特許第6162530号(P6162530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162530
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20170703BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F16F15/08 T
   B60K5/12 Z
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-167199(P2013-167199)
(22)【出願日】2013年8月10日
(65)【公開番号】特開2014-55671(P2014-55671A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-179123(P2012-179123)
(32)【優先日】2012年8月11日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】島田 仁司
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−213258(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/023574(WO,A1)
【文献】 特開2009−115109(JP,A)
【文献】 特開2009−115108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/08
B60K 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム部(12)とその長手方向一端に設けられた第1リング部(14)及び他端に設けられた第2リング部(16)とを備えた本体部(10)と、前記第1リング部(14)に設けられた第1ブッシュ(15)及び前記第2リング部(16)に設けられた第2ブッシュ(17)を備えた防振装置であって、
少なくとも一方のリング部である前記第2リング部(16)の外周に前記第2ブッシュ(17)の中心軸線(C2)と直交する平面内へ突出する横リブを前記第2ブッシュ(17)の前記中心軸線方向へ複数形成したものにおいて、
前記第2リング部(16)は、前記第2ブッシュ(17)の前記中心軸線(C2)に対して、前方側で前記アーム部(12)に接続する側の前部側部分(16A)と、その反対側となる後部側部分(16B)を備え、
平面視にて、前記横リブは、上下に重なるとともに、面積の異なる第1リブ(21)と第2リブ(22)を備え、
面積の大きな第1リブ(21)は、面積の小さな第2リブ(22)よりも外方へ張り出した拡径部(46)を備え、
前記アーム部(12)と前記第2リング部(16)とを連結し、
前記第2リブ(22)は前記前部側部分(16A)から前記後部側部分(16B)にかけて設けられ
前記第1リブ(21)は、前記アーム部(12)から前記第2リング部(16)の前記前部側部分(16A)外周のみへ連続し、前記前部側部分(16A)と前記後部側部分(16B)とで非対称形状をなし、
前記第2リング部(16)の軸方向端部には、前記第2リブ(22)が環状に設けられるとともに、この第2リブ(22)は前記第1リブ(21)よりも軸方向外側に設けられていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1リブ(21)の外周と前記ブッシュ(17)の中心(Q)間における中心間距離のうち最小距離を1としたとき、前記拡径部(46)の中心間距離は1以上であることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項において、前記第2リング部(16)の外周に前記第1リブ(21)及び第2リブ(22)並びにこれらと別の横リブである第3リブ(23)が設けられるとともに、
この第3リブ(23)は、前記後部側部分(16B)のみに設けられていることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
請求項において、正面視にて、前記前部側部分(16A)には前記第1リブ(21)を含む複数のリブが設けられ、前記後部側部分(16B)には、前記第2リブ(22)と前記第3リブ(23)を含む複数の前記横リブが設けられるとともに、
前記前部側部分(16A)に設けられる前記横リブの数よりも前記後部側部分(16B)に設けられる前記横リブの数を多くしたことを特徴とする防振装置。
【請求項5】
請求項4において、前記前部側部分(16A)と後部側部分(16B)の各横リブは、前記第2リング部(16)の外側面に前記軸方向へ長く形成されている縦リブ(25)により連続一体化されていることを特徴とする防振装置。
【請求項6】
請求項において、前記第2リブ(22)は、第4リブ(24)を介して前記第1リブ(21)と斜めに連結されていることを特徴とする防振装置。
【請求項7】
請求項において、平面視で、前記第1リブ(21)の前記拡径部(46)の外周部及び前記第4リブ(24)の左右方向縁部がそれぞれ曲線部を有するとともに、前記第1リブ(21)における曲線部のアール(R1)の方が前記第4リブ(24)における曲線部のアール(R4)よりも大きいことを特徴とする防振装置。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記第1リブ(21)と前記第2リブ(22)及び第4リブ(24)との間には、肉抜き凹部(33・34)が形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項9】
