特許第6162493号(P6162493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162493
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20170703BHJP
   A61B 8/12 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61B8/14
   A61B8/12
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-122693(P2013-122693)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-239731(P2014-239731A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 広治
(72)【発明者】
【氏名】泉 実教
(72)【発明者】
【氏名】大井 伸秀
(72)【発明者】
【氏名】村松 拓
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−260056(JP,A)
【文献】 特開2012−213558(JP,A)
【文献】 特開2000−185036(JP,A)
【文献】 特開2006−167267(JP,A)
【文献】 特開2012−61261(JP,A)
【文献】 特開2008−188417(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0330158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブからの受信信号に基づき超音波画像を生成する超音波画像生成部と、
前記超音波プローブに取り付けた位置センサを含み、前記超音波プローブの3次元空間上の位置情報を取得する位置情報取得部と、
画像データを取得し前記超音波画像に対応する参照画像を得る画像取得部と、
前記被検体の診断目的の情報及び体表用か又は体腔内用かを示す超音波プローブの種類の情報の少なくとも一方の情報に応じて、前記参照画像の表示すべき断面方向を特定し、特定された断面方向の参照画像を形成する参照画像形成部と、
前記参照画像形成部で形成された参照画像と前記超音波画像生成部からの超音波画像を表示する表示部と、
を具備する超音波診断装置。
【請求項2】
前記参照画像形成部は、前記特定した断面方向のデータを記憶する記憶部を含む請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記参照画像形成部は、前記参照画像の断面の向きが操作者により変更されたとき、前記記憶部に記憶した前記断面方向データを更新する請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記参照画像形成部は、前記位置情報をもとに前記超音波画像と前記画像データの位置合わせを行い、前記画像データから前記超音波プローブの走査位置に対応し、かつ断面の向きが前記断面方向のデータに基づいて自動調整された2次元の参照画像を形成する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記参照画像形成部は、前記参照画像の表示すべき前記断面方向として、少なくともアキシャル、サジタル、コロナルのいずれかを特定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記参照画像形成部は、さらに前記被検体の診断部位の情報と使用する超音波プローブの種類を示す情報に応じて前記2次元の参照画像の回転角度を設定し、
前記設定した回転角度に基づいて前記2次元の参照画像の回転角度を調整する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記参照画像形成部は、同一の超音波プローブで異なる部位を診断する場合に、診断部位に応じて前記参照画像の表示すべき断面方向を特定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記参照画像形成部は、前記超音波プローブによる診断部位が心臓の場合に、前記参照画像の断面の向きが心尖部四腔断面に対応した画像となるように前記断面方向を特定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記画像取得部は、前記画像データとして、超音波画像診断装置以外の医用画像診断装置によって撮影した3次元画像データを取得する請求項1記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に係り、超音波画像とともに医用画像診断装置によって取得した画像を参照画像として表示する超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医用装置として超音波診断装置が使用されている。また超音波診断装置は、X線CT装置(X線コンピュータトモグラフィ装置)、MRI装置(磁気共鳴イメージング装置)等の様々なモダリティに病院内のネットワークを介して接続可能であり、超音波画像と他の医用画像診断装置で取得した画像を利用して疾患の診断及び治療を支援するようにしている。
