(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162546
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20170703BHJP
H01R 13/514 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
H01R13/629
H01R13/514
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-179119(P2013-179119)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-49964(P2015-49964A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 好裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 直人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】和知 鉱平
【審査官】
高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】
特許第3948528(JP,B2)
【文献】
特開2001−185269(JP,A)
【文献】
特開2003−168527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40 − 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手ハウジング嵌合室を有し、 前記相手ハウジング嵌合室に第1端子が配置された複数の第1サブハウジングと、
周壁で囲まれた複数のサブハウジング収容室を有し、前記各サブハウジング収容室に前記各第1サブハウジングが収容された第1メインハウジングと、
前記第1サブハウジングの前記各相手ハウジング嵌合室に嵌合可能な複数のサブハウジング嵌合部を有し、前記各サブハウジング嵌合部内に第2端子が収容された第2ハウジングとを備え、
複数の前記第1サブハウジングが固定された前記第1メインハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合状態では、前記サブハウジング嵌合部が前記第1サブハウジングの相手ハウジング嵌合室に嵌合し、前記第1端子と前記第2端子がバネ変形によって接続されるコネクタであって、
前記第1メインハウジングの前記サブハウジング収容室を形成する前記周壁で、且つ、前記第2ハウジングの前記サブハウジング嵌合部の進入側の少なくとも1面側を切り欠き、
前記サブハウジング嵌合部の進入側の内で切り欠かなかった前記周壁と前記第1サブハウジングには、前記第1サブハウジングの進入を許容し、且つ、前記第1サブハウジングの許容傾斜範囲でのみ傾斜を許容する過剰傾斜規制手段が設けられたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタであって、
前記周壁の切り欠き面は、前記第1端子と前記第2端子の接触時のバネ変形量を軽減する方向の面であることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記第1メインハウジングの複数の前記サブハウジング収容室は、前記周壁を共有することにより隣り合って配置され、複数の前記サブハウジング収容室を形成する前記周壁の内で外側に位置する面を形成するものを切り欠いたことを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のサブコネクタを収容した一方のコネクタ部と、これに嵌合される他方のコネクタ部とを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタが従来より提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかるコネクタの一従来例として、
図20〜
図30に示すものがある。
【0003】
このコネクタ100は、
図20に示すように、互いに嵌合される一対の第1コネクタ部110及び第2コネクタ部120を備えている。第1コネクタ部110は、相手ハウジング嵌合室111を有し、 相手ハウジング嵌合室111に雄型の第1端子112が配置された複数の第1サブハウジング113と、周壁114で囲まれた複数のサブハウジング収容室115を有し、各サブハウジング収容室115に各第1サブハウジング113が収容された第1メインハウジング116とを備えている。
【0004】
この第1メインハウジング116は、
図22(a)、(b)、
図23(a)、(b)及び
図24に示すように、各サブハウジング収容室115が周囲を周壁114により格子状に囲まれている。
