(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロース粘度調整剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項1に記載のインク組成物。
前記セルロース粘度調整剤が、カルボキシメチルセルロース、2−ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはメチルセルロースから選択される、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特定の実施形態は、ナノワイヤーの導電層に基づく透明導電体を対象とする。具体的には、導電層は、金属ナノワイヤーの疎網を含む。さらに、導電層は、透明かつ柔軟性があり、少なくとも一つの導電性の表面を含むことができる。それは、柔軟および剛性基板をはじめとするさまざまな基板上で被覆または積層可能である。また、導電層は、マトリクス材およびナノワイヤーを含む複合構造の一部を形成することができる。マトリクス材は、一般的に、特定の化学的、機械的、および光学的特性を、複合構造に付与することができる。その他の実施形態は、導電層の作製およびパターン化の方法を説明する。
【0019】
導電性ナノワイヤー
図1は、直径d
1で割られる長さL
1に相当当するアスペクト比を有するナノワイヤー2を示す。適切なナノワイヤーは、一般的に、10から100,000の範囲のアスペクト比を有する。アスペクト比が大きいと、より効果的な導電網が形成可能になると共に、高透明性のためにワイヤーの全体密度が低くなることから、透明導電体層を得るために有利になる。すなわち、高アスペクト比を有する導電性ナノワイヤーが使用される場合、導電網を達成するナノワイヤーの密度は、導電網が実質的に透明になるように十分低くなることが可能である。
【0020】
層の透明性を定義する一つの方法として、吸収係数がある。層を通過する光の照度は、
I=I
0e
−ax
として定義され、
ここで、I
0は、層の第一の側面上の入射光であり、Iは、層の第二の側面上の照明レベルであり、e
−axは、透明度要因である。透明度要因において、aは吸収係数であり、xは層の厚さである。1に近いが1未満の透明度要因を有する層は、実質的に透明であると考えられる。
【0021】
図2〜5は、導電性ナノワイヤーの光学的および電気的特徴のいくつかを示す。
【0022】
図2は、さまざまな光波長での銀のナノ楕円体の光吸収の理論モデルを示す。幅と長さに応じて、銀のナノ楕円体は、400と440ナノメートルとの間の範囲の波長における光の狭帯域および700nmを越える光波長に対して高い吸光係数を示す。しかしながら、それらは、約440から約700nmの間の範囲において実質的に透明であり、可視領域に入る。
【0023】
図3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板に蒸着される銀ナノワイヤーの層の吸収スペクトルを示す。吸収プロファイルで示されるように、PET基板上の銀ナノワイヤー層は、約440nmから700nmまでの範囲で実質的に透明であり、
図2に示される理論モデルの結果と一致する。
【0024】
図4および5は、金属ナノワイヤーのその直径に基づく抵抗性の理論モデルの結果を示す。ナノワイヤーの直径が大きくなると抵抗性は実質的に減少するが、より多くの光を吸収する。
図4でわかるように、粒界および表面散乱に基づく抵抗性への影響は、10nm未満で大きくなる。直径が大きくなるとこれらの影響は急激に減少する。したがって、全体の抵抗性は、直径が、10nmから100nmにかけて大幅に減少する(
図5も参照)。しかしながら、電気的特性におけるこの改善は、透明導電体を必要とする適用についての透明性減少とのバランスをとらなければならない。
【0025】
図6は、二つのその他の電気端子6aおよび6bの間で延在して、端子6aから6bまでの電気伝導経路を提供する単一のAgナノワイヤー4を示す。「端子」という用語には、導体パッド、伝導ノード、ならびに電気的に接続され得るその他のいかなる始点および終点も含まれる。ナノワイヤーのアスペクト比、サイズ、形状、および物理的パラメーター分布は、所望の光学的かつ電気的な特性を提供するように選択される。Agナノワイヤーの一定密度を提供するこのようなワイヤーの数は、端子6aと端子6bを連結するために許容可能な電気伝導性を提供するように選択される。例えば、何百ものAgナノワイヤー4は、低抵抗の電気伝導経路を提供するために端子6aから端子6bに延出し、密度、アスペクト比、サイズ、および形状は、実質的な透明導電体を提供するために選択されることができる。よって、透明な電気伝導は、複数のAgナノワイヤーを使用して端子6aから端子6bに提供される。
【0026】
理解されるように、端子6aから端子6bまでの距離は、所望の光学的特性が単一のナノワイヤーで得られないような距離であってもよい。複数の多くのナノワイヤーは、さまざまな点で相互に連結される必要があり、端子6aから端子6bまでの伝導経路を提供するようにしてもよい。本発明によれば、ナノワイヤーは、所望の光学的特性に基づいて選択される。次いで、所望の伝導経路およびその経路の全体の抵抗性を提供するナノワイヤーの数が、端子6aから端子6bまでの電気伝導層の許容可能な電気的特性を達成するように選択される。
【0027】
透明層の導電率は、a)単一ナノワイヤーの伝導性、b)端子間のナノワイヤーの数、およびc)ナノワイヤーの連結性、によって主に制御される。特定のナノワイヤー密度(パーコレーション閾値とも呼ばれる)未満では、端子間の伝導性はゼロとなり、つまり連続的な電流路は、ナノワイヤーが離れすぎているために提供されなくなる。この密度を越えると、少なくとも一つの電流路が可能になる。より多くの電流路が提供されると、層の全体の抵抗性は減少する。
【0028】
導電性ナノワイヤーには、高アスペクト比(例えば、10より高い)を有する、金属ナノワイヤーおよびその他の伝導性粒子が含まれる。非金属ナノワイヤーの例として、カーボンナノチューブ(CNT)、金属酸化物ナノワイヤー、導電性高分子繊維などが挙げられるがそれだけに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される際、「金属ナノワイヤー」は、元素金属、金属合金、または金属化合物(金属酸化物を含む)を含む金属ワイヤーを言及する。金属ナノワイヤーの少なくとも一つの断面寸法は、500nm未満および200nm未満、より好ましくは100nm未満である。上述のように、金属ナノワイヤーは、10を越える、好ましくは50を越える、さらに好ましくは100を越えるアスペクト比(長さ:幅)を有する。適切な金属ナノワイヤーは、銀、金、胴、ニッケル、および金めっきの銀を含むがそれだけに限定されないいかなる金属にも基づくことができる。
【0030】
金属ナノワイヤーは、当技術分野で既知の方法で調製可能である。具体的には、銀ナノワイヤーは、ポリオール(例えば、エチレングリコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の存在下で、銀塩(例えば、硝酸銀)の液相還元により合成可能である。均一サイズの銀ナノワイヤーの大量生産は、例えば、Xia,Y.et al.,Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745およびXia,Y.et al.,Nanoletters(2003)3(7)、955−960に記載される方法に準じて調製可能である。
【0031】
あるいは、金属ナノワイヤーは、鉱化可能である生物学的鋳型(または生物学的骨格)を使用して調製可能である。例えば、ウイルスおよびファージなどの生物学的物質は、金属ナノワイヤーを形成するために、鋳型として機能することができる。特定の実施形態において、生物学的鋳型は、金属または金属酸化物などの特定の種類の材料の選択的親和性を示すように設計することができる。ナノワイヤーの生物学的な作製のさらなる詳細は、参照することにより本明細書に組み込まれる、例えば、Mao,C.B.et al.,“Virus−Based Toolkit for the Directed Synthesis of Magnetic and Semiconducting Nanowires”、(2004)Science、303、213−217、Mao,C.B.et al.,“Viral Assembly of Oriented Quantum Dot Nanowires”、(2003)PNAS、vol.100,no.12、6946−6951、Mao,CB.et al.,“Viral Assembly of Oriented Quantum Dot Nanowires”、(2003)PNAS、100(12)、6946−6951、米国出願第10/976,179号、および米国仮出願第60/680,491号、に記載される。
【0032】
より具体的には、導電性材料または導電体(例えば、金属ナノワイヤー)は、生物学的鋳型における導電性材料と特定の結合部位(例えば、ペプチド配列)との間の親和性に基づき、生物学的テンンプレートに直接結合することができる。
【0033】
その他の実施形態において、導電性材料は、核生成過程によって形成可能で、その過程中に、前駆体は、生物学的鋳型に結合する伝導性粒子に変換され、その伝導性粒子は、連続的な導電層へとさらに成長することができる。本過程は、「鉱化」または「めっき」とも呼ばれる。例えば、金属前駆体(例えば、金属塩)は、還元剤の存在下で元素金属に変換可能である。結果として生成される元素金属は、生物学的鋳型に結合し、連続的な金属層に成長する。
【0034】
その他の実施形態において、シード物質層が、生物学的物質上にまず核生成される。その後、金属前駆体は、金属に変換されて、シード物質層にめっき可能である。シード物質は、例えば、対応する金属前駆体を含む溶液から、核生成よび金属成長をもたらす物質に基づいて選択可能である。例えば、パラジウムを含むシード物質層は、CuまたはAuの鉱化をもたらすことができる。特定の例として、Cu導体を形成するための許容可能なシード物質は、パラジウム、パラジウムベースの分子、Au、またはAuベースの分子を含んでもよい。酸化物導体については、核生成物質として酸化亜鉛が使用されてもよい。シード物質の例として、Ni、Cu、Pd、Co、Pt、Ru、Ag、Co合金、またはNi合金が挙げられる。めっき可能な金属、金属合金、および金属酸化物には、Cu、Au、Ag、Ni、Pd、Co、Pt、Ru、W、Cr、Mo、Ag、Co合金(例えば、CoPt)、Ni合金、Fe合金(例えば、FePt)またはTiO
2,、Co
3O
4、Cu
2O、HfO
2、ZnO、酸化バナジウム,酸化ンジウム,酸化アルミニウム、酸化インジウムスズ、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、または酸化ジルコニウムが含まれるがそれだけに限定されない。
【0035】
タンパク質、ペプチド、ファージ、バクテリア、ウイルス、および同様なものなど、さまざまないかなる生物学的物質も、金属ナノワイヤーを形成するための鋳型を提供するために使用可能である。所望の金属または導電性材料に結合する生物化学的物質を選択、生成、および設計するための技術は、米国特許番号第10/155,883および10/158,596に記載され、そのいずれもが、Cambrios Technologies Corporationの名において出願されており、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0036】
上述のとおり、タンパク質、ペプチド、またはその他の生物学的物質などの生物学的鋳型は、選択されるシード物質または選択される導電性材料について親和性部位を有するように設計可能である。特定の物質に親和性を有するタンパク質またはペプチドは、ファージ提示法、イースト提示法、細胞表層提示法、またはその他などのタンパク質発現プロセスによって特定可能である。例えば、ファージ提示法の場合、ファージのライブラリー(例えば、M13ファージ)は、種々の異なるペプチドの配列をファージ集団に挿入することによって、形成可能である。特定の標的分子に対する高親和性を有するタンパク質は隔離可能で、そのペプチド構造は特定可能である。
【0037】
具体的には、生体分子の遺伝子配列は、ファージ分子の特定のタイプにおける特定のペプチド配列の多くのコピーを提供するように制御可能である。例えば、P8タンパク質の約3000コピーは、M13ファージ分子の長さに沿って、秩序配列で配置可能である。P8タンパク質は、導電性材料の形成の核となり、導電性材料と結合可能な特定のペプチド配列を含むことによって、高伝導性の導電性ナノワイヤーを提供するように修正可能である。本技術により、有利に、生物学的鋳型分子、例えば、具体的には設計または制御されるペプチド配列を有するタンパク質を使用することによって、ナノワイヤーの形状および結晶構造を制御する能力が可能になる。そのために、ファージ構造に組み込み可能な銀、金、またはパラジウムに対して結合親和性を有するペプチドまたはタンパク質が特定されて、ファージ分子の寸法に基づく寸法でナノワイヤーを形成する。
【0038】
ファージ以外の生物学的物質は、導電性ナノワイヤーの形成のための鋳型として使用可能である。例えば、長さが数十ミクロンの長鎖に自己組織化する糸状タンパク質は、代替えの鋳型として使用可能である(
図7参照)。有利には、そのような鋳型のタンパク質は、ファージよりも大幅に大きいアスペクト比を有するように合成可能であり、結果として導電性ナノワイヤーのパーコレーション閾値密度が低くなる。さらに、タンパク質は、ファージ分子よりも大量に合成し易い。清浄分散剤として使用される酵素などのタンパク質の大量製造は、十分開発されている。
【0039】
図8は、伝導性粒子8bと結合する多くの結合部位8aを有するタンパク質骨格8の概略図版を示す。結合部位は、Au、Ag、Cu、およびNiなどの伝導性粒子に対して親和性を有するように選択される。あるいは、結合部位8aは、Cuなどの伝導性粒子をさらに核にすることが可能なシード物質層(例えば、PdおよびAu)に対して親和性を有する。また、タンパク質骨格8は、そのような親和性を複数の結合部位8aを有するように設計可能である。それらは、最終的な導電層の伝導性を高めるために、その長さにそって頻繁および一定に間隔を空けることが好ましい。
