特許第6162468号(P6162468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162468石炭ガス化システム及び石炭ガス化発電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162468
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】石炭ガス化システム及び石炭ガス化発電システム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20170703BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 3/28 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 6/00 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 6/18 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 7/143 20060101ALI20170703BHJP
   F02C 7/141 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C10J3/46 L
   C10J3/46 J
   F23K1/04
   F02C3/28
   F02C6/00 E
   F02C7/22 D
   F02C6/18 Z
   F02C7/143
   F02C7/141
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-93942(P2013-93942)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-214257(P2014-214257A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】木曽 文彦
(72)【発明者】
【氏名】石賀 琢也
(72)【発明者】
【氏名】流森 文彦
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−053809(JP,A)
【文献】 特開2012−233073(JP,A)
【文献】 特開2011−214562(JP,A)
【文献】 特開2011−103213(JP,A)
【文献】 特開2012−202607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 1/00− 3/86、
F02C 1/00− 9/58、
F23K 1/00− 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をガス化した生成ガスを燃料として供給し、この生成ガスを燃焼して発生した燃焼排ガスで乾燥して石炭中の水分を気体の状態で前記燃焼排ガスに含有させる乾燥機と、
前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を供給して前記石炭を酸化剤と反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、
ガス化炉の下流側に設置され、前記ガス化炉から供給された生成ガス中の微粒子を除去する脱塵装置と、
前記乾燥機の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする凝縮熱交換器と、
前記凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する水回収と、
前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉又はガス炉の下流側、かつ、脱塵装置の上流側に供給するように配設された水供給系統と、
前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を備えたことを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項2】
請求項1に記載された石炭ガス化システムにおいて、
前記ガス化炉の下流側で、且つ、前記脱塵装置の上流側に該ガス化炉から供給された生成ガスを冷却する冷却塔が設置されており、
前記凝縮熱交換器で昇温した水を該ガス化炉の下流側に設置した冷却塔に供給するように前記水供給系統が配設されていることを特徴とする石炭ガス化システム。
【請求項3】
石炭を乾燥する乾燥機と、前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉の下流側に設置され、該ガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備と、前記シフト反応設備の下流側に設置され、シフト反応後の生成ガスから硫黄化合物等を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製した生成ガスを燃料として燃焼して発電するガスタービン装置を備えた石炭ガス化発電システムにおいて、
前記乾燥機は、ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを供給して該乾燥機内の石炭を乾燥させて石炭中の水分を燃焼排ガスに含有させると共に、乾燥した石炭を酸化剤と反応させてガス化する前記ガス化炉に供給するように構成し、
前記乾燥機の下流側に該乾燥機から排出された燃焼排ガスに含まれる微粒子を除去する脱塵装置を設置し、
前記脱塵装置の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする凝縮熱交換器を設置し、
前記凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する水回収を設置し、
前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉の下流側に位置する機器に供給するように配設された水供給系統を設置し、
前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記水供給系統から分岐して、前記ガスタービン装置のガスタービン圧縮機で加圧されてガスタービン燃焼器に供給する空気を加湿する増湿器に供給するように別の水供給系統を配設し、
前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を設置したことを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載された石炭ガス化発電システムにおいて、
前記凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉の下流側に設置された機器であるガス炉の熱回収部又は該ガス化炉で生成した生成ガスを冷却する冷却塔に供給するように前記水供給系統が配設されていることを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【請求項5】
石炭を乾燥する乾燥機と、前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉の下流側に設置され、該ガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備と、前記シフト反応設備の下流側に設置され、シフト反応後の生成ガスから硫黄化合物等を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製した生成ガスを燃料として燃焼して発電するガスタービン装置を備えた石炭ガス化発電システムにおいて、
前記乾燥機は、ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを供給して該乾燥機内の石炭を乾燥させて石炭中の水分を燃焼排ガスに含有させると共に、乾燥した石炭を酸化剤と反応させてガス化する前記ガス化炉に供給するように構成し、
