【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例によって、本発明を具体的に説明する。なお、実施例、比較例における評価方法は下記の通りである。
【0055】
1.消臭性
社団法人繊維評価技術協議会の消臭加工繊維製品認定基準(JED301)の方法に従い、アンモニア消臭率と酢酸消臭率は検知管法により、イソ吉草酸消臭率とノネナール消臭率はガスクロマトグラフィー法により、試料として、得られた編物と、JEC326「SEKマーク繊維製品の洗濯マニュアル」に従い洗剤としてJAFET標準配合洗剤を用い10回洗濯をおこなった編物とを用いて、アンモニア消臭率、酢酸消臭率、イソ吉草酸消臭率、ノネナール消臭率を求めた。アンモニア消臭率は70%以上、酢酸消臭率は80%以上、イソ吉草酸消臭率は85%以上、ノネナール消臭率は75%以上を合格とした。
【0056】
2.ピリング性
得られた編物について、JIS L 1076:2006 A法に従い評価した。3級以上を合格とした。
【0057】
3.柔軟性
得られた編物の風合い(柔軟性)について、5人のパネラーによる官能評価を行った。各々の試料で風合いが良好なもの(柔らかい)を10点満点として1〜10点の10段階で評価し5人の平均値を算出し、下記基準により評価し、○以上を合格とした。
◎:7点以上
○:5点以上7点未満
×:5点未満
【0058】
(実施例1)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で下記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
<処方1>
ポリエチレングリコールジクロルヒドリン :30g/l
水酸化ナトリウム :6.5g/l
無水芒硝 :140g/l
【0059】
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m
2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で下記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
<処方2>
Kayacion Yellow E−SNA(日本化薬社製:反応染料)
:0.045%o.w.f
Kayacion Brown E−NR(日本化薬社製:反応染料)
:0.235%o.w.f
Kayacion Blue A−B(日本化薬社製:反応染料)
:0.092%o.w.f
無水芒硝:40g/l
炭酸ナトリウム:20g/l
【0060】
次に、下記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
<処方3>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
KM2002T(信越化学工業社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:60g/l
ユニレジンNF−174J(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂)
:30g/l
ユニカカタリストJS−30(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:10g/l
【0061】
次いで、下記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
<処方4>
チューエルカットCF−2(センカ社製:アミン化合物 カチオン性):20g/l
【0062】
(実施例2)
実施例1と全く同一方法で得られたリヨセル繊維紡績糸と、84デシテックス72フィラメントのポリエステル加工糸を用い、28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて、リヨセル繊維紡績糸の混用率70質量%、ポリエステル加工糸の混用率30質量%のジャガード組織の目付150g/m
2のジャガード柄編物を得た。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、液流染色機サーキュラー(日阪製作所社製)にて浴比1:20で下記処方5により130℃×30分の染色を行い、まずポリエステル加工糸をブルーに染色した。次に下記処方6により80℃×60分の染色を行い、架橋処理されたリヨセル繊維をネービーに染色しブルー/ネービーに配色された編物を得た。
<処方5>
Kayalon poly Blue EBL−E(日本化薬社製:分散染料)
:0.2%o.w.f
ニッカサンソルトSN−250E(日華化学社製:分散剤):0.5g/l
48%酢酸:0.1cc/l
<処方6>
Kayacion Navy E−NF(日本化薬社製:反応染料)
:3.5%o.w.f
無水芒硝:80g/l
炭酸ナトリウム:20g/l
【0063】
次に、下記処方7の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
<処方7>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:50g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):50g/l
KT7014(高松油脂社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:50g/l
リケンレジンMS−150(三木理研工業社製:グリオキザール樹脂):25g/l
リケンフィクサーMX−27N(三木理研工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:8g/l
【0064】
次いで、下記処方8の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
<処方8>
パンフィックスHF−2(一方社油脂工業社製:アミン化合物 カチオン性)
:20g/l
【0065】
(実施例3)
実施例1と全く同一方法で得られたリヨセル繊維紡績糸と、84デシテックス36フィラメントのポリエステル加工糸と、22デシテックスモノフィラメントのポリウレタン弾性糸とを用い、28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて、リヨセル繊維紡績糸の混用率70質量%、ポリエステル加工糸の混用率25質量%、ポリウレタン弾性糸の混用率5質量%の天竺組織の目付130g/m
2の編物を得た。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、液流染色機サーキュラー(日阪製作所社製)にて浴比1:20で前記処方5により130℃×30分の染色を行い、まずポリエステル加工糸をブルーに染色した。この際にポリウレタン弾性糸に汚染した分散染料は、下記処方9により80℃×30分で洗浄を行った。次に前記処方6により80℃×60分の染色を行い、架橋処理されたリヨセル繊維をネービーに染色しブルー/ネービーに配色された編物を得た。
