特許第6162588号(P6162588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162588
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B60K20/02 E
   B60K20/02 A
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-250150(P2013-250150)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107669(P2015-107669A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰典
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−283868(JP,A)
【文献】 特開2002−254946(JP,A)
【文献】 特表2010−520423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機のシフトレンジを選択するために回転操作される位置保持型のノブと、アクチュエータと、アクチュエータに連動してノブのパーキング位置から他の位置への操作を許容する第1の位置とノブの一部に係合してノブのパーキング位置から他の位置への操作を規制する第2の位置との間を移動する押し部材と、アクチュエータを制御する制御回路と、を備え、
前記ノブの一部として、ノブが前記他の位置に保持されているとき押し部材の移動軌跡上に存在するとともに第1の位置から第2の位置へ向かう押し部材との係合を通じて押し部材の移動をノブのパーキング位置へ向けた回転に変換する受け部材を設け、
制御回路は、シフトレンジをパーキングレンジに切り替えるべきとして予め設定された特定の事象が検出される場合には押し部材を第1の位置から第2の位置へ移動させるために、また車両の走行用駆動源が始動される場合に前記規制の解除条件が成立するときには押し部材を第2の位置から第1の位置へ移動させるために、アクチュエータを駆動させるシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記受け部材はノブの回転方向に対して交わる方向へ突出しているシフト装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシフト装置において、
押し部材の位置を検出するセンサを有し、
制御回路はセンサを通じて押し部材が第1の位置または第2の位置に達した旨検出されるときアクチュエータを停止させるシフト装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
押し部材はアクチュエータに連動して直線運動するシフト装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のシフト装置において、
押し部材はアクチュエータに連動してノブの回転中心軸に対して平行に延びる軸線を中心として回転するシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤルノブを有するバイワイヤ式のシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば特許文献1に記載されるように、ダイヤルノブを操作することにより変速機のシフトレンジを切り替えるバイワイヤ式のシフト装置が提案されている。ダイヤルノブはパーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」およびドライブ位置「D」の各操作位置に操作される。ダイヤルノブの動作方法としては、いわゆるステーショナリータイプが採用されている。すなわち、ダイヤルノブが各操作位置に操作された後、当該操作する力が解除されたときであれダイヤルノブは当該操作位置に保持される。また、シフト装置はいわゆるシフトロック機構を有している。シフトロック機構はシフトノブの誤操作を抑制するための機構である。たとえばエンジンが始動されている状態では、ブレーキペダルを踏み込んでいなければシフトノブをパーキング位置「P」から他の位置へ動かすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−254946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステーショナリータイプのダイヤルノブを有するシフト装置では、降車の際にダイヤルノブがたとえばドライブ位置「D」からパーキング位置「P」へ戻し忘れることも考えられる。このため、シフト装置にダイヤルノブの自動復帰機構を設けることが検討されている。自動復帰機構とは、ダイヤルノブがドライブ位置「D」、リバース位置「R」およびニュートラル位置「N」のいずれかの位置に保持された状態でたとえばエンジンが停止されたとき、変速機のシフトレンジが自動的にパーキングレンジに切り替えられる制御の実行に伴いシフトノブの位置をパーキング位置「P」へ自動復帰させるための機構をいう。しかし、シフトロック機構に加えて自動復帰機構をシフト装置に設ける場合、部品点数の増加が懸念される。部品点数の増加は、シフト装置の組み立て工数の増加あるいは体格の大型化にもつながる。