【0005】
第2コネクタ部120は、第1サブハウジング113の各相手ハウジング嵌合室111に嵌合可能な複数のサブハウジング嵌合部121を有し、各サブハウジング嵌合部121内に雌型の第2端子122が収容された第2ハウジング123と、この第2ハウジング123に回動可能に設けられるレバー124とを備えている。第1端子112及び第2端子122は、それぞれ電線112a、122aに接続される。
【0006】
次に、第1コネクタ部110及び第2コネクタ部120の各組み付け作業と、第1コネクタ部110及び第2コネクタ部120間の嵌合作業を説明する。第1サブハウジング113に第1端子112を収容する。次に、
図21(a)の矢印で示すように、第1サブハウジング113を第1メインハウジング116の後面側から挿入し、
図21(b)に示すように、第1サブハウジング113を移動端部まで押し込む。これにより、第1メインハウジング116の係止爪117が第1サブハウジング113の被係止部118を係止し、第1サブハウジング113が第1メインハウジング116に固定される。
【0007】
又、
図25(a)の矢印で示すように、第2ハウジング123の後面側から第2端子122を挿入し、
図25(b)に示すように、第2端子122を移動端部まで押し込む。これにより、第2ハウジング123の端子ランス125が第2端子122の被係止部126を係止し、第2端子122が第2ハウジング123に固定される。
【0008】
次に、
図26(a)の矢印で示すように、第2ハウジング123の後面側からレバー124を装着し、
図26(b)に示すように、第2ハウジング123の上面と下面より上下方向に突出する一対の突起127をレバー124の回転中心孔128にそれぞれ係合させることにより、一対の突起127を回転支点としてレバー124が回動可能となる。
【0009】
次に、
図27に示すように、第1メインハウジング116の正面側と第2ハウジング123の正面側とを対向させて、
図28に示すように、第1メインハウジング116に第2ハウジング123を途中まで挿入する。次に、第2ハウジング123に設けられるレバー124を
図28の矢印で示す方向(同
図28の時計方向)に回動することにより、
図29に示すように、第2ハウジング123を移動端部まで押し込む。これにより、第2ハウジング123のサブハウジング嵌合部121が第1サブハウジング113の相手ハウジング嵌合室111に嵌合し、第1端子112と第2端子122が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3948528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来例では、
図23(a)、(b)に示すように、サブハウジング収容室115に第1サブハウジング113を収容した場合、各サブハウジング収容室115が周囲を周壁114により格子状に囲まれ、第1サブハウジング113が周壁114で規制されてほぼリジット状態となるため、第1コネクタ部110及び第2コネクタ部120を互いに嵌合するとき、第1サブハウジング113の相手ハウジング嵌合室111に第2ハウジング123のサブハウジング嵌合部121が斜め方向で挿入されると、双方のコネクタ部110,120間のコネクタ挿入力が高くなる恐れがあった。
【0012】
つまり、
図28、
図30(a)に示すように、第1メインハウジング116に第2ハウジング123を組付ける際、第2ハウジング123が傾いた状態で挿入されると、
図30(b)に示すように、第2端子122のバネ接触片129のバネ変形量(バネ撓み量)Sが増大する。ここで、
図30(a)に示すように、第1メインハウジング116の周壁114と第1サブハウジング113の外壁との間には、僅かなクリアランスしか存在しない。そして、第1サブハウジング113は、第1メインハウジング116と第2コネクタ部120のサブハウジング嵌合部121に対して
図30(a)に示す規制ポイントR1〜R3によりほぼリジットな状態となる。従って、第1サブハウジング113がバネ接触片129のバネ変形量Sを軽減する方向にほとんど変移できないため、第1端子112及び第2端子122間の挿入力も軽減されない。この結果、コネクタ挿入力が高くなるという問題があった。
【0013】
