【文献】
M. Kojima et.al,The effect of Mesh Design in Cerebral Aneurysm Hemodynamics for Developing Flow Controllable Stent: Computational Fluid Dynamics Study,Proceedings of 2012 ICME,米国,IEEE,2012年 7月24日,772-777
【文献】
David S Molony, et al.,Fluid-structure interaction of a patient-specific abdominal aortic aneurysm treated with an endovascular stent-graft,BioMedical Engineering OnLine,米国,2009年10月 6日
【文献】
MIRIAN J. STARMANS-KOOL, et al.,Measurement of hemodynamics in human carotid artery using ultrasound and computational fuluid dynamics,J Appl Physiol,米国,2002年 3月,VOL 92,p.957-961
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、血流解析装置の一例として、被検体に対してTAVRに係る治療を実施するに際し、被検体の大動脈弁周辺の血流に関する流体解析を実行するワークステーションを開示する。
【0013】
図1は、本実施形態に係るワークステーション1の概略構成を示すブロック図である。ワークステーション1は、プロセッサ2、メモリ3、通信装置4、入力装置5、表示装置6、記憶装置7、及びバスライン8を備える。バスライン8は、プロセッサ2、メモリ3、通信装置4、入力装置5、表示装置6、及び、記憶装置7を通信可能に接続するアドレスバス及びデータバス等で構成される。
【0014】
プロセッサ2は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、コンピュータプログラムを実行することで各種の処理を実現する。
【0015】
メモリ3は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメインメモリである。メモリ3は、本実施形態における主要な処理をプロセッサ2に実現させるための血流解析プログラム30等を記憶する。また、メモリ3は、各種の情報を一時的に記憶するための作業用記憶領域を形成する。
【0016】
通信装置4は、有線或いは無線にて外部装置と通信する。外部装置は、例えばX線CT装置及び超音波診断装置等のモダリティ、PACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、或いは他のワークステーション等である。
【0017】
入力装置5は、ユーザの操作に応じたコマンド等を入力するインターフェイスであり、例えばキーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、及び、各種ボタン等を含む。
【0018】
表示装置6は、LCD(Liquid Crystal Display)或いはOELD(Organic ElectroLuminescence Display)等のディスプレイである。
【0019】
記憶装置7は、比較的大容量のデータを記憶可能なHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。記憶装置7は、プロセッサ2が血流解析プログラム30を実行することで実現される処理の過程において、CT画像データCD、Bモード像データBD、ドプラ像データDD、大動脈モデルデータAMD、デバイスモデルデータDMD、治療モデルデータTMD、及び、解析データAD等を記憶する。各データの詳細については後述する。
【0020】
図2は、プロセッサ2が血流解析プログラム30を実行することにより実現される機能を示すブロック図である。図示したように、プロセッサ2は、CT画像入力部101、第1の芯線抽出部102、第1の領域抽出部103、第1の弁面検出部104、パラメータ入力部105、血管モデル生成部106、超音波画像入力部107、第2の芯線抽出部108、第2の領域抽出部109、第2の弁面検出部110、流速抽出部111、位置合わせ部112、流速条件生成部113、デバイスモデル入力部114、デバイス位置決定部115、治療モデル生成部116、流体解析部117、画像生成部118、及び、画像出力部119としての機能を実現する。特に、流速条件生成部113、治療モデル生成部116、及び、流体解析部117による処理は、本実施形態におけるメイン処理120を構成する。