【0005】
本発明の目的は、部品点数を抑えつつ機能を増やすことができるシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成し得るシフト装置は、車両の変速機のシフトレンジを選択するために回転操作される位置保持型のノブと、アクチュエータと、アクチュエータに連動してノブのパーキング位置から他の位置への操作を許容する第1の位置とノブの一部に係合してノブのパーキング位置から他の位置への操作を規制する第2の位置との間を移動する押し部材と、アクチュエータを制御する制御回路と、を備えている。また、前記ノブの一部として、ノブが前記他の位置に保持されているとき押し部材の移動軌跡上に存在するとともに第1の位置から第2の位置へ向かう押し部材との係合を通じて押し部材の移動をノブの回転に変換する受け部材が設けられている。そして、制御回路は、シフトレンジをパーキングレンジに切り替えるべきとして予め設定された特定の事象が検出される場合には押し部材を第1の位置から第2の位置へ移動させるためにアクチュエータを駆動させる。また制御回路は、車両の走行用駆動源が始動される場合に前記規制の解除条件が成立するときには押し部材を第2の位置から第1の位置へ移動させるためにアクチュエータを駆動させる。
【0007】
この構成によれば、シフトレンジをパーキングレンジに切り替えるべきとして予め設定された特定の事象が検出される場合、制御回路はアクチュエータの駆動を通じて押し部材を第1の位置から第2の位置へ移動させる。この場合、ノブがパーキング位置に位置しているとき、押し部材はそのまま第2の位置へ移動されてノブの一部としての受け部材に係合する。これにより、ノブのパーキング位置から他の位置への操作が規制される(シフトロック)。これに対し、ノブが他の位置に位置しているとき、第2の位置へ向かう押し部材と受け部材との係合を通じてノブは他の位置からパーキング位置へ向けて回転する。そして押し部材が第2の位置に至るタイミングでノブはパーキング位置に復帰する(自動復帰機能)。また、車両の走行用駆動源が始動される場合、ノブのパーキング位置から他の位置への操作が規制された状態を解除するための条件が成立するとき、制御回路はアクチュエータの駆動を通じて押し部材を第2の位置から第1の位置へ移動させる。これにより、押し部材と受け部材の係合が解除されてノブのパーキング位置から他の位置への操作が許容される(シフトロック解除)。このように、単一のアクチュエータの動作を通じていわゆるシフトロック機能および自動復帰機能の双方を実現することができる。また、これら2つの機能を別個のアクチュエータを利用して実現する場合に比べて部品点数を抑えることができる。シフト装置の構成も簡単になる。
【0008】
前記シフト装置において、前記受け部材はノブの回転方向に対して交わる方向へ突出していてもよい。受け部材が突出する分、押し部材を受け部材に係合させやすくなる。また、受け部材の突出長さおよび押し部材の移動範囲の調節を通じて、押し部材と受け部材との係合する範囲を調節することが可能である。
【0009】
前記シフト装置において、押し部材の位置を検出するセンサを有していてもよい。この場合、制御回路はセンサを通じて押し部材が第1の位置または第2の位置に達した旨検出されるときモータを停止させることが好ましい。このようにすれば、押し部材をより正確に第1の位置および第2の位置にそれぞれ停止させることができる。
【0010】
前記シフト装置において、押し部材はアクチュエータに連動して直線運動するものであってもよいし、ノブの回転中心軸に対して平行に延びる軸線を中心として回転するものであってもよい。押し部材の動作方法は製品仕様などに応じて適宜選択すればよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、部品点数を抑えつつ機能を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シフト装置が設置された車室内の斜視図。
図2】第1の実施の形態におけるシフト装置をダイヤルノブの軸線に直交する平面で切断した断面図。
図3】第1の実施の形態におけるダイヤルノブの操作が規制された状態を示すシフト装置の断面図。
図4】第1の実施の形態におけるダイヤルノブの操作の規制が解除された状態を示すシフト装置の断面図。
図5】第1の実施の形態におけるシフト装置の斜視図。
図6】第1の実施の形態におけるシフト装置の電気的な構成を示すブロック図。
図7】第1の実施の形態におけるシフトロック動作および自動復帰動作の手順を示すフローチャート。
図8】第1の実施の形態におけるシフトロック解除動作の手順を示すフローチャート。
図9】第2の実施の形態におけるシフト装置の構成を示す平面図。
図10】第2の実施の形態におけるシフト装置の構成を示す斜視図。
図11】第2の実施の形態におけるダイヤルノブの操作が規制された状態を示すシフト装置の断面図。
