(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ボディ側のステップ部の後方近傍に配置した首振り部材からステップ部後方の開口を経てスライドドア側の首振り部材にワイヤハーネスが配索され、該スライドドアを車両前方にスライドさせて全閉とした際に、該ワイヤハーネスが、該車両ボディ側の首振り部材から該ステップ部よりも車両外側に向けて突出した突出部と、該突出部に続いて湾曲して前記車両ボディ側に向かう部分と、を有するように、該車両ボディ側の首振り部材の前方向の回動角度が規制されており、前記スライドドアの全閉時に、前記ワイヤハーネスが前記車両ボディ側と前記スライドドア側との各首振り部材の間で略S字状に屈曲したことを特徴とするスライドドア用給電構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のスライドドア用給電構造にあっては、例えば
図6〜
図8に類似の構造例を示す如く、スライドドア2の全閉時に、
図6の右側(
図7の左側)に実線で示す如くワイヤハーネス62のコルゲートチューブ63が車両ボディ側の給電具の首振り部材31からスライドドア側の給電具の首振り部材64にかけて直線的に配索されるために、スライドドア側のドアトリム8よりも車両内側において、車両ボディ5の乗降口の水平なステップ部6の後部上側にコルゲートチューブ63の符号63aで示す部分が露出し、車室側からコルゲートチューブ63の露出部分63aが見えることで、車室側の見映え(外観品質)が低下するという懸念があった。
【0008】
また、
図7,
図8の如く、車両ボディ5のステップ部6の垂直な後部パネル14a,14bにコルゲートチューブ導出用の開口32を幅広W2に切欠形成しなければならず、ステップ部6の強度が低下すると共に、車両外側から開口32の前部32aが見えて見映えが低下するといった懸念があった。
【0009】
さらに、
図6,
図7の如く、スライドドア2の全閉時にコルゲートチューブ63が直線状に伸びることで、スライドドア2を全閉から開いた際に(スライドドア2の半開時に)、コルゲートチューブ63が軸方向に圧縮されて車両外側又は車両内側に屈曲することで、コルゲートチューブ63の屈曲軌跡が一定せずに、コルゲートチューブ63の座屈や引っ掛かりを生じやすくなってコルゲートチューブ63の屈曲耐久性やスライドドア2の開き操作性が低下し兼ねないという懸念があった。
【0010】
これらの懸念は、コルゲートチューブ63に代えて他のハーネス保護チューブやキャタピラ状の外装部材等を用いた場合においても生じ兼ねないものである(キャタピラ状の外装部材については上記特許文献2参照)。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、スライドドアの全閉時における車両ボディ側のワイヤハーネスの露出等に起因する見映えの低下を解消し、それに加えて、スライドドアの全閉時から全開時までのワイヤハーネスのスムーズな屈曲を可能とするスライドドア用給電構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るスライドドア用給電構造は、車両ボディ側のステップ部の後方近傍に配置した首振り部材からステップ部後方の開口を経てスライドドア側の首振り部材にワイヤハーネスが配索され、該スライドドアを車両前方にスライドさせて全閉とした際に、該ワイヤハーネスが
、該車両ボディ側の首振り部材から該ステップ部よりも車両外側に
向けて突出した突出部と、該突出部に続いて湾曲して前記車両ボディ側に向かう部分と、を有するように、該車両ボディ側の首振り部材の前方向の回動角度が規制され
ており、前記スライドドアの全閉時に、前記ワイヤハーネスが前記車両ボディ側と前記スライドドア側との各首振り部材の間で略S字状に屈曲したことを特徴とする。
【0013】
