特許第6162421号(P6162421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162421
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】X線可動絞り装置、およびX線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/06 20060101AFI20170703BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20170703BHJP
   G21K 1/04 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61B6/06 300
   A61B6/00 330Z
   G21K1/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-24743(P2013-24743)
(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公開番号】特開2014-151067(P2014-151067A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】西塚 誠一
(72)【発明者】
【氏名】菅原 靖宏
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−192992(JP,A)
【文献】 特開2006−141904(JP,A)
【文献】 特開2011−019633(JP,A)
【文献】 特開2011−067509(JP,A)
【文献】 特開2002−078707(JP,A)
【文献】 特開2009−077759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
G21K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対するX線の照射範囲を第1方向に対して限定し、それぞれ独立して前記第1方向に沿って移動可能な複数の第1絞り羽根と、
前記第1方向に垂直な第2方向に対して前記照射範囲を限定する複数の第2絞り羽根と
記照射範囲をさらに限定する第3絞り羽根であって、前記第3絞り羽根の少なくとも一部は、前記照射範囲の最大口径において、前記第1方向に沿った長さの中点を超えて、前記第1、第2絞り羽根とは独立に前記第1方向に移動可能である、前記第3絞り羽根と、
前記被検体に関する長尺撮影における撮影長と、X線管の焦点とX線平面検出器との間の距離とに基づいて、前記X線管を固定して実行される前記長尺撮影における複数回の撮影各々に応じて、前記第1絞り羽根と前記第2絞り羽根と前記第3絞り羽根とにそれぞれ対応する第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置とを決定する位置決定部と、
前記決定された第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置に前記第1絞り羽根と前記第2絞り羽根と前記第3絞り羽根とを、前記撮影ごとにそれぞれ配置させる絞り羽根配置部と、
を具備することを特徴とするX線可動絞り装置。
【請求項2】
X線を発生するX線管と、
前記X線管から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線平面検出器と、
前記X線の照射範囲を第1方向に対して限定し、それぞれ独立して前記第1方向に沿って移動可能な複数の第1絞り羽根と、前記第1方向に垂直な第2方向に対して前記照射範囲を限定する複数の第2絞り羽根と、前記照射範囲をさらに限定する第3絞り羽根であって、前記第3絞り羽根の少なくとも一部は、前記照射範囲の最大口径において、前記第1方向に沿った長さの中点を超えて、前記第1、第2絞り羽根とは独立に前記第1方向に移動可能である、前記第3絞り羽根と、を有するX線可動絞り部と、
前記X線管の焦点と前記X線平面検出器との間の距離と、前記被検体の長尺撮影における撮影長とに基づいて、前記X線管を固定して実行される前記長尺撮影における複数回の撮影各々に応じて、前記第1絞り羽根と前記第2絞り羽根と前記第3絞り羽根とにそれぞれ対応する第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置と、前記撮影に応じて限定される照射範囲に対応する前記X線平面検出器の検出器位置とを決定する位置決定部と、
前記決定された第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置とに前記第1乃至前記第3絞り羽根を、前記撮影ごとにそれぞれ配置させる絞り羽根配置部と、
前記決定された検出器位置に前記X線平面検出器を、前記撮影ごとに移動させるX線検出器移動部と、
を具備することを特徴とするX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、長尺撮影を実行するX線可動絞り装置、およびX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)を有するX線診断装置は、被検体の下肢および全脊柱を撮影する長尺撮影を実行する場合がある。長尺撮影には、図20に示すように、例えば、3種類の撮影方式がある。
【0003】
図20に示すX線管固定方式では、長尺撮影の実行期間に亘ってX線管は固定される。X線管固定方式において、FPDは、長尺撮影の対象部位の範囲に亘って移動される。このとき、X線可動絞りにおける絞り開度は、移動されたFPDの領域がX線照射範囲に一致するように、制御される。X線管固定方式における長尺撮影において取得された複数の医用画像は、所定の重畳幅で結合される。結合された医用画像(以下、長尺画像と呼ぶ)における所定の重畳幅における重畳の精度(以下、貼り合わせ精度と呼ぶ)は、後述するX線管移動方式における貼り合わせ精度に比べて、高精度となる。
【0004】
X線管固定方式において、X線可動絞りは、X線照射範囲を長軸方向に沿って限定する複数の絞り羽根(以下、長軸方向絞り羽根と呼ぶ)を独立して長軸方向に移動させることが可能な機構(以下、独立移動機構と呼ぶ)を有する必要がある。すなわち、長軸方向絞り羽根が連動して移動される従来型のX線可動絞りでは、X線管固定方式を実行することはできない問題がある。加えて、従来の独立移動機構では、最大照射野(最大のX線照射範囲)における長軸方向に沿った長さの中点を通り短軸方向に沿った軸(以下、長軸中心軸と呼ぶ)を超えて、長軸方向絞り羽根を移動させることができない。このため、図21、および図22に示すように、長尺撮影の撮影範囲がFPD2枚分となる。FPD2枚分の長さを超える領域において、長尺撮影を実行できない問題がある。また、長軸中心軸を超えて移動可能な独立移動機構を有するX線可動絞りでは、長軸方向絞り羽根の長軸方向の長さが長くなるため、X線可動絞りの大きさが大きくなる問題がある。すなわち、X線可動絞りの外形を大きくすることなく、長軸方向絞り羽根を、長軸中心軸を超えて移動させることができず、撮影範囲がFPD2枚分に限定される問題がある。
【0005】
図20に示すX線管移動方式では、長軸方向に沿ったX線管の移動に伴って、FPDは移動される。X線管移動方式では、任意の枚数(例えば、FPD3枚分など)で長尺撮影を実行することできる。しかしながら、X線管移動方式では、X線管の焦点位置が移動するため、長尺撮影により撮影された複数の医用画像において、貼り合わせ精度が低い問題がある。貼り合わせ精度の低下は、被検体とFPDとの間の距離(Patiant Image Distance:以下、PIDと呼ぶ)において、それぞれの貼り合わせ面で被写体を透過するX線の方向が異なることに起因する。
【0006】
図20に示すように、X線管回転方式では、X線管の回転に応じたX線照射範囲の回転に伴って、FPDを移動させて長尺撮影が実行される。X線管回転方式は、X線管移動方式における貼り合わせ精度より高く、かつX線管固定方式と同程度の貼り合わせ精度を有する。しかしながら、重量物であるX線管を、X線管の焦点を中心として、長尺撮影の撮影範囲およびFPDの移動に応じて回転させるX線管回転機構が必要となる。X線診断装置において、X線管回転機構のさらなる搭載は、製造コストが上昇する問題がある。加えて、X線管の精密な回転を制御する必要がある。
【0007】
