特許第6162415号(P6162415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162415撮像装置及びフォーカルプレーンシャッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162415
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】撮像装置及びフォーカルプレーンシャッタ
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   G03B9/36 D
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-17526(P2013-17526)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149382(P2014-149382A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】根本 千秋
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕士
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 翔一
(72)【発明者】
【氏名】中野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 基晴
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−148718(JP,A)
【文献】 特開平10−206926(JP,A)
【文献】 特開2004−317666(JP,A)
【文献】 特開2004−317590(JP,A)
【文献】 特開2002−214671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有した基板、走行して前記開口を開閉する幕、アクチュエータ、前記アクチュエータにより駆動されて前記幕を走行させる駆動レバーと、前記駆動レバーの回転に応じて移動する薄板と、発光素子及び受光素子を有し前記発光素子から前記受光素子に向けて照射された光を前記薄板が前記発光素子及び受光素子に非接触で遮断したか否かに応じて所定位置の前記幕の通過を検出する検出部、を含むフォーカルプレーンシャッタと、
前記開口を介して光が入射する撮像素子と、
前記アクチュエータを制御して前記幕を走行させる駆動制御部と、を備え、
前記駆動制御部は、少なくとも前記幕が前記所定位置を通過する前まで前記幕を走行させる走行制御を実行し、前記幕が走行中であり前記所定位置の通過後に前記幕を減速させる制動制御を実行し、前記制動制御実行後の前記幕のバウンド中に、前記走行制御時でのアクチュエータへの通電方向と同一方向に通電するバウンド抑制制御を実行し、
前記バウンド抑制制御実行時の前記アクチュエータに供給される電力量は、前記走行制御実行時の前記アクチュエータに供給される電力量よりも少ない、撮像装置。
【請求項2】
前記制動制御は、前記アクチュエータへの通電方向を切り替える、前記アクチュエータの端子を短絡させる、前記アクチュエータに供給される電力量を前記走行制御時よりも減少させる、の少なくとも一つを含む、請求項1の撮像装置。
【請求項3】
前記所定位置は、前記幕の走行範囲の出発位置から停止位置までの間の前記停止位置に近い位置である、請求項1又は2の撮像装置。
【請求項4】
前記幕は、複数の羽根を含み、前記複数の羽根が重なって前記開口から退避した重畳状態及び前記複数の羽根が展開して前記開口を閉鎖する展開状態間を移行可能であり、
前記駆動制御部は、前記幕が前記重畳状態から前記展開状態へ移行する走行中に前記制動制御を実行する、請求項1乃至3の何れかの撮像装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、互いに逆方向である第1及び第2方向に前記幕を走行させて前記開口を開閉し、
前記所定位置は、異なる第1及び第2所定位置を含み、
前記制動制御は、前記幕が前記第1方向に走行中であり前記第1所定位置の通過後に前記幕を減速させる第1制動制御、前記幕が前記第2方向に走行中であり前記第2所定位置の通過後に前記幕を減速させる第2制動制御、を含む、請求項1乃至3の何れかの撮像装置。
【請求項6】
前記検出部が所定期間内に前記幕が前記所定位置を2回以上通過したことを検出した場合には、前記幕が誤動作状態であると判定する制御部とを備えた、請求項1乃至5の何れかの撮像装置。
【請求項7】
