(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
荷電粒子が運動する運動領域内に配置される一対の電極と、前記電極に接続され、前記荷電粒子が当該電極間を移動する際の運動を電力として負荷に出力する出力回路とを備え、
前記出力回路に前記負荷と直列に接続される開閉手段を備えるとともに、前記各電極の近傍に前記運動領域内を移動する前記荷電粒子の位置を観測する観測手段を備え、この観測手段が、前記荷電粒子の位置に応じて前記開閉手段を開閉することを特徴とする発電装置。
前記出力回路は、互いに並列に接続され、第1の開閉手段及び第1の負荷を備える第1出力回路と、第2の開閉手段及び第2の負荷を備える第2出力回路とを備え、第1出力回路は、前記荷電粒子が一方の電極に接近した場合に、第1の開閉手段を閉じて第1の負荷に電力を出力し、第2出力回路は、前記荷電粒子が他方の電極に接近した場合に、第2の開閉手段を閉じて第2の負荷に電力を出力することを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
前記運動領域は、前記荷電粒子が収容される密閉容器であり、この密閉容器の両端部に前記電極が対向して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の発電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の振動から得られる電力は微小であるため発電効率の向上が要望されている。しかしながら、従来の構成では、発電された電力は、整流回路を介して整流されることにより、損失が増大し、発電効率が低減するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、発電効率の向上を図った発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、荷電粒子が運動する運動領域内に配置される一対の電極と、前記電極に接続され、前記荷電粒子が当該電極間を移動する際の運動を電力として負荷に出力する出力回路とを備え、前記出力回路に前記負荷と直列に接続される開閉手段を備えるとともに、前記各電極の近傍に前記運動領域内を移動する前記荷電粒子の位置を観測する観測手段を備え、この観測手段が、前記荷電粒子の位置に応じて前記開閉手段を開閉することを特徴とする。
【0007】
この構成において、前記出力回路は、互いに並列に接続され、第1の開閉手段及び第1の負荷を備える第1出力回路と、第2の開閉手段及び第2の負荷を備える第2出力回路とを備え、第1出力回路は、前記荷電粒子が一方の電極に接近した場合に、第1の開閉手段を閉じて第1の負荷に電力を出力し、第2出力回路は、前記荷電粒子が他方の電極に接近した場合に、第2の開閉手段を閉じて第2の負荷に電力を出力しても良い。
また、前記運動領域は、前記荷電粒子が収容される密閉容器であり、この密閉容器の両端部に前記電極が対向して配置されていても良い。
【0008】
また、前記開閉手段は、トランジスタ素子で形成されていても良い。また、前記運動領域の外側から前記荷電粒子に振動を与える振動付与手段を備えても良い。また、前記荷電粒子は、100マイクロメートル以下の大きさに形成されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極の近傍に配置された観測手段が、荷電粒子の位置に応じて出力回路に設けた開閉手段を開閉するため、荷電粒子の運動によって生じた電力を効率良く出力回路の負荷に出力させることができ、従って、発電効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態にかかる発電装置を示す回路図である。
発電装置10は、
図1に示すように、荷電粒子11を収容した容器(運動領域)12と、この容器12の長手方向に対向して配置される一対の電極13,14と、これら各電極13,14に接続され、荷電粒子11が当該電極13,14間を移動する際の運動を電力として出力する出力回路15とを備える。
【0012】
荷電粒子11は、例えば、直径が数マイクロメートル(μm)の大きさに形成された樹脂(ポリスチレン)製の粒子に正電荷を帯電させたものである。荷電粒子11は、容器12に伝達される振動により当該容器12内を自由に運動する。本構成では、荷電粒子11の大きさは、直径が100マイクロメートル以下に設定されることが望ましく、更には、30マイクロメートル以下に設定されることがより一層望ましい。