図12】第2の実施の形態におけるダイヤルノブの操作の規制が解除された状態を示すシフト装置の断面図。
図13】他の実施の形態におけるシフトロック動作または自動復帰動作の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
以下、シフト装置の第1の実施の形態を説明する。
<機械的な構成>
図1に示すように、シフト装置11はたとえば車両のセンターコンソール12に設けられる。シフト装置11はケース13およびケース13に対して回転可能に設けられた円柱状のダイヤルノブ14を有している。ケース13はセンターコンソール12の内部に設けられている。ダイヤルノブ14はセンターコンソール12の外部に露出している。ダイヤルノブ14が回転操作されることにより図示しない変速機のシフトレンジが切り替えられる。
【0014】
図2に示すように、ダイヤルノブ14には4つの操作位置が設定されている。パーキング位置「P」、リバース位置「R」、ニュートラル位置「N」およびドライブ位置「D」である。ダイヤルノブ14をその軸線に沿った方向から見たとき、12時位置近傍にはドライブ位置「D」が設定されている。ドライブ位置「D」を基準としたとき、反時計方向へ向けてニュートラル位置「N」、リバース位置「R」およびパーキング位置「P」がそれぞれ設定されている。各操作位置「P」,「R」,「N」,「D」はダイヤルノブ14の回転方向に沿って等間隔に設定されている。
【0015】
ケース13の内部には戻り止め機構(ディテント機構)20および送り機構30が設けられている。図2において、戻り止め機構20はケース13の上部に、送り機構30はケース13の下部に設けられている。戻り止め機構20と送り機構30との間にはダイヤルノブ14が回転可能に支持されている。
【0016】
戻り止め機構20は、円弧状に湾曲する案内部材21およびダイヤルノブ14と一体回転するピン22を有している。
案内部材21はケース13の内頂部に図2中の上方へ向けて凹んだ状態で設けられた収容部23に取り付けられている。案内部材21の内面はケース13の内部に露出するとともにピン22の案内面として機能する。当該案内面には、ダイヤルノブ14の回転方向に沿って4つの凹部24p,24r,24n,24dが設けられている。各凹部24p,24r,24n,24dはダイヤルノブ14の各操作位置「P」,「R」,「N」,「D」に対応している。また、各凹部24p,24r,24n,24dはダイヤルノブ14の回転方向において滑らかに連続している。
【0017】
ピン22は、ダイヤルノブ14の周面に設けられた扇状の突部25に取り付けられている。ピン22は突部25の円弧面に設けられた収容穴26に圧縮コイルばね27を介して抜け止め状態で収容されている。ピン22の先端部は球面状に形成されるとともに、突部25の円弧面から突出している。ピン22は圧縮コイルばね27の弾性力に抗して収容穴26の内方へ移動可能である。ピン22の先端部は案内部材21の案内面に対して摺動するとともに、各凹部24p,24r,24n,24dに係止される。図2では、ピン22がドライブ位置「D」に対応する凹部24dに係止されている。
【0018】
送り機構30は、モータ31、送りねじ32およびナット33を有している。
モータ31はケース13の下部に固定されている。モータ31の出力軸31aはダイヤルノブ14の軸線に対して直交する方向(図2中の左右方向)へ延びている。出力軸31aには第1の歯車34が取り付けられている。
【0019】
送りねじ32はモータ31とダイヤルノブ14との間に設けられている。送りねじ32はモータ31の出力軸31aに対して平行に延びている。送りねじ32の第1の端部(図2中の左端)寄りの部位には第2の歯車35が取り付けられている。第2の歯車35は第1の歯車34と噛み合っている。したがって、モータ31が回転すると送りねじ32も回転する。送りねじ32の第2の端部(図2中の右端)寄りの部位は、ケース13の内部に設けられた壁36に沿っている。壁36は送りねじ32のダイヤルノブ14と反対側に位置している。
【0020】
ナット33は送りねじ32(正確にはそのねじ部分32a)に対して進退可能に螺合されている。ナット33の周面には押し部材37が一体的に設けられている。押し部材37は送りねじ32の軸線方向に沿って延び、ナット33の第2の歯車35と反対側の側面から突出している。押し部材37の先端(ナット33から突出する部分)は、ダイヤルノブ14の周面に設けられた受け部材38に当接する。
【0021】
受け部材38はダイヤルノブ14の半径方向において突部25と反対側に設けられている。突部25は図2中の上部に、受け部材38は図2中の下部に設けられている。受け部材38はダイヤルノブ14の半径方向に沿って、かつ押し部材37の直線状の移動軌跡を横切るように延びている。受け部材38が押し部材37によって押されるにつれてダイヤルノブ14は図2中の反時計方向へ回転する。ダイヤルノブ14が反時計方向に回転するのに伴い、ピン22は案内部材21の案内面に案内されて凹部24d、凹部24n、凹部24r、凹部24pの順に移動する。このように、受け部材38はナット33、ひいては押し部材37の直線運動をダイヤルノブ14の回転運動に変換する。また受け部材38は、ダイヤルノブ14がドライブ位置「D」からパーキング位置「P」に至るまで、換言すればピン22が凹部24dから凹部24pに至るまで押し部材37によって押すことができるように、ダイヤルノブ14の周面に対する突出長さが設定される。