【0040】
タンパク質などの生物学的物質の長さならびにその寸法は、既知の技術を使用して容易に設計される。それは、光学的特定のために的確な寸法を有するように設計される。サイズ、形状、およびアスペクト比が選択されると、生物学的物質は、金属または金属の前駆体などの導電性材料8bに暴露可能である。
【0041】
図9は、生物学的鋳型を使用して導電性ナノワイヤーを作製するさらなる実施形態を示す。タンパク質骨格8は、関連ペプチド9aおよび9bのような結合パートナーを各端に含むようにさらに設計可能である。結合パートナーは、イオン相互作用、共有結合、水素結合、疎水性相互作用、および同様なものなどのいかなる種類の結合性相互作用によっても相互に結合可能である。
図8の最終配列で示されるように、関連ペプチド9aと9bとの間の相互作用によって、導電性ナノワイヤーの2−D相互連結メッシュ網への自己組織化が促進される。関連ペプチドおよびその位置は、メッシュ形成、端間連結、交差連結、および導電層のその他の所望の形状を促進する種類であってもよい。
図8に示される例において、導電性材料8bは、タンパク質骨格が網を形成する前にタンパク質骨格8に既に結合している。タンパク質骨格8は、導電性材料の結合前に網を形成可能であることも理解されたい。
【0042】
したがって、関連ペプチドまたはその他の結合パートナーを有する生物学的鋳型を使用することによって、ランダムなナノワイヤーで考えられ得るものよりも、より連結した導電層の形成が可能になる。ゆえに、生物学的鋳型の特定の網は、導電層の所望の秩序度を達成するように選択可能である。
【0043】
鋳型に基づく合成は、特定の寸法、形態、および組成を有するナノワイヤーの作製に特に適している。ナノ材料の生物学的ベースの製造に関するさらなる利点として、導電層の高スループット、常温蒸着、および優れた適合性、生産について修正可能である溶解処理が挙げられる。
【0044】
導電層および基板
例示されるように、
図10Aは、基板14上に被覆される導電層12を備える透明導電体10を示す。導電層12は、複数の金属ナノワイヤー16を備える。金属ナノワイヤーは、導電網を形成する。
【0045】
図10Bは、導電層12’が基板14上に形成される透明導電体10’の別の例を示す。導電層12’は、マトリクス18に埋め込まれる複数の金属ナノワイヤー16を含む。
【0046】
「マトリクス」は、金属ナノワイヤーが分散または埋め込まれる固体材料を言及する。ナノワイヤーの一部は、導電網にアクセス可能にするようにマトリクス材から突出してもよい。マトリクスは、金属ナノワイヤーの宿主であり、導電層の物理的形状を提供する。マトリクスは、腐食および摩耗などの有害環境要因から金属ナノワイヤーを保護する。具体的には、マトリクスは、湿気、微量の酸、酸素、硫黄、および同様なものなどの環境における腐食要因の透過性を大幅に軽減する。
【0047】
さらに、マトリクスは、有益な物理的および機械的性質を導電層に提示する。例えば、基板に接着を提供することができる。さらに、金属酸化物皮膜とは違って、金属ナノワイヤーに埋め込まれる高分子または有機マトリクスは、頑丈でかつ柔軟性がある。本明細書でさらに詳しく説明されるように、柔軟性を有するマトリクスにより、低コストで高スループットのプロセスで透明導電体を作製することが可能になる。
【0048】
さらに、導電層の光学的特性は、適切なマトリクス材を選択することによって調整することができる。例えば、反射損および不要なグレアは、所望の屈折率、組成、および厚さを有するマトリクスを使用することによって軽減可能である。
【0049】
一般的に、マトリクスは、光学的に透明材料である。材料の光透過性が、可視領域(400nm〜700nm)で少なくとも80%である場合、材料は、光学的に透明であえることが考えられる。別途規定のない限り、本明細書で説明される透明導電体の全ての層(基板を含む)は、好ましくは、光学的に透明である。マトリクスの光学的透明度は、屈折率(RI)、厚さ、その厚さ全体のRI一貫性、表面(界面を含む)反射、およびヘイズ(表面粗度および/または埋め込み分子によってもたらされる分散損失)を含むがそれだけに限定されない多数の要因によって、一般的に決定される。
【0050】
特定の実施形態において、マトリクスは、約10nmから5μmの厚さ、約20nmから1μmの厚さ、または約50nmから200nmの厚さである。その他の実施形態において、マトリクスは、約1.3から2.5または1.35から1.8の屈折率を有する。
【0051】
特定の実施形態において、マトリクスは高分子であり、高分子マトリクスとしても呼ばれる。光学的に透明な高分子は、当技術分野において既知である。適切な高分子マトリクスの例として、ポリメタクリル酸(例えば、ポリ(メタクリル酸メチル))、ポリアクリレート、およびポリアクリロニトリルなどのポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、フェノールまたはクレゾール−ホルムアルデヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、およびポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU)、エポキシ、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、および環状オレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース、シリコンおよびその他のシリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、およびフッ素重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体、および炭化水素オレフィン(例えば、Lumiflon(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子のCYTOP(登録商標)またはデュポンのTeflon(登録商標)AF)が挙げられるがそれだけに限定されない。
【0052】
その他の実施形態において、マトリクスは、無機材料である。例えば、シリカ、ムライト、アルミナ、SiC、MgO−Al
2O
3-SiO
2、Al
2O
3−SiO
2、MgO
−Al
2O
3−SiO
2−Li
2O、またはその組み合わせに基づくゾルゲルマトリクスが使用可能である。
【0053】
特定の実施形態において、マトリクス自体は導電性である。例えば、マトリクスは導電性高分子である。導電性高分子は、当技術分野においてよく知られており、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびポリジアセチレンを含むがそれだけに限定されない。
【0054】
「導電層」または「導電膜」は、透明導電体の導電性媒体を提供する金属ナノワイヤーの網層を言及する。マトリクスが存在する場合、金属ナノワイヤーの網層とマトリクスとの組み合わせも、「導電層」と呼ばれる。伝導性は、一方の金属ナノワイヤーから別の金属ナノワイヤーまでの電荷浸透によって達成されるため、十分な金属ナノワイヤーが、導電層に存在し、電気パーコレーション閾値に到達し、導電性を有するようにしなければならない。導電層の表面伝導率は、当技術分野で既知の方法で測定可能であるシート抵抗とも呼ばれるその表面抵抗率に反比例する。
【0055】
同様に、マトリクスが存在する場合、マトリクスは、導電性であるために、十分な金属ナノワイヤーに充填されている。本明細書で使用される際、「閾値荷重度」は、導電層が約10
6Ω/スクエア以下の導電層の荷重後の、重量による金属ナノワイヤーの割合を言及する。閾値荷重度は、金属ナノワイヤーのアスペクト比、整列度、凝集度、および抵抗度などの要因によって決まる。
【0056】
当技術分野に精通する者に理解されるように、マトリクスの機械的および光学的特性は、その中の分子の高荷重によって変化または影響を受ける可能性がある。有利には、金属ナノワイヤーの高アスペクト比により、銀ナノワイヤーに関して、好ましくは約0.05μg/cm
2から約10μg/cm
2、さらに好ましくは、約0.1μg/cm
2から約5μg/cm
2、およびさらに好ましくは、約0.8μg/cm
2から約3μg/cm
2の閾値表面荷重度で、マトリクスによる導電網の形成が可能になる。これらの表面荷重度は、マトリクスの機械的または光学的特性に影響を及ぼさない。これらの値は、ナノワイヤーの寸法および空間分散に大きく依存する。有利には、調整可能な伝導率(または表面抵抗率)および光透過性を有する透明導電体が、金属ナノワイヤーの荷重度を調整することによって提供可能である。
【0057】
特定の実施形態において、導電層は、
図10Bに示されるようにマトリクスの全層に及ぶ。有利には、金属ナノワイヤーの特定部分は、マトリクス材(例えば、高分子)のマトリクスの表面張力によりマトリクスの表面19に露出される。本特徴は、タッチスクリーン用途に特に有用である。具体的には、透明導電体は、その少なくとも一つの表面に表面伝導率を呈することができる。
図10Cは、マトリクスに埋め込まれる金属ナノワイヤーの網の表面伝導率達成がいかに考えられるかを示す。図示されるように、ナノワイヤー16aなどのいくつかのナノワイヤーが、マトリクス18に全体的に「沈んで」いてもよく、一方、端16bなどのその他のナノワイヤーの端は、マトリクス18の表面19に突出してもよい。また、中間部分16cなどのナノワイヤーの中間部分は、マトリクス18の表面19上に突出してもよい。ナノワイヤーの端16bおよび中間部分16cが、マトリクス18から十分に突出する場合、透明導電体の表面は導電性になる。
図10Dは、透明導電体のマトリクス上に突出するナノワイヤーの端および中間部分の輪郭を示す透明導電体の一実施形態の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【0058】
その他の実施形態において、導電層は、
図10Eに示されるように、マトリクスの一部に埋め込まれる金属ナノワイヤーによって形成される。導電層12”は、マトリクス18の一部のみを占め、マトリクス18に完全に「沈んで」いる。
【0059】
「基板」または「選択の基板」は、その上に導電層が被覆または積層される材料を言及する。基板は、剛性または柔軟性を有することができる。基板は、透明または不透明であることができる。「選択の基板」という用語は、本明細書で説明される場合、一般的に、積層プロセスに関して使用される。適切な剛性基板は、例えば、ガラス、ポリカーボネート、アクリル、および同様なものを含む。適切な柔軟性を有する基板は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、ポリオレフィン(例えば、直鎖、分枝、および環状ポリオレフィン)、ポリビニル(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、ポリアクリレート、および同様なもの)、セルロースエステルベース(例えば、三酢酸セルロース、酢酸セルロース)、リエーテルスルホンなどのポリスルホン、ポリイミド、シリコン、およびその他の従来の高分子膜を含むがそれだけに限定されない。適切な基板の追加の例は、例えば、米国特許第6,975,067号に見られる。
【0060】
一般的に、導電層の光学的透明性または透明度は、光透過性およびヘイズを含むパラメーターによって定量的に規定可能である。「光透過性」は、媒体を介して透過される入射光線の割合を言及する。さまざまな実施形態において、導電層の光透過性は、少なくとも80%であり、高くても98%であることが可能である。導電層が基板上に蒸着または積層される透明導電体について、全体構造の光透過性が、わずかに低下する場合がある。接着層、反射防止層、防眩層などの性能向上層により、透明導電体の全体の光透過性がさらに低減してもよい。さまざまな実施形態において、透明導電体の光透過性は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%であり、高くても少なくとも91%から92%であることが可能である。
【0061】
ヘイズは、光拡散の指数である。入射光線から分散および透過中に散乱される光の量の割合を言及する。主に媒体の特性である光透過性と違って、ヘイズは、多くの場合、生産関連事項であり、一般的に、媒体の表面粗度および埋め込み分子または組成不均質性によってもたらされる。さまざまな実施形態において、透明導電体のヘイズは、10%以下、8%以下、または5%以下で、低くても2%から0.5%以下であってもよい。
【0062】
性能向上層
上述のように、導電層は、マトリクスにより優れた物理的および機械的特徴を有する。これらの特徴は、透明導電体構造に追加の層を導入することによってさらに向上可能である。したがって、その他の実施形態において、反射防止層、防眩層、接着層、障壁層、および硬質被膜などの一つ以上の層を備える多層の透明導電体が記載される。
【0063】
実例として、
図11は、上に記載されるように、導電層12および基板14を備える多層透明半導体20を示す。多層透明導電体20は、導電層12の上に位置する第一の層22、導電層12と基板14との間に位置する第二の層24、および基板14の下に位置する第三の層26をさらに備える。別段表記の無い限り、層22、24、および26の各々は、一つ以上の反射防止層、防眩層、接着層、障壁層、硬質被膜、および保護膜であることが可能である。
【0064】
層22、24、および26は、透明導電体の全体の光学的性能の向上および機械的特性の改善など、さまざまな機能の役割を果たす。これらの追加の層も、「性能向上層」と呼ばれ、一つ以上の反射防止層、防眩層、接着層、障壁層、および硬質被膜であることが可能である。特定の実施形態において、一つの性能向上層によって、多くの利益が提供される。例えば、反射防止層は、硬質被膜および/または障壁層としての役割も果たすことができる。それらの特定の特性に加え、性能向上層は、本明細書で定義されるように、光学的に透明である。
【0065】
一実施形態において、層22は反射防止層であり、層24は接着層であり、層26は硬質被膜である。
【0066】