荷電粒子11が100マイクロメートル以下の大きさに設定されることにより、当該荷電粒子11は、容器12内に伝達される熱振動(熱揺らぎ)や音振動等の微細な振動によって容器12内を自由に運動可能となる。
【0013】
容器12は、断熱係数の小さい材料(いわゆる等温壁)で形成された筒状の密閉容器であり、容器12外部の微細な振動を荷電粒子11に伝達する。この容器12の長手方向の両端には、それぞれ電極13,14が対向して配置され、これら電極13,14間を荷電粒子が運動することに伴い、電極13,14間に起電力が生じる。
【0014】
出力回路15は、上記した電極13,14に対して、互いに並列に接続される第1出力回路15Aと第2出力回路15Bとを備える。これら第1出力回路15A及び第2出力回路15Bは、相互に補完する役割を担い、第1出力回路15Aには、荷電粒子11が一方の電極13から他方の電極14へ移動する際の電力が出力され、第2出力回路15Bには、荷電粒子11が他方の電極14から一方の電極13へ移動する際の電力が出力される。これにより、片方の電極に電荷が偏って蓄積されることが防止されるため、荷電粒子11の往復運動を電力として効率良く出力することができる。
第1出力回路15A及び第2出力回路15Bは、同一の構成を備えるため、第1出力回路15Aについて説明し、第2出力回路15Bは同種の符号を付して説明を省略する。
【0015】
第1出力回路15Aには、電極13,14間に直列に接続されたLED(Light Emitting Diode)素子(第1の負荷)16Aと、このLED素子16Aに電力を出力するために開閉する状態記憶半導体スイッチ(第1の開閉手段)17Aとが設けられている。
本実施形態では、第1出力回路15Aでは、LED素子16Aは、一方の電極13と状態記憶半導体スイッチ17Aとの間に配置され、第2出力回路15Bでは、LED素子16B(第2の負荷)は、他方の電極14と状態記憶半導体スイッチ17B(第2の開閉手段)との間に配置される。
この状態記憶半導体スイッチ17A,17Bは、電極13,14間を移動する荷電粒子11の位置に応じて開閉されるとともに該開閉状態を保持する電気素子であり、本実施形態では、強誘電体メモリ(トランジスタ型FeRAM)が用いられている。
【0016】
発電装置10は、容器12内の荷電粒子11の位置を観測するとともに、観測した荷電粒子11の位置に基づいて、状態記憶半導体スイッチ17Aの開閉を操作する観測部(観測手段)20を備える。
観測部20は、容器12内の上記電極13,14の近傍にそれぞれ配置される観測用電極21,22と、これら観測用電極21,22と状態記憶半導体スイッチ17Aとを接続する第1観測回路23Aと、該観測用電極21,22と状態記憶半導体スイッチ17Bとを接続する第2観測回路23Bとを備える。ここで、第1観測回路23A及び第2観測回路23Bは、同一の構成を備えるため、第1観測回路23Aについて説明し、第2観測回路23Bは同種の符号を付して説明を省略する。
【0017】
観測用電極21,22は、容器12と同様に環状(円筒状)に形成されている。観測用電極21は、容器12の長手方向における電極13の内側近傍に配置され、観測用電極22は、容器12の長手方向における電極14の内側近傍に配置される。
観測用電極21,22は、容器12内の電位変化を検知するものであり、この電位変化から容器12内の荷電粒子11の位置がわかるようになっている。
【0018】
第1観測回路23Aは、観測用電極21,22が検知した電位変化に応じて開閉する半導体スイッチ24A,25Aと、これら半導体スイッチ24A,25Aに直列に接続されて第1観測回路23Aに電力を供給する電池26Aとを備える。
また、第1観測回路23Aは、半導体スイッチ24A,25Aの間に、該半導体スイッチ24A,25Aと直列に接続されるLED素子31A,32A(負荷)を備える。
半導体スイッチ24A,25Aは、それぞれ検知対象となる観測用電極21,22の電位に応じて開閉する電気素子であり、本実施形態では電界効果トランジスタが用いられている。具体的には、半導体スイッチ24A,25A(電界効果トランジスタ)の各ゲート端子に、それぞれ観測用電極21,22が接続され、ゲート電位に応じてドレイン、ソース間の導通が制御される。
【0019】
また、第1観測回路23Aは、LED素子31A,32Aの間から状態記憶半導体スイッチ17Aに延びる制御配線27Aを備え、半導体スイッチ24A,25Aのいずれかが閉じた場合に、電池26Aの電位が制御配線27Aを通じて、状態記憶半導体スイッチ17Aに印加され、当該状態記憶半導体スイッチ17Aが閉じられる。
