(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、1個のバルブボディに3個のバルブを設ける旨の記載があるものの、前記バルブボディは、上記したように2個の部材が上下に組み合わされたものである。しかも、リニアソレノイドバルブは、2個の調圧バルブと直交する方向、すなわち、ロアバルブボディとアッパバルブボディの積層方向に沿って延在している。
【0007】
このため、特許文献1記載の技術には、積層方向に沿う寸法(肉厚)を小さくすることが困難であるという不具合が顕在化している。
【0008】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、小型化を図り得るバルブ配置を採用した油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る油圧制御装置は、入力ポートから入力された作動油による初期油圧を減圧する第1調圧バルブと、
前記第1調圧バルブによって減圧された油圧を、ソレノイドに供給された電流に応じたソレノイド圧に変換するソレノイドバルブと、
前記ソレノイド圧が供給されるとともに、前記入力ポートから入力された作動油による初期油圧を前記ソレノイド圧に応じた駆動圧に変換する第2調圧バルブと、
を有し、
1個のボディに、軸線が水平方向に沿って平行に並列配置された第1弁孔、第2弁孔及び第3弁孔が形成され、且つ前記第1弁孔、前記第2弁孔及び前記第3弁孔の各々に、前記第1調圧バルブの第1弁棒、前記ソレノイドバルブの第2弁棒、及び前記第2調圧バルブの第3弁棒が往復動作可能に収容され、
前記第1弁孔が前記第2弁孔と前記第3弁孔の間に介在し、且つ前記第1調圧バルブが前記ソレノイドバルブと前記第2調圧バルブとの間に配設されていることを特徴とする。
【0010】
すなわち、この油圧制御装置では、3個のバルブが、互いの軸線が水平方向に沿って平行となるように並列配置されている。このため、油圧制御装置において、バルブの軸線方向以外の方向の寸法を小さくすることができる。すなわち、油圧制御装置の小型化を図ることができる。
【0011】
しかも、第1調圧バルブを中央に配置し、この第1調圧バルブにソレノイドバルブを隣接させるようにしているので、ボディにおいて、第1弁孔の出口と、第2弁孔の入口とを近接させることができる。すなわち、第1調圧バルブとソレノイドバルブを結ぶ油路を短尺化することが可能となる。
【0012】
また、第1調圧バルブと第2調圧バルブも隣接する。これら第1調圧バルブ及び第2調圧バルブには、高圧の作動油が供給されるが、第1調圧バルブと第2調圧バルブを隣接させることにより、第1弁孔の作動油入口、第3弁孔の作動油入口に連なる油路を短尺化することも可能である。
【0013】
以上のように油路を短尺化し得ることも、油圧制御装置の小型化に寄与する。しかも、油路が短尺化されるので、作動油がボディ内を迅速に流通して下流側のバルブに到達する。このため、各バルブの応答速度が向上する。
【0014】
ボディには、該ボディを所定の部材に取り付ける締結部材(例えば、連結ボルト)を通すための締結部材挿通孔が複数個形成される。ここで、本発明においては、上記したように、高圧の作動油が供給される第1調圧バルブ及び第2調圧バルブが隣接している。従って、第1弁孔及び第3弁孔の近傍では締結部材の離間距離(ピッチ)を小さくすることが好ましい。これにより、高圧となる第1弁孔及び第3弁孔の近傍の面圧が大きくなるのでシール性を確保することができるからである。なお、このためには、第1弁孔及び第3弁孔の近傍で、締結部材挿通孔同士の距離を小さくすればよい。
【0015】
なお、ソレノイドバルブ(第2弁孔)側は比較的低圧であるので、作動油が漏洩し難い。このため、十分なシール性が確保できる場合、第2弁孔の近傍では、締結部材挿通孔同士の距離を大きくするようにしてもよい。
【0016】
ボディには、さらに、駆動圧となった作動油を第3弁孔から導出するための出力流路と、該出力流路の下流側に連なりボディの端面で開口した出力ポートとが形成される。ここで、出力流路は、前記出力ポートから前記ボディの厚み方向に沿って延在するように直線状に形成され、且つ前記第3弁孔に対して直交することが好ましい。
【0017】
この場合、第3弁孔から導出された作動油を、ボディの厚み方向に沿って延在する出力流路及び出力ポートを介してボディの外部に導出することができる。すなわち、ボディの端面に、第3弁孔から導出された作動油を流通させるための油路を設ける必要がない。このため、出力流路の短尺化を図ることが可能となる。勿論、このことも油圧制御装置の小型化に寄与する。
【0018】
また、出力流路の短尺化を図ることができるので、出力ポートに接続される下流側の機器(例えば、クラッチ)における圧力応答性を向上することが可能となる。
【0019】
ところで、入力流路にオリフィスを設ける場合、入力流路を十分な長さとする必要がある。入力流路が短尺であると、オリフィスを設けることができないからである。しかしながら、このために入力流路が長尺化し、その分、ボディが大型化する。
【0020】
そこで、入力ポートの下流側に連なる入力流路を、ボディの厚み方向に沿って直線状に延在させるとともに、前記ボディに、前記入力流路に連通し、且つ前記第1弁孔に初期油圧の作動油を導入するための第1弁孔ライン圧入口と、前記第3弁孔に初期油圧の作動油を導入するための第3弁孔ライン圧入口とが形成された油路を設け、前記入力流路と前記油路を、前記ボディの厚み方向に対して傾斜した連通路を介して連通させることが好ましい。
