(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
定常領域重鎖のアスパラギン(Asn)297に対応するアミノ酸を代替的なアミノ酸残基で置き換えることによってアグリコシル化されたヒトIgG1定常ドメインを有する、請求項1または4記載の抗体または抗原結合断片。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の説明は以下のとおりである。
【0020】
単語「a」または「an」は、他に特定されない限り、1つ以上を含むことを意味する。
【0021】
「抗体」は、免疫グロブリン分子、抗体断片、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原結合部位を含む分子を含む結合分子である。ネイティブ抗体および免疫グロブリンは、通常、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖で構成される約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質である。各重鎖は、1つの端に可変ドメインを有し、いくらかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、1つの端に可変ドメインを有し、そのもう一方の端に定常ドメインを有する。抗体が抗原に優先的に結合し、例えば、別の分子との、約30%未満、好ましくは約20%未満、約10%未満、または約1%未満の交差反応性を有する場合、抗体は、抗原(または他の分子)に特異的に結合する。用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、交換可能に使用される。「結合する」または「結合すること」は、分子間の検出可能な関係または会合(association)(例えば、生化学的相互作用)をいうために、本明細書で使用される。
【0022】
「単離された」分子、例えば、単離された抗体または単離されたペプチドは、天然の環境においてまたはそれらが天然に生じる場合に存在する他の分子から分離または精製されている状態をいう。
【0023】
N2エピトープは、非筋肉ミオシン重鎖(NMHC)II型中に発現される12アミノ酸の配列である自己抗原のエピトープである。この12アミノ酸の配列は、LMKNMDPLNDNV (配列番号: 47)である。N2エピトープは、米国特許7,442,783に詳細に記載され、その内容は、参照によって本明細書に明示的に援用される。「天然IgM」または「病原性IgM」は、N2エピトープに結合し、古典的経路において補体を活性化することによって炎症を開始する、哺乳動物(例えば、ヒト)において天然に産生されるIgM抗体である。
【0024】
いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号: 47に結合する。さらなる態様において、抗体またはその抗原結合断片は、エピトープのアミノ酸配列が、配列番号: 47のアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%または98%の配列同一性を有するエピトープに結合する。特定の態様において、エピトープは、アミノ酸配列LMKNMDPLNDNI (配列番号: 48)を含む。
【0025】
抗体またはその断片の超可変領域は、抗原結合に寄与するアミノ酸残基をいう。超可変領域は、相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。CDRは、重鎖および軽鎖の可変領域内の特定の領域である。一般的に、可変領域は、4つの枠組み領域(FWR1、FWR2、FWR3、FWR4)および3つのCDRからなり、以下:NH
2-FWR1-CDR1-FWR2-CDR2-FWR3-CDR3-FWR4-定常領域-C(O)OHのように配列される。用語「枠組み領域」は、CDR残基以外のこれらの可変ドメインアミノ酸残基をいい、例えば、FWR1、FWR2、FWR3およびFWR4を含む。
【0026】
上記するように、本発明は、米国特許8,324,352に記載されるマウス21G6抗体のヒト化誘導体に関し、その内容は、本明細書に明示的に援用される。特定の態様において、ヒト化抗体およびその断片は、N2ペプチドに結合する。マウス21G6抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列は、
図1に示され、以下:
【化1】
の配列番号: 1および2である。下線を付したアミノ酸は、相補性決定領域を示す。
【0027】
図1は、本発明によって含まれる3つのVH領域:H1−21G6、H2−21G6およびH3−21G6のアミノ酸配列を示す。H1−21G6、H2−21G6およびH3−21G6のVH領域のアミノ酸配列は、それぞれ、以下:
【化2】
の配列番号: 9、10および11である。下線を付したアミノ酸は、相補性決定領域を示す。
【0028】
さらなるVH領域は、本発明:H4−21G6にも含まれる。H4−21G6のアミノ酸配列を以下:
【化3】
に示す。
【0029】
図面は、本発明:L1−21G6、L2−21G6およびL3−21G6に含まれる3つのVL領域のアミノ酸配列も示す。L1−21G6、L2−21G6およびL3−21G6のVH領域のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号12、13および14である。
【化4】
下線を付したアミノ酸は、相補性決定領域を示す。
【0030】
名称「H1−21G6」、「H2−21G6」、「H3−21G6」および「H4−21G6」は、それぞれ、本明細書中、「H1」、「H2」、「H3」および「H4」と交換可能に使用される。名称「L1−21G6」、「L2−21G6」および「L3−21G6」は、それぞれ、「L1」、「L2」および「L3」と交換可能に使用される。
【0031】
本発明の抗体または断片のVH領域のCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、SYYMY (配列番号: 3)、GINPSNGGTNFNEKFKS (配列番号: 4)、GYDREWFAY (配列番号: 5)である。本発明の抗体または断片のVL領域のCDR1、CDR2およびCDR3は、それぞれ、RSSKSLLHSNGNTYLY (配列番号: 6)、 RMSNLAS (配列番号: 7)およびMQHLEYPFT (配列番号: 8)である。本発明の抗体または抗原結合断片のVL領域は、m21G6VLの少なくとも2つのCDRを含む。本発明の抗体または抗原結合断片のVH領域は、m21G6VHの少なくとも2つのCDRを含む。いくつかの態様において、ヒト化抗体は、m21G6VHの3つ全てのCDRおよび/またはm21G6VLの3つ全てのCDRを含む。H1−21G6、H2−21G6およびH3−21G6の各々のVH領域の枠組み領域FWR1、FWR2、FWR3およびFWR4を、以下:
【化5】
【化6】
に示す。
【0032】
L1−21G6、L2−21G6およびL3−21G6の各々のVL領域の各々の枠組み領域FWR1、FWR2、FWR3およびFWR4を、以下:
【化7】
【化8】
に示す。
【0033】
上記するように、本発明は、それぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 3、配列番号: 4および配列番号: 5を有するVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 6、配列番号: 7および配列番号: 8を有するVL CDR1、CDR2およびCDR3を含み、かつ4つの枠組み領域(FWR)VH FWR1、VH FWR2、VH FWR3およびVH FWR4を含むVH領域、ここで
a. VH FWR1は、配列番号: 15、配列番号: 19または配列番号: 23を含み;
b. VH FWR2は、配列番号: 16、配列番号: 20または配列番号: 24を含み;
c. VH FWR3は、配列番号: 17、配列番号: 21、配列番号: 25、配列番号: 43、配列番号: 44または配列番号: 45を含み;
d. VH FWR4は、配列番号: 18、配列番号: 22または配列番号: 26を含む;ならびに
4つの枠組み領域(FWR) VL FWR1、VL FWR2、VL FWR3およびVL FWR4を含むVL領域、ここで
a. VL FWR1は、配列番号: 27、配列番号: 31または配列番号: 35を含み;
b. VL FWR2は、配列番号: 28、配列番号: 32または配列番号: 36を含み;
c. VL FWR3は、配列番号: 29、配列番号: 33または配列番号: 37を含み;
d. VL FWR4は、配列番号: 30、配列番号: 34または配列番号: 38を含む、
をさらに含む、抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0034】
本発明は、それぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 3、配列番号: 4および配列番号: 5を有するVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 6、配列番号: 7および配列番号: 8を有するVL CDR1、CDR2およびCDR3を含み、かつ4つの枠組み領域(FWR)VH FWR1、VH FWR2、VH FWR3およびVH FWR4を含むVH領域、ここで
a. VH FWR1は、配列番号: 15、配列番号: 19、配列番号: 23を含み;
