(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明において硬化性樹脂とは、熱により硬化することを特徴とする樹脂を指す。本発明において硬化性樹脂は硬化後に無色透明となるものが好ましい。
【0020】
硬化性樹脂としてはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、(イソ)シアネート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ビニル樹脂、アミド樹脂等が挙げられる。これらは本発明においていずれも使用することができる。
【0021】
これらのうち、硬化性樹脂(A)として、硬化性、耐熱性、耐光性等求められる特性を考慮すると、エポキシ樹脂(a−1)単独、又は必要に応じて硬化剤を組み合わせることが好ましい。
【0022】
本発明において用いられるエポキシ樹脂(a−1)とは、エポキシ基を分子中に含有する化合物であればいずれを用いてもよい。以下に本発明において好適に用いられる芳香族型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂について説明する。
【0023】
例えば、芳香族型エポキシ樹脂としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル−フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち本発明においては、耐熱性、耐光性の点からビスフェノールA型エポキシ樹脂、(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂が好ましい。
【0024】
脂肪族型エポキシ樹脂としては、脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂と脂肪族環状構造をもたないエポキシ樹脂が挙げられる。脂肪側環状構造を有するエポキシ樹脂は一分子中に少なくとも一つ以上の環状脂肪族構造を有することを特徴とする。例えばテルペンジフェノールや、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と脂肪族環構造ジエン(ジシクロペンタジエンやノルボルナジエン、ヘキサヒドロキシインデン等)との重縮合物及びこれらの変性物から誘導されるグリシジルエーテル化物、水添ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF)型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等、分子内にシクロヘキシル構造、ジシクロペンタジエン構造をもつ化合物や、トリグリジジルイソシアヌレート構造をもつエポキシ樹脂等が挙げられる。具体的には例えば、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が挙げられる。
【0025】
脂肪族環状構造を持たないエポキシ樹脂等としては、ヘキサンジグリシジルエーテル等の直鎖または分岐アルコールから誘導されるグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0026】
エポキシ樹脂は製法により、その原料となるエピクロルヒドリンに由来する塩素分を含有する物もある。この塩素分は素子や回路基板の長期的な電気信頼性に対して悪影響を及ぼす。本発明において用いられるエポキシ樹脂(a−1)の原料樹脂中の全塩素量は1000ppm以下、好ましくは600ppm以下である。
【0027】
本発明において用いられうる硬化剤は、公知一般のものが使用できる。例えば、カルボキシル基、もしくはカルボン酸無水物基を有するカルボン酸系硬化剤、アミノ基、アミド基、ケトイミン基、イミダゾール基、ジシアンジアミド基等を有するアミン系硬化剤、フェノールノボラック等のフェノール基を有するフェノール系硬化剤等が挙げられる。これらのうちカルボン酸系硬化剤(a−2)が、高い耐熱性と変色性に優れた硬化物を与えるため、本発明では好ましく用いられる。
【0028】
カルボン酸系硬化剤(a−2)は、分子内にカルボキシル基を一つ以上、好ましくは2つ以上、もしくはカルボン酸無水物基を一つ以上有するものであれば、特に限定は無く、公知一般のものが使用できる。本発明ではカルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸、無機ジオールとカルボン酸無水物を反応させたカルボン酸、不飽和環構造を有する酸無水物、カルボン酸無水物とエーテルポリオールとの付加反応により得られるカルボン酸などを用いることができる。
【0029】
カルボン酸無水物としては例えば、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸−1,2,4,5−二無水物、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸としてはアジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサントリカルボン酸等が挙げられる。
【0030】
無機ジオールとカルボン酸無水物を反応させたカルボン酸に用いられる無機ジオールとしてはブタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、シクロヘキサンジオール等の炭化水素ジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の炭化水素多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリカプロラクトンジオール等のポリエステルジオール、更にはシリコーンジオール、トリシクロデカンジメタノール、メチルトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール等の架橋多環ジオール等が挙げられる。カルボン酸無水物は前記カルボン酸無水物も含め限定はない。
中でも無機ジオールが架橋多環ジオール、中でも下記一般式(3)で示されるトリシクロデカン構造、ペンタシクロペンタデカン構造を主骨格とするジオールと前記カルボン酸無水物を反応させたカルボン酸が好ましい。
【0031】
【化3】
(一般式(4)中、R
2は1環当たり1以上であり、また、それぞれ独立して、水素原子、もしくはメチル基を表す。)
【0032】
前記の通り、本発明において用いられる架橋多環ジオールとしてはトリシクロデカンジメタノール、メチルトリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノールなどが挙げられる。これらのうち、入手の簡便さ、また製造後の官能基量とのバランスから、本発明においてはトリシクロデカンジメタノールが特に好ましい。
【0033】
カルボン酸無水物とエーテルポリオールとの付加反応により得られるカルボン酸としては前記カルボン酸無水物とエーテルポリオールとの付加反応により得られる下記一般式(2)で表されるカルボン酸(a−2b)が挙げられる。