請求項3において、前記第1リブ(21)及び前記第2リブ(22)並びに前記第3リブ(23)に沿って凹部が形成されるとともに、
前記第1リブ(21)の拡径部(46)に沿う凹部(33・34)の深さ(D2・D3)が、前記第3リブ(23)に沿う凹部(32)の深さ(D1)より深いことを特徴とする防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム等の防振主体を囲む枠部分に樹脂を用いた防振装置に係り、特にトルクロッドに好適なものに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなトルクロッドを樹脂製としたものは公知であり、例えば、特許文献1に記載されたものがある。このトルクロッドは、アーム部の長さ方向両端に大小に異なるリング部を一体化してある。小さな方はエンジン側へ取付けられる小玉部をなし、大きな方は車体側へ取付けられる大玉部をなす。小玉部と大玉部はそれぞれリング部の中心部に配置された内筒と、この内筒とリング部を連結する弾性部材を備える。
また、大玉部のリング部外周には、内筒の軸方向へ平行に複数のリブが形成されている。上記のように、複数のリブを設けることにより、必要な剛性を確保しつつ軽量化を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−213258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リング部に要求される剛性は、周方向において均一ではない。すなわち、小玉部からアーム部を介して引っ張る方向へ力が加わると、大玉部は、アーム部とリング部の接続部分からリング部へ大きな力が加わって変形し、リング部の後端部及びその反対側の前端部に応力が集中するため、この部分の剛性を高くする必要がある。
そこで、リブを設ければ剛性を高くすることができるが、リブの数を増やしたり大型化すれば重量が増大して大型化してしまう。しかし、リング部の前後方向における要求剛性の相違に着目したリブを設ければ、より軽量化並びに小型化を達成できる可能性がある。しかし、上記従来例を含めてこのような配慮をしたものは存在しない。
そこで本願は、上記知見に基づいて、所定の剛性を維持しつつ、さらなる軽量化及び小型化の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため防振装置に係る請求項1に記載した発明は、アーム部(12)とその長手方向一端に設けられた第1リング部(14)及び他端に設けられた第2リング部(16)とを備えた本体部(10)と、前記第1リング部(14)に設けられた第1ブッシュ(15)及び前記第2リング部(16)に設けられた第2ブッシュ(17)を備えた防振装置であって
なくとも一方のリング部である前記第2リング部(16)の外周に前記第2ブッシュ(17)の中心軸線(C2)と直交する平面内へ突出する横リブを前記第2ブッシュ(17)の前記中心軸線方向へ複数形成したものにおいて、
前記第2リング部(16)は、前記第2ブッシュ(17)の前記中心軸線(C2)に対して、前方側で前記アーム部(12)に接続する側の前部側部分(16A)と、その反対側となる後部側部分(16B)を備え、
平面視にて、前記横リブは、上下に重なるとともに、面積の異なる第1リブ(21)と第2リブ(22)を備え、
面積の大きな第1リブ(21)は、面積の小さな第2リブ(22)よりも外方へ張り出した拡径部(46)を備え、前記アーム部(12)と前記第2リング部(16)とを連結し、
前記第2リブ(22)は、前記第2リング部(16)の外周にて前記前部側部分(16A)から前記後部側部分(16B)にかけて設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、前記第1リブ(21)は、前記アーム部(12)から前記第2リング部(16)の前記前部側部分(16A)外周のみへ連続し、前記前部側部分(16A)と前記後部側部分(16B)とで非対称形状をなすことを特徴とする。
さらに、前記第2リング部(16)の軸方向端部には、前記第2リブ(22)が環状に設けられるとともに、この第2リブ(22)は前記第1リブ(21)よりも軸方向外側に設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項に記載した発明は、請求項において、前記第1リブ(21)の外周と前記ブッシュ(17)の中心(Q)間における中心間距離のうち最小距離を1としたとき、前記拡径部(46)の中心間距離は1以上であることを特徴とする。
【0008】
請求項に記載した発明は、請求項において、前記第2リング部(16)の外周に前記第1リブ(21)及び第2リブ(22)並びにこれらと別の横リブである第3リブ(23)が設けられるとともに、
この第3リブ(23)は、前記後部側部分(16B)のみに設けられていることを特徴とする。
また、請求項に記載した発明は、請求項において、前記第1リブ(21)及び第2リブ(22)並びに前記第3リブ(23)に沿って凹部が形成されるとともに、
前記第1リブ(21)の拡径部(46)に沿う凹部(33・34)の深さ(D2・D3)が、前記第3リブ(23)に沿う凹部(32)の深さ(D1)より深いことを特徴とする。
【0009】
請求項に記載した発明は、請求項において、正面視にて、前記前部側部分(16A)には前記第1リブ(21)を含む複数の前記横リブが設けられ、前記後部側部分(16B)には、前記第2リブ(22)と前記第3リブ(23)を含む複数の前記横リブが設けられるとともに、
