特許第6162352号(P6162352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6162352
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】多孔質グラフェンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20170703BHJP
【FI】
   C01B32/184
【請求項の数】23
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-576090(P2016-576090)
(86)(22)【出願日】2015年7月1日
(86)【国際出願番号】CN2015083029
(87)【国際公開番号】WO2016000614
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】201410308860.1
(32)【優先日】2014年7月1日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517000162
【氏名又は名称】チーナン ションチュアン グループ シェア ホールディング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JINAN SHENGQUAN GROUP SHARE HOLDING CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン、イーリン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チンチュー
(72)【発明者】
【氏名】チョン、インフー
(72)【発明者】
【氏名】リウ、シアオミン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ティン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、エンホア
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103466613(CN,A)
【文献】 特開2013−193953(JP,A)
【文献】 特開2013−35743(JP,A)
【文献】 特開2013−251249(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対して触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、
保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、
保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、
保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、
保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5と
を含み、
前記ステップ1におけるバイオマス炭素ソースは、セルロース及び木質素から選ばれる一つ又は二つであり、
前記ステップ1における触媒とバイオマス炭素ソースの質量比は、(0.01〜2):1である多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記ステップ1におけるバイオマス炭素ソースは、セルロースであることを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記セルロースは、多孔質セルロースであることを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項4】
植物及び農林廃棄物から選ばれる一つ以上を含むバイオマス資源を、酸で加水分解することによりリグノセルロースを得るステップAと、
前記リグノセルロースに対して、酸処理、塩処理又は有機溶媒処理を含む処理を行うことにより多孔質セルロースを得るステップBと
を含むことを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項5】
前記ステップAにおけるバイオマス資源は、農林廃棄物であることを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項6】
前記農林廃棄物は、トウモロコシの茎、トウモロコシの穂軸、モロコシの茎、甜菜パルプ、砂糖黍のかす、フルフラールのかす、キシロースのかす、木の屑、綿の茎及び葦から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項7】
前記農林廃棄物は、トウモロコシの穂軸であることを特徴とする請求項に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項8】
前記ステップAにおける酸は、硫酸、硝酸、塩酸、ギ酸、亜硫酸、燐酸及び酢酸から選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項9】
前記ステップAにおける酸の使用量は、前記バイオマス資源の3wt%〜20wt%であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項10】
前記ステップAにおける加水分解の温度は、90℃〜180℃であり、
前記ステップAにおける加水分解の時間は、10min〜10hであることを特徴とする請求項4〜9のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項11】
前記ステップBにおける塩処理の方法は、酸性亜硫酸塩処理又はアルカリ性亜硫酸塩処理であることを特徴とする請求項4〜10のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項12】
前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、1〜7であり、
前記酸性亜硫酸塩処理過程における酸の使用量は前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であり、
前記酸性亜硫酸塩処理における酸の重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にすることを特徴とする請求項11に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項13】
前記酸性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であり、
前記酸性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間であることを特徴とする請求項11又は12に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、7〜14であり、
前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるアルカリの使用量は前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であり、
前記アルカリ性亜硫酸塩処理におけるアルカリの重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にすることを特徴とする請求項11に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項15】
前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であり、