別の実施形態において、層22は硬質被膜であり、層24は障壁層であり、層26は反射防止層である。
【0067】
さらに別の実施形態において、層22は、反射防止層、防眩、障壁層、および硬質被膜の組み合わせであり、層24は接着層であり、層26は反射防止層である。
【0068】
「反射防止層」は、透明導電体の反射面における反射損を低減可能な層を言及する。したがって、反射防止層は、透明導電体の外側に、または層の間の接触面として位置することができる。反射防止層の適切な材料は、当技術分野において既知であり、フッ素重合体混合または共重合体を含むがそれだけに限定されず、例えば、米国特許番号第5,198,267号、5,225,244号、および7,033,729号を参照すること。
【0069】
その他の実施形態において、反射損は、反射防止層の厚さを制御することによって効果的に低減可能である。例えば、
図11を参照すると、層22の厚さは、表面28および表面30の光反射が相殺するように制御可能である。したがって、さまざまな実施形態において、反射防止層は、約100nmまたは200nmの厚さである。
【0070】
反射損は、織り目加工の表面の適切な使用によっても低減可能であり、例えば、米国特許第5820957号およびMacDiarmid Autotype社のAutoflex MARAG
TMおよびMotheye
TM製品についての文献を参照すること。
【0071】
「防眩層」は、反射を散乱する表面上に細かい粗さを提供することによって透明導電体の外側で不要な反射を低減する層を言及する。適切な防眩材料は、当技術分野においてよく知られており、シロキサン、ポリスチレン/PMMA混合、ラッカー(例えば、酢酸ブチル/ニトロセルロース/ワックス/アルキド樹脂)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリウレタン、ニトロセルロース、およびアクリレートを含むがそれだけに限定されず、それら全ては、コロイド状または溶融状シリカなどの光拡散材料を含んでもよい。例えば、米国特許第6,939,576号、5,750,054号、5,456,747号、5,415,815号、および5,292,784号を参照のこと。これらの材料の混合および共重合体は、防眩するための光拡散挙動を提示可能である微少の組成不均一性を有することができる。
【0072】
「硬質被膜」または「耐摩耗層」は、キズおよび摩耗に対して付加的な表面保護を提供する被覆を言及する。適切な硬質被膜の例として、ポリアクリル酸、エポキシ、ポリウレタン、ポリシラン、シリコン、ポリ(シリコ−アクリル)などの合成高分子が挙げられる。一般的に、硬質被膜はコロイド状シリカも含む(例えば、米国特許第5,958,514号、7,014,918号、6,825,239号、およびそこに引用される参考文献を参照)。硬質被膜の厚さは、一般的に約1から50μmである。硬度は、当技術分野の既知の方法、例えば、スチールウール#000の被覆に、300g/cm
2の荷重下で2往復/秒、2cm間隔で往復50回傷を付けるなどして評価可能である(米国特許第6,905,756号参照)。硬質被膜は、当技術分野における既知の方法によって、防眩プロセスまたは反射防止処理にさらに暴露されてもよい。
【0073】
「接着層」は、いずれの層の物理的、電気的、または光学的特性に影響を及ぼすことなく、二つの隣接する層(例えば、導電層および基板)を接着するいかなる光学的に透明な材料も言及する。光学的に透明な接着材料は、当技術分野においてよく知られており、アクリル樹脂、塩素化オレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の樹脂、マイレン
酸樹脂、塩化ゴム樹脂、環化ゴム樹脂、ポリアミド樹脂、クマロンインデン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体の樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、ポリ
シロキサン、および同様なものを含むがそれだけに限定されない。
【0074】
「障壁層」は、ガスまたは流体の透明導電体への透過を低減または防止する層を言及する。腐食した金属ナノワイヤーは、導電層の大幅な導電率低下ならびに大幅な光透過性低下をもたらす可能性があることが証明されている。障壁層は、大気の腐食性ガスが導電層に入り、マトリクス内の金属ナノワイヤーに接触しないように効果的に抑制することができる。障壁層は、当技術分野においてよく知られており、例えば、米国特許出願第2004/0253463号、米国特許第5,560,998号および4,927,689号、欧州特許第132,565号、日本国特許第57,061,025を参照を含むがそれだけに限定されない。さらに、反射防止層、防眩層、および硬質被膜のいずれも、障壁層としても役割も果たすことができる。
【0075】
特定の実施形態において、多層透明導電体は、導電層上に保護膜をさらに備えてもよい(例えば、層22)。保護膜は、一般的に柔軟性を有し、柔軟性を有する基板と同一材料から形成可能である。保護膜の例として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン−架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン、ポリオレフィン、または同様なものが挙げられるがそれだけに限定されず、具体的には、その高力のため、PET、PC、PMMA、またはTACが好ましい。
【0076】
腐食防止剤
その他の実施形態において、透明導電体は、上記の障壁層に加えて、またはそれの代わりに腐食防止剤を備えてもよい。異なる腐食防止剤により、異なる機序に基づいて、金属ナノワイヤーに保護が提供されてもよい。
【0077】
一機序によると、腐食防止剤は、金属ナノワイヤーに容易に結合し、金属表面において保護膜を形成する。それらは、障壁形成腐食防止剤とも呼ばれる。
【0078】
一実施形態において、障壁形成腐食防止剤は、芳香族トリアゾール、イミダゾール、およびチアゾールなどの特定の窒素含有および硫黄含有有機化合物を含む。これらの化合物は、金属表面上に安定複合体を形成し、金属とその環境の間に障壁を提供することが立証されている。例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)は、銅または銅合金のための一般的な有機腐食防止剤である(スキーム1)。トリルトリアゾールおよびブチルベンジルトリアゾールなどのアルキル置換ベンゾトリアゾールも使用可能である(例えば、米国特許第5,270,364号参照)。腐食防止剤の付加的な適切な例として、2−アミノピリミジン、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプトピリミジン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、および2−メルカプトベンゾイミダゾールが挙げられるがそれだけに限定されない。
【0080】
【化1】
別の種類の障壁形成腐食防止剤には、金属表面に特定の親和性を示す生体分子が含まれる。これらには、例えば、システイン、および合成ペプチド、ならびにEEEEなどの金属に対して親和性を有する融合ペプチド配列を有するタンパク質骨格などの小さな生体分子が含まれ、米国出願第10/654,623号、10/665,721号、10/965,227号、10/976,179号、および11/280,986号、米国仮出願第60/680,491号、60/707,675号、および60/680,491号を参照すること。
【0081】
その他の障壁形成腐食防止剤には、ジチオチアジアゾール、アルキルジチオチアジアゾール、およびアルキルチオールが含まれ、アルキルは飽和C
6-C
24直鎖状炭化水素で
ある。本種類の腐食防止剤は、金属表面で自己組織化し、単層を形成することによって(スキーム2)、金属表面を腐食から保護することができる。
【0083】
【化2】
具体的な実施形態において、透明導電体は、腐食防止剤を含む容器を備え、腐食防止剤を気相に連続的に供給することができる。そのような除放に適した腐食防止剤には、「気相制御剤」(VPI)が含まれる。VPIは、一般的に、金属ナノワイヤーの表面上で単層を昇華および形成する揮発性固形物質である。有利には、VPIは、金属表面に放出されて、長期的に保護するために持続的に補充可能である。適切なVPIには、本明細書で記載されるように、トリアゾール、ジチオチアジアゾール、アルキルジチオチアジアゾール、およびアルキルチオールなどの障壁形成防止剤が含まれる。
【0084】
図12は、タッチスクリーンに適したそのような透明導電体構造を示す。より具体的には、端封32およびスペーサー36は、二つの導電層12の間に位置する。その二つの導電層12の間の空間に、一つ以上の容器40が存在する。容器40は、その存在によって透明導電体の透過率が低下しないように、微視的であり、かつ疎に分散される。容器は、高分子マトリクスに組み込むまたは多孔質材料に浸透する腐食防止剤を含み、そこから気相に昇華され、金属ナノワイヤーの表面上に単層44を形成することができる(差し込み図参照)。
【0085】
別の機序によれば、腐食防止剤は、金属ナノワイヤーとよりも、腐食要素(例えば、H
2S)とより容易に結合する。これらの腐食防止剤は、金属と競合して腐食要素を封鎖する「捕捉剤」または「ゲッター」として知られている。H
2S捕捉剤の例として、アクロレイン、グリオキサル、トリアジン、およびn−クロロコハク酸イミドを含むがそれだけに限定されない(例えば、米国公報出願第2006/0006120号参照)。
【0086】
特定の実施形態において、腐食防止剤(例えば、H
2S捕捉剤)は、マトリクスに分散可能であるが、但し、その存在が、導電層の光学的または電気的特性に悪影響を及ぼさない場合に限る。
【0087】
その他の実施形態において、金属ナノワイヤーは、基板に蒸着される前または後に、腐食防止剤で調製可能である。例えば、金属ナノワイヤーは、例えばBTAなどの障壁形成腐食防止剤で調製可能である。さらに、金属ナノワイヤーは、錆び止め溶液で処理されることもできる。金属錆び止め処理は当技術分野において既知である。H
2S腐食を対象とする特定の処理は、例えば、米国特許第4,083,945号および米国公報出願第2005/0148480号に記載される。
【0088】
おさらにその他の実施形態において、金属ナノワイヤーは、大気中元素により腐食傾向の低い別の金属と、合金またはめっき可能である。例えば、銀ナノワイヤーは、H
2Sによる腐食の影響を受けにくい金でめっき可能である。
特定の実施形態において、本明細書で記載される透明導電体は、シート被覆および高スループットウェブ被覆をはじめとするさまざまな被覆方法によって、作製可能である。その他の実施形態において、積層方法が使用可能である。有利には、本明細書に記載される作製プロセスは、金属酸化物皮膜の現在の作製とは対称的に、真空蒸着を必要としない。代わりに、作製プロセスは、従来の溶解処理器具を使用して実行可能である。さらに、作製プロセスは、透明導電体の直接的なパターンに適合する。
【0089】
ナノワイヤー蒸着および透明導電体作製
特定の実施形態において、本明細書に記載される透明導電体を作製する方法は、複数の金属ナノワイヤーを基板上に蒸着するステップであって、その金属ナノワイヤーが流体で分散されるステップと、その流体を乾燥させて金属ナノワイヤー網層を基板上に形成ステップとを含む。
【0090】
金属ナノワイヤーは、上記のように調製可能である。金属ナノワイヤーは、一般的に、蒸着しやすいように流体に分散される。本明細書で使用される際、「蒸着」および「被覆」はほぼ同じ意味で使用されることが理解されたい。金属ナノワイヤーが安定分散(「金属ナノワイヤー分散」とも呼ばれる)を形成可能ないかなる非腐食性流体も使用可能である。好ましくは、金属ナノワイヤーは、水、アルコール、ケトン、エーテル、炭化水素、または芳香族溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)において分散される。さらに好ましくは、その流体は、揮発性であり、200℃以下、150℃以下、または100℃以下の沸点を有する。
【0091】
さらに、金属ナノワイヤー分散は、粘度、腐食、接着、およびナノワイヤー分散を制御するために、添加剤および結合剤を含んでもよい。適切な添加剤および結合剤の例として、カルボキシメチルセルロース(CMC)、2−ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、トリプロピレングリコール(TPG)、およびキサンタンゴム(XG)、およびエトキシレート、アルコキシレート、エチレンオキシド、および酸化プロピレンなどの界面活性剤、およびそれらの共重合体、スルホン酸塩、硫酸塩、ジスルホン酸塩、塩、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、およびふっ素系界面活性剤(例えば、DuPont社のZonyl(登録商標))が挙げられるがそれだけに限定されない。
【0092】
一例において、ナノワイヤー分散または「インク」には、重量0.0025%から0.1%の界面活性剤(例えば、好適な範囲は、Zonyl(登録商標) FSO−100で0.0025%から0.05%である)、0.02%から4%の粘度調整剤(例えば、好適な範囲は、HPMCで0.02%から0.5%である)、94.5%から99.0%の溶媒、および0.05%から1.4%の金属ナノワイヤーが含まれる。適切な界面活性剤の代表例として、Zonyl(登録商標) FSN、Zonyl(登録商標) FSO、Zonyl(登録商標) FSH、Triton(x100、x114、x45)、Dynol(604、607)、n−Dodecyl b−D−maltoside、およびNovekが挙げられる。適切な粘度調整剤の例として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、キサンタンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。適切な溶媒の例として、水およびイソプロパノールが挙げられる。
【0093】