開口を有した基板と、
走行して前記開口を開閉する幕と、
アクチュエータと、
前記アクチュエータにより駆動されて前記幕を走行させる駆動レバーと、
前記駆動レバーの回転に応じて移動する薄板と、
発光素子及び受光素子を有し前記発光素子から前記受光素子に向けて照射された光を前記薄板が前記発光素子及び受光素子に非接触で遮断したか否かに応じて所定位置の前記幕の通過を検出する検出部と、を備え、
前記アクチュエータは、少なくとも前記幕が前記所定位置を通過する前まで前記幕を走行させる走行制御が実行され、前記幕が走行中であり前記所定位置の通過後に前記幕を減速させる制動制御が実行し、前記制動制御実行後の前記幕のバウンド中に、前記走行制御時でのアクチュエータへの通電方向と同一方向に通電されるバウンド抑制制御が実行され、
前記バウンド抑制制御実行時の前記アクチュエータに供給される電力量は、前記走行制御実行時の前記アクチュエータに供給される電力量よりも少ない、フォーカルプレーンシャッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びフォーカルプレーンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置に採用されるフォーカルプレーンシャッタが知られている。特許文献1のフォーカルプレーンシャッタは、アクチュエータによって走行する幕により基板の開口を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004‐101860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば基板に形成された度決めに幕が当接し、又はアクチュエータの動力を幕に伝達する駆動レバーが基板の一部に当接することにより、幕の停止位置が規定される。このため、走行している幕が停止する際には、幕又は駆動レバーが基板に当接してバウンドしてから所定の期間経過後に停止する。このような幕が大きくバウンドすると、種々の問題が生じるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、幕のバウンドが抑制された撮像装置及びフォーカルプレーンシャッタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口を有した基板、走行して前記開口を開閉する幕、前記幕を走行させるアクチュエータ、所定位置の前記幕の通過を検出する検出部、を含むフォーカルプレーンシャッタと、前記開口を介して光が入射する撮像素子と、前記アクチュエータを制御して前記幕を走行させる駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、少なくとも前記幕が前記所定位置を通過する前まで前記幕を走行させる走行制御を実行し、前記幕が走行中であり前記所定位置の通過後に前記幕を減速させる制動制御を実行する、撮像装置によって達成できる。幕が走行中であり所定位置の通過後に幕を減速させることにより、幕の停止時に発生するバウンドを抑制できる。
【0007】
上記目的は、開口を有した基板と、走行して前記開口を開閉する幕と、前記幕を走行させるアクチュエータと、所定位置の前記幕の通過を検出する検出部と、を備え、前記アクチュエータは、少なくとも前記幕が前記所定位置を通過する前まで前記幕を走行させる走行制御が実行され、前記幕が走行中であり前記所定位置の通過後に前記幕を減速させる制動制御が実行される、フォーカルプレーンシャッタによっても達成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、幕のバウンドが抑制された撮像装置及びフォーカルプレーンシャッタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、フォーカルプレーンシャッタを備えたカメラのブロック図である。
図2図2は、フォーカルプレーンシャッタの正面図である。
図3図3A、3Bは、センサの説明図である。
図4図4は、通常動作時でのフォーカルプレーンシャッタのタイミングチャートである。
図5図5は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図6図6は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図7図7は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図8図8は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図9図9は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図10図10は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図11図11は、フォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
