(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動部の動力によって移動可能な移動機体と、前記移動機体に設けられて上下動することで畝に苗を植え付ける苗植付部と、前記苗植付部が上側に位置することを検出する位置検出部と、前記駆動部から前記苗植付部への動力を接続又は切断するクラッチと、前記位置検出部で検出された検出信号の検出後から予め定められたディレイ時間を経て前記クラッチを切断する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記駆動部の動力量に応じて前記ディレイ時間を変更可能であり、且つ同一の動力量について異なるディレイ時間を設定可能であることを特徴とする苗移植機。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜3において、畝Rを跨いで長手方向に移動しながら、たばこ、野菜等のセル成形苗、ソイルブロック苗、ポット苗等と称される苗Nを所定間隔をおいて植え付けていく歩行型の苗移植機1の斜視図を示している。
この苗移植機1は大別して、走行可能な移動機体Tと、この移動機体Tの後部に設けられた苗植付装置Uと、この苗植付装置Uの後上方に設けられていて苗植付装置Uへ苗Nを供給する苗供給装置Kと、移動機体Tの前上部に左右にわたって配置された予備苗台Yとを備えている。
【0017】
移動機体Tは、ミッションケースMから前方へ架台7が突出してその上部にエンジン(駆動部)Eを搭載し、ミッションケースMの後部にメインフレーム8を取り付け、これらによって機本体T1を構成し、機本体T1の後部、即ちメインフレーム8の後端に操縦ハンドルHを連結している。操縦ハンドルHには、走行クラッチレバー部15、植付クラッチレバー16等が設けられている。植付クラッチレバー16の下部はメインフレーム8の後部にブラケットを介して揺動自在(切替自在)に支持され、エンジン(駆動部)Eの動力(作業動力)を接続又は切断するクラッチ(例えば、電磁クラッチ)31を操作することができるようになっている(
図9参照)。
【0018】
また、ミッションケースM及び架台7は、前輪40Aを有する前走行装置40と後輪41Aを有する後走行装置41とを懸架している。前走行装置40や後走行装置41はクローラ式であってもよい。
ミッションケースMにはエンジンEからの動力をベルト伝動手段52を介して入力され、その動力を変速機構等の動力伝達機構53を介して変速し、走行出力軸54から走行動力を出力する。また、ミッションケースMの内部、或いは、ミッションケースMから苗植付部U1までの作業動力伝達系には、電磁クラッチ31が設けられ、当該電磁クラッチ31の接続によってエンジンEの動力を苗植付部U1側に伝達して当該苗植付部U1を作動させ、電磁クラッチ31の切断によって苗植付部U1側へのエンジンEの動力出力を停止して、苗植付部U1の作動を止めることができる。
【0019】
走行出力軸54はミッションケースMを貫通して左右に突出しており、左右両端には伸縮伝動軸57が連結され、伸縮伝動軸57の先端に先端軸58が直結され、この伸縮伝動軸57及び先端軸58は車軸ケース59内に挿通され貫通支持されている。
車軸ケース59の左右方向外端には後輪伝動ケース62の上部が連結され、この後輪伝動ケース62の上部には先端軸58が支持され、下部には後輪41Aを支持した車輪軸63が支持され、先端軸58と車輪軸63との間にチェーン伝動手段64が設けられている。走行出力軸54からの動力は、伸縮伝動軸57、先端軸58、チェーン伝動手段64及び車輪軸63を介して後輪41Aに伝達される。
【0020】
左右前輪40Aはそれぞれ前輪支持アーム67の下部に前軸67aを介して回動自在にかつ左右位置調整自在に支持され、前輪支持アーム67の上部には角筒部67bが設けられ、前角軸68の角軸部分に左右方向位置変更可能かつ一体揺動自在に取り付けられている。左右各前角軸68の左右方向内端側は、架台7の前部に設けた前支持ブラケット69に前横軸69a廻り回動自在に支持されている。前角軸68の角軸部分には前連動アーム70が一体回動自在に装着され、この前連動アーム70の先端に連動杆71が連結されている。