また、長尺撮影をコンピューテッドラジオグラフィ(Computted Radiography:以下、CRと呼ぶ)装置で実行する場合、被検体を撮影後、輝尽性蛍光体を有するイメージングプレートなどのX線検出器に記憶されたX線画像情報を、読み取り機で読み出す必要がある。すなわち、CR装置による長尺撮影においては、FPDを有するX線診断装置に比べて、リアルタイム性が劣る問題がある。
【0008】
従来、X線可動絞りは、図23に示すように、複数の前面羽根と複数の奥羽根とを有する。X軸方向に並列された2枚の前面羽根は、連動してX軸方向に沿って移動される。具体的には、X軸方向に並列された2枚の前面羽根は、照射範囲の中心を通りY軸に平行な軸に対して対称的に移動される。また、Y軸方向に並列された2枚の前面羽根は、連動してY軸方向に沿って移動される。具体的には、Y軸方向に並列された2枚の前面羽根は、照射範囲の中心を通りX軸に平行な軸に対して対称的に移動される。これら4枚の前面羽根の移動により、絞り動作が実行される。加えて、X軸方向に並列された2枚の奥羽根は、X軸方向に並列された2枚の前面羽根の動きに連動して、X軸方向に沿って移動される。Y軸方向に並列された2枚の奥羽根は、Y軸方向に並列された2枚の前面羽根の動きに連動して、Y軸方向に沿って移動される。これにより、奥羽根は、焦点で発生された2次電子に由来するX線(以下、焦点外X線と呼ぶ)を遮蔽する。これらの機構により、複数の前面羽根は、照射範囲の中心を超えて照射範囲を絞ることができない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
目的は、長尺撮影用の絞り羽根を有するX線可動絞りを具備し、X線管を固定した状態
で長尺撮影を実行することが可能なX線可動絞り装置、およびX線診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態に係るX線可動絞り装置は、X線の照射範囲を第1方向に対して限定し、それぞれ独立して前記第1方向に沿って移動可能な複数の第1絞り羽根と、前記第1方向に垂直な第2方向に対して前記照射範囲を限定する複数の第2絞り羽根と、前記照射範囲をさらに限定する第3絞り羽根であって、前記第3絞り羽根の少なくとも一部は、前記照射範囲の最大口径において前記第1方向に沿った長さの中点を超えて、前記第1、第2絞り羽根とは独立に前記第1方向に移動可能である、前記第3絞り羽根と、前記被検体に関する長尺撮影における撮影長と、X線管の焦点とX線平面検出器との間の距離とに基づいて、前記X線管を固定して実行される前記長尺撮影における複数回の撮影各々に応じて、前記第1絞り羽根と前記第2絞り羽根と前記第3絞り羽根とにそれぞれ対応する第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置とを決定する位置決定部と、前記決定された第1羽根位置と第2羽根位置と第3羽根位置に前記第1絞り羽根と前記第2絞り羽根と前記第3絞り羽根とを、前記撮影ごとにそれぞれ配置させる絞り羽根配置部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係り、X線可動絞り部の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係り、X線可動絞り部における複数の第1、第2絞り羽根と遮蔽部との一例を示す斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係り、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1の実施形態の変形例に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係り、X線可動絞り部の構成の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係り、X線可動絞り部における複数の第1、第2絞り羽根と第3絞り羽根との構造の一例を示す平面図である。
図8図8は、第2の実施形態に係り、図7において第1中心軸とZ軸とに沿った断面の一例を示す断面図である。
図9図9は、第2の実施形態に係り、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、第1撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、図10における第1撮影において、X線管とX線可動絞り部における第1乃至第3絞り羽根と、X線平面検出器との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。
図12図12は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、第2撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、図12における第2撮影において、X線管とX線可動絞り部における第1乃至第3絞り羽根と、X線平面検出器との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。
図14図14は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、第3撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、図14における第3撮影において、X線管とX線可動絞り部における第1乃至第3絞り羽根と、X線平面検出器との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。
図16図16は、第2の実施形態の長尺撮影処理において撮影回数が2回の場合であって、第1撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。
図17図17は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、図17における第1撮影において、X線管とX線可動絞り部における第1乃至第3絞り羽根と、X線平面検出器との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。
図18図18は、第2の実施形態の長尺撮影処理において撮影回数が2回の場合であって、第2撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。
図19図19は、第2の実施形態の長尺撮影処理に係り、図18における第2撮影において、X線管とX線可動絞り部における第1乃至第3絞り羽根と、X線平面検出器との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。
図20図20は、従来の長尺撮影に係り、長尺撮影の複数の方式の一例を示す図である。
図21図21は、従来の長尺撮影におけるX線可動絞りに関する図である。
図22図22は、従来の長尺撮影におけるX線可動絞りに関する図である。
図23図23は、従来のX線可動絞りに係る斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るX線診断装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線診断装置1の構成を示している。本X線診断装置1は、高電圧発生部11、X線管131とX線可動絞り部133と絞り羽根配置部135と開度情報表示部137とを支持する支持機構13、天板151とX線平面検出器(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)153と検出器移動部155とを有する寝台15、位置決定部17、開度情報発生部18、画像処理部19、記憶部21、表示部23、入力部25、制御部27を有する。
【0014】
高電圧発生部11は、後述するX線管131に供給する管電流と、X線管131に印加する管電圧とを発生する。高電圧発生部11は、X線撮影およびX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管131に供給し、X線撮影およびX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管131に印加する。具体的には、高電圧発生部11は、後述する制御部27による制御のもとで、X線撮影条件に応じた管電圧と管電流とを発生する。例えば、被検体Pの下肢および脊柱を撮影する長尺撮影において、後述する入力部25における撮影スイッチが操作者により押下されると、長尺撮影の条件に応じた管電圧をX線管131に印加し、X線撮影条件に応じた管電流をX線管131に供給する。
