【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明しようとする。これら実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されるものに解釈されないことは当該分野での通常の知識を持った者に明らかであろう。
【0033】
実施例1:疎水性抗癌剤を封入した“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の製造
疎水性抗癌剤、ヒト血清アルブミン(HSA)及びポルフィリンが非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子を下記の方法で製造した。
HSA(LEE BIOSOLUTIONS, INC, USA)88mgを10mMのNaCl溶液10mLに入れ、常温にて磁気攪拌機で徐々に掻きまぜながら溶かした後、1NのNaOH溶液でpHを8.0〜8.5に調整した。ついで、パクリタキセル(LC Laboratories, USA)10mgを純粋エタノール1mLに添加した後、磁気攪拌機が回転している10mLのHSA溶液に0.5mL/minの速度で落として混合した。
ヒト血清アルブミンとパクリタキセルが混合した前記溶液を4時間以上常温で掻きまぜた後、この溶液にエタノールを0.5mL/minの速度でナノ粒子が生成するまで落としながら混合した。およそ4mLのエタノールが添加されれば、パクリタキセル−ヒト血清アルブミンナノ凝集粒子が生成しながら透明な溶液が不透明のやや濁っている色に変わった。
このナノ凝集粒子溶液は、回転蒸発濃縮機で45℃の熱を加えながらエタノールを徐々に蒸発させることで、自然に疎水性抗癌剤がナノ粒子の中心部に堅たく結合し、アルブミンはナノ粒子の表面から突出するようにした。
パクリタキセル−ヒト血清アルブミンナノ粒子が形成された後、この溶液に1mgのプロトポルフィリンIX(SIGMA−ALDRICH)が0.5mLの純粋エタノールに溶けているプロトポルフィリンIX溶液を添加して、パクリタキセル−ヒト血清アルブミンナノ粒子にプロトポルフィリンIXをコートすることで、パクリタキセル、ヒト血清アルブミン及びポルフィリン系化合物が非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子溶液を製造した。
【0034】
次いで、パクリタキセル−ヒト血清アルブミン−プロトポルフィリンIXが非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子溶液を20KHzの超音波で30秒の間隔で2分以上処理してナノ粒子を粉碎した後、このナノ粒子分散液を0.45μmのフィルターで濾過し、50,000gで20分間遠心分離した。
遠心分離法によって沈澱したナノ粒子は1mLの10mM NaCl溶液に溶かした後にすぐ凍結乾燥してナノ粒子の構造的安定性を強化した。凍結乾燥された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”はその状態で保管してから、必要時に0.9%生理食塩水に溶かして使った。“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”はさび色であった。
【0035】
前記過程によって製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”は原子間力燎微鏡(AFM)あるいはTEM電子燎微鏡で粒径を分析して、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の形態的特性を観察した。
また、パクリタキセル以外にも、疎水性を有する抗癌剤も基本的に前述した方法において各抗癌剤のみを取り替えて適用することができる。本発明では、セドロール(cedrol)を使って同一方法で“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を製造した。表1は疎水性抗癌剤を封入した“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の平均粒径を示し、
図1は疎水性抗癌剤を封入した“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の高配率透過電子燎微鏡(TEM)観察写真、
図2は低倍率原子間力顕微鏡(AFM)及び透過電子燎微鏡(TEM)の観察写真である。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2:親水性抗癌剤を封入した“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の製造
親水性抗癌剤、ヒト血清アルブミン(HSA)及びポルフィリンが非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子を下記の方法で製造した。
HSA(LEE BIOSOLUTIONS, INC, USA)88mgとドキソルビシン(CHEMIELIVA, CHINA)20mgを10mMのNaCl溶液10mLに一緒に入れ、常温で磁気攪拌機で徐々に掻きまぜながら溶かした後、1NのNaOH溶液でpHを8.0〜8.5に調整した。
次いで、磁気攪拌機が回転している前記ヒト血清アルブミン−ドキソルビシン溶液の温度を4℃に冷却し、1時間の間に磁気攪拌機で混合した後、4℃で磁気攪拌機でこの溶液を掻きまぜながらエタノールを0.5mL/minの速度でナノ凝集粒子が生成するまで落としながら混合した。およそ10mLのエタノールが添加されれば、ドキソルビシン−ヒト血清アルブミンナノ凝集粒子生成し、透明な溶液が不透明のやや濁っている色に変わった。
ドキソルビシン及びヒト血清アルブミンが凝集したナノ粒子溶液を−20℃に凍結させた後、氷片上で2時間以上放置し、徐々に溶かすことで、ドキソルビシン結晶はナノ粒子の中心部に、ヒト血清アルブミンはナノ粒子の周辺部に位置するようにした。
ドキソルビシン及びヒト血清アルブミンが非共有的に結合されたナノ粒子が形成された後、この溶液に1mgプロトポルフィリンIX(SIGMA−ALDRICH)が0.5mL純粋エタノールに溶けているプロトポルフィリンIX溶液を添加して、ドキソルビシン−ヒト血清アルブミンナノ粒子にプロトポルフィリンIXをコートすることで、ドキソルビシン、ヒト血清アルブミン及びポルフィリン系化合物が非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子溶液を製造した。
【0038】