【0003】
例えば、超音波プローブによって走査される断面と、病巣が検出されたCT画像又はMRI画像とを、磁気式の位置センサを用いて位置合わせし、超音波画像(エコー画像)と同じ断面のCT画像又はMRI画像を参照画像として表示し、病巣の位置に超音波プローブをナビゲートする超音波診断装置が知られている。
【0004】
このように超音波画像(エコー画像)と参照画像を位置合わせして結合して表示する機能は、Fusion機能と呼ばれ、初期癌の診療等に欠かせない機能となっている。尚、磁気式の位置センサは、例えばトランスミッタが形成する磁場内に設けられ、超音波プローブに取り付けられている。
【0005】
ところで、従来では、エコー画像と参照画像を位置合わせする際に、参照画像としてアキシャル(Axial)、サジタル(Sagittal)、コロナル(Coronal)といった基準断面方向の画像を表示し、それに超音波画像を合わせるという手順を採ってきた。しかしながら、診断箇所によって参照画像の最適な断面が異なるため、参照画像の調整に手間がかかるという不便さがあった。また、プローブの種類によっても参照画像の最適な断面が異なることがあるため、参照画像の調整に手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−151131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明が解決しようとする課題は、診断目的、プローブの種類に応じて参照画像の初期表示の断面の向きを設定する超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブからの受信信号に基づき超音波画像を生成する超音波画像生成部と、前記超音波プローブに取り付けた位置センサを含み、前記超音波プローブの3次元空間上の位置情報を取得する位置情報取得部と、画像データを取得し前記超音波画像に対応する参照画像を取る画像取得部と、前記被検体の診断目的の情報及び体表用か又は体腔内用かを示す超音波プローブの種類の情報の少なくとも一方の情報に応じて前記参照画像の表示すべき断面方向を特定し、特定された断面方向の参照画像を形成する参照画像形成部と、前記参照画像形成部で形成された参照画像と前記超音波画像生成部からの超音波画像を表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る超音波診断装置の概略的な構成を示すブロック図。
図2】実施形態における位置情報取得部の位置センサの配置を示す説明図。
図3】実施形態における参照画像と超音波画像の表示例を示す説明図。
図4】実施形態におけるCPUとその周辺部の構成を示すブロック図。
図5】実施形態における断面の方向を概略的に示す説明図。
図6】実施形態における前立腺の診断時の様子を示す説明図。
図7】参照画像の一般的な回転処理を示す説明図。
図8】実施形態における参照画像の回転処理を示す説明図。
図9】実施形態におけるプローブによる腹部と心臓の走査例を示す説明図。
図10】実施形態における心尖部四腔断面を概略的に示す説明図。
図11】実施形態におけるCPUの動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、一実施形態に係る超音波診断装置10の概略的な構成を示すブロック図である。図1において、超音波診断装置の本体100は、被検体(図示せず)に対して超音波の送受波を行なう超音波プローブ11と、超音波プローブ11を駆動して被検体に対して超音波走査を行う送受信部12と、送受信部2によって得られた受信信号を処理してBモード画像データ、ドプラ画像データ等の画像データを生成するデータ処理部13を備えている。
【0012】
また、本体100には、データ処理部13から出力された画像データを基に2次元画像データの生成等を行う画像生成部14と、画像生成部14で生成した画像データを収集して記憶する画像データベース15を設けている。さらに本体100には、装置全体を制御する中央処理装置(CPU)16と、記憶部17と、本体100をネットワーク22に接続するためのインターフェース部18を備えている。インターフェース18部には、各種のコマンド信号等を入力する操作部19と、位置情報取得部20が接続されている。また本体100には、画像生成部14で生成された画像等を表示するモニタ(表示部)21が接続されている。尚、CPU16と各回路部との間は、バスライン101を介して接続されている。