前記乾燥機の下流側に該乾燥機から排出された燃焼排ガスに含まれる微粒子を除去する脱塵装置を設置し、
前記脱塵装置の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする第1の凝縮熱交換器を設置し、
前記第1の凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記第1の凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該第1の凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する第1の水回収を設置し、
前記第1の水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記第1の凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この第1の凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉の下流側に設置されてガス化炉で生成した生成ガスを冷却する冷却塔に供給するように第1の水供給系統を配設し、
ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを前記乾燥機の上流側で分岐して導き、この分岐して導いた燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする第2の凝縮熱交換器を設置し、
前記第2の凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記第2の凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスから水を回収する第2の水回収を設置し、
前記第2の水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記第2の凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この第2の凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガスタービン装置のガスタービン圧縮機で加圧されてガスタービン燃焼器に供給する空気を加湿する増湿器に供給する第2の水供給系統を配設し、
前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を設置したことを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【請求項6】
請求項5に記載された石炭ガス化発電システムにおいて、
前記乾燥機は複数台を並列に配置させて、これらの複数台の乾燥機にガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを供給して該乾燥機内の石炭を乾燥させて石炭中の水分を燃焼排ガスに含有させると共に、乾燥した石炭を酸化剤と反応させてガス化する前記ガス化炉に供給するように構成し、
前記並列に配置された複数台の乾燥機の下流側に該乾燥機から排出された燃焼排ガスに含まれる微粒子を除去する前記脱塵装置を設置したことを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載された石炭ガス化発電システムにおいて、
ガス化炉に供給する石炭の供給量と酸化剤の供給量からガス化炉で生成する生成ガスの流量及びガスの組成を計算し、計算した生成ガスの流量及びガスの組成に基づいて、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要なシフト反応器の入口側の水蒸気/一酸化炭素比を演算すると共に、この水蒸気/一酸化炭素比の演算値を得るために必要な水の供給量を演算する制御装置を設置し、
前記制御装置によって演算した水の供給量に基づいて前記水回収塔から前記ガス化炉の熱回収部、または前記ガス化炉の下流側の冷却塔に供給する水の供給量を調節するようにしたことを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【請求項8】
請求項7に記載された石炭ガス化発電システムにおいて、
前記制御装置は、ガス化炉下流に設置された前記脱塵装置の入口側に設置した生成ガスの温度計に基づいて生成ガスの温度が規定値以下になるように前記ガス化炉の熱回収部、または前記ガス化炉の下流側の冷却塔に供給する水の供給量を演算することを特徴とする石炭ガス化発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭をガス化して一酸化炭素と水素を主成分とするガスを得る石炭ガス化システム、及び石炭をガス化した生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する石炭ガス化発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は古代の植物などが、地中で炭化して出来たものであり、炭化の度合い(固定炭素量)や揮発分量などによって分類されている。
【0003】
現在、石炭火力発電に使用されている石炭の多くは、瀝青炭に分類されるものである。石炭が含む水分は、同じ瀝青炭でも産地によって異なるが、10wt%以下のものが大部分である。
【0004】
瀝青炭より炭化度が低い炭種は褐炭と呼ばれている。褐炭は、瀝青炭より水分含有量が多く、炭種によっては50%程度含有するものもある。
【0005】
石炭を燃料に用いた発電プラントで高効率発電を行うためには、ミルを用いて石炭を微粉砕する必要があるが、水分を多く含む石炭は乾燥しなければミルで粉砕することができない。
【0006】
褐炭などの水分を多く含む石炭を乾燥した上で発電プラントの燃料に使用する場合に、石炭の乾燥に伴う熱損失により発電プラントの発電効率が低下するため、褐炭は瀝青炭より埋蔵量が多く低価格でも、石炭発電プラント用燃料としての適用は少なかった。
【0007】
そこで、褐炭などの水分を多く含む石炭を燃料とする石炭火力発電プラントに対して、発電効率を向上するための各種工夫が提案されている。
【0008】
特開2011−214814号公報(特許文献1)に記載された技術は、水分を多く含む石炭を流動層乾燥装置で乾燥する方法が示されている。流動層は水蒸気で流動化され、流動層には伝熱管を介して石炭を乾燥するための熱が供給される。
【0009】
前記特許文献1に記載された技術では、200℃程度の水蒸気を流動媒体として供給する場合でも、伝熱管を介した熱供給が必要なのは、石炭中の水分を気化させるために必要な熱量が大きいためであり、伝熱管を介した熱供給がないと、流動媒体として供給した水蒸気の温度が低下し、水分が凝縮するからである。
【0010】
前記特許文献1では、流動層乾燥装置で石炭中の水分を水蒸気にすることができるので、流動化に用いた水蒸気とともに流動層乾燥装置から排出して蒸気タービンに供給し、乾燥に用いた熱の一部を電力として回収することが可能になる。なお、流動層から排出される水蒸気は石炭の微粒子を含むので、蒸気タービンに供給する前に脱塵が必要である。
【0011】
特開2010−106722号公報(特許文献2)に記載された技術は、石炭ガス化複合発電で水分を多く含む石炭を燃料として高効率発電する方法を示すものである。
【0012】
石炭ガス化複合発電は、石炭をガス化し、得られた一酸化炭素と水素を含む生成ガスを、ガスタービンと蒸気タービンから構成されるコンバインドサイクル発電の燃料とする。
【0013】
現在広く普及している石炭火力発電は、石炭をボイラで完全燃焼し、燃焼熱を水蒸気として回収し、この水蒸気で蒸気タービンを駆動して発電する石炭ボイラ発電であるが、石炭ガス化複合発電は、ガス化炉で石炭から発生させた生成ガスを燃料としてガスタービンに供給して、ガスタービン入口における生成ガスの燃焼温度を高めることで、石炭ボイラ発電より高効率化が可能とされている。
【0014】
前記特許文献2に記載された技術では、ガスタービン出口の排ガスの顕熱を、排熱回収ボイラで水蒸気として回収した後に、水分を多く含む石炭の乾燥に用いる。
【0015】