【0021】
連動杆71の後端は車軸ケース59の後連動アーム66と連結されており、車軸ケース59の回動が前角軸68に伝達されるようになっており、これらの回動により、車軸ケース59を中心とする後輪伝動ケース62の角度と前角軸68を中心とする前輪支持アーム67の角度とが同時に同一角度変更され、移動機体Tが水平姿勢で昇降できるようになっている。
【0022】
ミッションケースMの後部にはメインフレーム8が取り付けられ、このメインフレーム8の下側に植付フレーム82が装着され、この植付フレーム82の左右一側(左側)に作業伝動ケース83が装着されている。この作業伝動ケース83の前部はミッションケース
Mの側面に位置している。作業伝動ケース83の前部は、移植出力軸55と直結された前軸84を支持しており、作業伝動ケース83の後部は原動軸85を支持し、前軸84と原動軸85との間にチェーン伝動手段が設けられ、前記原動軸85が苗植付装置Uと苗供給装置Kの共通の動力伝達軸となっている。
【0023】
図4に示すように、原動軸85は植付フレーム82に枢支された同芯の左右短軸85aと、両短軸85aの内端に設けられたアーム85bと、左右アーム85bに架設されたリンク軸85cとを有し、
図4の平面視で略クランク形状になっている。主に、左短軸85aとリンク軸85cが苗植付装置Uの駆動を司る植付駆動軸30を構成し、右短軸85aが苗供給装置Kの駆動を司っている。
【0024】
右短軸85aには、当該右短軸85aと一体回転する回転体(ブレーキディスク)86が設けられ、このブレーキディスク86には外周に凹部88が形成されている。また、ブレーキアーム87のローラ87aがスプリング87bによって弾圧されていて、ローラ87aが凹部88に達すると当該ローラ87aは凹部88に嵌り込み、右短軸85aが所定位置で停止する。
【0025】
図1〜3及び
図5に示すように、前記苗供給装置Kは、縦軸10廻り間欠回転自在なターンテーブルSと、このターンテーブルSの周囲部に多数配置されていて苗Nを収納しかつ落下可能な苗供給具K1と、苗植付部U1の上下動に同期してターンテーブルSを駆動する供給駆動機構K2とを備えている。
メインフレーム8には支持部材19が設けられ、この支持部材19にはターンテーブルSを回転自在に支持する縦軸10を取り付けた縦軸支持部19aと、横軸14を回転自在に支持する横軸支持部19bが設けられている。横軸14の下部にはウオームホイール22が設けられ、このウオームホイール22と噛合するウオームギヤ23は横軸支持部19bに支持された横軸14に設けられ、この横軸14は供給連動手段13を介して植付駆動軸30(右短軸85a)からの動力で間欠駆動される。供給駆動機構K2は、横軸14及び供給連動手段13等によって構成されている。
【0026】
このように、供給駆動機構K2が苗植付部U1を駆動する原動軸85と連結されていて、この原動軸85から動力が伝達されることにより、苗植付部U1と昇降動作と同期しており、原動軸85の1回転毎に1個の苗供給具K1を苗供給位置Pへ間欠移動することができる。
図4、
図6及び
図7に示すように、前記苗植付装置Uは、移動機体Tの植付フレーム82の左右板材82の前上部に枢支された一対の第1リンク26と、この一対の第1リンク26に設けられた植付揺動体27と、この植付揺動体27に枢支されていて後上方へ延びる一対の第2リンク28と、この一対の第2リンク28の先端に開閉自在に支持された苗植付部U1と、一対の第2リンク28の一方とリンク軸85cを介して連結された回転アーム29(アーム85b)と、この回転アーム29を駆動する植付駆動軸30(短軸85a)とを備えている。
【0027】
短軸85aが回転すると、アーム85bを介してリンク軸85cは円軌跡Jを描いて公転し、これにより。一対の第2リンク28の前後中途部を円形に回転することにより、一対の第1リンク26の揺動に拘束されながら、第2リンク28の先端に設けられた苗植付部U1が上下に長い略楕円形状の軌跡Lを描く。
