(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一変位制限部材及び/又は前記第二変位制限部材は、想定を超えた外力が当該変位制限装置に付加された場合に破断する低強度部を有することを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の変位制限装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した変位制限装置について図面を参照して説明する。なお、変位制限装置について、以下の順に沿って説明する。
1.変位制限装置の使用状態の説明
2.変位制限装置の説明
2−1.第一の実施の形態の説明
2−2.第二の実施の形態の説明
3.従来技術との比較の説明
4.変位制限装置の第一の変形例の説明
5.変位制限装置の第二の変形例の説明
【0019】
[1.変位制限装置の使用状態の説明]
図1に示すように、本発明を適用した変位制限装置1は、橋梁等の建築物や建造物等の構造物において、例えば、上部構造物2と下部構造物3との間に設置されて上部構造物2を支承する支承装置4と共に、上部構造物2と下部構造物3との間に設置される。そして、変位制限装置1は、所定レベル以上の地震等によって上部構造物2と下部構造物3の相対変位量が所定値以上となった場合、上部構造物2と下部構造物3の相対変位を制限する。従って、変位制限装置1は、支承装置4が破損することを防止し、或いは、支承装置4が破損したときに、上部構造物2が下部構造物3から落下することを防止する。
【0020】
以下、変位制限装置1が、橋梁の橋桁2(上部構造物)と橋脚3(橋台等を含めた下部構造物)との間に設置された場合を例に説明していく。なお、変位制限装置1は、橋梁以外の他の建築物や建造物(上部構造物)と基礎部(下部構造物)との間に設置されるようにしても良い。
【0021】
[2.変位制限装置の説明]
(2−1.第一の実施の形態の説明)
図2(A)乃至
図2(C)に示すように、本発明を適用した変位制限装置1は、橋脚3に取り付けられる第一変位制限部材10と、橋桁2に取り付けられる第二変位制限部材20とを備えている。
【0022】
第一変位制限部材10は、例えば、鋼材等で形成されており、第一方向である橋軸方向Xに沿って設けられた第一被係合部11と、第一被係合部11の長手方向の両側に略直交するように設けられた一対の第一係合部12,12とを有する。すなわち、第一変位制限部材10は、コ字状に形成されている。また、第一被係合部11及び第一係合部12,12は、例えば、断面矩形状に形成されている。
【0023】
このような第一変位制限部材10は、第一被係合部11が橋軸方向Xに沿って配置され、第一係合部12,12が第一ベース板13に溶接やボルト及びナットの締結部材等によって接合されることで、第一ベース板13に一体に設けられている。更に、第一変位制限部材10は、第一ベース板13が橋脚3に設けられたアンカボルト等の締結部材やボルト及びナット等の締結部材によって締結されたり、橋脚3に溶接等によって接合されることで、橋脚3に取り付けられている。
【0024】
第二変位制限部材20は、例えば、鋼材等で形成されており、第二方向である橋軸直角方向Yに沿って設けられた第二被係合部21と、第二被係合部21の長手方向の両側に略直交するように設けられた一対の第二係合部22,22とを有する。すなわち、第二変位制限部材20は、コ字状に形成されている。また、第二被係合部21及び第二係合部22,22は、例えば、断面矩形状に形成されている。
【0025】
このような第二変位制限部材20は、第二被係合部21が第一変位制限部材10の第一係合部12,12間に配置されると共に、橋軸直角方向Yに沿って配置され、第二係合部22,22が第二ベース板23に溶接やボルト及びナット等の締結部材等によって接合されることで、第二ベース板23に一体に設けられている。更に、第二変位制限部材20は、第二ベース板23が橋桁2に設けられたアンカボルト等の締結部材によって締結されたり、橋桁2に溶接等によって接合されることで、橋桁2に取り付けられている。
【0026】
すなわち、変位制限装置1は、第一変位制限部材10及び第二変位制限部材20がそれぞれコ字状に形成され、更に、第一係合部12,12間に第二被係合部21が配置され、第二係合部22,22間に第一被係合部11が配置されることで、互いに抱き合せるように設けられている。
【0027】
そして、変位制限装置1は、