前記前部側部分(16A)に設けられる前記横リブの数よりも前記後部側部分(16B)に設けられる前記横リブの数を多くしたことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載した発明は、請求項において、前記前部側部分(16A)と後部側部分(16B)の前記各横リブは、前記第2リング部(16)の外側面に前記軸方向へ長く形成されている縦リブ(25)により連続一体化されていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載した発明は、請求項において、前記第2リブ(22)は、第4リブ(24)を介して前記第1リブ(21)と斜めに連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載した発明は、請求項において、平面視で、前記第1リブ(21)の前記拡径部(46)の外周部及び前記第4リブ(24)の左右方向縁部がそれぞれ曲線部を有するとともに、
前記第1リブ(21)における曲線部のアール(R1)の方が前記第4リブ(24)における曲線部のアール(R4)よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
請求項に記載した発明は、請求項6又は7において、前記第1リブ(21)と前記第2リブ(22)及び第4リブ(24)との間には、肉抜き凹部(33・34)が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1によれば、平面視にて重なるとともに面積の異なる第1リブと第2リブを設け、面積の大きな方の第1リブに、面積の小さな第2リブよりも外方へ張り出した拡径部を設けたので、拡径部を有する面積の大きな方の第1リブにより、必要な剛性を確保しつつ、面積の小さな横リブにより軽量化を実現できる。
しかも、拡径部を設けて面積を大きくすることにより、引っ張りに十分耐える剛性を得ることができる。したがって、リング部の前後方向における要求剛性の相違に着目して、適切な剛性を配分することができ、耐久性を向上できるとともに、軽量化及び小型化を実現できる。
また、第1リブをアーム部と第2リング部とに連結し、第2リブを前部側部分から後部側部分にかけて設けることにより、前部側と後部側におけるリブ構造を非対称形状にしたので、引っ張り及び圧縮に対して、各場所に応じて最適な剛性が得られるようにリブを配置することができる。
【0016】
また、第1リブをアーム部から第2リング部の前記前部側部分外周のみへ連続させることで、前部側と後部側におけるリブ構造を非対称形状にしたので、引っ張り及び圧縮に対して、各場所に応じて最適な剛性が得られるようにリブを配置することができる。
さらに、前部側部分において、第1リブの軸方向外側に第2リブを設けたので、第1リブと第2リブで必要な剛性を確保しつつ、第1リブと第2リブの間も肉抜きすることにより、さらに軽量化が可能になる。
【0017】
請求項によれば、リング部の中心とリブ外周間の距離である中心間距離が異なる部分を設け、最小中心距離を1としたとき、拡径部の中心間距離を1以上にしたので、拡径部の面積を大きくして剛性を高めることができる。
【0018】
請求項によれば、第3リブを第2リング部の外周における後部側部分のみに設けたので、第2リング部の後部側におけるリブの密度が前側よりも高くなり、後部側部分を十分に高剛性にすることができる。
請求項によれば、拡径部に沿う凹部の深さを第3リブに沿う凹部の深さよりも深くしたので、拡径部近傍の肉抜き量を多くして軽量化できるとともに、凹部に沿うリブの突出を大きくして面積の大きなリブを形成できる。そのうえ、深い凹部によりリブを形成したので、ボイドの発生を低減でき、リブの剛性を向上できる。
【0019】
請求項によれば、前部側部分に設けられる横リブの数と、後部側部分に設けられる横リブの数を異ならせたので、前部側部分と後部側分とで剛性を調整できる。
例えば、要求剛性の低い前部側部分においては横リブの数を相対的に少数として軽量化し、要求剛性の高い後部側部分のリブの数を相対的に多数として剛性を高くすることができる。したがって、リング部における要求剛性が前後方向で相違することに着目し、剛性の設定を適切に配分することにより、必要な剛性を確保しつつ可及的に軽量化することが可能になった。
【0020】
請求項によれば、前部側部分と後部側部分の各横リブが、一方のリング部の外側面に軸方向へ長く形成されている縦リブにより連続一体化されるので、前部側部分と後部側部分における各横リブの数や形状を各部の要求剛性に応じて適切に変化させつつ、側部の縦リブにより各横リブを連続一体化して全体の剛性を高くすることができる。
【0022】
請求項によれば、第1リブと第2リブを斜めに連結する第4リブを設けたので、一方のリング部を高剛性にして、第1リブと第2リブの間に応力を分散でき、第1リブの数を少なくしても一方のリング部における前部側部分の剛性を適切に確保できる。
【0023】
請求項によれば、第1リブにおける拡径部のアールを、第4リブのアールよりも大きくすることで、第1リブを第4リブよりも広くかつ長く形成することができるため、第1リブ及び第4リブにより、一方のリング部の応力をアーム部側へ効果的に分散できる。
【0024】
請求項によれば、第1リブと第2リブ及び第4リブとの間に肉抜きの凹部を形成したので、前部側部分をより多く肉抜きでき、全体の軽量化に貢献できる。しかも第1リブと第2リブの突出量を大きくしてリブの面積を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係るトルクロッドの斜視図
図2】上記トルクロッドの正面図
図3】上記トルクロッドの平面図
図4】上記トルクロッドの側面図
図5図3の5−5線断面図
図6図2の6−6線断面図