この苗植付部U1は、内部空洞の側面視略嘴形状であり、一対の第2リンク28の先端に装着された支持体96と、この支持体96に上側から苗Nが供給できるように開放したガイド部材97と、支持体96に枢支されていて下部が畝Rに突き刺し可能な尖端形状の前後一対の嘴部材98とを有している。
【0028】
一対の嘴部材98は上部で枢支して下部を開閉自在とし、周期的(間欠的)な上下動により畝Rに突入して苗植付用穴W1を形成しながら、内部に保持した苗Nを下方に放出できるように構成されている。
また、苗植付装置Uは、放出手段95を備えている。この放出手段95は、植付揺動体27に枢支した支持腕95aと、この支持腕95aと一方の嘴部材98とを連結するロッド95bと、一方の嘴部材98と連動して他方の嘴部材98を反対揺動させる連動ピン9
5cと、支持腕95aを上下揺動させるカム95dとを有している。
【0029】
カム95dはリンク軸85cに設けられていて、短軸85aの周囲を公転し、支持腕95aの中途部と当接してこれを上下揺動させ、苗植付部U1が上下移動範囲の下死点付近まで下降したときに、一方の嘴部材98が放出手段95のロッド95b及び支持腕95aによって外方へ揺動し、一方の嘴部材98の揺動が連動ピン95cによって他方の嘴部材98を反対方向に揺動を生じ、これにより一対の嘴部材98は開放されるようになる。
【0030】
苗植付部U1は上下移動範囲の上死点において一対の嘴部材98が閉じた状態であって、苗供給位置PのターンテーブルSの苗供給具K1の直下に位置し、苗供給具K1から苗Nの供給を受け、上死点から前下向きに移動し、その途中から畝Rに突入し、下死点に近づくにつれて一対の嘴部材98を開放して苗植付用穴W1を形成すると同時に苗Nを放出し、苗放出後に一対の嘴部材98を閉じながら後上向きに移動する。
【0031】
苗植付部U1の略楕円軌跡Lにおける前後移動は、移動機体Tが前進しているので相殺され、苗植付部U1は畝Rに対して垂直に近い姿勢で突入しかつ略垂直に近い姿勢で抜け出し、苗Nを略直立姿勢にして植付ける。
図7には、苗植付部U1が植え付け動作したときの当該苗植付部U1の動きが示されている。
図8には、苗植付部U1が植え付け動作したときのローラ87a及びアーム85bの動きが示されている。
図7及
図8を用いて、苗植付部U1の動作について説明する。
【0032】
図7に示すように、上述した苗移植機1において、苗植付部U1が植え付け開始位置にあるときには、
図8に示すように、ブレーキディスク86の凹部88にローラ87aが嵌り込んだ状態であり、苗植付部U1は上側に位置している。
苗植付部U1が植え付け開始位置から電磁クラッチ31を接続してエンジンEを駆動させると、当該エンジンEの駆動力(回転駆動力)はミッションケースMを介して移植出力軸55に伝達され、この移植出力軸55に伝達された回転駆動力は、前軸84及びチェーン伝動手段を介して駆動軸30(短軸85a)に伝達される。回転動力によって短軸85aは回転し、アーム85bを介してリンク軸85cは円軌跡Jを描いて公転する。リンク軸85cの公転に伴って、一対の第2リンク28の前後中途部は一対の第1リンク26の揺動に拘束されながら揺動し、第2リンク28の先端に設けられた苗植付部U1は、次第に下方に移動していくと共に最下点に達すると次第に上昇し、全体として上下に長い略楕円形状の軌跡Lを描く植え付け動作を行うことになる。
【0033】
一方、ブレーキディスク86側を見ると、苗植付部U1の植え付け動作の開始時は、ブレーキディスク86の凹部88に嵌り込んでいたローラ87aは凹部88から離脱して当該ローラ87aはブレーキディスク86の外周面を転動する。苗植付部U1の植え付け動作が終了時は、再び苗植付部U1は上側に位置しており、ローラ87aが凹部88に嵌り込むことによって、苗植付部U1の植え付け動作は停止する。ローラ87aが凹部88に嵌り込む前に、電磁クラッチ31は切断される。
【0034】
図9は、苗移植機1の制御ブロックを示したものである。苗移植機1の制御、特に、苗植付部U1の制御について説明する。
図9に示すように、苗移植機1には、当該苗移植機1の制御を行う制御装置32が搭載されている。この制御装置32には、信号出力部33と、位置検出部34と、電磁クラッチ31、植付クラッチレバー16とが接続されている。