図3(A)に示すように、所定レベル以上の地震等によって橋桁2と橋脚3が橋軸方向Xに所定値以上相対変位した場合、一方の第一係合部12と第二被係合部21とが係合されることで、橋桁2及び/又は橋脚3の橋軸方向Xの変位を制限することが出来る。また、変位制限装置1は、
図3(B)に示すように、所定レベル以上の地震等によって橋桁2と橋脚3が橋軸直角方向Yに所定値以上相対変位した場合、一方の第二係合部22と第一被係合部11とが係合されることで、橋桁2及び/又は橋脚3の橋軸直角方向Yの変位を制限することが出来る。
【0028】
なお、第一被係合部11の幅と、第二被係合部21の幅、並びに、第一被係合部11と第二係合部22,22との間隙の大きさと、第二被係合部21と第一係合部12,12との間隙の大きさを適宜設定することが可能であり、橋軸方向Xと、橋軸直角方向Yの各方向に対して変位量を適宜個別に設定することが可能となる。
【0029】
更に、変位制限装置1は、所定レベル以上の地震等によって橋桁2が高さ方向に所定値以上変位した場合、第一被係合部11と第二被係合部21とが係合されることで、橋桁2の高さ方向の変位を制限することが出来る。
【0030】
なお、変位制限装置1は、第一被係合部11を橋軸直角方向Yに沿うように設け、第二被係合部21を橋軸方向Xに沿うように設けるようにしても良い。更に、変位制限装置1は、第一被係合部11及び第二被係合部21を、橋軸方向X又は橋軸直角方向Yから、例えば45度若しくは−45度等、所定の角度傾けて設けるようにしても良い。この際、変位制限装置1は、第一ベース板13及び第二ベース板23を、橋桁2又は橋脚3に傾けて取り付けるようにしても良い。または、変位制限装置1は、第一変位制限部材10を第一ベース板13に傾けて取り付けると共に、第二変位制限部材20を第二ベース板23に傾けて取り付けるようにしても良い。
【0031】
更に、変位制限装置1は、第一被係合部11の長さと第二被係合部21の長さとが異なるように設けても良い。この際、第一被係合部11を、第二被係合部21よりも長くなるように設けても良く、短くなるように設けても良い。より好ましくは、第二被係合部21を、第一被係合部11よりも長く設けると共に橋軸方向Xに沿うように設け、第一被係合部11を橋軸直角方向Yに沿うように設ける。このような場合、橋桁2に取り付けられる第二変位制限部材20の第二被係合部21が長く設けられて、橋脚3に取り付けられる第一変位制限部材10の第一被係合部11が短く設けられることで、第一被係合部11の方を長く設けた場合よりも、橋脚3の第一ベース板13を小さくすることが出来る。従って、橋梁や下部構造物の新設の場合等においては、変位制限装置の大きさによる橋座幅の拡幅等を回避出来、また、第一ベース板13の橋軸方向幅が小さくなるので、他の部材と干渉することを回避することが出来、省スペースで且つ作業性も良い。また、このような構成とすることで、第二ベース板23の橋軸直角方向幅を小さく抑えることが出来るため、第二ベース板23の取り付け対象となる例えば、既設の上部構造物の主桁フランジへの取り付けにおいて、既定の主桁フランジのフランジ幅の拡幅等の作業が必要なく、より作業性が良好で安価な施工が可能となる。
【0032】
また、変位制限装置1は、第一変位制限部材10を、第一ベース板13上に配置せずに、直接的に橋脚3に取り付けるようにしても良い。更に、変位制限装置1は、第二変位制限部材20を、第二ベース板23上に配置せずに、直接的に橋桁2に取り付けるようにしても良い。
【0033】
以上のように、本発明の変位制限装置1では、第一変位制限部材10及び第二変位制限部材20をそれぞれコ字状に形成して互いに抱き合せるように設けるという簡易な構造でありながら、複数の方向の変位を制限することが出来る。
【0034】
また、本発明の変位制限装置1では、橋桁2と橋脚3の橋軸方向Xの相対変位を制限するために第一係合部12と第二被係合部21とが係合する際、第一係合部12と第二被係合部21とが面接触する。更に、本発明の変位制限装置1では、橋桁2と橋脚3の橋軸直角方向Yの相対変位を制限するために第二係合部22と第一被係合部11とが係合する際、第二係合部22と第一被係合部11とが面接触する。従って、本発明の変位制限装置1では、従来の変位制限装置100のように、応力が集中することを防止することが出来る。
【0035】
また、本発明の変位制限装置1では、上述したように簡易な構造で構成されているので、従来の変位制限装置100よりも、小型化及び軽量化を図ることが出来る。
【0036】
(2−2.第二の実施の形態の説明)