そこで、未発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、コネクタ部間が斜め方向で挿入された場合でも、できるだけ低挿入力でコネクタ部を挿入できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、相手ハウジング嵌合室を有し、 前記相手ハウジング嵌合室に第1端子が配置された複数の第1サブハウジングと、周壁で囲まれた複数のサブハウジング収容室を有し、前記各サブハウジング収容室に前記各第1サブハウジングが収容された第1メインハウジングと、前記第1サブハウジングの前記各相手ハウジング嵌合室に嵌合可能な複数のサブハウジング嵌合部を有し、前記各サブハウジング嵌合部内に第2端子が収容された第2ハウジングとを備え、複数の前記第1サブハウジングが固定された前記第1メインハウジングと前記第2ハウジングとの嵌合状態では、前記サブハウジング嵌合部が前記第1サブハウジングの相手ハウジング嵌合室に嵌合し、前記第1端子と前記第2端子がバネ変形によって接続されるコネクタであって、前記第1メインハウジングの前記サブハウジング収容室を形成する前記周壁で、且つ、前記第2ハウジングの前記サブハウジング嵌合部の進入側の少なくとも1面側を切り欠
き、前記サブハウジング嵌合部の進入側の内で切り欠かなかった前記周壁と前記第1サブハウジングには、前記第1サブハウジングの進入を許容し、且つ、前記第1サブハウジングの許容傾斜範囲でのみ傾斜を許容する過剰傾斜規制手段が設けられたことを特徴とするコネクタである。
【0015】
前記周壁の切り欠き面は、前記第1端子と前記第2端子の接触時のバネ変形量を軽減する方向の面であることが好ましい。前記第1メインハウジングの複数の前記サブハウジング収容室は、前記周壁を共有することにより隣り合って配置され、複数の前記サブハウジング収容室を形成する前記周壁の内で外側に位置する面を形成するものを切り欠いたものを含
む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1サブハウジングの相手ハウジング嵌合室に第2ハウジングのサブハウジング嵌合部が斜め方向で挿入されると、第1サブハウジングが周壁の切り欠きによるクリアランスによって、コネクタ間の挿入嵌合力を弱める方向に変移でき、コネクタ挿入力を極力低減できる。従って、第2ハウジングのサブハウジング嵌合部が斜め方向に挿入された場合であってもコネクタ挿入力を極力低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態を示し、コネクタの分解斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付ける前の状態の断面図、(b)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の正面図、(b)は
図3(a)のA2−A2線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態を示し、(a)は
図2(a)のA1−A1線に沿う断面図、(b)は
図4(a)のB部の拡大断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態を示し、第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態を示し、(a)は第2ハウジングに第2端子を組付ける前の状態の断面図、(b)は第2ハウジングに第2端子を組付けた状態の断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合する前の状態の断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合する途中の状態の断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合した状態の断面図である。
【
図10】本発明の第1実施形態を示し、(a)は
図8のC部の拡大断面図、(b)は
図10(a)のD部の拡大断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態を示し、コネクタの分解斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態を示し、第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付ける途中の状態の斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付ける前の状態の断面図、(b)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の断面図である。
【
図14】本発明の第2実施形態を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の後面図、(b)は
図14(a)のE部の拡大後面図である。
【
図15】本発明の第2実施形態を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の正面図、(b)は
図15(a)のF−F線に沿う断面図である。
【
図16】本発明の第2実施形態を示し、第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の斜視図である。