排熱回収ボイラで排熱回収をした後の排ガスの温度は約100℃で、従来の火力発電所では有効活用されていなかったものであり、この排ガスのみで石炭を乾燥することができれば発電効率を向上することができる。
【0016】
しかしながら、この排熱回収をした後の排ガスが保有する熱量だけでは石炭を乾燥する熱量が不足するため、排熱回収前のガスタービン排ガスも使用する必要があるとされており、発電効率の向上効果は限定的である。
【0017】
石炭をガス化して得られた生成ガスは、発電だけでなく、メタノール、合成軽油、ジメチルエーテルなどの合成の原料となる。
【0018】
それぞれの合成プロセスにより、適する生成ガス中の水素/一酸化炭素比が異なるため、生成ガスに含まれた一酸化炭素と水蒸気を反応させて、二酸化炭素と水素に変換するシフト反応を進めるシフト反応器を設置し、生成ガス中の水素/一酸化炭素比を調整することが広く行われている。
【0019】
このシフト反応には触媒が必要であり、前記シフト反応器にはシフト反応触媒が充填されている。シフト反応触媒の性能にもよるが、シフト反応を進めるためには生成ガス中の一酸化炭素の1.2〜2倍の水蒸気が必要であり、工業用水を加熱して水蒸気を製造する必要がある。
【0020】
また、石炭をガス化して得られた生成ガスを燃料として燃焼させてガスタービンの発電に使用する場合でも、二酸化炭素排出量を削減して地球温暖化を防止するために、生成ガスをガスタービンで燃焼する前に、シフト反応により一酸化炭素と水蒸気を二酸化炭素と水素に変換し、前記変換した二酸化炭素を除去した上で、前記水素を含んだ生成ガスをガスタービンに燃料として供給して燃焼する必要がある。
【0021】
石炭をガス化して得られた生成ガスに含まれる二酸化炭素の回収率を90%以上にするためには、石炭の種類にもよるが、シフト反応に用いる水蒸気を供給するために石炭の重量と同レベルの工業用水が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2011−214814号公報
【特許文献2】特開2010−106722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
石炭をガス化して得られた生成ガスの水素/一酸化炭素比を調整するためには、生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素に変換するシフト反応が必要であり、シフト反応に必要な水蒸気を得るためには多量の工業用水が必要になるという課題がある。
【0024】
前記特開2011−214814号公報に開示された技術では、石炭の乾燥に用いた熱を蒸気タービンで回収している。ところが、この技術では、石炭から放出される水分を蒸発させて過熱状態とするための熱を外部から供給する必要がある。
【0025】
石炭を乾燥する流動層乾燥装置出口の蒸気温度は高くても200℃程度であり、この蒸気を蒸気タービンに供給しても前記蒸気タービンによる電力への変換効率は低いので、熱損失が大きくなるという課題がある。
【0026】
また前記特開2010−106722号公報に開示された技術では、使われていなかった排熱回収後のガスタービン排ガスを石炭の乾燥に用いることによる発電効率向上効果はある程度あるが、排熱回収後の排ガスだけでは石炭の乾燥に必要な熱量が賄えないために、熱回収前のガスタービン排ガスを加える必要がある。
【0027】
しかしながら、この技術では、石炭を乾燥させた後の排ガスを大気に放出するので、乾燥に用いた熱を回収することができず、発電効率向上効果は限定的とならざるを得ない。さらに、石炭が含む水分も大気に放散されて有効活用されないので、石炭乾燥後の排ガスからの熱回収と、水分回収が課題となっていた。
【0028】
本発明の目的は、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化システム及び石炭ガス化発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の石炭ガス化システムは、石炭をガス化した生成ガスを燃料として供給し、この生成ガスを燃焼して発生した燃焼排ガスで乾燥して石炭中の水分を気体の状態で前記燃焼排ガスに含有させる乾燥機と、前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を供給して前記石炭を酸化剤と反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、ガス化炉の下流側に設置され、前記ガス化炉から供給された生成ガス中の微粒子を除去する脱塵装置と、前記乾燥機の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする凝縮熱交換器と、前記凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する水回収と、前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉又はガス化炉の下流側、かつ、脱塵装置の上流側に供給するように配設された水供給系統と、前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の石炭ガス化発電システムは、石炭を乾燥する乾燥機と、前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉の下流側に設置され、該ガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備と、前記シフト反応設備の下流側に設置され、シフト反応後の生成ガスから硫黄化合物等を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製した生成ガスを燃料として燃焼して発電するガスタービン装置を備えた石炭ガス化発電システムにおいて、前記乾燥機は、ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを供給して該乾燥機内の石炭を乾燥させて石炭中の水分を燃焼排ガスに含有させると共に、乾燥した石炭を酸化剤と反応させてガス化する前記ガス化炉に供給するように構成し、前記乾燥機の下流側に該乾燥機から排出された燃焼排ガスに含まれる微粒子を除去する脱塵装置を設置し、前記脱塵装置の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする凝縮熱交換器を設置し、前記凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する水回収を設置し、前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉の下流側に位置する機器に供給するように水供給系統を配設し、前記水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記水供給系統から分岐して、前記ガスタービン装置のガスタービン圧縮機で加圧されてガスタービン燃焼器に供給する空気を加湿する増湿器に供給するように別の水供給系統を配設し、前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を設置したことを特徴とする。
【0031】
また、本発明の石炭ガス化発電システムは、石炭を乾燥する乾燥機と、前記乾燥機で乾燥させた石炭と酸化剤を反応させてガス化した生成ガスを生成するガス化炉と、前記ガス化炉の下流側に設置され、該ガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備と、前記シフト反応設備の下流側に設置され、シフト反応後の生成ガスから硫黄化合物等を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製した生成ガスを燃料として燃焼して発電するガスタービン装置を備えた石炭ガス化発電システムにおいて、