次に、第二の実施の形態の変位制限装置30について説明する。なお、上述した第一の実施の形態における変位制限装置1と同一の機能を有するものについては、同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0037】
変位制限装置30は、変位制限装置1では、第一変位制限部材10の第一係合部12,12を第一ベース板13に一体に設け、第二変位制限部材20の第二係合部22,22を第二ベース板23に一体に設けていたのに対して、
図4(A)乃至
図4(C)に示すように、第一変位制限部材10の第一被係合部11を第一ベース板13に一体に設け、第二変位制限部材20の第二被係合部21を第二ベース板23に一体に設けている。
【0038】
具体的に、第一変位制限部材10は、第一被係合部11が橋軸方向Xに沿って配置され、第一被係合部11が第一ベース板13に溶接やボルト及びナット等の締結部材等によって接合されることで、第一ベース板13に一体に設けられている。
【0039】
また、第二変位制限部材20は、第二被係合部21が第一変位制限部材10の第一係合部12,12間に配置されると共に、橋軸直角方向Yに沿って配置され、第二被係合部21が第二ベース板23に溶接やボルト及びナット等の締結部材等によって接合されることで、第二ベース板23に一体に設けられている。
【0040】
すなわち、変位制限装置30においても、第一変位制限部材10及び第二変位制限部材20がそれぞれコ字状に形成され、更に、第一係合部12,12間に第二被係合部21が配置され、第二係合部22,22間に第一被係合部11が配置されることで、互いに抱き合せるように設けられている。
【0041】
そして、変位制限装置30は、
図5(A)に示すように、所定レベル以上の地震等によって橋桁2と橋脚3が橋軸方向Xに所定値以上相対変位した場合、一方の第一係合部12と第二被係合部21とが係合されることで、橋桁2と橋脚3の橋軸方向Xの相対変位を制限することが出来る。また、変位制限装置30は、
図5(B)に示すように、所定レベル以上の地震等によって橋桁2と橋脚3が橋軸直角方向Yに所定値以上相対変位した場合、一方の第二係合部22と第一被係合部11とが係合されることで、橋桁2と橋脚3の橋軸直角方向Yの相対変位を制限することが出来る。
【0042】
なお、本発明の変位制限装置30は、第一被係合部11を橋軸直角方向Yに沿うように設け、第二被係合部21を橋軸方向Xに沿うように設けるようにしても良い。更に、変位制限装置30は、第一被係合部11及び第二被係合部21を、橋軸方向X又は橋軸直角方向Yから、例えば45度若しくは−45度等、所定の角度傾けて設けるようにしても良い。
【0043】
更に、変位制限装置30は、第一被係合部11の長さと第二被係合部21の長さとが異なるように設けても良い。この際、第一被係合部11を、第二被係合部21よりも長くなるように設けても良く、短くなるように設けても良い。より好ましくは、第二被係合部21を、第一被係合部11よりも長く設けると共に橋軸方向Xに沿うように設け、第一被係合部11を橋軸直角方向Yに沿うように設ける。このような場合、橋桁2に取り付けられる第二変位制限部材20の第二被係合部21が長く設けられて、橋脚3に取り付けられる第一変位制限部材10の第一被係合部11が短く設けられることで、第一被係合部11の方を長く設けた場合よりも、橋脚3の第一ベース板13の橋軸方向幅を小さくすることが出来る。更に、第一被係合部11よりも長い第二被係合部21を橋軸方向Xに沿うように設けることで、主に橋軸直角方向に隣接するように配置される他の部材と干渉することを回避することが出来、省スペースで作業性も良い。
【0044】
また、変位制限装置30は、第一変位制限部材10を、第一ベース板13を介さずに、直接的に橋脚3に取り付けるようにしても良い。更に、変位制限装置30は、第二変位制限部材20を、第二ベース板23を介さずに、直接的に橋桁2に取り付けるようにしても良い。
【0045】
以上のように、本発明の変位制限装置30では、第一変位制限部材10及び第二変位制限部材20をそれぞれコ字状に形成して互いに抱き合せるように設けるという簡易な構造でありながら複数の方向の変位を制限することが出来る。
【0046】
また、本発明の変位制限装置30では、橋桁2橋脚3の橋軸方向Xの相対変位を制限するために第一係合部12と第二被係合部21とが係合する際、第一係合部12と第二被係合部21とが面接触する。更に、本発明の変位制限装置30では、橋桁2と橋脚3の橋軸直角方向Yの相対変位を制限するために第二係合部22と第一被係合部11とが係合する際、第二係合部22と第一被係合部11とが面接触する。従って、本発明の変位制限装置30では、従来の変位制限装置100のように、応力が集中することを防止することが出来る。