【
図17】本発明の第2実施形態を示し、(a)は
図15(b)のG部の拡大断面図、(b)は
図17(a)のH−H線に沿う断面図である。
【
図18】本発明の第2実施形態を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合する途中の状態の断面図である。
【
図19】本発明の第2実施形態を示し、(a)は
図18のI部の拡大断面図、(b)は
図19(a)のJ−J線に沿う断面図、(c)は
図19(a)のK部の拡大断面図である。
【
図20】一従来例を示し、コネクタの分解斜視図である。
【
図21】一従来例を示し、(a)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付ける前の状態の断面図、(b)は第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の断面図である。
【
図22】一従来例を示し、(a)は
図21(a)のL1−L1線に沿う断面図、(b)は
図22(a)のL2部の拡大断面図である。
【
図23】一従来例を示し、(a)は第1メインハウジングの正面図、(b)は
図23(a)のM−M線に沿う断面図である。
【
図24】一従来例を示し、第1メインハウジングに第1サブハウジングを組付けた状態の斜視図である。
【
図25】一従来例を示し、(a)は第2ハウジングに第2端子を組付ける前の状態の断面図、(b)は第2ハウジングに第2端子を組付けた状態の断面図である。
【
図26】一従来例を示し、(a)は第2ハウジングにレバーを組付ける前の状態の平面図、(b)は第2ハウジングにレバーを組付けた状態の平面図である。
【
図27】一従来例を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合する前の状態の断面図である。
【
図28】一従来例を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合する途中の状態の断面図である。
【
図29】一従来例を示し、第1コネクタ部及び第2コネクタ部を嵌合した状態の断面図である。
【
図30】一従来例を示し、(a)は
図28のN部の拡大断面図、(b)は
図30(a)のP部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1〜
図10は本発明の第1実施形態を示す。コネクタ1Aは、
図1に示すように、互いに嵌合される一対の第1コネクタ部2及び第2コネクタ部20を備えている。
【0020】
第1コネクタ部2は、相手ハウジング嵌合室10を有する複数の第1サブハウジング4と、外周に形成される外壁6及びこの外壁6より内側の周壁(内壁)7で囲まれた複数のサブハウジング収容室8を有し、各サブハウジング収容室8に各第1サブハウジング4が収容された第1メインハウジング3と、各相手ハウジング嵌合室10に配置された複数の雄型の第1端子5とを備えている。
【0021】
第1メインハウジング3は、第1サブハウジング4に係合する第1係止爪9aと、第2コネクタ部20の第2ハウジング21に係合する第2係止爪9bとを有する。第1サブハウジング4は、第1端子5の被係止部13を係止する端子ランス11と、第1係止爪9aにより係止される被係止部14とを有する。第1端子5は、先端に雄タブ12を有し、後端側が電線5aに接続され、中間部に、端子ランス11により係止される被係止部13が設けられている。
【0022】
第1メインハウジング3のサブハウジング収容室8は、左右方向に3つ並列されると共に、上下方向に2段に配置された状態で、計6つ設けられている。6つのサブハウジング収容室8は、隣り合う周壁7を共有することにより集合配置されている。6つのサブハウジング収容室8を構成する周壁7は、外周側に位置し、且つ、第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22の進入側が切り欠かれている(切り欠き領域は、
図4(a)、(b)にて符号40で示す)。
図4(a)において、左側に位置するサブハウジング収容室8の切り欠かれた面は、第1端子5と第2端子30の接触時のバネ変形量を軽減する方向の面を含む。換言すれば、第1端子5と第2端子30の接触時のバネ変形量を軽減する方向が周壁7の外側面になるよう第1端子5及び第2端子30の向きが設定されている。これにより、6つの各第1サブハウジング4は、周壁7の切り欠きによる隙間(クリアランス)aを利用して傾斜できるようサブハウジング収容室8に収容されている。
【0023】
具体的には、上段に位置する3つの第1サブハウジング4は、少なくとも上方への傾斜が可能で、下段に位置する他の3つの第1サブハウジング4は、少なくとも下方への傾斜が可能である。これに加えて、左右方向の両端に位置する4つの第1サブハウジング4は、左右の一方への傾斜が可能である。例えば、