【0034】
【化4】
(一般式(2)中、R
3は1個以上であり、それぞれ独立して、R
3は水素原子、炭素数1〜6の炭化水素基、もしくはカルボキシル基を表す。R
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜15の炭化水素基を表す。)
【0035】
カルボン酸(a−2b)を得るためのエーテルポリオールとしては、2,2’−ビス(ジメチロール)−ジプロピルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)−ジエチルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)−ジブチルエーテル、2,2’−ビス(ジメチロール)−ジヘキシルエーテルが挙げられる。
【0036】
不飽和環構造を有する酸無水物としては無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸等が挙げられる。
【0037】
これらのうち、透明性の高い前記カルボン酸無水物類を用いることが好ましい。中でも1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物が挙げられ、特に耐熱性と取り扱いの良さから、両者を混合して使用する事が特に好ましい。
【0038】
また、耐熱性、透明性、さらには寸法安定性に優れた接着材料を得る場合は、前記無機ジオールとカルボン酸無水物を反応させたカルボン酸(a−2a)又は前記カルボン酸無水物とエーテルポリオールとの付加反応により得られるカルボン酸(a−2b)を用いる。本発明においてはこれら2種のカルボン酸を混合して使用してもよい。カルボン酸(a−2a)は、特に耐熱性に優れた接着材料を与える。一方、カルボン酸(a−2b)は、接着材料に耐熱性に加えて柔軟性も併せて要求される場合に好適に用いることができる。
【0039】
エポキシ樹脂(a−1)とカルボン酸系硬化剤(a−2)の好適な配合比は、エポキシ樹脂(a−1)に含有されるエポキシ基の当量とカルボン酸系硬化剤(a−2)のカルボキシル基の当量により決まる。好ましくは、エポキシ基1当量に対しカルボキシル基が0.2〜5当量、より好ましくは0.5〜2当量であることが好ましい。この範囲を超える場合は、硬化反応が充分に進行せず、また過剰のエポキシ基、カルボキシル基の残留が生じるために、硬化物の強靭性や、耐熱性が充分に発揮できない。
【0040】
この他に、熱による反応を促進させるために、熱に感応して反応を促進させる、または硬化温度を調整することを目的に、硬化触媒を添加することも一般的に行われる。これらは上記硬化反応を促進させる効能を有するものであれば、公知一般のものが使用できる。
【0041】
例えば、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、
上記イミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、
ジシアンジアミド等のアミド類、
1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザ化合物及びそれらのテトラフェニルボレート、フェノールノボラック等の塩類、前記多価カルボン酸類、又はホスフィン酸類との塩類、
テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩類、
トリフェニルホスフィン、トリ(トルイル)ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、ヘキサフロロスチビンホスホニウム塩等のホスフィン類やホスホニウム化合物類、
2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、
オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ジルコニウム、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等の有機金属化合物等が挙げられる。
さらに、硬化触媒をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化触媒等が挙げられる。
【0042】
これら硬化触媒のいずれを用いるかは、接着材料に要求される特性によって適宜選択されるべきものである。硬化触媒は、硬化性樹脂(A)中の、全エポキシ樹脂100質量部に対し通常0.001〜15質量部の範囲で使用される。
【0043】
硬化性樹脂(A)には他の成分を含めてもよい。これら他の成分としては酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0044】
硬化性樹脂(A)に用いられうる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤等公知一般のものであれば制限はない。しかし、本発明の特徴を鑑みれば、無色であり、かつ、硬化時の熱や、封止後の回路基板として長期間使用した場合でも着色しにくいものが好ましい。
【0045】
フェノール系酸化防止剤としてはモノフェノール類、ビスフェノール類、及び高分子型フェノール類などが挙げられる。
【0046】
モノフェノール類としては2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール等が挙げられる。
【0047】
ビスフェノール類としては2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等が挙げられる。
【0048】
高分子型フェノール類としては1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等が挙げられる。
【0049】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
【0050】
リン系酸化防止剤としては、ホスファイト類、オキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
【0051】
ホスファイト類としてはトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等が挙げられる。
【0052】
オキサホスファフェナントレンオキサイド類としては9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等が挙げられる。
【0053】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。酸化防止剤の使用量は、本発明のエポキシ樹脂組成物100質量部に対して、通常0.008〜1質量部、好ましくは0.01〜0.5質量部である。また、本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0054】