【0047】
また、本発明の変位制限装置30では、上述したように簡易な構造で構成されているので、従来の変位制限装置100よりも、小型化及び軽量化を図ることが出来る。
【0048】
[3.従来技術との比較の説明]
本発明の変位制限装置1,30では、
図10(A)及び
図10(B)に対比して示すように、従来の変位制限装置100の内向きのフランジ103aの底面と橋台102(下部ストッパ101の下部ベース板)の上面との間の隙間H分、従来の変位制限装置100よりも高さを低くすることが出来る。従って、本発明の変位制限装置1,30では、従来の変位制限装置100よりも、高さ方向において小型化を図ることが出来、全体として軽量化を図ることが出来る。
【0049】
また、
図10(A)に示すように、従来の変位制限装置100では、上部ストッパ103の内向きのフランジ103aで下部ストッパ101の外向きのフランジ101aを抱え込むように設けられているので、常時や所定レベルまでの地震時に橋桁2と橋脚3の相対変位が制限されないようにするための逃げ部である内向きのフランジ103aと下部ストッパ101との間の隙間W1、高さ方向の相対変位を制限するための外向きのフランジ101aと内向きのフランジ103aとの間の重複部W2、外向きのフランジ101aと上部ストッパ103とが接触しないようにするための逃げ部である外向きのフランジ101aと上部ストッパ103の間の隙間W3とを平面的に設ける必要がある。これに対して、本発明の変位制限装置1,30では、
図10(B)に示すように、平面的には、第一変位制限部材10と第二変位制限部材20との間に、常時や所定レベルまでの地震時に橋桁2と橋脚3の相対変位が制限されないようにするための逃げ部である隙間W4(変位制限装置100でいう隙間W1)だけを設ければ良い。従って、本発明の変位制限装置1,30では、従来の変位制限装置100よりも、平面的に小型化を図ることが出来、全体として軽量化を図ることが出来る。
【0050】
[4.変位制限装置の第一の変形例の説明]
次に、第一及び第二の実施の形態の変位制限装置1,30の第一の変形例について説明する。なお、上述した変位制限装置1,30と同一の機能を有するものについては、同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0051】
具体的には、
図6に示すように、第一変位制限部材10の第二変位制限部材20と対向する対向面及び/又は第二変位制限部材20の第一変位制限部材10と対向する対向面に、緩衝部40が設けられている。緩衝部40は、例えば、第一変位制限部材10の第一係合部12,12の第二被係合部21と対向する対向面12a,12aと、第二変位制限部材20の第二係合部22,22の第一被係合部11と対向する対向面22a,22aとに、一体に設けられている。
【0052】
緩衝部40は、例えば、
図7に示すように、一対の片で構成されている。この一対の片は、例えば、対向面12a,22aから離間するに従って次第に先端部間が近接するC字状に設けられており、可撓性及び/又は弾性を有する。このような緩衝部40は、第一変位制限部材10又は第二変位制限部材20が所定値以上の力で当接されると、対向面12a,22a側に変形して、当接の際の衝撃を吸収する。
【0053】
更に、緩衝部40は、橋桁2と橋脚3との間に設置された複数個の変位制限装置1,30の設置誤差等を吸収し、特定の変位制限装置1,30に集中的に衝撃等が加えられることを防止する。つまり、変位制限装置1,30自体が壊れる前に緩衝部40が変形しながら剛性が低下し、この際の変形量が、複数設置された変位制限装置1,30同士の個々の設置位置の誤差と、個々の変位制限装置が降伏し得る変形量とを合わせたものよりも大きく設定されることによって、入力を受けているいずれかの変位制限装置が損壊する前に、他の変位制限装置にも衝撃等の荷重を分配出来、特定の変位制限装置のみが先に損壊することがないように構成されている。
【0054】
なお、緩衝部40は、
図8(A)に示すように、一対の片が対向面12a,22aから離間するに従って次第に先端部間が離間するK字状に設けるようにしても良い。また、緩衝部40は、
図8(B)に示すように、貫通孔41を有する環状(D字状)に設けるようにしても良い。更に、緩衝部40は、