【0013】
またインターフェース18は、ネットワーク22に接続可能であって、超音波診断装置10で取得した画像データを、ネットワーク22を介して外部の医用サーバ23に保存することもできる。またネットワーク22には、MRI装置、X線CT装置、核医学診断装置等の医用画像診断装置24が接続されており、これら医用画像診断装置24で取得した医用画像データを医用サーバ23に保存することができる。
【0014】
超音波プローブ11は、その先端面を被検体の体表面に接触させて超音波の送受波を行なうものであり、例えば一次元に配列された複数個の圧電振動子を有している。圧電振動子は電気音響変換素子であり、送波時には超音波駆動信号を送信超音波に変換し、また受波時には被検体からの受信超音波を超音波受信信号に変換する。例えば、超音波プローブ11は、セクター型、リニア型又はコンベックス型等の超音波プローブである。以下の説明では、超音波プローブ11を単にプローブと呼ぶ場合もある。
【0015】
送受信部12は、超音波駆動信号を生成する送信部121と、超音波プローブ1から得られる超音波受信信号を処理する受信部122とを備えている。送信部121は、超音波駆動信号を生成してプローブ11に出力し、受信部122は、圧電振動子からの超音波受信信号(エコー信号)をデータ処理部13に出力する。
【0016】
データ処理部13は、送受信部12から出力された信号から、Bモード画像データを生成するBモード処理部131と、ドプラ画像データを生成するドプラ処理部132等を備えている。Bモード処理部131は、送受信部12からの信号に対して包絡線検波を行ったのち対数変換し、対数変換した信号をデジタル信号に変換してBモード画像データを生成し、画像生成部14に出力する。
【0017】
ドプラ処理部132は、送受信部12からの信号に対してドプラ偏移周波数を検出しデジタル信号に変換した後、ドプラ効果による血流や組織を抽出し、ドプラデータを生成して画像生成部14に出力する。
【0018】
画像生成部14は、データ処理部13から出力されたBモード画像データ、ドプラ画像データ等を用いて超音波画像を生成する。また画像生成部14は、DSC(Digital Scan Converter)を含み、生成した画像データの走査変換を行い、モニタ21に表示可能な超音波画像(Bモード画像やドプラ画像)を生成する。したがって、超音波プローブ11、送受信部12、データ処理部13及び画像生成部14は、超音波画像を生成する超音波画像生成部を構成する。
【0019】
画像データベース15は、画像生成部14によって生成された画像データを記憶する。また、画像データベース15は、インターフェース部18を介して他の医用画像診断装置24(MRI装置やX線CT装置等)で撮影した3次元画像データ、例えば、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像等のデータを取得し記憶する。取得した3次元画像データは、超音波画像に対応する参照画像(後述)を得るのに利用可能である。したがって、画像データベース15とインターフェース部18は、3次元画像データを取得する画像取得部を構成する。
【0020】
CPU16は、超音波診断装置10の全体を制御して各種の処理を実行する。例えば、操作部19から入力された各種設定要求や、記憶部17から読込んだ各種制御プログラム及び各種設定情報に基づき、送受信部12、データ処理部13及び画像生成部14を制御する。また画像データベース15に記憶した超音波画像等をモニタ21に表示するように制御する。
【0021】
記憶部17は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、被検体ID、医師の所見等)や、診断プロトコル等の各種データを記憶する。さらに記憶部17は、必要に応じて画像データベース15が記憶する画像の保管等にも使用される。また記憶部17は、CPU16による処理に用いられる各種情報を記憶する。
【0022】
インターフェース部18は、操作部19、位置情報取得部20及びネットワーク22と、本体100との間での各種情報のやり取りを制御するインターフェースである。操作部19は、各種スイッチ、キーボード、トラックボール、マウス、タッチコマンドスクリーン等の入力デバイスを備え、操作者からの各種設定要求を受け付け、本体100に対して各種設定要求を転送する。例えば、操作部19は、超音波画像とX線CT画像等との位置合わせに係る各種操作を受付ける。
【0023】
モニタ21は、超音波診断装置10のオペレータが操作部19を操作して各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、本体100において生成された超音波画像と、X線CT画像等を並列表示する。
【0024】