硬化性樹脂(A)に用いられうる光安定剤としては公知一般のものが使用でき、特に限定は無い。しかし、本発明においては無色であり、かつ、硬化時の熱や、長期間経過した場合でも着色しにくい光安定剤、例えばヒンダードアミン類等が好ましい。
【0055】
ヒンダードアミン類としては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(例えばチヌビン111FDL、チバジャパン製の成分)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}](例えばチヌビン111FDL、チバジャパン製の成分)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート(例えばチヌビン144、チバジャパン製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン292、チバジャパン製の成分)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン292、チバジャパン製の成分)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(例えばチヌビン123、チバジャパン製の成分)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられる。
【0056】
硬化性樹脂(A)に用いられうる紫外線吸収剤としては公知一般のものが使用でき、特に限定は無い。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系等が挙げられ、前記光安定剤と併用することも可能である。
【0057】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、下記一般式(4)で示される構造を有している化合物である。
【0058】
【化5】
(式中、複数存在するR
5は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族の炭化水素基、炭素数1〜4の(ポリ)アルキレンオキシ基、−O−R
6を示す。なお、R
6基は、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子とその他グリシジルエーテル基、カルボキシル基、アクリレート基含有化合物との反応残基を示す。)
【0059】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(例えばチヌビンPS、チバジャパン製)、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(例えばチヌビン99−2、チバジャパン製)、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシアルキルエステル(例えばチヌビン384−2、チバジャパン製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4、6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(例えばチヌビン900、チバジャパン製)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(例えばチヌビン928、チバジャパン製)、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコールの反応生成物(例えばチヌビン1130、チバジャパン製)等のベンゾトリアゾール類が挙げられる。
【0060】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤は、下記一般式(5)で示される構造を有している化合物である。
【0061】
【化6】
(式中、複数存在するR
7は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12の脂肪族又は芳香族の炭化水素基、炭素数1〜4の(ポリ)アルキレンオキシ基、−O−R
8を示す。なお、R
8基は、水素原子、炭素数1〜12の炭化水素基、水素原子とその他グリシジルエーテル基、カルボキシル基、アクリレート基含有化合物との反応残基を示す。)
【0062】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(例えばチヌビン400、チバジャパン製)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−2,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物(例えばチヌビン405、チバジャパン製)、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(例えばチヌビン460、チバジャパン製)、プロパン酸−2−[4−[4,6−ビス([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−3−ヒドロキシフェニル]−イソオクチルエステル(例えばチヌビン479、チバジャパン製)等のヒドロキシフェニルトリアジン類が挙げられる。
【0063】
本発明においては、経時的な着色性の低い紫外線吸収剤を用いることが好ましい。例えば、プロパン酸−2−[4−[4,6−ビス([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−3−ヒドロキシフェニル]−イソオクチルエステル(例えばチヌビン479、チバジャパン製)等、R
7のうち少なくとも一つが、芳香族炭化水素であるものが特に経時的な着色性が低い。
【0064】
本発明の接着材料の耐光性を向上させる場合はヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤を共に用いる。
【0065】
硬化性樹脂(A)には、透明性や硬度などの特性を損なわない範囲でブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などの樹脂成分を必要に応じて添加することもできる。
【0066】
硬化性樹脂(A)には微粒子を添加してもよい。本発明で用いられうる微粒子としては例えばガラス、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化アンチモン、酸化セレン、酸化イットリウムなどが挙げられる。これらは分散溶媒を含有しない微粉末や溶媒に分散させたコロイド溶液として入手できる。これらは1種または2種以上を混合して用いることが出来る。分散溶媒はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルジメチルアセトアミドなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの非極性溶媒など、硬化性樹脂(A)の各成分が溶解するものを選定して用いればよい。