b. VH FWR2は、配列番号: 16、配列番号: 20または配列番号: 24または配列番号: 50を含み;
c. VH FWR3は、配列番号: 17、配列番号: 21、配列番号: 25、配列番号: 43、配列番号: 44、配列番号: 45、配列番号: 51または配列番号: 52を含み;
d. VH FWR4は、配列番号: 18、配列番号: 22または配列番号: 26を含む;ならびに
4つの枠組み領域(FWR) VL FWR1、VL FWR2、VL FWR3およびVL FWR4を含むVL領域、ここで
a. VL FWR1は、配列番号: 27、配列番号: 31または配列番号: 35を含み;
b. VL FWR2は、配列番号: 28、配列番号: 32または配列番号: 36を含み;
c. VL FWR3は、配列番号: 29、配列番号: 33または配列番号: 37を含み;
d. VL FWR4は、配列番号: 30、配列番号: 34または配列番号: 38を含む、
をさらに含む、抗体またはその抗原結合断片をさらに含む。
【0035】
用語「含む」および「含むこと」は、さらなる要素の包含を許容する(が要求しない)。例えば、アミノ酸配列の文脈において、用語「含む」および「含むこと」は、N末端および/またはカルボキシ末端のいずれかにさらなるアミノ酸の包含を許容する。いくつかの態様において、VH領域およびVL領域の枠組み領域は、具体的に示されたアミノ酸、ならびにN末端および/またはカルボキシ末端に1〜3のさらなるアミノ酸を含む。
【0036】
特定のさらなる局面において、本発明の抗体または抗原結合断片は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、ここで、
i. VHは、3つの相補性決定領域(CDR)VH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含み、VH CDR1は配列番号: 3からなり、VH CDR2は配列番号: 4からなり、VH CDR3は配列番号: 5からなる;
ii. VH領域は、4つの枠組み領域(FWR)VH FWR1、VH FWR2、VH FWR3およびVH FWR4を含み、
a. VH FWR1は、配列番号: 15、配列番号: 19または配列番号: 23からなり;
b. VH FWR2は、配列番号: 16、配列番号: 20または配列番号: 24からなり;
c. VH FWR3は、配列番号: 17、配列番号: 21、配列番号: 25、配列番号: 43、配列番号: 44または配列番号: 45を含み;
d. VH FWR4は、配列番号: 18、配列番号: 22または配列番号: 26からなる;
iii. VL領域は、3つの相補性決定領域(CDR)VL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含み、VL CDR1は、配列番号: 6からなり、VH CDR2は、配列番号: 7を含み、VH CDR3は、配列番号: 8からなる;
iv. VL領域は、4つの枠組み領域(FWR) VL FWR1、VL FWR2、VL FWR3およびVL FWR4を含み、
a. VL FWR1は、配列番号: 27、配列番号: 31または配列番号: 35からなり;
b. VL FWR2は、配列番号: 28、配列番号: 32または配列番号: 36からなり;
c. VL FWR3は、配列番号: 29、配列番号: 33または配列番号: 37からなり;
d. VL FWR4は、配列番号: 30、配列番号: 34または配列番号: 38からなる。
【0037】
なおさらなる態様において、本発明は、それぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 3、配列番号: 4および配列番号: 5を有するVH CDR1、CDR2およびCDR3、ならびにそれぞれ、アミノ酸配列 配列番号: 6、配列番号: 7および配列番号: 8を有するVL CDR1、CDR2およびCDR3を含み、かつ4つの枠組み領域(FWR)VH FWR1、VH FWR2、VH FWR3およびVH FWR4を含むVH領域、ここで
a. VH FWR1は、配列番号: 15、配列番号: 19、配列番号: 23からなり;
b. VH FWR2は、配列番号: 16、配列番号: 20または配列番号: 24または配列番号: 50からなり;
c. VH FWR3は、配列番号: 17、配列番号: 21、配列番号: 25、配列番号: 43、配列番号: 44、配列番号: 45、配列番号: 51または配列番号: 52からなり;
d. VH FWR4は、配列番号: 18、配列番号: 22または配列番号: 26からなる;ならびに4つの枠組み領域(FWR) VL FWR1、VL FWR2、VL FWR3およびVL FWR4を含むVL領域、ここで
e. VL FWR1は、配列番号: 27、配列番号: 31または配列番号: 35からなり;
f. VL FWR2は、配列番号: 28、配列番号: 32または配列番号: 36からなり;
g. VL FWR3は、配列番号: 29、配列番号: 33または配列番号: 37からなり;
h. VL FWR4は、配列番号: 30、配列番号: 34または配列番号: 38からなる;
をさらに含む、抗体またはその抗原結合断片をさらに含む。
【0038】
上記するように、
図1は、m21G6のVH CDRを含む3つの例示的なヒト化VH領域のアミノ酸配列を示す(H1-21G6、H2-21G6およびH3-21G6; それぞれ、配列番号: 9、10および11)。m21G6のVH CDRを含むさらなる例示的なヒト化VH領域は、H4-21G6 (配列番号: 49または配列番号: 54)である。
図1は、3つの例示的なヒト化VL領域のアミノ酸配列も示す(L1-21G6、L2-21G6およびL3-21G6;それぞれ、配列番号: 12、13および14)。いくつかの態様において、本発明の抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9、配列番号: 10および配列番号: 11からなる群より選択される配列を含むVH領域を含む。なおさらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9、配列番号: 10、配列番号: 11、配列番号: 49および配列番号: 54からなる群より選択される配列を含むVH領域、ならびに配列番号: 12、配列番号: 13および配列番号: 14からなる群より選択される配列を含むVL領域を含む。さらなる態様において、本発明の抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9、配列番号: 10、配列番号: 11、配列番号: 49および配列番号: 54からなる群より選択される配列を含むVH領域を含む。さらなる局面において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 12、配列番号: 13および配列番号: 14からなる群より選択される配列を含むVL領域を有する。さらに別の態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9、配列番号: 10および配列番号: 11からなる群より選択される配列を含むVH領域、ならびに配列番号: 12、配列番号: 13および配列番号: 14からなる群より選択される配列を含むVL領域を含む。
【0039】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 12を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。他の態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 13を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。別の局面において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 9を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 14を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。さらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 10を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 12を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。特定のさらなる局面において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 10を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 13を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。さらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 10を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 14を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。本発明の別の局面において、請求項1記載の抗体または抗原結合断片は、配列番号: 11を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 12を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。別の態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 11を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 13を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。別の態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 11を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 14を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。