【0015】
支持機構13は、後述するX線管131、X線可動絞り部133、絞り羽根配置部135、開度情報表示部137などを、後述する直交3軸に移動可能に支持する。具体的には、支持機構13は、X線管131におけるX線発生の焦点と後述するFPD153との間の距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、X線管131とX線可動絞り部133と絞り羽根配置部135と開度情報表示部137などとを支持する。支持機構13は、後述する位置決定部17により決定された管球位置に、X線管131を配置させる。支持機構13は、後述する長尺撮影において、管球位置に配置されたX線管131を固定する。
【0016】
X線管131は、高電圧発生部11から供給された管電流と、高電圧発生部11により印加された管電圧とに基づいて、X線発生の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)でX線を発生する。管球焦点近傍では、管球焦点で発生された2次電子に由来するX線(以下、焦点外X線と呼ぶ)が発生する。以下、管球焦点と焦点外X線の発生に起因する点(以下、焦点外X線発生点と呼ぶ)とを合わせてX線焦点と呼ぶ。発生されたX線は、X線管131におけるX線放射窓から放射される。以下、管球焦点を通り、後述するFPD153に垂直な軸をZ軸とする。Z軸に垂直であって、後述する天板151の長軸方向(以下、第1方向と呼ぶ)をX軸とする。Z軸とX軸とに垂直な軸(天板151の短軸方向:以下、第2方向と呼ぶ)をY軸とする。
【0017】
X線可動絞り部133は、X線管131と後述する天板151に設けられたFPD153との間に設けられる。具体的には、X線可動絞り部133は、X線管131におけるX線放射窓の前面に設けられる。X線可動絞り部133は、照射野限定器とも称される。X線可動絞り部133は、X線管131で発生されたX線を、操作者が所望する撮影部位以外に不要な被曝をさせないために、最大口径の照射範囲(以下、最大照射範囲と呼ぶ)を所定の照射範囲に絞る。
【0018】
X線可動絞り部133は、第1方向に移動可能な複数の第1絞り羽根と、第2方向に移動可能な複数の第2絞り羽根と、焦点外X線を遮蔽する遮蔽部とを有する。第1、第2絞り羽根各々は、X線管131により発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。図2は、X線可動絞り部133の構成の一例を示す構成図である。複数の第1絞り羽根1331(第1絞り羽根a、第1絞り羽根b)は、最大照射範囲において第1方向に沿った長さの中点を超えて第1方向に移動可能である。なお、複数の第2絞り羽根1333(第2絞り羽根a、第2絞り羽根b)は、最大照射範囲において第2方向に沿った長さの中点を超えて第2方向に移動可能であってもよい。
【0019】
遮蔽部1335は、第1絞り羽根1331の動きと連動して第1方向に移動可能な第1遮蔽羽根1337と、第2絞り羽根1333の動きと連動して第2方向に移動可能な第2遮蔽羽根とを有する。遮蔽部1335は、第1、第2絞り羽根に対してX線焦点側の位置に設けられる。具体的には、遮蔽部1335は、X線焦点と、第1絞り羽根との間に設けられる。遮蔽部1335は、複数の第1遮蔽羽根1337(第1遮蔽羽根a、第1遮蔽羽根b)と、複数の第2遮蔽羽根1339(第2遮蔽羽根a、第2遮蔽羽根b)と、複数の第1移動機構1341(第1移動機構a、第1移動機構b)と、複数の第2移動機構1343(第2移動機構a、第2移動機構b)とを有する。第1、第2遮蔽羽根各々は、焦点外X線を遮蔽する鉛により構成される。
【0020】
複数の第1遮蔽羽根1337と、複数の第2遮蔽羽根1339とは、最大照射範囲のうち所定の照射範囲を除く範囲における焦点外X線を遮蔽するサイズと構造とを有する。第1移動機構aは、第1絞り羽根aの移動に連動して、第1遮蔽羽根aを移動させる。第1移動機構bは、第1絞り羽根bの移動に連動して、第1遮蔽羽根bを移動させる。第2移動機構aは、第2絞り羽根aの移動に連動して、第2遮蔽羽根aを移動させる。第2移動機構bは、第2絞り羽根bの移動に連動して、第2遮蔽羽根bを移動させる。
【0021】
例えば、第1移動機構1341と第2移動機構1343とは、例えば、X線焦点を中心として回転する回転部分を有する。なお、第1移動機構1341と第2移動機構1343とは、それぞれ対応する遮蔽羽根を、例えば、モータ駆動により移動させてもよい。
【0022】
なお、第1遮蔽羽根1337は、第1遮蔽羽根1337を含む平面における第1中心軸を超えて、第1方向に沿って移動可能であってもよい。また、第2遮蔽羽根1339は、第2遮蔽羽根1339を含む平面における第2中心軸を超えて、第2方向に沿って移動可能であってもよい。加えて、遮蔽部1335は、第1遮蔽羽根1337と第1絞り羽根1331との間に、焦点外X線を遮蔽する図示していない第3遮蔽羽根をさらに有していてもよい。
【0023】
X線可動絞り部133は、被検体Pへの被曝線量の低減および画質の向上を目的として、利用X線錐内に挿入される複数のフィルタ(以下、付加フィルタと呼ぶ)を有する。付加フィルタは、X線フィルタ、濾過板、ビームフィルタ、線質フィルタ、またはビームスペクトグラムフィルタとも呼ばれる。
【0024】
絞り羽根配置部135は、長尺撮影における複数の撮影各々に応じて、後述する位置決定部17により決定された第1、第2羽根位置に、複数の第1絞り羽根1331、複数の第2絞り羽根1333をそれぞれ配置する。具体的には、絞り羽根配置部135は、位置決定部17により決定された第1羽根位置に複数の第1絞り羽根1331を配置させるための図示していない第1絞り羽根移動機構を有する。第1絞り羽根移動機構は、複数の第1絞り羽根1331各々を、中点を通り第2方向に沿った軸(以下、第1中心軸と呼ぶ)を超えてスライド移動可能に支持する。
【0025】
絞り羽根配置部135は、位置決定部17により決定された第2羽根位置に複数の第2絞り羽根1333を配置させるための図示していない第2絞り羽根移動機構を有する。第2絞り羽根移動機構は、複数の第2絞り羽根1333各々を、第2方向に沿ってスライド移動可能に支持する。なお、第2絞り羽根移動機構は、複数の第2絞り羽根1333各々を、中点を通り第1方向に沿った軸(以下、第2中心軸と呼ぶ)を超えてスライド移動可能に支持してもよい。
【0026】
絞り羽根配置部135は、後述する入力部25を介した所定の操作を契機として、第1中心軸に対して非対称的に配置された複数の第1絞り羽根1331を、第1中心軸に対して対称的な位置に配置する。なお、絞り羽根配置部135は、後述する長尺撮影の終了を契機として、第1中心軸に対して非対称的に配置された複数の第1絞り羽根1331を、第1中心軸に対して対称的な位置に配置してもよい。また、絞り羽根配置部135は、最大照射範囲を移動限界として、第1絞り羽根1331および第2絞り羽根1333の配置を制限する機能を有する。
【0027】
図3は、X線可動絞り部133における複数の第1、第2絞り羽根と遮蔽部1335との一例を示す斜視図である。図3に示すように、複数の第1絞り羽根1331は、第1絞り羽根aと第1絞り羽根bとにより構成される。第1絞り羽根aおよび第1絞り羽根bは、それぞれ第1中心軸を超えて移動可能である。図3に示すように、複数の第2絞り羽根1333は、第2絞り羽根aと第2絞り羽根bとにより構成される。第2絞り羽根aおよび第2絞り羽根bは、それぞれ第2中心軸を超えて移動可能であってもよい。図3において、X線焦点が点ではなく大きさを有している(円形形状)ことは、X線焦点が管球焦点と焦点外X線発生点とを有していることに起因する。
【0028】
第1遮蔽羽根aは、第1移動機構aを介して、第1絞り羽根aの移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第1遮蔽羽根bは、第1移動機構bを介して、第1絞り羽根bの移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第2遮蔽羽根aは、第2移動機構aを介して、第2絞り羽根aの移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第2遮蔽羽根bは、第2移動機構bを介して、第2絞り羽根bの移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。