ドキソルビシン−ヒト血清アルブミン−プロトポルフィリンIXが非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子溶液を20KHzの超音波で30秒の間隔で2分以上処理してナノ粒子を粉碎し、このナノ粒子分散液を0.45μmのフィルターで濾過した後、50,000gで20分間遠心分離した。
遠心分離法によって沈澱したナノ粒子は1mLの10m MNaCl溶液に溶かした後にすぐ凍結乾燥してナノ粒子の構造的安定性を強化した。凍結乾燥された“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”はその状態で保管してから、必要時に0.9%生理食塩水に溶かして使った。“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”はさび色であった。
前記過程によって製造された“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”は原子間力燎微鏡(AFM)あるいはTEM電子燎微鏡で粒径を分析して、“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の形態的特性を観察した。
また、ドキソルビシン以外にも、親水性を持つ抗癌剤の中でオキサリプラチン(SIGMA−ALDRICH)及びゲムシタビンから同一方法で標的指向増幅型抗癌ナノ粒子を製造し、粒径を下記表2に示した。
図3は親水性抗癌剤(ドキソルビシン、オキサリプラチン及びゲムシタビン)、ヒト血清アルブミンナノ粒子及びプロトポルフィリンIXが非共有的に結合された標的指向増幅型抗癌ナノ粒子の透過電子燎微鏡(TEM)観察写真である。
【0039】
【表2】
【0040】
実験例1:“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の構造的安全性の確認
実施例1及び2で製造された“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の構造的安全性を確認するために、水溶液でのナノ粒子構造維持可否を確認した。このために、粉末状の“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を生理食塩水に溶かして得たナノ粒子溶液を常温で12時間及び60時間放置した後、沈澱や変色などの変化を観察して
図4に示した。
図4に示したように、“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(A:パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子、B:ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子、C:オキサリプラチン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子、D:ゲムシタビン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子)は60時間以上構造的及び形態的特徴を安定的に維持していることを示した。
【0041】
実験例2:“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の癌組織標的指向性(Targeting)の確認
実施例1及び2で製造された“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の癌組織標的指向性を確認するために、人間の乳房癌モデルであるヌードマウスに本発明の“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を注射した後、癌組織と正常組織での抗癌剤分布を測定した。
乳房癌細胞株MDA−MB−231(KCLB(登録商標),Korean Cell Line Bank)を培養した後、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(ダムルサイエンス)の皮下に注射し、無菌条件でマウスを育てて癌組織が100mm
3以上成長すれば、実施例1及び2で製造された“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を10mg/kg/日の容量で静脈注射した。薬物静脈注射の後、16時間が経った後、各マウス群はそれぞれ臓器別に引き離し、そのマウスの臓器をビードビーターでまったく擦った。ビードビーターでまったく擦れた組織はアセトニトリル溶媒で抽出し、その溶媒をLC/MSで分析して各組織内の薬物の濃度を測定した。各マウスにおいて、薬物投与量(ID)に対する伝達された薬物の濃度を正常組織と癌組織で測定し、その結果を表3に示した。
【0042】
【表3】
【0043】
表3から、対照区である遊離薬物の癌組織への伝達率は正常組織伝達率にほぼ同じ水準で、標的指向性がほとんどないが、実施例1及び2で製造された“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”は癌組織に対する標的指向性が著しく増加したことを確認することができた。
また、実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を標的指向物質が付いていない既存のパクリタキセル−ヒト血清アルブミンナノ粒子である抗癌剤Abraxane(Celgene社)と比較し、各組織別に薬物伝達率を測定した。
実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の癌組織標的指向増幅性を確認するために、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を癌が誘導されたマウスに静脈注射してから4時間後、癌組織に630nm波長のLED光源を100mmol/m
2s
2の条件で30分間照射し、マウス組織に対する薬物伝達率を確認した。
図5に示したように、Abraxaneの場合、人間の乳房癌モデルヌードマウスの正常組織と癌組織での薬物濃度の差がなく、標的指向性が低かった。しかし、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)の場合には、肝、心臓、肺、脾臓、筋肉、頭脳、胃、腎臓の正常組織での薬物濃度は0.1〜2.4%ID/gramであるが、癌組織での薬物濃度は7〜9%ID/gramであった。特に、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の投与後、そのマウスにLED光を照射すれば、癌組織標的指向が19〜26%ID/gramの程度に増加したことを確認した。