【0040】
なおさらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 12を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。別の局面において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 13を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。さらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49を含むかまたはそれからなるVH領域および配列番号: 14を含むかまたはそれからなるVL領域を有する。
【0041】
特定のさらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49および配列番号: 54から選択される配列を含むVH領域を含む。なおさらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 13または配列番号: 55を含むVL領域を含む。さらなる態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49または配列番号: 54を含むVH領域、および配列番号: 13または配列番号: 55を含むVL領域を含む。さらなる局面において、抗体または抗原結合断片は、配列番号: 49を含むVH領域、および配列番号: 13を含むVL領域を含む。
【0042】
本発明の特定の局面において、本発明の抗体または抗原結合断片の定常領域のアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。いくつかの態様において、IgG定常領域のアイソタイプは、IgG1である。他の態様において、IgG定常領域のアイソタイプは、IgG4である。いくつかの態様において、抗体またはその抗原結合断片は、ヒトIgG1定常ドメインまたはヒトIgG4定常ドメインを有する。さらなる局面において、抗体または抗原結合断片は、ヒトIgκ定常ドメインを有する。用語「アイソタイプ」は、抗体の重鎖または軽鎖定常領域の分類をいう。抗体の定常ドメインは、抗原に対する結合に関与しないが、種々のエフェクター機能を有する。重鎖定常領域のアミノ酸配列に依存して、ヒトまたはヒト化抗体は、以下:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主な免疫グロブリンのクラスの1つに属するとみなされ得る。これらの免疫グロブリンのクラスの多く、例えば、IgGクラスは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に分類され得る。ヒト軽鎖定常領域は、2つの主なクラス、κおよびλに分類される。
【0043】
アミノ酸残基の位置を本明細書で数によって参照する場合、他に示さない限り、カバットナンバリングシステムが使用されると理解されるべきである。カバットナンバリングは、Kabat et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Publication No. 91-3242, National Institutes of Health, National Technical Information Service (以下「Kabat」)に記載される。免疫グロブリン配列は、カバット参照配列とのアライメントを行うことによってカバットに従って番号が付けられ得る。従って、カバットナンバリングシステムは、免疫グロブリン鎖に番号を付けるための不変のシステムを提供する。
【0044】
本発明は、CDRがマウス21G6抗体由来であり、枠組み領域がヒト免疫グロブリン由来であるヒト化抗体に関する。ヒト化抗体はレシピエント抗体またはドナー抗体に見られないアミノ酸残基を含み得ることが理解される。例えば、アミノ酸配列におけるかかる変化は、抗原(例えば、N2ペプチド)に対する結合を改善するために、および/または免疫原性を低減するためになされ得る。従って、本発明は、特定のアミノ酸が置換、欠失または付加された本明細書に記載される抗体または抗原結合断片を含む。アミノ酸置換、欠失または付加は、抗体または断片の特性を改善または洗練(refine)するために、抗体またはその抗原結合断片になされ得、例えば、アミノ酸変更は、炎症を阻害またはブロックするためになされ得る。例えば、IgG定常領域の297位のアスパラギン(Asn297)は、グリコシル化を低減し、補体の活性化およびFcレセプターへの結合を低減するために、代替的なアミノ酸に置き換えられ得る。例えば、Leatherbarrow et al. (1985) Effector functions of a monoclonal aglycosylated mouse IgG2a: binding and activation of complement component C1 and interaction with human monocyte Fc receptor. Mol Immunol 22(4):407-415; Tao et al. (1989) Studies of aglycosylated chimeric mouse-human IgG. Role of carbohydrate in the structure and effector functions mediated by the human IgG constant region. J Immunol 143(8):2595-2601; Kabat (1987) Sequences of Proteins of Immunological Interest (In: US Department of Human Services), およびSazinsky et al. (2008), Aglycosylated immunoglobulin G
1variants productively engage activating Fc receptors, PNAS 105(51): 20167-20172を参照、これらの各々の内容は、参照によって本明細書に明示的に援用される。グリコシル化は、例えば、297位のアスパラギン(Asn297)を、代替的なアミノ酸、例えば、アラニン、グルタミン、ヒスチジンまたはグリシンで置き換えることによって、低減され得る。いくつかの態様において、Asn297は、グルタミンで置き換えられ得る。特定の局面において、抗体または抗原結合断片は、アグリコシル化(aglycosylate)されたヒトIgG1定常ドメインを有する。
【0045】
いくつかの態様において、H1-21G6、H2-21G6およびH3-21G6の各々のVHの第3枠組み (VH FWR3)(それぞれ、配列番号: 17、21および25)の後ろから2番目のアミノ酸は、トレオニンからアラニンに変更され得る。アミノ酸配列 配列番号: 39、40および41は、後ろから2番目のアミノ酸(トレオニン)がアラニンと交換されたH1、H2およびH3の各々のVH FWR3についての配列である:
【化9】
。上記のイタリック体で印刷されたアラニンは、トレオニンからアラニンへの変更を示す。アミノ酸配列 配列番号43、44および45は、FWR3の後ろから2番目のアミノ酸(トレオニン)がアラニンに置き換えられたH1、H2およびH3のVH領域についての配列である:
【化10】
。上記のイタリック体で印刷されたアラニンは、トレオニンからアラニンへの変更を示す。
【0046】
さらなる態様において、H4-21G6 (配列番号: 51)のVHの第3枠組み領域(VH FWR3)における後ろから2番目のアミノ酸は、トレオニンからアラニンへ変更され得る。アミノ酸配列 配列番号: 52は、後ろから2番目のアミノ酸(トレオニンがアラニンと交換されたH4のVH FWR3についての配列である:
【化11】
。上記のイタリック体で印刷されたアラニンは、トレオニンからアラニンへの変更を示す。アミノ酸配列 配列番号: 52は、FWR3の後ろから2番目のアミノ酸(トレオニン)がアラニンと交換されたH4 VH領域についての配列である:
【化12】
。上記のイタリック体で印刷されたアラニンは、トレオニンからアラニンへの変更を示す。
【0047】
安定性および/またはアフィニティーを増大し得るアミノ酸改変はまた、本明細書で企図される。本発明によって企図されるさらなる特定のアミノ酸バリアントは、H2-21G6 VHのバリアントであり、マウス21G6 VLκ鎖のバリアントである:
【化13】
。
【0048】
さらなるアミノ酸改変は、65位のアミノ酸がグリシンと交換され、66位のアミノ酸がアルギニンと交換され、67位のアミノ酸がバリンまたはフェニルアラニンと交換され、69位のアミノ酸がイソロイシンと交換され、71位のアミノ酸がアルギニンと交換され、および/または85位のアミノ酸がグルタミン酸と交換され得る、H2 VHアミノ酸配列のアミノ酸バリアント(配列番号: 42)を含む。
【0049】
本発明は、VHの78位のアラニン(Ala78)が、フェニルアラニンと交換された抗体またはその抗原結合断片も含む。
【0050】
特定の態様において、抗体または抗原結合断片は、228位のセリン(Ser228)がプロリンと交換されたヒトIgG4定常ドメインを有する。
【0051】
さらなる改変はまた、Fc領域内に、典型的には、抗体の1つ以上の機能的特性、例えば、血清半減期、補体結合反応、Fcレセプター結合、タンパク質安定性および/または抗原依存性細胞性細胞傷害性、あるいはその欠損を変更するために、なされ得る。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾され得る(例えば、1つ以上の化学部分が抗体に結合され得る)。さらに、抗体のクラスは、公知の技術によって「転換(switch)」され得る。かかる技術としては、例えば、直接組換え技術(例えば、U.S. Pat. No. 4,816,397を参照)および細胞−細胞融合技術(例えば、U.S. Pat. No. 5,916,771を参照)の使用が挙げられる。例えば、IgM分子として元々産生された抗体は、IgG抗体にクラス転換され得る。クラス転換技術はまた、1つのIgGサブクラスを別のサブクラスに、例えば、IgG1からIgG2に転換(convert)するために使用され得る。従って、本発明の抗体のエフェクター機能は、種々の治療用途のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgEまたはIgM抗体にアイソタイプ転換することによって変更され得る。定常領域についての例示的なcDNA配列は、例えば、GenBankから入手可能であり、その各々は、その全体が参照によって援用され、該cDNA配列は以下のとおりである:ヒトIgG1重鎖定常領域:GenBank Accession No.: J00228;ヒトIgG2重鎖定常領域:GenBank Accession No.: J00230;ヒトIgG3重鎖定常領域:GenBank Accession No.: X04646;ヒトIgG4重鎖定常領域:GenBank Accession No.: K01316;およびヒトκ軽鎖定常領域:GenBank Accession No.: J00241。CH
1のヒンジ領域はまた、ヒンジ領域中のシステイン残基の数が増加または減少するように改変され得る。このアプローチは、Bodmer et alによってU.S. Pat. No. 5,677,425にさらに記載される。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の会合を容易にするように、または抗体の安定性を増大もしくは低減するように、変更される。抗体のFcヒンジ領域はまた、抗体の生物学的半減期を減少するように変異され得る。別の態様において、抗体は、その生物学的半減期を増大するように改変される。例えば、Wardに対するU.S. Pat. No. 6,277,375に記載されるように、以下:T252L、T254S、T256Fの変異の1つ以上が導入され得る。あるいは、生物学的半減期を増大するために、抗体は、Presta et alによるU.S. Pat. Nos. 5,869,046および6,121,022に記載されるように、CH1またはCL領域内に、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採られたサルベージレセプター(salvage receptor)結合エピトープを含むように改変され得る。さらに他の態様において、抗体の1つまたは複数のエフェクター機能を改変するように、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基と交換することによって、変更される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対して変更されたアフィニティーを有するが、親抗体の抗原結合能力を保持するように、異なるアミノ酸残基と交換され得る。それに対するアフィニティーが変更されるエフェクターリガンドは、例えば、Fcレセプターまたは補体のC1成分であり得る。このアプローチは、両方ともWinter et alに対するU.S. Pat. Nos. 5,624,821および5,648,260にさらに詳細に記載される。別の具体例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体が変更されたC1q結合、および/または低減もしくは破壊(abolish)された補体依存性細胞傷害性(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基と交換され得る。このアプローチは、Idusogie et alによるU.S. Pat. No. 6,194,551にさらに詳細に記載される。別の具体例において、アミノ酸位231および239内の1つ以上のアミノ酸残基は、変更され、それによって、抗体の補体に結合(fix)する能力が変更される。このアプローチは、Bodmer et alによるPCT公報WO 94/29351にさらに記載される。さらに別の具体例において、Fc領域は、以下の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の1つ以上のアミノ酸を改変することによって、抗体の抗体依存性細胞性細胞傷害性(ADCC)を媒介する能力、および/または抗体のFcγレセプターに対するアフィニティーを増大させるように改変される。このアプローチは、PrestaによるPCT公報WO 00/42072にさらに記載される。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされ、改善された結合を有するバリアントが記載される(Shields, R. L. et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604を参照)。
【0052】
さらに、抗体分子の半減期は、Fcレセプター(FcR)に対する抗体のアフィニティーを増大させることによって増大され得る。FcRに対する抗体の結合は、当該分野で公知の技術を使用して、例えば、Fc領域に特定の変異を導入することによって(Dall’Acqua, W. F. et al. (2006) J. Biol. Chem. 281: 23514-23524; Petkova, S. B. (2006) et al., Internat. Immunol. 18:1759-1769; U.S. Pat. Nos. 7,785,791, 7,790,858および7,371,826;前記の参考文献の各々の内容は、参照によって本明細書に援用される)、改善され得る。FcRに対する抗体のアフィニティーの増大によって、より長い半減期が生じることが示された(Petkovaet al., 2006)。Fcドメイン中のアミノ酸変異導入の場合、特定のアミノ酸変異がFcRに対する結合を増大させ、半減期を延ばし得ることが公知である。Fcレセプターに対する結合を増大させることが記載されているかかるアミノ酸変異の具体例としては、N434AおよびT307/E380/N434 (Petkova et al., 2006)ならびに他の変異M252Y/S254T/T256E、T250Q、M428LおよびT250Q/M428Lも挙げられる(Dall'Acqua et al., 2006; Hinton et al., J. Immunol., 176: 346-356)。
【0053】
本明細書に記載される抗体または抗原結合断片は、ポリマーに対する結合に基づいて化学的に改変され得る。ポリマーは、それが結合する抗体が水性環境、例えば、生理学的環境中で沈殿しないように、典型的には水溶性である。ポリマーは、重合の程度が調節され得るように、単一の反応性基、例えば、アシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒドを有し得る。例示的な反応性アルデヒドは、水安定性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノC
1〜C
10アルコキシもしくはアリールオキシ誘導体である(U.S. Pat. No. 5,252,714を参照)。ポリマーは、分岐していても分岐していなくてもよい。最終生成物調製の治療用途のために、ポリマーは、薬学的に許容され得る。水溶性ポリマー、または所望の場合その混合物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物系ポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールからなる群より選択され得る。
【0054】
抗体断片または抗原結合断片は、全長より小さい抗体の誘導体である。例示的な態様において、抗体断片は、全長抗体の特異的な結合能力の少なくとも重要な部分を保持する。抗体断片の具体例としては、Fab、Fab'、F(ab')