図7図2の7−7線断面図
図8図3の一部を拡大した図
図9】作用の説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、トルクロッドに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はロッド本体10の斜視図、図2は同正面図、図3は同平面図、図4は側面図である。また、図5図3の5−5線断面図、図6図2の6−6線断面図、図7図2の7−7線断面図、図8図3の一部を拡大した図、図9は引っ張り入力時における作用の説明図である。以下の説明において、上下方向として図2及び図4〜7の各上下方向とし、図3における中心線C0を挟む図の上下方向(図3において中心線C0と直交する方向)を左右方向とし、図2及び3における各左右方向(図3において中心線C0に沿う方向)を前後方向とする。
【0027】
このトルクロッドは、樹脂製のロッド本体10と、その長手方向両端に設けられる第1のブッシュ15及び第2のブッシュ17とを備える。第1のブッシュ15は例えば動力源であるエンジン(図示省略)へ取付けられ、第2のブッシュ17は車体(図示省略)へ取付けられ、エンジンの振動を車体側へ伝達されないよう遮断するようになっている。
【0028】
ロッド本体10は、長手部材のアーム部12と、その長手方向両端側へ一体に設けられた第1リング部14及び第2リング部16とを備える。第1リング部14及び第2リング部16はそれぞれ略円形をなし、径方向にてアーム部12の長手方向端部へ連続している。
【0029】
第1リング部14には第1のブッシュ15が設けられている。第1のブッシュ15は第1リング部14の略中心部に同心的に配置された内筒15aと、この内筒15aと第1リング部14との間に充填されて双方を弾性的に結合するゴム等の弾性部材からなる防振部15bとで構成される。内筒15aの軸線をC1とする。
【0030】
第2リング部16にも第2のブッシュ17が設けられている。第2のブッシュ17は第2リング部16の略中心部に同心的に配置された内筒17aとゴム等の弾性部材からなる防振部18とで構成される。内筒17aの軸線をC2とする。
図2の正面視は、トルクロッドを軸線C1方向から示す状態であり、図3の平面視は軸線C2方向から示す状態である。
【0031】
この例では、軸線C1とC2は互いに直交するように設けられている。アーム部12の長手方向における中心線をC0とすれば、軸線C1及びC2は、それぞれを中心線C0と直交しかつ互いに平行にしてある。但し、軸線C1と軸線C2の中心線C0となす角は任意であり、中心線C0方向から見たとき、軸線C1と軸線C2が直交もしくは任意の角度で交差するように設定できる。
なお、中心線C0は内筒15a及び17aの各軸線C1及びC2上における軸方向中間点同士を結んだ線であり、本例では平面視において、アーム部12の左右幅方向中心を通っている。
【0032】
ここで、第1リング部14を車体の前方、第2リング部16を後方へ向けて配置し、第1のブッシュの内筒15aをエンジン側へ取付け、第2のブッシュ17の内筒17aを車体側へ取付ければ、エンジンの振動は、アーム部12を通って第2リング部16へ伝達される、この前後方向の振動をロッド本体10が防振すべき主たる振動とすれば、中心線C0の方向は、主たる振動の入力方向と一致する。第1リング部14から第2リング部16へ向かってアーム部12に荷重がかかる状態が圧縮時の入力、逆が引っ張り時の入力である。
【0033】
第2のブッシュ17の防振部18は、内筒17aを挟んで左右へ延びる弾性脚18aを備え、この弾性脚18aで内筒17aと第2リング部16とを弾性的に連結している。
弾性脚18aは、内筒17aを挟んで前後に形成されたすぐり穴18b,18cによって、第2リング部16の内周を被覆する被覆部18dと分離されている。すぐり穴18b,18cは、内筒17aの軸線C2方向に防振部18を貫通して形成されている。
後方のすぐり穴18c内には、被覆部18dと連続して形成されるストッパ18eが突出して設けられ、内筒17aの後方へ対向配置されている。被覆部18dの軸方向端部は開口縁部16e(後述)を連続して覆う開口縁被覆部18fとなっている。
【0034】
次に、ロッド本体10を詳細に説明する。
ロッド本体10は、適宜な合成樹脂からなり、好ましくは繊維強化されている。また、予め内筒15aと防振部15bが一体化された第1のブッシュ15及び内筒17aと防振部18が一体化された第2のブッシュ17を金型内へ配置し、その周囲へ合成樹脂を射出成形等により注入、硬化することにより一体化される。
【0035】
但し、予めロッド本体10側を成形しておき、これを金型内へ配置し、さらに第1リング部14内へ内筒15a、第2リング部16内へ内筒17aを配置してから、第1リング部14及び第2リング部16内へゴム等の弾性材料を注入してロッド本体10と一体化させることもできる。また、防振部18の弾性部材と第2リング部16との弾性的連結は、弾性部材の第2リング部16に対する接着剤による接着や加硫接着、さらには圧入によるもの等が可能である。
【0036】
アーム部12は、柱状部20と上下の第1リブ21とで断面H型をなしている(図6参照)。第1リブ21は柱状部20の上下から左右方向へ張り出し、柱状部20は上下の第1リブ21の左右方向中間部を一体に連結している。柱状部20はアーム部12の主体部であるが、上下の第1リブ21により補強され、必要十分な剛性を有するとともに、柱状部20と第1リブ21に囲まれた空間相当部分を肉抜きして第1凹部31とすることにより軽量化されている。
図6に示すように、柱状部20の肉厚をt1、第1リブ21の柱状部20から張り出す量をW1とすれば、W1>t1となっている。