前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間であることを特徴とする請求項11又は14に記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項16】
前記ステップBにおいて多孔質セルロースが得られた後、前記多孔質セルロースに対して漂白処理を行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項4〜15のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項17】
前記ステップ1における鉄系化合物は、鉄の塩化物、鉄のシアン化物及び鉄含有酸塩から選ばれる一つ以上を含み、
前記ステップ1におけるコバルト系化合物は、コバルトの塩化物及びコバルト含有酸塩から選ばれる一つ以上を含み、
前記ステップ1におけるニッケル系化合物は、ニッケルの塩化物及びニッケル含有酸塩から選ばれる一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項18】
前記ステップ1における触媒は、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、トリオキサラト鉄(III)酸カリウム、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル及び酢酸ニッケルから選ばれる一つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項19】
前記ステップ2における保護ガス、前記ステップ3における保護ガス、前記ステップ4における保護ガス及び前記ステップ5における保護ガスは、独立的に窒素ガスと不活性ガスから選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項20】
前記ステップ2における第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させる加熱速度は、5℃/min〜20℃/minであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項21】
前記ステップ3における第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させる加熱速度は、30℃/min〜40℃/minであることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項22】
前記ステップ4における第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させる加熱速度は、50℃/min〜60℃/minであることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【請求項23】
前記ステップ5における第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させる冷却速度は、30℃/min〜50℃/minであることを特徴とする請求項1〜22のいずれかに記載の多孔質グラフェンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、グラフェンの技術分野に関し、特に多孔質グラフェンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子から構成される単層のシート状の材料である。グラフェンは、ほぼ完全に透明なものであり、2.3%の光しか吸収しない。グラフェンの熱伝導率は、カーボンナノチューブやダイアモンドより高く、5300W/m・Kまでも達する。グラフェンの常温での電子移動度は15000cm/V・sを超え、カーボンナノチューブやシリコン結晶体を超える。グラフェンの電気抵抗率は、銅または銀より低く、わずか10−8Ω・mであり、世の中で電気抵抗率の一番小さい材料である。グラフェンは、優れた透明性、小さい電気抵抗率、早い電子移動速度等の長所を持つため、透明タッチスクリーン、ライトパネル及び太陽電池の製造に用いることができる。
【0003】
現在、グラフェンの製造方法には、主に機械的剥離法、化学気相蒸着法、熱分解によるエピタクシャル成長法等が含まれるが、その中、化学気相蒸着法によりグラフェンを製造するのが簡単で操作しやすく、大面積の高品質のグラフェンを得ることができる。例えば、出願番号が200810113596.0である中国特許には化学気相蒸着法によりグラフェンを製造する方法が公開されており、具体的には、触媒を含む基板を無酸素槽(anoxic reactor)に入れ、基板の温度が500℃〜1200℃に達するようにし、その後無酸素槽の中に炭素含有物質を注入してグラフェンを得る。前記触媒は金属又は金属化合物であり、前記炭素含有物質はメタン、アセチレン、エタノール、ベンゼン、トルエン及びシクロヘキサンから選ばれる一つ以上の物質である。従来技術において提供されるこのようなグラフェンの製造方法は、操作が便利で、簡単に行うことができ、大規模の生産に適用することができのみならず、このような製造方法により得られるグラフェンは、その品質が比較的に高い。しかし、従来技術により製造されるグラフェンは、電気伝導性が劣る。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、これに鑑みて、多孔質グラフェンの電気伝導性が良い多孔質グラフェンの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、
マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対して触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、
保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、
保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、
保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、
保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5と
を含む多孔質グラフェンの製造方法を提供する。
【0006】
好ましくは、前記ステップ1におけるバイオマス炭素ソースは、セルロース及び木質素から選ばれる一つ又は二つである。
【0007】
好ましくは、前記ステップ1におけるバイオマス炭素ソースは、セルロースである。
【0008】
好ましくは、前記セルロースは、多孔質セルロースである。
【0009】
好ましくは、前記多孔質セルロースの製造方法は、
植物及び農林廃棄物から選ばれる一つ以上を含むバイオマス資源を、酸で加水分解することによりリグノセルロースを得るステップAと、
前記リグノセルロースに対して、酸処理、塩処理又は有機溶媒処理を含む処理を行うことにより多孔質セルロースを得るステップBと
を含む。
【0010】
好ましくは、前記ステップAにおけるバイオマス資源は、農林廃棄物である。
【0011】
好ましくは、前記農林廃棄物は、トウモロコシの茎、トウモロコシの穂軸、モロコシの茎、甜菜パルプ、砂糖黍のかす、フルフラールのかす、キシロースのかす、木の屑、綿の茎及び葦から選ばれる一つ以上である。
【0012】
好ましくは、前記農林廃棄物は、トウモロコシの穂軸である。
【0013】
好ましくは、前記ステップAにおける酸は、硫酸、硝酸、塩酸、ギ酸、亜硫酸、燐酸及び酢酸から選ばれる一つ以上である。
【0014】
好ましくは、前記ステップAにおける酸の使用量は、前記バイオマス資源の3wt%〜20wt%である。
【0015】