【0067】
硬化性樹脂(A)にはシランカップリング剤、離型剤、レベリング剤、界面活性剤、染料、顔料、無機あるいは有機の光拡散フィラー等も添加することができる。
【0068】
硬化性樹脂(A)には公知一般の金属塩を添加することもできる。例えばカルボン酸金属塩(2−エチルヘキサン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸などの亜鉛塩、スズ塩、ジルコニウム塩)やリン酸エステル金属(オクチルリン酸、ステアリルリン酸等の亜鉛塩)、アルコキシ金属塩(トリブチルアルミニウム、テトラプロピルジルコニウム等)、アセチルアセトン塩(アセチルアセトンジルコニウムキレート、アセチルアセトンチタンキレート等)等の金属化合物等が挙げられる。これらは単独或いは2種以上を用いてもよい。金属塩の添加により、本発明の接着材料の耐熱性、耐光性を向上させることができる。
【0069】
本発明において用いられるガラス繊維(B)とは、ガラスを融解、牽引し繊維状にしたものからなる物を指し、硬化性樹脂(A)と複合化させることによって得られる本発明の接着材料に高い強靭性や寸法安定性を付与することができる。
【0070】
ガラス繊維は一般的には、その繊維の集合形態により各種分類がなされている。ガラス繊維の選択は本発明の接着材料の形状、強度や厚さ等の特性に応じて、適宜選択されるべきものである。例えば、その分類としてガラス不織布やガラスフェルト、チョップドストランドマット、ロービング、チョップドストランド、ミルドファイバー、ヤーン、ロービングクロス、ガラスクロス、ガラススリーブ、ガラスコード等の形態のいずれも使用することができる。こられのうち、高い強靭性を求められる場合は、ガラス繊維を板状、もしくはシート状の形態にしたものが好適である。
【0071】
板状、シート状にするためには、織る、編む、または不織布化等公知一般の方法が使用できる。特に、紡糸したガラス繊維を製織により布状としたもの、所謂ガラスクロス(b)が、強靭性、寸法安定性の観点から本発明において最も好適に使用できる。
【0072】
本発明おいて用いられるガラス繊維(B)を構成するガラスの種類としては、特に限定はなく、公知一般のガラスを用いることが出来る。例えば、所謂E−ガラス、S−ガラス、T−ガラス、D−ガラス、UN−ガラス、NE−ガラス、Q−ガラス等が挙げられる。
【0073】
これらのうち、E−ガラスは紡糸の際にホローが入りにくく、接着材料として用いる場合は、内部素子、回路基板の信頼性を維持するためには好適である。さらに入手の容易性、アルカリ金属酸化物が少ない無アルカリガラスとして、本発明の用途にはE−ガラスが最も適している。また樹脂との密着性や表面張力を制御するためのガラス繊維(B)はシランカップリング剤により処理してあるものでもよい。
【0074】
本発明に好適なガラス繊維(B)の径は、透明性や平滑性などを考慮すると小さいほうが良く10μm以下が好ましい。
【0075】
さらに、接着後・封止後の基板が高度な平滑性を求められたり、基板がビアホール等の後工程を必要とされたりする場合、開繊加工をしたガラスクロス(b−1)を用いることがより好ましい。開繊加工を行ったガラスクロスから製造される接着材料は、織物組織に由来する凹凸が少ないため、精密な接着により適している。
【0076】
本発明において硬化性樹脂(A)とガラス繊維(B)の光学的屈折率は、樹脂硬化後の段階においてほぼ同一であることが通常である。光学的屈折率の差異があったとしてもその差異は0.005以下、より好ましくは0.003以下である。硬化性樹脂(A)とガラス繊維(B)の光学的屈折率をほぼ同じ値とすることで、得られる接着材料の透明性が高まる。この範囲を超える場合には、接着材料の透明性が失われる。
【0077】
硬化性樹脂(A)の構成はガラス繊維(B)の屈折率に合わせて適宜調製する。例えば硬化性樹脂(A)中の硬化性樹脂が脂肪族構造のみを有する硬化性樹脂の場合は、硬化性樹脂(A)の屈折率は低くなる。一方、硬化性樹脂(A)の屈折率を高める一つの手段としては脂肪族構造と芳香族構造を有する硬化性樹脂を用いる。
【0078】
本発明においてE−ガラスを用いる場合、硬化性樹脂(A)の組み合わせの一例としては、エポキシ樹脂(a−1)として芳香族型エポキシ樹脂と硬化剤(a−2)としてカルボン酸無水物の組み合わせが挙げられる。
【0079】
本発明の接着材料の使用の一態様は、硬化性樹脂(A)をガラスクロス(b)に含浸させて半硬化状態としたプリプレグである。このプリプレグは、基材を接着・接合・密封・封止・成形するために使用する。
【0080】
プリプレグの作成は、一般的には、液状の硬化性樹脂であればそのまま、高粘度、または固形の硬化性樹脂の場合は溶剤等に希釈し溶液としたものを用意し、その中にガラスクロス(b)を浸漬し、溶剤を揮発乾燥させることで得られる。
【0081】
プリプレグは、少なくとも、硬化反応が完結していない状態、即ち完全未硬化、もしくは半硬化の状態として使用する。この際、好ましい反応率(即ち、プリプレグの反応量/硬化反応が完了した場合の反応量で示される値)が、0〜0.95、好ましくは0.1〜0.5であることが好ましい。これよりも反応率が低い場合には、プリプレグの取り扱いが難しく、高い場合には、積層させる工程における密着性に課題が生じる。
【0082】
本発明のプリプレグの製造は公知一般の方法が適用でき、特に限定は無い。例えば、溶剤に溶解させた硬化性樹脂(A)をガラス繊維(B)に含浸させ、その後溶剤を揮発させる方法や、熱溶融させた硬化性樹脂(A)をガラス繊維(B)に含浸させ、その後冷却する方法、平面状に成型した液状の硬化性樹脂(A)に、ガラス繊維(B)を重ねロール等により圧力等をかける方法、型中にガラス繊維を置き、そこに加熱した樹脂をトランスファー成型機等を用いて流し込む方法等が挙げられる。
【0083】
プリプレグの使用の一態様は、封止する素子、回路基板等の上にラミネーターや熱板プレスを用いてプリプレグを貼合・圧着し、さらに加熱により硬化性樹脂(A)の硬化反応を完結させるものである。加熱により半硬化のプリプレグは柔軟となって接着対象と密着し、さらに熱硬化することで、強靱な硬化接着層となる。この際、接着材料にはガラス繊維が入っているために、比較的強い力で圧着しても接着層の厚さを安定的に維持することが可能となる。
【0084】
本発明の接着材料により接着できる被接着体は、石英ガラス、無アルカリガラス等のガラス基材、シリコンウエハー等の半導体基材、アルミニウム、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、銅、真鍮、錫、金、銀、白金等の金属基材、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、ナイロン等のポリアミド系樹脂基材、ポリアラミド系樹脂基材、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂素材等を挙げることができる。