【0022】
押し部材37はモータ31の駆動を通じて図2に実線で示される第1の位置P1と図2に二点鎖線で示される第2の位置P2との間を移動する。第1の位置P1はピン22が凹部24dに係合しているときの受け部材38の先端側面に押し部材37の先端が当接する位置である。第2の位置P2は、ピン22が凹部24pに係合しているときの受け部材38の先端が押し部材37の先端を乗り越えて押し部材37の側面(壁36と反対側の側面)に当接する位置である。
【0023】
図3に矢印A1で示されるように、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、押し部材37が第1の位置P1から第2の位置P2へ向けて移動されて当該第2の位置P2に達したとき、受け部材38の先端部は押し部材37の壁36と反対側の側面に当接した状態に維持される。このとき、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制される(シフトロック動作)。またこのとき、押し部材37の受け部材38と反対側の側面は壁36に接触した状態に維持される。
【0024】
また、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」以外の位置、すなわちリバース位置「R」、ニュートラル位置「N」またはドライブ位置「D」に位置しているとき、押し部材37が第1の位置P1から第2の位置P2へ移動する過程において受け部材38が図3中の右方へ向けて押される。これによりダイヤルノブ14が反時計方向へ回転してパーキング位置「P」に復帰する(自動復帰動作)。またこのとき、受け部材38の先端部は押し部材37の先端部を乗り越えて押し部材37の先端側面に当接する。
【0025】
図4に矢印A2で示されるように、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、押し部材37が第2の位置P2から第1の位置P1へ退避することにより、受け部材38の先端部が押し部材37の壁36と反対側の側面に当接した状態が解除される。このとき、図4に矢印A3で示されるように、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが許容される(シフトロック解除動作)。
【0026】
図5に示すように、ダイヤルノブ14および送り機構30の図中下方には基板40が設けられる。基板40の上面には第1の位置センサ41および第2の位置センサ42が送りねじ32に対向して設けられている。第1の位置センサ41は押し部材37が第1の位置P1に存在するときのナット33を、第2の位置センサ42は押し部材37が第2の位置P2に存在するときのナット33をそれぞれ検出する。第1および第2の位置センサ41,42としては、たとえばナット33に設けられる磁石の磁界を検出する磁気センサを採用してもよい。
【0027】
<電気的な構成>
つぎに、シフト装置の電気的な構成を説明する。
図6に示すように、シフト装置11は、モータ31、第1の位置センサ41及び第2の位置センサ42に加えて、ノブ位置センサ51および制御回路52を有している。制御回路52にはノブ位置センサ51、第1の位置センサ41、第2の位置センサ42およびモータ31が接続されている。また制御回路52には、車両に設けられるエンジンスイッチ53、フットブレーキスイッチ54および変速機55も接続されている。
【0028】
ノブ位置センサ51は、たとえば突部25に設けられる磁石の磁界を検出する複数の磁気センサを含んでいてもよい。各磁気センサは基板40の上面に設けられて、ダイヤルノブ14が各操作位置「P」,「R」,「N」,「D」に操作されたときの磁石の磁界を検出する。エンジンスイッチ53は車両の走行用駆動源である図示しないエンジンを停止あるいは始動させる際の操作を検出する。フットブレーキスイッチ54は図示しないブレーキペダルが踏み込まれていることを検出する。
【0029】
制御回路52は、ノブ位置センサ51により生成される電気信号に基づきダイヤルノブ14の操作位置「P」,「R」,「N」,「D」を検出する。そして制御回路52はダイヤルノブ14の操作位置に応じて変速機55のシフトレンジを切り替える旨の指令信号を生成する。また制御回路52は、ダイヤルノブ14の操作位置、ならびにエンジンスイッチ53、フットブレーキスイッチ54、第1の位置センサ41および第2の位置センサ42のオンオフ状態に応じてモータ31の駆動を制御する。
【0030】
なお、制御回路52は変速機55のシフトレンジをパーキングレンジに切り替えるべきとして予め設定された特定の事象が検出されるとき、ダイヤルノブ14の操作位置にかかわらず、変速機55のシフトレンジを自動的にパーキングレンジに切り替えるための指令信号を生成する。特定の事象としては、たとえばエンジンが停止されること、あるいはメカニカルキーがキーシリンダから引き抜かれたこと、あるいはドアが開けられたことなどが考えられる。これら特定の事象はエンジンスイッチ53を含む各種のセンサにより検出される。