好ましくは、前記ステップAにおける加水分解の温度は、90℃〜180℃であり、前記ステップAにおける加水分解の時間は、10min〜10hである。
【0016】
好ましくは、前記ステップBにおける塩処理は、酸性亜硫酸塩処理又はアルカリ性亜硫酸塩処理である。
【0017】
好ましくは、前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、1〜7であり、
前記酸性亜硫酸塩処理過程における酸の使用量は前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であり、
前記酸性亜硫酸塩処理における酸の重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にする。
【0018】
好ましくは、前記酸性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であり、
前記酸性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間である。
【0019】
好ましくは、前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、7〜14であり、前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるアルカリの使用量は前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であり、
前記アルカリ性亜硫酸塩処理におけるアルカリの重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にする。
【0020】
好ましくは、前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であり、前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間である。
【0021】
好ましくは、前記ステップBにおいて多孔質セルロースが得られた後、前記多孔質セルロースに対して漂白処理を行うステップをさらに含む。
【0022】
好ましくは、前記ステップ1における触媒とバイオマス炭素ソースの質量比は、(0.01〜2):1である。
【0023】
好ましくは、前記ステップ1における鉄系化合物は、鉄の塩化物、鉄のシアン化物及び鉄含有酸塩から選ばれる一つ以上を含み、
前記ステップ1におけるコバルト系化合物は、コバルトの塩化物及びコバルト含有酸塩から選ばれる一つ以上を含み、
前記ステップ1におけるニッケル系化合物は、ニッケルの塩化物及びニッケル含有酸塩から選ばれる一つ以上を含む。
【0024】
好ましくは、前記ステップ1における触媒は、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、トリオキサラト鉄(III)酸カリウム、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル及び酢酸ニッケルから選ばれる一つ以上を含む。
【0025】
好ましくは、前記ステップ2における保護ガス、前記ステップ3における保護ガス、前記ステップ4における保護ガス及び前記ステップ5における保護ガスは、独立的に窒素ガスと不活性ガスから選ばれる一つ以上である。
【0026】
好ましくは、前記ステップ2における第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させる加熱速度は、5℃/min〜20℃/minである。
【0027】
好ましくは、前記ステップ3における第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇される加熱速度は、30℃/min〜40℃/minである。
【0028】
好ましくは、前記ステップ4における第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させる加熱速度は、50℃/min〜60℃/minである。
【0029】
好ましくは、前記ステップ5における第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させる冷却速度は30℃/min〜50℃/minである。
【0030】
本発明は、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対して触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5とを含む、多孔質グラフェンの製造方法を提供する。本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、電気伝導性が良い。実験結果から分かるように、本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンの導電率は、40000S/mまで達することができる。
【0031】
そして、本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは薄層構造であり、Sp2混成程度が高い。また、本発明が提供する多孔質グラフェンの製造方法によれば、工程が簡単で、エネルギー消費が低く、コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施例や従来技術における技術案をより明確に説明するため、以下では実施例や従来技術の説明に必要な図面について簡単に紹介する。以下の説明に使用される図面は、ただ本発明の実施例にすぎず、当業者にとっては、創造的労働を必要とせず、既に提供された図面に基づいてその他の図面が得られることは、自明なことである。
図1は、本発明の実施例6により得られるグラフェンのラマンスペクトルである。
図2は、本発明の実施例6により得られるグラフェンの透過電子顕微鏡図である。
図3は、本発明の実施例6により得られるグラフェンの透過電子顕微鏡図である。
図4は、本発明の実施例6により得られるグラフェンの透過電子顕微鏡図である。
図5は、本発明の実施例6により得られるグラフェンの透過電子顕微鏡図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施例における技術案について明確且つ完全な説明を行う。説明される実施例は、ただ本発明の一部の実施例にすぎず、全部の実施例ではないことは無論のことである。本発明の実施例に基づいて、当業者が、創造的な労働を必要とせず得られるすべてのその他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0034】
本発明は、
マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対し触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、
保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、
保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、
保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、
保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5と
を含む多孔質グラフェンの製造方法を提供する。
【0035】
本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、導電性能が良い。そして、本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは薄層構造を有しており、Sp2混成程度が高い。また、本発明が提供する多孔質グラフェンの製造方法によれば、工程が簡単で、エネルギー消費が低く、コストが低い。