図12図12は、連写動作時でのフォーカルプレーンシャッタのタイミングチャートである。
図13図13は、連写動作時でのフォーカルプレーンシャッタの動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、フォーカルプレーンシャッタ1を備えたカメラ(撮像装置)Aのブロック図である。カメラAは、フォーカルプレーンシャッタ1、制御部110、撮像素子130、駆動制御部170を備えている。フォーカルプレーンシャッタ1は、詳しくは後述するが先幕アクチュエータ(以下、アクチュエータと称する)70a、後幕アクチュエータ(以下、アクチュエータと称する)70b、先幕センサ(以下、センサと称する)60a、後幕センサ(以下、センサと称する)60bを備えている。
【0011】
駆動制御部170は、制御部110からの指令に応じてアクチュエータ70a、70bの駆動を制御する。駆動制御部170は、CPU等を備えている。制御部110は、詳しくは後述するがセンサ60a、60bからの信号に応じて駆動制御部170に所定の指令を出す。駆動制御部170は、この指令を受けてアクチュエータ70a、70bの駆動を制御する。制御部110は、カメラ全体の動作を制御し、CPU、ROM、RAM等を備えている。撮像素子130は、CMOSである。撮像素子130は、被写体像を光電変換作用により電気的信号に変換する受光素子である。尚、カメラAは、図1には図示していないが、焦点距離を調整するためのレンズ等を備えている。
【0012】
図2は、フォーカルプレーンシャッタ1の正面図である。図2では、アクチュエータ70a、70bについては省略してある。フォーカルプレーンシャッタ1は、基板10、先幕20A、後幕20B、アーム31a、32a、31b、32b、アクチュエータ70a、70b等を有している。基板10には、矩形状の開口11を有している。
【0013】
先幕20Aは、3枚の羽根21a〜23aから構成され、後幕20Bは、3枚の羽根21b〜23bから構成される。図2は、先幕20A、後幕20Bが重畳状態である場合を示している。図2の場合には、先幕20A、後幕20Bは開口11から退避している。先幕20Aはアーム31a、32aに連結されている。後幕20Bは、アーム31b、32bに連結されている。これらアーム31a、32a、31b、32bは、それぞれ基板10に回転自在に支持されている。
【0014】
基板10には、アーム31a、31bをそれぞれ駆動するための先幕駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)55a、後幕駆動レバー(以下、駆動レバーと称する)55bが設けられている。駆動レバー55a、55bは、それぞれ歯車50a、50bに連結されている。歯車50a、50bは、それぞれ歯車40a、40bと噛合している。歯車40a、40b、50a、50bは、それぞれ筒部41a、41b、51a、51bを有し、各筒部と嵌合する軸42a、42b、52a、52bを中心に基板10に回転可能に支持されている。尚、軸42a、42b、52a、52bは必ずしも開口11が形成された基板10に形成されていなくてもよく、開口11に対して定位置に設ければよい。
【0015】
歯車40a、40bは、それぞれアクチュエータ70a、70bのロータに連結されている。アクチュエータ70aが駆動することにより、歯車40a、50aが駆動し、これにより駆動レバー55aが駆動する。駆動レバー55aが駆動することにより、アーム31aが駆動する。これにより、先幕20Aが走行する。先幕20Aは、開口11から退避した退避位置及び開口11を閉鎖する閉鎖位置間を走行可能である。先幕20Aは、アクチュエータ70aにより退避位置及び閉鎖位置間を走行する。歯車40b、50b、駆動レバー55b、後幕20Bについても同様である。
【0016】
歯車40a、40bには、それぞれ薄板45a、45bが設けられている。薄板45a、45bはそれぞれ歯車40a、40bと共に回転する。薄板45a、45bはそれぞれ扇状である。センサ60a、60bは、詳しくは後述するが、基板10上に配置されている。センサ60a、60bは、それぞれ第1、第2検出部の一例である。
【0017】