前記乾燥機は、ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを供給して該乾燥機内の石炭を乾燥させて石炭中の水分を燃焼排ガスに含有させると共に、乾燥した石炭を酸化剤と反応させてガス化する前記ガス化炉に供給するように構成し、前記乾燥機の下流側に該乾燥機から排出された燃焼排ガスに含まれる微粒子を除去する脱塵装置を設置し、前記脱塵装置の下流側に設置され、前記乾燥機で石炭を乾燥させた後の燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする第1の凝縮熱交換器を設置し、前記第1の凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記第1の凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスと該第1の凝縮熱交換器で凝縮した水を導いて前記燃焼排ガスから水を回収する第1の水回収を設置し、前記第1の水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記第1の凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この第1の凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガス化炉の下流側に設置されてガス化炉で生成した生成ガスを冷却する冷却塔に供給するように第1の水供給系統を配設し、ガスタービン装置のガスタービンから排出した燃焼排ガスを前記乾燥機の上流側で分岐して導き、この分岐して導いた燃焼排ガスを冷却して該燃焼排ガスに含まれた水分を液体にする第2の凝縮熱交換器を設置し、前記第2の凝縮熱交換器の下流側に設置され、前記第2の凝縮熱交換器を経た燃焼排ガスから水を回収する第2の水回収を設置し、前記第2の水回収で燃焼排ガスから回収した水を前記第2の凝縮熱交換器に導いて燃焼排ガスと間接熱交換させて昇温させると共に、この第2の凝縮熱交換器で昇温した水を前記ガスタービン装置のガスタービン圧縮機で加圧されてガスタービン燃焼器に供給する空気を加湿する増湿器に供給するように第2の水供給系統を配設し、前記脱塵装置の下流側に設置され、該脱塵装置で微粒子を除去した生成ガスと水蒸気を導いてこの生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素に転換するシフト反応設備を設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化システム及び石炭ガス化システムを備えた石炭ガス化発電システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】水分を多く含む石炭をガス化するガス化システムであって、石炭から回収した水分をガス化炉に供給する構成を有する本発明の第1実施例である石炭のガス化システムを示す概略構成図。
図2】水分を多く含む石炭をガス化するガス化システムであって、石炭から回収した水分をガス化炉下流の冷却塔に供給する構成を有する本発明の第2実施例である石炭のガス化システムを示す概略構成図。
図3】水分を多く含む石炭をガス化した生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する本発明の第3実施例である石炭ガス化発電システムを示す概略構成図。
図4】水分を多く含む石炭をガス化した生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する石炭ガス化発電システムであって、石炭から回収した水分をガス化炉下流の冷却塔に供給する構成を有する本発明の第4実施例である石炭ガス化発電システムを示す概略構成図。
図5】水分を多く含む石炭をガス化した生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する石炭ガス化発電システムであって、ガスタービン排ガスから水分を液体として回収する系統を、石炭を乾燥した後に凝縮熱交に導く系統と、別の凝縮熱交に導く系統の2系統の構成を有する本発明の第5実施例である石炭ガス化発電システムを示す概略構成図。
図6】水分を多く含む石炭をガス化した生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する石炭ガス化発電システムであって、石炭の乾燥機を2機以上設置する構成を有する本発明の第6実施例である石炭ガス化発電システムを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施例である石炭ガス化システム及び石炭ガス化発電システムについて、図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0035】
本発明の第1実施例である石炭ガス化システムについて図1を用いて説明する。
【0036】
図1に示した本実施例の石炭ガス化システムにおいて、燃料となる水分を含む石炭1は、ガスタービン(図示せず)などから排出された燃焼排ガス14に直接接触させる方式の乾燥機40によって乾燥する。
【0037】
乾燥機40で乾燥した石炭1は、この乾燥機40の下流側に設置されたガス化炉50に供給され、この石炭1と外部から該ガス化炉50に供給した酸素などの酸化剤2と反応させて、前記ガス化炉50で一酸化炭素と水素を主成分とする生成ガス20を生成する。
【0038】
ここで、前記ガス化炉50には、乾燥機40に供給した燃焼排ガス14が石炭1を乾燥させた後に該乾燥機40の出口から排出される排ガス14aとなってガス化炉50に供給されるが、前記乾燥機40で回収した水分14dも乾燥機40から前記ガス化炉50に供給される。
【0039】
また、前記乾燥機40で石炭1を乾燥させ、この乾燥機40の出口から排出された排ガス14aには、石炭1に含まれた水分が水蒸気14cとなって含まれている。
【0040】
そこで、この水蒸気14cを含んだ前記排ガス14aを、前記乾燥機40の下流側に設置された凝縮熱交換器70に導いて冷却し排ガス14a中の水蒸気14cの一部を凝縮させ、凝縮熱交換器70の下流側に設置された水回収塔65に導いて回収する。
【0041】
さらに、前記凝縮熱交換器70で凝縮しなかった排ガス14a中の残りの水蒸気14cを排ガス14aと共に水回収塔65に導き、外部から供給した液体の水10を前記水回収塔65内に噴霧して排ガス14a中の残りの大部分の水蒸気14cを凝縮させ、この水回収塔65によって液体の水14bとして回収する。
【0042】
前記水回収塔65で排ガス14aから回収された水14bは、この水回収塔65から凝縮熱交換器70に供給されて排ガス14aとの間接的な熱交換によって昇温し、この凝縮熱交換器70を経由して水供給系統15を通じて前記ガス化炉50に供給されるが、前記ガス化炉50で生成した生成ガス20の顕熱によって加熱されて水蒸気になる。
【0043】
そして、この水蒸気を含んだ生成ガス20は、前記ガス化炉50の下流側に設置された脱塵装置53に供給され、前記脱塵装置53にて生成ガス20中に含まれる未反応石炭粒子などを除去して清浄化した生成ガス20となって該脱塵装置53の下流側に設置されたシフト反応器55に供給される。
【0044】
このシフト反応器55では、生成ガス20中の一酸化炭素と水蒸気12をシフト反応(HO+CO→CO+H)させて、二酸化炭素と水素とに変換させる。
【0045】
ここで、生成ガス20中の水蒸気/一酸化炭素比が、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要な値よりも小さい場合には、前記シフト反応器55の入口側で水蒸気12を生成ガス20中に供給して、生成ガス20中の水蒸気/一酸化炭素比が目標値に達するようにしている。
【0046】
水分の多い石炭を燃料として発電する石炭ガス化システムでは石炭を乾燥させるための熱損失が大きかったが、本実施例の石炭ガス化システムによれば、石炭乾燥に用いた熱をガス化炉あるいは冷却塔出口の生成ガスの顕熱として回収することが可能である。
【0047】
また、石炭ガス化システムで生成ガス中の水素/一酸化炭素比を調整する場合では、生成ガスをシフト反応させるために、シフト反応触媒の性能にもよるが、石炭中の炭素の質量と同レベルの多量の工業用水が必要であったが、本実施例の石炭ガス化システムによれば、石炭が保有する水分を生成ガスに与えることができるため、工業用水が不要となり、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0048】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例2】