【0021】
傾斜した連通路により、例えば、軸線方向に沿って延在する横孔を形成した場合に比してボディの厚み方向の長さを小さくすることができる。その分、ボディが大型化することを回避することができる。
【0022】
なお、この構成においては、入力ポートにフィルタを設けるとともに、連通路に、作動油の流通量を制限するためのオリフィスが設けられる。すなわち、オリフィスは、フィルタの下流側に配置される(換言すれば、フィルタは、オリフィスの上流側に配置される)。
【0023】
オリフィスによって流路面積が絞られているため、オリフィスを通過した後の作動油は、オリフィスを通過する前に比して流速が上昇する。ここで、上記の構成において、流速が上昇した作動油がフィルタに接触することはない。フィルタが、オリフィスの上流側に配置されているからである。従って、フィルタに過度の負荷が作用することもない。
【0024】
ボディには、減圧された作動油を前記第1弁孔から導出するための第1弁孔出口と、前記第1弁孔出口から導出された作動油を前記第2弁孔に導入するための第2弁孔入口とが形成された油路を設けることが好ましい。この場合、当該油路を設けた部材をボディとは別に作製する必要がない。従って、油圧制御装置の構成が簡素となる。
【0025】
第1弁孔(第1調圧バルブ)と第2弁孔(ソレノイドバルブ)は、隣接している。従って、第1弁孔出口と第2弁孔入口が形成された油路を、直線形状とすることも可能である。この場合も、油路の短尺化、ひいては油圧制御装置の小型化を図ることができる。
【0026】
上記と同様の理由から、ボディに、ソレノイド圧となった作動油を前記第2弁孔から導出するための第2弁孔出口と、前記第2弁孔出口から導出された作動油を前記第3弁孔に導入するためのソレノイド圧入口とが形成された油路を設けることが一層好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、作動油による初期油圧(ライン圧)を減圧する第1調圧バルブと、減圧された油圧をソレノイド圧に変換するソレノイドバルブと、作動油によるライン圧をソレノイド圧に応じた駆動圧に変換する第2調圧バルブとを、各バルブの軸線が互いに平行となるように、水平方向に沿って平行に並列配置するようにして油圧制御装置を構成するようにしている。このような配置とすることにより、油圧制御装置において、各バルブの軸線方向以外の方向を短尺化することが可能となる。
【0028】
しかも、ソレノイドバルブと第2調圧バルブを、第1調圧バルブを間に挟むようにして配置するようにしている。このため、第1調圧バルブ及び第2調圧バルブにライン圧を供給するための油路、第1調圧バルブから導出された作動油をソレノイドバルブに供給するための油路の短尺化を図ることもできる。このことも、油圧制御装置の小型化に寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る油圧制御装置につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
なお、特に断りのない限り、以下における「下」、「上」は、各図面中の下、上に対応する。
【0031】
図1に、本実施の形態に係る油圧制御装置10のシステム系統図を示す。この油圧制御装置10は、レギュレータバルブ12(第1調圧バルブ)と、ソレノイドバルブ14と、コントロールバルブ16(第2調圧バルブ)とを有し、作動油は、図示しないオイルポンプの作用下に入力ポート18から入力された後、第1油路20からレギュレータバルブ12とコントロールバルブ16に分配される。
【0032】
レギュレータバルブ12は、入力ポート18から入力された作動油による初期油圧(ライン圧)を、所定の圧力に低減する機能を営む。すなわち、レギュレータバルブ12を構成する第1弁棒22は、第1弁孔24内で、第1調圧用スプリング26によってレギュレータバルブ12が閉止状態となるように弾発付勢されている。第1弁棒22は、第1調圧用スプリング26と、レギュレータバルブ12に作用するフィードバック油圧との差の大小に応じて第1弁孔24内で往復動作が可能である。第1弁棒22が、第1調圧用スプリング26と、該第1弁棒22に作用するフィードバック油圧とが均衡する位置で停止することにより、油圧の調圧(減圧)がなされる。
【0033】
減圧された作動油は、第2油路28を介してソレノイドバルブ14に供給される。ここで、ソレノイドバルブ14は、ECU等の制御部からの指令電流を受けるソレノイド30を有する。該ソレノイド30は、供給された指令電流の値に応じた推力を発生する。ソレノイドバルブ14の第2弁棒32は、第2弁孔34内で、この推力と、スプリング室35aに収容された第2調圧用スプリング35による弾発付勢力と、該第2弁棒32に作用するフィードバック油圧とが均衡する位置に保持される。これにより油圧の調圧(減圧)がなされ、所定のソレノイド圧が得られる。
【0034】
ソレノイド圧に調圧された作動油は、第3油路36を経由してコントロールバルブ16に到達する。ここで、コントロールバルブ16には、上記したように第1油路20から分配された作動油がライン圧で供給される。コントロールバルブ16の第3弁棒38は、第3弁孔40内で、第3調圧用スプリング42による弾発付勢力と、ソレノイド圧と、該第3弁棒38に作用するフィードバック油圧とが均衡する位置に保持される。これによりコントロールバルブ16に入力されたライン圧の調圧(減圧)がなされ、作動油が所定の油圧となって出力ポート44から導出される。導出された作動油は、例えば、クラッチに供給される。