【0037】
なお、図3に示すように、第1リング部14の外周部にも、周方向に形成される環状のリブ14aが複数形成されている。ただし、隣り合うリブ14a間は、相対的に凹部をなす環状溝14bとなる。このようにリブ14aを凹凸形状にすることで、軽量化と高剛性化が得られる。
【0038】
第2リング部16は、図3に示すように、アーム部12が接続する前半側部分を前部側部分16A、その反対側となる後半側部分を後部側部分16Bとする。また中心線C0上における前部側部分16Aの最前端部近傍を前部16aとし、その反対側となる後部側部分16Bの最後端部近傍を後部16bとする。前部16aと後部16bは、内筒17aの軸線C2(図2)を挟んでその前側部分及び後側部分でもある。また内筒17aの左右方向を側部16cとする。この場合、第2リング部16の外周面のうち、側部16cより前方側部分が前部側部分16A、後方側部分が後部側部分16B(図2・3参照)でもある。
【0039】
なお、第1リング部14と第2リング部16が互いに離反する方向へ引っ張られる引っ張り入力時における第2リング部16の要求剛性は、外周側では後部16bのうち中心線C0と重なる部分近傍部、内周側では側部16c近傍部が最も高くなる。逆に、第2リング部16の外周側のうち前部側の要求剛性が相対的に低くなる。
【0040】
圧縮時の入力において、第2のブッシュ17の内筒17aは、アーム部12から中心線C0方向に伝達される荷重により、第2リング部16と相対的に前方へ移動する。
【0041】
第1リブ21は第2リング部16の前側側面まで延びている。すなわち、第1リブ21はアーム部12から第2リング部16の前側側面にかけて形成され、このうちアーム部12における部分をアーム部分とし、側面視で第2リング部16の前部側部分16Aに重なる部分をリング部分ということにする。
【0042】
第2リング部16の前側側面には、上下一対の第1リブ21と、さらにその上下に間隔を持って配置され、第2リング部16の上下方向(軸線C2方向)における端面となる第2リブ22が一体に設けられている。
第2リング部16の後部側部分16Bには、第3リブ23が設けられている。
【0043】
第2リブ22は、第2リング部16におけるリング穴16d(図5参照)の開口部全周を囲む平面視で略リング状をなし、第2リング部16の開口部を高剛性化して、第2リング部16が中心線C0方向に引っ張られたときにおける第2リング部16の破損を防止している。
【0044】
図5に示すように、第2リング部16は軸線C2方向に貫通するリング穴16dを備え、その開口縁部16eはリング穴16d囲む筒部16fの軸方向両端部に形成されている。開口縁部16eは第2リブ22に連続し、第2リブ22の前部から第4リブ24が前方へ一体に延出し、第1リブ21のアーム部分へ連結している。
第2リブ22を含む第2リング部16の開口縁部16e及び筒部16fの内周部表面に防振部18の一部である被覆部18dが部分的に被覆する状態で一体化されている。
【0045】
図4・5に示すように、第2リング部16の後部側面には、上下の第2リブ22の間に配置される複数の第3リブ23が形成されている。この例では、第3リブ23は5本設けられている。各第3リブ23は軸線C2と直交する平面内に設けられ、それぞれが平行して軸線C2方向へ間隔を持って配置されている。また、第2リング部16の後面視図でもある図4に示すように、第2リング部16の後側側面及び後面にかけて半周状に設けられている。第3リブ23は第2リブ22の平面形状と一致して上下方向へ重なり、それぞれの肉厚も同程度である(図5)。
【0046】
第2リブ22及び第3リブ23は、それぞれ第1リブ21と同程度の肉厚であるが、第2リング部16の後部側におけるリブの密度が前側よりも高くなり、上下一対の第2リブ22と、5本の第3リブ23からなる計7本になっており、後部側部分16Bを十分に高剛性にすることができる。
【0047】
図2及び図5に示すように、第2リブ22の上側前部からは斜め下がり前方へ第4リブ24が延出し、その前端部は、第1リブ21のアーム部分における上面の前後方向中間部へ中心線C0上にて連続一体化している。
【0048】
また、第2リブ22の下側前部からは斜め上がり前方へ第4リブ24が延出し、その前端部は、第1リブ21のアーム部分における下面の前後方向中間部へ中心線C0上にて連続一体化している。
すなわち、第2リング部16の前部側部分16Aには、上下一対の第1リブ21及び第2リブ22並びに第4リブ24からなる計6本のリブのみが設けられている。
【0049】
第4リブ24は、第2リブ22の前部と第1リブ21の前後方向中間部かつ左右方向中央部をつなぎ、図3に示すように、平面視で、中心線C0上にて第1リブ21の左右方向内側に位置して側面が曲線状をなしている。
この曲線のアールを第4アールR4とすれば、第1リブ21の第1アールR1は、第4リブ24の第4アールR4よりも大きくなっており(R1>R4)、第4リブ24は、その幅が第1リブ21の幅よりも狭く、中心線C0上となる第1リブ21の左右方向中間部に重なっている。
【0050】
なお、第4リブ24は正面視(図2)において、曲線状又は直線状さらにはクランク形状等の屈曲形状など、いずれの形状に形成されてもよい。また、平面視(図3)でも側部を直線状に形成してもよい。この場合、第1リブ21との間における上記アールの大小関係は意味をなさないが、平面視において、第4リブ24は、その幅が第1リブ21の幅よりも狭く、第1リブ21の左右方向内側に重なっていることは同じである。
【0051】