【0044】
実験例3:“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の正常組織に対する毒性評価
実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の正常組織に対する毒性を評価した。
乳房癌細胞株MDA−MB−231(KCLB, Korean Cell Line Bank)を培養した後、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(ダムルサイエンス)の皮下に注射した後、無菌条件でマウスを育てて癌組織が200mm
3程度に成長するようにして、癌(tumor xenograft)動物モデルを樹立した。
ヌードマウスでの癌誘導が完了した後、腫瘍誘導ヌードマウスと正常ヌードマウスを一群当たり(n=6)で準備し、次のように決定された量のパクリタキセルと本発明の“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を静脈注射した。パクリタキセルに対する毒性評価は、正常ヌードマウスを7群に分けた後、各群のマウス当たり20、40、60、80、100、120、250mg/kg/dの量のパクリタキセルをそれぞれ注射した。
“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”に対する毒性評価は、正常ヌードマウスと腫瘍誘導ヌードマウスをそれぞれ10群に分けた後、各群のマウス当たり20、40、60、80、100、120、250、300、350及び400mg/kg/dの量の“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”をそれぞれ注射した。注射後、すべてのマウスの体重と物理的変化を14日間観察し、死んだマウスからパクリタキセルと“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”のLD50(50%致死量)を測定して、パクリタキセルと“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”に対する毒性を評価して
図6に示した。
【0045】
図6に示すように、本発明の“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”LD50は91mg/kg/dで、パクリタキセルのLD50である30mg/kg/dに比べて3倍以上増加して、正常組織に対する毒性が著しく減少したことが分かった。
特に、本発明の“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”は癌組織に抗癌剤が伝達される効率が画期的に向上し、正常組織には抗癌剤がほとんど伝達されなく(
図5)、腫瘍誘導ヌードマウスの場合、LD50値がおよそ194mg/kg/dに増加することから、癌がかかったマウスの、毒性がもっと画期的に減少することが分かった(
図6のC)。
【0046】
実験例4:“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の透過残留性向上の効果
本発明の“標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”は抗癌剤、血清アルブミン、ポルフィリン系化合物が全て非共有的に結合されており、ポルフィリン系化合物がナノ粒子の表面に分布することが最大の特徴である。よって、ポルフィリン系化合物の固有な化学構造及び特性がそのまま保存されるので、抗癌ナノ粒子投与後、電磁気波を照らすと、抗癌ナノ粒子の標的指向性が増幅して抗癌剤の癌伝達率が増加することに予測された。
実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)が癌細胞株を移植させた実験動物に投与した後、ヒト血清アルブミンに結合するエバンスブルー染料(EBD)(SIGMA−ALDRICH)が癌細胞にどのくらい蓄積されるかを観察することにより、透過残留性向上の効果を確認した。
まず、ヌードマウス(ダムルサイエンス)に肺癌細胞株(KCLB、Korean Cell Line Bank)を移植した後、癌組織が50mg以上まで成長するようにヌードマウスを育てた。癌組織が誘導されたマウスに対照群である生理食塩水、アブラキサン(CelgeneのAbraxane)及び実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を20mg/kg容量で静脈注射した。
ついで、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”が投与されたマウスに、波長630nm、光強度100mmol/m
2s
2のLED光を各マウスに30分間照射した。LED光処理の終了後、そのマウスに直ちにエバンスブルー染料(1mg/ml,200μl)を静脈注射した。6時間後、癌組織を抽出し、ホルムアミド3mlを盛っているチューブに入れ、60℃恒温水槽に48時間入れ、抽出したエバンスブルー染料の量を分光光度計(620nm)で測定し、その結果を
図7に示した。
【0047】
図7から、実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)は対照群及びアブラキサン(Abraxane)に比べて透過残留性向上効果が著しく向上したことを確認することができた。
【0048】
実験例5:“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を用いた初期癌治療効能の評価
実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の初期癌治療効能を次の方法で評価した。
乳房癌細胞株MDA−MB−231(KCLB, Korean Cell Line Bank)を培養した後、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(ダムルサイエンス)の皮下に注射した後、無菌条件でマウスを育て、癌組織が100mm
3以上成長するようにして、治療効能を研究するための初期癌移植動物モデルを樹立した。
対照群である生理食塩水、アブラキサン(CelgeneのAbraxane)及び実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を10mg/kg/日の容量で0、3、7、10日にそれぞれ静脈注射し、3週間観察した。