【0036】
本発明においては、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対して触媒化処理を行って、第1中間生成物を得る。本発明においては、触媒とバイオマス炭素ソースを混合して第1中間生成物を得ることが好ましい。本発明においては、前記混合の方法について特に限定せず、当業者が熟知している混合技術を採用して、前記触媒とバイオマス炭素ソースを均一に攪拌すればよい。本発明において、前記混合の温度は、20℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃であり、最も好ましくは80℃〜120℃である。本発明において、前記混合の時間は、2時間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは5時間〜7時間である。
【0037】
本発明において、前記触媒は、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含み、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つの物質を含むことが好ましい。本発明において、前記マンガンの塩化物は、塩化マンガンであることが好ましい。本発明において、前記鉄系化合物は、鉄の塩化物、鉄のシアン化物及び鉄含有酸塩から選ばれる一つ以上を含むことが好ましく、より好ましくは塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム及びトリオキサラト鉄(III)酸カリウムから選ばれる一つ以上を含む。本発明において、前記コバルト系化合物は、コバルトの塩化物及びコバルト含有酸塩から選ばれる一つ以上を含むことが好ましく、より好ましくは塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト及び酢酸コバルトから選ばれる一つ以上を含む。本発明において、前記ニッケル系化合物は、ニッケルの塩化物及びニッケル含有酸塩から選ばれる一つ以上を含むことが好ましく、より好ましくは塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル及び酢酸ニッケルから選ばれる一つ以上を含む。本発明において、前記触媒は、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、トリオキサラト鉄(III)酸カリウム、塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル及び酢酸ニッケルから選ばれる一つ以上を含むことが好ましい。本発明においては、前記触媒の出所については、特に限定せず、当業者が熟知している前記のような触媒を採用すればよく、それらは市販されるものを利用すればよい。
【0038】
本発明において、前記バイオマス炭素ソースは、セルロース及び木質素から選ばれる一つ又は二つであることが好ましく、より好ましくはセルロースであり、最も好ましくは多孔質セルロースである。本発明において、前記多孔質セルロースの製造方法は、
植物及び農林廃棄物から選ばれる一つ以上を含むバイオマス資源を、酸で加水分解させることによりリグノセルロースを得るステップAと、
前記リグノセルロースに対して、酸処理、塩処理又は有機溶媒処理を含む処理を行うことにより多孔質セルロースを得るステップBと
を含むことが好ましい。
【0039】
本発明においては、植物及び農林廃棄物から選ばれる一つ以上を含むバイオマス資源を、酸で加水分解することによりリグノセルロースを得ることが好ましい。本発明において、前記加水分解の温度は、90℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは120℃〜150℃である。本発明において、前記加水分解の時間は、10min〜10hであることが好ましく、より好ましくは1h〜8hであり、最も好ましくは3h〜6hである。
【0040】
本発明において、前記加水分解における酸は、硫酸、硝酸、塩酸、ギ酸、亜硫酸、燐酸及び酢酸から選ばれる一つ以上であることが好ましく、より好ましくは硫酸、硝酸、塩酸、燐酸又は酢酸であり、最も好ましくは硫酸、硝酸又は塩酸である。本発明において、前記加水分解における酸の使用量は、前記バイオマス資源の3wt%〜20wt%であることが好ましく、より好ましくは5wt%〜15wt%であり、最も好ましくは8wt%〜12wt%である。
【0041】
本発明において、前記バイオマス資源は、農林廃棄物であることが好ましく、より好ましくはトウモロコシの茎、トウモロコシの穂軸、モロコシの茎、甜菜パルプ、砂糖黍のかす、フルフラールのかす、キシロースのかす、木の屑、綿の茎及び葦から選ばれる一つ以上であり、最も好ましくはトウモロコシの穂軸である。
【0042】
リグノセルロースが得られた後、本発明においては、前記リグノセルロースに対して、酸処理、塩処理又は有機溶媒処理を含む処理を行って多孔質セルロースを得ることが好ましい。本発明においては、前記リグノセルロースに対して塩処理を行って多孔質セルロースを得ることがより好ましい。本発明において、前記塩処理の方法は、酸性亜硫酸塩処理又はアルカリ性亜硫酸塩処理であることが好ましい。本発明において、前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、1〜7であることが好ましく、より好ましくは2〜5であり、最も好ましくは3〜4である。本発明において、前記酸性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは90℃〜150℃であり、最も好ましくは100℃〜120℃である。本発明においては、前記酸性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間であることが好ましく、より好ましくは2時間〜5時間であり、最も好ましくは3時間〜4時間である。
【0043】
本発明において、前記酸性亜硫酸塩処理における酸は、硫酸であることが好ましい。本発明において、前記酸性亜硫酸塩処理過程における酸の使用量は、前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは8wt%〜25wt%であり、最も好ましくは10wt%〜20wt%である。本発明において、前記酸性亜硫酸塩処理における酸の重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にすることが好ましく、より好ましくは(4〜16):1にし、最も好ましくは(8〜12):1にする。
【0044】
本発明においては、前記酸性亜硫酸塩処理における亜硫酸塩は、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸アンモニウムであることが好ましく、亜硫酸マグネシウム又は亜硫酸ナトリウムであることがより好ましい。本発明においては、前記酸性亜硫酸塩処理過程における亜硫酸塩の使用量について、特に限定せず、当業者が熟知している亜硫酸塩法によるパルプ製造における亜硫酸塩の使用量であればよい。
【0045】
本発明においては、前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は、7〜14であることが好ましく、より好ましくは8〜13であり、最も好ましくは9〜12である。本発明においては、前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う温度は、70℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは90℃〜150℃であり、最も好ましくは100℃〜120℃である。本発明においては、前記アルカリ性亜硫酸塩処理を行う時間は、1時間〜6時間であることが好ましく、より好ましくは2時間〜5時間であり、最も好ましくは3時間〜4時間である。