図10(a)に示す右端の第1サブハウジング4とサブハウジング嵌合部22との間には、切り欠きによる隙間(クリアランス)aが形成され、第1サブハウジング4の嵌合先端が左右の外向き(第2端子30の接触時のバネ変形量を軽減する方向)に傾斜できる。
【0024】
第2コネクタ部20は、第1サブハウジング4の各相手ハウジング嵌合室10に嵌合可能な複数のサブハウジング嵌合部22を有する第2ハウジング21と、各サブハウジング嵌合部22内に収容される雌型の第2端子30とを備えている。
【0025】
第2ハウジング21は、第2端子30の被係止部33を係止する端子ランス23と、第2係止爪9bを係止する係止爪24とを有する。第2端子30は、先端に、バネ接触片32を備えた相手端子接続部31を有し、後端側が電線30aに接続され、中間部に、第2ハウジング21の端子ランス23により係止される被係止部33が設けられている。
【0026】
次に、第1コネクタ部2及び第2コネクタ部20の各組み付け作業と、第1コネクタ部2及び第2コネクタ部20間の嵌合作業を説明する。第1サブハウジング4の後面側から第1端子5を挿入して移動端部まで押し込むと、第1サブハウジング4の端子ランス11が第1端子5の被係止部13を係止する。これにより、第1端子5が第1サブハウジング4に固定される。次に、
図2(a)に示すように、第1メインハウジング3の後面側から第1サブハウジング4を挿入する。
図2(b)に示すように、第1サブハウジング4を移動端部まで押し込むと、第1メインハウジング3の第1係止爪9aが第1サブハウジング4の被係止部14に係止する。これにより、第1サブハウジング4が第1メインハウジング3に固定される。
【0027】
次に、
図6(a)の矢印で示すように、第2ハウジング21の後面側から第2端子30を挿入する。
図6(b)に示すように、第2端子30を移動端部まで押し込むと、第2ハウジング21の端子ランス23が第2端子30の被係止部33を係止する。これにより、第2端子30が第2ハウジング21に固定される。
【0028】
次に、上記のようにして組み立てた第1コネクタ部2及び第2コネクタ部20を互いに嵌合する。具体的には、
図7に示すように、第1メインハウジング3の正面側と第2ハウジング21の正面側とを対向させて、
図8に示すように、第1メインハウジング3に第2ハウジング21を挿入する。
図9に示すように、第2ハウジング21を移動端部まで押し込む。これにより、第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22が第1サブハウジング4の相手ハウジング嵌合室10に嵌合し、第1端子5と第2端子30が互いに接続される。このとき、第1メインハウジング3の第2係止爪9bが第2ハウジング21の係止爪24を係止することにより、第2ハウジング21が第1メインハウジング3に固定される。
【0029】
上記コネクタ嵌合過程にあって、第1メインハウジング3に第2ハウジング21を斜め挿入されると、第1サブハウジング4の相手ハウジング嵌合室10に第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22が斜め方向で挿入される。すると、
図10(b)に示すように、第2端子30のバネ接触片32のバネ変形量(バネ撓み量)Sが増大する。ここで、
図10(a)に示すように、第1サブハウジング4が周壁7の切り欠き40によるクリアランスaが存在するため、第1サブハウジング4はそのクリアランスaによって斜め傾斜可能(
図8、
図10(a)のR矢印方向)であり、コネクタ間の挿入嵌合力を弱める方向に変移でき、コネクタ挿入力を極力低減できる。
【0030】
左端に位置する第1サブハウジング4は、周壁7の切り欠き40によるクリアランスaによって、第2端子30のバネ接触片32のバネ変形量Sを軽減する方向に変移する(
図10(b)のR矢印方向)。これにより、第1端子5及び第2端子30間の挿入力も軽減される。従って、第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22が斜め方向に挿入された場合であってもコネクタ挿入力を極力低減できる。
【0031】
コネクタ嵌合が進むと、第1コネクタ部2と第2コネクタ部20間の傾斜が徐々に解消される。すると、第1サブハウジング4も傾斜姿勢を徐々に戻す方向に変移し、第1コネクタ部2と第2コネクタ部20が完全に嵌合された状態では適正な姿勢(傾斜しない)となる。
【0032】
周壁7の内で外周に位置する面を形成するものがないため、コネクタ1Aの小型化、軽量化に寄与する。また、周壁7の内で外周に位置する面を形成するものがないことにより、周壁7が弾性変形し易い構造となるため、周壁7の切り欠き40によるクリアランスによって第1サブハウジング4が追従傾斜することに加えて、周壁7の弾性変形によっても第1サブハウジング4の傾斜を許容することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図11〜