また、アーム31a、31bにはそれぞれ不図示の2つのバネが連結されている。詳細には、一方のバネの一端はアーム31aに連結され他端は基板10に連結されている。他方のバネの一端はアーム31bに連結され他端は基板10に連結されている。これらのバネは、それぞれ先幕20A、後幕20Bが開口11から退避するようにアーム31a、31bを付勢している。
【0018】
図3A、3Bは、センサ60aの説明図である。センサ60aは、基板10上に配置されている。センサ60aは、互いに対向するように配置された発光素子62、受光素子63を有している。発光素子62から照射された光は、受光素子63で受光される。図3A、3Bに示すように、駆動レバー55aの回転に応じて、薄板45aは、発光素子62、受光素子63間に移動する。薄板45aが発光素子62、受光素子63間に位置すると、発光素子62から照射された光は遮断される。この際に受光素子63の出力信号に基づいて、薄板45aが発光素子62と受光素子63との間に位置しているか否かが検出され、これにより駆動レバー55aの位置を検出することができる。この結果、先幕20Aが所定の位置を通過したか否かを検出できる。尚、センサ60b、薄板45bについても同様である。
【0019】
尚、センサ60aは上記のような構成に限定されない。例えば、センサ60aは、発光素子と、発光素子の光を反射するミラーと、ミラーにより反射された光を受光する受光素子と、を含む構成であってもよい。薄板45aが、発光素子とミラーとの間、または、受光素子とミラーとの間に位置することにより、薄板45aの位置を検出できる。
【0020】
次に、フォーカルプレーンシャッタ1の通常動作について説明する。図4は、通常動作時でのフォーカルプレーンシャッタ1のタイミングチャートである。図5〜11は、フォーカルプレーンシャッタ1の動作の説明図である。尚、図5〜11においては、一部構成を省略してある。
【0021】
待機状態においては、図2に示すように先幕20A、後幕20Bは、退避位置に位置づけられ開口11は全開状態のままに維持される。この状態では、薄板45aは、センサ60aから退避している。同様に薄板45bもセンサ60bから退避している。尚、図4に示したセンサ60aの出力信号は、詳細には受光素子63の出力信号である。発光素子62からの光が薄板45aにより遮蔽された際には受光素子63はH信号を制御部110に出力し、発光素子62からの光を受けた場合には受光素子63はL信号を制御部110に出力する。センサ60bについても同様である。尚、図2に示す待機状態において、先幕20A、後幕20Bは、それぞれ上述したバネにより開口11から退避した位置で維持されている。
【0022】
ここで、センサ60a、60bの出力信号は、L信号を制御部110に出力しており、センサ60a、60bは、開口11の全開状態を検知するセンサとして機能している。この機能によりカメラAは、撮像素子からの出力を液晶モニター等にリアルタイムに映し出すライブビューモードに対応可能である。
【0023】
カメラAのレリーズスイッチが押されると、チャージ動作が開始される。チャージ動作が開始されると、アクチュエータ70aのコイルに通電されて先幕20Aは開口11を閉じるように走行する。具体的には、歯車40aが反時計方向に回転して歯車50aが時計方向に回転して31aが駆動する。また、アクチュエータ70bのコイルは通電されていない。ここで、駆動レバー55bと基板10を一度離間させて、後述する露出期間のバラつきを抑制する動作を行ってもよい。すなわち、後幕20Bが開口11に向けて一度移動するように、アクチュエータ70bのコイルを通電し、その後、後幕20Bが開口11を完全に閉じる前にアクチュエータ70bのコイルへの通電方向を切り替えて、後幕20Bを開口11から退避するように動作させてもよい。
【0024】
その後、先幕20Aが開口11を閉鎖し後幕20Bが開口11から退避した状態でアクチュエータ70a、70bのコイルへの通電が遮断される。このようにしてチャージ動作が完了する。図5は、チャージ動作が完了した状態でのフォーカルプレーンシャッタ1の状態を示している。図5では、先幕20Aが閉鎖位置にあり後幕20Bが退避位置にある。尚、図5に示すように、先幕20Aが開口11を閉鎖する過程で薄板45aはセンサ60aに進行して再び退避する。これにより、センサ60aからの出力信号はL信号からH信号に切り替わって再びL信号に切り替わる。
【0025】