【0031】
また制御回路52は、各種のセンサを通じて特定の事象が検出されるとき、その時々のダイヤルノブ14の状態に応じた制御を実行する。すなわち、特定の事象を検出するセンサにより生成される電気信号は、当該ダイヤルノブ14の状態に応じた制御の実行契機となるトリガ信号として機能する。トリガ信号としては、たとえばエンジンスイッチ53がオフされた旨示す電気信号、あるいはメカニカルキーがキーシリンダから引き抜かれた旨示す電気信号、あるいはドアが開けられた旨示す電気信号などである。
【0032】
<シフト装置の動作:特定の事象検出時>
つぎに、特定の事象が検出されるときのシフト装置の動作を説明する。
特定の事象が検出された旨示すトリガ信号を受信したとき、制御回路52は図7のフローチャートに示される各処理を実行する。このとき、押し部材37は第1の位置P1に維持されている。
【0033】
制御回路52はまずダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置しているかどうかを判断する(ステップS101)。制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」である旨判断されるとき(ステップS101でYES)、シフトロック動作を実行する。すなわち、制御回路52は押し部材37を第1の位置P1から第2の位置P2へ移動させるためにモータ31を駆動する(ステップS102)。そして、制御回路52は押し部材37が第2の位置P2に至った旨検出されるとき(ステップS103)、モータ31を停止させて(ステップS104)、処理を終了する。
【0034】
押し部材37が第2の位置P2に達したとき、受け部材38の先端部は押し部材37の壁36と反対側の側面に当接した状態に維持される。このため、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制される。
【0035】
先のステップS101において、制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」ではない旨判断されるとき(ステップS101でNO)、自動復帰動作を実行する。すなわち、制御回路52はダイヤルノブ14をパーキング位置「P」へ戻すためにモータ31を駆動する(ステップS105)。モータ31の回転方向は押し部材37を第1の位置P1から第2の位置P2へ移動させるときと同じである。制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に達するまでモータ31を駆動させる(ステップS106でNO)。そして制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に達した旨検出されるとき(ステップS106でYES)、先のステップS104へ処理を移行してモータ31を停止させる。
【0036】
ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に達したとき、押し部材37は第2の位置P2に達する。このため、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に復帰した以降、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制される。なお、モータ31を停止させる前にナット33が第2の位置P2に達しているかどうかを確認してもよい。
【0037】
<シフト装置の動作:エンジン始動時>
つぎに、エンジン始動時におけるシフト装置の動作を説明する。
エンジンが停止している状態でエンジンスイッチ53がオンされたとき、制御回路52は図8のフローチャートに示される各処理を実行する。このとき、ダイヤルノブ14はパーキング位置「P」に、押し部材37は第2の位置P2に維持されている。
【0038】
制御回路52はまずフットブレーキスイッチ54がオンしているかどうかを判断する(ステップS201)。制御回路52はフットブレーキスイッチ54がオンしている旨判断されるとき(ステップS201でYES)、シフトロック解除動作を実行する。すなわち、制御回路52は押し部材37を第2の位置P2から第1の位置P1へ移動させるためにモータ31を駆動する(ステップS202)。そして、制御回路52は押し部材37が第1の位置P1に至った旨検出されるとき(ステップS203)、モータ31を停止させて(ステップS204)、処理を終了する。
【0039】
押し部材37が第2の位置P2から第1の位置P1へ退避することにより、受け部材38の先端部が押し部材37の壁36と反対側の側面に当接した状態が解除される。また、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが許容される。
【0040】
先のステップS201において、制御回路52はフットブレーキスイッチ54がオンしていない旨判断されるとき(ステップS201でNO)、押し部材37を第2の位置P2に維持する(ステップS205)。すなわち、制御回路52はモータ31を駆動させることなく処理を終了する。