【0046】
本発明において、前記アルカリ性亜硫酸塩処理におけるアルカリは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム又は水酸化マグネシウムであることが好ましく、水酸化ナトリウム又は水酸化マグネシウムであることがより好ましい。本発明において、前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるアルカリの使用量は、前記リグノセルロースの4wt%〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは8wt%〜25wt%であり、最も好ましくは10wt%〜20wt%である。本発明において、前記アルカリ性亜硫酸塩処理におけるアルカリの重量パーセント濃度は、液体と固体の比率を(2〜20):1にすることが好ましく、より好ましくは(4〜16):1にし、最も好ましくは(8〜12):1にする。
【0047】
本発明において、前記アルカリ性亜硫酸塩処理における亜硫酸塩は、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸アンモニウムであることが好ましく、より好ましくは亜硫酸マグネシウム又は亜硫酸ナトリウムである。本発明においては、前記アルカリ性亜硫酸塩処理における亜硫酸塩の使用量について、特に限定せず、当業者が熟知している亜硫酸塩法によるパルプ製造における亜硫酸塩の使用量であればよい。
【0048】
多孔質セルロースが得られた後、本発明は、
前記多孔質セルロースに対して漂白処理を行うステップをさらに含むことが好ましい。
【0049】
本発明においては、前記漂白処理方法について、特に限定せず、当業者が熟知している漂白技術を採用すればよい。本発明において、前記漂白方法は、完全無塩素漂白を採用することが好ましく、より好ましくは過酸化水素水漂白を採用する。本発明においては、前記過酸化水素水の濃度については、特に限定せず、通常の濃度の過酸化水素水を使用すればよい。本発明においては、前記過酸化水素水の質量は、前記多孔質セルロースの質量の1%〜10%であることが好ましく、より好ましくは2%〜8%である。本発明において、前記過酸化水素水漂白の漂白温度は、60℃〜130℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜100℃である。前記過酸化水素水漂白の漂白時間は、1h〜10hであることが好ましく、より好ましくは2h〜8hである。
【0050】
本発明において、前記触媒とバイオマス炭素ソースの質量比は、(0.01〜2):1であることが好ましく、より好ましくは(0.1〜1):1であり、最も好ましくは(0.3〜0.8):1である。本発明において、前記触媒化処理を行う温度は、20℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃であり、最も好ましくは80℃〜120℃である。本発明において、前記触媒化処理を行う時間は、2時間〜10時間であることが好ましく、より好ましくは5時間〜7時間である。
【0051】
前記バイオマス炭素ソースに対し触媒化処理を行った後、本発明においては、得られた触媒化処理後のバイオマス炭素ソースを乾燥して第1中間生成物を得ることが好ましい。本発明において、前記触媒化処理後のバイオマス炭素ソースを乾燥する温度は、70℃〜120℃であることが好ましく、より好ましくは90℃〜100℃である。本発明において、前記第1中間生成物の含水量は、10wt%未満であることが好ましく、より好ましくは5wt%未満である。
【0052】
第1中間生成物が得られた後、本発明においては、保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る。前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃である。本発明において、前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させる加熱速度は、5℃/min〜20℃/minであることが好ましく、より好ましくは10℃/min〜15℃/minである。本発明において、前記第1温度は、25℃〜35℃であることが好ましく、より好ましくは28℃〜32℃である。本発明において、前記第2温度は、320℃〜380℃であることが好ましく、より好ましくは340℃〜360℃である。本発明において、前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させた後の保温時間は、4時間〜8時間であることが好ましく、より好ましくは5時間〜6時間である。
【0053】
本発明において、前記保護ガスは、窒素ガスと不活性ガス中の一つ以上であることが好ましく、より好ましくは窒素ガスである。本発明において、前記保護ガスの注入量は200mL/min〜800mL/minであることが好ましく、より好ましくは400mL/min〜600mL/minである。
【0054】
第2中間生成物が得られた後、本発明においては、保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る。前記第3温度は800℃〜900℃である。本発明において、前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させる加熱速度は、20℃/min〜50℃/minであることが好ましく、より好ましくは30℃/min〜40℃/minである。本発明において、前記第3温度は、820℃〜880℃であることが好ましく、より好ましくは840℃〜860℃である。本発明において、前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させた後の保温時間は、3.5時間〜7時間であることが好ましく、より好ましくは5時間〜6時間である。
【0055】
本発明においては、前記保護ガスの種類及び注入量は、上述の技術案における前記保護ガスの種類及び注入量と一致し、ここでは重複する説明を省略する。本発明において、前記保護ガスは、上述の技術案における前記保護ガスと同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0056】
第3中間生成物が得られた後、本発明においては、保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る。前記第4温度は1100℃〜1300℃である。本発明において、前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させる加熱速度は、50℃/min〜60℃/minであることが好ましく、より好ましくは54℃/min〜58℃/minである。本発明において、前記第4温度は、1150℃〜1250℃であることが好ましく、より好ましくは1200℃である。本発明において、前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させた後の保温時間は6時間〜8時間であることが好ましく、より好ましくは7時間である。
【0057】
本発明においては、前記保護ガスの種類及び注入量は、上述の技術案における前記保護ガスの種類及び注入量と一致し、ここでは重複する説明を省略する。本発明において、前記保護ガスは、上述の技術案における前記保護ガスと同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0058】