チャージ動作完了後、露出動作が開始される。制御部110は駆動制御部170に指令を出してアクチュエータ70aのコイルを通電して先幕20Aが開口11を開くように走行させる。具体的には、歯車40aが時計方向に駆動し歯車50aが反時計方向に駆動する。先幕20Aが開口11から退避する過程で、薄板45aはセンサ60aに進行する。図6は、先幕20Aの走行中の状態を示している。図6は、先幕20Aの羽根21aが地点Daを通過するときを示している。羽根21aが地点Daから退避するように地点Daを通過すると、薄板45aはセンサ60aに進行してセンサ60aの出力信号はL信号からH信号に切り替わる。このようにセンサ60aの出力信号が切り替わるタイミングは、先幕20Aの羽根21aが地点Daを通過するときに設定されている。制御部110は、センサ60aからの出力信号の切り替わりを検出することにより、先幕20Aが地点Daを通過したことを検出することができる。尚、センサ60aの出力信号が切り替わるタイミングはこのタイミングに限定されない。
【0026】
制御部110はセンサ60aの出力信号がL信号からH信号に切り替わったことを検出してから所定期間経過後にアクチュエータ70bのコイルに通電して後幕20Bの走行を開始する。これにより、後幕20Bが開口11を閉じるように走行する。図7は、先幕20A及び後幕20Bの走行中の状態を示している。図7は、先幕20Aの羽根21a、後幕20Bの羽根21bがそれぞれ地点Db、Daを通過するときを示している。先幕20Aの羽根21aが地点Dbから退避するように地点Dbを通過すると、薄板45aがセンサ60aから退避しセンサ60aの出力信号はH信号からL信号に切り替わる。このように、センサ60aの出力信号が切り替わるタイミングは、先幕20Aの羽根21aが地点Dbを通過するときに設定されている。また、後幕20Bの羽根21bが地点Daに進入するように通過すると、薄板45bがセンサ60bに進行してセンサ60bの出力信号はL信号からH信号に切り替わる。このように、センサ60bの出力信号が切り替わるタイミングも、後幕20Bの羽根21bが地点Daを通過するときに設定されている。
【0027】
図8は、先幕20Aの走行が終了し後幕20Bが走行中を示している。図9は、後幕20Bの羽根21bが地点Dbを通過するときを示している。後幕20Bの羽根21bが地点Dbを通過するとき、薄板45bがセンサ60bから退避しセンサ60bの出力信号はH信号からL信号に切り替わる。図10は、先幕20A、後幕20Bが停止し露光動作を終了した状態を示している。先幕20Aが開口11から完全に退避し後幕20Bが開口11を完全に閉鎖するとアクチュエータ70a、70bのコイルへの通電は遮断される。図10は、先幕20Aが退避位置にあり後幕20Bが閉鎖位置にある状態を示している。このようにして、露出動作が終了する。ここで、先幕20A、後幕20Bの動作方向の画面中心において、先幕20Aが開口11を開き始めたときから後幕20Bが開口11を閉じるまでの間の期間を露出期間と称する。
【0028】
露出動作終了後、制御部110のRAMや又はカメラ側のメモリにデータが出力される。次に、アクチュエータ70bのコイルが通電されて図11に示すように後幕20Bが開口11から退避し、開口11は全開状態が維持されて、図2に示した初期状態に戻る。
【0029】
次に、図4を参照して露出作動時での駆動制御部170が実行するアクチュエータ70a、70bの制御について説明する。図5に示した状態から露出動作を開始するために、駆動制御部170は、アクチュエータ70aに電力を印加して、先幕20Aが開口11から退避するように走行させる走行制御を実行する(a1)。次に、センサ60aの出力信号に変化に基づいて先幕20Aの羽根21aが地点Dbを通過したことを検出されると、駆動制御部170は制動制御を実行する(a2)。具体的には、駆動制御部170は、上述した走行制御でアクチュエータ70aに印加される電流の方向とは逆方向に通電する。これにより、地点Dbの通過後の先幕20Aは減速される。これにより、先幕20Aが停止する際のバウンドを抑制できる。
【0030】
次に、先幕20Aのバウンド中に、駆動制御部170はバウンド防止制御を実行する(a3)。具体的には、駆動制御部170は、走行制御でアクチュエータ70aに印加された電流の方向と同一方向に通電する。これにより、所望の停止位置から遠ざかるように先幕20Aがバウンドすることを抑制している。尚、バウンド防止制御時にアクチュエータ70aに印加される電流値は、走行制御時で印加される電流値よりも小さいがこれに限定されない。
【0031】
同様に、後幕20Bを走行させる走行制御(b1)の実行中に後幕20Bの羽根21bが地点Dbを通過したことが検出されると、駆動制御部170はアクチュエータ70bに制動制御を実行し(b2)、その後にバウンド防止制御を実行する(b3)。これにより、後幕20Bのバウンドが抑制される。以上の駆動制御部170が実行する制御により先幕20A、後幕20Bが停止する際に生じるバウンドを抑制して先幕20A、後幕20Bがバウンドしている期間を短縮できる。これにより、早期に先幕20A、後幕20Bに次の動作をさせることができる。例えば、この場合、露出動作終了から早期にリセット動作に移行することができる。