図8(C)に示すように、対向面12a,22aの幅方向及び/又は高さ方向に複数個一体に設けるようにしても良い。これらのような緩衝部40であっても、緩衝部40が変形することで、衝撃を吸収し、誤差を吸収することが出来る。
【0055】
また、緩衝部40は、
図8(D)及び
図8(E)に示すように、第一変位制限部材10及び第二変位制限部材20とは別体に設けるようにしても良い。例えば、緩衝部40は、
図8(D)に示すように、板部材を波状に設け、ボルト等の締結部材、溶接、接着剤等で、対向面12a,22aに取り付けるようにしても良い。更に、
図8(E)に示すように、別体に設けた緩衝部40と対向面12a,22aとの間に、ウレタンフォームや低降伏点鋼等で構成される充填部材42を設けるようにしても良い。
【0056】
また、緩衝部40は、
図8(F)に示すように、対向面12a,22aに設けられた一対の突出部43,43間に充填された低降伏点部材44と、低降伏点部材44に一体に設けられた当接部材45とで構成されるようにしても良い。このような緩衝部40であっても、第一変位制限部材10又は第二変位制限部材20が当接部材45に当接されると、低降伏点部材44が降伏することで、衝撃を吸収し、誤差を吸収することが出来る。更に、緩衝部40は、
図8(G)に示すように、対向面12a,22aに設けられた突部46と、低降伏点部材47を介して突部46に一体に設けられた当接部材48とで構成されるようにしても良い。このような緩衝部40であっても、第一変位制限部材10又は第二変位制限部材20が当接部材48に当接されると、低降伏点部材47が降伏することで、衝撃を吸収し、誤差を吸収することが出来る。
【0057】
また、緩衝部40は、別体に設けた場合においても、対向面12a,22aの幅方向及び/又は高さ方向に複数個取り付けるようにしても良い。
【0058】
また、緩衝部40は、
図8(H)に示すように、低降伏点部材49だけで構成されるようにしても良い。低降伏点部材49は、対向面12a、22aの全面又は一部に設けられるようにする。このような緩衝部40であっても、第一変位制限部材10又は第二変位制限部材20が当接されると、低降伏点部材49が降伏することで、衝撃を吸収し、誤差を吸収することが出来る。ここで、緩衝部40の素材としては、低降伏点部材49に限るものではないが、緩衝部40の構成としては、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、内部に複数個の弾性変形促進孔50が形成されているようなものであっても良い。このような低降伏点部材49は、無孔体に比して、より広範囲に入力を分散させることが出来る。また、このとき、応力が加わる各部は、応力が分散された分だけ弾性変形量が小さくなり、座屈や降伏を回避することが出来る。従って、複数回に亘る衝撃が入力されても未降伏部が衝撃入力の都度、衝撃を緩衝することが出来るようになり、繰り返しの入力に対する緩衝性を得ることが可能となる。なお、低降伏点部材49を、上述した充填部材42や低降伏点部材44,47として用いるようにしても良い。更に、緩衝部40は、クロロプレンゴム等の合成ゴムだけで構成されるようにしても良い。また、合成ゴムを、上述した充填部材42や低降伏点部材44,47として用いるようにしても良い。
【0059】
また、緩衝部40は、対向面12a,22aに設けることに限定されるものではなく、対向面12a,22aに代えて、又は、加えて、第一変位制限部材10の第一被係合部11の第二係合部22と対向する対向面、第二変位制限部材20の第二被係合部21の第一係合部12と対向する対向面(
図11参照)、第一変位制限部材10の第一被係合部11の第二被係合部21と対向する対向面、第二変位制限部材20の第二被係合部21の第一被係合部11と対向する対向面等に設けるようにしても良い。更に、緩衝部40は、
図11(B)に示すように、これらの対向面に全面に亘って一又は複数個設けるようにしても良い。これにより、緩衝部40は、橋桁2と橋脚3が橋軸方向X又は橋軸直角方向Yに相対変位した場合であっても、衝撃を吸収し、誤差を吸収することが出来る。更に、緩衝部40は、これらの対向面の一部に一又は複数個設けるようにしても良い。
【0060】
[5.変位制限装置の第二の変形例の説明]
次に、変位制限装置1,30の第二の変形例である変位制限装置60について説明する。なお、上述した変位制限装置1,30と同一の機能を有するものについては、同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0061】