【0035】
コントロールバルブ16から出力ポート44に向かう経路には、クラッチ圧が所定の閾圧力以上に大きくなったときに、作動油がクラッチに供給されることを回避するためのリリーフバルブ46が設けられる。すなわち、リリーフバルブ46の球状弁体48は、通常、閉止用スプリング50(弾発部材)の弾発付勢力を受けて弁座52に着座している。クラッチ圧が過度に大きくなったときには、作動油によって球状弁体48が押圧される。球状弁体48が弁座52から離間するとともに閉止用スプリング50が圧縮されると、リリーフバルブ46が開状態となり、作動油がリリーフバルブ46を介して油圧制御装置10の外部に導出される。
【0036】
次に、油圧制御装置10の実構成につき説明する。
【0037】
図2及び
図3は、それぞれ、本実施の形態に係る油圧制御装置10の水平断面斜視図、油圧制御装置10を構成するボディ54の開放端面側の平面図である。なお、以下の説明において、ボディ54の幅方向、軸線方向及び厚み方向は、それぞれ、
図2中のX方向、Y方向、Z方向に対応し、その他の図面においても同様である。また、「ボディ54の開放端面」は、第1油路20、第2油路28及び第3油路36が形成された側の端面を指称し、「ボディ54の閉塞端面」は、前記開放端面の裏面を指称するものとする。
【0038】
図2及び
図3から諒解されるように、レギュレータバルブ12、ソレノイドバルブ14、コントロールバルブ16は、1個のボディ54をバルブボディとして共有する。そして、レギュレータバルブ12を間に挟んでソレノイドバルブ14とコントロールバルブ16が両端に配置されている。
【0039】
すなわち、
図2に示すように、ボディ54には、第1弁孔24を中央、第2弁孔34及び第3弁孔40を両端とするようにして3個の弁孔24、34、40が形成される。これら第1弁孔24、第2弁孔34及び第3弁孔40は、ボディ54の幅方向(X方向)、換言すれば、水平方向に沿って互いの軸線が平行となるように並列配置されている。
【0040】
そして、第1弁孔24には、レギュレータバルブ12の前記第1弁棒22が収容される。また、第2弁孔34にはソレノイドバルブ14の前記第2弁棒32が収容され、第3弁孔40にはコントロールバルブ16の前記第3弁棒38が収容される。このため、レギュレータバルブ12、ソレノイドバルブ14、コントロールバルブ16も、ボディ54の幅方向(X方向/水平方向)に沿って互いの軸線が平行となるように並列配置される。なお、第1弁棒22、第2弁棒32及び第3弁棒38はいずれも、スプールからなる。
【0041】
第1弁孔24、第2弁孔34及び第3弁孔40の一端は、それぞれ、キャップ部材56、58、60で閉塞される。なお、
図3中のIV−IV線矢視断面図である
図4、V−V線矢視断面図である
図5に示すように、第1弁孔24及び第3弁孔40の他端は、ボディ54それ自体で閉塞される。また、第2弁孔34の他端からはソレノイド30が露呈する(
図2及び
図3参照)。
【0042】
図4及び
図5の各々に示すように、前記第1調圧用スプリング26及び前記第3調圧用スプリング42は、それぞれ、第1弁棒22、第3弁棒38とボディ54の内壁との間に配置され、第1弁棒22、第3弁棒38をキャップ部材56、60側に弾発付勢する。一方、
図3中のVI−VI線矢視断面図である
図6に示すように、第2調圧用スプリング35は、キャップ部材58と第2弁棒32との間に配置され、第2弁棒32をソレノイド30側に弾発付勢する。
【0043】
図3に示すように、ボディ54の開放端面には、前記入力ポート18、前記第1油路20、前記第2油路28、前記第3油路36及び前記出力ポート44が形成される。以下、これらを区分する壁部を「油路壁」と指称し、その参照符号を61とする。
【0044】
この中の入力ポート18は、第1油路20及び第3弁孔40の近傍に形成される。入力ポート18には、作動油から異物を除去するためのフィルタ62が設置される(
図5参照)。
【0045】
入力ポート18の下流側には入力流路64が連なり、該入力流路64は、
図5に示すように、ボディ54の厚み方向(Z方向)に沿って直線状に延在する。油路壁61の頂面を基準とした該入力流路64の深さは、第1油路20の深さに比して大きく設定される。
【0046】
入力流路64と第1油路20は、連通路66を介して連通する。すなわち、連通路66の上流側端部は、入力流路64の高さ方向(Z方向)略中腹部で開口する。連通路66は、ボディ54の厚み方向に対して傾斜するように延在し、下流側端部は、第1油路20の上流側端部で開口する。連通路66の第1油路20への開口近傍には、オリフィス67が設けられる。
【0047】
図3に示すように、第1油路20は、屈曲しながら第3弁孔40の軸線(Y方向)に沿って延在し、第3弁孔40の下流側端部近傍において、第1弁孔24側に折曲する。第1油路20の下流側端部は、第1弁孔24を跨いだ位置にある。
【0048】
第1油路20の上流側端部近傍には、連通路66の下流側開口に近接するようにして第1ライン圧入口孔68(第3弁孔ライン圧入口)が形成される。また、下流側端部には、第2ライン圧入口孔70(第1弁孔ライン圧入口)が形成される。すなわち、第1油路20には、第1ライン圧入口孔68、第2ライン圧入口孔70が上流側からこの順序で形成されている。勿論、第1油路20は、第1ライン圧入口孔68を介して第3弁孔40に連通する(