【0032】
このように露出動作において先幕20Aが開口11から退避するように走行し後幕20Bが開口11を閉鎖するように走行する際には、羽根21a、21bが地点Daではなく地点Dbを通過したか否かに基づいて先幕20A、後幕20Bが減速される。この場合、地点Dbは、羽根21a、21bの出発位置よりも停止位置に近い。羽根21a、21bがそれぞれ停止位置に近い地点Dbを通過した後に先幕20A、後幕20Bを減速させるので、先幕20A、後幕20Bが開口11上を走行している際の速度に影響を与えずに、即ち、撮像素子130の露出期間に影響を与えずに先幕20A、後幕20Bのバウンドを抑制できる。尚、先幕20Aが開口11から退避し後幕20Bが開口11を閉鎖するように走行する際の走行方向は、第1方向に相当し、地点Dbは第1所定位置に相当する。
【0033】
また、チャージ動作中では、駆動制御部170は、先幕20Aが開口11を閉鎖するように走行させる走行制御を実行し(a1´)、先幕20Aの羽根21aが地点Daを通過したことが検出されると、駆動制御部170が制動制御を実行し(a2´)、その後にバウンド防止制御を実行する(a3´)。また、リセット動作中では、駆動制御部170は、後幕20Bが開口11から退避するように走行させる走行制御を実行し(b1´)、後幕20Bの羽根21bが地点Dbを通過したことが検出されると、駆動制御部170は制動制御を実行し(b2´)、その後にバウンド防止制御を実行する(b3´)。尚、これらチャージ動作中及びリセット動作中でのアクチュエータ70a、70bの通電方向は、露出作動中での通電方向と逆方向である。
【0034】
このように、チャージ動作及びリセット動作においても、先幕20A、後幕20Bのバウンドが抑制されている。このため、チャージ動作及びリセット動作を短期間で終了でき、早期に次の動作に移行することができる。
【0035】
チャージ動作において先幕20Aが開口11を閉鎖するように走行しリセット動作において後幕20Bが開口11から退避するように走行する際には、羽根21a、21bが地点Dbではなく地点Daを通過したか否かに基づいて先幕20A、後幕20Bが減速される。この場合、地点Daは、羽根21a、21bの出発位置よりも停止位置に近い。羽根21a、21bがそれぞれ停止位置に近い地点Daを通過した後に先幕20A、後幕20Bを減速させることにより、先幕20A、後幕20Bの走行速度を確保しつつバウンドを抑制できる。これにより、チャージ動作及びリセット動作を短期間で終了することができる。尚、先幕20Aが開口11を閉鎖し後幕20Bが開口11から退避するように走行する際の走行方向は、第2方向に相当し、地点Daは第2所定位置に相当する。
【0036】
また、走行中に先幕20A、後幕20Bが減速されて停止するので、先幕20A、後幕20Bが停止する際の基板10や先幕20A、後幕20B等への衝撃を抑制でき、フォーカルプレーンシャッタ1の耐久性が向上する。
【0037】
また、バウンド時の先幕20A、後幕20Bの撓みを抑制できる。特に、先幕20A、後幕20Bが重畳状態から展開状態に移行して停止する際には、先幕20A、後幕20Bは撓みやすくなる。展開した先幕20A、後幕20Bが大きく撓むと、先幕20A、後幕20Bが開口11から突出してフォーカルプレーンシャッタ1に隣接した撮像素子130に接触する恐れがある。本実施例では、先幕20A、後幕20Bが展開状態に移行して停止する際のバウンドも抑制されるので、このような問題を抑制できる。
【0038】
先幕20A、後幕20Bの撓みを抑制されるので、薄い羽根21a〜23a、羽根21b〜23bを採用でき、先幕20A、後幕20Bを薄型化できる。これにより、出力の小さいアクチュエータ70a、70bを採用でき、フォーカルプレーンシャッタ1を軽量化できる。
【0039】
制御部110は、例えば開口11を閉鎖するように先幕20Aが走行を開始してから所定期間内に羽根21aが停止位置近くの地点Daを2回通過したことを検出した場合、開口11から退避するように後幕20Bが走行を開始してから所定期間内に羽根21bが停止位置近くの地点Daを2回通過したことを検出した場合、の何れかの場合、先幕20A又は後幕20Bが誤動作状態とし、制御部110はフォーカルプレーンシャッタ1の故障と判定してもよい。同様に、開口11を閉鎖するように先幕20Aが走行を開始してから所定期間内に羽根21aが停止位置近くの地点Dbを2回通過したことを検出した場合、開口11を閉鎖するように後幕20Bが走行を開始してから所定期間内に羽根21bが停止位置近くの地点Dbを2回通過したことを検出した場合、開口11から退避するように後幕20Bが走行を開始してから所定期間内に羽根21bが停止位置近くの地点Daを2回通過したことを検出した場合、の何れかの場合、先幕20A又は後幕20Bが、バウンドが発生した、又は再露光が発生した誤動作状態とし、制御部110はフォーカルプレーンシャッタ1の故障と判定してもよい。