癌組織のサイズを分析するために、ルシフェラーゼ(luciferase)発現癌細胞株の生物発光画像法(bioluminescence imaging)を遂行した。癌細胞を発光させるために、D−luciferin 150mgをluciferin/kgの濃度でマウスに腹腔注射し、イソフルレンガス(isoflurane gas)と酸素を混合して吸入痲酔させた後、Xenogen imager(IVIS200)で発光された癌細胞を重畳撮影し、Igor Pro imaging analysis softwareで分析し、その結果を
図8に示した。
【0049】
図8から、最初癌組織のサイズと21日後の癌組織のサイズを比較した結果、生理食塩水対照群の場合、癌組織のサイズが急に増加し、アブラキサン(Abraxane)処理群でも依然として癌組織が成長しており、無処理対照群と大きな差がないことを確認することができた。一方、本発明の実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)は癌組織がまったくなくなるほどに効能が優れることを確認することができた。
【0050】
実験例6:“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を用いた末期癌治療効能の評価
標的指向増幅型抗癌ナノ粒子を投与した後、電磁気波を照らすと、標的指向性が画期的に増幅して、現在まで不可能な末期癌も治療する可能性がある。よって、実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”の末期癌治療効能を次の方法で評価した。
肺癌細胞株NCI−H460−luc2(Califer Life Sciences)を培養し、5×10
6の細胞を6〜8週齢の雌性無胸腺ヌードマウス(athymic nude mouse)(ダムルサイエンス)の皮下に注射した後、癌組織が500mm3以上成長するようにして、末期癌の治療効能を研究するための癌移植動物モデルを樹立した。
対照群である生理食塩水、アブラキサン(CelgeneのAbraxane)及び実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を10mg/kg/日の容量で0、3、7、10、14日にそれぞれ静脈注射し、4週間観察した。
同時に、本発明の標的指向増幅型抗癌ナノ粒子の癌組織標的指向増幅性を確認するために、“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を末期癌が誘導されたマウスに静脈注射した後、癌組織に630nm波長のLED光を100mmol/m
2s
2の条件で30分ずつ照射する段階を付け加えた実験も同時にそれぞれ進行した。
癌組織のサイズを分析するために、ルシフェラーゼ(luciferase)発現癌細胞株の生物発光画像法(bioluminescence imaging)を遂行した。癌細胞を発光させるために、D−luciferin 150mgをluciferin/kgの濃度でマウスに腹腔注射し、イソフルレンガス(isoflurane gas)と酸素を混合して吸入痲酔させた後、Xenogen imager(IVIS200)で発光された癌細胞を重畳撮影し、Igor Pro imaging analysis softwareで分析し、その結果を表4及び
図9に示した。
【0051】
【表4】
※注:0.8E+08の値は癌組織が全然ないときの背景値程度である
【0052】
表4から、末期癌組織の最初サイズと28日後の癌組織のサイズを比較した結果、対照群である生理食塩水とアブラキサン(Abraxane(Celgene社))処理群の場合、癌組織のサイズが急に増加した一方、実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)処理群は癌組織が非常に減ることが分かった。
また、
図9から、最初癌組織のサイズと4週後の癌組織のサイズを生物発光画像法で比較した結果、生理食塩水対照群の場合、癌が急に大きくなり、アブラキサン(Abraxane)処理群でも依然として癌組織が成長しており、対照群と大きな差がないことを確認することができた。一方、本発明の実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)は癌組織が非常に減ることを確認した。
また、癌組織に蓄積されたポルフィリンを電磁気波LED処理で標的指向性を増幅させたマウス((+)表示)の場合、LED光を照射しなかったマウス((−)表示)と比較するとき、抗癌効能がもっと優れたことを確認することができた。特に、本発明の実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を投与し、LEDの照射でポルフィリンを活性化させたマウスは21日から28日の間に癌がまったくなくなったことを確認することができた。
【0053】
実験例7:“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”を用いた末期癌治療効能の評価
アブラキサン(CelgeneのAbraxane)及び実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)の代わりにそれぞれドキソルビシン(CHEMIELIVA, CHINA)及び実施例2で製造された“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を使ったことを除き、実験例6と同様な方法で末期癌に対する治療能を評価し、その結果を
図10に示した。
図10から、末期癌xenograftマウスにおいて、癌組織の最初サイズと28日後の癌組織のサイズを生物発光画像法で比較した結果、生理食塩水対照群の場合、癌が急に大きくなり、ドキソルビシン処理群でも依然として癌組織が大きく成長しており、対照群とは大きな差がないことを確認することができた。
一方、本発明の実施例2で製造された“ドキソルビシン封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)を処理しながら同時に電磁気波の一種であるLED光で標的指向性を増幅させれば、癌組織のサイズがめっきり減ってからまったくなくなることを確認した。
これは本発明の実施例1で製造された“パクリタキセル封入標的指向増幅型抗癌ナノ粒子”(JINISナノ粒子)の投与後にポルフィリンを活性化させた実験例6の結果と一致する。
【0054】
以上、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当該分野の通常の知識を持った者にとってこのような具体的な記述はただ好適な実施様態であるだけ、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されると言える。