上記開示の分散密度を変更したい場合は、溶媒の割合を増加または減少可能である。しかしながら、好適な実施形態において、その他の成分の相対比率は変更しない。具体的には、粘度調整剤に対する界面活性剤の比率は、好ましくは、約80から約0.01の範囲内であり、金属ナノワイヤーに対する粘度調整剤の比率は、好ましくは、約5から約0.000625の範囲内であり、ならびにに界面活性剤対する金属ナノワイヤーの比率は、好ましくは、約560から約5の範囲内である。分散成分の比率は、使用される基板および用途の方法に応じて修正してもよい。ナノワイヤー分散の好適な粘度の範囲は、約1から100cPまでである。
【0094】
任意で、基板は、ナノワイヤーのその次の蒸着を十分に受けるために、前処理されて、表面を調製することができる。表面前処理は多くの機能の役割を果たす。例えば、表面前処理によって、均一なナノワイヤー分散層の蒸着が可能になる。さらに、表面前処理によって、次の処理工程のためにナノワイヤーを基板に固定することが可能になる。さらに、前処理は、ナノワイヤーのパターン蒸着を形成するために、パターン工程と併用して実行可能である。以下により詳しくさらに説明されるように、前処理には、適切な化学またはイオン状態をナノワイヤー蒸着に提示するために、任意でパターン化される中間層の溶媒または化学薬品洗浄、加熱、蒸着に加え、プラズマ処理、紫外オゾン処理、またはコロナ放電などの表面処理がさらに含まれる。
【0095】
蒸着後、流体は蒸発によって除去される。蒸発は、加熱(例えば、焼成)によって促進可能である。結果としてもたらされるナノワイヤー網層は、電気的に導電性を付与するために後処理を必要としてもよい。本後処理は、以下に記載されるように、熱、プラズマ、コロナ放電、紫外オゾン、または圧力への暴露を伴うプロセス工程であることが可能である。
【0096】
特定の実施形態において、本明細書に記載される透明導電体を作製する方法は、複数の金属ナノワイヤーを基板上に蒸着するステップであって、その金属ナノワイヤーが流体で分散されるステップと、その流体を乾燥させて金属ナノワイヤー網層を基板上に形成ステップと、その金属ナノワイヤー網層にマトリクス材を被覆するステップと、マトリクスを形成するためにそのマトリクス材を硬化するステップとを含む。
【0097】
「マトリクス材」は、本明細書で定義されるように、マトリクスに硬化可能な材料または材料の組み合わせを言及する。「硬化する」または「硬化」は、単量体または部分的な高分子(150単量体未満)が、重合および/または架橋して、固体高分子マトリクスを形成するプロセスを言及する。適切な重合条件は、当技術分野においてよく知られており、一例として、可視光線または紫外線、電子線、および同様なものによる単量体の加熱、単量体の照射が含まれる。さらに、溶媒除去によって同時にもたらされる高分子/溶媒系の「凝固」も、「硬化」の意味に含まれる。
【0098】
特定の実施形態において、マトリクス材は、高分子を含む。光学的に透明な高分子は、当技術分野において既知である。適切な高分子マトリクスの例として、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、およびポリアクリロニトリルなどのポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステルナフタレート、およびポリカーボネート)、フェノールまたはクレゾール-ホルムアル
デヒド(Novolacs(登録商標))、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルキシレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリフェニレン、およびポリフェニルエーテルなどの高芳香性を有する高分子、ポリウレタン(PU)、エポキシ、ポリオレフィン、(例えば、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、および環状オレフィン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、セルロース、シリコンおよびその他のシリコン含有高分子(例えば、ポリシルセスキオキサンおよびポリシラン)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセテート、ポリノルボルネン、合成ゴム(例えば、EPR、SBR、EPDM)、およびフッ素重合体(例えば、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン(TFE)、またはポリヘキサフルオロプロピレン)、フルオロ−オレフィンの共重合体、および炭化水素オレフィン(例えば、Lumiflon(登録商標))、および非晶質フルオロカーボン重合体または共重合体(例えば、旭硝子のCYTOP(登録商標)またはデュポンのTeflon(登録商標)AF)が挙げられるがそれだけに限定されない。
【0099】
その他の実施形態において、マトリクス材はプレポリマーを含む。「プレポリマー」は、本明細書で記載されるように、重合および/または架橋して高分子マトリクスを形成可能な、単量体の混合物またはオリゴマーまたは部分的な高分子の混合物を言及する。当技術分野に精通する者は、所望の高分子マトリクスの観点から適切な単量体または部分的な高分子を選択することについて認識している。
【0100】
好適な実施形態において、プレポリマーは光硬化型であり、つまり、プレポリマーは、照射に暴露されて重合および/または架橋する。より詳しく説明されるように、光硬化型なプレポリマーに基づくマトリクスは、選択領域において照射に暴露することによってパターン化されることができる。その他の実施形態において、プレポリマーは熱硬化型であり、熱源に選択的に暴露することによってパターン化されることができる。
【0101】
一般的に、マトリクス材は流体である。マトリクス材は、任意で溶媒を含んでもよい。マトリクス材を効果的に溶媒和または分散するいかなる非腐食性溶媒も使用可能である。適切な溶媒の例として、水、アルコール、ケトン、テトラヒドロフラン、炭化水素(例えば、シクロヘキサン)、または芳香族溶剤(ベンゼン、トルエン、キシレン等)が挙げられる。さらに好ましくは、溶媒は、揮発性であり、200°C以下、150°C以下、または100°C以下の沸点を有する。
【0102】
特定の実施形態において、マトリクス材は、架橋剤、重合開始剤、安定剤(例えば、酸化防止剤および製品寿命長期化のための紫外線安定剤、および保存期間改善のための重合防止剤)、界面活性剤、および同様なものを含んでもよい。その他の実施形態において、マトリクス材は、腐食防止剤をさらに含んでもよい。
【0103】
本明細書で述べられるように、透明導電体は、例えば、シート被覆、ウェブ被覆、印刷、および積層によって作製可能である。
【0104】
(a)シート被覆
シート被覆は、いかなる基板上、具体的には剛性基板に導電層を被覆することに適している。
【0105】
図13A〜13Bは、シート被覆による透明導電体の作製の実施形態を示す。金属ナノワイヤー分散(図示せず)は、基板14にまず蒸着可能である。ローラー100は、基板14の上面105で回転し、金属ナノワイヤーの分散層110を上面105上に置く(
図13A)。層110は、乾燥可能になり、金属ナノワイヤー網層114が、表面105上に形成される(
図13B)。
【0106】
基板は、次のプロセス工程で基板に接着する均一なナノワイヤー分散層110の蒸着を可能にするために、前処理を必要としてもよい。本処理には、適切な化学またはイオン状態をナノワイヤー蒸着に提示するために、任意でパターン化される中間層の溶媒または化学薬品洗浄、加熱、蒸着に加え、プラズマ処理、紫外オゾン処理、またはコロナ放電などの表面処理がさらに含まれる。
【0107】
例えば、中間層は、ナノワイヤーを固定するために、基板の表面に蒸着可能である。中間層は、基板を機能的にして修正することによって、ナノワイヤーと基板との接着を促進する。特定の実施形態において、中間層は、ナノワイヤーに蒸着する前に基板上に被覆可能である。その他の実施形態において、中間層は、ナノワイヤーと同時に蒸着可能である。
【0108】
特定の実施形態において、ポリペプチドなどの多機能生体分子が、中間層として使用可能である。ポリペプチドは、ペプチド(アミド)結合によって接合されるアミノ酸(単量体)の高分子配列を言及する。ポリペプチドにおけるアミノ酸単量体は、同一または異なることができる。側鎖官能基を有するアミノ酸(例えば、アミノまたはカルボン酸基)が好ましい。適切なポリペプチドの例として、ポリ−L−リジン、ポリ−L−グルタミン酸、および同様なものが挙げられる。ポリペプチドは、ナノワイヤー蒸着前に基板上に被覆可能である。あるいは、ポリペプチドは、ナノワイヤー蒸着と同時に基板に蒸着可能である。ガラス、ポリエステル基板(例えば、ポリエチレンテレフタレート)を含む基板の多くは、ポリペプチドに対して親和性を示す。
【0109】
有利には、中間層は、同一のパターンに基づきナノワイヤーの蒸着を可能にする既定のパターンで蒸着可能である。
【0110】
その他の処理方法も、パターン蒸着を実行する目的で、パターン化工程と併用して実行可能である。例えば、プラズマ表面処理は、所望のパターンを有するアパーチュアマスクを介して実行可能である。したがって、基板の表面は、少なくとも一つの前処理領域および少なくとも一つの未処理領域を備える。前処理領域に蒸着されるナノワイヤーは、未処理領域に接着するよりもうまく基板に接着する。したがって、パターン蒸着は、未処理領域のナノワイヤーを、例えば、洗浄して除去することによって達成可能である。
【0111】
上記の前処理は、以下の説明に準じて透明導電体を作製するその他の方法にも適用することが理解されたい。
【0112】
形成されるナノワイヤー網層は、電気的に導電性を付与するために後処理をさらに必要としてもよい。本後処理は、以下にさらに詳しく説明されるように、熱、コロナ放電、紫外オゾン、または圧力への暴露を伴うプロセス工程であることが可能である。
【0113】
いくつかの実施形態において、マトリクス材は、ナノワイヤー網層114上に被覆されて、マトリクス材層116を形成することができる(
図13C)。
図13Dに示されるように、マトリクス材層116は、
図10A〜10Eのマトリクスおよび構造を得るために硬化可能である。
【0114】
ブラシ、スタンプ、スプレー塗布器、スロットダイ塗布器、またはその他のいかなる適切な塗布器も、ローラー100の代わりに使用可能であることが理解されたい。さらに、以下にさらに説明されるように、正逆グラビア印刷、スロットダイ被覆、正逆ビード被覆、およびドローダウンテーブルも、ナノワイヤーを基板に蒸着するのに使用可能である。有利には、既定のパターンの陥凹を有するローラーまたはスタンプが、パターン化される金属ナノワイヤー分散層またはマトリクス材層を被覆して、パターン化される導電層を印刷する(例えば、グラビア印刷)ために使用可能である。また、導電層は、アパーチュアマスクを介してナノワイヤーまたはマトリクス製剤を基板に噴射することによって、パターン化が可能である。マトリクス材層がパターン化層に蒸着または硬化される場合、パーコレーション閾値以下にナノワイヤーの密度を落とすために、十分な数のナノワイヤーを取り除くことによって金属ナノワイヤー層に転写可能である。ナノワイヤーは、適切な溶媒で洗浄またはブラッシングすること、または粘着性または接着性のあるローラーに移行することにより除去可能である。
【0115】
付加的な蒸着または被覆が実行可能であると共に、二つの連続的な被覆工程の間に乾燥または硬化可能であることがさらに理解されたい。例えば、いかなる数の性能向上層も、上記と同一の方法で被覆可能である。
【0116】
(b)ウェブ被覆
ウェブ被覆は、高速(高スループット)被覆用途のために、繊維産業および製糸業において用いられてきた。それは、透明導電体作製の蒸着(被覆)プロセスと一致する。有利には、ウェブ被覆は、従来の器具を使用し、完全に自動化可能であるため、透明導電体の作製のコストを大幅に削減する。具体的には、ウェブ被覆によって、均一かつ再生可能な導電層が柔軟性を有する基板に生産される。プロセス工程は、完全に統合したラインまたは別々の動作として連続的に作動可能である。
【0117】
図14Aは、膜またはウェブの形状の柔軟性を有する基板が、動作経路に沿って連続的に被覆可能である実施形態を示す。より具体的には、リール118に取付けられた基板14は、モーター(図示せず)によって引張され、移動経路120に沿って動く。基板は、直接、またはコンベヤーベルトシステム(図示せず)を介してリールに供給可能である。貯蔵タンク122は、基板14の上に位置する。貯蔵タンク122は、金属ナノワイヤー蒸着のための金属ナノワイヤー分散124を含む。貯蔵タンク122の開口部128は、金属ナノワイヤー分散132の連続的な流れを基板14に放出し、基板14の上面105上に層110を形成する。
【0118】
マトリクス材が別の貯蔵タンク(図示せず)に保管され、マトリクス材が上記と同じ方法で被覆可能であることが理解されたい。
【0119】
噴射装置(例えば、圧縮分散を放出する噴霧器)、ブラッシング装置、注入装置、および同様なものを含むいかなる調剤装置も、貯蔵タンクの代わりに使用可能であることがさらに理解されたい。シート被覆のように、印刷装置も、パターン化被覆を提供するために使用可能である。
【0120】
図14Bは、基板の底面で被覆が実行されるウェブ被覆の代替方法を示す。
図14Aに示される方法のように、基板14は移動経路120に沿って動く。被覆ローラー140は、基板の下に位置し、貯蔵タンク122に貯蔵される金属ナノワイヤー分散124に部分的に浸される。被覆ローラー140は、金属ナノワイヤー分散層110を基板14の底面144に放出する。被覆ローラー140は、移動経路120の方向または反対方向に回転することができる。マトリクス材の被覆は、同一の方法で実行可能である。
【0121】
図14Aおよび14Bに記載されるプロセスにおいて、さまざまな表面処理が、各蒸着工程の前または後に適用可能であることが留意されたい。以下にさらに詳しく記載されるように、表面処理によって、形成される導電層の透明性および/または伝導性を向上することができる。適切な表面処理には、溶媒または化学薬品洗浄、プラズマ処理、コロナ放電、紫外オゾン処理、または加圧処理、およびその組み合わせなどが含まれるがそれだけに限定されない。