図1・2に示すように、第2リング部16の側面には、軸線C2方向に沿って第5リブ25が形成されている。第5リブ25は第1リブ21の後端部と面一で連続し、第3リブ23の前端部とも面一で連続している。また、第5リブ25の上下端部は、第2リブ22の前後方向中間部と面一で連続している。第5リブ25は図3における左右両側部の最大外径部に設けられている。
【0052】
第5リブ25は第2リング部16の側面にて内筒17aの軸方向に長く形成されるので、これを第2リング部16の縦リブという。これに対して、第1リブ21、第3リブ23及び第2リブ22はそれぞれ内筒17aの軸直交平面内に形成されるので、これらを横リブとする。また、第4リブ24は傾斜リブとなる。
第5リブ25は、縦リブとして、間隔や形状が異なる各横リブをつないで連続一体化しており、かつこれら縦横の各リブは第5リブ25の外表面において面一になっている。
【0053】
各リブの間には肉抜きの凹部が設けられている。柱状部20と上下の第1リブ21の間には、大きな第1凹部31が設けられる。
アーム部12は第1リング部14から第2リング部16への荷重伝達部であるため、第2リング部16ほどは大きな応力がかからない。したがって、上下一対の第1リブ21だけでも十分な剛性を得ることができ、これにより、可及的に大量の肉抜きを行うことができ、アーム部12の軽量化を実現している。
【0054】
図2に示すように、隣り合う第3リブ23の間には、半円周状の溝からなる第2凹部32が形成されている。また、第2リブ22と隣り合う第3リブ23との間にも同様の溝からなる第5凹部35が形成されている。
さらに、第2リブ22と隣り合う第1リブ21との間には、第1凹部31よりも小さいが、第2凹部32よりも大きい第3凹部33が設けられている。第3凹部33は、第2リブ22の前半側部分と第1リブ21との間に形成される肉抜き部である。
【0055】
また、第1リブ21と隣り合う第4リブ24との間に第4凹部34が設けられている。この第4凹部34は図2の正面視で略3角形状をなし、後方側が第3凹部33に連続している。第4凹部34は、引っ張り時に比較的大きな応力が加わる前部16a部分を補強する第4リブ24と第1リブ21との間に形成される肉抜き部である。
【0056】
図2に示すように、第2凹部32及び第5凹部35の周方向前端部は第5リブ25に達している。また、第1凹部31及び第3凹部33の各後端部も第5リブ25に達している。
【0057】
図7に示すように、第1リブ21は、第2リブ22より幅が広くなっている。すなわち、図3において、第2リブ22の前側部分は第1リブ21の左右方向内側へ重なり、第1リブ21は第2リブ22よりも広い幅をなして左右方向へ張り出している。
【0058】
第1リブ21の幅をW2、第2リブ22の幅をW3とすれば、W2>W3になっている。各幅W2・W3はそれぞれ第2リング部16における筒部16fの内周面からの張り出し量とする。第1リブ21の幅W2が第2リブ22の幅W3よりも大きいということは、平面視において第1リブ21の面積が第2リブ22の面積よりも大きいことを意味する。
【0059】
なお、第1リブ21及び第2リブ22は、第2リング部16の側面における第5リブ25部分では同じ幅となる。第5リブ25より前方では第1リブ21の幅W2が第2リブ22の幅W3よりも大きくなっている。
但し、第1リブ21は、図3中の仮想線21Aに示すように、第2リング部16の外周面全周を囲むように形成してもよく、この場合は、第1リブ21の第2リブ22と重なる部分における幅を、第2リブ22の全周または一部において第2リブ22の幅よりも広く形成する。
【0060】
第2凹部32及び第5凹部35の深さはそれぞれD1をなす(図5)。第3凹部33の深さはD2をなす(図7)。なお、図中に仮想線で示すように、後方の第5リブ25に近づくほど第3凹部33の深さD2は深くなる。第4凹部34の深さはD3をなす(図6)。
なお、図中に仮想線で示すように、後方の第2リブ22に近づくほど第4凹部34の深さD3は深くなる。
【0061】
さらにこれらの凹部の深さは、隣り合う各リブの突出高さ(第2リング部16の径方向における突出量)を決定するものであり、前半部側における第3凹部33及び第4凹部34の深さD2及びD3は、後半部側の第2凹部32及び第5凹部35の深さD1よりも深くなっている。このようにすることで、前半部側における肉抜きを多くするとともに、第1リブ21及び第2リブ22並びに第4リブ24の突出高さを大きくしている。
【0062】
また、これらの凹部は、各リブの表面と面一の部分を、あたかも彫り込んで形成したものと同様である(本例では射出成形等で形成するため、実際には彫り込み等の機械的加工工程は存在しない)。各リブは、各凹部に対して相対的に突出する部分として形成される。
したがって、これらの各リブの表面は、凹部を形成しない仮定の場合における、アーム部12及び第2リング部16の外形表面を示す。
【0063】
次に、第1リブ21と第2リブ22を主体にこれらの詳細構造を説明する。図8は、図3のうち第2リング部16側を拡大するとともに一部を省略して示す図である。この図に示すように、第1リブ21のリング部分のうち、第2リング部16に設けられたリング穴16dの開口縁部16e(図5参照)から内筒17aの軸線C2に対して軸直交方向外方かつ中心線C0に対して左右方向へ広がる拡径部46が設けられている。この拡径部46により第1リブ21は左右方向へ拡大した左右幅の広いものになっている。第2リブ22にはこのような拡径部が形成されていない。

【0064】
第1リブ21は、第2リング部16の側面前側からアーム部12を大きな第1アールR1と第3アールR3からなる曲線でつないでいる。第2リブ22は第1リブ21の左右方向内側に配置されるようにより小さな第2アールR2の曲線状をなしている。
【0065】