【0029】
開度情報表示部137は、後述する開度情報発生部18により発生された開度情報を表示する。開度情報とは、例えば、図3における限定された照射範囲に対応する視野サイズである。開度情報表示部137は、例えば、視野サイズに関する縦横のサイズを表示する。この時、表示されるサイズの単位は、センチメートル、インチなどいずれの単位であってもよい。
【0030】
寝台15は、被検体Pを載置する天板151(臥位テーブルとも言う)と、長尺撮影において後述するX線平面検出器153を移動させる検出器移動部155とを有する。なお、寝台15は、透視寝台であってもよい。天板151には、被検体Pが載置される。
【0031】
FPD153は、X線管131に対向して、後述する天板151内に設けられる。FPD153は、天板151に載置された被検体Pを透過したX線を検出する。FPD153は、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子には、直接変換形と間接変換形とがある。直接変換形とは、入射X線を直接的に電気信号に変換する形式である。間接変換形とは、入射X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する形式である。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、図示していない前処理部に出力する。
【0032】
図示していない前処理部は、FPD153から出力されたディジタルデータに対して、前処理を実行する。前処理とは、FPD153におけるチャンネル間の感度不均一の補正、および金属等のX線強吸収体による極端な信号の低下またはデータの脱落に関する補正等である。前処理されたディジタルデータは、後述する画像処理部19に出力される。
【0033】
検出器移動部155は、後述する位置決定部17により決定された検出器位置に、FPD153を移動させる。具体的には、検出器移動部155は、長尺撮影における撮影回数に応じた複数の検出器位置に、撮影ごとにFPD153を移動させる。
【0034】
位置決定部17は、長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、長尺撮影における複数回の撮影各々に応じた第1羽根位置と、第2羽根位置と、検出器位置とを決定する。具体的には、位置決定部17は、後述する入力部25を介した入力された撮影長とFPD153の第1方向の長さとに基づいて、長尺撮影に関する撮影回数を決定する。
【0035】
以下、説明を簡単にするため、撮影回数は、3回であるものとする。位置決定部17は、長尺撮影における撮影回数に基づいて、複数の撮影各々に対応するFPD153の検出器位置を決定する。具体的には、位置決定部17は、第1方向に沿った所定の重畳幅を有するように、3回の撮影回数にそれぞれ対応する3か所の検出器位置を決定する。所定の重畳幅とは、例えば、長尺撮影により発生された複数の医用画像を第1方向に沿って連結するために用いられる幅(のりしろに対応する幅)である。位置決定部17は、決定した複数の検出器位置を検出器移動部155に出力する。
【0036】
位置決定部17は、例えば、長尺撮影における2回目の撮影におけるFPDの中心位置(以下、FPD中心位置と呼ぶ)と、Z軸とに基づいて、X線管131の位置(以下、管球位置と呼ぶ)を決定する。管球位置は、FPD中心位置を通りZ軸に平行な線分上に管球焦点が配置される位置である。位置決定部17は、管球位置を支持機構13に出力する。位置決定部17は、管球位置とFPD中心位置とに基づいて、SIDを決定する。
【0037】
なお、撮影回数が偶数(例えば、2n:nは自然数)である場合、位置決定部17は、n回目の撮影に対応する配置位置とn+1回目の撮影に対応する配置位置との間の中点の位置を、FPD中心位置として決定する。また、撮影回数が奇数(例えば、2n+1:nは自然数)である場合、位置決定部17は、n回目の撮影における検出器位置の中心位置を、FPD中心位置として決定する。
【0038】
位置決定部17は、長尺撮影における1回目の撮影(以下、第1撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第1検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第1撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における2回目の撮影(以下、第2撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第2検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第2撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における3回目の撮影(以下、第3撮影と呼ぶ)に対応する検出器位置(以下、第3検出器位置と呼ぶ)とSIDとに基づいて、第3撮影における第1羽根位置、第2羽根位置を決定する。位置決定部17は、複数の撮影各々に応じた第1羽根位置と第2羽根位置とを、絞り羽根配置部135と後述する開度情報発生部137とに出力する。
【0039】
なお、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置と、第1、第2羽根位置とを、後述する記憶部21に出力してもよい。また、複数の撮影各々において、SIDが変化する場合、位置決定部17は、SIDの変化に合わせて、第1、第2羽根位置すなわち絞りの開度を決定することも可能である。このとき、位置決定部17は、SIDの変化および絞りの開度に基づいて、第1乃至第3検出器位置を決定する。第1撮影及び第3撮影における第1羽根位置は、第1中心軸に対して非対称的となる。また、第2撮影における第1羽根位置は、第1中心軸に対して対称的となる。
【0040】
開度情報発生部18は、第1羽根位置と第2羽根位置とに基づいて、第1乃至第3撮影各々に対応する開度情報を発生する。開度情報発生部18は、発生した開度情報を、開度情報表示部137に出力する。
【0041】
画像処理部19は、図示していない前処理部から出力されたディジタルデータに基づいて、医用画像を処理する。具体的には、画像処理部19は、長尺撮影における複数回の撮影にそれぞれ対応する複数の医用画像を処理する。画像処理部19は、長尺撮影に関する複数の医用画像を、第1方向に連結した長尺画像を発生する。画像処理部19は、発生した長尺画像を後述する表示部23に出力する。
【0042】
記憶部21は、画像処理部19により発生された種々の医用画像、長尺画像、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、後述する入力部25から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などの各種データ群、長尺撮影における複数の撮影回数に応じた複数の検出器位置および複数の羽根位置、SIDなどを記憶する。また、記憶部21は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDとに対する第1、第2羽根位置各々の対応表を記憶してもよい。この場合、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDと対応表とに基づいて、第1、第2羽根位置が決定される。
【0043】
なお、記憶部21は、X線長尺撮影プログラムを記憶してもよい。X線長尺撮影プログラムとは、本X線診断装置1に搭載されたコンピュータに、SIDと長尺撮影の撮影長とに基づいて第1、第2羽根位置と第1乃至第3検出器位置とを決定させ、決定された第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根を、長尺撮影の撮影ごとにそれぞれ配置させ、決定された第1乃至第3検出器位置にFPD153を、長尺撮影の撮影ごとに移動させるプログラムである。
【0044】
表示部23は、画像処理部19により発生された医用画像および長尺画像を表示する。表示部23は、長尺撮影における撮影範囲、撮影長、撮影枚数などの長尺撮影条件、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力するための入力画面を表示する。