【0122】
図15Aは、透明導電体を作製する総合的なプロセス流れを示す。図示されるように、ウェブ被覆システム146は、モーター(図示せず)によって駆動される巻き取りリール147を備える。巻き取りリール147は、移動経路150に沿って、基板14(例えば、柔軟性を有する高分子膜)を繰り出しリール148から引張する。次に、基板14は、移動経路150に沿って順次処理および被覆プロセスを受ける。リール速度、蒸着速度、マトリクス材密度、ならびに乾燥および硬化プロセスの適正は、形成される導電層の均一性および厚さを決定する要因に含まれることが、当技術分野に精通する者にとって明白であろう。
【0123】
さらに、特定の実施形態において、前処理は、次の被覆プロセスのために基板を調製するために実行される。さらに具体的には、基板14は、前処理機構160で任意で表面処理され、次のナノワイヤー蒸着の効率を改善可能である。さらに、蒸着前の基板の表面処理により、後に蒸着されるナノワイヤーの均一性を向上することができる。
【0124】
表面処理は、当技術分野における既知の方法によって実行可能である。例えば、プラズマ表面処理は、基板の表面の分子構造を修正するために使用可能である。アルゴン、酸素、または窒素などの気体を使用して、プラズマ表面処理は、低温で極めて反応性の高いものを生成することができる。一般的に、基板上のわずかな原子層がプロセスに含まれて、基板(例えば、高分子膜)のバルク特性が、化学反応によって変化しないようにする。多くの事例において、プラズマ表面処理によって、湿潤および接着結合の改善のための十分な表面活性化がもたらされる。実例として、酸素プラズマ処理が、150W、30秒、O
2流れ:62.5sccm、圧力:〜400mTorrである動作パラメーターを使用して、March PX250システムにおいて実行可能である。
【0125】
その他の実施形態において、表面処理には、中間層を基板に蒸着することも含んでもよい。上述のように、中間層は、一般的に、ナノワイヤーと基板との両方に対して親和性を示す。したがって、中間層は、ナノワイヤーを固定し、ナノワイヤーが基板に接着するようにすることができる。中間層として適切な代表的な材料として、ポリペプチド(例えば、ポリ−L−リジン)を含む多機能生体分子が含まれる。
【0126】
その他の例示的な表面処理には、溶媒、コロナ放電、および紫外オゾン処理による表面洗浄が含まれ、その全ては、当技術分野に精通する者に既知である。
【0127】
その後、基板14は、本明細書に定義されるように、金属ナノワイヤー分散166を放出する金属ナノワイヤー蒸着機構164に進む。蒸着機構は、
図14Aに記載されるような貯蔵タンク、噴霧装置、ブラッシング装置、および同様なものであることが可能である。金属ナノワイヤー分散層168は、表面105に蒸着される。あるいは、印刷装置は、金属ナノワイヤー分散の基板上のパターン化被覆を適用するために使用可能である。例えば、既定のパターンの陥凹を有するローラーまたはスタンプが使用可能である。スタンプまたはローラーは、当技術分野の既知の方法によって、金属ナノワイヤー分散に連続的に浸されることができる。
【0128】
層168は、洗浄機構172において任意で洗浄可能である。その後、層168は、乾燥機構176において乾燥されて、金属ナノワイヤー網層180を形成する。
【0129】
任意により、網層180は、後処理機構184において処理可能である。例えば、金属ナノワイヤーのアルゴンまたは酸素プラズマによる表面処理により、網層180の透明性および伝導性が改善可能である。実例として、ArまたはN
2プラズマは、300W、90秒(または45秒)、ArまたはN
2気体流れ:12sccm、加圧〜300mTorrの動作パラメーターを使用して、March PX250システムにおいて実行可能である。コロナ放電または紫外オゾン処理などのその他の既知の表面処理も使用されてもよい。例えば、Enerconシステムは、コロナ処理に使用可能である。
【0130】
後処理の一部として、網層は、さらに加圧処理可能である。より具体的には、網層180は、網層180の表面185に圧力を加えるローラー186および187を介して供給される。単一のローラーも使用可能であることが理解されたい。
【0131】
有利には、本明細書に記載の方法に準じて作製される金属ナノワイヤー網への加圧によって、導電層の伝導性を高めることができる。
【0132】
具体的には、圧力は、一つ以上のローラー(例えば、円筒棒)を使用して、本明細書に記載の方法に準じて作製される導電性シートの透明導電体の片側または両側の表面に加えられてもよいが、そのローラーの一つまたは両方は、導電層の幅寸法より大きい長さ寸法を有する必要はない。単一のローラーが使用される場合、網層は、剛性基板に配置されてもよく、単一のローラーは、ローラーに圧力が加えられる間に、既知の方法を使用して導電層の露出表面で回転する。二つのローラーが使用される場合、
図15Aに示されるように、網層は二つのローラー間を回転してもよい。
【0133】
一実施形態において、50から10,000psiが、一つ以上のローラーによって透明導電体に加えられてもよい。100から1000psi、200から800psi、または300から500psiが加えられてもよいことも考えられる。好ましくは、圧力は、いかなるマトリクス材の適用前に透明導電体に加えられる。
【0134】
導電性シートに圧力を加えるために二つ以上のローラーが使用される場合、「ニップ」ローラーまたは「ピンチ」ローラーが使用されてもよい。ニップロローラーまたはピンチローラーは、当技術分野においてよく理解されており、例えば、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる3M Technical Bulletinの2004年3月「Lamination Techniques for Converters of Laminating Adhesives」において説明されている。
【0135】
金属ナノワイヤー網層への加圧により、上記プラズマ処理の適用前または後に、その伝導性が改善され、前のまたは次のプラズマ処理の適用するしないにかかわらず実行されてもよいことが分かった。
図15Aに示されるように、ローラー186および187は、網層180の表面185で、単数回または多数回、回転してもよい。ローラーが、網層180で頻繁に回転する場合、その回転は、シートの回転表面に平行な軸に対して同一方向(例えば、移動経路150に沿って)または異なる方向(図示せず)で実行されてもよい。
【0136】
図15Bは、ステンレス鋼のローラーを使用して約1000psiから約2000psiを加圧した後の、金属ナノワイヤー導電網810の一部のSEM画像である。導電網810は、交差点812a、812b、および812cなどの複数のナノワイヤー交差点を含む。図示されるように、少なくとも上側のナノワイヤー814、816、および818は、交差点812a、812b、および812cの各々において、加圧によって交差するワイヤーが相互に圧迫された、ナノワイヤー導電網の伝導性だけでなく連結性が向上する平坦な交差部分を有する。
【0137】
本段階で、後処理として加熱が使用されてもよい。一般的に、透明導電体は、80℃から250℃で最大10分間のあらゆる範囲において暴露され、より好ましくは、100℃から160℃で約10秒から約2分間のあらゆる範囲において暴露される。透明導電体は、250℃より高い温度に暴露可能で、基板の種類に応じて400℃まで上げることもできる。例えば、ガラスの基板は、約350℃から400℃までの温度範囲で加熱処理可能である。しかしながら、高温(例えば、250℃より高い)による後処理は、窒素または希ガスなどの非酸化的雰囲気の存在を必要とする。
【0138】
加熱は、オンラインまたはオフラインで実行可能である。例えば、オフライン処理において、透明導電体は、既定の時間、一定の温度に設定されるシート乾燥炉に配置可能である。そのような方法による透明導電体の加熱により、本明細書に記載のように作製される透明導電体の伝導性が改善可能である。例えば、本明細書で記載されるリール間プロセスを使用して作製される透明導電体は、200℃の温度で30秒間の設定でシート乾燥炉に配置された。本加熱後処理前、透明導電体の表面抵抗率は、約12kΩ/□であったが、後処理後、約58Ω/□に低下した。
【0139】
別の例において、第二の同様に調製される透明導電体は、シート炉において100℃で30秒間加熱された。第二の透明導電体の抵抗率は、約19kΩ/□から約400Ω/□に低下した。透明導電体は、シート炉以外の方法を使用して加熱されてもよいことも考えられる。例えば、赤外線ランプは、透明導電体を加熱するためのインラインまたはオフライン方法として使用可能である。RF電流も、金属ナノワイヤー網を加熱するために使用されてもよい。RF電流は、マイクロ波放射またはナノワイヤー網への電気接触を介して誘導される電流により金属ナノワイヤー網に誘導されてもよい。
【0140】
さらに、透明導電体に加熱と加圧との両方を適用する後処理が使用可能である。具体的には、加圧のために、透明導電体は、上記のように一つ以上のローラーを介して配置可能である。同時に加熱するために、ローラーが加熱されてもよい。ローラーによる加圧は、好ましくは、10から500psiであり、さらに好ましくは、40から200psiである。好ましくは、ローラーは、約70℃と200℃との間に加熱され、より好ましくは、約100℃と175℃との間に加熱される。加圧と併用して加熱することにより、透明導電体の伝導性を改善することができる。加圧と加熱を同時に行なうために使用されてもよい機械は、カリフォルニア州テメキュラのBanner American Products社のラミネーターである。加圧と併用した加熱は、以下に記載されるように、マトリクスまたはその他の層の蒸着および硬化前または後に実行可能である。
【0141】
透明導電体の伝導性を高めるために使用可能な別の後処理技術は、本明細書で開示されるように作製される透明導電体の金属ワイヤー導電網を、金属還元剤に暴露することである。具体的には、銀ナノワイヤー導電網は、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムなどの銀の還元剤に、好ましくは、約10秒から約30分の、さらに好ましくは、約1分から約10分のあらゆる範囲で暴露可能である。当技術分野において通常の技術を有する者に理解されるように、そのような暴露はインラインまたはオフラインで実行可能である。
【0142】
上述のように、このような処理によって、透明導電体の伝導性を高めることができる。例えば、PET基板上の、本明細書に開示されるリール間方法に準じて調製された銀ナノワイヤーの透明導電体は、2%のNaBH
4に1分間暴露されて、水中で洗浄されて、空気中で乾燥された。後処理前、透明導電体の抵抗率は、約134Ω/□であったが、本後処理後、透明導電体の抵抗率は、約9Ω/□になった。別の例において、ガラス基板上の銀ナノワイヤーの透明導電体は、2%のNaBH
4に7分間暴露されて、水中で洗浄されて、空気中で乾燥された。後処理前、透明導電体の抵抗率は、約3.3MΩ/□であったが、本後処理後、透明導電体の抵抗率は、約150Ω/□になった。水素化ホウ素ナトリウム以外の還元剤が、本後処理のために使用可能である。その他の適切な還元剤として、水素化ホウ素ナトリウムなどのその他のホウ化水素、ジメチルアミノボレン(DMAB)などのホウ素窒素化合物、および水素ガス(H
2)などのガス還元剤が含まれる。
【0143】
その後、基板14は、本明細書で定義されるようなマトリクス材190を放出するマトリクス蒸着機構188に進む。マトリクス蒸着機構188は、
図14Aに記載されるような貯蔵タンク、噴霧装置、ブラッシング装置、印刷装置、および同様なものであることが可能である。マトリクス材192の層は、網層180に蒸着される。有利には、マトリクス材は、パターン化層を形成するために、印刷装置によって蒸着可能である。
【0144】
層192は、次に、硬化機構200において硬化することができる。マトリクス材が高分子/溶媒系である場合、層192は、溶媒を蒸発することによって硬化可能である。硬化プロセスは、加熱(例えば、焼成)によって促進可能である。マトリクス材が、照射硬化型プレポリマーを含む場合、層192は、照射によって硬化可能である。プレポリマーの種類によって、熱硬化(熱によって誘発される重合)も使用可能である。
【0145】
任意で、マトリクス材192の層が硬化される前にパターン化工程が実行可能である。パターン化機構198は、マトリクス蒸着機構188の後かつ硬化機構200の前に配置可能である。パターン化工程は、以下にさらに詳しく説明される。
【0146】
硬化プロセスは、マトリクス210に金属ナノワイヤー網層180を含む導電層204を形成する。導電層204は、後処理機構214によってさらに処理可能である。
【0147】
一実施形態において、導電層204は、導電層の表面上の金属ナノワイヤーの一部を露出するために、後処理機構214において表面処理可能である。例えば、微量のマトリクスは、溶媒、プラズマ処理、コロナ放電、または紫外オゾン処理によってエッチング処理される。露出された金属ナノワイヤーは、特に、タッチスクリーン用途に有用である。
【0148】
別の実施形態において、金属ナノワイヤーの一部は、硬化プロセス後、表面に露出され(
図10Cおよび10Dも参照)、エッチング工程は必要ない。具体的には、マトリクス材層192の厚さおよびマトリクス形成の表面張力が適切に制御される場合、マトリクスは、金属ナノワイヤー層の上部をぬらさず、金属ナノワイヤーの一部は、導電層の表面に露出される。
【0149】
導電層204および基板14は、次に、巻き取りリール147によって引張される。作製のこの流れプロセスは、「リール間」または「ロール間」プロセスとも呼ばれる。任意で、基板は、コンベヤーベルトに沿って移動することによって安定化可能である。
【0150】
「リール間」プロセスににおいて、動く基板の移動経路に沿って多くの被覆工程が実行可能である。したがって、ウェブ被覆システム146は、カスタマイズ可能であり、または、必要に応じてあらゆる数の追加の被覆機構も組み込むように構成可能である。例えば、性能向上層の被覆(反射防止、接着、障壁、防眩、保護の層または膜)は、完全に流れプロセスに統合可能である。