【0041】
ダイヤルノブ14は時計方向へ回転操作すること、すなわちパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制されたシフトロック状態に維持される。
【0042】
<実施の形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)単一の送り機構30を利用して自動復帰動作およびシフトロック動作をそれぞれ実行することができる。すなわち、従来別個に設けられていたシフトロック機構と自動復帰機構とが統合されている。2つの機構を別個に設ける場合に比べて、シフト装置11の部品点数を抑えることができるし、その分製品コストを低減することも可能である。また、シフト装置11の体格を小さくすることが可能である。
【0043】
(2)送り機構30はその駆動源として単一のモータ31を有している。すなわち、制御回路52の制御対象はモータ31だけである。このため、モータ31の制御負担が軽減される。自動復帰機構およびシフトロック機構を別個に設ける場合、それら機構にはそれぞれ駆動源(アクチュエータ)を持たせる必要がある。制御回路は2つの駆動源を制御する必要があるため、その分制御回路の制御負担も増える。
【0044】
(3)受け部材38はダイヤルノブ14の回転方向に対して交わる方向(本例ではダイヤルノブ14の半径方向)へ突出している。受け部材38が突出する分、押し部材37を受け部材38に係合させやすくなる。また、受け部材38の突出長さおよび押し部材37の移動範囲の調節を通じて、押し部材37と受け部材38との係合する範囲を調節することが可能である。
【0045】
(4)シフト装置11は、押し部材37の位置を検出するセンサとして第1および第2の位置センサ41,42を有している。制御回路52は第1および第2の位置センサ41,42を通じて押し部材37が第1の位置P1または第2の位置P2に達した旨検出されるときモータ31を停止させる。このため、押し部材37をより正確に第1の位置P1および第2の位置P2にそれぞれ停止させることができる。
【0046】
(5)ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、押し部材37が第2の位置P2に位置しているとき、押し部材37の受け部材38と反対側の側面は壁36に接する。この状態でダイヤルノブ14が他の位置「R」,「N」,「D」へ向けて操作されたとき、押し部材37は受け部材38に押されて受け部材38と反対方向へ移動しようとする。しかし、当該移動しようとする押し部材37は壁36に押し付けられるかたちで受け止められる。このため、ダイヤルノブ14の操作をより確実にロックすることができる。
【0047】
(6)押し部材37は直線運動する。後述するように押し部材37を回転させることも考えられるところ、当該構成を採用する場合に比べて設置スペースを節約することが可能となる。なお、押し部材の動作方法は製品仕様などに応じて適宜選択すればよい。
【0048】
<第2の実施の形態>
つぎに、シフト装置の第2の実施の形態を説明する。
図9に示すように、本例のシフト装置61も第1の実施の形態と同様にダイヤルノブ14を有している。ダイヤルノブ14の周面には受け部材38も設けられている。ただし、受け部材38は矩形板状であってその先端部には丸みを持たせてもよい。また、図示はしないがシフト装置61にも先の図2に示される戻り止め機構20が設けられる。すなわち、シフト装置61も第1の実施の形態と同様にステーショナリータイプである。
【0049】
シフト装置61は先の送り機構30に代えて回転機構62を有している。図9において、回転機構62はダイヤルノブ14の下方に設けられている。回転機構62はモータ31、ウォーム64、二段歯車65および歯車66を有している。
【0050】
ウォーム64はモータ31の出力軸31aに対して同軸状に取り付けられている。二段歯車65はダイヤルノブ14の軸線と平行に延びる軸線を中心として回転する。二段歯車65の軸線とウォーム64の軸線とは互いに直交するねじれの位置関係にある。二段歯車65の下段部分である大径歯車65aはウォーム64と噛み合っている。二段歯車65の上段部分である小径歯車65bは歯車66と噛み合っている。したがって、モータ31の回転はウォーム64および二段歯車65を介して歯車66に伝達される。
【0051】
図10に示すように、歯車66の下面中央には支持部66aが設けられている。支持部66aの周面には押し部材67が設けられている。押し部材67は歯車66の半径方向へ延びるとともに歯車66の周面(歯先円)から突出している。押し部材67はたとえば矩形板状であってその先端面67aは平面であることが好ましい。また押し部材67の先端における2つの角部には丸みが設けられていてもよい。押し部材67はダイヤルノブ14の回転中心軸O1に対して平行に延びる歯車66の軸線O2を中心として回転する。
【0052】