【0045】
入力部25は、長尺撮影における撮影範囲、撮影長、撮影枚数などの長尺撮影条件、SID、X線撮影の撮影条件、X線透視の透視条件等を入力する。具体的には、入力部25は、操作者からの各種指示・命令・情報・選択・設定を本X線診断装置1に取り込む。入力部25は、図示しないが、関心領域の設定などを行うためのトラックボール、長尺撮影の実行および撮影開始の契機となるスイッチボタン、マウス、キーボード等を有する。入力部25は、表示画面上に表示されるカーソルの座標を検出し、検出した座標を後述する制御部27に出力する。なお、入力部25は、表示画面を覆うように設けられたタッチパネルでもよい。この場合、入力部25は、電磁誘導式、電磁歪式、感圧式等の座標読み取り原理でタッチ指示された座標を検出し、検出した座標を制御部27に出力する。
【0046】
また、入力部25は、第1中心軸に対して非対称的に配置された第1絞り羽根を、第1中心軸に対して対称的に配置させるためのボタン(以下、対称配置ボタンと呼ぶ)を有する。対称配置ボタンが押下されると、入力部25は、第1絞り羽根を第1中心軸に対して対称的に配置させるための信号を、絞り羽根配置部135に出力する。
【0047】
制御部27は、図示していないCPU(Central Processing Unit)とメモリを備える。制御部27は、入力部25から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などに従って、X線撮影よび透視を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。制御部27は、入力部25から送られてくる操作者の指示、長尺撮影条件に従って、長尺撮影を実行するために、本X線診断装置1における各部を制御する。
【0048】
具体的には、例えば、入力部25における長尺撮影の実行に関するスイッチボタンが操作者により押下され、長尺撮影の撮影範囲(撮影長)、SIDなどの長尺撮影条件が入力されると、制御部27は、第1、第2羽根位置および第1乃至第3検出器位置を長尺撮影における複数の撮影に応じて決定するために、位置決定部17を制御する。制御部27は、長尺撮影の開始前に、管球位置にX線管131を配置させるために支持機構13を制御する。制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD153を移動させるために、検出器移動部155を制御する。制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根をそれぞれ配置させるために、絞り羽根配置部135を制御する。
【0049】
(長尺撮影機能)
長尺撮影機能とは、X線管131を移動させることなく、第1、第2絞り羽根の配置とFPD153の移動とにより、長尺撮影を実行する機能である。具体的には、まず、長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、長尺撮影における複数の撮影各々における第1、第2羽根位置と、第1乃至第3検出器位置とが決定される。次いで、長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1、第2羽根位置に第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される。第1遮蔽羽根は、第1移動機構を介して、第1絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。第2遮蔽羽根は、第2移動機構を介して、第2絞り羽根の移動に連動して、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD153が移動される。FPD153の移動、第1、第2絞り羽根の配置、第1、第2遮蔽羽根の移動が完了すると、被検体Pに対する撮影が繰り返される。
【0050】
以下、長尺撮影機能に関する処理(以下、長尺撮影処理と呼ぶ)について説明する。長尺撮影処理は、検査の目的に応じて、例えば、被検体Pの脊柱または下肢を撮影対象として実行される。
【0051】
図4は、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部25を介して長尺撮影が入力される(ステップSa1)。長尺撮影の入力とは、例えば、入力部25における長尺撮影ボタンの押下である。入力部25を介して、長尺撮影条件(例えば、長尺撮影の撮影長、SIDなど)が入力される。入力された長尺撮影条件に基づいて、長尺撮影における撮影回数が決定される(ステップSa2)。以下、上述したように、撮影回数は3回として説明する。SIDと撮影回数とに基づいて、FPD153に関する第1乃至第3検出器位置と、第1、第2羽根位置とを、撮影回数にそれぞれ対応付けて決定される(ステップSa3)。なお、第1、第2羽根位置、すなわち絞りの開度は、FPD153の移動後に決定されてもよい。
【0052】
第1、第2羽根位置と第1乃至第3検出器位置との決定後、長尺撮影が開始される(ステップSa4)。長尺撮影の開始は、例えば、入力部25における撮影開始ボタンの押下である。撮影開始ボタンの押下を契機として、支持機構13により、X線管131が管球位置に移動される。なお、X線管131の管球位置への移動は、操作者により実行されてもよい。第1撮影に関する第1検出器位置にFPD153が移動される(ステップSa5)。
【0053】
撮影開始ボタンの押下を契機として、第1撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa6)。この時、図3に示すように、2枚の第1絞り羽根1331のうち一方の第1絞り羽根(例えば、第1絞り羽根a)は、第1羽根位置(第1絞り羽根aの移動限界地点)に移動される。なお、2枚の第1絞り羽根1331のうち他方の第1絞り羽根(例えば、第1絞り羽根b)は、第1中心軸を超えて、第1羽根位置(第1絞り羽根bの移動限界地点)に移動される。
【0054】
第1羽根位置への第1絞り羽根1331の移動に連動して、第1遮蔽羽根1337が移動される(ステップSa7)。第2羽根位置への第2絞り羽根1333の移動に連動して、第2遮蔽羽根1339が移動される(ステップSa8)。ステップSa7およびステップSa8における処理により、第1、第2遮蔽羽根は、焦点外X線を遮蔽する位置に移動される。
【0055】
第1、第2絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、高電圧発生部11から管電圧の印加および管電流の供給を受けたX線管131により、X線が発生される。これにより、第1撮影が実行される(ステップSa9)。決定された撮影回数に等しい回数の撮影が終了するまで、ステップSa5乃至ステップSa9の処理が繰り返される(ステップSa10)。
【0056】
具体的には、第1撮影が終了すると、第2撮影に関する第2検出器位置にFPD153が移動される(ステップSa5)。第2撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa6)。この時、第1羽根位置は、第1中心軸に対して対称的な位置となる。第1羽根位置への第1絞り羽根1331の移動に連動して、第1遮蔽羽根1337が移動される(ステップSa7)。第2羽根位置への第2絞り羽根1333の移動に連動して、第2遮蔽羽根1339が移動される(ステップSa8)。第1、第2絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、第2撮影が実行される(ステップSa9)。
【0057】
第2撮影が終了すると、第3撮影に関する第3検出器位置に、FPD153が移動される(ステップSa5)。第3撮影に関する第1、第2羽根位置に、第1、第2絞り羽根がそれぞれ移動される(ステップSa6)。この時、2枚の第1絞り羽根1331のうち一方の第1絞り羽根(例えば、第1絞り羽根a)は、第1中心軸を超えて、第1羽根位置(第1絞り羽根aの移動限界地点)に移動される。なお、2枚の第1絞り羽根1331のうち他方の第1絞り羽根(例えば、第1絞り羽根b)は、第1羽根位置(第1絞り羽根bの移動限界地点)に移動される。第1羽根位置への第1絞り羽根1331の移動に連動して、第1遮蔽羽根1337が移動される(ステップSa7)。第2羽根位置への第2絞り羽根1333の移動に連動して、第2遮蔽羽根1339が移動される(ステップSa8)。第1、第2絞り羽根の移動とFPD153の移動とが完了すると、第3撮影が実行される(ステップSa9)。X線管131は、第1撮影から第3撮影に亘って、管球位置に固定されたままである。第3撮影の完了を契機として、第1絞り羽根1331は、第1中心軸に対して対称的な位置に移動される。