変位制限装置60は、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、第二変位制限部材20に、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が弱い低強度部70が設けられている。この低強度部70は、例えば、第二被係合部21に他の領域よりも断面積が小さくなるように設けられている。ここでは、低強度部70は、例えば、第二被係合部21の第一被係合部11と対向する両側面部の第二係合部22の近傍に溝状(切り欠き状)の凹部71が1又は複数個形成されることで、第二被係合部21の他の領域よりも断面積が小さくなるように設けられている。
【0062】
更に、低強度部70は、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けられている。具体的には、低強度部70は、第一変位制限部材10の第一被係合部11、第一係合部12及び第一ベース板13や、第二変位制限部材20の第二係合部22及び第二ベース板23や、第一変位制限部材10と第一ベース板13との接合強度(第一変位制限部材10と第一ベース板13とを締結するボルト及びナット、第一変位制限部材10と第一ベース板13との溶接強度)や、第一ベース板13と橋脚3の接合強度(第一ベース板13を橋脚3に締結するアンカボルト80、第一ベース板13と橋脚3の溶接強度)や、第二変位制限部材20と第二ベース板23との接合強度(第二変位制限部材20と第二ベース板23とを締結するボルト81a及びナット81b、第二変位制限部材20と第二ベース板23との溶接強度)や、第二ベース板23と橋桁2との接合強度(第二ベース板23を橋桁2に締結するボルト82a及びナット82b、第二ベース板23を橋桁2との溶接強度)よりも構造的強度が低くなるように設けられている。換言すると、変位制限装置1の他の構成部材は、低強度部70よりも、構造的強度が高くなるように設けられている。
【0063】
以上のような構成を有する変位制限装置60は、第二変位制限部材20に、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低い低強度部70が設けられている。従って、変位制限装置60は、例えば、ある特定の想定以下の外力(荷重)が付加された場合には低強度部70が破断しないが、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が付加された場合には低強度部70が破断する。従って、変位制限装置60は、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が付加された場合に、低強度部70が破断することによって、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに機能喪失することが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0064】
なお、凹部71は、第二変位制限部材20の第二被係合部21の側面の第二係合部22の近傍に形成されることに限定されるものではなく、第二被係合部21の側面の略中央部に形成されても良く、第二被係合部21の上面、下面及び側面の少なくとも一面に形成されていれば良く、全面に亘って形成されるようにしても良い。更に、凹部71は、V字やU字状や矩形状等、如何なる形状に形成されるようにしても良い。更に、凹部71は、溝(切り欠き)であることに限定されるものではなく、窪み等の穴や貫通孔等であっても良い。
【0065】
更に、低強度部70は、第二変位制限部材20の第二係合部22に凹部71を形成して、第二係合部22に設けられるようにしても良い。このような場合であっても、低強度部70は、第二係合部22の他の領域よりも断面積が小さくなるように設けられると共に、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けられることで、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が変位制限装置60に付加された場合に破断することによって、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに変位制限装置60を機能喪失させることが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0066】