図9に示すように、シフト装置61は基板40も有している。基板40には第1のストッパ68および第2のストッパ69が設けられている。第1および第2のストッパ68,69は歯車66よりも大径の同心円上に、換言すれば押し部材67の回転軌跡上に間隔をおいて設けられている。
【0053】
押し部材67はモータ31の駆動を通じて図9に実線で示される第1の位置P1と図9に二点鎖線で示される第2の位置P2との間を移動する。第1の位置P1は押し部材67の第1の側面が第1のストッパ68に当接する位置である。第2の位置P2は押し部材67の第2の側面が第2のストッパ69に当接する位置である。押し部材67は第1の位置P1から第2の位置P2へ移動する過程においてダイヤルノブ14の受け部材38と当接可能である。
【0054】
図11に矢印B1で示されるように、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、歯車66の回転を通じて押し部材67が第1の位置P1から第2の位置P2に至ったとき、押し部材67の先端面67aは受け部材38の先端側面に当接する。ダイヤルノブ14をその軸線方向からみたとき、歯車66の中心を通る押し部材67の中心線とダイヤルノブ14の中心を通る受け部材38の中心線とは互いに直交する。このとき、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制される(シフトロック動作)。
【0055】
また、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」以外の位置、すなわちリバース位置「R」、ニュートラル位置「N」またはドライブ位置「D」に位置しているとき、押し部材67が第1の位置P1から第2の位置P2へ移動する過程において受け部材38が図11中の右方へ向けて押される。これによりダイヤルノブ14が反時計方向へ回転してパーキング位置「P」に復帰する(自動復帰動作)。ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に復帰した以降、押し部材67の先端面67aは受け部材38の先端側面に当接した状態に維持される。
【0056】
図12に矢印B2で示されるように、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、押し部材67が第2の位置P2から第1の位置P1へ退避することにより、受け部材38の先端側面が押し部材67の先端面67aに当接した状態が解除される。このとき、図12に矢印B3で示されるように、ダイヤルノブ14を時計方向へ回転操作すること、すなわちダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが許容される(シフトロック解除動作)。
【0057】
図9に示すように、基板40には第1の実施の形態と同様に第1および第2の位置センサ41,42が設けられている。ただし、第1の位置センサ41は第1の位置P1に位置するときの押し部材67に対して、第2の位置センサ42は第2の位置P2に位置するときの押し部材67に対して、それぞれ歯車66の軸線O2に沿った方向において対向する。第1の位置センサ41は第1の位置P1に位置するときの押し部材67を、第2の位置センサ42は第2の位置P2に位置するときの押し部材67を検出する。
【0058】
また、シフト装置61は先の図6に示されるノブ位置センサ51および制御回路52を有している。制御回路52はノブ位置センサ51を通じてダイヤルノブ14の位置を検出し、当該検出されるダイヤルノブ14の位置に応じて変速機55に対する指令信号を生成する。また、制御回路52はエンジンスイッチ53、フットブレーキスイッチ54、第1の位置センサ41および第2の位置センサ42のオンオフ状態に基づきモータ31の駆動を制御する。
【0059】
<シフト装置の動作:特定の事象検出時>
つぎに、特定の事象が検出されるときのシフト装置の動作を説明する。
特定の事象が検出された旨示すトリガ信号を受信したとき、制御回路52は先の図7のフローチャートに示される各処理と同様の処理を実行する。このとき、押し部材67は第1の位置P1に維持されている。
【0060】
制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置しているとき(ステップS101でYES)、シフトロック動作(ステップS102〜ステップS104)を実行する。受け部材38の先端側面が押し部材67の先端面67aに当接することにより、ダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制される。また、制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置していないとき(ステップS101でNO)、自動復帰動作(ステップS105〜ステップS106)を実行する。そして制御回路52はダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に達したとき(ステップS106でYES)、モータ31を停止させる(ステップS104)。
【0061】
<シフト装置の動作:エンジン始動時>
つぎに、エンジン始動時におけるシフト装置の動作を説明する。