【0058】
第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3医用画像が発生される。第1乃至第3医用画像を、第1方向(長軸方向)に沿って所定の重畳幅で結合した長尺画像が発生される(ステップSa11)。発生された長尺画像が、表示部23に表示される(ステップSa12)。なお、長尺撮影における撮影回数が2回である場合、ステップSa5乃至ステップSa9に関する繰り返しは、2回となる。
【0059】
(変形例)
本実施形態との相違は、寝台15の代わりに撮影台16が用いられていることにある。すなわち、本変形例では、被検体Pは立位で撮影台に載置される。図5は、本変形例に係るX線診断装置の構成の一例を示す図である。
【0060】
検出器移動部155は、撮影台16に搭載される。検出器移動部155は、X線平面検出器153をX軸に沿った第1方向に移動可能に支持する。
【0061】
なお、本変形例における長尺撮影機能は、本実施形態と同様なため説明は省略する。
【0062】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
第1の実施形態におけるX線診断装置1によれば、第1中心軸を超えて移動可能な第1絞り羽根1331を用いて、X線管131を固定したままで、X線の照射範囲を、長尺撮影における複数の撮影各々に対応したX線の照射範囲に制限することができる。また、本X線診断装置1によれば、X線可動絞り部133における遮蔽部1335に設けられた第1、第2遮蔽羽根を、第1、第2絞り羽根とそれぞれ連動して独立に移動させることが可能となる。これにより、長尺撮影において、操作者による操作なしに焦点外X線を遮蔽することができる。このことから、本実施形態におけるX線診断装置1によれば、焦点外X線による被検体Pに対する被ばくを低減し、長尺撮影において発生された複数の医用画像の結合(貼り合わせ)において、幾何学的なずれがなく貼り合わせ精度がよい長尺画像を発生することができる。
【0063】
以上のことから、第1の実施形態におけるX線診断装置1によれば、新たな照射野制限機構を付加することなく、かつX線可動絞り部133を第1方向に大きくすることなく、小型でかつ軽量なX線可動絞り部133により、長尺撮影における撮影回数およびSIDに応じて、X線の照射範囲を制限することができる。また、第1の実施形態によれば、長尺撮影において、重量物であるX線管131を回転させる必要がない。これらのことから、本実施形態におけるX線診断装置1によれば、小型でかつ軽量であって制御も容易なX線可動絞り部133を有し、貼り合わせ精度のよい長尺画像を発生することができる。
【0064】
加えて、第1の実施形態におけるX線診断装置1によれば、照射野の中心を超えて絞り制御が可能となる。また、X線焦点に近い位置に第1、第2遮蔽羽根を設け、第1、第2絞り羽根の移動に連動して第1、第2遮蔽羽根を移動させることにより、焦点外X線を遮蔽することができる。これらのことから、第1の実施形態のX線診断装置1によれば、X線可動絞り部133は、より小型な形状を有し、絞り制御がより簡便なものとなる。
【0065】
また、第1の実施形態の変形例として、X線診断装置1の技術的思想をX線可動絞り装置で実現する場合には、例えば図1図5の構成図における一点鎖線内の構成要素を有するものとなる。X線可動絞り装置3における長尺撮影処理は、以下のようになる。
【0066】
まず、被検体Pに関する長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、第1、第2羽根位置が決定される。長尺撮影が開始されると、長尺撮影における複数回の撮影各々に応じて、第1、第2絞り羽根は、第1、第2羽根位置にそれぞれ移動される。第1、第2絞り羽根の移動に連動して、第1、第2遮蔽羽根が移動される。
【0067】
次いで、被検体Pが撮影される。撮影回数に等しい回数の撮影が終了するまで、複数回の撮影に応じた第1、第2羽根位置への第1、第2絞り羽根の移動および第1、第2遮蔽羽根の移動と、被検体Pへの撮影とが繰り返される。
【0068】
以上のことから、本実施形態に係るX線可動絞り装置3によれば、長尺撮影において、焦点外X線を遮蔽し、小型でかつ軽量であって制御も容易なX線可動絞り装置3を提供することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら第2の実施形態に係るX線診断装置を説明する。第2の実施形態に係るX線診断装置1の構成は、第1の実施形態と同一なため、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0070】
図6は、第2の実施形態に係るX線診断装置1におけるX線可動絞り部133の構成を示す図である。
【0071】
X線可動絞り部133は、第1方向に移動可能な複数の第1絞り羽根1351と、第2方向に移動可能な複数の第2絞り羽根1353と、最大照射範囲において第1方向に沿った長さの中点を超えて第1方向に移動可能な第3絞り羽根1355とを有する。第1乃至第3絞り羽根各々は、X線管131により発生されたX線を遮蔽する鉛により構成される。
【0072】
絞り羽根配置部135は、長尺撮影における複数の撮影各々に応じて、位置決定部17により決定された第1乃至第3羽根位置に、複数の第1絞り羽根1351、複数の第2絞り羽根1353、および第3絞り羽根1353をそれぞれ配置する。具体的には、絞り羽根配置部135は、位置決定部17により決定された第1羽根位置に複数の第1絞り羽根1351を配置させるための図示していない第1絞り羽根移動機構を有する。第1絞り羽根移動機構は、第1方向に沿って複数の第1絞り羽根1351各々を、スライドさせて移動可能に支持する。第1絞り羽根移動機構は、第1中心軸を超えて移動できないように、複数の第1絞り羽根1351各々の移動を制限する。
【0073】
絞り羽根配置部135は、位置決定部17により決定された第2羽根位置に複数の第2絞り羽根1353を配置させるための図示していない第2絞り羽根移動機構を有する。第2絞り羽根移動機構は、第2方向に沿って複数の第2絞り羽根1353各々を、スライドさせて移動可能に支持する。第2絞り羽根移動機構は、第2中心軸を超えて移動できないように、複数の第2絞り羽根1353各々の移動を制限する。
【0074】
絞り羽根配置部135は、位置決定部17により決定された第3羽根位置に第3絞り羽根を配置させるための図示していない第3絞り羽根移動機構を有する。第3絞り羽根移動機構は、第1中心軸を超えて第3絞り羽根1355を、スライドさせて移動可能に支持する。
【0075】
図7は、複数の第1絞り羽根1351と、複数の第2絞り羽根1353と、第3絞り羽根1355との構造の一例を示す平面図である。図7に示すように、複数の第1絞り羽根1351は、第1絞り羽根aと第1絞り羽根bと有する。第1絞り羽根aおよび第1絞り羽根bは、それぞれ第1中心軸を超えて移動できない。図7に示すように、複数の第2絞り羽根1353は、第2絞り羽根aと第2絞り羽根bと有する。第2絞り羽根aおよび第2絞り羽根bは、それぞれ第2中心軸を超えて移動できない。第3絞り羽根1355は、第1中心軸を超えて第1方向に沿って移動可能である。
【0076】
図8は、図7において第1中心軸とZ軸とに沿った断面の一例を示す断面図である。図8に示すように、第1乃至第3絞り羽根は、Z軸に沿った積層構造を有する。
【0077】
位置決定部17は、長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、長尺撮影における複数回の撮影各々に応じた第1羽根位置と、第2羽根位置と、第3羽根位置と、検出器位置とを決定する。具体的には、位置決定部17は、入力部25を介した入力された撮影長とFPD153の第1方向の長さとに基づいて、長尺撮影に関する撮影回数を決定する。
【0078】
以下、説明を簡単にするため、撮影回数は、3回であるものとする。位置決定部17は、長尺撮影における撮影回数に基づいて、複数の撮影各々に対応するFPD153の検出器位置を決定する。具体的には、位置決定部17は、第1方向に沿った所定の重畳幅を有するように、3回の撮影回数にそれぞれ対応する3か所の検出器位置を決定する。所定の重畳幅とは、例えば、長尺撮影により発生された複数の医用画像を第1方向に沿って連結するために用いられる幅(のりしろに対応する幅)である。位置決定部17は、決定した複数の検出器位置を検出器移動部155に出力する。