上記構成により、スライドドアの全閉時に、ワイヤハーネスが車両ボディ側の首振り部材を支点にスライドドア側の首振り部材との間で前方に引っ張られつつ、ワイヤハーネスが車両ボディ側の首振り部材から乗降口のステップ部の上にかかることなくステップ部の車両外側(スライドドア側)に配索されることで、車両内側からステップ部を見た際にワイヤハーネスが目に入らず、見映えが向上する。それと共に、車両ボディ側の首振り部材の前方向の回動角度が従来よりも小さく規制されたことで、ステップ部後方の開口が前後方向に幅狭に形成され(開口の前端が従来よりも後方に配置され)、スライドドア開き時に車両外側から開口が目に入らず、これによっても見映えが向上する。
また、上記構成により、スライドドアの全閉時にワイヤハーネスが長さ的に余裕をもって配索され、その分、スライドドアの全開時におけるワイヤハーネスの長さが長く設定され、スライドドア全開時にワイヤハーネスが車両前方に向けて屈曲されて、ステップ部後方の車両ボディ部分とワイヤハーネスとの干渉が防止される。スライドドアの全閉時にワイヤハーネスが略S字状に屈曲することで、スライドドア全開時のワイヤハーネスの余長が吸収される。
【0014】
請求項2に係るスライドドア用給電構造は、請求項1記載のスライドドア用給電構造において、前記スライドドアの全閉時に前記スライドドア側の首振り部材がばね部材で車両内側に向けて付勢されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、スライドドアを全閉から開いた際に、スライドドア側の首振り部材とそれから導出されたワイヤハーネス部分とが車両前方に向けてばね部材で回動付勢され、スライドドアの全開時にかけて常に車両前側ないし車両外側に向けてスライドドア側の首振り部材とそれから導出されたワイヤハーネス部分とが回動付勢されることで、スライドドアの開き操作中のワイヤハーネスの屈曲軌跡が逆反りなく常に一定にスムーズに確保されて、ワイヤハーネスの屈曲耐久性が高まる。スライドドアを全開から全閉にする際にも上記とは経時的に逆の動作で同様な作用効果が奏される。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、スライドドアの全閉時に、車両ボディのステップ部の上にワイヤハーネスが露出しないから、車両内側からの見映えが向上し、また、ステップ部後方の開口の前部が従来よりも後退して開口が幅狭に形成されることで、車両外側からの見映えが向上し、これらによって車両の内観及び外観の品質が向上する。
また、スライドドアの全閉時にワイヤハーネスを長さのゆとりを持って配索することで、スライドドアの全開時にワイヤハーネスを車両前方に屈曲させて、ステップ部後方の車両ボディ部分とワイヤハーネスとの干渉を防止することができる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、スライドドアを例えば全閉から全開にする際に、ばね部材による車両ボディ側の首振り部材の回動付勢方向が一定であるので、ワイヤハーネスの屈曲軌跡が逆反りなく常に一定に且つスムーズに保たれて、ワイヤハーネスの屈曲耐久性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜
図3は、本発明に係るスライドドア用給電構造の一実施形態、
図4,
図5は、スライドドア用給電構造に使用する車両ボディ側とスライドドア側の各給電具の一実施形態をそれぞれ示すものである。
【0023】
図1の如く、車両ボディ側の給電具の首振り部材1の回動角度(スライドドア2の全閉から全開にかけての首振り部材1の回動角度)α1は、従来の
図6の車両ボディ側の給電具の首振り部材31の回動角度α2よりも小さく規定されている。従来の
図6の首振り部材31の回動角度α2が鈍角的(90°以上)であるのに対し、
図1の首振り部材1の回動角度α1は鋭角的(90°以下)である。
【0024】
スライドドア2の全閉時に、すなわち車両左側のスライドドア2を車両前方にスライド移動させて全閉にした際に、
図1の右側の図の如く、車両ボディ側の首振り部材1の仮想軸心線m1はスライドドア2(車両外側)に向けて略50°程度の角度(車両前後方向の仮想線m2を基準とした角度)α3で斜め前方に延び、スライドドア2の全開時に、
図1の左側の図の如く、車両ボディ側の首振り部材1の仮想軸心線m3はスライドドア2(車両外側)に向けて略115°程度の角度(同じく車両前後方向の仮想線m2を基準とした角度)α4で斜め後方に延びている。これら角度の数値はあくまで参考的なものである。