【0035】
信号出力部33は、移動機体の移動に基づいて移動信号を出力するもので、例えば、車輪軸63の回転に伴ってパルス信号を出力する回転センサで構成され、
図10に示すように、車輪軸63の回転に比例してパルス信号を出力する。
位置検出部34は、苗植付部U1が上側に位置していることを検出するセンサ(上位置検出センサ)あって、例えば、駆動軸30(短軸85a)の回転に連動して回転するアーム85bの位置を検出することによって苗植付部U1の上側位置を検出する。言い換えれば、位置検出部34は、苗植付部U1が植え付け開始位置(植え付け終了位置)を検出する。
【0036】
詳しくは、ブレーキディスク86を側面視した状態において、位置検出部34は、当該ブレーキディスク86の上部側に固定されていて、アーム85bがブレーキディスク86
の上部側を通過したことを検出する。つまり、アーム85bがブレーキディスク86の上部側に達すると、苗植付部U1が上側位置となる。
電磁クラッチ31は、制御装置32からの制御信号によって接続又は切断される。具体的には、植付クラッチレバー16は自動的にクラッチの接続又は切断を繰り返し行う位置(自動位置)に操作可能であって、自動位置では、制御装置32は電磁クラッチ31に対してクラッチを接続する制御信号(接続信号という)を出力すると共に、クラッチを切断する制御信号(切断信号という)を出力する。そして、電磁ラッチ31は、制御装置32の接続信号によって接続動作して苗植付部U2は植え付け動作すると共に、制御装置32の切断信号によって切断動作し、苗植付部U2は植え付け動作を停止する。
【0037】
また、植付クラッチレバー16は切断位置
(切断保持位置)に操作可能であって、切断位置では、制御装置32は、切断信号を電磁クラッチ31に出力して、当該電磁クラッチ31の切断を保持する。なお、植付クラッチレバー16が自動位置であるときは、電磁クラッチ31の接続や切断は、位置検出部34によって検出した検出信号(上側位置を示す信号)や信号出力部33によって出力した移動信号(パルス信号)等に基づい
て実行される。以降、植付クラッチレバー16は、自動位置にあるとして説明を続ける。
【0038】
次に、制御装置32について詳しく説明する。
制御装置32は、演算部35と、制御部36とを備えている。演算部35及び制御部36は制御装置32に格納されたプログラム等から構成されている。
演算部35は、苗植付部の植え付け開始から植え付け終了までに出力された移動信号の第1積算値、即ち、苗植付部が軌道Lを描く間に信号出力部33から出力された移動信号の第1積算値を求める。また、演算部35は、苗植付部の植え付け終了以降に出力された移動信号、即ち、苗植付部が軌道Lを描いた後に停止した状態で信号出力部33から出力された移動信号の第2積算値を求める。
【0039】
詳しくは、
図10に示すように、時間T1において、制御装置32が電磁クラッチ31に対して接続する制御信号(接続信号という)を出力したとする。そうすると、演算部35は、時間T1において、信号出力部33(回転センサ)が出力した移動信号の積算を開始する。詳しくは、演算部35は、移動信号であるパルス信号のパルス数を積算する処理を時間T1で開始する。
【0040】
次に、時間T1から時間が進んだ時間T2において、位置検出部34により苗植付部U1の上側位置が検出されたとする。そうすると、演算部35は、時間T2において移動信号の積算を終了する、即ち、移動信号であるパルス信号のパルス数を積算する処理を終了する。そして、演算部35は、時間T1から時間T2までにカウント(積算)したパルス数を第1積算値とする。
【0041】
加えて、演算部35は、時間T2において、新たに、信号出力部33(回転センサ)が出力した移動信号の積算を開始する、即ち、移動信号であるパルス信号のパルス数を積算する処理を開始する。つまり、
図10に示すように、演算部35は、時間T1から時間T2までにカウントしたパルス数を第1積算値とする一方で、時間T2では新しくパルス信号のパルス数をカウントする処理を開始し、時間T2の以降にカウントしたパルス数を第2積算値とする。
【0042】