【0049】
次に本発明の第2実施例である石炭ガス化システムについて、図2を用いて説明する。
【0050】
図2に示された本実施例の石炭ガス化システムは、図1に示した第1実施例の石炭ガス化システムと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0051】
図1に示した第1実施例の石炭ガス化システムでは、燃焼排ガスから回収した液体の水はガス化炉50に供給したが、図2に示した本実施例の石炭ガス化システムでは、ガス化炉50の下流側で、且つ、脱塵装置53の上流側となる位置に冷却塔52を設置し、この冷却塔52に前記ガス化炉50で生成した生成ガス20を供給して、前記冷却塔52によって生成ガス20を冷却するように構成している。
【0052】
本実施例の石炭ガス化システムでは、前記水回収塔65で排ガス14aから回収された水14bは、この水回収塔65から凝縮熱交換器70に供給されて排ガス14aとの間接的な熱交換によって昇温し、この凝縮熱交換器70を経由して水供給系統17を通じて前記ガス化炉50の下流側にある冷却塔52に供給され、この冷却塔52にて前記ガス化炉50から供給される生成ガス20を冷却する構成となっている。
【0053】
そして前記冷却塔52によって冷却した生成ガス20を脱塵装置53に供給し、この脱塵装置53にて前記ガス化炉50から冷却塔52を経由して供給される生成ガス20に含まれる未反応石炭粒子などを除去して清浄化して、この清浄化した生成ガス20を該脱塵装置53の下流側に設置されたシフト反応器55に供給する。
【0054】
そして、水蒸気12も外部から前記シフト反応器55に供給するように構成している。
【0055】
前記水回収塔65から水供給系統17を通じて凝縮熱交換器70を経由して冷却塔52に供給された液体の水14bは、第1実施例の石炭ガス化システムである水回収塔65から水供給系統15を通じて凝縮熱交換器70を経由してガス化炉50に供給した液体の水14bの場合と同様に、生成ガス20の顕熱によって前記冷却塔52にて水蒸気となる。
【0056】
水分の多い石炭を燃料として発電する石炭ガス化システムでは石炭を乾燥させるための熱損失が大きかったが、本実施例の石炭ガス化システムによれば、石炭乾燥に用いた熱をガス化炉あるいは冷却塔出口の生成ガスの顕熱として回収することが可能である。
【0057】
また、石炭ガス化システムで生成ガス中の水素/一酸化炭素比を調整する場合では、生成ガスをシフト反応させるために、シフト反応触媒の性能にもよるが、石炭中の炭素の質量と同レベルの多量の工業用水が必要であったが、本実施例の石炭ガス化システムによれば、石炭が保有する水分を生成ガスに与えることができるため、工業用水が不要となり、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0058】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化システムが実現できる。
【実施例3】
【0059】
次に本発明の第3実施例である石炭ガス化発電システムについて図3を用いて説明する。
【0060】
図3に示された本実施例の石炭ガス化発電システムにおいて、燃料となる水分を含む石炭1は、ガスタービン装置を構成するガスタービン62から排出した燃焼排ガス14と直接接触させる方式の乾燥機40に供給して乾燥させる。
【0061】
前記乾燥機40でガスタービン62から排出した燃焼排ガス14と直接接触して乾燥した石炭1は、図示していない粉砕機によって微粉砕された後に、石炭搬送ガス3である窒素Nにより搬送してガス化炉50に供給される。
【0062】
前記ガス化炉50では、供給された石炭1を、外部から該ガス化炉50に供給した酸素などの酸化剤2と反応させてガス化し、一酸化炭素と水素を主成分とする生成ガス20を生成する。
【0063】
ここで、前記ガス化炉50は高温で運転されており、石炭1が含む灰分は溶融スラグ5としてガス化炉50から外部に排出される。
【0064】
前記乾燥機40で石炭1の乾燥に使用された燃焼排ガス14は、この乾燥機40の出口から排ガス14aとして乾燥機40の下流側に排出されるが、前記乾燥機40で排ガス14から回収した水分14dが石炭搬送ガス3の窒素Nと共にガス化炉50に供給される。
【0065】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、乾燥機40の下流側に燃焼排ガス14aから水を回収する水回収塔65が設置されており、乾燥機40の出口から排出された燃焼排ガス14aに含まれた水蒸気14cを乾燥機40の下流側に設置した凝縮熱交換器70で冷却して前記水回収塔65に導くと共に、前記水回収塔65に外部から供給した液体の水10を噴霧して排ガス14a中の残りの大部分の水蒸気14cを凝縮させ、この水回収塔65によって液体の水14bとして回収する。
【0066】
水回収塔65に外部から水10を供給する前記水回収塔65への水10の供給水量は、水回収塔65の水面レベルをレベル計91で計測し、このレベル計91で計測した計測値に基づいて水回収塔65に水10を供給する流量調整弁81の開閉を操作して調節している。この水回収塔65で発生したなガスは煙突66から大気中に排出している。
【0067】
本実施例の石炭ガス化発電システムにおいては、前記水回収塔65によって燃焼排ガス20aに含まれた水14bを回収し、水回収塔65から水供給系統15を通じて水14bをガス化炉50の熱回収部51に供給しているが、前記水回収塔65から水供給系統15を通じて供給される水14bは、ガス化炉50の反応部の下流側に位置して前記ガス化炉50と一体に設けられた熱回収部51に複数段に分けて噴霧して供給しており、前記熱回収部51にてガス化炉50内で生成された生成ガス20と数段に分けて噴霧した水14bを直接接触させるものである。
【0068】
本実施例の石炭ガス化発電システムに備えられた石炭ガス化システムには、図1に示した第1実施例と同じ基本構成の石炭ガス化システムが採用されている。
【0069】
水回収塔65から水供給系統15を通じてガス化炉50の熱回収部51に供給する水14bの供給量は、前記ガス化炉50及び脱塵装置53の下流側に設置したシフト反応器55において、生成ガス20中の水蒸気/一酸化炭素比が、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要な範囲となるように前記ガス化炉50の熱回収部51に供給する水14bの供給量を調整する。
【0070】
すなわち、ガス化炉50への石炭供給量及び酸素供給量、シフト反応器55に充填したシフト反応触媒の性能、目標とする一酸化炭素転化率などのプラント情報・運転目標87を制御装置86に入力し、制御装置86でガス化炉50の出口ガスの流量及び水蒸気/一酸化炭素比、シフト反応器55の入口で必要な水蒸気濃度/一酸化炭素比をそれぞれ演算し、これらの演算値を用いて必要な水14bの供給量を求め、この水14bの供給量がガス化炉50の熱回収部51に供給できるように、制御装置86から出力した操作信号に基づいて水供給系統15に設置した流量調整弁80の開閉を制御して水回収65から水供給系統15を通じてガス化炉50の熱回収部51に供給する水14bの供給量を調節する。
【0071】
なお、ガス化炉50で生成した生成ガス20と、水14bとが直接接触させることにより、生成ガス20の温度は低下する。ガス化炉50の下流側に設置した脱塵装置53で水分の凝縮を防止するために、脱塵装置53の入口側の温度は規定値以上に保持する必要があるので、ガス化炉50の下流側に設置した脱塵装置53の入口側に温度計90を設置し、この温度計90で検出した脱塵装置53の入口側の生成ガス20の温度を前記制御装置86に入力し、この制御装置86による流量調整弁80の開閉を制御することで、温度計90で検出した脱塵装置53の入口側の生成ガス20の温度が規定温度を下回らない範囲を維持するように、水回収65で回収して該水回収65から水供給系統15を通じてガス化炉50の熱回収部51に供給する水14bの供給量を調整する。
【0072】