図5参照)とともに、第2ライン圧入口孔70を介して第1弁孔24に連通する。このため、第1油路20に導入された作動油は、第1弁孔24と第3弁孔40に分配される。
【0049】
第2油路28は、第1弁孔24の一部と、第2弁孔34の一部とを跨ぐように形成される(
図3参照)。この第2油路28は、ボディ54の幅方向(X方向)に沿って延在する略直線形状をなし、第1油路20及び第3油路36に比して短尺である。
【0050】
第2油路28の上流側端部には、第1弁孔24から作動油を導出するための第1弁孔出口孔72(第1弁孔出口)が形成され、一方、下流側端部には、第2弁孔34内に作動油を導入するための第2弁孔入口孔74(第2弁孔入口)が形成される。すなわち、第2油路28は、第1弁孔出口孔72及び第2弁孔入口孔74を介して、第1弁孔24及び第2弁孔34の各々に連通する。
【0051】
第1油路20の近傍には、第1プール76が陥没形成される。第3弁孔40と第1プール76は、第1連通孔78を介して連通する。
【0052】
ボディ54には、
図3中のVII−VII線矢視断面図である
図7に示すように、第1ドレン孔80が貫通形成される。第1プール76と第1ドレン孔80は、高さ方向(Z方向)寸法が油路壁61よりも短尺なオーバーフロー壁82によって区分されている。すなわち、第1プール76に進入した作動油が、オーバーフロー壁82では堰止し得ない量となったとき、作動油が第1プール76からオーバーフローした後、第1ドレン孔80から排出される。
【0053】
第3油路36は、第2弁孔34の軸線方向(Y方向)に沿って延在した後、第1弁孔24及び第3弁孔40側に折曲され、第1弁孔24を跨いで第3弁孔40に到達している。すなわち、第3油路36の大部分は、ボディ54の幅方向(X方向)に沿って延在するように形成されている。
【0054】
第3油路36において、第2弁孔34から第1弁孔24側に向かうように折曲された箇所には、第2弁孔34から作動油を導出するための第2弁孔出口孔84(第2弁孔出口)が形成される。また、下流側端部には、第3弁孔40に作動油を導入するためのソレノイド圧入口孔86(ソレノイド圧入口)が形成される。第3油路36は、第2弁孔出口孔84を介して第2弁孔34に連通するとともに、ソレノイド圧入口孔86を介して第3弁孔40に連通する(
図5参照)。
【0055】
また、第3油路36の近傍には、第2プール88が陥没形成される(
図3参照)。第2弁孔34と第2プール88は、第2連通孔90を介して連通する。第2連通孔90の近傍には、ダンパーオリフィス91が貫通形成される。
【0056】
その一方で、ボディ54には、第2ドレン孔92が貫通形成される。
図3中のVIII−VIII線矢視断面図である
図8に示すように、第2プール88と第2ドレン孔92は、高さ方向(Z方向)寸法が油路壁61よりも短尺なオーバーフロー壁94によって区分されている。すなわち、第1プール76と同様に、第2プール88に進入した作動油が、オーバーフロー壁94では堰止し得ない量となったとき、作動油が第2プール88からオーバーフローした後、第2ドレン孔92から排出される。
【0057】
出力ポート44は、第1油路20の近傍で開口する(
図3参照)。出力ポート44の上流側には、出力流路96が連なる。すなわち、出力ポート44は、出力流路96の下流側開口である。出力流路96は、リリーフバルブ46近傍の要部縦断面図である
図9(
図10中のIX−IX矢視断面図)に示すように、ボディ54の厚み方向に沿って直線状に延在し、第3弁孔40の軸線方向中腹部近傍で該第3弁孔40と直交する。
【0058】
なお、出力流路96の軸線中心は、第3弁孔40の軸線中心からオフセットされた位置にある。このため、出力流路96の上流側端部は、第3弁孔40の側方で開口する。
【0059】
出力ポート44には、フィルタ98が設置される。ボディ54内で、例えば、摩耗粉が発生して作動油に混入した場合、このフィルタ98によって摩耗粉が除去され、清浄な作動油が出力ポート44から導出される。
【0060】
出力流路96の上方には、リリーフバルブ46の導入ポート100が連なる。すなわち、出力流路96は、出力ポート44と導入ポート100に分岐している。なお、導入ポート100は、通常、球状弁体48が弁座52に着座することに伴って閉止状態にされる。また、導入ポート100は、出力流路96に比して内径が絞られた絞り流路となっている。
【0061】
一層詳細には、
図9及び
図10に示すように、ボディ54の閉塞端面には、第3弁孔40の上方に対応する部位に、リリーフバルブ46のボディ部となる円筒状突部102が該ボディ54と一体的に突出形成される。前記球状弁体48及び閉止用スプリング50は、円筒状突部102の内部であるリリーフ室104に収容されている。
【0062】
導入ポート100からリリーフ室104に至るまでは、ボディ54の内壁が直径方向内方に指向して突出することにより、前記弁座52と、内周壁で球状弁体48を案内するガイド部106とが形成される。そして、弁座52の直上、すなわち、ガイド部106の内周壁から円筒状突部102の外壁に至るまで、水平方向に沿って直線状に延在するリリーフ孔108が貫通形成される。すなわち、リリーフ孔108は、いわゆる横孔である。リリーフ孔108は、導入ポート100と同様に絞り流路となっている。