第1リブ21の拡径部46のうち、リング部分の前縁部は第1アールR1の曲線をなすが、アーム部分は逆アールの第3アールR3になっている。第1アールR1と第3アールR3は変曲点47で連続し、第1アールR1は第3アールR3よりも小さくなっている(R1<R3)。また、アーム部分は第3アールR3のアーム湾曲部48をなし、第1リング部14へ向かって左右のアーム湾曲部48間の幅が次第に狭くなるように変化している。
【0066】
第2のブッシュ17における内筒17aの中心Qとリング部外周との距離を中心間距離とする。この中心間距離のうち、中心Qと側部16cに対応する部分との距離をr1とし、このr1を半径とする仮想円Eを描くと、第1リブ21の拡径部46における前縁部は仮想円Eの外側へ張り出して形成され、第2リブ22の前半側における外周部は仮想円Eの内側になっている。拡径部46は仮想円Eの外側へ張り出す部分でもある。
【0067】
平面視(図8)において、第2リブ22が第1リブ21に重なり、側部16cでは上下方向に一致している。但し、中心Qより前方の前半側においては、第1リブ21が拡径部46にて第2リブ22よりも外方へ張り出している分だけ、第1リブ21の面積が第2リブ22の面積よりも大きくなっている。
【0068】
また、左右の変曲点47を結ぶ直線Lとし、この直線Lと中心線C0との交点をPとするとき、交点Pは、仮想円Eの内側に位置する。このため、変曲点47が中心Qに比較的近い位置になり、第3アールR3が長くなるので、拡径部46のアーム部分が比較的長くなる。
【0069】
ここで、r1は中心Qとリング部外周との間における中心間距離のうちの最小部である。拡径部46の外周と中心Qとの中心間距離をr2とすれば、r2はr1よりも大きい。また、中心Qから、中心線C0上の後端部までの中心間距離をr3とすれば、このr3はr1よりも大きいがr2よりは小さい(r1<r3<r2)。
【0070】
内筒17aの左右方向においては、第1リブ21と第2リブ22の接続部(第5リブ25の上下方向端部)が、中心線C0と略平行な直線部49をなす。直線部49の前端部は内筒17aの前端部と同程度になっている。
この直線部49は仮想円Eの接線であるが、r2及びr3を半径とする円(図示省略)を描けば、これらの円に対して弦をなして横切ることになる。
【0071】
したがって、この直線部49により、第1リブ21及び第2リブ22は、中心Qから左右方向への最大突出量をr1とし、r2もしくはr3としないことにより、それだけ左右方向への突出量を少なくしてコンパクト化できている。
そのうえ、拡径部46は、その左右方向突出量がr1以下になっているため、左右方向に対する張り出しを少なくしてスリム化している。
【0072】
また、r1を1とすれば、r2及びr3は1以上となり、第1リブ21の拡径部46及び第2リブ22の後半部側はそれぞれ1以上になる部分を有する。したがって、第1リブ21は前方側、第2リブ22は後方側へそれぞれ長くなっており、引っ張り及び圧縮方向における剛性を高めている。
【0073】
次に作用を説明する。第2リング部16におけるリブを、図2に示すように、正面視にて軸線C2を挟んで、前側が第1リブ21、第2リブ22及び第4リブ24、後側が第2リブ22及び第3リブ23として、本数を前側が少なく後側を多くなるように変化させたので、正面視におけるリブ構造は前後方向にて非対称をなす。また、第1リブ21は前部側部分16Aにのみ設けられるから、平面視にて第1リブ21並びに全体のリブ構造は非対称をなす。このように、前後方向でリブ構造を非対称にすることで、第2リング部16における前後方向の剛性を最適に配分できる。
【0074】
また、肉抜き量は、第1凹部31、第3凹部33及び第4凹部34よりなる前側に対して、後側は第2凹部32及び第5凹部35からなり、後側が前側より少なくなっている。
このため、引っ張り時に最も大きな応力がかかる後部16b部分を十分に高剛性にすることができ、相対的に要求剛性の低い前側を可及的に軽量化している。
【0075】
すなわち、引っ張り入力時において、第1リング部14によりアーム部12が引っ張られ、内筒15aと17aが離隔方向へ移動し、図9に示すように、内筒17aが後部16bへ押し当てられると、第2リング部16は略卵形に変形し、前部16aと後部16b、特に、後部16bに大きな応力がかかる(図9は第2リング部16の変形を誇張して示してある)。
【0076】
ところが、後部16bは、第2リブ22及び多数の第3リブ23により本数を多くして高密度にリブを設け、かつ肉抜き量を少なくしているので高剛性になっており、この大きな応力に耐えることができる。
【0077】
一方、前部16aにも比較的大きな応力がかかり、前部16a側では、変形により各部のアールが、第1アールR1→R1a、第2アールR2→R2a、第3アールR3→R3a、第4アールR4→R4aのように変化する。
しかし、内筒17aによる押圧はなく、かつアーム部12と連続しているため、後部16bほどは大きな剛性を必要としない。そこで、後部16b側より本数を少なくした、第1リブ21,第2リブ22及び第4リブ24としても、十分に高剛性とすることができる。
【0078】
しかも、このようにリブの本数を少なくすることにより、第1凹部31、第3凹部33及び第4凹部34による大きな肉抜きが可能になり、可及的に軽量化を実現できる。
したがって、第2リング部16の前後方向における各部ごとに要求される剛性の相違に着目し、要求剛性の差に応じて、剛性の配分を最適化できるとともに、可及的な軽量化が可能になる。
【0079】
また、アーム部12と連続する第1リブ21を、平面視で第2リブ22より幅広にして面積を大きくして拡径部46を形成することにより、アーム部12と第2リング部16の連結部における高剛性化を実現できる。このため、図9に示すように内筒17aが後部16bへ押し当てられたときでも、第1リブ21の高剛性化により、第2リング部16の過大な変形を防止して耐久性を向上できる。