また、CPU16は、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に則って、他の医用画像診断装置24(例えば、X線CT装置、MRI装置等)の3次元画像データを、ネットワーク22を介して送受信する。尚、X線CT装置、MRI装置等の3次元画像データを、CD、DVD、USBなどの記憶媒体に記憶し、記憶媒体に記憶したデータを超音波診断装置10に取り込むようにすることもできる。
【0025】
位置情報取得部20は、例えば、超音波プローブ11がどこに位置するかを示す位置情報を取得する。位置情報取得装置20としては、例えば、磁気センサや、赤外線センサ、光学センサ、カメラ等が使用される。以下の説明では、磁気センサを用いる例を述べる。
【0026】
次に位置情報取得部20について説明する。本実施形態では、超音波プローブ11によって被検体を走査する際に、病巣が検出されたCT画像又はMRI画像を参照画像として表示し、走査する断面と参照画像の位置が同じになるように位置合わせするため、位置情報取得部20を設けている。
【0027】
図2は、位置情報取得部20における位置センサの配置を概略的に示す説明図である。即ち、図2の位置センサシステムは、トランスミッタ31(送信器)と位置センサ(受信器)32を含む。トランスミッタ31は、例えば磁気送信機であり、寝台34の近くの固定位置にあるポール33等に取り付けられ、基準信号を送信するもので、自装置を中心として外側に向かって磁場を形成する。尚、トランスミッタ31は、超音波診断装置本体に取り付けたアームの先端に取り付けたり、可動式のポールスタンドのアームの先端に取り付けるようにしても良い。
【0028】
トランスミッタ31によって形成される3次元の磁場には、トランスミッタ31から送信される磁気を受信可能な領域内に、例えば磁気センサでなる位置センサ32を取り付けている。以下の説明では、位置センサ32を単にセンサ32と呼ぶこともある。
【0029】
センサ32は、超音波プローブ11に取り付けられ、トランスミッタ31からの基準信号を受信することにより、3次元空間上の位置情報を取得し、超音波ブローブ11の位置と姿勢(傾き)を検出する。センサ32の位置情報は、インターフェース部18を介してCPU16に供給される。
【0030】
CPU16は、超音波プローブ11によって被検体を走査する際に、医用画像診断装置24によって生成された3次元画像データのうち任意の断面と、超音波プローブ11によって走査される断面との位置合わせを行い、3次元画像データと3次元空間とを関連付ける。
【0031】
例えば、CPU16は、プローブ11に位置センサ32を取り付けることにより、センサ32の検出結果をもとに、現在表示している超音波画像(2次元画像)が被検体Pのどの位置と角度で取得したものかを計算する。このとき、トランスミッタ31は、位置・角度情報の基準(座標系の原点)となる。またCT画像やMRI画像のボリュームデータを超音波診断装置10に読込み、MPR画像を表示する。
【0032】
そして、参照画像(MPR画像)と超音波画像を同一画面に表示し、参照画像の断面の向き(Orientation)に相当する向きに超音波プローブ11の走査の向きを一致させる角度合わせと、参照画像と超音波画像の両方で観察可能な目印上に点を設定し位置を一致させる目印合わせにより位置合わせを行う。つまり、位置センサ32の向き及び座標をボリュームデータの座標と関連付けることで、超音波プローブ11の現時点の走査面とほぼ同一の位置の2次元画像を他のモダリティのボリュームデータから生成することができ、超音波プローブの移動に伴って変化する超音波画像と、同じ断面のMPR画像を表示させることが可能になる。
【0033】
これにより、以後、プローブ11の移動に伴って変化する超音波画像と同じ断面をMPR画像で表示することができる。したがって、超音波画像では確認が難しい腫瘍等をMPR画像で確認することができる。このように超音波画像(エコー画像)と参照画像を位置合わせして結合し表示する機能を以下の説明では、「Fusion」機能と呼ぶ。
【0034】
図3は、位置合わせした後の参照画像(a)と超音波画像(b)をそれぞれ示す。参照画像(a)としては、例えばX線CT装置によって収集したボリュームデータから生成したMPR画像(Multi Planer Reconstruction画像)が用いられる。なお、参照画像としては、MRI装置で取得した画像を利用することもできる。
【0035】
図4は、本実施形態の特徴部であるCPU16とその周辺部の構成を示すブロック図である。図4において、CPU16は、入力判断部41、制御ソフトウェアを含むコントローラ42、表示処理部43、モード変換処理部44、参照画像形成部45及び合成部46を有す。記憶部17は、選択プローブの種類に関する情報及び診断目的の情報が保存されたシステム情報テーブル171と、断面方向データを記憶したデータベース172を含み、画像データベース15は、超音波診断装置10以外の医用画像診断装置24から取得したCT画像やMRI画像等の3次元画像を保存する。
【0036】