【0063】
球状弁体48の一部は、ガイド部106から露呈する。前記閉止用スプリング50の一端部は、球状弁体48の、ガイド部106から露呈した一部に着座する。また、閉止用スプリング50の他端部は、円筒状突部102の頂面を覆う蓋部材110の内面に当接している。
【0064】
図9、及び、蓋部材110と閉止用スプリング50の図示を省略した
図11に示すように、リリーフ室104の底壁には、その一部を略半円形状に切り欠くようにして3個の切欠溝112が陥没形成されている。ガイド部106において、切欠溝112が形成された部位は、他の部位に比して高さ方向(Z方向)寸法が小さい。すなわち、ガイド部106は、切欠溝112によって縦溝が形成された形状となっている(
図9参照)。
【0065】
さらに、円筒状突部102の外側壁には、その一部が頂面からボディ54に向かって切り欠かれた形状の垂直壁部114が形成される(
図11参照)。
【0066】
ボディ54の閉塞端面における第3弁孔40(コントロールバルブ16)の上方に対応する部位には、円筒状突部102に隣接するようにして、円筒形状の連結用突部118がボディ54と一体的に立設される。連結用突部118は、その内部に螺合部120が形成される(
図9及び
図11参照)とともに、円筒状突部102に対し、円筒状突部102及び連結用突部118に比して薄肉のリブ部122を介して連設される(
図11参照)。勿論、リブ部122もボディ54と一体的に立設されている。
【0067】
前記蓋部材110は、略長板形状をなし(
図2及び
図9参照)、円筒状突部102及び連結用突部118の両頂面を覆うように連結用突部118に取り付けられる。すなわち、蓋部材110には通し孔124(
図9参照)が貫通形成され、該通し孔124に通された締結部材としての固定ボルト126が連結用突部118の前記螺合部120に螺合されることにより、蓋部材110が固定される。
【0068】
ここで、蓋部材110には、一端面から垂下するようにフック部128が突出形成されている(
図2及び
図9参照)。このフック部128が円筒状突部102の前記垂直壁部114に係止されることにより、蓋部材110の回り止めがなされる。すなわち、垂直壁部114は、蓋部材110のフック部128を係止するための係止部として機能する。
【0069】
円筒状突部102の突出高さは、連結用突部118に比して小さい。このため、蓋部材110が連結用突部118の頂面に固定されたとき、該蓋部材110と、円筒状突部102の頂面との間には、若干のクリアランス130が形成される(
図9参照)。リリーフ室104は、このクリアランス130を介して大気に開放されている。リリーフ室104にリークした作動油は、このクリアランス130から排出される。
【0070】
図2、
図3及び
図10に示すように、ボディ54には、締結部材である図示しない連結ボルトを通すための複数個の第1挿通孔132、第2挿通孔134(いずれも締結部材挿通孔)が厚み方向に沿って貫通形成されている。この場合、第1挿通孔132は、第1弁孔24及び第3弁孔40の近傍に形成された7個であり、第2挿通孔134は、第2弁孔34の近傍に形成された4個である。
【0071】
図2及び
図3を参照して諒解されるように、第1挿通孔132同士の軸線方向Yにおける距離(ピッチ)P1は、第2挿通孔134同士の軸線方向Yにおける距離(ピッチ)P2に比して小さい。すなわち、複数個の第1挿通孔132は比較的密に設けられ、一方、複数個の第2挿通孔134は比較的疎に設けられている。
【0072】
本実施の形態に係る油圧制御装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0073】
油圧制御装置10のボディ54は、例えば、鋳造加工によって得ることができる。この際、円筒状突部102、リブ部122及び連結用突部118を鋳造用金型の型開き方向(Z方向)に沿って延在するように形成することが可能である。このため、ボディ54を容易に作製することができる。
【0074】
得られたボディ54にリリーフバルブ46を設けるには、円筒状突部102の内部、すなわち、リリーフ室104に球状弁体48及び閉止用スプリング50をこの順序で挿入し、さらに、蓋部材110で円筒状突部102及び連結用突部118の頂面を覆う。この際、通し孔124を螺合部120の位置に合致させるとともに、フック部128を垂直壁部114に係止する。
【0075】
次に、通し孔124に固定ボルト126を通し、螺合部120に螺合する。この際、フック部128が垂直壁部114に係止されているため、蓋部材110が固定ボルト126を中心として回動することが防止される。すなわち、上記した係止によって蓋部材110の回り止めがなされるので、蓋部材110のボディ54への取り付け、換言すれば、リリーフバルブ46の組立が容易となる。
【0076】
以上のように、円筒状突部102の内部に球状弁体48及び閉止用スプリング50を挿入した後、固定ボルト126で蓋部材110を連結用突部118に固定するという簡便な作業を行うのみで、リリーフバルブ46を容易に組み立てることができる。
【0077】
油圧制御装置10は、セパレートプレート136を介し、図示しない所定の相手部材に取り付けられる。この際、第1挿通孔132及び第2挿通孔134の各々に通された連結ボルトによって、第1油路20、第2油路28及び第3油路36が形成された開放端面(