【0151】
有利には、リール間プロセスにより、高速かつ低コストで均一な透明導電体を生産可能である。具体的には、被膜プロセスの連続的な流れにより、被覆される層には立ち上がり端部がない。
【0152】
(c)積層
その多用途性をよそに、「リール間」プロセスは、ガラスなどの剛性基板と適合しない。剛性基板は、シート被覆によって被覆可能であり、コンベヤーベルト上で運ばれることが可能であるが、一般的に、端部欠けおよび/または均一性の欠如が認められる。さらに、シート被覆は、スループットプロセスがより低く、生産コストを大幅に増加させる可能性がある。
【0153】
したがって、柔軟性を有するドナー基板を使用することによって透明導電体を作製するための積層プロセスが本明細書に記載される。本プロセスは、剛性の基板および柔軟性の基板の両方に適合する。より具体的には、積層プロセスは、柔軟性を有するドナー基板上に導電層を被覆するステップであって、その導電層は、マトリクス内に埋め込まれる複数の金属ナノワイヤーを含むステップと、柔軟性を有するドナー基板から導電層を分離するステップと、導電層を選択の基板に移行するステップとを含む。有利には、柔軟性を有するドナー基板への被覆工程は、ドナー基板が柔軟性を有するため、リール間プロセスによって実行可能である。そうして形成された導電層は、次に、通常の積層プロセスによって剛性または柔軟性であることが可能な選択の基板に移行可能である。ナノワイヤーのみが柔軟性を有するドナー基板に蒸着される場合ならびにマトリクス材が使用されない場合、選択の基板に導電層を装着するために積層接着が使用されてもよい。
【0154】
「柔軟性を有するドナー基板」は、シート、膜、および同様なものの形状である柔軟性を有する基板を言及する。柔軟性を有するドナー基板は、導電層から分離可能であるということに特に限定されない。柔軟性を有するドナー基板は、本明細書に記載されるいかなる柔軟性を有する基板であってもよい。さらに、柔軟性を有するドナー基板は、織布または不織布、紙、および同様なものであることが可能である。柔軟性を有するドナー基板は、任意により透明である必要はない。
【0155】
特定の実施形態において、柔軟性を有するドナー基板は、導電層の被覆前に剥離層によって事前に被覆可能である。
【0156】
「剥離層」は、ドナー基板に接着され、その上に導電層がウェブ被膜によって形成可能である薄層を言及する。剥離層により、導電層を損傷することなく、導電層からのドナー基板の取り外しが確実に容易になる。一般的に、剥離層は、低表面エネルギーを有する材料から形成され、シリコンベースの高分子、フッ素化高分子、でんぷん、および同様なものを含むがそれだけに限定されない。
【0157】
図16Aは、柔軟性を有するドナー基板240、柔軟性を有するドナー基板240上に被覆される剥離層244、および剥離層244上に被覆される導電層250を備える、積層構造230の例を示す。
【0158】
積層構造230は、柔軟性を有するドナー基板を使用して、
図15Aに関連して記載された方法と同じように作製可能である。金属ナノワイヤーの蒸着前に、剥離層244が、柔軟性を有するドナー基板上に蒸着または被覆される。導電層250は、金属ナノワイヤーの蒸着によって形成可能であり、その後、本明細書に記載されるようにマトリクス蒸着が続く。
【0159】
次に、導電層は、選択の基板に均一に移行される。具体的には、一般的にリール間被覆プロセスに適応しない剛性基板(例えば、ガラス)が、導電層に積層可能である。
図16Bに示されるように、積層構造230は、導電層250の表面262を基板260に接触させることによって、基板260(例えば、ガラス)に移行される。特定の実施形態において、高分子マトリクス(例えば、PET、PU、およびポリアクリレート)は、基板260に適切に接着する。その後、
図16Cに示されるように、柔軟性を有するドナー基板240は、剥離層244を導電層250から剥離することによって、除去可能である。
【0160】
その他の実施形態において、接着層が、積層工程中に、導電層と基板との間のより優れた結合を提供するために使用可能である。
図17Aは、柔軟性を有するドナー基板240、剥離層244、および導電層250の他に、オーバーコート274および接着層278を備える積層構造270を示す。接着層278は接着表面280を有する。
【0161】
積層構造270は、ウェブ被覆システム146が、接着層およびオーバーコート膜を被覆するための追加の機構を提供するように構成されるという理解のもと、
図15Aに関連して説明されたリール間プロセスにより作製可能である。接着層は、本明細書で定義されるようなもの(例えば、ポリアクリレート、ポリシロキサン)であり、感圧、熱溶解、照射硬化型、および/または熱硬化型である。オーバーコート層は、硬質被膜、反射防止層、保護膜、障壁層、および同様なものを含む性能向上層のうちの一つ以上であることができる。
【0162】
図17Bにおいて、積層構造270は、接着表面280を介して基板260と結合される.その後、
図17Cに示されるように、柔軟性を有するドナー基板240は、オーバーコート274から剥離層244を剥離することによって除去される。
【0163】
特定の実施形態において、接着層(または接着層がない場合は導電層)と基板との結合を強化するために、積層プロセス中に熱または圧力が使用可能である。
【0164】
その他の実施形態において、柔軟性を有するドナー基板および選択の基板に対する導電層の親和性の違いにより、剥離層は必要なくなる。例えば、導電層は、織物状のドナー基板よりも、ガラス基板に対して、より高い親和性を有してもよい。積層プロセスの後、織物状のドナー基板は除去可能であるが、導電層は、ガラス基板にしっかりと結合される。
【0165】
特定の実施形態において、パターン化移行が積層プロセス中に可能である。例えば、基板は、既定のパターンに応じて、基板上の加熱領域および非加熱領域を提供する温度勾配によって加熱可能である。加熱領域のみが、親和性(例えば、接着)が強化されることによって導電層に積層され、パターン化された導電層を基板上に提供する。基板上の加熱領域は、例えば、加熱される基板部分の下に配置されるニクロム線ヒーターによって生成可能である。
【0166】
その他の実施形態において、パターン化移行は、特定のマトリクス材または接着剤に示される感圧親和性に基づく圧力勾配によって作用可能である。例えば、パターン化される積層ローラーは、既定のパターンに応じて異なる圧力を加えるために使用可能である。パターン化される積層ローラーは、加圧領域と非加圧領域との親和性の違いを推進するために加熱も可能である。
【0167】
さらにその他の実施形態において、導電層は、積層プロセス前に、既定のパターンに応じて事前に切り込み(例えば、打抜)可能である。事前に切り込まれる導電層を基板に移行した後に、既定のパターンの導電層は保持されるが、残りは、事前に切り込まれる輪郭に沿って除去される。
【0168】
パターン化
上述のとおり、パターン化される導電層は、パターンに応じてプレポリマー被覆を選択的に硬化することによって形成可能である。硬化プロセスは、光分解または熱によって実行可能である。
図18は、導電層が光によってパターン化される実施形態を示す。より具体的には、金属ナノワイヤーの網層114は、本明細書に記載される方法(例えば、
図13A〜13D)に準じて基板14に蒸着される。基板14は、柔軟性を有するドナー基板をはじめとするいかなる基板でもよいことが理解されたい。
【0169】
その後、プレポリマー被覆300は、金属ナノワイヤー114の網層に蒸着される。照射源310は、プレポリマー被覆を硬化するために光子エネルギーを提供する。マスク314は、プレポリマー被覆300と照射源310との間に配置される。暴露されると、照射に暴露される領域のみが硬化され(つまり、領域320)、非硬化領域324のプレポリマー被覆およびナノワイヤーは、適切な溶媒で洗浄またはブラッシングされること、あるいは粘着性のあるローラーでそれらを持ち上げることによって除去可能である。
【0170】
光硬化型プレポリマーは、当技術分野においてよく知られている。特定の実施形態において、光硬化型プレポリマーは、例えば、鎖延長および架橋に適した水酸化物またはヒドロキシル基などの、一つ以上の二重結合または官能基を備える単量体を含む。その他の実施形態において、光硬化型プレポリマーは、例えば、架橋および鎖延長に適した水酸化物またはヒドロキシルなどの、一つ以上の二重結合または官能基を含有する部分的な高分子またはオリゴマーを含む。
【0171】
二重結合を含有する単量体の例として、アルキルまたはヒドロキシルアクリレートまたはメチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル、および2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのメタクリル酸塩、イソボルニルアクリレート、メタクリル酸メチルおよびエチルメタクリル酸塩、シリコンアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルなどのビニルエステル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、アルキル、およびハロスチレンなどのビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、および塩化ビニリデンが挙げられる。
【0172】
二つ以上の二重結合を含有する単量体の例として、エチレングリコール,プロピレングリコール,ネオペンチルグリコール,ヘキサメチレングリコールのジアクリレート、およびビスフェノールAのジアクリレート、ならびに4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパンリン酸トリメチロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートまたはテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、コハク酸ジメチル、フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、またはトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0173】
部分的なポリマーの例として、アクリル化エポキシ樹脂、アクリル化ポリエステル、ビニルエーテルまたはエポキシ基を含有するポリエステル、ポリウレタンおよびポリエーテル、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられるがそれだけに限定されない。好適な実施形態において、プレポリマーはアクリルである。
【0174】
任意で、重合および/または架橋反応を開始するために、光開始剤が使用可能である。光開始剤は、光子エネルギーを吸収し、鎖延長および架橋を含むラジカル重合のカスケードを開始するラジカルを生成する。光開始剤は、当技術分野においてよく知られている。適切な光開始剤の例として、オキシムエステル、フェニルケトン、オニウム塩、およびホスフィンオキシドが挙げられるがそれだけに限定されず、例えば、米国特許第6,949,678号、6,929,896号、および6,803,392号、N.Buhler&D.Bellus、“Photopolymers as a powerful tool in modern technology”Pure&Appl.Chem。、Vol.67、No.1、pp.25〜31、1995、J.Crivello in Advances in Polymer Science,Vol.62、pp.1〜48(1984)を参照のこと。好適な実施形態において、光開始剤は、Ciba Irgacure
TM754である。一般的に、光開始剤を使用して、プレポリマー被覆は5分以内で硬化可能であり、より好ましくは30秒以内で硬化可能である。
【0175】
その他の実施形態において、熱パターン化は、硬化されるマトリクス材の層の領域のみを熱源に暴露する断熱板(例えば、アパーチュアマスク)を使用して実行可能である。あるいは、マスクの無いアプローチにおいて、レーザーによる直接書き込み技術が、プレポリマー被覆層に加熱パターンを直接「書き込む」ために使用可能である。熱硬化型マトリクス材は、当技術分野に精通する者に知られている。例えば、マトリクス材は、エポキシ、樹脂、およびソルゲル複合材料であることが可能である。
【0176】
光パターン化方法および熱パターン化方法の両方は、上記の「リール間」プロセスに適合する。例えば、光パターン化機構198は、
図15Aに示されるように、ウェブ被覆システム146の一部であることが可能である。光パターン化機構198は、プレポリマー被覆の連続的な露出および硬化を可能にする多くの方法で構成可能である。
【0177】
一実施形態において、
図19Aに示されるように、回転円筒330は、光パターン化機構198の一部である(ウェブ被覆システム146は図示されない)。プレポリマー被覆300に被膜される基板14は、コンベヤーベルト332に沿って動く。回転円筒は、コンベヤーベルト332と同じ速度で回転する。照射源310は、回転円筒330内に配置される。回転転倒330の外側334が、パターン化され、穿孔され、または開口部338を備え、光がプレポリマー被覆300照射できるようにする。任意で、迷光を防止するための保護スリットまたはコリメータ340が、動く基板上に近接して配置可能である。
【0178】
図19Bに示される関連の構成において、パターン化または穿孔の外部352を有するパターンベルト350が使用可能である。パターンベルト350は、ローラー354によって駆動され、そのローラーの一つは、モーター(図示せず)に接続される。パターンベルト350は、動くコンベヤーベルト332と同じ速度で動き、プレポリマー被覆300を開口部360を介して照射源310に連続的に暴露することができる。任意で、保護スリット340が使用可能である。
【0179】
図20は、パターン化される導電層を基板上に形成するための部分的に統合されたシステム400を示す。システム400は、ウェブ被覆システム146に完全に統合されることができる。具体的には、光パターン化機構198は、