【0021】
プロセッサ2は、これら各部として動作することにより、TAVRにて被検体の大動脈弁位置に配置される人工弁の周囲における血流をシミュレート及び解析する。プロセッサ2による処理の概略的なフローチャートを
図3に示す。
【0022】
当該フローチャートに示すように、プロセッサ2は、ステップS1〜S6の処理を実行する。この処理は、例えばユーザが入力装置5を操作して処理開始のコマンドを入力したことに応じて開始される。
【0023】
以下、各ステップの詳細について説明する。
[ステップS1:血管モデルの生成]
ステップS1において、プロセッサ2は、CT画像入力部101、第1の芯線抽出部102、第1の領域抽出部103、第1の弁面検出部104、パラメータ入力部105、及び、血管モデル生成部106として機能することにより、被検体の大動脈領域の血管モデルを生成する。
【0024】
CT画像入力部101は、例えば通信装置4によって上述の外部装置と通信することにより、当該外部装置からCT画像データCDをワークステーション1に入力し、記憶装置7に記憶させる。CT画像データCDは、予めX線CT装置によって被検体の心臓領域をスキャンすることにより得られたボリュームデータである。特に本実施形態において、CT画像データCDは、心臓の収縮期に対応するものとする。
【0025】
第1の芯線抽出部102は、記憶装置7が記憶するCT画像データCDに含まれる大動脈の芯線を抽出する。例えば第1の芯線抽出部102は、CT画像データCDに含まれるボクセル値の変化と、予め定められた一般的な大動脈に関する特徴量とに基づき、CT画像データCDから大動脈の内腔と推定される長尺な領域を特定する。第1の芯線抽出部102は、特定した領域内の長手方向に沿う中心線を、大動脈の芯線として抽出する。第1の芯線抽出部102は、CT画像データCDに基づく画像を表示装置6に表示するとともに、ユーザが入力装置5を介して当該画像上に設定する線分を芯線として抽出してもよい。
【0026】
第1の領域抽出部103は、第1の芯線抽出部102が抽出した芯線に基づいて、CT画像データCDから大動脈領域を抽出する。例えば第1の領域抽出部103は、第1の芯線抽出部102が抽出した芯線を中心とした放射方向にCT画像データCDにおけるボクセル値の変化を観測して大動脈の内腔と管壁との境界を特定する処理を、芯線の全長に亘って実行することにより、大動脈領域を抽出する。第1の領域抽出部103は、CT画像データCDに基づく画像を表示装置6に表示するとともに、ユーザが入力装置5を介して当該画像上に設定する領域を大動脈領域として抽出してもよい。
【0027】
第1の弁面検出部104は、第1の領域抽出部103が抽出した大動脈領域に含まれる大動脈弁の弁面を検出する。弁面は、例えば大動脈の芯線と垂直に交わり、且つ大動脈弁尖を含む平面群における中心平面と定義する。そこで、例えば第1の弁面検出部104は、第1の領域抽出部103が抽出した大動脈領域において、芯線と垂直に交わる平面を芯線に沿って走査して大動脈弁尖を含む平面群を抽出し、抽出した平面群の中心平面を弁面とする。第1の弁面検出部104は、第1の領域抽出部103が抽出した大動脈領域を表示装置6に表示するとともに、ユーザが入力装置5を介して当該画像上に設定する平面を大動脈の弁面として検出してもよい。
【0028】
パラメータ入力部105は、例えば入力装置5に対するユーザの操作に従って、大動脈の材質条件及び血流条件に関するパラメータを入力する。パラメータ入力部105は、通信装置4によって上述の外部装置と通信することにより、当該外部装置からワークステーション1にパラメータを入力してもよい。材質条件は、例えば血管壁に関する力学的指標である。この力学的指標は、例えば血管壁の変位に関する指標、血管壁に生じる応力やひずみに関する指標、血管内腔に負荷される内圧分布に関する指標、及び、血管の硬さ等を表す材料特性に関する指標等である。血管の硬さ等を表す材料特性に関する指標としては、血管組織の応力とひずみの関係を示す曲線の平均的な傾き等が挙げられる。血流条件は、例えば血液の粘性等に関する指標である。これらの他にも、パラメータ入力部105は、大動脈における血流をシミュレートするために必要な種々のパラメータを入力してもよい。
【0029】
血管モデル生成部106は、第1の領域抽出部103が抽出した領域及び第1の弁面検出部104が検出した弁面の位置等に基づき、血管モデルの一種である大動脈モデルを生成する。
【0030】
図4は、血管モデル生成部106が生成する大動脈モデルAMの一例を示す模式図である。同図においては、多数のポリゴンの集合にて管内壁を示す大動脈モデルAMに加え、心臓、右冠動脈R1、及び左冠動脈R2の位置を破線にて示している。