【0085】
本発明の接着材料は多くの無機材料、有機材料の双方に強力な接着性を発揮するために、透明性を求められる異種材料の接着材料として有用である。本発明の接着材料は封止材料として用いることもできる。本発明の接着材料を封止材料として用いる場合、ガス透過性等の特性が高いこともあり、封止の対象に無機・有機複合基板等が含まれる場合に好適である。
【0086】
本発明の接着材料(プリプレグ)は、接着したい部分の形状に合うように、切り抜いて使用することができる。また、帯状のテープにして接着したい部分に合わせて、被接着体に仮止めしても使用される。この際、ドライヤー等で軽く温めてプリプレグを柔軟にして仮止め等をすることもできる。また接着材料を複数枚重ねて接着することで、接着層に求められる厚さを簡便に調整することができる。
【0087】
このような点から、本発明は基板上に作成した素子を、空間を保持したままに素子の周囲を接着するための缶封止材料として特に有用である。
本発明のプリプレグは熱硬化性樹脂がガラス繊維に含浸された形態であるため接着時に樹脂分の流動が抑えられ、はみだしが少ない。また、接着部が透明なため、例えば表示素子パネル等に用いる場合、接着部を隠す必要がなく、意匠性の自由度が格段に向上する。
【0088】
また、封止する素子、回路基板等の上にラミネーターや熱板プレスを用いて直接プリプレグを貼合し、さらに加熱により硬化性樹脂(A)の硬化反応を完結させる面封止材料としても有用である。
本発明の接着材料は透明性が高いため、素子の機能を妨げない他、半硬化のプリプレグの場合、加熱により柔らかくなって封止対象と密着し、素子の狭小部へまわりこむことでき、精緻な密封が可能となる。
【0089】
本発明のプリプレグの非接着面(素子または回路基板には接しない面)には硬化後のプリプレグを剥離させることができるシート等の剥離層を積層してもよい。剥離層としては、剥離加工を行った紙、フイルム、金属板、密着性に乏しいシリコーンやフッ素系樹脂等を用いることができる。
硬化後の接着材料は、透明性、強靱性、耐久性を有する皮膜となるために、この態様であっても十分な素子の保護層として機能する。
【0090】
さらに本発明の接着材料の使用の一態様として、素子上に接着材料を密着させる際、その上にガラスフイルム等の透明無機材料を合わせて密着、さらに硬化反応を起こさせることで、ガラスとの複合封止層を形成することも挙げられる。この態様では、回路基板の表面をガラス等で被覆することとなるので、回路基板の硬度、表面平滑性、耐傷性、吸水性、ガス透過性等が大幅に向上する。
【実施例】
【0091】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。合成例1においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という)により原料無機アルコール類の消失を確認した時点で反応終了とした。
【0092】
合成例1−1:カルボン酸系硬化剤(a−2a)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルエチルケトン(以下、MEK)を204g、トリシクロデカンジメタノールを294g、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH;以下、H1)を423g、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(三菱ガス化学製 H−TMAn;以下、H−TMAn)を99g加え、50℃で2時間反応後、70℃で4時間加熱撹拌を行なった。得られた溶液にMEKをさらに145g加えることでカルボン酸系硬化剤(a−2)のMEK溶液1166gが得られた。得られた溶液は無色であり、濃度は70質量%であった。
【0093】
合成例1−2:カルボン酸系硬化剤(a−2b)の合成
撹拌機、還流冷却管、撹拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらメチルエチルケトン(以下、MEK)を200g、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを200g、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH;以下、H1)を1000g加え、50℃で2時間反応後、70℃で4時間加熱撹拌を行なった。得られた溶液にMEKをさらに51g加えることでカルボン酸系硬化剤(a−2b)のMEK溶液1711gが得られた。得られた溶液は無色であり、濃度は70質量%であった。
【0094】
合成例1−3:熱硬化性樹脂(A)の調製1
合成例1−1で得たカルボン酸系硬化剤(a−2a)とH1の混合物を40g、脂肪族型エポキシ樹脂EHPE−3150(ダイセル化学製、エポキシ当量181)を10g、芳香族型エポキシ樹脂(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂(エポキシ当量206、全塩素量550ppm)を27g、同じくNC−3000(日本化薬製:ビフェニル構造多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量275、全塩素量550ppm)を2g、同じくRE−310S(日本化薬製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185)を21g、その他の成分としてオクタン酸亜鉛を0.3g、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)0.2g、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートを0.2g、希釈溶剤であるメチルエチルケトンを43g混合して70℃に加温し、固形分が70質量%である熱硬化性樹脂(A)希釈組成物を得た。
【0095】
合成例1−4:熱硬化性樹脂(A)の調製2
合成例1−2で得たカルボン酸系硬化剤(a−2b)とH1の混合物を37g、脂肪族型エポキシ樹脂EHPE−3150(ダイセル化学製、エポキシ当量181)を5g、芳香族型エポキシ樹脂として(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂(エポキシ当量206、全塩素量550ppm)を10g、同じくNC−3000(日本化薬製:ビフェニル構造多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量275、全塩素量550ppm)を2g、同じくRE−310S(日本化薬製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185、全塩素量500ppm)を10g、その他の成分としてオクタン酸亜鉛を0.3g、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)を0.2g、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートを0.2g、希釈溶剤であるメチルエチルケトンを43g混合して70℃に加温し、固形分が70質量%である熱硬化性樹脂(A)希釈組成物を得た。