【0025】
スライドドア2の全閉時に、ワイヤハーネス3の外装部材である合成樹脂製のコルゲートチューブ4は、実線で示す如く、車両ボディ側の首振り部材1からスライドドア2(車両外側)に向けて略50°程度の鋭角的な角度α3で車両前方へ導出され、車両ボディ5のステップ部6の後端部6aを避けてスライドドア2側(車両外側)に突出(迂回)し(突出部を符号4aで示す)、ステップ部6の後端部6aに対向する位置でやや小さな半径で湾曲して(湾曲部を符号4bで示す)ステップ部6に向かい(符号4cで示す部分)、ステップ部6の車両外側端6bに沿って大きな半径で湾曲しつつ配索されて(符号4dで示す部分)、スライドドア側の首振り部材7にかけて再度車両斜め前方に向けて小さな鋭角的な角度β1で配索されている(符号4eで示す部分)。
【0026】
このように、スライドドア2の全閉時に、車両ボディ側の首振り部材1が回転規制されて、車両ボディ側の首振り部材1とスライドドア側の首振り部材7との間で、ワイヤハーネス3のコルゲートチューブ4がステップ部6の上側に露出することなく、スライドドア2の厚み方向内側に入り込んで(スライドドア2の垂直なドアトリム8よりも車両外側において不図示のドアインナパネルの水平な下面に沿って)配索されることで、車室側9の乗員からコルゲートチューブ4が見えず、見映えが高められている。
【0027】
スライドドア2の全閉時に、スライドドア側の首振り部材7はばね部材10(
図5)の力で矢印A1の如く反時計回りに付勢されており、それによって、スライドドア側の首振り部材7が前側の軸部11を支点(中心)に車両ボディ5側に向けて斜め後方を向き、スライドドア側の首振り部材7から導出されたコルゲートチューブ部分4eが鋭角的な角度β1でステップ部6の車両外側端6bに向かっている。
【0028】
スライドドア2の全開時に、すなわち車両左側のスライドドア2を車両後方にスライドさせて全開にした際に、スライドドア側の首振り部材7(鎖線で示す)は、
図6の従来例と同様に、後側の軸部11を支点に少し車両ボディ5に向けて斜めに前方を向き、車両ボディ側の首振り部材1は、
図6の従来例と同様に、右側の軸部12を支点にスライドドア2(車両外側)に向けて少し斜め後方を向く。
【0029】
ワイヤハーネス3のコルゲートチューブ4は、鎖線で示す如く、両首振り部材1,7の間で(渡り部において)長手方向中央部分が斜め前向きに湾曲し且つ突出して(湾曲部を符号4fで示す)、車両ボディ5のステップパネル13の後端側部分13aないしその近傍との干渉が阻止される。スライドドア側の首振り部材7はばね部材10(
図5)の力で矢印A2の如く反時計回りに付勢されることで、スライドドア2の全開時にコルゲートチューブ4が前方に向けて弓なりに反って、車両ボディ5のステップパネル13の後端側部分13aないしその近傍との干渉防止が促進される。
【0030】
スライドドア2は全閉時に車両ボディ5の乗降口の周縁に密着し、ドアトリム8がステップ部6の車両外側端(左端)6bと略同一垂直面上に位置する。スライドドア2は車両ボディ側の湾曲状の不図示のガイドレールに沿って開き初期時にステップ部6から車両外側に離間し、車両ボディ5の不図示のアウタパネルに沿って後方に移動して全開となる。スライドドア2の開閉は手動ないしモータ等の駆動で行われる。
【0031】
図2の如く(
図2は
図1とは前後反転して図示し、
図2の手前側がスライドドア2側、奥側が車両ボディ5側であり、
図2の左側が車両前側である)、スライドドア2の全閉時に、スライドドア側の首振り部材7は、実線で示す如く、車両ボディ5のステップ部6の前端6cよりも後方において、ステップ部6の車両外側端6bよりも少し高い位置でスライドドア2側に配置されている。
【0032】
水平なステップ部6は車両内側の垂直な上向きのパネル壁14に続き、垂直なパネル壁14の後端部はステップ部6の後端部に沿って屈曲し(屈曲壁部を符号14aで示す)、
図3の如く、屈曲壁部14aとステップパネル13の垂直な後端壁15との間にワイヤハーネス導出用の開口16が設けられ、開口16は
図8の従来の開口32よりも幅狭に形成されている(開口16の幅を符号W1で示す)。
【0033】