【0031】
血管モデル生成部106は、生成した大動脈モデルを示す大動脈モデルデータAMDを、パラメータ入力部105が入力した材質条件及び血流条件に関するパラメータとともに記憶装置7に記憶させる。
【0032】
[ステップS2:初期流速条件の生成]
ステップS2において、プロセッサ2は、超音波画像入力部107、第2の芯線抽出部108、第2の領域抽出部109、第2の弁面検出部110、流速抽出部111、位置合わせ部112、及び、流速条件生成部113として機能することにより、ステップS1にて生成された大動脈モデルの初期流速条件を生成する。
【0033】
超音波画像入力部107は、例えば通信装置4によって上述の外部装置と通信することにより、当該外部装置からBモード像データBD及びドプラ像データDDをワークステーション1に入力し、記憶装置7に記憶させる。Bモード像データBDは、予め超音波診断装置によって被検体の心臓領域をBモードにてスキャンすることにより得られた当該心臓領域の形態を輝度にて表現する3次元データである。例えば、ドプラ像データDDは、予め超音波診断装置によって被検体の心臓領域をドプラモードにてスキャンすることにより得られた血流の平均速度に関する血流ベクトル分布を示す3次元データである。特に本実施形態において、Bモード像データBD及びドプラ像データDDは、超音波プローブを動かすことなく同一の領域をスキャンして得られたものであり、CT画像データCDと同じく心臓の収縮期に対応するものであるとする。
【0034】
第2の芯線抽出部108は、超音波画像入力部107が記憶装置7に記憶させたBモード像データBDに含まれる大動脈の芯線を抽出する。第2の芯線抽出部108による芯線抽出の手法としては、第1の芯線抽出部102と同様の手法を採用し得る。
【0035】
第2の領域抽出部109は、第2の芯線抽出部108が抽出した芯線に基づいて、Bモード像データBDから大動脈領域を抽出する。第2の領域抽出部109による大動脈領域抽出の手法としては、第1の領域抽出部103と同様の手法を採用し得る。
【0036】
第2の弁面検出部110は、超音波画像入力部107が入力したBモード像データBDに含まれる大動脈弁の弁面を検出する。第2の弁面検出部110による弁面検出の手法としては、第1の弁面検出部104と同様の手法を採用し得る。
【0037】
流速抽出部111は、第2の領域抽出部109が抽出した大動脈領域内の血流ベクトル分布をドプラ像データDDから抽出する。
【0038】
位置合わせ部112は、第1の領域抽出部103が抽出したCT画像データCDにおける大動脈領域と、第2の領域抽出部109が抽出したBモード像データBDにおける大動脈領域とを位置合わせする。具体的には、位置合わせ部112は、第1の弁面検出部104及び第2の弁面検出部110が検出した弁面位置、双方の大動脈領域における大動脈起始部、及び大動脈と左右冠動脈との接続部等の特徴的部分に基づき、CT画像データCDにおける大動脈領域に対するBモード像データBDにおける大動脈領域の相対的な位置関係(縮尺、回転角度等)を特定する。
【0039】
流速条件生成部113は、流速抽出部111が抽出した血流ベクトル分布と、位置合わせ部112が特定した位置関係とに基づき、血管モデル生成部106が生成した大動脈モデルの初期流速条件を生成する。具体的には、流速条件生成部113は、流速抽出部111が抽出した血流ベクトル分布を位置合わせ部112が特定した位置関係に応じて縮小、拡大、或いは回転等させる変換処理を実行する。変換処理後の血流ベクトルが初期流速条件となる。流速条件生成部113は、生成した初期流速条件を記憶装置7に記憶させる。
【0040】
[ステップS3:治療モデルの生成]
ステップS3において、プロセッサ2は、デバイスモデル入力部114、デバイス位置決定部115、及び、治療モデル生成部116として機能することにより、大動脈モデルに人工弁モデルを配置した治療モデルを生成する。
【0041】
デバイスモデル入力部114は、例えば通信装置4によって上述の外部装置と通信することにより、当該外部装置からデバイスモデルデータDMDと材質条件とをワークステーション1に入力し、記憶装置7に記憶させる。本実施形態におけるデバイスモデルデータDMDは、被検体内に配置する人工弁の形状を表す人工弁モデルを示す。人工弁モデルは、例えば人工弁の設計時等に作成される3次元のCADデータである。ここでの材質条件は、人工弁モデルに関するものである。
【0042】