上記したようにガス化炉50の反応部の下流側に位置して前記ガス化炉50と一体に設けられた熱回収部51に複数段に分けて水14bを噴霧して生成ガス20中に供給することで、ガス化炉50内で生成された生成ガス20が局所的に低温になることを防止する。
【0073】
また、生成ガス20に局所的な低温部位を発生させないことで、噴霧した水14bを速やかに気化させ、生成ガス20中の未反応の石炭(チャー)が液体の水の介在により凝集することを防止する。
【0074】
水回収塔65から水供給系統15を通じてガス化炉50の下流側の熱回収部51に複数段に分けて供給された水14bは、生成ガス20の顕熱によって水蒸気になる。
【0075】
この水蒸気を含んだ生成ガス16は、ガス化炉50の下流側の熱回収部51から該熱回収部51の下流側に設置されたノックアウトドラム57に供給され、液体の状態で残存する水分を除去したのちに、該ノックアウトドラム57の下流側に設置された脱塵装置53に供給される。
【0076】
脱塵装置53では、生成ガス16中に含まれるチャー6と呼ばれる未反応石炭粒子などを回収して除去する。前記脱塵装置53から回収されたチャー6は、窒素4によってガス化炉50に搬送されるので、このように未反応石炭粒子をガス化炉50に戻すように構成することで、本実施例の石炭ガス化発電システムでは石炭の利用効率を向上することが可能となる。
【0077】
ここで、水回収塔65で回収された液体の水14bの一部は、上述のように水回収塔65から凝縮熱交換器70を経由して水供給系統15を通じてガス化炉50側の下流側の熱回収部51に供給するが、水回収塔65で回収された液体の水14bの残りは、ガスタービン圧縮機61で圧縮された空気を増湿するために、水回収塔65から凝縮熱交換器70に水14bを供給する前記水供給系統15の途中から分岐した水分岐系統15bを通じて前記水14bの一部を前記ガスタービン圧縮機61の下流側に設置した増湿塔64に供給している。
【0078】
そして前記増湿塔64に水14bを供給することによって増湿されたガスタービン圧縮機61で圧縮された空気は、ガスタービン62から排出した燃焼排ガス14と間接熱交換させるために、前記増湿塔64の下流側で、且つ、前記ガスタービン燃焼器60の上流側に位置する熱交換器74に導かれ、前記熱交換器74によって増湿された空気をガスタービン62から排出した燃焼排ガス14によって昇温した上でガスタービン燃焼器60に供給され、シフト反応器55でシフト反応した後の生成ガス13である燃料の水素と共に前記ガスタービン燃焼器60で燃焼され、高温の燃焼ガス14を発生してガスタービン62を駆動する。
【0079】
前記ガスタービン62はガスタービン圧縮機61及びガスタービン発電機63を駆動し、前記ガスタービン発電機63で発電する。
【0080】
前記脱塵装置53で脱塵した後の生成ガス16は、ノックアウトドラム57よりも下流の脱塵装置53の下流側に設置した水洗塔54に供給され、この水洗塔54に外部から供給した水8によって生成ガス16中のハロゲン等を洗浄して除去し、この浄化された生成ガス16は水洗塔54の下流側に設置した熱交換器71を経由して昇温した後に該水洗塔54の下流側に設置したシフト反応器55に供給される。
【0081】
ガス化炉50で生成した生成ガス16を脱塵装置53で脱塵させた後に水洗塔54に通ガスすることで生成ガス16の温度は低下するが、水洗塔54で洗浄した生成ガス16を前記熱交換器71に熱源として流下させ、前記水洗塔54に流入前である生成ガス16と前記熱交換器71にて間接熱交換させて昇温することで、生成ガス16の熱損失を低減している。
【0082】
前記水洗塔54で洗浄された生成ガス16は、熱交換器71で昇温された後に該水洗塔54の下流側に設置したシフト反応器55に供給され、このシフト反応器55によって生成ガス16中の一酸化炭素と水蒸気をシフト反応させて二酸化炭素と水素とに変換させる。
【0083】
そして前記シフト反応器55の入口における生成ガス16中の水蒸気/一酸化炭素比が、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要な値よりも小さい場合には、シフト反応器55の入口側で生成ガス16中に外部から供給する水蒸気12の供給量を増加させる。
【0084】
シフト反応器55によるシフト反応後の生成ガス13は、生成ガス13から硫黄化合物等を除去するガス精製設備を構成する吸収塔56に供給され、このシフト反応器55の下流側に設置した前記吸収塔56において、生成ガス13と、例えばメチルジエタノールアミンなどを主成分とする吸収液11を接触させて、生成ガス13に含まれている硫化水素などの硫黄化合物と、二酸化炭素を除去して、燃料となる水素を含んだ生成ガス13を生成する。
【0085】
前記シフト反応器55の出口の生成ガス13の温度が200〜300℃であるのに対し、吸収塔56の運転温度は約40℃であり、吸収塔56に生成ガス13を通ガスすることで前記生成ガス13の温度が低下することになる。
【0086】
そこで、前記シフト反応器55の出口の生成ガス13は、シフト反応器55の下流側で、且つ、吸収塔56の上流側に位置する熱交換器73によって吸収塔56の出口の生成ガス13と間接熱交換させて減温し、シフト反応器55の出口の生成ガス13の熱を、前記吸収塔56の出口の生成ガス13に与えることで、この生成ガス13の熱損失を防止している。
【0087】
なお、シフト反応器55の出口の生成ガス13の温度は、この熱交換器73を通過後も、吸収塔56の運転温度よりも高いので、熱交換器73により冷却した上で吸収塔56に通ガスするように構成している。
【0088】
吸収塔56で吸収液11によって生成ガス13に含まれた硫黄化合物を除去した水素を含んだ生成ガス13は、前記吸収塔56からシフト反応器55の下流側で、且つ、吸収塔56の上流側に位置する熱交換器72によって昇温されてガスタービン装置を構成するガスタービン燃焼器60に燃料として供給され、ガスタービン燃焼器60で燃焼して高温の燃焼排ガス14を発生してこの燃焼排ガス14によってガスタービン62を駆動する。
【0089】
前記ガスタービン62はガスタービン圧縮機61及びガスタービン発電機63を駆動し、前記ガスタービン発電機63で発電する。
【0090】
前記ガスタービン燃焼器60において、ガスタービン燃焼器60に供給される水素を含んだ燃料の生成ガス13を燃焼する空気26は、ガスタービン圧縮機61によって大気から取り込まれて加圧される。
【0091】
このガスタービン圧縮機61の入口側では液体の噴霧水9を空気26中に噴霧しており、ガスタービン圧縮機61によって空気26を圧縮時に発生する熱が、この噴霧水9の気化に使われて空気26の温度上昇を防止し、圧縮に伴う熱損失を防止している。
【0092】
脱塵装置53で脱塵後の生成ガス16は、水洗塔54でハロゲン等を除去し、シフト反応器55に供給する。水洗塔54に脱塵後の生成ガス16を通ガスすることで生成ガス16の温度は低下するので、水洗塔54の出口ガスの生成ガス16を脱塵装置53で脱塵後の生成ガス16と熱交換器71により間接熱交換させることで、熱損失を低減する。
【0093】
シフト反応器55の入口における生成ガス16中の水蒸気/一酸化炭素比が、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要な値よりも小さい場合には、シフト反応器55の入口で外部から水蒸気12を供給する。
【0094】
シフト反応器55によるシフト反応後の生成ガス13は吸収塔56に供給し、例えばメチルジエタノールアミンなどを主成分とする吸収液11と接触させて、硫化水素などの硫黄化合物と、二酸化炭素を除去する。
【0095】
シフト反応器55の出口の生成ガス13の温度が200〜300℃であるのに対し、吸収塔56の運転温度は約40℃であり、吸収塔56に通ガスすることで生成ガス13の温度は低下するので、シフト反応器55の出口の生成ガス13は、熱交換器73により吸収塔56の出口の生成ガスと間接熱交換させ、シフト反応器55の出口の生成ガスの熱を、吸収塔56の出口の生成ガスに与えることで、熱損失を防止する。
【0096】
なお、シフト反応器55の出口の生成ガス温度は、この熱交換器73を通過後も、吸収塔56の運転温度よりも高いので、熱交換器73により冷却した上で吸収塔56に通ガスする。
【0097】