2、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディ(diabody)、ミニボディ(minibody)、Fc、Fd断片および単鎖抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
抗体断片は、当該分野で公知の方法によって生成され得る。例えば、抗体断片は、インタクトの抗体の断片化によって酵素的もしくは化学的に生成され得るか、または断片は、組換え的に生成され得る。抗体断片は、任意に単鎖抗体断片であり得る。あるいは、断片は、例えばジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含み得る。さらに、ペプシンでの抗体の消化によって、F(ab')
2断片および複数の小さな断片が生じる。抗体のメルカプトエタノール還元によって、個々の重鎖および軽鎖が生じる。パパインでの抗体の消化によって、個々のFab断片およびFc断片が生じる。断片はまた、任意に、複数分子の複合体であり得る。機能的な抗体の断片は、例えば、少なくとも約50アミノ酸を含み得る。いくつかの態様において、機能的な抗体の断片は、少なくとも約200アミノ酸を含み得る。
【0056】
本明細書に記載されるヒト化抗体およびその抗原結合断片は、当該分野で公知の技術を使用して生成され得、該技術としては、CDR-グラフティング(grafting)(例えば、European Patent No. EP 239,400; WO 91/09967;ならびにU.S. Pat. Nos. 5,225,539, 5,530,101, および5,585,089を参照、これらの各々の内容は参照によって援用される)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフィシング(resurfacing)(例えば、European Patent Nos. EP 592,106およびEP 519,596; Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498; Studnicka et al., 1994, Protein Engineering, 7(6):805-814;ならびにRoguska et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci., 91:969-973を参照、これらの各々は、その全体による参照によって本明細書に援用される)、鎖シャッフリング(chain shuffling)(例えば、U.S. Pat. No. 5,565,332を参照、これは、その全体において参照によって本明細書に援用される)、ならびに、例えばU.S. Pat. No. 6,407,213, U.S. Pat. No. 5,766,886, PCT Publication No. WO 9317105, Tan et al., J. Immunol., 169:1119-25 (2002), Caldas et al., Protein Eng., 13(5):353-60 (2000), Morea et al., Methods, 20(3):267-79 (2000), Baca et al., J. Biol. Chem., 272(16):10678-84 (1997), Roguska et al, Protein Eng., 9(10):895-904 (1996), Couto et al., Cancer Res., 55 (23 Supp): 5973s-5977s (1995), Couto et al., Cancer Res., 55(8):1717-22 (1995), Sandhu J S, Gene, 150(2):409-10 (1994), およびPedersen et al., J. Mol. Biol., 235(3):959-73 (1994)に開示される技術、これらの各々は参照によって本明細書に援用される、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
ヒト化抗体は、例えば、ヒト化可変領域をコードするcDNAを構築し、その各々をヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を含む動物細胞のための発現ベクターに挿入し、それによって、ヒト化抗体の発現のためのベクターを構築し、かつ該ベクターを、動物細胞に導入し、ヒト化抗体を発現および産生することによって、生成され得る。本発明は、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0058】
さらなる態様において、本発明は、本明細書に記載される重鎖またはVHを含む抗体またはその断片をコードするヌクレオチド配列に関する。特定の態様において、ヌクレオチド配列は、H1-21G6、H2-21G6、H3-21G6またはH4-21G6のVH領域をコードする配列を含む。例示的なヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号: 56、57、58および59を含む(以下に示す)。いくつかの態様において、本明細書に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号: 56、57、58および59からなる群より選択される配列を含む。いくつかの態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号:59である。特定のさらなる態様において、本発明は、本明細書に記載される軽鎖またはVLをコードするヌクレオチドを含む、抗体またはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。VL領域L1-21G6、L2-21G6およびL3-21G6をコードする例示的なヌクレオチド配列は、それぞれ、配列番号: 61、62および63である(以下に示す)。いくつかの態様において、本明細書に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号: 61、62および63からなる群より選択される配列を含む。なおさらなる態様において、抗体または(of)その抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列は、配列番号: 56、57、58および59からなる群より選択される配列、ならびに配列番号: 61、62および63からなる群より選択される配列を含む。なおさらなる態様において、ヌクレオチド配列は、配列番号: 59および配列番号: 62を含む。
【0059】
本明細書に記載される抗体、VH領域および/またはVL領域をコードするヌクレオチド配列、ならびに特定の発現系での産生の増加のために最適化されたヌクレオチド配列も、本明細書に含まれる。mRNAおよび/またはタンパク質の発現を最適化するための例示的な方法は、LifeTechnologiesからのGENEOPTIMIZER(登録商標)プロセスである(例えば、http://www.lifetechnologies.com/us/en/home/life-science/cloning/gene-synthesis/geneart-gene-synthesis/geneoptimizer.htmlを参照)。
図3〜5に示すように、配列番号: 64、65、68および69は、CHO細胞でのH4-21G6 Vh領域およびL2-21G6 Vl領域の産生のために最適化されたヌクレオチド配列を示す。いくつかの態様において、本発明は、配列番号: 64のヌクレオチド配列を含む。さらなる態様において、本発明は、配列番号: 65のヌクレオチド配列を含む。なおさらなる態様において、ヌクレオチドは、配列番号: 64および配列番号: 65を含む。
【0060】
本発明の抗体もしくは抗原結合断片、VH領域および/またはVL領域をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター、ならびに該ベクターを含む単離された細胞も、含まれる。抗体または抗原結合断片は、例えば、該発現ベクターを含む細胞を培養し、培養された細胞または培養培地から抗体またはその断片を回収することによって、産生され得る。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、本明細書に含まれる発現ベクターを含むCHO細胞を培養することによって、産生される。特定のさらなる態様において、ベクターは、配列番号: 64および/または配列番号: 65を含むヌクレオチド配列を含む。なおさらなる態様において、ベクターは、配列番号: 64および65を含むヌクレオチド配列を含む。なおさらなる態様において、ベクターは、配列番号: 68または69を含むヌクレオチド配列を含む。「細胞」または「宿主細胞」は、本明細書で交換可能に使用される用語である。かかる用語は特定の被験細胞をいうだけでなく、かかる細胞の子孫または潜在的な子孫もいうことが理解される。特定の改変が変異または環境の影響のいずれかのために続く世代において生じ得るので、かかる子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で使用される場合、該用語の範囲内になお含まれる。
【0061】