記憶部17は、コントローラ42によって情報の書き込みや読み出しが制御され、システム情報テーブル171は、表示処理部43に接続され、データベース172は参照画像形成部45に接続されている。また画像データベース15は、参照画像形成部45に接続されている。
【0037】
入力判断部41は、操作部19に接続され、操作部19でどのような入力操作がなされたかを判断し、判断情報をコントローラ32に供給する。コントローラ42は、モード変換処理部44及び参照画像形成部45に接続され、モード変換処理部44は、表示処理部43及び参照画像形成部45に接続されている。また参照画像形成部45は、ケーブル47を介して位置情報取得部20に接続され、参照画像形成部45で形成された参照画像と表示処理部43で処理されたエコー画像が合成部46で合成されてモニタ21に出力される。
【0038】
以下、CPU16の制御のもとに超音波画像と参照画像(例えばCT画像)を表示する際のFusion機能について説明する。
【0039】
一般に、Fusion機能の適用は、超音波プローブ11を体表にあてた状態を前提としており、主に診断目的(Exam Type)は、腹部であり、臓器を絞ると肝臓の診療に使用されてきた。
【0040】
しかしながら、診断目的が前立腺の診察である場合、2つの診断方法がある。1つ目の方法は、従来の腹部の診断と同様に、プローブを被検体の体表から当てる方法で、主に前立腺肥大の様子を観察するために使用される。使用するプローブは体表用のコンベックスプローブ(例えば東芝製のPVT-375BT等)である。
【0041】
2つ目の方法は、プローブを肛門から差し込み直腸の壁面を介して前立腺を観察する方法で、主に前立腺癌を観察するために使用される。尚、この2つ目の方法は前立腺肥大の観察にも使用される場合がある。使用されるプローブは体腔内のコンベックスプローブ(例えば東芝製のPVT-781VT等)である。
【0042】
診断目的が前立腺の場合、Fusion機能の参照画像としてMRI画像又はCT画像を使用することが多く、参照画像の断面の向き(Orientation)はアキシャルが多く用いられている。つまり、Fusion機能において、MRI画像との初期の位置合わせでは、角度と位置の両方を合わせる必要があるが、このときアキシャル断面を基準にして操作が行われることが多い。これは操作者が分かり易いという理由からである。
【0043】
図5は、CT装置及びMRI装置での断面の方向を概略的に示す説明図である。断面の向きとしては、被検体に水平な体軸断面(アキシャル:Axial)と、縦切りの断面(サジタル:Sagittal)と、横切り断面(コロナル:Coronal)等の基準断面方向が一般的に知られている。
【0044】
図6は、前立腺の診断時の様子を示す説明図であり、便宜上、被検体の代りにファントムを用いており、そのCT像50のアキシャル断面を示している。図6において、51は直腸の穴であり、52は尿管、53は腫瘍を示す。一方、図6に示すように、前立腺肥大の診断では太い実線で示すように体表(矢印A方向)からプローブを当てて超音波撮影を行う。また、前立腺癌の診断では、太い点線で示すように、体腔内(直腸から挿入された状態:矢印B方向)からプローブを当てて超音波撮影を行う。
【0045】
図6において、CT像51でなる参照画像の断面の向きはアキシャルであるが、超音波プローブ11を体表から当てた場合と、体腔内から当てた場合とでは、得られるエコー画像の位置関係が異なる。したがって、体腔内のプローブを用いて直腸壁から観察する場合は、参照画像のアキシャル断面とエコー画像の向きが逆向きになることがあった。
【0046】
即ち、一般的には、プローブを体表にあてた状態を前提として、参照画像のアキシャル断面との位置合わせを行っているが、体腔内プローブを用いて直腸壁から観察する場合には、同じアキシャル断面に対してエコー画像との向きの関係が上下方向に反対の向きの関係となる。したがって、参照画像を回転させて対応していた。
【0047】
図7は、参照画像の一般的な回転処理を示す説明図である。図7(a)は画像データベースに読み込んだ参照画像50(CT画像)を示す。Fusion機能を起動すると、図7(b)に示すように参照画像50と超音波装置で撮影したエコー画像60が並べて表示される。エコー画像60のうち、61は直腸の穴であり、62は尿管、63は腫瘍を示す。参照画像50とエコー画像60の位置関係が上下逆になっている場合は、図7(c)に示すように参照画像50を、X軸を基準に180度回転していた。
【0048】
しかしながら、画像の回転処理は、患者が入れ替わりFusion機能を使用する毎に同じ操作をすることになり、非常に手間がかかるため、操作者(医師、検査技師等)は時間と労力を費やし負担となっている。
【0049】