第4中間生成物が得られた後、本発明においては、保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る。前記第5温度は900℃〜1000℃である。本発明において、前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させる冷却速度は30℃/min〜50℃/minであることが好ましく、より好ましくは35℃/min〜45℃/minである。本発明において、前記第5温度は、920℃〜980℃であることが好ましく、より好ましくは940℃〜960℃である。本発明において、前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させた後の保温時間は2時間〜4時間であることが好ましく、より好ましくは3時間である。
【0059】
本発明においては、前記保護ガスの種類及び注入量は、上述の技術案における前記保護ガスの種類及び注入量と一致し、ここでは重複する説明を省略する。本発明において、前記保護ガスは、上述の技術案における前記保護ガスと同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0060】
前記第5温度保温が完成された後、本発明においては、前記第5温度保温により得られた生成物に対して冷却を行うことにより、多孔質グラフェンを得ることが好ましい。本発明において、前記冷却後の温度は、100℃未満であることが好ましく、より好ましくは20℃〜60℃であり、最も好ましくは30℃〜40℃である。本発明においては、保護ガスの条件下で前記冷却を行うことが好ましい。本発明においては、前記保護ガスの種類及び注入量は、上述の技術案における前記保護ガスの種類及び注入量と一致し、ここでは重複する説明を省略する。本発明において、前記保護ガスは、上述の技術案における前記保護ガスと同じものであっても、異なるものであってもよい。本発明において、前記冷却は、自然冷却により行われることが好ましい。
【0061】
前記冷却が完成された後、本発明においては、得られた冷却生成物に対し洗浄を行うことにより、多孔質グラフェンを得ることが好ましい。本発明において、前記洗浄方法は、
前記冷却生成物を、アルカリ性水溶液中で第1洗浄を行うことにより第1洗浄産物を得るステップと、
前記第1洗浄産物を、酸性水溶液中で第2洗浄を行うことにより第2洗浄産物を得るステップと、
前記第2洗浄産物を、水中で第3洗浄を行うことにより多孔質グラフェンを得るステップと
を含むことが好ましい。
【0062】
本発明においては、前記冷却生成物をアルカリ性溶液中で第1洗浄を行うことにより第1洗浄産物を得ることが好ましい。本発明において、前記アルカリ性水溶液の質量濃度は、3%〜55%であることが好ましく、より好ましくは10%〜40%であり、最も好ましくは20%〜30%である。本発明において、前記第1洗浄温度は、60℃〜120℃であることが好ましく、より好ましくは80℃〜100℃である。本発明において、前記第1洗浄時間は、4時間〜24時間であることが好ましく、より好ましくは8時間〜16時間であり、最も好ましくは10時間〜14時間である。本発明においては、前記アルカリ性水溶液は水酸化ナトリウム水溶液又はアンモニア水であることが好ましい。
【0063】
第1洗浄産物が得られた後、本発明においては、前記第1洗浄産物を、酸性水溶液中で第2洗浄を行うことにより第2洗浄産物を得ることが好ましい。本発明において、前記酸性水溶液の質量濃度は、4%〜10%であることが好ましく、より好ましくは6%〜8%である。本発明において、前記第2洗浄温度は、70℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90℃〜120℃である。本発明において、前記第2洗浄時間は、4時間〜24時間であることが好ましく、より好ましくは8時間〜16時間であり、最も好ましくは10時間〜14時間である。本発明において、前記酸性水溶液は塩酸水溶液であることが好ましい。
【0064】
第2洗浄産物が得られた後、本発明においては、前記第2洗浄産物を、水中で第3洗浄を行うことにより多孔質グラフェンを得ることが好ましい。本発明において、前記水は蒸留水であることが好ましい。本発明において、前記第3洗浄方法について、前記第3洗浄後に中性の多孔質グラフェンを得ることができれば特に限定されない。
【0065】
前記洗浄が完成された後、本発明においては、得られた洗浄産物に対し乾燥を行うことにより多孔質グラフェンを得ることが好ましい。本発明においては、前記洗浄産物の乾燥方法について特に限定されず、当業者が熟知している乾燥技術を採用すればよい。
【0066】
本発明において製造されたグラフェンに対し透過電子顕微鏡による測定を行った結果、本発明が提供する方法により得られたグラフェンは、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンであった。本発明において製造された多孔質グラフェンに対してラマンスペクトル測定を行った結果、発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、Sp2混成程度が高かった。導電性能測定計を採用して本発明において製造された多孔質グラフェンに対し導電率を測定した結果、本発明が提供する方法により製造された多孔質グラフェンの導電率は40000S/mまで達することができた。
【0067】
本発明は、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対し触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5とを含む多孔質グラフェンの製造方法を提供する。本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、導電性能が良い。そして、本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、薄層構造を有しており、Sp2混成程度が高い。また、本発明が提供する多孔質グラフェンの製造方法によれば、工程が簡単で、エネルギー消費が低く、コストが低い。
【実施例】
【0068】
実施例1
90℃下でトウモロコシの穂軸を、硫酸中で10分間加水分解させることによりリグノセルロースを得た。前記硫酸の質量は、前記トウモロコシの穂軸の質量の3%である。
70℃下で前記リグノセルロースに対し、酸性亜硫酸塩処理を1時間行うことにより多孔質セルロースを得た。前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は1であり、酸は硫酸であり、亜硫酸塩は亜硫酸マグネシウムである。前記硫酸の質量は前記リグノセルロース質量の4%であり、液体と固体の比率は2:1である。
得られた多孔質セルロースに対し過酸化水素水漂白を行った。前記過酸化水素水の質量は前記多孔質セルロース質量の5%であり、前記過酸化水素水漂白の漂白温度は100℃であり、漂白時間は5hである。
【0069】
実施例2
180℃下でトウモロコシの穂軸を、硝酸中で10時間加水分解させることによりリグノセルロースを得た。前記硝酸の質量は、前記トウモロコシの穂軸質量の20%である。 180℃下で前記リグノセルロースに対し、酸性亜硫酸塩処理を6時間行うことにより多孔質セルロースを得た。前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は7であり、酸は硫酸であり、亜硫酸塩は亜硫酸ナトリウムである。前記硫酸の質量は前記リグノセルロース質量の30%であり、液体と固体の比率は20:1である。
得られた多孔質セルロースに対し過酸化水素水漂白を行った。前記過酸化水素水の質量は前記多孔質セルロース質量の5%であり、前記過酸化水素水漂白の漂白温度は100℃であり、漂白時間は5hである。
【0070】
実施例3
130℃下でトウモロコシの穂軸を、塩酸中で5時間加水分解させることによりリグノセルロースを得た。前記塩酸の質量は、前記トウモロコシの穂軸質量の10%である。