【0040】
次に、フォーカルプレーンシャッタ1の連写動作について説明する。図12は、連写動作時でのフォーカルプレーンシャッタ1のタイミングチャートである。先幕20Aが開口11を閉鎖し後幕20Bが開口11から退避した状態においてレリーズスイッチが押されると、図5〜10に示したように露出作動が実行される。露出動作終了後、先幕20Aが後幕20Bより先行して開口11を閉鎖する方向に走行を開始し、羽根21aが地点Dbを通過した後に、後幕20Bを開口11から退避する方向に走行を開始させる。これにより、図13に示すように、先幕20A、後幕20Bにより共同で開口11を閉鎖した状態で先幕20Aは開口11を閉鎖し後幕20Bは開口11から退避してリセット動作が実行される。このリセット動作において、上述した、先幕20Aのチャージ動作及び後幕20Bのリッセト動作と同様に、駆動制御部170は制動制御(a2´、b2´)、バウンド防止制御(a3´、b3´)を実行する。その後、再び露出作動が実行される。このように連写動作時においも、上記のように先幕20A、後幕20Bのバウンドが抑制されるので、連写速度が向上している。
【0041】
尚、上記連写動作においては、先幕20Aが開口11を閉鎖し後幕20Bが開口11から退避した状態から先に先幕20Aが走行してその後に後幕20Bが走行することにより露出作動が行われるがこれに限定されない。例えば、先幕20Aが開口11を開放してその後に後幕20Bが開口11を閉鎖して1回目の露出作動を行ってから、次に後幕20Bが先に開口11を開放してその後に先幕20Aが開口11を閉鎖して2回目の露出作動を行ってもよい。
【0042】
尚、上記実施例において、制動制御は、走行性制御時での通電方向とは逆方向にアクチュエータ70a、70bを通電するが、これに限定されない。例えば、制動制御は、アクチュエータ70a、70bの端子を短絡させるショートブレーキであってもよい。また、制動制御は、アクチュエータ70a、70bに供給される電力量を走行性御時よりも減少させてもよい。
【0043】
尚、制動制御のみで十分に先幕20A、後幕20Bのバウンドを防止できる場合には、バウンド防止制御は実行しなくてもよい。
【0044】
上記実施例においては、羽根21a、21bがそれぞれ開口11の縁の位置である地点Da、Dbを通過することによってセンサ60a、60bの出力信号が切り替わり制動制御が実行されるがこれに限定されない。例えば、羽根21a、21bが撮像素子130の縁を通過することにより、センサ60a、60bの出力信号が切り替るようにしてもよい。また、羽根21a、21bが上記以外の地点を通過することによりセンサ60a、60bの出力信号が切り替わるようにしてもよい。また、センサ60a、60bの出力信号が切り替わってから微少期間経過後に制動制御を実行してもよい。
【0045】
先幕20Aの所定位置の通過を検出するセンサはセンサ60aに限定されない。例えば、アーム31a、32aや、駆動レバー55a、歯車50a、40aの何れかによって押されるスイッチであってもよい。センサ60aは、フォトインタラプタ、又はフォトリフレクタであってもよい。
【0046】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0047】
制御部110と駆動制御部170は、単一のICチップにより実現されていてもよい。
【0048】
上記実施例において、先幕及び後幕は、それぞれ3枚の羽根から構成されるが、これに限定されない。
【符号の説明】
【0049】
1 フォーカルプレーンシャッタ
10 基板
11 開口
20A 先幕
20B 後幕
21a〜23a、21b〜23b 羽根
31a、32a、31b、32b アーム
40a、40b、50a、50b 歯車
45a、45b 薄板
55a 先幕駆動レバー
55b 後幕駆動レバー
60a 先幕センサ
60b 後幕センサ
62 発光素子
63 受光素子
70a 先幕アクチュエータ
70b 後幕アクチュエータ
110 制御部
130 撮像素子
170 駆動制御部
図1
図2
図3
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図10
図11
図12
図13