図5は、デバイスモデルデータDMDにて示される人工弁モデルDMの一例を示す模式図である。人工弁モデルDMは、円筒形のステント200を含む。ステント200の内部には、可撓性の材料にて形成された複数の弁部材(図示せず)が設けられている。各弁部材は、入口201側の圧力が出口202側の圧力よりも高いときに開き、入口201側の圧力が出口202側の圧力よりも低いときに閉じる。すなわち、各弁部材は可動部である。本実施形態においては、心臓の収縮期に対応する形状、すなわち各弁部材が開いている状態の人工弁モデルDMを示すデバイスモデルデータDMDがデバイスモデル入力部114によって入力されるものとする。
【0043】
人工弁モデルに関する材質条件は、例えば人工弁モデルDMの各部に関する力学的指標である。この力学的指標は、例えば人工弁モデルDMの各部の変位に関する指標、人工弁モデルDMの各部に生じる応力やひずみに関する指標、及び、人工弁モデルDMの各部の硬さ等を表す材料特性に関する指標等である。材料特性に関する指標としては、人工弁モデルDMの各部の応力とひずみの関係を示す曲線の平均的な傾き等が挙げられる。
【0044】
デバイス位置決定部115は、血管モデル生成部106が生成した血管モデルにおいて人工弁を配置する位置を決定する。例えば、デバイス位置決定部115は、記憶装置7が記憶する大動脈モデルデータAMDにて示される大動脈モデルにおける弁面位置に、記憶装置7が記憶するデバイスモデルデータDMDにて示される人工弁モデルを配置した画像を、表示装置6に表示させる。
【0045】
図6は、大動脈モデルAMの弁面位置に人工弁モデルDMを配置した画像の一例を示す模式図である。この例では、大動脈モデルAMの芯線に沿う断面に人工弁モデルDMを配置した画像を示しているが、表示形態はこれに限られない。
【0046】
ユーザは、入力装置5に対する操作により、当該画像における人工弁モデルDMの位置や角度を調整することができる。デバイス位置決定部115は、調整後における人工弁モデルDMの位置を、最終的な設置位置として決定する。
【0047】
治療モデル生成部116は、記憶装置7が記憶する大動脈モデルデータAMDにて示される大動脈モデルに対し、記憶装置7が記憶するデバイスモデルデータDMDにて示される人工弁モデルを、デバイス位置決定部115が決定した設置位置に設置した治療モデルを生成する。治療モデル生成部116は、生成した治療モデルを示す治療モデルデータTMDを、大動脈モデルデータAMDとともに記憶装置7が記憶する大動脈モデルの材質条件及び血流条件、及び、デバイスモデルデータDMDとともに記憶装置7が記憶する人工弁モデルの材質条件とともに記憶装置7に記憶させる。
【0048】
[ステップS4:流体解析]
ステップS4において、プロセッサ2は、流体解析部117として機能する。
【0049】
流体解析部117は、記憶装置7が記憶する治療モデルデータTMD、大動脈モデルの材質条件と血流条件、人工弁モデルの材質条件、及び、初期流速条件に基づいて流体解析を実行する。
【0050】
例えば、流体解析部117は、治療モデルデータTMDが示す治療モデルを対象としたFEM(Finite Element Method)やFVM(Finite Volume Method)等のアルゴリズムに従ったCFD(Computational Fluid Dynamics)を行う。この場合において、例えば流体解析部117は、治療モデルに設定した多数のセルのそれぞれに対して初期流速条件が示す血流ベクトルを割り当てたモデルを初期条件として、大動脈モデルと人工弁モデルの材質条件等を考慮したFSI(Fluid Structure Interaction)解析を実行し、治療モデル内における血流速度に関する血流ベクトル分布を示す解析データADを生成する。このようなCFDの手法としては、既に知られた種々の方法を採用することができる。流体解析部117は、生成した解析データADを記憶装置7に記憶させる。
【0051】
既述のように、治療モデルの生成元であるCT画像データCDとデバイスモデルデータDMD、及び、初期流速条件の生成元であるBモード像データBDとドプラ像データDDは、いずれも心臓の収縮期に対応するものである。すなわち、解析データADは、1心周期において大動脈内の血流が最も早い心位相に対応する血流ベクトル分布を示す。
【0052】
[ステップS5:画像の生成]
ステップS5において、プロセッサ2は、画像生成部118として機能する。
画像生成部118は、流体解析部117による解析結果を可視化した画像の画像データを生成する。
【0053】
例えば、画像生成部118は、治療モデルデータTMDが示す治療モデルにおいて、解析データADが示す血流ベクトル分布を可視化した画像データを生成する。また、画像生成部118は、CT画像データCDに基づいて生成される画像において、解析データADが示す血流ベクトル分布を可視化した画像データを生成してもよい。血流ベクトル分布は、血流ベクトルを示す矢印を画像内に配置することで可視化されてもよいし、特定の方向に対する血流ベクトル成分の大きさに応じて画像内を色付けすることで可視化されてもよい。