120℃下で前記リグのセルロースに対し、酸性亜硫酸塩処理を4時間行うことにより多孔質セルロースを得た。前記酸性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は3であり、酸は硫酸であり、亜硫酸塩は亜硫酸アンモニウムである。前記硫酸の質量は前記リグノセルロース質量の18%であり、液体と固体の比率は10:1である。
前記多孔質セルロース対して過酸化水素水漂白を行った。前記過酸化水素水の質量は前記多孔質セルロース質量の5%であり、前記過酸化水素水漂白の漂白温度は100℃であり、漂白時間は5hである。
【0071】
実施例4
150℃下でトウモロコシの穂軸を、塩酸中で1時間加水分解させることによりリグノセルロースを得た。前記塩酸の質量は、前記トウモロコシの穂軸質量の15%である。
70℃下で前記リグノセルロースに対し、アルカリ性亜硫酸塩処理を1時間行うことにより多孔質セルロースを得た。前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は7であり、アルカリは水酸化ナトリウムであり、亜硫酸塩は亜硫酸マグネシウムである。前記水酸化ナトリウムの質量は前記リグノセルロース質量の4%であり、液体と固体の比率は2:1である。
前記多孔質セルロース対して過酸化水素水漂白を行った。前記過酸化水素水の質量は前記多孔質セルロース質量の5%であり、前記過酸化水素水漂白の漂白温度は100℃であり、漂白時間は5hである。
【0072】
実施例5
120℃下でトウモロコシの穂軸を、塩酸中で8時間加水分解させることによりリグノセルロースを得た。前記塩酸の質量は、前記トウモロコシの穂軸質量の8%である。
180℃下で前記リグノセルロースに対して、アルカリ性亜硫酸塩処理を6時間行うことにより多孔質セルロースを得た。前記アルカリ性亜硫酸塩処理過程におけるpH値は14であり、アルカリは水酸化マグネシウムであり、亜硫酸塩は亜硫酸ナトリウムである。前記水酸化マグネシウムの質量は前記リグノセルロース質量の30%であり、液体と固体の比率は20:1である。
【0073】
実施例6
実施例1で得られた多孔質セルロースと、塩化マンガンとを20℃下で2時間攪拌することにより触媒化処理を行った。前記塩化マンガンと多孔質セルロースの質量比は0.01:1である。得られた触媒化処理後の生成物を70℃下で乾燥して、含水量が10wt%未満の第1中間生成物を得た。
前記第1中間生成物を炭化炉の中に入れ、200mL/minの気体注入量で前記炭化炉へ保護気体としての窒素を注入し、前記第1中間生成物を5℃/minの速度で25℃から300℃まで上昇させて4時間保温することにより第2中間生成物を得た。前記第2中間生成物を20℃/minの速度で300℃から800℃まで上昇させて3.5時間保温することにより第3中間生成物を得た。前記第3中間生成物を50℃/minの速度で800℃から1100℃まで上昇させて6時間保温することにより第4中間生成物を得た。前記第4中間生成物を30℃/minの速度で1100℃から900℃まで降下させて2時間保温した。前記の温度降下後の第4中間生成物を60℃まで冷却した。
60℃下で上述の冷却後の第4中間生成物を、質量濃度3%の水酸化ナトリウム水溶液中で4時間洗浄することにより第1洗浄産物を得た。70℃下で前記第1洗浄産物を、質量濃度4%の塩酸水溶液中で4時間洗浄することにより第2洗浄産物を得た。前記第2洗浄産物を蒸留水で中性になるまで洗浄して乾燥することによりグラフェンを得た。
本発明の実施例6で得られたグラフェンに対しラマンスペクトル測定を行った結果は、図1に示すとおりである。図1は本発明の実施例6により得られるグラフェンのラマンスペクトルである。図1から分かるように、本発明の実施例6が提供する方法により製造されたグラフェンは、Sp2混成程度が高い。本発明の実施例6により製造されたグラフェンに対し透過電子顕微鏡測定を行った結果は、図2図5に示すとおりである。図2図5は、本発明の実施例6によリ製造されたグラフェンの透過電子顕微鏡図である。図2図5から分かるように、本発明の実施例6が提供する方法により製造されたグラフェンは、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンである。導電性能測定計を採用して本発明の実施例6により製造された多孔質グラフェンに対し導電率を測定した結果、本発明の実施例6が提供する方法により製造される多孔質グラフェンの導電率は40000S/mであった。
【0074】
実施例7
実施例2で得られた多孔質セルロースと硝酸第二鉄とを、180℃下で10時間攪拌することにより触媒化処理を行った。前記硝酸第二鉄と多孔質セルロースの質量比は2:1である。得られた触媒化処理後の生成物を120℃下で乾燥して、含水量が5wt%未満の第1中間生成物を得た。
前記第1中間生成物を炭化炉の中に入れ、800mL/minの気体注入量で前記炭化炉へ保護気体としてのアルゴンガスを注入し、前記第1中間生成物を20℃/minの速度で20℃から400℃まで上昇させて8時間保温することにより第2中間生成物を得た。前記第2中間生成物を50℃/minの速度で400℃から900℃まで上昇させて7時間保温することにより第3中間生成物を得た。前記第3中間生成物を60℃/minの速度で900℃から1300℃まで上昇させて8時間保温することにより第4中間生成物を得た。前記第4中間生成物を50℃/minの速度で1300℃から1000℃まで降下させて4時間保温した。前記の温度降下後の第4中間生成物を20℃まで冷却した。
120℃下で上述の冷却後の第4中間生成物を、質量濃度55%の水酸化ナトリウム水溶液中で24時間洗浄することにより第1洗浄産物を得た。150℃下で前記第1洗浄産物を、質量濃度10%の塩酸水溶液中で24時間洗浄することにより第2洗浄産物を得た。前記第2洗浄産物を蒸留水で中性になるまで洗浄して乾燥することによりグラフェンを得た。
実施例1と同じ方法を採用して、本発明の実施例7で得られたグラフェンに対して測定を行った結果、本発明の実施例7が提供する方法により製造されたグラフェンは、Sp2混成程度が高く、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンであり、多孔質グラフェンの導電率は38000S/mであった。
【0075】
実施例8
実施例3で得られた多孔質セルロースと硫酸コバルトとを、50℃下で5時間攪拌することにより触媒化処理を行った。前記硫酸コバルトと多孔質セルロースの質量比は0.1:1である。得られた触媒化処理後の生成物を90℃下で乾燥して、含水量が8wt%未満の第1中間生成物を得た。
前記第1中間生成物を炭化炉の中に入れ、400mL/minの気体注入量で前記炭化炉へ保護気体としての窒素を注入し、前記第1中間生成物を10℃/minの速度で40℃から320℃まで上昇させて5時間保温することにより第2中間生成物を得た。前記第2中間生成物を30℃/minの速度で320℃から820℃まで上昇させて5時間保温することにより第3中間生成物を得た。前記第3中間生成物を54℃/minの速度で820℃から1150℃まで上昇させて7時間保温することにより第4中間生成物を得た。前記第4中間生成物を35℃/minの速度で1150℃から920℃まで降下させて3時間保温した。前記の温度降下後の第4中間生成物を30℃まで冷却した。
80℃下で上述の冷却後の第4中間生成物を、質量濃度10%のアンモニア水中で8時間洗浄することにより第1洗浄産物を得た。90℃下で前記第1洗浄産物を、質量濃度6%の塩酸水溶液中で8時間洗浄することにより第2洗浄産物を得た。前記第2洗浄産物を蒸留水で中性になるまで洗浄して乾燥することによりグラフェンを得た。実施例6と同じ方法を採用して、本発明の実施例8で得られたグラフェンに対し測定を行った結果、本発明の実施例8が提供する方法により製造されたグラフェンは、Sp2混成程度が高く、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンであり、多孔質グラフェンの導電率は39000S/mであった。