吸収塔56で硫黄化合物を除去した生成ガス13は、ガスタービン燃焼器60に燃料として供給される。この生成ガス13を燃焼するための空気26は、ガスタービン圧縮機61で加圧する。
【0098】
このガスタービン圧縮機61の入口では液体の噴霧水9が噴霧されており、ガスタービン圧縮機61によって空気26を圧縮時に発生する熱が、この噴霧水9の気化に使われることにより、空気26の温度上昇を防止し、圧縮に伴う熱損失を防止している。
【0099】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、石炭1をガスタービンの燃焼排ガス14を用いて乾燥させる乾燥機40において、前記乾燥機40の出口から排出される燃焼排ガス14aに含まれた水分の回収は、まず、排ガス14aを乾燥機40の下流側に設置した脱塵装置41に導いて排ガス14a中に飛散した石炭微粒子を除去し、次に前記脱塵装置41の下流側に設置した凝縮熱交換器70に排ガス14aを導いて冷却することにより排ガス14a中の水蒸気の一部を凝縮させ、さらに前記凝縮熱交換器70の下流側に設置した水回収塔65に排ガス14aを導き、この水回収塔65にて外部から該水回収塔65に噴霧された液体の水10と排ガス14aを接触させることで、排ガス14a中の残りの大部分の水蒸気も凝縮させて液体の水14bとして回収するように構成している。
【0100】
また、水回収塔65に外部から水10を供給する前記水回収塔65への水10の供給水量は、水回収塔65の水面レベルをレベル計91で計測し、このレベル計91で計測した計測値が規定範囲に入るように、水回収塔65に水10を供給する流量調整弁81の開閉を操作することによって制御している。
【0101】
水分の多い石炭を燃料として発電する石炭ガス化発電システムでは、石炭を乾燥させるための熱損失が大きかったが、本実施例によれば、石炭乾燥に用いた熱をガス化炉あるいは冷却塔出口の生成ガスの顕熱として回収することが可能である。
【0102】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、生成ガス中の水蒸気は、下流側のシフト反応器において一酸化炭素と反応し、水素と二酸化炭素に変換されるので、シフト反応器の下流側で温度を下げてガス精製をした場合にも、水蒸気の凝縮による熱損失は小さく、石炭乾燥に用いた熱の大部分をガスタービンによる発電に与えることができる。
【0103】
そして、ガスタービン入口の燃焼ガスの温度は1300℃〜1500℃とすることが可能であり、200℃程度の蒸気を用いた蒸気タービンによる発電よりも高温で熱サイクルを駆動できるため、高効率であり、熱損失を大幅に低減することが可能である。
【0104】
また、本実施例の石炭ガス化システムで生成ガス中の水素/一酸化炭素比を調整する場合や、二酸化炭素回収型石炭ガス化発電システムでは、生成ガスをシフト反応させるために、シフト反応触媒の性能にもよるが、石炭中の炭素の質量と同レベルの多量の工業用水が必要であったが、本実施例によれば、石炭が保有する水分を生成ガスに与えることができるため、工業用水が不要となり、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0105】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化発電システムが実現できる。
【実施例4】
【0106】
次に本発明の第4実施例である石炭ガス化発電システムについて、図4を用いて説明する。
【0107】
図4に示された本実施例の石炭ガス化発電システムは、図3に示した第3実施例の石炭ガス化発電システムと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0108】
図3に示した第3実施例の石炭ガス化発電システムでは、乾燥機40出口の排ガス14aから回収した水14dをガス化炉50の反応部下流の熱回収部51に複数段に分けて噴霧して供給する方法を示したが、図4に示した本実施例の石炭ガス化発電システムでは、ガス化炉50の下流側で、且つ、脱塵装置53の上流側となる位置に冷却塔52を設置し、この冷却塔52に水回収65から回収した水14bを凝縮熱交換器70を経由して水供給系統15を通じて前記冷却塔52に噴霧して供給するように構成されている。
【0109】
本実施例の石炭ガス化発電システムに備えられた石炭ガス化システムには、図2に示した第2実施例と同じ基本構成の石炭ガス化システムが採用されている。
【0110】
本実施例の石炭ガス化発電システムにおいて、冷却塔52に供給する水14bの供給量は、図3に示した第3実施例の石炭ガス化発電システムと同様に、前記ガス化炉50及び脱塵装置53の下流側に設置したシフト反応器55において、生成ガス20中の水蒸気/一酸化炭素比が、目標とする一酸化炭素転化率を得るために必要な範囲となるように前記冷却塔52に供給する水14bの供給量を調整する。
【0111】
すなわち、ガス化炉50への石炭供給量及び酸素供給量、シフト反応器55に充填したシフト反応触媒の性能、目標とする一酸化炭素転化率などのプラント情報・運転目標87を制御装置86に入力し、制御装置86でガス化炉50の出口ガスの流量及び水蒸気/一酸化炭素比、シフト反応器55の入口で必要な水蒸気濃度/一酸化炭素比をそれぞれ演算し、これらの演算値を用いて必要な水14bの供給量を求め、この水14bの供給量が第3実施例のガス化炉50の熱回収部51に替えて、本実施例ではガス化炉50の下流側に設置した冷却塔52に供給できるように、制御装置86から出力した操作信号に基づいて水供給系統15に設置した流量調整弁80の開閉を制御して水回収65から水供給系統15を通じて冷却塔52に供給する水14bの供給量を調節するように構成している。
【0112】
水分の多い石炭を燃料として発電する石炭ガス化発電システムでは、石炭を乾燥させるための熱損失が大きかったが、本実施例によれば、石炭乾燥に用いた熱をガス化炉あるいは冷却塔出口の生成ガスの顕熱として回収することが可能である。
【0113】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、生成ガス中の水蒸気は、下流側のシフト反応器において一酸化炭素と反応し、水素と二酸化炭素に変換されるので、シフト反応器の下流側で温度を下げてガス精製をした場合にも、水蒸気の凝縮による熱損失は小さく、石炭乾燥に用いた熱の大部分をガスタービンによる発電に与えることができる。
【0114】
そして、ガスタービン入口の燃焼ガスの温度は1300℃〜1500℃とすることが可能であり、200℃程度の蒸気を用いた蒸気タービンによる発電よりも高温で熱サイクルを駆動できるため、高効率であり、熱損失を大幅に低減することが可能である。
【0115】
また、本実施例の石炭ガス化システムで生成ガス中の水素/一酸化炭素比を調整する場合や、二酸化炭素回収型石炭ガス化発電システムでは、生成ガスをシフト反応させるために、シフト反応触媒の性能にもよるが、石炭中の炭素の質量と同レベルの多量の工業用水が必要であったが、本実施例によれば、石炭が保有する水分を生成ガスに与えることができるため、工業用水が不要となり、ランニングコストを大幅に低減することができる。
【0116】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化発電システムが実現できる。
【実施例5】
【0117】
次に本発明の第5実施例である石炭ガス化発電システムについて、図5を用いて説明する。
【0118】
図5に示された本実施例の石炭ガス化発電システムは、図4に示した第4実施例の石炭ガス化発電システムと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0119】
本実施例の石炭ガス化発電システムに備えられた石炭ガス化システムには、第4実施例の石炭ガス化システムと同様に、図2に示した第2実施例と同じ基本構成の石炭ガス化システムが採用されている。
【0120】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、ガスタービン62から排出された燃焼排ガス14が含有する水分を凝縮させて回収する水回収系統が2系統配設されている。
【0121】
