特許第6162309号(P6162309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162309
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】手術室用椅子
(51)【国際特許分類】
   A61G 15/08 20060101AFI20170703BHJP
   A47C 9/00 20060101ALI20170703BHJP
   A47C 7/00 20060101ALI20170703BHJP
   A61B 90/60 20160101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61G15/08
   A47C9/00 Z
   A47C7/00 A
   A61B90/60
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-216365(P2016-216365)
(22)【出願日】2016年11月4日
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-58612(P2016-58612)
(32)【優先日】2016年3月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509105662
【氏名又は名称】株式会社エムエスビー
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】松本 進
【審査官】 城臺 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1999/030628(WO,A1)
【文献】 実開平06−044467(JP,U)
【文献】 特開2010−104420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B60/60
A61G15/00
A47C1/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の上端に座部を設け、下端に平面状の台座ベースを設け、該台座ベースには前後左右の4方向に突部が形成され、これらの突部の先端下面にそれぞれキャスタを取り付けた手術室用椅子であって、
前記キャスタは前記座部に荷重が掛かると車輪に制動が加えられ、前記車輪が回転不能となるようにされ、
前記台座ベースの左右方向を向く前記突部間の長さは、前後方向を向く前記突部間の長さよりも短くし、前記各突部間を繋ぐ前記台座ベースの4つの縁部には、滑らかに内側に凹む円弧状の押圧部がそれぞれ設けられていることを特徴とする手術室用椅子。
【請求項2】
前記台座ベースの前記左右方向を向く前記突部間の長さは、前記前後方向を向く前記突部間の長さの2/3〜1/2としたことを特徴とする請求項1に記載の手術室用椅子。
【請求項3】
前記台座ベースの前記支柱から前方向の前記突部までの長さは、前記支柱から後方向の前記突部までの長さよりも大きくされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の手術室用椅子。
【請求項4】
前記押圧部は上下方向に幅広とされていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の手術室用椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中腰で腰を掛け、長時間作業を続けることが可能な手術室用椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療手術現場における医師は、立ち続けた状態で、長時間に渡り医科手術を行うことが多い。このような立ち状態は、腰から足にかけて疲労が大きいため、中腰の姿勢で使用する腰掛け椅子が用いられる。
【0003】
特許文献1には、手術に医師が使用可能なキャスタを取り付けた腰掛け椅子が開示されており、この腰掛け椅子を用いることで、長時間の医科手術による足腰に対する疲労が大幅に減少される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−78534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術室において、医師は患者の手術部位に応じて、立ち位置を変更することがある。例えば、胸部を手術した後に、同じ患者の腹部の手術を連続して行うような場合には、座っている腰掛け椅子を縦方向、横方向へ数10cm程度の範囲で移動させる必要がある。
【0006】
しかし、医師は両手に血や体液が付着していることがあり、衛生面からサドル部等に手を触れて腰掛け椅子を移動させることはできない。特許文献1の腰かけ椅子は、移動に際して腰を軽く浮かせてストッパを外し、腰によりサドルを押して目的の位置まで移動する。
【0007】