【0054】
人工弁自体の機能が常に正常であるとの前提に立てば、人工弁内の血流は正常であると仮定できる。そこで、画像生成部118は、人工弁モデルと大動脈モデルの管壁との間における血流ベクトルに注目して可視化を行ってもよい。
【0055】
図7〜
図12に画像生成部118が生成する画像の一態様を例示する。
図7は、治療モデルデータTMDが示す治療モデルの芯線に沿う断面において解析データADが示す血流ベクトル分布の一部を可視化した画像を示す。この例では、正常な血流方向である基準方向に流れる順行血流と、基準方向に逆行して流れる逆行血流とを矢印にて示している。基準方向は、例えば芯線に沿って左心室から遠ざかる方向である。順行血流は、例えば基準方向に関して正の速度成分を有する血流である。逆行血流は、例えば基準方向に関して負の速度成分を有する血流である。本例では、人工弁モデルDMの出口付近における順行血流の代表値に対応する3つの矢印を示している。この代表値は、例えば人工弁モデルDMの出口付近の血流ベクトルを所定領域毎に平均したベクトル値である。また、本例では、逆行血流の発生位置において、当該血流の代表値に対応する3つの矢印を示している。この代表値は、例えば逆行血流が発生する領域の血流ベクトルを所定領域毎に平均したベクトル値である。
【0056】
図8〜
図10は、CT画像データCDに基づいて生成される画像において、解析データADが示す血流ベクトル分布の一部を可視化した画像を示す。
図8は、CT画像データCDに基づいて生成されるAveIP(Average Intensity Projection)画像を用いる例である。
図9は、CT画像データCDに基づいて生成されるVR(Volume Rendering)画像を用いる例である。
図10は、CT画像データCDに基づいて生成されるMIP(Maximum Intensity Projection)画像を用いる例である。なお、
図8〜
図10においては、CT画像データCDに基づいて生成される画像に加え、第1の芯線抽出部102が抽出した芯線と、人工弁モデルDMとを表している。順行血流及び逆行血流の表示態様は、
図7の例と同様である。
【0057】
なお、
図7〜
図10の例では、それぞれ3つずつの矢印にて順行血流と逆行血流を表しているが、より多くの矢印にて各血流を表してもよい。例えば、解析データADが示す血流ベクトル分布に含まれる全てのベクトルを矢印にて表してもよい。
【0058】
図11及び
図12は、CT画像データCDに基づいて生成される画像において、人工弁モデルDMと大動脈の管壁との間に形成される隙間Aにおける血流ベクトルを可視化した画像を示す。
図11は、第1の弁面検出部104が検出した弁面における断層像(芯線に対するクロスカット画像)を用いる例である。
図12は、芯線に沿うCurved MPR(Multi Planar Reconstruction)画像を用いる例である。これらの画像において、隙間A内の血流ベクトルを、例えば基準方向に関する速度成分の大きさに応じて色付けする。なお、
図11及び
図12においては隙間A全体に斜線を付して具体的な色付けを省略している。
【0059】
図7〜
図12では、血流ベクトル分布が示す血流速度を可視化する場合を例示した。しかしながら、画像生成部118は、血流を表す他の指標を可視化してもよい。
【0060】
例えば画像生成部118は、血流ベクトル分布に基づいて血液の流量を算出し、当該流量を可視化した画像の画像データを生成してもよい。
【0061】
また、画像生成部118は、血流ベクトル分布における血流ベクトルと、基準方向との乖離量を可視化した画像の画像データを生成してもよい。このような乖離量は、例えば血流ベクトルと基準方向とが成す角度とすることができる。
【0062】
また、画像生成部118は、特定の断面に含まれる逆行血流の発生箇所に対応する領域の面積や、特定の3次元領域に含まれる逆行血流の発生箇所に対応する領域の体積を求め、これら面積や体積を示す数値を配置した画像の画像データを生成してもよい。
【0063】
[ステップS6:画像の出力]
ステップS6において、プロセッサ2は、画像出力部119として機能する。
画像出力部119は、画像生成部118が生成した画像データを出力する。例えば画像出力部119は、当該画像データに基づく画像を表示装置6に表示させる。また、画像出力部119は、通信装置4を介して外部装置に当該画像データを送信してもよい。
【0064】