図3参照)側が閉塞されるように、すなわち、油路壁61側が相手部材に臨むように連結される。一般的には、
図3に示される開放端面側が上方、
図10に示される閉塞端面側が下方となる。また、ECU等の制御部がソレノイド30に対して電気的に接続される。
【0078】
油圧制御装置は、以下のように動作する。
【0079】
先ず、油圧制御装置10に対し、図示しないオイルポンプの作用下に、作動油が所定の初期油圧(ライン圧)で供給される。作動油は、フィルタ62(
図5参照)を通過することで異物が除去されながら入力ポート18からボディ54内に導入され、入力流路64に沿ってボディ54の厚み方向に流通する。
【0080】
入力流路64の高さ方向途中に連通路66が形成されているので、作動油は、連通路66を経由し、さらに、オリフィス67を通過する。作動油は、オリフィス67によって流量が制限されるとともに流速が上昇し、この状態で、第1油路20に進入する。
【0081】
連通路66を、例えば、軸線方向Yに沿って延在する横孔としたときには、入力流路64と第1油路20との連通距離が大きくなるとともに、ボディ54の厚み方向Zの長さが大きくなる。これに対し、本実施の形態では、フィルタ62の下流側流路である連通路66を、ボディ54の厚み方向Zに対して傾斜するように形成しており、且つ連通路66の下流側端部を、第1油路20の起端部上方に開口させている。このため、ボディ54の厚み方向Zの長さが横孔を形成した場合に比して小さくなるので、ボディ54の小型化に寄与する。
【0082】
しかも、オリフィス67がフィルタ62の下流側に配置されているので、作動油の流速は、フィルタ62を通過した後に上昇する。従って、オリフィス67をフィルタ62の上流側に配置した場合のように、オリフィス67を通過して流速が上昇した作動油がフィルタ62に接触することがない。このため、フィルタ62に過度の負荷が作用することもない。
【0083】
第1油路20に進入した作動油は、該第1油路20に沿って流通する。第1油路20に、第1ライン圧入口孔68、第2ライン圧入口孔70が上流側からこの順序で形成されているので、作動油は、第3弁孔40及び第1弁孔24の各々に進入する。
【0084】
第1弁孔24に進入した作動油について説明すると、第1弁孔24内では、
図1及び
図4に示すように、レギュレータバルブ12を構成する第1弁棒22が第1調圧用スプリング26によって弾発付勢されている。第1弁棒22が、第1調圧用スプリング26と、該第1弁棒22に作用するフィードバック油圧とが均衡する位置で停止することにより、作動油の油圧が低減される。すなわち、減圧がなされる。
【0085】
一方、第3弁孔40に進入した作動油は、コントロールバルブ16に対してライン圧のままで供給される。この点については後述する。
【0086】
第1弁孔24において、レギュレータバルブ12の作用下に減圧された作動油は、第1弁孔出口孔72を介して第2油路28に導出される。そして、第2油路28に沿って流通し、第2弁孔入口孔74から第2弁孔34に進入する(
図3参照)。
【0087】
本実施の形態では、レギュレータバルブ12とソレノイドバルブ14が隣接するので、第1弁孔出口孔72(レギュレータバルブ12の出口ポート)と、第2弁孔入口孔74(ソレノイドバルブ14の入口ポート)とを連通する第2油路28を、短尺な直線形状とすることが可能となる。このため、第1弁孔24から導出された作動油が第2弁孔34に迅速に到達することができるので、応答速度が向上する。
【0088】
レギュレータバルブ12を経由して第2弁孔34に進入した作動油、すなわち、減圧された作動油は、ソレノイドバルブ14に入力油圧を付与する。一方、ソレノイドバルブ14のソレノイド30には、ECU等の制御部から指令電流が送られる。この指令電流を受けたソレノイド30は、第2弁棒32に対し、指令電流の値に対応する推力を付与する。
【0089】
結局、第2弁棒32には、フィードバック油圧と、ソレノイド30による推力と、第2調圧用スプリング35による弾発付勢力とが作用する。第2弁棒32は、これらの力が均衡する位置に保持され、これにより作動油の油圧がさらに調圧(一般的には減圧)され、所定のソレノイド圧が得られる。
【0090】
この間、作動油の一部は、第2連通孔90を介して第2弁孔34から導出され、スプリング室35a及び第2プール88(
図8参照)に貯留される。スプリング室35a及び第2プール88に貯留された作動油は、第2弁棒32に対するダンパとしての機能を営む。すなわち、スプリング室35aの重力下、上方に第2プール88を形成して作動油を貯留することにより、作動油は、第2弁棒32が移動する際、スプリング室35aから第2プール88、又はその逆方向に、ダンパーオリフィス91を介して移動する。このため、第2弁棒32における油圧振動の発生を抑制することができる。
【0091】
なお、第2プール88に一定量を超える作動油が進入した場合、過剰の作動油は、オーバーフロー壁94を越えて第2ドレン孔92から排出される。
【0092】
ソレノイド圧となった作動油は、第2弁孔出口孔84から第3油路36に導出される(
図1及び
図3参照)。さらに、第3油路36に沿って流通し、ソレノイド圧入口孔86を介して第3弁孔40に進入する。すなわち、コントロールバルブ16には、入力ポート18から導入されてライン圧のままである作動油と、ソレノイドバルブ14から導出されて所定のソレノイド圧に調圧された作動油が供給される。