図8の従来の開口32の前部32aは屈曲壁部14aを切欠して形成されているが、
図2,
図3の開口16は屈曲壁部14aよりも後方に配置され、従来に比べて開口16の前部16a側の幅が短縮されている。開口16の上側はステップパネル13の水平なパネル壁17で塞がれている。車両ボディ側の首振り部材1(
図2)の回転規制によって開口16が幅狭に形成されたことで、ステップパネル13の強度が高まると共に、スライドドア2の全開時に車両外側から開口16が見えて見映えが低下するという懸念が解消されている。
【0034】
スライドドア2の全閉時に、開口16内の車両ボディ側の首振り部材1(
図2)からワイヤハーネス3のコルゲートチューブ4が開口16の前半側を通って前方に導出されている。
図1で説明した如く、コルゲートチューブ4の後半部が開口から車両外側に向けて湾曲状に突出する(湾曲部を符号4bで示す)ことで、
図6の従来例におけるステップ部6の上側にコルゲートチューブ4が露出して見映えを損なうという不具合が解消されている。
【0035】
図2の如く、スライドドア2の全閉時に、コルゲートチューブ4の前半部は、後半の湾曲部4bからステップ部6の車両外側端6bに沿って逆向きに大きな半径で湾曲して(中間の湾曲部を符号4dで示す)スライドドア側の首振り部材7に続いている。スライドドア2の全閉時にコルゲートチューブ4は平面視で横長の(車両前後方向に長い)略S字状に屈曲している。前半の湾曲部4dは、スライドドア側の首振り部材7がばね部材10(
図5)の力で矢印A1の如く反時計回りに付勢されることで、顕著に形成される。
【0036】
スライドドア2の全開時にコルゲートチューブ4はドア全閉時に比べて前後反転して、ステップパネル13の開口16の後半側から車両後方且つ車両外側に向けて湾曲状に導出される(湾曲部を符号4fで示す)。コルゲートチューブ4内に挿通された不図示の複数本の電線の一方はステップパネル13の開口16内の首振り部材1を経て車両ボディ5の内側に配索され、複数本の電線の他方はスライドドア側の首振り部材7を経てスライドドア側に上向きに配索されている。コルゲートチューブ4は断面長円形に形成されて、車両前後左右方向に屈曲自在で、上下方向の屈曲(渡り部における垂れ下がり)が抑止されている。
【0037】
図1の右側の図(実線)及び
図2の左側の図(実線)の如く、スライドドア2の全閉時に、コルゲートチューブ4が横長略S字状に屈曲する、すなわち長さに余裕を持って屈曲することで、例えばスライドドア2の全開時にスライドドア2と車両ボディ5との間でコルゲートチューブ4を干渉防止のために直線的に伸長させずに湾曲状に屈曲させる(湾曲部を符号4fで示す)ことに伴うコルゲートチューブ4の長さの増加分をスムーズに吸収することができる。
【0038】
また、スライドドア2の全閉時に、コルゲートチューブ4が平面視で横長略S字状に屈曲することで、たとえコルゲートチューブ4の切断長の変動等による長さ違い(特に短縮化)が発生した場合でも、コルゲートチューブ4の少なくとも後半(車両ボディ側の首振り部材1寄り)の湾曲部4bの形状は維持され、ステップ部6上へコルゲートチューブ4の露出が防止される。
【0039】
それと共に、スライドドア側の給電具のばね部材10(スライドドア側の首振り部材7を矢印A1,A2の如く反時計回りに付勢する)との相乗作用で、スライドドア2の全閉から全開にかけて及び全開から全閉にかけてのコルゲートチューブ4(ワイヤハーネス3)の屈曲軌跡がいつも同一となって、コルゲートチューブ4の逆反り等を発生せず、コルゲートチューブ4が常にスムーズに屈曲され、ワイヤハーネス3の屈曲耐久性が向上する。
【0040】
図1のスライドドア2の全閉状態からスライドドア2を後方に少しスライドさせて開くに伴って、スライドドア2の開き初期時及び半開時に、スライドドア側の首振り部材7がばね部材10(
図5)で矢印A1の如く反時計回りに付勢されているので、軸部11を支点に首振り部材7が反時計回りに回動して、首振り部材7の回動先端のハーネス導出口7aが車両ボディ5側(車両内側)を向きつつ斜め後方から斜め前方に向きを順次移行して、車両ボディ側の首振り部材1とスライドドア側の首振り部材7との間でワイヤハーネス3のコルゲートチューブ4が略逆S字状にスムーズに屈曲する。