更に、第二変位制限部材20の第二被係合部21や第二係合部22に凹部71を形成せずに、第二変位制限部材20と第二ベース板23との接合強度(第二変位制限部材20と第二ベース板23とを締結するボルト81a及びナット81b、第二変位制限部材20と第二ベース板23との溶接強度)を、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けて、第二変位制限部材20と第二ベース板23との接合部を、低強度部70とするようにしても良い。
【0067】
例えば、第二変位制限部材20と第二ベース板23とをボルト81a及びナット81bで締結する場合、低強度部70は、ボルト81aであり、ボルト81aの径を小さくしたり、ボルト81aの数を少なくして、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設ける。更に、第二変位制限部材20と第二ベース板23とを溶接する場合、低強度部70は、第二変位制限部材20と第二ベース板23との溶接箇所であり、溶接箇所を少なくしたり、溶接箇所にスリットを入れておく等して、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設ける。
【0068】
このような場合であっても、低強度部70は、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が変位制限装置60に付加された場合に破断することで、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに変位制限装置60を機能喪失させることが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0069】
更に、第二変位制限部材20の第二被係合部21や第二係合部22に凹部71を形成せずに、第二ベース板23と橋桁2との接合強度(第二ベース板23を橋桁2に締結するボルト82a及びナット82b、第二ベース板23と橋桁2との溶接強度)を、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けて、第二ベース板23と橋桁2との接合部を、低強度部70とするようにしても良い。
【0070】
例えば、第二ベース板23と橋桁2とをボルト82a及びナット82bで締結する場合、低強度部70は、ボルト82aであり、ボルト82aの径を小さくしたり、ボルト82aの数を少なくして、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設ける。更に、第二ベース板23と橋桁2とを溶接する場合、低強度部70は、第二ベース板23と橋桁2との溶接箇所であり、溶接箇所を少なくしたり、溶接箇所にスリットを入れておく等して、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設ける。
【0071】
このような場合であっても、低強度部70は、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が変位制限装置60に付加された場合に破断することで、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに変位制限装置60を機能喪失させることが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0072】
更に、低強度部70は、第二変位制限部材20に設けられることに限定されるものではなく、第一変位制限部材10に設けられるようにしても良い。このような場合、第二変位制限部材20に設けられる際と同様に、第一被係合部11や第一係合部12に凹部71が形成されて、断面積を小さくして、他の構成部材よりも構造的強度を低く設けるようにしても良い。更に、第一変位制限部材10と第一ベース板13との接合強度(第一変位制限部材10と第一ベース板13とを締結するボルト及びナット、第一変位制限部材10と第一ベース板13との溶接強度)を、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けるようにしても良い。更に、第一ベース板13と橋脚3との接合強度(第一ベース板13を橋脚3に締結するアンカボルト80、ボルト及びナット、第一ベース板13と橋脚3との溶接強度)を、変位制限装置60の他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けるようにしても良い。