この構成では、電池26Aは、状態記憶半導体スイッチ17Aを開閉する電位を与えるだけでなく、LED素子31A,32Aを点灯させる電源として機能する。
【0020】
また、本構成では、発電装置10の出力回路15及び観測部20に設けられた半導体スイッチは、すべてトランジスタ素子で形成されている。スイッチング素子であるトランジスタ素子は、整流素子に比べて摩擦等の損失が少ないという特性を有するため、原理的に高い発電効率を達成することが可能となる。
【0021】
次に、発電装置10の動作について説明する。
図2〜
図5は、荷電粒子11が容器12内を移動した際に出力回路15及び観測部20の動作を示した図であり、電流が流れた場合は実線で示し、電流が流れない場合は破線で示している。
まず、荷電粒子11が容器12内を、例えば、一方の電極13に向かって移動し、この電極13に達した場合、
図2に示すように、観測用電極21の電位が高まるため、第1観測回路23Aにおける観測用電極21と接続された半導体スイッチ24Aが閉じる。これによって、電池26Aの電位が、半導体スイッチ24A、LED素子31A、及び制御配線27Aを通じて、状態記憶半導体スイッチ17Aに印加されるため、当該状態記憶半導体スイッチ17Aが閉じ、第1出力回路15Aが導通される。この場合、LED素子31Aには、電池26Aの電力が供給されるため、該LED素子31Aが点灯する。
また、第2観測回路23Bにおいても、観測用電極21の電位が高まるため、この観測用電極21と接続された半導体スイッチ24Bが閉じる。この場合、状態記憶半導体スイッチ17Bは、LED素子31Bを介して、電池26Bの負極(0V)と接続されるため、当該状態記憶半導体スイッチ17Bは開かれ、第2出力回路15Bの導通は解除される。
【0022】
上記のように、状態記憶半導体スイッチ17Aは、開閉状態を保持する機能を有するため、
図3に示すように、荷電粒子11が容器12内を、一方の電極13から他方の電極14に向かって移動し、荷電粒子11が観測用電極21から離間した場合であっても、状態記憶半導体スイッチ17Aは閉状態を保持する。このため、荷電粒子11が移動する運動によって生じる電力がLED素子16Aに供給され、このLED素子16Aが点灯する。
一方、荷電粒子11が観測用電極21から離間することにより、半導体スイッチ24Aが開くため、LED素子16Aは消灯する。
【0023】
続いて、荷電粒子11が他方の電極14に達した場合には、
図4に示すように、観測用電極22の電位が高まるため、第1観測回路23Aにおける観測用電極22と接続された半導体スイッチ25Aが閉じる。この場合、半導体スイッチ25Aが閉じることにより、状態記憶半導体スイッチ17Aは、LED素子32Aを介して、電池26Aの負極(0V)と接続される。これにより、状態記憶半導体スイッチ17Aは開かれ、第1出力回路15Aの導通は解除されるとともに、LED素子32Aは、状態記憶半導体スイッチ17Aのゲート電位と電池26Aの負極電位との電位差が無くなる(0になる)まで点灯する。
これに対して、第2観測回路23Bにおいても、観測用電極22の電位が高まるため、この観測用電極22と接続された半導体スイッチ25Bが閉じる。これによって、電池26Bの電位が、半導体スイッチ25B、LED素子32B及び制御配線27Bを通じて、状態記憶半導体スイッチ17Bに印加されるため、当該状態記憶半導体スイッチ17Bが閉じ、第2出力回路15Bが導通される。この場合、LED素子32Bには、電池26Bの電力が供給されるため、該LED素子32Bが点灯する。
【0024】
そして、
図5に示すように、荷電粒子11が容器12内を他方の電極14から一方の電極13に向かって移動し、荷電粒子11が観測用電極22から離間した場合であっても、状態記憶半導体スイッチ17Bは閉状態を保持する。このため、荷電粒子11が移動する運動によって生じる電力がLED素子16Bに供給され、このLED素子16Bが点灯する。
本構成では、荷電粒子11が熱振動等の振動に基づいて、往復運動を継続する限り、この運動に基づいて発電された電力がLED素子16AまたはLED素子16Bに供給される。
ここで、本構成にかかる発電装置10は、荷電粒子11の運動に基づいて発電が実行されるため、荷電粒子11がいつ電極13、14に到達するかが予測できず、電力の出力が不定となる。