【0041】
その状態からスライドドア2の後方移動に伴って、
図1の左側の図の如くスライドドア側の首振り部材7のハーネス導出口7aがほぼ前方を向いてコルゲートチューブ4が略逆S字状から前向きの略弓形にスムーズに屈曲する。
【0042】
このように、スライドドア側の首振り部材7を反時計回りに付勢するばね部材10(
図5)と、車両ボディ側の首振り部材1の回転規制(回転角度α1に規制する)とによって、スライドドア2の半開時に(両首振り部材1,7が最接近して両首振り部材1,7間の渡り部の長さが最小となった際に)、コルゲートチューブ4が平面視で略逆S字状に屈曲することで、コルゲートチューブ4の座屈や引っ掛かり等が防止されて、コルゲートチューブ4の屈曲耐久性が高まると共に、スライドドア2の開閉(特に開き操作)に要する力が削減されて、スライドドア2のスムーズな開閉及び開閉用モータの小型化等が可能となる。
【0043】
図4の如く、車両ボディ側の首振り部材1は、合成樹脂製の上側の分割首振り部材18と下側の分割首振り部材19とで分割可能に形成されている。首振り部材1をインナ部材と呼称することもある。上下の分割首振り部材18,19は上下対称ないし略対称に形成され、それぞれ半環状(半筒状)の分割ハーネス保持壁20と、分割ハーネス保持壁20の基端側に段差部21を介して一体に続く水平な支持壁22とを備えている。
【0044】
各分割ハーネス保持壁20の内周面に、コルゲートチューブ4の凹溝23に係合するリブ(凸条)25を有し、各支持壁22の外面の円板部22aの中心に円ボス状の軸部12を有し、分割ハーネス保持壁20の幅方向両側に相互固定用の鍔壁26を有している。両分割ハーネス保持壁20は、コルゲートチューブ4を挟んだ状態で、鍔壁26における一方の係止爪と他方の係止凹部等といった係止手段又はボルトとナット等の固定手段で相互に固定され、環状(筒状)のハーネス保持壁(ハーネス保持部)20となる。
【0045】
合成樹脂製のコルゲートチューブ4は周方向の凹溝23と凸条24とをチューブ長手方向に交互に配列し、上下端に撓み(弛み)防止用の長手方向のリブ27を有した既存のものである。
図4,
図5では便宜上、コルゲートチューブ4の長手方向の一部のみを図示している。コルゲートチューブ4の切断端28は首振り部材1のハーネス保持壁20の基端側に配置され、ハーネス保持壁20の先端のハーネス導出用の開口20aからコルゲートチューブ4が
図5のスライドドア側の首振り部材7(
図5)まで延長される。コルゲートチューブ内には予め複数本の電線(図示せず)が挿通される。コルゲートチューブ4として断面長円形ではなく断面円形のものを用いる場合は、首振り部材1のハーネス保持壁20の断面は断面円形に形成される。
【0046】
コルゲートチューブ4を把持した首振り部材1は上下のアウタ部材(ケースないし固定部材)である合成樹脂製のカバー29及びベース30の内側に水平方向首振り自在に収容される。カバー29とベース30は、ベース30側の車両ボディ固定用のブラケット33を除いて上下対称ないし略対称に形成されている。すなわち、水平な上下の基壁34と、基壁34の幅方向両側に一体に形成された両側壁35とを備えており、両側壁35の小ブラケット36をねじ締め等することで、相互に固定される。
【0047】
各基壁34の先端側部分は先端に向かうにつれて漸次拡幅されて扇状に形成され、扇状部分37の両側の側壁が平面視テーパ状ないし湾曲状のガイド壁38,39となっている。少なくとも一方のガイド壁39は内面に首振り部材当接用のリブ39aを有している。両ガイド壁38,39の開き角度は概ね90°ないしそれ以下に規定され、首振り部材1の回動を両ガイド壁38,39で規制可能(首振り部材1の回動角度を両ガイド壁38,39で規定可能)となっている。首振り部材1の両側の水平な鍔部26の外端面がアウタ部材29,30のガイド壁38,39の内面に当接して首振り部材1の回動角度が規定(規制)される。
【0048】
上下の基壁34の扇状部分37の基端側の内面に円板部37aとその中心の軸受孔(軸受部)40とを有し、各軸受孔40に首振り部材1の上下の各軸部12を回動自在に係合可能である。本例のアウタ部材29,30は平面視で略L字状に屈曲され、ワイヤハーネス3の不図示の電線部分をベース30の終端の固定部41にバンド締め等で固定した状態で