【0096】
合成例1−5:熱硬化性樹脂(A)の調製3
シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2−無水物(三菱ガス化学製 H−TMAn;以下、H−TMAn)を17g、脂肪族型エポキシ樹脂EHPE−3150(ダイセル化学製、エポキシ当量181)を15g、芳香族型エポキシ樹脂として(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−エチル)α,α−ジメチルベンジル)フェノール)型エポキシ樹脂(エポキシ当量206、全塩素量550ppm)を15g、同じくNC−3000(日本化薬製:ビフェニル構造多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量275、全塩素量550ppm)を10g、同じくRE−310S(日本化薬製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185、全塩素量500ppm)を10g、その他の成分としてオクタン酸亜鉛を0.3g、添加剤であるアデカスタブ260(ADEKA製:リン系酸化防止剤)を0.2g、ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートを0.2g、希釈溶剤であるメチルエチルケトンを43g混合して70℃に加温し、固形分が70質量%である熱硬化性樹脂(A)希釈組成物を得た。
【0097】
合成例1−6:熱硬化性樹脂(A)の調製4
脂肪族環状構造を有するエポキシ樹脂として、SEJ−01R(3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、日本化薬製、エポキシ当量135)を67g、芳香族型エポキシ化合物としてjER828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185、全塩素量1800ppm)を4g、熱カチオン発生剤としてヘキサフロロスチビンホスホニウム塩(三新化学、サンエイドSI−100)を2g、溶剤としてメチルエチルケトンを30g混合して70℃に加温し、固形分が70質量%である熱硬化性樹脂(A)希釈液を得た。
【0098】
実施例1:プリプレグの調製
得られた熱硬化性樹脂(A)希釈液を、合成例1−3、合成例1−4、合成例1−5の場合はE−ガラス、合成例1−6の場合はS−ガラスからなるガラスクロス(いずれもIPCスペック106相当に開繊加工を施したもの)に含浸しその後溶剤を50℃のオーブンで10分間乾燥し厚さ50μmのプリプレグを得た。これらをそれぞれ実施例1−1、実施例1−2、実施例1−3、実施例1−4とした。
DSC(示差熱走査熱量計)による、反応熱量からプリプレグの反応率を求めた結果を下記の表に示す。
【0099】
表1 プリプレグの反応率
実施例 熱硬化性樹脂(A) 反応率
実施例1−1 合成例1−3 0.24
実施例1−2 合成例1−4 0.19
実施例1−3 合成例1−5 0.30
実施例1−4 合成例1−6 0.11
【0100】
比較例1−1:液状接着剤の調製
3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートを20g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物を30g、jER828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185、全塩素量1800ppm)を20g、硬化剤としてメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH;以下、H1)を120g、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を2g、これらをよく混合し、液状接着剤とした。
【0101】
比較例1−2:シート状接着剤の調製
エピコート1256(三菱化学製:フェノキシ型エポキシ樹脂、エポキシ当量8,000、全塩素量2000ppm)を30g、jER1001(三菱化学製:ビスフェノール型エポキシ樹脂、エポキシ当量480、全塩素量1600ppm)を35g、jER828(三菱化学製:液状ビスフェノールAエポキシ樹脂、エポキシ当量185、全塩素量1800ppm)を20g、硬化剤としてメチルヘキサヒドロフタル酸無水物(新日本理化(株)製、リカシッドMH;以下、H1)を120g、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−72gをよく混合し、シート状接着剤とした。
【0102】
実施例2:接着材料の光学的屈折率の測定
光学的屈折率は、実施例1のプリプレグを単独で硬化させたもので評価を行った。実施例1のプリプレグの両面を剥離層で挟んだ上で熱プレスにより硬化させたものを用いた。硬化条件はいずれの方法においても150℃・5時間とした。
硬化した本発明のプリプレグの屈折率をプリズムカップラー式屈折率計(633nm)にて用いて測定した結果を示す。
【0103】
表2 屈折率の測定結果
実施例 プリプレグ 硬化物の屈折率 ガラスクロスの屈折率
実施例2−1 実施例1−1 1.561 1.561
実施例2−2 実施例1−2 1.560 1.561
実施例2−3 実施例1−3 1.562 1.561
実施例2−4 実施例1−4 1.524 1.524
【0104】
実施例3、比較例2:貼り合わせガラス基板上における接着部の寸法安定性、封止基板の強靭性、透明性の評価 (缶封止を模した試験)
強靱性の評価は、素子を作成していない無アルカリガラス基板で実施した。厚さ0.5mm、50×50mmの正方形のガラスの周囲を幅約5mmの実施例1のプリプレグと比較例の接着剤で囲み、中央部に空間(素子のための空間を模したもの)を作成した形状を作った。接着剤の塗工が終了したのち、蓋部となる基板と同サイズのガラスを基板の上に乗せて手で軽く貼り合わせ、さらに熱プレスにより加圧しながら加熱、硬化させたものを試料とした。
硬化条件はいずれの方法において150℃・5時間とした。
【0105】
比較例1−1の液状の接着剤は、粘着テープで中央部に型取りのマスキングを行い、周辺部のみ接着剤を塗工し、その後型取りの粘着テープを除く方法で接着部のみに接着剤を塗工した。接着剤塗工後、同様の方法により蓋材となるガラス基板を載せ、手で密着させたのちホットプレートで150℃・5時間の加熱硬化を行った。
【0106】
寸法安定性:接着部のはみだしの有無を目視で確認した。
接着した基板材料を両手で持って撓らせる動きを繰り返し、接着性を確認した。
透明性は目視で行った。
【0107】
比較例2−3:CS−3305プリプレグ(回路基板用プリプレグ、利昌工業製、厚さ約50μm)