【0079】
位置決定部17は、例えば、長尺撮影における2回目の撮影におけるFPD中心位置と、Z軸とに基づいて、管球位置を決定する。管球位置は、FPD中心位置を通りZ軸に平行な線分上に管球焦点が配置される位置である。位置決定部17は、管球位置を支持機構13に出力する。位置決定部17は、管球位置とFPD中心位置とに基づいて、SIDを決定する。
【0080】
なお、撮影回数が偶数(例えば、2n:nは自然数)である場合、位置決定部17は、n回目の撮影に対応する配置位置とn+1回目の撮影に対応する配置位置との間の中点の位置を、FPD中心位置として決定する。また、撮影回数が奇数(例えば、2n+1:nは自然数)である場合、位置決定部17は、n回目の撮影における検出器位置の中心位置を、FPD中心位置として決定する。
【0081】
位置決定部17は、長尺撮影における第1撮影に対応する第1検出器位置とSIDとに基づいて、第1撮影における第1乃至第3羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における第2撮影に対応する第2検出器位置とSIDとに基づいて、第2撮影における第1乃至第3羽根位置を決定する。位置決定部17は、長尺撮影における第3撮影に対応する第3検出器位置とSIDとに基づいて、第3撮影における第1乃至第3羽根位置を決定する。位置決定部17は、複数の撮影各々に応じた第1乃至第3羽根位置を、絞り羽根配置部135に出力する。
【0082】
なお、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置と、第1乃至第3羽根位置とを、後述する記憶部21に出力してもよい。また、複数の撮影各々において、SIDが変化する場合、位置決定部17は、SIDの変化に合わせて、第1乃至第3羽根位置すなわち絞りの開度を決定することも可能である。このとき、位置決定部17は、SIDの変化および絞りの開度に基づいて、第1乃至第3検出器位置を決定する。また、長尺撮影が2回の撮影で実行される場合、位置決定部17は、第3絞り羽根を照射範囲から退避させるための第3羽根位置を決定する。
【0083】
記憶部21は、画像処理部19により発生された種々の医用画像、長尺画像、本X線診断装置1の制御プログラム、診断プロトコル、後述する入力部25から送られてくる操作者の指示、撮影条件、透視条件などの各種データ群、長尺撮影における複数の撮影回数に応じた複数の検出器位置および複数の羽根位置、SIDなどを記憶する。また、記憶部21は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDとに対する第1乃至第3羽根位置各々の対応表を記憶してもよい。この場合、位置決定部17は、第1乃至第3検出器位置各々とSIDと対応表とに基づいて、第1乃至第3羽根位置が決定される。
【0084】
なお、記憶部21は、X線長尺撮影プログラムを記憶してもよい。X線長尺撮影プログラムとは、本X線診断装置1に搭載されたコンピュータに、SIDと長尺撮影の撮影長とに基づいて第1乃至第3羽根位置と第1乃至第3検出器位置とを決定させ、決定された第1乃至第3羽根位置各々に第1乃至第3絞り羽根を、長尺撮影の撮影ごとにそれぞれ配置させ、決定された第1乃至第3検出器位置にFPD153を、長尺撮影の撮影ごとに移動させるプログラムである。
【0085】
制御部27は、例えば、入力部25における長尺撮影の実行に関するスイッチボタンが操作者により押下され、長尺撮影の撮影範囲(撮影長)、SIDなどの長尺撮影条件が入力されると、第1乃至第3羽根位置および第1乃至第3検出器位置を長尺撮影における複数の撮影に応じて決定するために、位置決定部17を制御する。制御部27は、長尺撮影の開始前に、管球位置にX線管131を配置させるために支持機構13を制御する。制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD153を移動させるために、検出器移動部155を制御する。制御部27は、長尺撮影における撮影ごとに、第1乃至第3羽根位置に第1乃至第3絞り羽根をそれぞれ配置させるために、絞り羽根配置部135を制御する。
【0086】
(長尺撮影機能)
長尺撮影機能とは、X線管131を移動させることなく、第1乃至第3絞り羽根の配置とFPD153の移動とにより、長尺撮影を実行する機能である。具体的には、まず、長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、長尺撮影における複数の撮影各々における第1乃至第3羽根位置と、第1乃至第3検出器位置とが決定される。次いで、長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1乃至第3羽根位置に第1乃至第3絞り羽根がそれぞれ配置される。長尺撮影における複数の撮影ごとに、第1乃至第3検出器位置にFPD153が、移動される。FPD153の移動および第1乃至第3絞り羽根の配置が完了すると、被検体Pに対する撮影が繰り返される。
【0087】
以下、上記長尺撮影機能に関する処理(長尺撮影処理)について説明する。長尺撮影処理は、検査の目的に応じて、例えば、被検体Pの脊柱または下肢を撮影対象として実行される。
【0088】
図9は、長尺撮影処理の手順の一例を示すフローチャートである。
入力部25を介して長尺撮影が入力される(ステップSb1)。長尺撮影の入力とは、例えば、入力部25における長尺撮影ボタンの押下である。入力部25を介して、長尺撮影条件(例えば、長尺撮影の撮影長、SIDなど)が入力される。入力された長尺撮影条件に基づいて、長尺撮影における撮影回数が決定される(ステップSb2)。以下、上述したように、撮影回数は3回として説明する。SIDと撮影回数とに基づいて、FPD153に関する第1乃至第3検出器位置と、第1乃至第3羽根位置とを、撮影回数にそれぞれ対応付けて決定される(ステップSb3)。
【0089】
第1乃至第3羽根位置と第1乃至第3検出器位置との決定後、長尺撮影が開始される(ステップSb4)。長尺撮影の開始は、例えば、入力部25における撮影開始ボタンの押下である。撮影開始ボタンの押下を契機として、支持機構13により、X線管131が管球位置に移動される。なお、X線管131の管球位置への移動は、操作者により実行されてもよい。なお、第1乃至第3羽根位置、すなわち絞りの開度は、FPD153の移動後に決定されてもよい。撮影開始ボタンの押下を契機として、第1撮影に関する第1検出器位置にFPD153が移動される(ステップSb5)。次いで、第1撮影に関する第1乃至第3羽根位置に、第1乃至第3絞り羽根がそれぞれ配置される(ステップSb6)。
【0090】
図10は、第1撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。図10に示すように、第3絞り羽根1355は、第1中心軸を跨ぐ第3羽根位置に配置される。
【0091】
次いで、第1乃至第3絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、高電圧発生部11から管電圧の印加および管電流の供給を受けたX線管131により、X線が発生される。これにより、第1撮影が実行される(ステップSb7)。
【0092】
図11は、図10における第1撮影において、X線管131とX線可動絞り部133における第1乃至第3絞り羽根と、FPD153との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。図11における破線は、第1撮影におけるX線の照射範囲を示している。図11における矢印は、後述する第2撮影に向けての第1絞り羽根aの移動方向と、第3絞り羽根1355の移動方向と、FPD153の移動方向とを示している。図11における点線は、第2撮影におけるFPDの位置とX線の照射範囲とを示している。
【0093】
決定された撮影回数に等しい回数の撮影が終了するまで、ステップSb5乃至ステップSb7の処理が繰り返される(ステップSb8)。具体的には、第1撮影が終了すると、第2撮影に関する第2検出器位置にFPD153が移動される(ステップSb5)。次いで、第2撮影に関する第1乃至第3羽根位置に、第1乃至第3絞り羽根がそれぞれ配置される(ステップSb6)。