図1のステップパネル13内で車両前方に向けて導出可能である。首振り部材1とアウタ部材(固定部材)29,30とで車両ボディ側の給電具(給電装置)42が構成される。首振り部材1に上側及び/又は下側の軸受部(40)を設け、アウタ部材29,30に上側及び/又は下側の軸部(12)を設けることも可能である。
【0049】
図5の如く、スライドドア側の首振り部材7は、合成樹脂製の上下の分割首振り部材(分割インナ部材)43,44で構成されている。上側の分割首振り部材43は、水平な半環状(半筒状)の分割ハーネス保持壁45と、分割ハーネス保持壁45の基端に一体に設けられた断面円形の垂直な環状壁46と、環状壁46の上端に一体形成された環状の軸部11とを備えている。
【0050】
下側の分割首振り部材44は、分割ハーネス保持壁45と、分割ハーネス保持壁45の基端側に一体に設けられた湾曲壁48と、湾曲壁48の下側に一体又は別体に設けられた断面円形の環状の収容壁49とを備えている。各分割ハーネス保持壁45の内面には、コルゲートチューブ4の他端部を保持する(他端部の凹溝23に係合する)リブ50が設けられ、湾曲壁48の底壁部48aには軸受孔(軸受部)51が設けられている。両分割首振り部材43,44は係止手段等で相互に固定され、両分割ハーネス保持壁45は合体して環状のハーネス保持壁(ハーネス保持部)45になる。
【0051】
下側の分割首振り部材44の収容壁49の内側に捩りコイルばね(ばね部材)10が収容され、捩りコイルばね10の上端の引っ掛け部10aが収容壁49の上部側に係止され、下端の不図示の引っ掛け部が合成樹脂製のベース(アウタ部材ないし固定部材)52の底部側のボス部53に係止される。首振り部材7は捩りコイルばね10の力で反時計回り(
図5で左向き)に付勢される。
【0052】
ベース52は、水平な底壁54と、底壁54の基端側に垂直に立設された背壁55と、底壁54の略中央に立設され、複数の縦溝53aを有するボス部53と、ボス部53の上部中央に設けられた短円柱状の軸部47と、背壁55の両側に設けられたドア固定用のブラケット56と、背壁55の上端に設けられたカバー固定用の突起57とを有している。ボス部53の外周面に沿って捩りコイルばね19の内周面が配置され、軸部47が下側の分割首振り部材44の軸受孔51に係合する。ブラケット56はスライドドア2(
図1)のドアインナパネルにねじ締め等で固定される。
【0053】
上側のカバー(アウタ部材ないし固定部材)58は、下側の鍔壁59と、鍔壁59から上方に湾曲状に突出した半割状のハーネス導出壁60とを備えている。鍔壁59には、上側の分割首振り部材43の環状の軸部11を係合させる不図示の軸受孔が設けられ、軸受孔はハーネス導出壁60の内側空間に連通している。鍔壁59の基端側59aがベース52の上端側の突起57に例えば溶着等で強固に固定される。背壁55の例えば両側のブラケット56に首振り部材7のハーネス保持壁45の側部外面が当接して首振り部材7の回動角度が規定される。首振り部材7と捩りコイルばね10とベース52とカバー58とでスライドドア側の給電具(給電装置)61が構成される。上下の軸部11,47や軸受部51等の形状や配置等は適宜変更可能である。
【0054】
なお、上記実施形態においてはワイヤハーネス3のハーネス外装部材としてコルゲートチューブ4を用いた例で説明したが、コルゲートチューブ4以外のハーネス保護チューブや、それ以外のキャタピラ状のハーネス保護部材等を用いることも可能である。これらハーネス外装部材の一端と他端は車両ボディ側及びスライドドア側の首振り部材1,7に保持固定される。ハーネス保護部材を用いずにワイヤハーネス3として複数本の電線をテープ巻き等で結束した状態で配索することも可能であり、この場合は複数本の電線の一端と他端を各首振り部材1,7にテープ巻き等で固定する。
【0055】
また、上記実施形態において、スライドドア2をスライド構造体、車両ボディ5を固定構造体と呼称することも可能であり、例えばスライド構造体は自動車以外の車両や、車両以外の装置等におけるものであってもよい。