比較例2−4:ハイミラン1705(エチレン−アクリル酸系アイオノマー、三井デュポンポリケミカル、厚さ約50μm)
【0108】
表3 接着材料の特性比較
実施例 接着材料 はみだし 接着性 透明性
実施例3−1 実施例1−1 なし 剥離なし 無色透明
実施例3−2 実施例1−2 なし 剥離なし 無色透明
実施例3−3 実施例1−3 なし 僅かに亀裂 無色透明
実施例3−4 実施例1−4 なし 僅かに亀裂 無色透明
比較例2−1 比較例1−1 大きくあり 剥離あり 無色透明
比較例2−2 比較例1−2 あり 剥離なし 無色透明
比較例2−3 CS−3305 なし 剥離なし 白濁
比較例2−4 H1705 なし 剥離あり 僅白濁
【0109】
以上の結果から、本発明の接着材料は、いずれの特性も良好であることが示された。
一方、液状、またはガラスクロスを使用していない比較例1−2のシート状の接着剤は、接着剤が素子を封入するべき空間部分へのはみだしが発生していた。これでは、保護するべき素子が硬化性樹脂と接触してしまい、機能しない可能性がある。このほかに、光学的な配慮をしていない硬化性樹脂とガラスクロスからなるプリプレグを用いた場合では、透明性が不十分であった。また、アイオノマーからなる接着を用いた場合は、十分な接着性を得ることができなかった。
【0110】
実施例4および比較例3 水蒸気透過性の評価
本発明の接着材料の水蒸気透過性を評価するために実施例2同様、プリプレグ単独で硬化させたものの水蒸気透過性を測定した。水蒸気透過性の測定は、JIS K7129:2008 A法に準拠して行った。測定温度は60℃で実施した。
【0111】
表4 水蒸気透過性の測定結果
実施例 接着材料 硬化物の水蒸気透過性(g/m
2・日)
実施例4−1 実施例1−1 25
実施例4−2 実施例1−2 35
実施例4−3 実施例1−3 50
実施例4−4 実施例1−4 20
比較例3−1 比較例1−1 硬化物が脆弱、測定不可
比較例3−2 H1705 120
【0112】
本発明の接着材料は、透湿性が低いといわれるエチレン−アクリル酸系アイオノマーシートよりも低い透湿性を有している。
【0113】
実施例5、および比較例4:フレキシブル基板上における封止基板の寸法安定性、柔軟性の評価(面封止を模した試験)
寸法安定性、柔軟性の評価は素子を作成していないポリイミド単独基板(エスパネックスM、新日鉄化学製、ポリイミド基材フレキシブル銅貼り積層板)で実施した。ポリイミド単独基板の銅箔面と本発明と比較例のプリプレグを重ねあわせ、その両面を剥離層で挟んだ上、熱プレスにより加熱、硬化させたものを試料とした。
透明性は、プリプレグを単独で硬化させたもので評価を行った。上記同様、剥離層でプリプレグの両面を挟んだ上で熱プレスにより硬化させたものを用いた。硬化条件はいずれの方法においても150℃・5時間とした。
得られた封止基板の寸法安定性(基板反り)は目視で、柔軟性は基板を手で曲げて評価した。
【0114】
比較例における封止材料
比較例4−1:CS−3305プリプレグ(回路基板用プリプレグ、利昌工業製)
比較例4−2:CISV−2535カバーレイ(ポリイミド基材、熱硬化性カバーレイ、ニッカン工業製)
比較例4−3:CTSV−2535カバーレイ(ポリエステル基材、熱硬化性カバーレイ、ニッカン工業製)
【0115】
表5 封止材料の特性比較
実施例 プリプレグ 寸法安定性 柔軟性 透明性
実施例5−1 実施例1−1 反りなし 良好 無色透明
実施例5−2 実施例1−2 反りなし 特に良好 無色透明
実施例5−3 実施例1−3 反りなし やや難 無色透明
実施例5−4 実施例1−4 反りなし やや難 無色透明
比較例4−1 CS−3305 反りなし 良好 白濁
比較例4−2 CISV−2535 反りなし 良好 褐色
比較例4−3 CTSV−2535 反り大きい 良好 無色透明
以上の結果から、本発明の接着材料を封止材料として用いた場合でも、いずれの特性も良好であることがわかる。
【0116】
実施例6 及び比較例5:接着性(信頼性)の評価
面封止を模した試験として、回路を作成していない10cm角、厚さ0.5mmのポリカーボネート基板の両側に、10cm角に裁断した実施例1で作成したプリプレグ、または比較例1の接着層をのせ、さらに表面の被覆材料として10cm角の厚さ100μmのガラスフイルムを両面に積層し、真空プレスを用いて真空下、1MPaの加圧を行いながら150℃・3時間の加圧を行い接着させた。
比較例1−1は液状接着剤であるため、ポリカーボネート板前面に厚さおおよそ10μmになるようアプリケータを用いて塗工した。
この基板はポリカーボネートをコア層として、両表面を薄膜ガラスで構成した封止基板を模したものである。
作成した基板を、下記の信頼性試験を行い異常が観察されるまでの時間、または規定時間終了後の状態を目視で確認した。
耐熱試験:110℃の恒温槽に基板を入れる。規定時間1000時間
耐湿熱試験:85℃85%RHの恒温恒湿槽に入れる。規定時間1000時間
耐冷熱試験:−55℃ 3時間 ←→ 85℃ 3時間、50サイクル
【0117】
表6 面封止基板を模した無機・有機基板の接着性評価
実施例 接着材料 耐熱性 耐湿熱 冷熱
実施例6−1 実施例1−1 変化なし 変化なし 50サイクル以上
実施例6−2 実施例1−2 変化なし 変化なし 50サイクル以上
実施例6−3 実施例1−3 変化なし 変化なし 30サイクル以下
実施例6−4 実施例1−4 200hr以下 変化なし 20サイクル以下
比較例5−1 比較例1−1 100hr以下 100hr以下 5サイクル以下
比較例5−2 比較例1−2 100hr以下 100hr以下 5サイクル以下
比較例5−3 H1705 24hr以下 24hr以下 5サイクル以下
【0118】
以上の結果から、本発明の接着材料は、ガラス等の無機基板とポリカーボネート等の有機基板に対して、高い接着性と信頼性を有し、透明基板の封止材料に好適であることがわる。
【0119】
実施例7および比較例6:絶縁信頼性の評価
ポリイミド基板上に作成したラインアンドスペース100μmの櫛形銅配線が作成された回路基板上に、実施例1のプリプレグ(構成するエポキシ樹脂の全塩素分はいずれも550ppm以下)、または比較例1−2のシート状接着剤(構成するエポキシ樹脂の全塩素分は1000ppm以上)を積層し、さらに表面の剥離材料として厚さ100μmのシリコーン剥離加工を施したポリエチレンテレフタレートフイルムを積層し、真空プレスを用いて真空下、1MPaの加圧を行いながら150℃・3時間の加圧を行い接着させた。
接着後、ポリエチレンテレフタレート層を剥離し、面封止を行った絶縁信頼性評価基板を作成した。得られた基板にリード線を接続し、100Vの直流電圧を印加しながら、85℃85%RHの環境下にてその抵抗値の推移を観測した。
抵抗値が10MΩ以下となるまでの時間を観察し、その絶縁信頼性を評価した。
【0120】
表7 絶縁信頼性の評価
実施例 プリプレグ 絶縁信頼性(時間)
実施例7−1 実施例1−1 1000時間以上
実施例7−2 実施例1−2 1000時間以上
実施例7−3 実施例1−4 250時間以下