上記するように、本発明の抗体および抗原結合断片は、N2エピトープに結合し、従って、天然のIgM抗体の結合によって引き起こされる多くの炎症性疾患および状態を治療するために使用され得る。例えば、抗体またはその断片は、再灌流障害、虚血障害、脳卒中、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、セリアック病、高IgG免疫不全(hyper-IgG immunodeficiency)、動脈硬化、冠動脈疾患、敗血症(sepsis)、心筋炎、脳炎、移植物拒絶、肝炎、甲状腺炎(例えば、橋本甲状腺炎、グレーヴズ病)、骨粗鬆症、多発性筋炎、皮膚筋炎、薬物または化学療法−誘導性炎症(例えば、薬物または化学療法誘導性腎炎、心内膜炎、腎炎)、I型糖尿病、痛風、皮膚炎、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、硬化性苔癬(lichen sclerosis)、潰瘍性大腸炎、糖尿病性網膜症、骨盤腹膜炎、歯周疾患、関節炎、若年性慢性関節炎(例えば、慢性虹彩毛様体炎)、乾癬、骨粗鬆症、真性糖尿病における腎症、喘息、骨盤腹膜炎、慢性炎症性肝臓疾患、慢性炎症性肺疾患、肺線維症、肝線維症、関節リウマチ、慢性炎症性肝臓疾患、慢性炎症性肺疾患、肺線維症、肝線維症、クローン病、潰瘍性大腸炎、熱傷損傷(または熱損傷)、ならびに中枢神経系(CNS;例えば、多発性硬化症)、胃腸系、皮膚および関連する構造、免疫系、肝胆管系、または病理が炎症性成分を伴って起こり得る体内の任意の部位の他の急性および慢性の炎症性疾患等の炎症性疾患または状態を治療するために使用され得る。
【0062】
本発明は、被験体に本明細書に記載される抗体を投与することによって、被験体においてN2抗原に対する免疫応答の活性化を阻害する方法を含む。さらなる局面において、本発明は、被験体に本発明の抗体または断片を含む医薬組成物を投与する工程を含む、被験体において炎症性疾患または状態、例えば、虚血−再灌流障害を治療する方法を含む。
【0063】
再灌流障害または虚血障害等の炎症性状態は、例えば、脳卒中または心筋梗塞を含む天然に生じるエピソードの後に生じ得る。再灌流障害または虚血障害は、外科手順(surgical procedure)の間および/またはその後にも生じ得る。損傷を引き起こし得る例示的な外科手順としては、血管形成術、ステント手順、アテレクトミー、およびバイパス手術からなる群より選択される血管矯正技術が挙げられる。例示的な態様において、再灌流障害または虚血障害は、心臓等の心血管組織中に生じる。
【0064】
動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲の考案(formulate)に使用され得る。抗体の投薬量は、ED
50を含み、毒性をほとんどまたは全く有さない循環濃度の範囲内である。投薬量は、使用される剤形および投与の経路に依存してこの範囲内で変化し得る。本明細書に記載される方法において使用される抗体またはその断片について、治療有効用量は、インビトロアッセイから最初に見積もられ得る。用量は、インビトロアッセイで決定されるIC
50(即ち、症状の最大の半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて考案され得る。この情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用され得る。血漿中のレベルは、例えば、酵素標識イムノソルベント検定法(ELISA)を使用して測定され得る。
【0065】
いくつかの態様において、抗体またはその断片は、組織損傷の前、それと同時またはその後に投与され得る。いくつかの態様において、医薬組成物は、組織損傷の後、数時間、数日、または数週間後に投与され得る。いくつかの態様において、抗体またはその断片は、例えば、再灌流障害の危険にさらされている被験体、例えば、今にも手術を受けようとしているそれらの患者における組織損傷の前に、投与され得る。さらなる態様において、抗体またはその断片は、投与され得る。
【0066】
「治療有効量」または「有効量」は、単独または1つ以上の他の活性薬剤と組み合わせて、列挙される効果を制御、低減、阻害、改善、予防もしくは別な方法で影響、および/または達成し得る量である。投与されるべき薬剤の有効量は、当該分野で周知の方法を使用して決定され得る。当業者は、投与のモード(mode)、治療される疾患または状態(もしあれば)、ならびに被験体の特性、例えば、一般的健康状態、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、体重、および薬物に対する耐性を考慮に入れる。「患者」は、治療の必要なヒト被験体をいい得る。
【0067】
本発明の抗体または断片は、薬学的に許容され得る担体中に提供され得るか、または全身投与および局所もしくは局部投与を含む種々の投与のモードのために製剤化され得る。技術および製剤は、一般的に、Remmington’s Pharmaceutical Sciences, Meade Publishing Co., Easton, PAに見られ得る。特定の態様において、抗体またはその断片は、経粘膜または経皮送達のために提供される。かかる投与のために、浸透されるべき障害に適切な浸透剤(penetrant)が、ポリペプチドと共に製剤中で使用される。かかる浸透剤は、一般的に当該分野で公知であり、例えば、経粘膜投与のための胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。さらに、界面活性剤が、浸透を容易にするために使用され得る。経粘膜投与は、鼻スプレー(nasal spray)を介してかまたは坐剤を使用してであり得る。局所投与のために、本発明の組成物は、当該分野で一般的に公知であるように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0068】
本発明に従う医薬組成物は、抗体またはその断片を、担体、賦形剤および添加剤または助剤を使用して被験体への投与に適切な形態にすることによって、調製される。しばしば使用される担体または助剤としては、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール、および他の糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロース、およびその誘導体、動物油(animal oil)および植物油、ポリエチレングリコールおよび溶媒、例えば、滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールが挙げられる。静脈注射のビヒクルは、液体(fluid)および栄養分補充剤を含む。保存剤としては、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性気体が挙げられる。他の薬学的に許容され得る担体としては、例えば、その各々の内容が参照によって本明細書に援用されるThe Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (Philadelphia College of Pharmacy and Science, 2000)およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 22nd Edition (Pharmaceutical Press and Philadelphia College of Pharmacy at University of the Sciences, 2012), およびRemington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed. Easton: Mack Publishing Co., 1405-1412, 1461-1487 (1975)およびThe National Formulary XIV., 14th ed. Washington: American Pharmaceutical Association (1975)に記載されるように、水溶液、塩を含む非毒性賦形剤、保存剤、バッファ等が挙げられる。医薬組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、当該分野においてルーチンの技術に従って調整される。Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed.) and Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis for Therapeutics, 12th edition, (McGraw Hill Professional Publishing, 2010)を参照。
【0069】
医薬組成物は、用量単位で調製され、かつ投与され得る。固体の用量単位は、錠剤、カプセルおよび坐剤であり、例えば、アルギン酸塩系pH依存性放出ゲルキャップが挙げられる。被験体の治療について、医薬組成物の活性、投与の様式、障害の性質および重篤度、被験体の年齢および体重に依存して、異なる1日用量が必要である。しかし、特定の状況下で、より高いまたはより低い1日用量が適切であり得る。1日用量の投与は、個々の用量単位の形態の単回投与によってまたはいくつかのより小さな用量単位によって、および特定の間隔での細分された用量の複数回の投与によってもの両方で行われ得る。
【0070】