【0073】
このような場合であっても、低強度部70は、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が変位制限装置60に付加された場合に破断することで、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに変位制限装置60を機能喪失させることが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0074】
更に、低強度部70は、第一の実施の形態の変位制限装置1のような、第一変位制限部材10の第一係合部12,12を第一ベース板13に一体に設け、第二変位制限部材20の第二係合部22,22を第二ベース板23に一体に設けるものに適用することに限定されるものではなく、第二の実施の形態の変位制限装置30のような、第一変位制限部材10の第一被係合部11を第一ベース板13に一体に設け、第二変位制限部材20の第二被係合部21を第二ベース板23に一体に設けるものにも適用することが出来る。
【0075】
このような第二の実施の形態の変位制限装置30に低強度部70を設ける場合は、第一の実施の形態の変位制限装置1に低強度部70を設ける場合と同様に、第一被係合部11や第一係合部12や第二被係合部21や第二係合部22に凹部71を形成して、断面積を小さくして、他の構成部材よりも構造的強度を低く設けるようにしても良い。
【0076】
更に、第一変位制限部材10と第一ベース板13との接合強度(第一変位制限部材10と第一ベース板13とを締結するボルト及びナット、第一変位制限部材10と第一ベース板13との溶接強度)や、第二変位制限部材20と第二ベース板23との接合強度(第二変位制限部材20と第二ベース板23とを締結するボルト81a及びナット81b、第二変位制限部材20と第二ベース板23との溶接強度)を、他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けるようにしても良い。
【0077】
更に、第一ベース板13を橋脚3との接合強度(第一ベース板13を橋脚3に締結するアンカボルト80、ボルト及びナット、第一ベース板13と橋脚3との溶接強度)や、第二ベース板23を橋桁2との接合強度(第二ベース板23を橋桁2に締結するボルト82a及びナット82b、第二ベース板23と橋桁2との溶接強度)を、他の構成部材よりも構造的強度が低くなるように設けるようにしても良い。
【0078】
このような何れの場合であっても、低強度部70は、ある特定の想定を超えた外力(荷重)が変位制限装置60に付加された場合に破断することで、橋桁2及び橋脚3に損傷を与えることなく、速やかに変位制限装置60を機能喪失させることが出来、想定を超えた地震時の橋梁全体の耐久性を維持することが出来る。
【0079】
更に、変位制限装置60は、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、低強度部70が設けられることに加え、変位制限装置1,30と同様に、第一変位制限部材10の第二変位制限部材20と対向する対向面及び/又は第二変位制限部材20の第一変位制限部材10と対向する対向面に、緩衝部40が設けられるようにしても良い。
【0080】
更に、変位制限装置60は、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、低強度部70が設けられることに加え、変位制限装置1,30と同様に、第一被係合部11の長さと第二被係合部21の長さとが異なるように設けても良い。この際、第一被係合部11を、第二被係合部21よりも長くなるように設けても良く、短くなるように設けても良い。より好ましくは、第二被係合部21を、第一被係合部11よりも長く設けると共に橋軸方向Xに沿うように設け、第一被係合部11を橋軸直角方向Yに沿うように設ける。このような場合、橋桁2に取り付けられる第二変位制限部材20の第二被係合部21が長く設けられて、橋脚3に取り付けられる第一変位制限部材10の第一被係合部11が短く設けられることで、第一被係合部11の方を長く設けた場合よりも、橋脚3の第一ベース板13の橋軸方向幅を小さくすることが出来る。更に、第一被係合部11よりも長い第二被係合部21を橋軸方向Xに沿うように設けることで、主に橋軸直角方向に隣接するように配置される他の部材と干渉することを回避することが出来、省スペースで作業性も良い。