【0093】
従って、コントロールバルブ16の第3弁棒38には、第3調圧用スプリング42による弾発付勢力と、ソレノイド圧(パイロット圧)と、コントロールバルブ16に作用するフィードバック油圧とが作用し、第3弁棒38は、これらの力が均衡する位置に保持される。これによりコントロールバルブ16に入力されたライン圧の調圧(減圧)がなされ、作動油が所定の油圧、例えば、所定のクラッチ圧(駆動圧)となる。
【0094】
第3弁孔40には、出力流路96が直交している。このため、クラッチ圧となった作動油は、ボディ54の厚み方向に沿って延在する出力流路96を通過して出力ポート44から導出される。導出された作動油は、図示しないクラッチに供給される。ここで、例えば、第1弁孔24、第2弁孔34又は第3弁孔40内で摩耗粉が発生し、作動油に同伴されて流通した場合、該摩耗粉は、出力ポート44に設置されたフィルタ98によって捕集される。このため、クラッチには、清浄な作動油が供給される。
【0095】
以上のように、クラッチ圧となった作動油は、ボディ54の厚み方向に沿って流通するのみで、開放端面に形成された何らかの油路を流通することはない。要するに、開放端面に、クラッチ圧となった作動油を流通させるための油路を設ける必要はない。
【0096】
しかも、本実施の形態では、レギュレータバルブ12を間に挟むようにしてソレノイドバルブ14とコントロールバルブ16を並列配置するようにしている。すなわち、レギュレータバルブ12とコントロールバルブ16が平行な位置関係にあるので、レギュレータバルブ12とコントロールバルブ16を結ぶ第1油路20の長さを小さくすることができる。
【0097】
以上のような理由により第1油路20及び第2油路28が短尺化されることから、全ての油路の合計長さを短尺化することができる。結局、ボディ54、ひいては油圧制御装置10の小型化を図ることができる。
【0098】
さらに、レギュレータバルブ12、ソレノイドバルブ14及びコントロールバルブ16がボディ54の幅方向(X方向)に沿って軸線が平行となるように並列配置されるので、油圧制御装置10がボディ54の厚み方向Zに沿って大型化することがない。このことも相俟って、油圧制御装置10の一層の小型化を図ることができる。
【0099】
加えて、第1油路20及び第2油路28を短くすることができるので、作動油が第1弁孔24、第2弁孔34及び第3弁孔40に迅速に到達する。このため、レギュレータバルブ12、ソレノイドバルブ14及びコントロールバルブ16の応答速度が向上する。
【0100】
第3弁孔40に進入した作動油の一部は、第1連通孔78を介して第3弁孔40から導出され、第1プール76に貯留される。なお、第1プール76に一定量を超える作動油が進入した場合、過剰の作動油は、オーバーフロー壁82を越えて第1ドレン孔80から排出される。
【0101】
以上から諒解されるように、この油圧制御装置10では、レギュレータバルブ12及びコントロールバルブ16に高圧な作動油が供給される。そこで、本実施の形態では、高圧となる第1弁孔24及び第3弁孔40の近傍の第1挿通孔132間のピッチP1を小さくし、一方、比較的低圧となる第2弁孔34の近傍の第2挿通孔134間のピッチP2を大きくしている(
図3及び
図10参照)。必然的に、レギュレータバルブ12及びコントロールバルブ16側の連結ボルト同士の間が、ソレノイドバルブ14側の連結ボルト同士の間よりも密となる。
【0102】
このため、連結ボルトを介して油圧制御装置10を相手部材に取り付けたとき、レギュレータバルブ12及びコントロールバルブ16側の油路壁61に大きな面圧を付与することができる。すなわち、レギュレータバルブ12及びコントロールバルブ16側の油路壁61が相手部材に堅牢に密着する。従って、ボディ54の第3弁孔40近傍の部位と、相手部材との間から作動油が漏洩することが防止される。
【0103】
なお、ソレノイドバルブ14側の連結ボルト同士の間は、レギュレータバルブ12及びコントロールバルブ16側の連結ボルト同士の間に比して疎であるが、ソレノイドバルブ14に対しては、比較的低圧の作動油が供給又は導出される。従って、ソレノイドバルブ14側の油路壁61と相手部材との間に大きな面圧を付与しない場合であっても、ボディ54の第2弁孔34近傍の部位と、相手部材との間から作動油が漏洩することを十分に防止し得る。
【0104】
さらに、円筒状突部102、リブ部122及び連結用突部118が、第1弁孔24及び第3弁孔40の上方に対応する部位にそれぞれ設けられる。これら円筒状突部102、リブ部122及び連結用突部118が存在することにより、第1弁孔24及び第3弁孔40の周囲の強度が大きくなる。すなわち、ボディ54における比較的高圧となる部位が十分な強度を示すようになる。
【0105】
上記したように作動油が流通する間、出力流路96がリリーフバルブ46の導入ポート100にも連通しているため(
図9参照)、第3弁孔40から出力流路96に導出された作動油は、導入ポート100側にも流通する。導入ポート100が出力流路96に連なり且つボディ54の厚み方向に沿って延在するように形成されているので、リリーフバルブ46に向かう作動油の流通方向は、ボディ54の厚み方向のみとなる。すなわち、ボディ54の開放端面に、作動油をリリーフバルブ46に向かわせるための油路を設ける必要はない。このことも、全ての油路の合計長さの短尺化、ひいては油圧制御装置10の小型化に寄与する。また、リリーフバルブ46の応答速度の向上にも寄与する。