なお、苗植付部U1の上側位置の検出後(時間T2の以降)は、所定の時間経過後に、制御装置32は電磁クラッチ31に対して切断する制御信号(切断信号という)を出力して、苗植付部U1の植え付け動作を停止する。
さて、制御部36は、上述した第1積算値と前記第2積算値とに基づいて苗植付部U1における次の植え付け開始の動作を制御する。詳しくは、制御部36は、時間T1から時間T2の間に出力されたパルス信号のパルス数である第1積算値と、時間T2以降に出力されたパルス信号のパルス数である第2積算値とを合わせた総積算値(総パルス数)が予め定められた所定値(判定値)になったときに苗植付部U2の植え付け開始を実行する。なお、この判定値は株間に応じて定められるもので、株間が大きいときには当該判定値は大きく、株間が小さいときには当該判定値は小さい。この判定値は、予め制御部36(制御装置32)に格納されている。判定値は、例えば、苗移植機1に設けたスイッチ等によ
って適宜変更できるようにしてもよい。
【0043】
例えば、
図10の時間T3において、総パルス数が予め定められた所定値に達すると、演算部35は第2積算値の演算処理を終了すると共に、制御部36は、電磁クラッチ31に対して再び接続信号を出力して、エンジンEの駆動力(回転駆動力)を移植出力軸55、前軸84、駆動軸30(短軸85a)に伝達して、苗植付部U1を植え付け動作させる。即ち、制御部36は、総パルス数が予め定められた所定値に達した後(時間T3時)は、電磁クラッチ31を切断状態から接続状態に切り替える。
【0044】
つまり、制御装置32によれば、電磁クラッチ31の接続時におけるパルス信号のパルス数を積算することで第1積算値を求め、電磁クラッチ31の切断後におけるパルス信号のパルス数を積算することで第2積算値を求め、第1積算値と第2積算値とを合わせた総パルス数が判定値になったときに電磁クラッチ31を切断状態から接続状態に切り替えている。
【0045】
以上、本発明によれば、苗植付部U1の植え付け開始から植え付け終了までの間に信号出力部(回転センサ)33が出力したパルス信号のパルス数(第1積算値)を求めているので、当該第1積算値によって、苗植付部U1が植え付け開始してから植え付け終了までの間に苗移植機1が進んだ距離を把握することができる。また、苗植付部U1の植え付け終了後も信号出力部(回転センサ)33が出力したパルス信号のパルス数(第2積算値)を求めているため、当該第2積算値によって植え付け終了後に苗移植機1が進んだ距離を把握することができる。
【0046】
また、植え付け開始してから植え付け終了までの間に苗移植機1が進んだ距離に相当する値(第1積算値)と、植え付け終了後に苗移植機1が進んだ距離に相当する値(第2積算値)とを合わせた総積算値によって、植え付け開始してから植え付け終了を経て苗移植機1が進んだ総距離を把握することができる。そして、植え付け開始してから植え付け終了を経て苗移植機1が進んだ総距離(総積算値)が株間に対応して定められた判定値に達したときに、制御部36によって、電磁クラッチ31を切断状態から接続状態に切り替えているため、株間を一定にすることができる。
【0047】
図11は、先に行われる植え付け(前植え付け)と、前植え付けの終了から次の植え付け(後植え付け)とを例示したものである。
図11の実線N1は、前植え付けにおいて電磁クラッチ31の接続が位置P10で直ちに行われた場合(ズレ無し)の畝を示し、
図11の点線N2は、前植え付けにおいて電磁クラッチ31の接続がΔT時間ずれて位置P11で行われた場合(ズレ有り)の畝を示している。
【0048】
図11を用いて、前植え付けの開始時に、電磁クラッチ31の接続が直ちに行われなかった状況下(ズレ有り)における後植え付けの開始について説明する。
例えば、前植え付けの終了後(切断信号を出力後、或いは、上側位置を検出後)に第2積算値(A)の積算を開始した場合、ズレが有りの状況下では、第2積算値(A)の積算は位置P12で開始される。従来では、第2積算値(A)がズレ無し場合の第2積算値(B)と同じ積算値(第2積算値A=第2積算値B)となったときに、後植え付けが実行されるため、当該後植え付の位置は位置P13となる。このような方法では、前植え付けにおいてズレが生じると、後植え付け開始もズレることになる。