中腰状態で腰により腰かけ椅子を押すことは、ストッパの利き方が体重等により変化するために腰を浮かす加減が難しく、椅子が動かなかったり、或いはキャスタが大きく滑ったりして、事故につながる虞れがある。従って、この腰かけ椅子の使用に慣れていない医師にとっては、使用が困難であり危険を伴う。
【0008】
また、特許文献1の腰掛け椅子を、立ち上がった状態で、足で十字状のキャスタ台座支軸を押して移動させようとすると、キャスタ台座支軸が回転したりして、思い通りの方向に移動させることができず、特に斜め方向に移動させることは困難である。場合によっては、腰掛け椅子を大きくずれた場所に移動させてしまったり、転倒させてしまうという危険性もある。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、両手が使えない状態であっても、使用者が片足を使って、任意の方向に安定して移動し得る手術室用椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る手術室用椅子は、支柱の上端に座部を設け、下端に平面状の台座ベースを設け、該台座ベースには前後左右の4方向に突部が形成され、これらの突部の先端下面にそれぞれキャスタを取り付けた手術室用椅子であって、前記キャスタは前記座部に荷重が掛かると車輪に制動が加えられ、前記車輪が回転不能となるようにされ、前記台座ベースの左右方向を向く前記突部間の長さは、前後方向を向く前記突部間の長さよりも短くし、前記各突部間を繋ぐ前記台座ベースの4つの縁部には、滑らかに内側に凹む円弧状の押圧部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る手術室用椅子によれば、狭い手術現場においても大きな邪魔とならず、長時間の手術を行う場合に軽く腰をかけながら使用でき、しかも足を使った移動が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】手術室用椅子の斜視図である。
図2】平面図である。
図3】正面図である。
図4】側面図である。
図5】未荷重状態のキャスタの説明図である。
図6】荷重状態のキャスタの説明図である。
図7】手術室用椅子の変形例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は実施例の手術室用椅子の斜視図、図2は平面図、図3は正面図、図4は側面図を示している。手術室用椅子1の金属製の支柱2の上端には座部3が設けられ、下端には厚さ6mm程度の平面状の金属板から成る台座ベース4が設けられている。重量を有する台座ベース4により、手術室用椅子1の重心は低くなり、従来の手術用の腰かけ椅子に比べて転倒し難い構造となっている。
【0014】
支柱2の底部には、円盤状の取付部2aが設けられており、この取付部2a及び台座ベース4に設けた4個の取付孔にボルト5を挿通させることで、支柱2が台座ベース4上に強固に固定されている。
【0015】
台座ベース4は前後左右の各方向に4つの突部4a〜4dが形成され、各突部4a〜4dの間の台座ベース4の縁部は、滑らかに内側に凹む円弧状の押圧部4e〜4hにより繋がれている。台座ベース4の各突部4a〜4dの先端下面に、それぞれ1個ずつのキャスタ6a〜6dの基部7aが、図示を省略した下向きのボルト等により固定されている。
即ち、キャスタ6a、6bが前後方向の突部4a、4bにそれぞれ取り付けられ、残りの2個のキャスタ6c、6dは左右方向を向く突部4c、4dにそれぞれ取り付けられている。
【0016】
台座ベース4の支柱2からの前後方向の突部4a、4bの距離は長くされ、左右方向の突部4c、4dの支柱2からの距離は短くされている。なお、使用者は前方にかがみ込み重心が前方にあることが多いために、支柱2から前方向の突部4aまでの長さは、支柱2から後方向の突部4bまでの長さよりも大きくすることが好ましい。
【0017】
具体的な例示寸法としては、台座ベース4の支柱2の中心から、前方向の突部4aの先端部までの長さは例えば33cmであり、後方向の突部4bの先端部までの長さは例えば25cm、突部4c、4dの先端部までの長さは例えば18cmである。突部4c、4d間の幅は例えば人の肩幅よりも狭く、突部4c、4d間の長さは、突部4a、4b間の長さの2/3〜1/2程度とすることが好適である。
【0018】
図5に示すように、キャスタ6a〜6dの基部7aは、上下方向を向く軸を中心に、台座ベース4に対して任意の方向に回転可能とされ、基部7aに設けられた水平方向の支持軸7bに、外周をゴムとした車輪8が回転自在に軸支されている。また、支持軸7bは基部7aに対して僅かに上下動可能とされており、支持軸7bはばね7cにより、常時下方に付勢されている。
【0019】
更に、基部7aの一部には制動片7dが設けられており、キャスタ6a〜6dに上下方向に負荷が掛かり、床面からの反力で車輪8が上方に押されると、図6に示すように支持軸7bは上方に移動し、車輪8の外周に制動片7dが食い込み、車輪8の回転が規制されるようになっている。
【0020】