比較例6−1 実施例1−2 100時間以下
【0121】
本発明で示される接着材料を面封止材料とすることで長期的にも高い絶縁信頼性を有する面封止材料となることが示された。全塩素量の少ない成分で構成された接着材料、E−ガラスを用いて構成された接着材料は、特に優れた絶縁信頼性を発揮する。
【0122】
実施例8:缶封止薄膜トランジスタ素子(有機半導体素子)の作成及びその評価
300nmのSiO
2熱酸化膜付きnドープシリコンウェハー上に、フォトリソグラフィーによりソースドレインパターン(金属極)を形成した。そのパターン上にポリ(ビス(4−フェニル)2,4,6−トリメチルフェニルアミン(PTAA アルドリッチ製)0.4%クロロホルム溶液を滴下しスピンコート(3000rpm・30秒間)製膜を行い、有機半導体薄膜を形成し、ボトムコンタクト型である有機半導体素子を得た。
【0123】
得られた有機半導体素子基板上に、実施例1−1で作成したプリプレグで素子部を囲むように切り抜き基板の上に載せた。さらにその上からガラスの蓋材をのせ、真空プレスでプレス槽内を減圧、窒素ガスパージを数回繰り返し、不活性ガス置換を行った。その後、加圧しながら130℃・3時間、加熱硬化させ封止素子を得た。
【0124】
なお、本実施例における電界効果トランジスタにおいては、熱酸化膜付きnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁層の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板及びゲート電極の機能を兼ね備えている。得られた電界効果トランジスタをプローバー内に設置し半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200)を用いて半導体特性を測定した。半導体特性はゲート電圧を10Vから−100Vまで20Vステップで走査し、またドレイン電圧を0Vから−60Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測された。またドレイン電流を−60Vとし、ゲート電圧を20Vから−50Vまで走査し、ゲート電圧−ドレイン電流を測定した。得られた電圧電流曲線より、本素子はp型半導体を示し、キャリア移動度は1.4×10
−3cm
2/Vsであり、オンオフ比は105であった。以上の結果から本発明のプリプレグを用いた缶封止素子が正常に動作することが分かった。
【0125】
実施例9:缶封止有機太陽電池素子(光電変換素子)の作成及びその評価
ITOによる導電加工を施したガラス基板上に実施例3と同様の方法によってポリ−3−ヘキシルチオフェン(プレックスコアOS P3HT、アルドリッチシグマ製)の薄膜を作製した。次いでこの基板を真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が2×10
−3Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、C
60フラーレンを30nmの厚さに、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを10nm蒸着した。さらにシャドウマスクを介してアルミニウムを100nmの厚さに蒸着して陰極を形成し、直径2mmの丸型有機太陽電池素子基板を作製した。
【0126】
得られた有機太陽電池素子基板上に、実施例1−1で作成したプリプレグで素子部を囲むように切り抜き基板の上に載せた。さらにその上からガラスの蓋材をのせ、真空プレスでプレス槽内を減圧、窒素ガスパージを数回繰り返し、不活性ガス置換を行った。その後、加圧しながら130℃・3時間、加熱硬化させ封止素子を得た。
【0127】
AM1.5のソーラーシミュレーターを用いて100mW/cm
2として光電変換効率を測定した。開放電圧は0.43V、短絡電流は0.6mA/cm
2を示し、本発明のプリプレグを用いて封止した光電変換素子が正常に動作することが分かった。
【0128】
実施例10:面封止薄膜トランジスタ素子(有機半導体素子)の作成及びその評価
実施例8と同様に得たボトムコンタクト型である有機半導体素子基板上に、実施例1−1で作成したプリプレグを素子評価用の電極部分を除いて上に載せ、さらに厚さ100μmの薄膜ガラスを乗せた。この素子を真空プレスにて真空下、加圧しながら130℃・3時間、加熱硬化させ封止素子を得た。
【0129】
なお、本実施例における電界効果トランジスタにおいては、熱酸化膜付きnドープシリコンウェハーにおける熱酸化膜が絶縁層の機能を有し、nドープシリコンウェハーが基板及びゲート電極の機能を兼ね備えている。得られた電界効果トランジスタをプローバー内に設置し半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200)を用いて半導体特性を測定した。半導体特性はゲート電圧を10Vから−100Vまで20Vステップで走査し、またドレイン電圧を0Vから−60Vまで走査し、ドレイン電流−ドレイン電圧を測定した。その結果、電流飽和が観測された。またドレイン電流を−60Vとし、ゲート電圧を20Vから−50Vまで走査し、ゲート電圧−ドレイン電流を測定した。得られた電圧電流曲線より、本素子はp型半導体を示し、キャリア移動度は1.3×10
−3cm
2/Vsであり、オンオフ比は100であった。以上の結果から本発明の封止材料を用いた素子が正常に動作することが分かった。
【0130】
実施例11: 面封止有機太陽電池素子(光電変換素子)の作成及びその評価
ITOによる導電加工を施したポリエチレンナフタレート(PEN)シートに実施例3と同様の方法によってポリ−3−ヘキシルチオフェン(プレックスコアOS P3HT、アルドリッチシグマ製)の薄膜を作製した。次いでこの基板を真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が2×10
−3Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱蒸着法によって、C
60フラーレンを30nmの厚さに、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンを10nm蒸着した。さらにシャドウマスクを介してアルミニウムを100nmの厚さに蒸着して陰極を形成し、直径2mmの丸型有機太陽電池素子を作製した。
【0131】
このようにして得られた有機太陽電池素子基板上に、実施例1−1で作成したプリプレグを素子評価用の電極部分を除いて上に載せた。さらに剥離層として、厚さ100μmのテトラフロロエチレン−エチレン共重合体からなるフイルムを乗せた。この素子を真空プレスにて真空下、加圧しながら130℃・3時間、加熱硬化させ、封止素子を得た。
【0132】
AM1.5のソーラーシミュレーターを用いて100mW/cm
2として光電変換効率を測定した。開放電圧は0.40V、短絡電流は0.5mA/cm
2を示し、本発明の封止材料を用いて封止した光電変換素子が正常に動作することが分かった。