【0049】
一方、本発明では、ズレがあったとしても位置P10において第1積算値(C)の積算が開始されると共に、前植え付けの終了後である位置P12にて第2積算値(D)の積算が開始される。第2積算値(D)の開始は、切断信号の出力後、或いは、上側位置を検出後に行うため、ズレの影響のある位置P12となる。しかしながら、第1積算値(C)と第2積算値(D)とを加算した総積算値(C+D)がズレ無し場合の積算値(E)となったときに、電磁クラッチ31の接続が行われるため、後植え付けの開始は、ズレ無しと同じ位置である位置P14となる。このように、本発明を採用することによって、株間を一定にすることができる。言い換えれば、電磁クラッチの接続が遅れた場合でも、苗植付部U2の停止期間(第2積算値の値)が小さくすることができるため、株間の変動を抑制することができる。
【0050】
上述した実施形態では、移動機体の移動に基づく移動信号としてパルス信号を出力し、
パルス信号のパルス数をカウントすることとしていたが、これに限らず、移動機体の移動を数値化できる移動信号であれば、パルス信号以外のものであってもよい。また、エンジン(駆動部)から苗植付部U2への動力を接続又は切断するクラッチは、上述した電磁クラッチ31であってもその他のクラッチであってもよい。
【0051】
さて、苗植付部U2が上側位置に達したとき(アーム85bがブレーキディスク86の上部側の位置に達したとき)、即ち、位置検出部34の検出信号が出力されたとき、電磁クラッチ31を切断して苗植付部U2等への回転動力の伝達を停止すると共に、ブレーキディスク86の凹部88にローラ87aをはめ込む構造によって、苗植付部U2を所定の位置(上側位置)で停止することができる。
【0052】
しかしながら、様々な要因によって、ローラ87aが凹部88を乗り越えてしまったり(オーバーラン)、ローラ87aが凹部88に嵌り込む前に苗植付部U2が停止してしまい自重によって反対方向に動くしゃくり等が発生することがある。そのため、従来では、位置検出部34の位置調整を行うことによって、即ち、
図8に示すように、位置検出部34による検出位置からローラ87aまでの周方向距離Aを調整することにより、上述したようなオーバーランやしゃくり等の防止を行っている。しかしながら、苗植付部U2が上側位置する位置検出部34の位置調整は大変であり、調整誤差も発生するため、苗移植機では、位置検出部34の位置は固定にした状態で、電磁クラッチ31の切断のタイミングを調整することにより、オーバーランやしゃくり等の防止を行っている。
【0053】
次に、電磁クラッチ31の切断について詳しく説明する。
制御装置32の制御部36は、位置検出部34で検出された検出信号の検出後(上側位置の検出後)から予め定められたディレイ時間(遅れ時間)を経て電磁クラッチ31を切断する。例えば、ディレイ時間を長くした場合、苗植付部U2(アーム85b)の上側位置の検出後も長い間、苗植付部U2(アーム85b)に動力を伝達することになる。このことは、苗植付部U2(アーム85b)の上側位置の検出と同時に電磁クラッチ31を切断する形式(従来方式)に置き換えると、位置検出部34をローラ87aに向けて動かして周方向距離Aを短くした状態とみなすことができる。
【0054】
また、ディレイ時間を短した場合、苗植付部U2(アーム85b)の上側位置の検出後に短い間だけ苗植付部U2(アーム85b)に動力が伝達されることになる。このことは、従来方式に置き換えると、位置検出部34をローラ87aに向けて動かして周方向距離を長くした状態とみなすことができる。
このように、制御部36によって、検出信号の検出後(上側位置の検出後)から予め定められたディレイ時間を経て電磁クラッチ31を切断することにより、従来のように位置検出部34の位置調整をしなくても、周方向距離Aを調整した状態と同じ作用をさせることができる。なお、苗移植機1では固体差があるため、苗移植機1毎にオーバーランやしゃくりが発生しない周方向距離Aに相当するディレイ時間が設定されている。このディレイ時間は、制御部36(制御装置32)に記憶して、ディレイ時間に基づいて制御を行う。例えば、ディレイ時間が60msであるとき、制御部36は、苗植付部U2(アーム85b)の上側位置の検出信号が検出されたとき、この検出信号の検出後、60ms後に電磁クラッチ31を切断する切断信号を出力する。