また、支柱2は2本の管体が伸縮自在に中継ぎされており、座部3は支柱2に設けられた油圧機構により上方に付勢されてクッション性を有している。また、座部3の高さは操作レバー3aを操作することにより任意の位置に調整可能とされている。なお、座部3は例えば自転車のサドルのような形状とされ、跨ることにより、軽く腰をかける程度の大きさとされている。また、座部3の後部に腰当部を設けることもできる。
【0021】
座部3は支柱2に対して回転不能に固定してもよく、この場合は座部3の前後方向は突部4a、4bの前後方向と一致することになる。また、ロック可能な操作部を設け、任意の方向に座部3を固定するようにしてもよい。
【0022】
使用に際して、手術室用椅子1の位置が定まり、台座ベース4の突部4a、4bを前後方向に向け、使用者が座部3に腰を掛けると、臀部は油圧機構のクッション性により弾発的に保持される。更に体重を掛けると、図6に示すように、キャスタ6a〜6dの支持軸7bが上昇し、車輪8の外周が基部7aの制動片7dに接し、車輪8の回転が規制されるので、使用者は安定した位置で手術等を行うことができる。即ち、使用者が座部3に臀部を乗せると、ばね7cの付勢力に抗して支持軸7bが持ち上がり、キャスタ6a〜6dの車輪8に制動が掛かり、台座ベース4は移動不能となり、使用者の安全性が確保される。
【0023】
このとき、使用者は両足を手術室用椅子1の押圧部4e、4fの近傍に位置させる。左右方向へは突部4c、4dが十分に張り出していないので、手術室用椅子1は前後方向に比べて左右方向へ倒れ易いが、使用者の両足により支えることによって、左右方向の不安定性を補うことができる。また、手術現場において手術室用椅子1に座る医者の真横に、助手が立っているような場合においても、横方向の突部4c、4dが短いため、手術室用椅子1が邪魔になることはない。
【0024】
例えば、手術室用椅子1を移動するために、使用者が座部3から腰を浮かすと、ばね7cの付勢力により車輪8は制動片7dから離れて制動が解除される。この状態で、台座ベース4を前方又は斜め前方に移動させるには、片足により押圧部4g又は4hをその方向に押し、後方又は斜め後方又は横方向に移動させるには押圧部4e又は4fをその方向に押せばよい。
【0025】
このように、片足により台座ベース4の押圧部4e〜4hを移動すべき方向に押すと、キャスタ6a〜6dの車輪8はその方向に回転するので、使用者は両手が塞がっていても、使用者は自分で手術室用椅子1を任意の方向に移動させることができる。
【0026】
手術室用椅子1を右後方に移動させる場合には、移動させる方向の右足を軸足とし、左足の踵部又は底面部で押圧部4f、4hの湾曲部近傍を水平方向に押圧する。金属板から成る台座ベース4は重量があるため、勢い良く滑ることはなく、手術室用椅子1は徐々に右後方へ移動する。
【0027】
例えば、手術室用椅子1を右方向に20cm移動させる場合には、左足の甲部で押圧部4fを押して右後方に約15cm程度移動させた後に、次に押圧部4hを押して右前方に約15cm程度移動することで、手術室用椅子1は右方向に20cm分の移動ができる。
【0028】
このように、手術室用椅子1は使用者の足による押圧部4e〜4hに対する押圧によって、キャスタ6a〜6dをその方向に回転させて、前後方向、左右方向、斜め方向の任意の方向に移動可能となる。
【0029】
図7は変形例の手術室用椅子1の斜視図を示し、台座ベース4の押圧部4e〜4hの縁部は、下方に折り曲げられて幅広とされている。
【0030】
これにより、手術室用椅子1を足を使って移動するに際し、足で押圧部4e〜4hに痛みを伴うことなく押圧でき、手術室用椅子1が移動し易くなる。また、押圧部4e〜4hの縁部をゴムなどで縁取りしても、足が滑ることなく押圧することができる。
【0031】
また、この手術室用椅子1は使用しない場合には、部屋の隅に寄せておけば、場所も大きく取らずに済む。
【符号の説明】
【0032】
1 手術室用椅子
2 支柱
3 座部
4 台座ベース
4a〜4d 突部
4e〜4h 押圧部
6a〜6d キャスタ
8 車輪
【要約】
【課題】使用者が足を使って移動させる手術室用椅子を得る。
【解決手段】金属製の支柱2の上端に座部3が、下端に台座ベース4が設けられている。台座ベース4は前後左右方向に突部4a〜4dが形成され、台座ベース4の縁部の隣接する各突部4a〜4dの間は、滑らかに内側に凹む押圧部4e〜4hとされている。前後方向の突部4a、4bの距離は長くされ、左右方向の突部4c、4dの距離は短くされ、各突部4a〜4dの下面に、キャスタ6a〜6dが取り付けられている。
使用者は座部3に腰をかけ、両足を押圧部4e、4fの近傍に位置させる。椅子1を移動するためには、片足を押圧部4e、4fに当接して、足により移動すべき方向に押すと、キャスタ6a〜6dはその方向に回転するので、使用者は両手が塞がっていても、任意の方向に椅子1を移動させることができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7