【0080】
しかも、第2リング部16の前方側は、既にアーム部12が存在するため拡径部46を前方側へ突出させることが容易であり、大きな拡径部46と大きな肉抜き部(第1凹部31)の形成が容易になる。また、仮に拡径部46に相当するものを後部側部分16B側に形成した場合と比較すれば、高剛性でかつ小型化したものが得られることになる。
【0081】
このとき、第2リブ22が環状をなして全周に形成されるのに対して、第1リブ21が第2リング部16の周囲における一部(前部側部分16A)のみに設けられていても、第1リブ21の幅を第2リブ22より広くして拡径部46を形成することにより大面積にしたので、第2リング部16の変形を効果的に抑制でき、応力集中を緩和できる。
【0082】
すなわち、引っ張り入力により第2リング部16が例えば円形から略卵形に変化するとき、前部側部分16Aにおける剛性が不十分であれば、第2リング部16の前部16aにおいても応力集中が生じてここが破損してしまう。
【0083】
しかし、第2リング部16の前部側部分16Aのみに設ける第1リブ21の幅W2を、全周に形成される第2リブ22の幅W3より広くして拡径部46を設け、第1リブ21の面積を大きくすることにより、前部側部分16Aにおける剛性を十分に大きくできる。このため、第2リング部16の前部側部分16Aにおける変形を効果的に抑制でき、応力集中を緩和できるので、耐久性が向上する。
【0084】
さらに、第2リブ22は第1リブ21の幅よりも狭くなっているが、第2リング部16の筒部16fにおける軸方向両端部に環状をなして形成されているため、筒部16fの軸方向両端部における剛性を高めることができる。また、第1リブ21よりも幅が狭いだけ軽量化できる。そのうえ、拡径部46の左右方向における最大突出量を第2リブ22に一致させ、最小中心間距離r1としたので、左右方向における小型化を実現できる。
【0085】
また、中心Qとリング部外周との中心間距離のうちの最小距離をr1としたとき、第1リブ21の中心間距離r2を1以上とすることにより、第1リブ21に拡径部46を設けることができる。
【0086】
さらに、第1リブ21の第1アールR1を大きくし、第4リブ24の第4アールR4を相対的に小さくすることにより、第1リブ21を第4リブ24よりも幅広くかつ長く形成することができる。このため、第4リブ24が第2リブ22の応力を第1リブ21のアーム部分における前後方向中間部かつ左右方向中央部へ分散させるとともに、これよりも幅広くかつ前方まで第2リブ22の応力を第1リブ21で分散できる。この応力分散を良好にする効果は、第1リブ21と第4リブ24を例えば両方とも直線状に形成した場合でも同様に期待できる。
【0087】
また、図9において前部16aが変形したとき、この変形時に第1リブ21がアーム部12と緩やかな角度で滑らかに連続するようにすることができ、さらに応力分散を良好にして応力集中を緩和できる。
【0088】
しかも、前後で間隔や形状が異なる各横リブ(第1リブ21と第3リブ23及び第2リブ22)とを、縦リブである第5リブ25でつないで連続一体化するので、場所毎に適切な数や形状のリブを配置できるとともに、全体の剛性を高くすることができる。
また、これら縦横の各リブを第5リブ25の外表面において面一とし、かつ第5リブ25の外表面が平面視で直線部49をなすので、左右方向への張り出しを抑えてコンパクト化できる。
【0089】
そのうえ、第2リブ22が第1リブ21より軸線C2方向へ離れて設けられていても、斜めの第4リブ24により第2リブ22を最短で補強できる。
しかも、第4リブ24を設けることにより、前部側部分16Aにおける十分な強度を得ることができ、第1リブ21の拡径部46を後述する第2実施例ほどは前方へ張り出さないですむので、よりスリム化できる。
【0090】
また、応力のかかる前部16aにおいて、第4リブ24を介して第2リブ22を第1リブ21と連結することにより、可及的に小さな補強で高剛性化できる。しかも、第3凹部33及び第4凹部34を設けることにより、第2リブ22及び第4リブ24を設けても軽量化を実現できる。
【0091】
特に、第4リブ24と第1リブ21の間に略三角形状の第4凹部34を設け、第3凹部33の深さD2及び第4凹部34の深さD3を、第3リブ23及び第2リブ22の間に形成される第2凹部32及び第5凹部35の深さD1よりも深くすることにより、可及的に軽量化できる。また、第3凹部33の深さD2及び第4凹部34の深さD3をそれぞれ深くすることにより、第1リブ21の突出高さを大きくして大面積にすることができるとともに、第2リング部16全体における左右方向への突出量を抑制してコンパクト化できる。そのうえ、深い凹部によりリブを形成したので、ボイド(成形時に気泡による空隙)の発生を低減でき、リブの剛性を向上できる。
【0092】
なお、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、トルクロッドに限らず、各種の防振用連結部材として利用できる。
【符号の説明】
【0093】
10:ロッド本体、12:アーム部、14:第1リング部、16:第2リング部、17:第2のブッシュ、17a:内筒、18:防振部、21:第1リブ、22:第2リブ、
23:第3リブ、24:第4リブ、25:第5リブ、31:第1凹部、32:第2凹部、33:第3凹部、34:第4凹部、35:第5凹部 、46:拡径部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9