【0076】
実施例9
実施例4で得られた多孔質セルロースと酢酸ニッケルとを、150℃下で7時間攪拌することにより触媒化処理を行った。前記酢酸ニッケルと多孔質セルロースの質量比は1:1である。得られた触媒化処理後の生成物を100℃下で乾燥して、含水量が3wt%未満の第1中間生成物を得た。
前記第1中間生成物を炭化炉の中にいれ、600mL/minの気体注入量で前記炭化炉へ保護気体としての窒素を注入し、前記第1中間生成物を15℃/minの速度で28℃から380℃まで上昇させて6時間保温することにより第2中間生成物を得た。前記第2中間生成物を40℃/minの速度で380℃から880℃まで上昇させて6時間保温することにより第3中間生成物を得た。前記第3中間生成物を58℃/minの速度で880℃から1250℃まで上昇させて6.5時間保温することにより第4中間生成物を得た。前記第4中間生成物を45℃/minの速度で1250℃から980℃まで降下させて2.5時間保温した。前記の温度降下後の第4中間生成物を40℃まで冷却した。
100℃下で上述の冷却後の第4中間生成物を、質量濃度40%の水酸化ナトリウム水溶液中で16時間洗浄することにより第1洗浄産物を得た。120℃下で前記第1洗浄産物を、質量濃度8%の塩酸水溶液中で16時間洗浄することにより第2洗浄産物を得た。前記第2洗浄産物を蒸留水で中性になるまで洗浄して乾燥することによりグラフェンを得た。
実施例6と同じ方法を採用して、本発明の実施例9で得られたグラフェンに対し測定を行った結果、本発明の実施例9が提供する方法により製造されたグラフェンは、Sp2混成程度が高く、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンであり、多孔質グラフェンの導電率は38500S/mであった。
【0077】
実施例10
実施例5で得られた多孔質セルロース、フェリシアン化カリウム及び酢酸コバルトを80℃下で6時間攪拌することにより触媒化処理を行った。前記フェリシアン化カリウム及び酢酸コバルトの総質量と多孔質セルロースの質量比は0.3:1である。得られた触媒化処理後の生成物を95℃下で乾燥して、含水量が6wt%未満の第1中間生成物を得た。
前記第1中間生成物を炭化炉の中に入れ、500mL/minの気体注入量で前記炭化炉へ保護気体としての窒素を注入し、前記第1中間生成物を12℃/minの速度で35℃から340℃まで上昇させて7時間保温することにより第2中間生成物を得た。前記第2中間生成物を35℃/minの速度で340℃から840℃まで上昇させて4時間保温することにより第3中間生成物を得た。前記第3中間生成物を55℃/minの速度で840℃から1200℃まで上昇させて7.5時間保温することにより第4中間生成物を得た。前記第4中間生成物を40℃/minの速度で1200℃から940℃まで降下させて3.5時間保温した。前記の温度降下後の第4中間生成物を50℃まで冷却した。
90℃下で上述の冷却後の第4中間生成物を、質量濃度20%の水酸化ナトリウム水溶液中で10時間洗浄することにより第1洗浄産物を得た。100℃下で前記第1洗浄産物を、質量濃度7%の塩酸水溶液中で10時間洗浄することにより第2洗浄産物を得た。前記第2洗浄産物を蒸留水で中性になるまで洗浄して乾燥することによりグラフェンを得た。
実施例6と同じ方法を採用して、本発明の実施例10で得られたグラフェンに対し測定を行った結果、本発明の実施例10が提供する方法により製造されたグラフェンは、Sp2混成程度が高く、シート層が10層以下の薄い多孔質グラフェンであり、多孔質グラフェンの導電率は37000S/mであった。
【0078】
比較例1
出願番号が200810113596.0である中国特許に公開された方法によりグラフェンを製造した。その具体的な過程は以下のとおりである。
シリコン基板を、脱イオン水、エタノール、アセトンで順次に洗浄して乾燥し、気相蒸着技術を利用してシリコン基板表面に、触媒として厚さ100ナノメートルの単層の硫化亜鉛を蒸着させた。
前記の硫化亜鉛が蒸着されたシリコン基板を清潔な石英管の中部に置き、その石英管を電気ストーブの中に石英管の中部が電気ストーブの中心エリアに置かれるように入れて、石英管に100sccmの水素ガス及び100sccmのアルゴンガスの混合ガスを60分間注入した後、加熱を始めた。
電気ストーブの中心エリアーの温度が850℃まで達すると、電気ストーブ中に炭素ソースとしてエタノールを注入して、反応を始めた。
反応が20分間行われた後、エタノールの注入を停止する同時に電気ストーブをオフにし、引き続き100sccm水素ガス及び100sccmのアルゴンガスの混合ガスを、温度が室温になるまで注入することによりグラフェンが蒸着された基板を得た。
前記のグラフェンが蒸着された基板を、0.1mol/Lの塩酸溶液中に60分間浸漬して硫化亜鉛を除去した後、脱イオン水で洗浄して乾燥させることによりグラフェンを得た。
導電性能測定計を利用して本発明の比較例1で得られたグラフェンの導電率を測定した結果、本発明の比較例1が提供する方法により製造されたグラフェンの導電率は30000S/mであった。
【0079】
以上の実施例から分かるように、本発明は、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる1つまたは複数の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対し触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップ1と、保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得る、前記第1温度は20℃〜40℃であり、前記第2温度は300℃〜400℃であるステップ2と、保護ガスの条件下で前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得る、前記第3温度は800℃〜900℃であるステップ3と、保護ガスの条件下で前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得る、前記第4温度は1100℃〜1300℃であるステップ4と、保護ガスの条件下で前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得る、前記第5温度は900℃〜1000℃であるステップ5とを含む、多孔質グラフェンの製造方法を提供する。本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、導電性能が良い。そして、本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは薄層構造を有しており、Sp2混成程度が高い。また、本発明が提供する多孔質グラフェンの製造方法によれば、工程が簡単で、エネルギー消費が低く、コストが低い。
【要約】
本発明は、マンガンの塩化物、鉄系化合物、コバルト系化合物及びニッケル系化合物から選ばれる一つ以上の物質を含む触媒の存在下でバイオマス炭素ソースに対して触媒化処理を行って、第1中間生成物を得るステップと、保護ガスの条件下で前記第1中間生成物を第1温度から第2温度まで上昇させて保温することにより、第2中間生成物を得るステップと、前記第2中間生成物を第2温度から第3温度まで上昇させて保温することにより、第3中間生成物を得るステップと、前記第3中間生成物を第3温度から第4温度まで上昇させて保温することにより、第4中間生成物を得るステップと、前記第4中間生成物を第4温度から第5温度まで降下させて保温することにより、多孔質グラフェンを得るステップとを含む、多孔質グラフェンの製造方法を提供する。本発明が提供する方法により得られる多孔質グラフェンは、電気伝導性が良い。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5