本発明に従う医薬組成物は、治療有効用量で局所的または全身に投与され得る。この使用のために有効な量は、もちろん、疾患の重篤度ならびに被験体の体重および一般的状態に依存する。上記で議論したように、インビトロで使用される投薬量は、医薬組成物のインサイチュ(in situ)での投与に有用な量における有用な指針を提供し得、動物モデルは、特定の障害の治療についての有効投薬量を決定するために使用され得る。種々の考察が、例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990); Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis for Therapeutics, 12th edition, (McGraw Hill Professional Publishing, 2010)に記載され、その各々は、参照によって本明細書に援用される。
【0071】
1つの態様において、本発明は、かかる治療を必要とする被験体に抗体またはその抗原結合断片を投与するのに有用な医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物を「投与すること」は、当業者に公知の任意の手段によって達成され得る。「被験体」は、哺乳動物、最も好ましくはヒトをいう。
【0072】
抗体またはその断片は、非経口的に、腸的に、注射、迅速注入(rapid infusion)、鼻咽頭吸収、皮膚吸収によって、直腸的、および経口的に投与され得る。非経口投与のための薬学的に許容され得る担体調製物としては、滅菌溶液または水溶液または非水溶液、懸濁液、およびエマルジョンが挙げられる。非水溶媒の具体例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、およびオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。閉鎖包帯のための担体は、皮膚浸透性を増大させ、抗原吸収を増強するために使用され得る。経口投与のための液体剤形は、一般的に、液体剤形を含むリポソーム溶液を含み得る。適切な固体または液体医薬調製物形態は、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、被覆錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ剤、エマルジョン、懸濁剤、クリーム、エアロゾル、ドロップ、またはアンプル形態の注射可能な溶液であり、活性化合物の放出が延長された調製物でもあり、ここで、これらの調製物では、崩壊剤、結合剤、被覆剤、膨潤剤(swelling agent)、滑沢剤、矯味剤(flavoring)、甘味剤、およびエリキシル等の賦形剤および添加剤および/または助剤は、精製水等の当該分野で通常使用される不活性希釈剤を含む。疾患または障害が胃腸障害の場合、経口製剤または坐剤製剤が好ましい。
【0073】
滅菌注射可能な溶液は、抗体またはその抗原結合断片を必要とされる量(例えば、約10μg〜約10mg/kg)で適切な溶媒に組み込み、次いで、滅菌濾過等によって滅菌することによって調製され得る。さらに、散剤は、凍結乾燥または真空乾燥等の標準的な技術によって調製され得る。
【0074】
別の態様において、抗体またはその断片は、GI管における持続放出、または活性が意図される部位への長期の活性剤の放出特性を伴う標的臓器の移植のいずれかのために、持続放出特性のための生分解性担体を用いて調製される。生分解性ポリマーとしては、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物(polyanhydride)、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ酢酸(poly acetic acid)が挙げられる。リポソーム性製剤もまた使用され得る。
【0075】
活性素(active principle)に適合性の任意の投与経路が使用され得る。いくつかの態様において、投与経路は、非経口投与、例えば、皮下、筋内または静脈注射である。投与されるべき抗体またはその抗原結合断片の用量は、患者の年齢、体重、および個々の応答に従う医療処方の基礎(basis)に依存する。
【0076】
患者のための1日非加重(non-weighted)投薬量は、約2.5〜5.0 mg/Kg、例えば、約2.5〜3.0 mg/Kg、約3.0〜3.5 mg/Kg、約3.5〜4.0 mg/Kg、約4.0〜4.5 mg/Kg、および約4.5〜5.0 mg/Kgであり得る。
【0077】
非経口投与のための医薬組成物は、活性素および適切なビヒクルを含む注射可能な形態に調製され得る。非経口投与のためのビヒクルは、当該分野で周知であり、例えば、水、食塩水、リンゲル液、および/またはデキストロースを含む。ビヒクルは、医薬調製物の安定性および等張性を維持するために、少量の賦形剤を含み得る。言及した溶液の調製は、通常の様式(modality)に従って行われ得る。
【0078】
本発明は、特定の態様を参照して記載されるが、記載の内容は、保存的アミノ酸置換を含む全ての改変および置換を含み、これは、特許請求の範囲の意味および目的を越えて拡張されることなく、当業者によってもたらされ得る。所望の場合、組成物は、活性成分を含む1つ以上の単位剤形を含み得るパックまたはディスペンサーデバイス中にもたらされ得る。パックは、例えば、ブリスターパック等の金属またはプラスチックホイル(foil)を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための指示書が付随し得る。
【0079】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な比較目的のためにアライメントされる(例えば、最適なアライメントのために、ギャップが、第1および第2のアミノ酸または核酸配列の1つまたは両方に導入され得、非相同配列は、比較目的のために無視され得る)。好ましい態様において、比較目的のためにアライメントされる参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位またはヌクレオチド位でアミノ酸残基またはヌクレオチドが、比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占有される場合、分子は、その位置で同一である。
【0080】
2つの配列の間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の間のパーセント相同性は、配列によって共有される保存位置の数の関数であり、これには、2つの配列の最適なアライメントのために導入されることが必要なギャップの数および各ギャップの長さが考慮される。配列の比較ならびに2つの配列の間のパーセント同一性および/またはパーセント相同性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい態様において、2つのアミノ酸配列の間のパーセント同一性は、NeedlemanおよびWunsch((1970) J. Mol. Biol. 48:444-453)アルゴリズムを使用して決定され、これは、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれ(Accelrysウェブサイトでインターネットで入手可能、より具体的にはhttp://www.accelrys.com)、これは、Blossum 62マトリックスまたはPAM250 マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6または4のギャップ加重(gap weight)および1、2、3、4、5または6の長さ加重(length weight)を使用している。なお別の好ましい態様において、2つのヌクレオチド配列の間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムを使用して決定され(拡張子gcg.comを用いたワールドワイドウェブで入手可能)、これは、NWSgapdna CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70または80のギャップ加重および1、2、3、4、5または6の長さ加重を使用している。パラメーターの特定の好ましいセット(および他に特定されない限り使用されるべきセット)は、12のギャップペナルティー(gap penalty)、4のギャップ伸長ペナルティー(gap extend penalty)、および5のフレームシフトギャップペナルティー(frame shift gap penalty)を用いるBlossum 62スコアリングマトリックスである。
【0081】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の間のパーセント同一性および/または相同性は、E. MeyersおよびW. Miller ((1989) CABIOS, 4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定され得、これは、ALIGNプログラム(version 2.0)に組み込まれ、これは、PAM120加重残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティー(gap length penalty)、および4のギャップペナルティーを使用している。
【0082】