さらに、プローブ11を肛門から直腸に挿入する場合、人体の構造上、プローブの操作方向に制約が生じるため、アキシャル軸に対してある程度、挿入角度が傾くことになる(例えば30度前後傾く傾向にある)。したがって、前立腺の診断において参照画像を回転処理する場合には、210度(180+30度)回転した方が診断に適した画像となる。
【0050】
そこで、本実施形態では、診断目的(例えば前立腺、心臓、内臓の診断等)に応じて参照画像の断面の方向を予め初期設定し、かつ参照画像を回転処理する必要がある場合は、超音波プローブ11の種類(体表用のプローブ、体腔内用のプローブ)に応じて回転角度を初期設定するようにしている。
【0051】
実施形態によれば、診断に先だって診断目的とプローブの種類を操作部19から入力しておけば、Fusion機能を起動させたとき、初期設定により参照画像の断面の向きと回転角度が自動的に調整された参照画像を生成し、エコー画像とともに表示することができる。
【0052】
図8は、実施形態における参照画像の回転処理を示す説明図である。図8(a)は画像データベース15に読み込んだ参照画像50(CT画像)を示す。Fusion機能を起動すると、図8(b)に示すように参照画像50と超音波装置で撮影したエコー画像60が並べて表示される。このとき、参照画像50は、初期設定にしたがってアキシャル断面の画像を表示し、かつ参照画像50を、X軸を基準に210度回転した画像を表示する。したがって、操作者は参照画像を何度も調整することなく、時間と労力を低減することができる。
【0053】
また同一プローブで複数の部位を診断する場合、診断目的によって参照画像の断面の方向をそれぞれ異ならせる方が良い。例えば、図9に示すように、セクタープローブを使用した場合、腹部の走査ではアキシャル断面に相当する向きにプローブを置くのが一般的であるが、心臓の走査ではアキシャルではなく心尖部四腔断面を基準面とした方が診断しやすい。
【0054】
心尖部四腔断面は、図10図に示すように、右房右室、左房左室のそれぞれの異常の有無を観察するに適した断面であり、心尖部を含みかつ四腔が同時に描出されるようにプローブを走査することが多い。したがって、参照画像の断面の向きも心尖部四腔断面に対応するように初期設定することで、Fusion機能を起動したときに診断に適した参照画像を表示することができる。
【0055】
実施形態では、超音波画像診断装置10の構成に、図4で示される システム情報テーブル171と、断面方向データを記憶したデータベース172を追加し、さらに、参照画像形成部45に参照画像の初期断面を制御する機能、及び参照画像の初期断面の断面方向データを操作者のボタン操作に応じて変更する処理を追加している。
【0056】
以下、図4のCPU16の動作を説明する。即ち、予め操作者が操作部19から診断目的と使用するプローブの種類を入力すると、コントローラ42は、診断目的及び使用する超音波プローブの種類に応じて参照画像の断面方向を設定し、設定した断面方向データをデータベース172に記憶する。つまりコントローラ42は、断面方向設定部を構成する。
【0057】
例えば、体表用のコンベックスプローブについては、参照画像の断面がアキシャルであり、断面の回転角度の補正は0である。また、体腔内のコンベックスプローブについては、参照画像の断面がアキシャルであり、断面の回転角度の補正は、上下方向の回転として210度が設定されている。ここで、210度とは、回転角度180度にプローブ11がアキシャル面に対して傾く角度の30度を加算した合計の角度である。上下方向の回転はグラフィックスの座標系ではX軸(横軸)を中心に回転することから、X軸回転量210度と呼ぶこともある。
【0058】
このような状態において、ユーザは、Fusion機能で使用する参照画像を選択したあと、操作部19を操作して、Fusion機能を開始するFusionボタンを押す。ボタンが押されたことは入力判断部41が検出する。入力判断部41は一定間隔ごとに操作部19のすべてのボタンの操作状況を確認している。したがって、Fusionボタンが押されたことによる状態変化を入力判断部41で判断することができ、Fusionボタンが押された旨をコントローラ42に渡す。
【0059】
コントローラ42は、Fusionボタンの操作に応答して、動作モードを「Fusion」とするために、システム情報テーブル171からモード変更処理部44に対してプローブの種類を示す情報と診断目的の情報を渡す。モード変更処理部44は、モード変更に伴い参照画像の表示が必要なことと、参照画像を表示するためのモニタ21のレイアウト情報、エコー画像の表示向きの情報、さらにプローブの種類を示す情報と診断目的の情報を参照画像形成部45に渡す。
【0060】
参照画像形成部45は、例えばMRI装置によるスライス画像を画像データベース15から複数読み込み、3次元のデータを構成する。次に診断目的及びプローブの種類の情報をもとに、使用されてプローブに応じた断面方向データをデータベース172から取得する。例えばプローブの種類が体腔内のコンベックスプローブである場合は、X軸回転量:210度の情報が得られる。