【0055】
さて、上述したように、苗移植機1毎にディレイ時間が設定されているが、駆動部の動力量に基づいてディレイ時間を変更することが望ましい。次に、変形例について説明する。
図12に示すように、制御装置32は、駆動部の動力量とディレイ時間との関係を示す制御テーブルCTを記憶している。この制御デーブルでは、エンジン回転数が駆動部の動力量として採用されて、エンジン回転数とディレイ時間とが対応付けられたものである。なお、制御装置32にはエンジン回転数が逐次入力されるようになっている。
【0056】
ここで、エンジン回転数が大きいときに電磁クラッチ31を接続すると、苗植付部U2(アーム85b)に伝達する動力はエンジン回転数に伴って大きく、逆に、エンジン回転数が小さいときに電磁クラッチ31を接続すると、苗植付部U2(アーム85b)に伝達する動力はエンジン回転数に伴って小さい。
つまり、エンジン回転数が大きいときは苗植付部U2(アーム85b)に働く慣性力は大きくなり、その結果、アーム85bの検出後、同じディレイ時間であっても当該アーム85bの移動距離は長くなる。また、エンジン回転数が小さいときは苗植付部U2に働く慣性力が小さくなり、その結果、アーム85bの検出後、同じディレイ時間であっても当該アーム85bの移動距離は短くなる。
【0057】
それゆえ、電磁クラッチ31を切断時(切断開始時)での苗植付部U2(アーム85b)の切断位置Qを
図8のように設定して、エンジン回転数が変化しても切断位置Qを同じ位置にするとした場合、エンジン回転数が大きいときは、検出信号の検出後から電磁クラッチ31を切断するまでのディレイ時間は短く、エンジン回転数が小さいときは、検出信号の検出後から電磁クラッチ31を切断するまでのディレイ時間は長くするのが望ましい。
【0058】
図12に示した制御テーブルCTでは、電磁クラッチ31の切断開始時での苗植付部U2(アーム85b)の切断位置Qが同一位置となるように、エンジン回転数とディレイ時間とが設定されている。例えば、オーバーランやしゃくり等が発生しないアーム85bの切断位置Qを様々な方法で求めておくと共に、エンジン回転数の上下限値の範囲内でアーム85bの移動距離(エンジン回転に伴って移動する移動距離)Sを求める。なお、移動距離は角速度に置き換えて求めることが望ましい。
【0059】
そして、エンジン回転に伴って移動する移動距離Sがアーム85bの検出位置(位置検出部34の位置)から切断位置Qまでの距離と同じとなるディレイ時間を求める。求めたディレイ時間とエンジン回転数とを制御テーブルCTに設定する。例えば、
図12に示した制御テーブルCTにおいて、エンジン回転数が2000rpmでのディレイ時間は60msとなり、エンジン回転数が1600rpmでのディレイ時間は80msとなる。
【0060】
このように、エンジン回転数とディレイ時間とを用いて、電磁クラッチ31の切断を行うには、まず、エンジンEが駆動し且つ電磁クラッチ31を接続した状態において、制御部36は、入力されたエンジン回転数を監視する。そして、位置検出部34で検出された検出信号が制御装置32に入力されると、制御部36は、検出信号が入力された時点でのエンジン回転数と制御テーブルCTとを用いてディレイ時間を求める。例えば、検出信号が入力された時点でのエンジン回転数が2800rpmである場合、制御部36は、制御テーブルCTを参照して当該エンジン回転数に対応するディレイ時間である45msを求める。そして、制御部36は、検出信号を検出した時点から求めたディレイ時間(例えば、45ms)の経過後に切断信号を出力する。
【0061】
このように、制御装置32は、エンジン回転数とディレイ時間とを対応付けた制御テーブルCTを有していて、制御テーブルCTを用いてディレイ時間を変更する。それゆえ、上述したように、エンジン回転数が変化したとしても、即ち、エンジン回転数によって苗植付部U2に働く慣性力が変化したとしても、電磁クラッチ31の切断時における苗植付部U2の位置を同じ位置にすることができ、これにより、苗植付部U2を適正な位置に停止することができる。