【0106】
上記したように、リリーフバルブ46を構成する球状弁体48には、作動油による押圧力と、閉止用スプリング50による弾発付勢力が作用する。閉止用スプリング50による弾発付勢力が作動油による押圧力(クラッチ圧)を上回っているときには、球状弁体48は、弁座52に着座した状態を維持する。該球状弁体48が、閉止用スプリング50によって弁座52側に弾発付勢されているからである。すなわち、この場合、リリーフバルブ46は閉状態である。
【0107】
通常、クラッチ圧は、閉止用スプリング50による弾発付勢力を下回るように設定される。従って、リリーフバルブ46が閉状態を維持するので、作動油のボディ54内での流通経路は、上記した入力ポート18から出力ポート44に至る経路のみである。
【0108】
なお、リリーフバルブ46が正常動作を営むか否かを検査する場合、先ず、第1ドレン孔80を、例えば、棒状の検査棒(図示せず)で閉塞する。次に、出力ポート44から、クラッチ圧を、閉止用スプリング50による弾発付勢力を上回るまで、すなわち、所定の閾圧力まで上昇させる。該閾圧力においてリリーフバルブ46が開状態となるときには動作正常、閉状態のままであるときには動作異常であると判断することができる。
【0109】
リリーフバルブ46は、動作正常時、以下のように動作して開状態となる。
【0110】
導入ポート100に進入した作動油が所定の閾圧力以上、例えば、所定の閾圧力が加わると、球状弁体48が作動油によって押圧されることで変位し、弁座52から離間する。これに伴って導入ポート100が開通し、リリーフバルブ46が開状態となる。なお、球状弁体48が変位する際、該球状弁体48がガイド部106に案内されるとともに、閉止用スプリング50が圧縮される。
【0111】
作動油は、その際、横孔として形成されたリリーフ孔108を流通するとともに、球状弁体48の導入ポート100側の半球部にて受圧される。また、リリーフ孔108が弁座52とガイド部106との間、すなわち、弁座52の直上に形成されているので、作動油がリリーフ室104の上部に向かうことはほとんどなく、リリーフ孔108を介して迅速にボディ54の外部に導出される。
【0112】
また、球状弁体48が作動油を半球部にて受圧すると、所定の変位量(リフト量)で保持される。この場合、所定の変位量は、球状弁体48がガイド部106内で作動油から受ける受圧力と、閉止用スプリング50による弾発付勢力とが均衡する位置である。すなわち、受圧力と弾発付勢力とを調整することによって、球状弁体48の保持位置を調整することが可能である。保持位置は、好ましくは弁座52の近傍に設定される。
【0113】
なお、受圧力の調整は、導入ポート100及びリリーフ孔108の各絞り流路径を調整することで行うことができる。例えば、リリーフ孔108の絞り流路径よりも導入ポート100の絞り流路径を小さくすると良好である。
【0114】
以上のように、球状弁体48が半球部全面にて受圧し、しかも、リリーフ孔108が弁座52の直上に形成されていることから、球状弁体48の変位量(リフト量)が小となる。閉止用スプリング50は、この変位量を許容し得る程度に圧縮可能なものであればよいので、閉止用スプリング50として、小型のものを採用することができる。従って、閉止用スプリング50を収容するリリーフ室104が形成された円筒状突部102の突出高さ(Z方向寸法)を小さくすることができる。必然的に、リブ部122及び連結用突部118の突出高さも小さくすることができるので、リリーフバルブ46及びその周囲、ひいては油圧制御装置10の小型化を図ることができる。
【0115】
また、上記したようにリリーフ室104の底壁に3個の切欠溝112が形成されることに伴い、ガイド部106が、縦溝が形成された形状となっている。このため、一層高い圧力が加わって球状弁体48が所定の変位量より上昇しようとすると、作動油は、切欠溝112からリークする。このリークにより、球状弁体48が上昇変位することを制限することができる。
【0116】
以上のようにして球状弁体48の上昇変位が制限されるので、閉止用スプリング50の変形量も小とすることができる。その結果、閉止用スプリング50の小型化、ひいては油圧制御装置10の小型化を図ることができる。なお、切欠溝112は、上述した球状弁体48の保持位置よりも若干上方で作動油がリークし得る位置に設定されている。
【0117】
油圧制御装置10は、作動油が流通することに伴い、上記と同様に、分岐されたライン圧の一方からソレノイド圧を得、該ソレノイド圧をパイロット圧として、ライン圧の残余の一方から所定のクラッチ圧を得る役割を果たす。
【0118】
リリーフバルブ46は、以上のようにして得られるクラッチ圧が所定の閾圧力を下回る場合、閉状態を保つ。一方、クラッチ圧が閾圧力以上となると、上記した通り、球状弁体48が弁座52から離間することで開状態となる。その結果、作動油がリリーフ孔108から排出される。このため、所定の圧力以上となった作動油がクラッチに供給されることが回避され、結局、クラッチを保護することができる。
【0119】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0120】
例えば、油圧制御装置10によって調圧された作動油の供給先は、クラッチに限定されるものではない。すなわち、調圧された作動油を、無段変速機(CVT)用プーリの駆動油等として用いるようにしてもよい。