図19は本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態のコネクタ1Bは、第1実施形態のコネクタ1Aと比べて、第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22の進入側の内で切り欠かなかった周壁7と第1サブハウジング4に、過剰傾斜規制手段50が設けられたことが異なっており、その他の構成は基本的に同様である。なお、
図11〜
図19において前述した
図1〜
図10に示すものと同様のものには同一符号を付してある。
【0034】
傾斜規制手段50は、第1メインハウジング3の周壁7と第1サブハウジング4の互いに直交する2面にそれぞれ設けられ、第1サブハウジング4の進入を許容し、且つ、第1サブハウジング4の許容傾斜範囲でのみ傾斜を許容する。具体的には、傾斜規制手段50が、上段に位置する3つの第1サブハウジング4の下面側と、下段に位置する他の3つの第1サブハウジング4の上面側とに設けられている。これに加えて、傾斜規制手段50が、左右方向の両端に位置する4つの第1サブハウジング4の左右方向の内側にも設けられている。また、各傾斜規制手段50は、第1サブハウジング4の進入方向に沿って周壁7に形成されるアリ溝51と、第1サブハウジング4より突出し、アリ溝51に嵌合するアリ突起52とから構成されている。これらのアリ溝51及びアリ突起52間には、所定のクリアランスが設けられているので、上記のように、第1サブハウジング4がサブハウジング収容室8内に進入可能で、且つ、第1サブハウジング4の傾斜が許容傾斜範囲で可能である。
【0035】
上記構成において、
図13(a)、(b)に示すように、第1サブハウジング4の後面側から第1端子5を挿入して移動端部まで押し込むと、第1サブハウジング4の端子ランス11が第1端子5の被係止部13を係止することにより、第1端子5が第1サブハウジング4に固定される。次に、
図12に示すように、第1メインハウジング3の後面側から第1サブハウジング4を挿入すると共に、
図14〜
図16に示すように、第1メインハウジング3の周壁7に形成されるアリ溝51に第1サブハウジング4のアリ突起52を係合させて、第1サブハウジング4を移動端部まで押し込むと、第1メインハウジング3の第1係止爪9aが第1サブハウジング4の被係止部14を係止することにより、第1サブハウジング4が第1メインハウジング3に固定される。このとき、第1メインハウジング3の周壁7に形成されるアリ溝51に第1サブハウジング4のアリ突起52を係合させたので、第1サブハウジング4はアリ溝51に沿って進入が許容され、且つ、第1サブハウジング4は、許容傾斜範囲での傾斜を許容される。例えば、左端に位置する第1サブハウジング4は、
図17の(a)、(b)のR矢印方向及びS矢印方向に傾斜できる。
【0036】
また、第1コネクタ部2と第2コネクタ部20を互いに嵌合するには、第1サブハウジング4はそのクリアランスaによって斜め傾斜可能であるが、その傾斜許容範囲が制限されている。従って、
図19(a)、(c)に示すように、第1サブハウジング4が過剰傾斜することによる、第1サブハウジング4の先端面と第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22の先端面が干渉を防止できる。つまり、
図19(a)、(b)に示すように、第1サブハウジング4の相手ハウジング嵌合室10に第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22が斜め方向で挿入されても、第1サブハウジング4の傾斜が傾斜規制手段50により上記許容傾斜範囲を越えないように規制されるので、第1サブハウジング4の過大傾斜を防止できる。これにより、第1サブハウジング4の先端面と第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22の先端面との干渉することなく挿入できる。
【0037】
以上より、第2ハウジング21のサブハウジング嵌合部22が斜め方向に挿入された場合であってもコネクタ挿入力を極力低減でき、しかも、第1サブハウジング4と第2ハウジング21間の挿入先端間の干渉(どつき)を抑制できる。
【0038】
過剰傾斜規制手段50は、第1メインハウジング3の周壁7の切り欠き側に対向する周壁7にそれぞれ設けられているので、第1サブハウジング4の傾斜可能な全ての方向の過大傾斜を防止できる。
【符号の説明】
【0039】
1A、1B コネクタ
3 第1メインハウジング
4 第1サブハウジング
5 第1端子
7 周壁
8 サブハウジング収容室
10 相手ハウジング嵌合室
21 第2ハウジング
22 サブハウジング嵌合部
30 第2端子
50 過剰傾斜規制手段