駆動装置を駆動して自動的に行ってもよい。回収した結晶Cは、上記と同様に、この結晶Cを結晶乾燥室40に送るための移送装置35に送られる。結晶成長室30の床面は、強化ガラス、ステンレス、アクリル樹脂、コンクリート、大理石、繊維強化樹脂(ガラス繊維強化樹脂など)などによって構成されている。この床面に、さらに砂を敷設することによって、塩類の結晶化を促進させることもできる。
【0030】
図4に示す結晶乾燥部40は、結晶成長部30で成長した塩類の結晶Cを乾燥させる機能を有する。結晶乾燥部40は、側壁と天井を有する結晶乾燥室40となっている。その側壁には、換気装置41が設けられおり、室内温度などを適宜調整できるようになっている。この結晶乾燥部40は、ボイラー装置10と導熱管42によって接続されている。ボイラー装置10からこの導熱管42を経由して燃焼熱が結晶乾燥室40に送られることにより、この結晶乾燥室40の室温は60℃程度以上に維持される。これにより、結晶中の水分を速やかに蒸発させて、乾燥した結晶C(水分が3%以下)を得ることができる。
【0031】
結晶Cは、結晶乾燥室40に設けられた搬送装置43で搬送される。この搬送装置43として、ベルトコンベア43が採用されている。この搬送装置43のローラには、ボイラー装置10によって発電した電力を受けて発熱するヒータ(図示せず)が併設されている。このヒータに通電することにより、結晶Cを加熱して、その乾燥を促進することができる。
【0032】
搬送装置43には、スクリュフィーダ式の乾燥装置44が併設されている。結晶Cは、この搬送装置43での搬送中に乾燥装置44に通される。乾燥した結晶Cは、搬送装置45によって、製品容器46に搬送される。この乾燥装置44を設けることにより、短い装置全長で速やかに結晶Cの乾燥を行うことができる。なお、このスクリュフィーダ式の乾燥装置44は、必須の構成要素ではなく、適宜、省略することもできる。
【0033】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、海水中の塩類を、効率良く粗大な結晶Cに成長させる、という本願発明の課題を解決し得る限りにおいて、ボイラー装置10、海水濃縮部20、結晶成長部30、および、結晶乾燥部40の構成は適宜変更することができる。また、上記の装置内温度も適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ポンプ
2 第一濾過器
3 第二濾過器
4 貯水槽
5 送水管
10 ボイラー装置
20 海水濃縮部
21 濃縮管
30 結晶成長部(結晶成長室)
31 換気装置
32 導熱管
33 搬送装置(ベルトコンベア)
34 搬送速度制御部
35 移送装置(ベルトコンベア)
36 結晶促進部
36a ポンプ
36b シャワー部
37 回収装置
40 結晶乾燥部(結晶乾燥室)
41 換気装置
42 導熱管
43 搬送装置(ベルトコンベア)
44 乾燥装置
45 搬送装置
46 製品容器
S 海
W 濃縮海水
C 結晶
【要約】
【課題】海水中の塩類を、効率良く粗大な結晶に成長させること。
【解決手段】バイオマスを燃料とするボイラー装置10と、ボイラー装置10の燃焼熱によって海水を濃縮し、塩類濃度が7%以上飽和濃度以下の濃縮海水Wを生成する海水濃縮部20と、海水濃縮部20で生成した濃縮海水Wを前記燃焼熱によって加熱し、濃縮海水W中の水分を蒸発させ、濃縮海水Wに浸漬したままの状態で塩類の結晶Cを成長させる結晶成長部30と、結晶成長部30で成長した塩類の結晶Cを乾燥させる結晶乾燥部40と、を備えた塩類製造システムを構成する。
【選択図】
図1