【0094】
図12は、第2撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。図12に示すように、第3絞り羽根は、第1絞り羽根aの上方に退避される。なお、第3絞り羽根は、第1絞り羽根bの上面側に退避されてもよい。
【0095】
第1乃至第3絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、第2撮影が実行される(ステップSb7)。
【0096】
図13は、図12における第2撮影において、X線管131とX線可動絞り部133における第1乃至第3絞り羽根と、FPD153との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。図13における破線は、第2撮影におけるX線の照射範囲を示している。図8における矢印は、後述する第3撮影に向けての第1絞り羽根bの移動方向と、第3絞り羽根1355の移動方向と、FPD153の移動方向とを示している。図8における点線は、第3撮影におけるFPDの位置とX線の照射範囲とを示している。
【0097】
第2撮影が終了すると、第3撮影に関する第3検出器位置に、FPD153が移動される(ステップSb5)。次いで、第3撮影に関する第1乃至第3羽根位置に、第1乃至第3絞り羽根がそれぞれ配置される(ステップSb6)。
【0098】
図14は、第3撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。図14に示すように、第3絞り羽根1355は、第1中心軸を跨ぐ第3羽根位置に配置される。
【0099】
第1乃至第3絞り羽根の配置とFPD153の移動とが完了すると、第3撮影が実行される(ステップSb7)。
【0100】
図15は、図14における第3撮影において、X線管131とX線可動絞り部133における第1乃至第3絞り羽根と、FPD153との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。図11図13図15に示すように、X線管131は、第1撮影から第3撮影に亘って、管球位置に固定されたままである。
【0101】
図10および図14に示すように、第1絞り羽根aと第1絞り羽根bとにより、X線の照射範囲(照射野)を制限できない場合、第3絞り羽根1355により照射範囲が限定される。なお、長尺撮影における撮影枚数が2枚である場合、第3絞り羽根1355は、第1絞り羽根aまたは第1絞り羽根bの上面側に配置される。
【0102】
第1乃至第3撮影にそれぞれ対応する第1乃至第3医用画像が発生される。第1乃至第3医用画像を、第1方向(長軸方向)に沿って所定の重畳幅で結合した長尺画像が発生される(ステップSb9)。発生された長尺画像が、表示部23に表示される(ステップSb10)。
【0103】
長尺撮影における撮影回数が2回である場合、第1撮影、第2撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係を、以下の図16乃至図19を用いて説明する。
図16は、長尺撮影における撮影回数が2回である場合において、第1撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。図16に示すように、第3絞り羽根1355は、第1絞り羽根aの上面側に配置される。
【0104】
図17は、図16における第1撮影において、X線管131とX線可動絞り部133における第1乃至第3絞り羽根と、FPD153との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。図17に示すように、第3絞り羽根1355は、第1絞り羽根aの上面側に配置され、照射範囲から退避される。
【0105】
図18は、長尺撮影における撮影回数が2回である場合において、第2撮影における第1乃至第3絞り羽根の相対的な位置関係の一例を示す図である。図18に示すように、第3絞り羽根1355は、第1絞り羽根aの上面側に配置される。
【0106】
図19は、図18における第2撮影において、X線管131とX線可動絞り部133における第1乃至第3絞り羽根と、FPD153との相対的な位置関係の一例を示す平面図である。図16乃至図19に示すように、第3絞り羽根1355は、第1絞り羽根aの上面側に配置され、照射範囲から退避される。
【0107】
(変形例)
第2の実施形態との相違は、寝台15の代わりに撮影台16が用いられていることにある。すなわち、本変形例では、被検体Pは立位で撮影台に載置される。
【0108】
検出器移動部155は、撮影台16に搭載される。検出器移動部155は、X線平面検出器153をX軸に沿った第1方向に移動可能に支持する。
【0109】
なお、本変形例における長尺撮影機能は、第2の実施形態と同様なため説明は省略する。
【0110】
以上に述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
第2の実施形態におけるX線診断装置1によれば、第1中心軸を超えて移動可能な第3絞り羽根1355を用いて、X線管131を固定したままで、長尺撮影における複数の撮影各々のX線の照射範囲を制限することができる。すなわち、本X線診断装置1によれば、X線可動絞り部133の内部に設けられた第3絞り羽根を、第1、第2絞り羽根と連動して独立に第1方向にスライドさせることが可能となる。これらのことから、第2の実施形態におけるX線診断装置1によれば、長尺撮影において発生された複数の医用画像の結合(貼り合わせ)において、幾何学的なずれがなく貼り合わせ精度がよい長尺画像を発生することができる。
【0111】
以上のことから、第2の実施形態におけるX線診断装置1によれば、新たな照射野制限機構を付加することなく、かつX線可動絞り部133を第1方向に大きくすることなく、小型でかつ軽量なX線可動絞り部133により、長尺撮影における撮影回数およびSIDに応じて、X線の照射範囲を制限することができる。また、第2の実施形態によれば、長尺撮影において、重量物であるX線管131を回転させる必要がない。以上のことから、第2の実施形態におけるX線診断装置1によれば、小型でかつ軽量であって制御も容易なX線可動絞り部133を有し、貼り合わせ精度のよい長尺画像を発生することができる。
【0112】
また、第2の実施形態の変形例として、本X線診断装置1の技術的思想をX線可動絞り装置で実現する場合には、例えば図1図5の構成図における一点鎖線内の構成要素を有するものとなる。X線可動絞り装置3における長尺撮影処理は、以下のようになる。
【0113】
まず、被検体Pに関する長尺撮影における撮影長とSIDとに基づいて、第1乃至第3絞り羽根にそれぞれ対応する第1乃至第3羽根位置が決定される。長尺撮影が開始されると、長尺撮影における複数回の撮影各々に応じて、第1乃至第3絞り羽根は、第1乃至第3羽根位置にそれぞれ配置される。
【0114】
次いで、被検体Pが撮影される。撮影回数に等しい回数の撮影が終了するまで、複数回の撮影に応じた第1乃至第3羽根位置への第1乃至第3絞り羽根の配置と、被検体Pへの撮影とが繰り返される。
【0115】
以上のことから、第2の実施形態に係るX線可動絞り装置3によれば、長尺撮影において、小型でかつ軽量であって制御も容易なX線可動絞り装置3を提供することができる。
【0116】
加えて、実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0117】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1…X線診断装置、3…X線可動絞り装置、11…高電圧発生部、13…支持機構、15…寝台、16…撮影台、17…位置決定部、18…開度情報発生部、19…画像処理部、21…記憶部、23…表示部、25…入力部、27…制御部、131…X線管、133…X線可動絞り部、135…絞り羽根配置部、137…開度情報表示部、151…天板、153…X線平面検出器(FPD)、155…検出器移動部、1331…第1絞り羽根、1333…第2絞り羽根、1335…遮蔽部、1337…第1遮蔽羽根、1339…第2遮蔽羽根、1341…第1移動機構、1343…第2移動機構、1351…第1絞り羽根、1353…第2絞り羽根、1355…第3絞り羽根
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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