【0062】
さて、上述した実施形態では、予め定められた1つの切断位置Qに対応してエンジン回転数及びディレイ時間を設定していたが、切断位置Qが異なるように、エンジン回転数及びディレイ時間を設定してもよい。
詳しくは、
図13に示すように、制御装置32は、切断位置Qが異なる複数の制御テーブルCTを備えている。
図13(a)に示した第1の制御テーブル(第1制御テーブル)CT1は、
図11と同じであるが、
図13(b)及び
図13(c)に示した第2の制御テーブル(第2制御テーブル)CT2及び第3の制御テーブル(第3制御テーブル)CT3は、第1制御テーブルCT1と切断位置Qが異なるように、エンジン回転数及びディレイ時間が設定されている。
【0063】
第2制御テーブルCT2では、第1制御テーブルCT1と比べて同じエンジン回転数であってもディレイ時間が小さくなっており、当該第2制御テーブルCT2の切断位置Qは第1制御テーブルCT1に比べて位置検出部34側にシフトしている。第3制御テーブルCT3では、第1制御テーブルCT1と比べて同じエンジン回転数であってもディレイ時
間が大きくなっており、当該第3制御テーブルCT3の切断位置Qは第1制御テーブルCT1に比べてローラ87a側にシフトしている。
【0064】
このように、複数の制御テーブルCTを備えることにより、当該制御テーブルCTを用いて切断位置Qの変更を行うことができる。例えば、苗移植機1の個体差や経年変化等によって、第1制御テーブルCT1に対応する切断位置Qでオーバランが発生した場合には、第2制御テーブルCT2に対応する切断位置Qに変更することによってオーバーランを防止することができる。また、苗移植機1の個体差や経年変化等によって、第1制御テーブルCT1に対応する切断位置Qでしゃくりが発生した場合には、第3制御テーブルCT3に対応する切断位置Qに変更することによってしゃくりを防止することができる。
【0065】
制御テーブルCTの変更、即ち、切断位置Qの変更は、手動スイッチ38で行うことが望ましい。具体的には、
図9に示すように、苗移植機1の様々な状況(苗の植え付けに関する様々な情報)を表示する表示装置(表示パネル)39が設けられている。この表示パネル39は、制御装置32(制御部36)に接続されている。表示パネル39には、手動スイッチであるUPスイッチ38a及びDOWNスイッチ38bが設けられており、UPスイッチ38aを押すと、切断位置Qが位置検出部34にシフトする制御テーブルCTが選択され、切断位置Qがローラ87aにシフトする制御テーブルCTが選択される。
【0066】
例えば、第1制御テーブルCT1がデフォルトで設定された場合において、UPスイッチ38aを押すと第2制御テーブルCT2が選択され、DOWNスイッチ38bを押すと第3制御テーブルCT3が選択される。なお、表示パネル39の表示部39aには、選択された制御テーブルCTの番号や切断位置Q等を表示することが望ましい。
また、表示パネル39には、苗作動スイッチ(苗空取りスイッチ)39bが設けられており、エンジンEが駆動している状態で苗空取りスイッチ39bを押すと、電磁クラッチ31が接続状態となって苗植付部U2に動力が伝達され、例えば、1回転作動する。なお、苗作動スイッチ39bを押す毎に苗植付部U2を1回転作動させることが望ましい。これにより、切断位置Qの変更後にオーバーランやしゃくりが発生しないかを確認することができる。
【0067】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
上述した実施形態では、第1制御テーブルCT、第2制御テーブルCT、第3制御テーブルCTを例にあげ説明したが、制御テーブルCTの個数は上述したものに限定されない。また、上述した実施形態では、エンジン回転数を動力量として制御テーブルCTを作成していたが、苗植付部U2に対する動力の大きさを示すものであれば、動力量を植付駆動軸30の回転数やトルクなどにしてもよい。