「ストリンジェンシーハイブリダイゼーション」または「低いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、高いストリンジェンシー、または非常に高いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズする」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を記載するために、本明細書で使用される。ハイブリダイゼーション反応を行うための指針は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6:3.6に見出され得、これは、参照によって援用される。水性および非水性の方法がこの参考文献に記載され、いずれかが使用され得る。本明細書に参照される特定のハイブリダイゼーション条件は、以下のとおりである:1)約45℃で6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、続いて、少なくとも50℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での2回の洗浄(洗浄の温度は、低いストリンジェンシー条件について55℃まで上昇され得る)の低いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;2)約45℃で6×SSC中、続いて、60℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄の中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;3)約45℃で6×SSC中、続いて、65℃で0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄の高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件;および好ましくは、4)65℃で0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS、続いて、65℃で0.2×SSC、1%SDSでの1回以上の洗浄の非常に高いストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件。非常に高いストリンジェンシー条件(4)が好ましい条件であり、他に特定されなければ使用されるべき条件である。配列の間の相同性または配列同一性(用語は本明細書で交換可能に使用される)の計算は、上記のとおりに行われる。
【0083】
本願で参照されるアミノ酸配列は、対応する配列識別名(配列番号)を伴って以下に列挙される:
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
。
【0084】
本発明は、以下の非限定的実施例によって説明される。
【実施例】
【0085】
実施例1:マウス抗体21G6のヒト化
マウス21G6は、非筋肉ミオシンネオエピトープ(neo-epitope)N2 12マー配列:LMKNMDPLNDNV (配列番号: 47)に対して惹起されたIgG1重鎖およびκ軽鎖である。マウス21G6抗体は、米国特許8,324,352により詳細に記載され、その内容は、本明細書に明示的に援用される。IMGTデータベース(http://www.imgt.org)を使用して、マウス21G6抗体に対して最大の相同性を有するヒト生殖細胞系抗体配列を同定するために、検索を行った。さらに、相同なヒト非生殖細胞系抗体を同定するために、BLAST検索を行った。
図1に示す配列を、最大アミノ酸相同性を有するとして決定した。
【0086】
図1は、マウス21G6重鎖可変(VH)領域可変重(variable heavy)とヒト化重鎖可変領域(VH)H1-21G6、H2-21G6およびH3-21G6についての配列比較を示し、
図1はまた、マウス21G6軽鎖可変(VL)領域とヒト化軽鎖可変領域軽鎖(VL)領域L1-21G6、L2-21G6およびL3-21G6の配列比較を示す。
【0087】
H1-21G6およびL1-21G6枠組みは、重鎖および軽鎖のそれぞれについて、狼瘡(lupus)および慢性リンパ性白血病(CLL)患者から得られたB細胞に由来した。残りの配列は、生産的な(productive)抗体をコードし、最大の相同性を有する生殖細胞系配列を示す。ヒト化配列の全ては、マウス21G6CDR領域を維持し、該CDR領域を
図1中のボックス内に示す。ヒト化可変領域を、野生型ヒトIgG1、アミノ酸297で変異(Asn297からQ297)を含むヒトIgG1、アミノ酸228で変異(セリンからプロリン)を含むヒトIgG4およびヒトκ軽鎖を含むベクターにクローニングした。各抗体(重および軽)組み合わせを、(低Ig血清の存在下で)293A細胞における一過性同時トランスフェクションによって発現した。抗体含有上清を、回収し、ELISAおよびBiacoreによってN2ペプチドへの結合について分析した。全ての実験を、BiacoreX100システムを使用して行った。抗体捕捉実験について、CM5チップを、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の7分間の10μl/分の注入、続いてのpH5酢酸ナトリウム中の25μg/mlの濃度の抗ヒトFc(GE Lifesciences)の3分間の10μl/分の注入によって調製した。エタノールアミン−HClを、10μl/分で7分間注入した。キメラまたはヒト化抗体を、フローセル2上に捕捉し、種々の濃度でN2ペプチドを、30μl/分の速度でフローセル1および2上に流し、接触時間は120秒であり、解離期間は120秒であった。捕捉された抗体の完全な除去を、10μl/分の流速で30秒間、3M MgCl2で再生することによって達成した。ペプチド固定化実験のために、CM5チップを、100〜200RUの固定応答のために、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の7分間の10μl/分の注入、続いてのpH5酢酸ナトリウム中の5μg/mlの濃度のニュートラビジン(Neutravidin)(ThermoFisher Pierce)の10μl/分の注入によって調製した。エタノールアミン−HClを、10μl/分で7分間注入した。ビオチン標識N2ペプチドを、約50〜100RUの実験Rmaxの目標をもって、フローセル2上に捕捉した。精製したキメラまたはヒト化抗体を、120秒の接触時間の間、30μl/分の速度で両方のフローチャネル上に流し、600秒間解離させた。再生を、30秒間のpH1.7のグリシンを用いて達成し、このようにして、活性表面を保持した。見かけの親和性定数および抗体オン/オフ速度を、以下の表1A、1B、2、3Aおよび3Bに示す。
【表1A-1】
【表1A-2】
【表1B-1】
【表1B-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表3A】
【表3B】
【0088】
t検定によって決定した場合、マウス21G6およびH1/L1とマウス21G6およびH2/L2の間に有意な差はなかった(マウス21G6: n =4; 9r/9r: n=3; 69/9r: n=2)。
【0089】
実施例2:CHO細胞中での産生の増大のためのヌクレオチド配列の最適化
ヒト化抗体の最適な発現について、クリセタラス グリセウス(Cricetulus griseus)(チャイニーズハムスター)のコドンプリファレンス(codon preference)を使用するために、最適化を行った。GeneOptimizerプログラムもまた、異常なmRNAスプライシングを防止し、所望されないポリA結合モチーフを排除し、遺伝子のGC含量を最適化し、タンパク質の翻訳効率を低減させ得る所望されないRNA二次構造を防止するために、配列を最適化し、それによって、全体の抗体発現が増加した。H4-21G6およびL2-21G6についてのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列 (それぞれ、配列番号: 54、66、55および67)を、http://www.lifetechnologies.com/us/en/home/life-science/cloning/gene-synthesis/geneart-gene-synthesis/geneoptimizer.html(その内容は、参照によって本明細書に明示的に援用される)に記載されるGENEOPTIMIZER(登録商標)プロセスを使用して最適化するために、Life Technologiesに送った。
図3は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内でのヒト化抗体の産生について最適化されたヒト化重鎖可変領域H4をコードするヌクレオチド配列を示し、各+は、配列番号:66に比べて変更がなされた場所を示す。
図4は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内でのヒト化抗体の産生について最適化されたヒト化軽鎖可変領域L2をコードするヌクレオチド配列を示す。各+は、配列番号:67に比べて変更がなされた場所を示す。
図5は、ネイティブ(赤)または最適化(青)抗体配列のいずれかでのトランスフェクションの後の第5日における組換え抗体発現のレベルを示す。CHO細胞への組換え抗体配列の組み込みを、トランスフェクタントDS5およびDS7について10μg/mlピューロマイシンおよび100mMメトトレキサートの存在下での選択、またはトランスフェクタントDS6およびDS8について20μg/mlピューロマイシンおよび200mMメトトレキサートの存在下での選択によって達成した。
【0090】
本発明は、その好ましい態様を参照して具体的に示され記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、好ましい態様に、形態および詳細における種々の変更がなされ得ることが、当業者によって理解される。