ガスタービンの燃焼排ガス14が含有する水分を凝縮させて回収する2系統配設された水回収系統のうち、一方の水供給系統15aは、ガスタービン62から排出された燃焼排ガス14を石炭乾燥機40で石炭1の乾燥に使用させた後に、燃焼排ガス14aとして凝縮熱交換器70aを経由させて水回収塔65に供給し、この水回収塔65で燃焼排ガス14aから回収された水14bを、該水回収塔65から水供給系統15aを通じてガス化炉50の下流に設置された冷却塔52に供給するように構成した一方の水供給系統15aである。
【0122】
また、図3に示した第3実施例の石炭ガス化発電システムで示したように、この水回収塔65で回収された水14bの供給先として、ガス化炉50の反応部の下流側のガス化炉熱回収部51に供給することも可能である。
【0123】
本実施例の石炭ガス化発電システムにおいて、ガスタービンの燃焼排ガス14が含有する水分を凝縮させて回収する2系統配設された水回収系統のうち、他方の水供給系統16bは、図5の本実施例の石炭ガス化発電システムに示したように、ガスタービン62から排出された燃焼排ガス14を石炭乾燥機40の上流側から分岐して凝縮熱交換器70bを経由させて、前記水回収塔65とは別設された水回収塔67に供給し、この水回収塔67で燃焼排ガス14から水16bを回収し、前記水回収塔67から回収された水16bを、水供給系統15bを通じてガスタービン圧縮機61で加圧された空気を増湿する増湿64に供給するように構成した他方の水供給系統16bである。
【0124】
そして、増湿64で水16aを噴霧して増湿された空気はガスタービン燃焼器60に供給され、このガスタービン燃焼器60にて燃料の燃焼に使用されて燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスがガスタービン62に供給されて該ガスタービン62を駆動する。
【0125】
上記したように、ガスタービンの燃焼排ガス14に含有する水分を回収する水回収系統を、水供給系統15aと水供給系統16bとの2系統配設する場合は、乾燥機40の出口の燃焼排ガス14aがガスタービン62に供給されることがないため、前記乾燥機40の出口側に設置された脱塵設備41に異常が発生して該乾燥機40出口の燃焼排ガス14aに微粒子が混入した場合でも、この微粒子がガスタービン62に供給されることがないため、高速で回転するガスタービン62の翼を損傷するリスクを低減することができる。
【0126】
また、脱塵装置41に異常が発生して乾燥機40の出口から排出された燃焼排ガス14aに微粒子が混入して水回収塔65に流入し、この水回収塔65で回収した液体の水14bに同伴して前記微粒子がガス化炉50の下流側に設置された冷却塔52に供給されたとしても、前記冷却塔52の下流側にはガス化炉50から供給される生成ガス16を脱塵する脱塵装置53が設置されているので、この脱塵装置53によって微粒子を除去することができるため、微粒子がガスタービン62に到達することはない。
【0127】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、乾燥機40で石炭1を乾燥させた燃焼排ガス14a(微粒子を含んでいる可能性が高い)と、乾燥機40の上流側で分岐したガスタービン62から排出された燃焼排ガス14とに分けて、水回収塔65及び67にそれぞれ供給して前記燃焼排ガス14a、14から水14b、16bを回収するように構成しているので、前記水回収塔67から増湿塔64を経由してガスタービン燃焼器60に増湿した空気を供給した場合でも、微粒子が増湿塔64に混入し増湿した空気としてガスタービン62に供給されることを回避できるため、高速で回転するガスタービン62の翼を損傷するリスクを低減することができる。
【0128】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化発電システムが実現できる。
【実施例6】
【0129】
次に本発明の第6実施例である石炭ガス化発電システムについて、図6を用いて説明する。
【0130】
図6に示された本実施例の石炭ガス化発電システムは、図5に示した第5実施例の石炭ガス化発電システムと基本的な構成は同じなので、両者に共通した構成の説明は省略し、相違する構成についてのみ以下に説明する。
【0131】
本実施例の石炭ガス化発電システムに備えられた石炭ガス化システムには、第5実施例の石炭ガス化システムと同様に、図2に示した第2実施例と同じ基本構成の石炭ガス化システムが採用されている。
【0132】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、石炭の乾燥方法として、連続的に石炭を乾燥させる方式、例えば石炭を乾燥機の入口から出口までベルトコンベアなどで移送しながら燃焼排ガスと接触させる方式のものを採用した場合には、石炭1を乾燥させる乾燥機は、1台の乾燥機でシステムを構築することが可能である。
【0133】
石炭の乾燥方法としてバッチ式、例えば乾燥機に一定量の石炭を充填し、燃焼排ガスによって石炭を流動化させて乾燥させる方式では、例えば図6に示したように、石炭1を乾燥させる乾燥機を、乾燥機40aと乾燥機40bの如く2台以上並列に設置することが望ましい。
【0134】
これは、ガスタービン62の燃焼排ガス14aから水回収塔65で回収した水14bを、ガス化炉50の下流側に設置した冷却塔52に供給する水14bの供給が途絶えると、その分だけ、シフト反応器55の入口側で外部からシフト反応器55に供給する水蒸気12の供給が必要となるためである。
【0135】
石炭1を乾燥させる乾燥機を乾燥機40aと乾燥機40bとの2台設置する場合、一方の乾燥機40aにガスタービン62から燃焼排ガス14を通ガスしている間は、他方の乾燥機40bへガスタービン62から燃焼排ガス14の供給を停止し、他方の乾燥機40b内の石炭1をガス化炉50に石炭を供給する石炭供給系へ排出する。
【0136】
石炭の排出が終了したら、未乾燥の石炭1を他方の乾燥機40bに充填する。そして、一方の乾燥機40aで石炭1の乾燥が完了した段階で、この一方の乾燥機40aへガスタービン62から供給している燃焼排ガス14の供給を停止し、ガスタービン62から他方の乾燥機40bへの燃焼排ガス14の供給に切り替える。
【0137】
そして、このガスタービン62から排出された燃焼排ガス14の供給先を、一方の乾燥機40aから他方の乾燥機40bに切り替えた後に、一方の乾燥機40aの中の乾燥された石炭1を、ガス化炉50に石炭を供給する石炭供給系に排出する。
【0138】
本実施例の石炭ガス化発電システムでは、褐炭や泥炭に分類される水分を多く含む石炭をガス化し、一酸化炭素と水素を主成分とする生成ガスを製造し、生成ガスからメタノールなどの化学製品を合成する石炭ガス化システムや、生成ガスを燃料としてガスタービンで発電する石炭ガス化発電システムなどに適用可能である。
【0139】
上記したように、本実施例によれば、シフト反応設備のシフト反応によってガス化炉で生成した生成ガス中の一酸化炭素と水素の比を調整可能にしてプラントの効率を向上する石炭ガス化発電システムが実現できる。
【符号の説明】
【0140】
1:石炭(炭素系燃料)、2:酸素(酸化剤)、3:石炭搬送ガス、4:チャー搬送ガス、5:スラグ、6:チャー、7:空気、8:水洗塔洗浄水、9:噴霧水、10:供給水、11:吸収液、12:水蒸気、13、16、20:生成ガス、14、14a、14c:燃焼排ガス、14b、16a:水、14d:水分、15、17、15a、16b:水供給系統、15b:水分岐系統、40:乾燥機、41:脱塵装置、50:ガス化炉、51:ガス化炉熱回収部、52:冷却塔、53:脱塵装置、54:水洗塔、55:シフト反応器、56:吸収塔、57:ノックアウトドラム、58:再生塔、59:二酸化炭素/硫化水素分離器、60:ガスタービン燃焼器、61:ガスタービン圧縮機、62:ガスタービン、63:ガスタービン発電機、64:増湿塔、65、67:水回収塔、66:煙突、70:凝縮熱交換器、71〜74:熱交換器、75:回収水の流通配管、76:水噴霧用ヘッダー、77:水噴霧用配管、78:水冷管、80〜85:流量調整弁、86:制御装置、87:プラント情報・制御目標、90:温度計、91:水回収塔レベル計、92:流量計、93:水タンクのレベル計、94:圧力計、95〜96:温度計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6