図19Aに示されるものと同一である。光の暴露および硬化の後、プレポリマー被覆300は、選択的な領域で硬化され、いかなる非硬化のプレポリマーも除去するように洗浄機構370でさらに処理される。ここで硬化領域380および裸金属ナノワイヤー領域374を含む基板14は、回転粘着性ローラー384に移動する。粘着性ローラー384は、裸金属ナノワイヤー領域をに接触して、それを除去する。裸金属ナノワイヤーの除去後、基板は、非導電性領域386の間の導電性領域380で被覆される。
【0180】
本明細書で記載される透明導電体は、金属酸化物皮膜などの透明導電体を現在利用するいかなる装置も含む、多種多様の装置において電極として使用可能である。適切な装置の例として、フラットパネルディスプレイ、LCD、タッチスクリーン、電磁波シールド、機能ガラス(例えば、エレクトロクロミック窓)、光電子デバイス、および同様なものなどが挙げられる。さらに、本明細書における透明導電体は、フレキシブルディスプレイおよびタッチスクリーンなどの柔軟性を有する装置において使用可能である。
【0181】
一実施形態において、透明導電体は、液晶表示(LCD)装置における画素電極として使用可能である。
図21は、図式的にLCD装置500を示す。バックライト504は、偏光子508および底部ガラス基板512を介して光を投影する。複数の第一の透明導電体ストリップ520は、底部ガラス基板512と第一の配向層522との間に配置される。各透明導電体ストリップ520は、データ回線524と交互に置かれる。スペーサー530は、第一の配向層522と第二の配向層532との間に提供され、配向層はその間で液晶536を挟む。複数の第二の透明導電体ストリップ540は、第二の配向層532の上に配置され、第二の透明導電体ストリップ540は、第一の透明導電体ストリップ520から直角に向けられる。第二の透明導電体ストリップ540は、不動態化層544、着色マトリクス548、上部ガラス基板550、および偏光子554でさらに被覆される。有利には、透明導電体ストリップ520および540は、底部ガラス基板、およびそれぞれの配向層への積層プロセスにおいてパターン化および移行可能である。従来使用されている金属酸化物ストリップ(ITO)とは違い、費用のかかる蒸着またはエッチングプロセスが必要ない。
【0182】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される透明導電体は、タッチスクリーンの一部を成す。タッチスクリーンは、電子表示に統合される対話型入力装置であり、スクリーンに触れることによって、ユーザーが指示を入力することが可能になる。タッチスクリーンは、任意で、光や画像が透過可能なように透明である。
【0183】
図22は、一実施形態にかかるタッチスクリーン装置560を図式的に示す。装置560は、第一の導電層572で被覆または積層される第一の基板568を備える第一の透明導電体564を含み、第一の導電層572は、上部の導電表面576を有する。第二の透明導電体580は、第一の透明導電体564の上に配置され、装置560の両側で接着エンクロージャ584および584’によってそこから分離される。第二の透明導電体580は、第二の基板592に被覆または積層される第二の導電層588を含む。第二の導電層588は、上部の導電表面576と向かい合い、スペーサーの上で浮遊するする内側導電表面594を有する。
【0184】
ユーザーが第二の透明導電体580に触れると、内側の導電表面594が、第一の透明導電体564の上部の導電表面576に接触し、静電場に変化をもたらす。制御器(図示せず)は、変化を感知し、実際のタッチ座標を決定し、次に情報がオペレーティングシステムに伝達される。
【0185】
本実施形態によれば、内側の導電表面594および上部の導電表面576は、約10〜1000Ω/□、より好ましくは約10〜500Ω/□の範囲の表面抵抗率をそれぞれ有する。任意で、第一および第二の透明導電体は、画像を透過可能にするために高透過率(例えば、>85%)を有する。
【0186】
第一および第二の基板は、本明細書に記載のさまざまな材料であることが可能である。例えば、第一の基板は、剛性(例えば、ガラスあるいはポリカーボネートまたはポリアクリレート剛性プラスチック)であることが可能で、一方、第二の基板は、柔軟性を有する膜であることが可能である。あるいは、柔軟性を有するタッチスクリーンの用途について、両基板が柔軟性のある膜(例えば、プラスチック)であることが可能である。
【0187】
現在入手可能なタッチスクリーンは、一般的に、金属酸化物導電層(例えば、ITO膜)を使用している。上述のとおり、ITO膜は、脆弱であり、作製するのに費用がかかる。具体的には、ITO膜は、一般的に、高温かつ真空でガラス基板に蒸着される。反対に、本明細書に記載の透明導電体は、高スループット方法かつ低温で作製可能である。それらは、プラスチック膜などの柔軟性および耐久性を有する基板を含むさらに多様な基板も可能にする。
【0188】
透明導電体の構造、その電気的および光学的特性、および作製方法が、以下の非限定の例によってさらに詳しく説明される。
【実施例】
【0189】
例1
(銀ナノワイヤーの合成)
銀ナノワイヤーは、例えば、Y.Sun、B.Gates、B.Mayers、&Y.Xia,“Crystalline silver nanowires by soft solution processing”、Nanoletters、 (2002)、2(2)165〜168に記載される「ポリオール」方法の後、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で、エチレングリコールに溶解される硫酸銀の還元によって合成された。Cambrios Technologies Corporationの名における米国仮出願第60/815,627号に記載される修正されたポリオール方法によって、従来の「ポリオール」方法よりも、さらに均一の銀ナノワイヤーがより高い収率で生産される。この出願は、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0190】
例2
(透明導電体の調製)
5μm厚さのAutoflex EBG5ポリエチレンテレフタレート(PET)膜が、基板として使用された。PET基板は、光学的に透明の絶縁体である。PET基板の光透過性およびヘイズが表1に示される。別途記載のない限り、光透過性は、ASTM D1003における手法を使用して測定された。
【0191】
銀ナノワイヤーの水分散体がまず準備された。銀ナノワイヤーは、幅が約70nmから80nmで、長さが約8μmである。銀ナノワイヤー(AgNW)の密度は、散体の約0.5%w/vであり、結果として、約0.5の光学密度をもたらした(Molecular Devices Spectra Max M2プレートリーダーで測定された)。散体は、次に、ナノワイヤーが基板に堆積可能にすることによって、PET基板上に被覆された。当技術分野に精通する者に理解されるように、狭いチャネルによって測定される流れ、ダイフロー、傾斜の流れ、および同様なものなどのその他の被覆技術が使用可能である。流体の粘度およびせん断挙動だけでなくナノワイヤー間の相互作用が、被覆されるナノワイヤーの分布および相互接続性に影響を及ぼしてもよいことがさらに理解されたい。
【0192】
その後、銀ナノワイヤーの被覆層は、水分蒸発による乾燥が可能になる。「網層」とも呼ばれる裸銀ナノワイヤー膜は、PET基板(AgNW/PET)上に形成された。BYK Gardner Haze−gard Plusを使用して光透過性およびヘイズが測定された。表面抵抗率がFluke 175 True RMS Multimeterを使用して測定された。表1に結果が示される。ナノワイヤーの相互接続性および基板の面積被覆も、光学または走査顕微鏡で観察された。
【0193】
マトリクス材は、ポリウレタン(PU)(Minwax Fast−Drying Polyurethane)を、メチルエチルケトン(MEK)に混合させることによって調製され、1:4(v/v)の粘性溶液を生成したマトリクス材は裸銀ナノワイヤー膜の回転被覆で被覆された。当技術分野に既知であるその他の方法、例えば、ドクターブレード、マイヤーロッド、ドローダウンまたはカーテン被覆が使用可能である。マトリクス材は、室温で約3時間硬化され、その間に、溶剤MEKが、蒸発し、マトリクス材は硬くなった。あるいは、硬化は、オーブンで、例えば50℃、2時間で発生可能である。
【0194】
PET基板上(AgNW/PU/PET)に導電層を有する透明導電体は、このようにして形成された。マトリクスにおける銀ナノワイヤーの導電層は、約100nmの厚さであった。その光学的および電気的特性が測定され、その結果は表1に示される。
【0195】
透明導電体は、さらにテープ試験を受けた。より具体的には、3M Scotch(登録商標)600の粘着テープがマトリクスの表面にしっかりと適用された後に除去された。いかなる緩い銀ナノワイヤーも、テープと共に除去された。テープ試験の後、透明導電体の光学的および電気的特性が測定され、その結果は表1に示される。
【0196】
比較するために、マトリクスだけの膜が、上記と同一の状態下でPET基板(PU/PET)上に形成された。PU/PETの光学的特性(光透過性およびヘイズ)および電気的特性も、表1に示される。
【0197】
表1に示されるように、PET(PU/PET)上のマトリクスだけの膜は、PET基板よりもわずかに高い光透過性ならびにヘイズ値を示した。どちらとも導電性ではなかった。比較すると、PET上の裸銀ナノワイヤー膜は、導電性が高く、表面抵抗率60Ω/□を示した。裸銀ナノワイヤー膜をPET上に蒸着することによって、光透過が低下し、ヘイズが増加した。しかしながら、PET上の裸銀ナノワイヤー膜は、80%以上の光透過性を有し、依然として光学的に透明であると考えられた。PET上の裸銀ナノワイヤー膜の光学的および電気的特性は、一般的に60から400Ω/□の範囲であるPET基板に形成される金属酸化物皮膜(例えば、ITO)に同等またはそれよりも優れていた。
【0198】
表1にさらに示されるように、ポリウレタンマトリクスにおける銀ナノワイヤーに基づく透明導電体は、PET上の裸銀ナノワイヤー膜とほとんど同一の光透過性およびわずかに高いヘイズを示した。透明導電体の抵抗性は、裸銀ナノワイヤー膜と同じであり、マトリクス材の被覆が、銀ナノワイヤー膜を阻害しなかったことが示された。このように形成された透明導電体は、光学的に透明であり、PET基板に形成される金属酸化物皮膜(例えば、ITO)と同等または優れた抵抗率を示した。
【0199】
さらに、テープ試験によって、透明導電体の抵抗性または光透過性は変更せず、ヘイズがわずかに増加しただけだった。
【0200】
【表1】
例3
(促進H
2S腐食試験)
硫化水素(H
2S)などの硫化物は、既知の腐食剤である。金属ナノワイヤー(例えば、銀)の電気的特性は、大気硫化物の存在下で潜在的に影響を受ける可能性がある。有利には、透明導電体のマトリクスは、ガス透過障壁としての役割を果たす。これにより、ある程度、大気H
2Sがマトリクス中に埋め込まれる金属ナノワイヤーに接触することを防止される。金属ナノワイヤーの長期的安定は、本明細書に記載されるマトリクスに一つ以上の腐食防止剤を混入することによってさらに得ることができる。
【0201】
米国において、空気中のH
2Sの量は、約10億分の0.11〜0.33である。このレベルで、腐食は長期間で発生すると予測される。したがって、促進H
2S腐食試験は、H
2S腐食の極端な例を提供するように意図された。
【0202】
調理直後の卵黄が細かく砕かれて、ビニル袋に入れて密封された。H
2S計測器(Indus試行Scientifi社のGasBadge Plus−Hydrogen Sulfine Single Gas Monitor)が袋に挿入されて、卵黄からのH
2S放出が観測された。
図23は、24時間のH
2Sガスの一般的な放出プロファイルを示す。袋におけるH
2Sの初期上昇以降、ガスレベルは降下し、ガスが透過性のある袋から拡散したことが示された。それにも関わらず、袋におけるH
2Sガスレベル(ピークで7.6ppm)は、大気H
2Sガスのレベルをはるかに越えていた。
【0203】
PET上の裸銀ナノワイヤー膜は、例2に準じて調製された。膜は、ビニル袋に調理直後の卵黄と共に置かれた。膜は、二時間以内で黒くなり、銀がさびて黒色Ag
2Sが形成されたことが示される。反対に、ポリウレタンマトリクスにおける銀ナノワイヤー膜における変色は、2〜3日後まで認められず、ポリウレタンマトリクスがH
2Sガスの透過を遅らせる障壁として役割を果たしたことが示された。
【0204】
例4
(腐食防止剤の混入)
導電膜の以下のサンプルが調製された。PET基板が各サンプルに使用された。特定のサンプルにおいて、ベンゾトリアゾール、ジチオチアジアゾール、およびアクロレインを含む腐食防止剤が、導電膜の調製中に混入された。
【0205】
サンプル1〜2は、本明細書に記載の方法に準じて調製された。腐食防止剤は存在しなかった。
【0206】
サンプル1は、裸銀ナノワイヤーの導電膜であった。
【0207】
サンプル2は、ポリウレタンマトリクスにおける銀ナノワイヤーの導電膜であった。
【0208】
サンプル3〜6は、まず裸銀ナノワイヤー膜をPET基板上に形成することによって調製された(つまり、サンプル1)。その後、さまざまな腐食防止剤が、マトリクス材の被覆プロセス中に混入された。
【0209】
サンプル3は、メチルエチルケトン(MEK)におけるベンゾトリアゾール(BTA)の0.1w/v%溶液を裸銀ナノワイヤー上に被覆することによって調製され、被覆後に溶剤を乾燥させ、その後MEKにおいてポリウレタンのマトリクス材(1:4)を被覆した。
【0210】
サンプル4は、まず、1.5v/v%のジチオチアジアゾールをマトリクス材PU/MEK(1:4)に混入することにより調製され、その後、マトリクス材を裸銀ナノワイヤー膜に被膜した。
【0211】
サンプル5は、まず、裸銀ナノワイヤー膜をMEKにおける1.5v/v%のジチオチアジアゾール溶液に浸すことによって調製され、その後、1.5v/v%のジチオチアジアゾールを有するマトリクス材PU/MEK(1:4)で被覆された。
【0212】