【0061】
参照画像形成部45は、構成されたMRI画像の3次元データから体表面を基準として、データの中心部から210度X軸に回転した位置から順次データを取得し、2次元の画像を構成する。データの読み始めの位置がプローブの被検者との接触位置となり、Y軸方向に読み出してくと順次に接触位置から離れた位置の画像が形成され、2次元の画像データとなる。
【0062】
さらに図8(b)の右に示すように、プローブの被検者との接触位置がモニタ上で下になるようなエコー画像である場合、即ち、上下反転の表示がされている場合、参照画像形成部45は、それに相応した向きに2次元の参照画像が表示されるように処理して合成部46に出力する。
【0063】
合成部46では、表示処理部43で処理されたエコー画像と、参照画像形成部45で形成された参照画像を合成してモニタ21に出力する。モニタ21には、図8(b)に示すように、処理されたエコー画像と並べて参照画像が表示される。
【0064】
また、操作者が参照画像の傾きを変更した場合、操作部19から入力判断部41を介してコントローラ42に伝えられ、コントローラ42は、参照画像形成部45に回転軸の情報と回転量の情報を送る。参照画像形成部45は、回転軸の情報と回転量の情報をもとに3次元データから2次元の参照画像を構成して出力する。
【0065】
また、操作者が変更した表示の方向を保存するため、操作部19の保存ボタンを入力すると、入力判断部41及びコントローラ42を通じて保存ボタンが押されたことの情報が参照画像形成部45に伝えられ、参照画像形成部45は、選択されているプローブの情報に対応する断面方向データをデータベース172に更新記憶する。尚、診断目的が心臓の検査である場合は、参照画像の断面の向きが心尖部四腔断面に対応した画像となるように処理されて表示される。
【0066】
図11は、図4のCPU16の動作を説明するフローチャートである。図11のスタートステップにて、ユーザがFusion機能で使用する参照画像を選択したものとする。ステップS1で、操作者が操作部19を操作してFusionボタンを押すと、入力判断部41は、入力されたボタンの種類を判断し、コントローラ42に情報を提供する。
【0067】
コントローラ42は、ステップS2で、入力判断部41からの情報に基づき、モード変更処理部44に対してFusion機能のモードに変更させる。またコントローラ42は、システム情報テーブル171に保存された診断目的の情報と選択プローブの種類に関する情報をモード変換処理部44に渡す。
【0068】
次のステップS3で、モード変更処理部44は、モード変更に伴う画面レイアウト等の情報を生成しそれを表示処理部43に渡す。またステップS4において、モード変更処理部44は、エコー画像の上下左右の反転表示情報やプローブの種類及び診断目的の情報を参照画像形成部45に渡す。
【0069】
ステップS5で、参照画像形成部45は画像データベース15から読み出した参照画像データをもとに3次元画像を構成する。またステップS6で、参照画像形成部45は、参照画像を表示するための処理と合わせて、プローブの種類及び診断目的の情報に基づき、データベース172からの断面方向データをもとに、3次元のCT/MRI画像データの断面抽出角度を計算する。さらに、ステップS7で参照画像形成部45は、上下左右の反転表示情報及び画面レイアウトの情報を使用し、画像の表示方向を計算する。
【0070】
そしてステップS8で、参照画像形成部45は、ステップS6,S7での計算に基づいて構成された断面像を参照画像として形成し、合成部46に出力し、モニタ21上に表示して処理を終了する(エンド)。
【0071】
上述したように、本実施形態では、被検体の診断目的及び使用する超音波プローブの種類に応じて参照画像の断面方向を設定するため、エコー画像との位置合わせを行う前に参照画像の断面の向きを所望の向きにすることができる。したがって操作者は、Fusionボタンを押すことで超音波画像と、それに対応した参照画像を表示することができ、操作手順を軽減化することができる。
【0072】
また超音波プローブが体腔内用であり、プローブの操作方向に制約が生じるような場合でも参照画像を適切な角度に回転処理することができ、診断に適した画像を表示することができる。
【0073】
尚、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0074】
10…超音波診断装置
11…超音波プローブ
14…画像生成部
15…画像データベース
16…CPU
17…記憶部
19…操作部
20…位置情報取得部
21…モニタ(表示部)
31…トランスミッタ
32…位置センサ
41…入力判断部
42…コントローラ
43…表示処理部
44…モード変換処理部
45…参照画像処理部
46…合成部
図1
図2
図3
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図11