ステップS6を以って、プロセッサ2による一連の処理は終了する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態に係るワークステーション1は、大動脈モデルに人工弁モデルを配置した治療モデルを生成し、この治療モデルに関して流体解析を実行し、その解析結果を出力する。この解析結果を参照することにより、医師等は、人工弁を被検体の大動脈に配置した際の血流の状態をTAVRの実施前に知ることができる。これにより、TAVRの治療計画の段階において、人工弁からの血流のリーク(逆行血流)の発生するリスクが高い解剖学的局所部位の位置、範囲及び形状等の情報を把握できるため、治療の実施前にリークへの対策を検討できるようになる。
【0066】
また、例えばTAVRの術中にX線透視撮影装置によって撮影されるリアルタイムのX線透視画像に解析データADに基づく画像をフュージョンすることにより、リークの発生するリスクが高い部位等をリアルタイムで術者に提供することもできる。
【0067】
これらの他にも、本実施形態にて開示した構成からは、種々の好適な効果が得られる。
【0068】
(変形例)
いくつかの変形例を示す。
上記実施形態では、血流解析装置の一例としてワークステーション1を開示した。しかしながら、X線CT装置、超音波診断装置、或いはX線透視撮影装置のコンソールやPACS等のシステムに含まれるサーバにステップS1〜S6の処理を実行させ、これらの装置を血流解析装置として機能させてもよい。
【0069】
上記実施形態では、心臓の収縮期に関して血流を解析する場合を例示した。このように心臓の収縮期を対象とすることで、大動脈の血流が最も速くなる心位相での解析結果が得られる。しかしながら、解析対象の心位相は収縮期に限られず、他の心位相を対象としてもよい。また、1心周期を対象としてステップS1〜S6の処理を行ってもよい。
【0070】
上記実施形態では、X線CT装置にて生成されたCT画像データCDに基づいて血管モデルが生成される場合を例示した。しかしながら、他の医用画像データ、例えばMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置によって生成された画像データや超音波診断装置によって生成されたBモード像データに基づいて血管モデルが生成されてもよい。
【0071】
血流解析装置は、人工弁の経時劣化を考慮した血流の解析を行う機能を備えてもよい。例えば、被検体内に配置された人工弁の時間経過にともなう形状や材質条件の変化を予め実験等により把握することで、所定の経過期間毎の経時劣化を考慮した人工弁モデル及び材質条件を複数用意する。血流解析装置は、これらの人工弁モデル及び材質条件を用いてステップS1〜S6の処理を実行することで、上記所定の経過期間毎の経時劣化を考慮した血流解析を行う。このような血流解析の結果を用いれば、TAVRの実施後のリークに関する長期的なリスクを評価することができる。さらに、血流解析装置が経過期間毎の血流解析結果に基づいてリークに関するリスクを数値化し、その結果を出力してもよい。このような数値化は、例えば特定の断面に含まれる逆行血流の発生箇所に対応する領域の面積や、特定の3次元領域に含まれる逆行血流の発生箇所に対応する領域の体積に関して行えばよい。
【0072】
血流解析プログラム30は、必ずしも血流解析装置の製造段階から同装置のメモリに書き込まれている必要はない。血流解析プログラム30は、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込まれた状態でユーザに提供され、この記録媒体から血流解析装置等のコンピュータにインストールされてもよい。また、ネットワークを介してダウンロードされた血流解析プログラム30が血流解析装置等のコンピュータにインストールされてもよい。
【0073】
ステップS1〜S6の処理にて、TAVR以外の他の治療に関する血流の解析を行うこともできる。他の治療としては、例えばステント留置術やコイル塞栓術等がある。ステント留置術を対象とする場合、血流解析装置は、ステップS1にてステント或いはステントグラフトを留置する対象となる血管、例えば冠動脈に関する血管モデルを生成し、ステップS2にて当該血管の初期流速条件を生成し、ステップS3にてステント或いはステントグラフトの形状を表すデバイスモデルを血管モデルに配置した治療モデルを生成し、ステップS4〜S6にて当該治療モデルを対象とした解析、画像生成、及び画像出力を行う。また、コイル塞栓術を対象とする場合、血流解析装置は、ステップS1にて塞栓対象となる瘤領域、例えば脳動脈瘤に関する血管モデルを生成し、ステップS2にて当該脳動脈瘤周辺の初期流速条件を生成し、ステップS3にて脳動脈瘤に詰めるコイルの形状を表すデバイスモデルを血管モデルに配置した治療モデルを生成し、ステップS4〜S6にて当該治療モデルを対象とした解析、画像生成、及び画像出力を行う。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。