サンプル6は、まず、1.5v/v%のアクロレインをマトリクス材PU/MEK(1:4)に混入することにより調製され、その後、マトリクス材が裸銀ナノワイヤー膜に被覆された。
【0213】
サンプル1〜6の光学的および電気的特性は、例3に記載されるように促進H
2S処理前および後に測定された。その結果は、
図24A、24B、および24Cに示される。
【0214】
図24Aは、H
2S処理前およびH
2S処理後24時間のサンプル1〜6の光透過性の測定を示す。比較のため、各サンプルの光透過性の減少もグラフ化されている。H
2S処理前に、全てのサンプルが、光学的に透明であることを示していた(80%の光透過性を有していた)。H
2S処理の24時間後、全てのサンプルは、異なる度合いの銀変色により光透過性が減少した。
【0215】
予想どおり、サンプル1は、光透過性が最も減少した。サンプル3および6は、マトリクスのみのサンプル(サンプル2)よりも優れた性能を示さなかった。しかしながら、サンプル4および5は、マトリクスのみのサンプルに比べて光透過性があまり減少せず、腐食防止剤のジチオチアジアゾールが、銀ナノワイヤーの腐食防止において効果的であったことを示した。
【0216】
図24Bは、H
2S処理前およびH
2S処理後24時間のサンプル1〜6の抵抗性の測定を示す。比較のため、各サンプルの抵抗性の減少もグラフ化されている。図示されるように、サンプル4以外の全ての抵抗性は劇的に増加し、効果的に非導電性になったが、電気的特性における劣化開始がサンプルによっては大幅に遅れた。サンプル4は、その抵抗性がやや増加しただけであった。サンプル4およびサンプル5におけるH
2Sの影響は、両サンプルが同一の腐食防止剤(ジチオチアジアゾール)を含んでいるにも関わらず、大幅に異なることが留意されたい。これにより、被覆プロセスによって一定の腐食防止剤の効果に影響をあたえ得るということになる。
【0217】
図24Cは、H
2S処理前およびH
2S処理後24時間のサンプル1〜6のヘイズ測定を示す。比較のため、各サンプルのヘイズの変化もグラフ化されている。全てのサンプルは、ヘイズの測定において増加を示した。サンプル1および6を例外として、ヘイズは、サンプル2〜5の各々について許容範囲内(10%未満)であった。
【0218】
サンプル4は、腐食H
2Sガスへの耐性において全体的に最良の性能を有することが示された。腐食防止剤(ジチオチアジアゾール)をマトリクスに混入することによって、透明導電体は、腐食防止剤が含まれないサンプル2よりも明らかに利点を示した。
【0219】
これらの促進テストにおけるH
2Sレベルは、大気H
2Sよりもはるかに大きいことが留意されたい。ゆえに、サンプル4と同様に調製される透明導電体は、大気H
2Sの存在下においてさらに優れていることが予測される。
【0220】
例5
(金属ナノワイヤー網層の加圧処理)
表2は、基板上の銀ナノワイヤーの網層(または「網層」)の表面に加圧する二つの試行の結果を示す。
【0221】
具体的に、幅が約70nmから80nmで、長さが約8μmの銀ナノワイヤーがAutoflex EBG5 PET基板上に蒸着された。基板は、ナノワイヤーの蒸着前にアルゴンプラズマで処理された。網層は、例2に記載の方法に準じて形成された。マトリクス材は、加圧処理前に網に適用しなかった。表2に挙げられる試行は、剛性のベンチトップ上で単一のステンレ鋼のローラーを使用して実行された。処理された網層の部分は3から4インチの幅で、3から4インチの長さであった。
【0222】
【表2】
加圧前に、網層は「初期値」の列に記載される抵抗を有していた(網層は、プラズマで事前処理されなかった)。表2の各列は、約340psiで網層を横断する後続する単一ロールを示す。
【0223】
各試行において、網層は、5回ロールをかけられた。その後、プラズマ処理が網層に適用された。各ロール後の抵抗は、二列目(第一の試行)および三列目(第二に試行)に列挙される。第二の試行についての透過性およびヘイズにおける変化は、四列目および五列目にそれぞれ列挙される。示されるように、各試行の網層の伝導性は、その表面に加圧することによって増加したことが分かった。
【0224】
表2に示されるように、ローラーによる網層への加圧により、層の光透過性が減少し、ヘイズが増加する。以下の表3に示されるように、加圧処理後の洗浄プロセスによって、網層の透過性がさらに改善し、ヘイズが減少可能になる。
【0225】
【表3】
表3に示されるように、剛性基板上で単一のステンレス鋼の棒を使用して約340psiで二回ロールして網層へ加圧することにより、網層の光透過性が減少し、ヘイズが増加する。しかしながら、そのロールの後、石けんおよび水で網層を洗浄することによって、透過性が増加し、ヘイズが減少する。アルゴンプラズマ処理によって、透過性およびヘイズがさらに改善された。
【0226】
ロールすることなしに石けんと水で網を洗浄することも、伝導性をある程度改善するのに効果的である。
【0227】
加圧または洗浄処理の後に、マトリクス材は、例2において前述のように被覆可能である。
【0228】
例6
(導電層の光パターン化)
図25Aは、ナノワイヤーベースの透明導電膜を直接パターン化する一方法を示す。本例において、銀ナノワイヤー網層(「網層」)600は、初めに、例2に記載の方法に準じてガラス基板604に形成された。二つのホルダー610が、マトリクス形成の範囲614を形作るためにガラス基板604上に置かれた。プレポリマーの混合を含む光硬化型マトリクス材618は、範囲614内の網層600上に被覆された。マスク620は、ホルダー610上に置かれた。マスク620は、約500μm幅の多くの暗線624を有するスライドガラスであった。次に、マトリクス材は、Dymax 5000ランプ下で90秒間照射された。マトリクス材は、光に暴露された領域が硬化し、暗線でマスクされた領域は液体のままであった。
【0229】
図25Bに示されるように、導電膜630は上記の光パターン化後に得られた。明るい方の領域634は紫外線照射に暴露され、暗い領域638は光暴露からマスクされた。導電膜640は、粘着テープまたは粘着性ロールによって、非硬化領域644のマトリクス材およびナノワイヤーを除去する。図示されるように、非硬化領域644と硬化領域644との接触は明白であった。粘着テープ処理後、非硬化領域644におけるナノワイヤーの密度は、パーコレーション閾値を下回った。細かいプローブチップを使用する電気的な測定は、非硬化領域644が非導電性であることを示した。
【0230】
図26A〜Fは、光パターン化された導電層をより高い倍率で示す。
図26Aは、光硬化直後の導電膜640を示す(5x)。
図26Bは、粘着テープ処理後の導電膜640を示し(5x)、その中で、硬化領域648は、非硬化領域644よりも明るく見える。さらに高い倍率で(
図26Cおよび26D、20x)、非硬化領域644は、硬化領域648よりも低いナノワイヤーの密度を有することが認められた。この対比は、
図26Eおよび26F(100x)においてより明白である。
【0231】
粘着テープまたは粘着性ロールを使用して非硬化領域のマトリクス材およびナノワイヤー除去する代替方法として、非硬化領域を洗浄するために溶媒が使用されてもよい。
図27A〜Dに示されるように、導電膜700は、上に説明されるように調製され、真ちゅうのアパーチュアマスクを介して紫外線照射に暴露された。
図27Aは、エタノールで洗浄されて拭き取った後の硬化領域(導電性領域)710および非硬化領域720を示す。
図27B〜Dは、増加倍率において、硬化領域710と比較した非硬化領域720のナノワイヤー密度の対比を示す。非硬化領域720において、非硬化のマトリクス材および銀ナノワイヤーのほとんどは、エタノール洗浄によって除去された。したがって、光パターン化は、既定のパターンに応じて導電性領域および非導電性領域を生成する。
【0232】
例7
(光硬化型配合)
例6に記載されるマトリクス材は、アクリレート単量体(または本明細書に定義されるプレポリマー)、多官能アクリレート単量体(またはプレポリマー)、および少なくとも一つの光開始剤を混合することによって配合可能である。いかなるアクリレート単量体またはプレポリマーも使用可能であり、例えば、エポキシアクリレート、より具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、メタクリル酸塩、および同様なものが挙げられる。いかなる多官能アクリレート単量体(またはプレポリマー)も、架橋高分子網目の形成を促進するために使用可能である。例として、リン酸トリメチロールトリアクリレート(TMPTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノール-Aジアクリレート、プロポキシ化(3)リ
ン酸トリメチロールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ−アクリレートが挙げられる。いかなる光開始剤、例えばケトンベースの開始剤も使用可能である。特定の例として、Ciba Irgacure754、Ciba Irgacure184などのフェニルケトン、α−ヒドロキシケトン、グリオキシル酸、ベンゾフェノン、α−アミノケトン、および同様なものが挙げられる。より具体的には、即硬化配合が、60%〜70%の2−エチルヘキシルアクリレート、15%〜30%のリン酸トリメチロールトリアクリレート、および約5%のCiba lrgacure754を混合することによって調合可能である。
【0233】
その他の添加剤は、安定性を強化するためおよび/またはマトリクスとナノワイヤーの接着を促進するために添加可能である。例えば、有機物と無機物との結合を促進する接着促進剤(例えば、シラン)が使用可能である。シラン型の接着促進剤の例として、GE Silquest A174、GE Silquest A1100、および同様なものが挙げられる。Ciba Irgonox 1010ff、Ciba Irgonox 245、Irgonox 1035などの酸化防止剤が使用可能である。さらに、光開始剤の効果を促進するために付加的または共開始剤が使用可能である。共開始剤の例として、Sartomer CN373、CN371、CN384、CN386、および同様なものなどのいかなる種類の第3アミンアクリレートも挙げられる。Ciba lrgacure OXE01などの付加的な光開始剤がさらに添加可能である。
【0234】
以下は、本例において使用されるマトリクス材として適切な四つの例示的な光硬化型配合である。
配合1
75% 2−エチルヘキシルアクリレート、
20% リン酸トリメチロールトリアクリレート(TMPTA)、
1% 接着促進剤(GE Silquest A1100)、
0.1% 酸化防止剤(Ciba Irgonox 101 Off)、および
4% 光開始剤(Ciba lrgacure 754)
配合2
73.9% 2−エチルヘキシルアクリレート、
20% リン酸トリメチロールトリアクリレート(TMPTA)、
1% 接着促進剤(GE Silquest A1100)、
0.05% 酸化防止剤(Ciba Irgonox 1010ff)、および
5% 光開始剤(Ciba Irgacure 754)
配合3
73.1% トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)
22.0% リン酸トリメチロールトリアクリレート(TMPTA)
4.9% 光開始剤(Ciba Irgacure 754)
0.03% 酸化防止剤(4−メトキシフェノール)
配合4
68% 2−エチルヘキシルアクリレート、
20% リン酸トリメチロールトリアクリレート(TMPTA)、
1% 接着促進剤(GE Silquest A1100)、
0.1% 酸化防止剤(Ciba Irgonox 1010ff)および
5% 光開始剤I(Ciba Irgacure 754)
5% 共開始剤(Sartomer CN373)
1% 光開始剤II(Ciba Irgacure OXE01)
例8
(ナノワイヤー分散)
ナノワイヤー分散またはインキは、約0.08%wt.のHPMC、約0.36%wt.の銀ナノワイヤー、約0.005%wt.のZonyl(登録商標)FSO−100、および約99.555%wt.の水を混合することによって配合された。初期工程として、HPMC原液が調合された。ナノワイヤー分散の所望の全容積の約3/8に等しい水量がビーカーに入れられ、80℃から85℃の範囲まで加熱板上で加熱された。0.5%wt.のHPMC溶液を生成するのに十分なHPMCが水に添加され、加熱板の電源が切られた。HPMCおよび水の混合液は、HPMCを分散するために撹拌された。全水量のうちの残りは、氷で冷やされ、加熱されたHPMC溶液に添加されて、高RPMで約20分間撹拌された。HPMC溶液は、40μm/70μm(絶対的/標準的)のCuno Betapureフィルターで濾され、溶解されなかったゲルおよび粒子が除去された。次に、Zonyl(登録商標)FSO−100原液が調合された。より具体的には、10gのZonyl(登録商標)FSO100が、92.61mLの水に添加され、Zonyl(登録商標)FSO100が完全に溶解するまで加熱された。最終インキ組成における約0.08%wt.のHPMC溶液を生成するのに必要なHPMC原液量が容器に入れられた。最終インキ組成における約99.555%wt.の水溶液を生成するのに必要なDI水量が添加された。溶液は約15分間撹拌されて、最終インキ組成における約0.36%Agナノワイヤー溶液を生成するのに必要な銀ナノワイヤーの量が添加された。最後に、約0.005%wt.のZonyl(登録商標)FSO−100を生成するために必要な、Zonyl(登録商標)FSO−100原液量が添加された。
【0235】
本明細書で参照されるおよび/または出願データシートに列挙される上記の米国特許、米国特許公報出願、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許出版物の全ては、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0236】
本発明の特定の実施形態が本明細書において説明のために記載されたが、さまざまな修正が、本発明の精神と範囲を逸脱することなく加えられてもよいことが前述により理解されるだろう。したがって、本発明は、添付の請求項によって限定される以外は、限定されない。