<処方9>
ハイドロサルファイト:2g/l
水酸化ナトリウム:1g/l
サンモールFL(日華化学社製:非イオン界面活性剤):1g/l
【0066】
次に、前記処方7の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
【0067】
次いで、前記処方8の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
【0068】
(実施例4)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
【0069】
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m
2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
【0070】
次に、前記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い、編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
【0071】
(実施例5)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
【0072】
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m
2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
【0073】
次に、下記処方10の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。なお、シリコーン樹脂は含有させなかった。
<処方10>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
ライトエポックAX−45(北広ケミカル社製:アクリル樹脂エマルジョン アニオン性):60g/l
ユニレジンNF−174J(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂)
:30g/l
ユニカカタリストJS−30(ユニオン化学工業社製:グリオキザール樹脂用触媒)
:10g/l
【0074】
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工した編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
【0075】
(比較例1)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行い、リヨセル繊維を得た。なお、綿の状態での架橋処理はおこなわなかった。
【0076】
得られたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m
2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
【0077】
次に、前記処方3の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。
【0078】
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
【0079】
(比較例2)
リヨセル繊維(レンチング社製、単糸繊度1.5デシテックス、繊維長38mm)を用い、ステープルファイバーの状態で常法に従い精練を行った後、オーバーマイヤー染色機(日阪製作所社製)にて浴比1:10で前記処方1により90℃×45分の架橋処理を行い、綿の状態で架橋処理されたリヨセル繊維を得た。
【0080】
架橋処理されたリヨセル繊維を原綿として、混打綿、梳綿、練条、粗紡、精紡をおこない、50番手のリヨセル繊維紡績糸とした。得られた紡績糸を用いて28ゲージ、釜径30インチの丸編機にて天竺組織の目付130g/m
2の編物とした。続いて得られた編物を常法に従い精練を行い、常圧染色機スイングエース(ニッセン社製)にて浴比1:30で前記処方2により80℃×60分の染色を行い、グレー色の編物とした。
【0081】
次に、下記処方11の処理液を作成し、染色した編物に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて160℃×2分の乾燥を行い1段目の加工編物とした。なお、グリオキザール樹脂は含有させなかった。
<処方11>
デナシスY−UMN(長瀬カラーケミカル社製:酸化亜鉛水分散体 アニオン性)
:60g/l
ザオバタックSW(大和化学工業社製:アミン化合物担持無機金属塩水分散体 ノニオン性):60g/l
KM2002T(信越化学工業社製:シリコーン樹脂エマルジョン アニオン性)
:60g/l
【0082】
次いで、前記処方4の処理液を作成し、上記1段目の加工編物に更に浸漬した後、マングルにて絞り率100%で含浸し、テンターにて130℃×2分の乾燥を行い2段目の加工編物を得た。消臭性、ピリング性及び柔軟性は、該編物を用いて評価した。
【0083】
実施例、比較例、参考例で得られた編物の評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
実施例1〜5の編物は、リヨセル繊維がハロゲンヒドリン系化合物とグリオキザール樹脂とによって架橋処理されたものであり、特に、綿の状態でハロゲンヒドリン系化合物によって架橋処理され、かつ、編物の状態でグリオキザール樹脂によって架橋されたものであったことから、ピリング性に特に優れたものであった。そして、実施例1〜4の編物は、シリコーン樹脂を含むものであったことから、柔軟性に特に優れたものであった。また、実施例1〜3及び5の編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物を含むものであり、特に、カチオン系アミン化合物が最外層となるように付着していたことから、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸及びノネナールの消臭性に特に優れたものであった。加えて、実施例1〜3の編物は、金属酸化物、アミン化合物及びカチオン系アミン化合物をシリコーン樹脂をバインダーとして含むものであったことから、洗濯後においても優れた消臭性を発揮するものであった。従って、実施例1〜3の編物は、インナー衣料用途として特に好適に用いることができるものであった。
【0086】
一方、比較例1の編物は、リヨセル繊維がグリオキザール樹脂のみによって架橋処理されたものであったことから、ピリング性に劣るものであった。また、比較例2の編物は、リヨセル繊維がハロゲンヒドリン系化合物のみによって架橋処理されたものであったことから、ピリング性に劣るものであった。