本構成では、発電装置10が観測部20を備えるため、電力の出力が不定であっても、荷電粒子11が電極13、14に到達したか否かを観測部20が検出することができる。さらに、この観測部20が荷電粒子11の位置に応じて出力回路15に設けた状態記憶半導体スイッチ17A,17Bを開閉するため、荷電粒子11の運動によって生じた電力を効率良く出力回路15のLED素子16A,16Bに出力させることができ、従って、発電効率の向上を図ることができる。
また、本構成では、観測部20を構成する第1観測回路23A,第2観測回路23Bは、負荷としてのLED素子31A,31B,32A,32Bを備えるため、電池26A,26Bの消費電力は、LED素子31A,31B,32A,32Bの出力となる。このため、電池26A,26Bの消費電力が損失とはならないため、上記した発電装置10全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態によれば、荷電粒子11が運動する容器12内に配置される一対の電極13,14と、電極13,14に接続され、荷電粒子11が当該電極13,14間を移動する際の運動を電力としてLED素子16Aに出力する第1出力回路15Aとを備え、第1出力回路15AにLED素子16Aと直列に接続される状態記憶半導体スイッチ17Aを備えるとともに、前記各電極13,14の近傍に容器12内を移動する荷電粒子11の位置を観測する観測部20を備え、この観測部20が、荷電粒子11の位置に応じて状態記憶半導体スイッチ17Aを開閉するため、荷電粒子11の運動によって生じた電力を効率良く出力回路15のLED素子16Aに出力させることができ、従って、発電効率の向上を図ることができる。
【0026】
また、本実施形態によれば、出力回路15は、電極13,14に互いに並列に接続され、状態記憶半導体スイッチ17A及びLED素子16Aを備える第1出力回路15Aと、状態記憶半導体スイッチ17B及びLED素子16Bを備える第2出力回路15Bとを備え、第1出力回路15Aは、荷電粒子11が一方の電極13に接近した場合に、状態記憶半導体スイッチ17Aを閉じてLED素子16Aに電力を出力し、第2出力回路15Bは、荷電粒子11が他方の電極14に接近した場合に、状態記憶半導体スイッチ17Bを閉じてLED素子16Bに電力を出力するため、片方の電極に電荷が偏って蓄積されることが防止され、荷電粒子11の往復運動を電力として効率良く出力することができる。
【0027】
また、本実施形態によれば、容器12は、荷電粒子11が収容される密閉容器であり、この密閉容器の両端部に電極13,14が対向して配置されているため、荷電粒子11が容器12の外部に飛散することが防止され、電極13,14間における荷電粒子11の運動を電力として効率良く出力することができる。
【0028】
また、本実施形態によれば、状態記憶半導体スイッチ17A,17B及び半導体スイッチ24A,25Aは、すべてスイッチング素子であるトランジスタ素子で形成されているため、整流素子に比べて摩擦等の損失を抑制することができ、高い発電効率を達成することが可能となる。
【0029】
また、本実施形態によれば、荷電粒子11は、100マイクロメートル以下の大きさに形成されているため、容器12内に伝達される熱振動(熱揺らぎ)や音振動等の微細な振動によって荷電粒子11を容器12内で自由に運動させることが可能となり、微細な振動による電力を出力させることができる。
【0030】
以上、本発明を一実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、上記した実施形態では、容器12は、円筒形状の密閉容器を一例として説明したが、これに限るものでなく、一部が開放している容器であっても良い。また、本実施形態では、荷電粒子11として正電荷を帯電させたものを説明したが、負電荷を帯電させたものを用いることができることは勿論である。
また、本実施形態では、状態記憶半導体スイッチ17A,17Bとして、強誘電体メモリ(トランジスタ型FeRAM)を用いる構成を説明したが、これに限らず、電界効果トランジスタのゲート端子にコンデンサを接続した素子を替わりに用いることもできる。
また、本実施形態では、荷電粒子11は、容器12内に伝達される熱振動(熱揺らぎ)や音振動等の微細な振動によって運動する構成について説明したが、これに限るものではなく、例えば、容器12をその長手方向に往復して移動させることにより、容器12の外側から荷電粒子11に振動を与える振動付与手段(不図示)を備えても良い。