エンジンが停止している状態でエンジンスイッチ53がオンされたとき、制御回路52は先の図8のフローチャートに示される各処理と同様の処理を実行する。このとき、ダイヤルノブ14はパーキング位置「P」に、押し部材67は第2の位置P2に維持されている。
【0062】
制御回路52はフットブレーキスイッチ54がオンしているとき(ステップS201でYES)、シフトロック解除動作(ステップS202〜ステップS204)を実行する。押し部材67が第2の位置P2から第1の位置P1へ退避することにより、ダイヤルノブ14をパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが許容される。また、制御回路52はフットブレーキスイッチ54がオンしていないとき(ステップS201でNO)、押し部材67を第2の位置P2に維持する(ステップS205)。ダイヤルノブ14はパーキング位置「P」から他の操作位置「R」,「N」,「D」へ操作することが規制されたシフトロック状態に維持される。
【0063】
<実施形態の効果>
したがって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態の(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0064】
(7)シフトロック状態でダイヤルノブ14がパーキング位置「P」から他の位置「R」,「N」,「D」へ向けて操作されることも想定される。この点、本例ではダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置している場合、押し部材67が第2の位置P2に位置しているとき、押し部材67の先端面67aは受け部材38の先端側面に当接する。また、ダイヤルノブ14の軸線方向からみて、歯車66の中心を通る押し部材67の中心線とダイヤルノブ14の中心を通る受け部材38の中心線とは互いに直交した状態に維持される。このため、シフトロック状態でダイヤルノブ14が操作された場合であれ当該操作に伴い移動しようとする受け部材38を好適に受け止めることができる。したがって、ダイヤルノブ14の操作をより確実にロックすることができる。また、第1の実施の形態において第2の位置P2に位置する押し部材37を支持する壁36に相当する部材を別途設ける必要がない。
【0065】
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・第1および第2の実施の形態では円柱状のダイヤルノブ14を採用したが、ダイヤルノブ14の形状は適宜変更してもよい。たとえば四角柱あるいは五角柱などの多角柱状、または楕円柱状のダイヤルノブ14を採用してもよい。
【0066】
・第1および第2の実施の形態において、受け部材38はダイヤルノブ14と一体形成してもよいし、別部材として設けてもよい。受け部材38がダイヤルノブ14と一体的に回転すればよい。
【0067】
・第1および第2の実施の形態では、ダイヤルノブ14に対して4つの操作位置「P」,「R」,「N」,「D」を設定したが、これら操作位置は変速機55に設定されるシフトレンジに応じて適宜変更すればよい。各凹部24p,24r,24n,24dの個数および配置間隔なども同様である。
【0068】
・第1および第2の実施の形態では、案内部材21をケース13に、ピン22をダイヤルノブ14に設けたが、案内部材21をダイヤルノブ14に、ピン22をケース13に設けてもよい。
【0069】
・第1の実施の形態では、図7のフローチャートに示されるように、エンジンが停止されるなどの特定の事象が検出された旨示すトリガ信号を受信したとき、ダイヤルノブ14がパーキング位置「P」に位置しているかどうかを判断するようにした(ステップS101)。しかし、当該判断を実行しない手順を採用してもよい。すなわち、図13のフローチャートに示すように、特定の事象が検出された旨示すトリガ信号を受信したとき、制御回路52は押し部材37を第1の位置P1から第2の位置P2へ移動させるためにモータ31を駆動する(ステップS301)。そして、制御回路52は押し部材37が第2の位置P2に至った旨検出されるとき(ステップS302)、モータ31を停止させて(ステップS303)、処理を終了する。シフトロック動作および自動復帰動作のいずれを実行する場合であれ、押し部材37を第2の位置P2へ移動させる点では同じである。なお、第2の実施の形態において図13のフローチャートに係る手順を採用してもよい。この手順を採用する場合、先の図7のフローチャートにおけるステップS101、ステップS105およびステップS106の各処理を実行しないようにしてもよい。この場合、制御回路52の演算負荷を低減させることが可能となる。
【0070】
・第2の実施の形態では、第1および第2の位置センサ41,42により押し部材67が検出されたときにモータ31を停止するようにしたが、つぎのようにしてもよい。すなわち、押し部材67が第1のストッパ68または第2のストッパ69に当接した後もモータ31を駆動させ続けるとき、モータ負荷の増大に伴いモータ31の電流値も増大する。このことを利用して、モータ31の電流値を監視し、当該電流値がしきい値を超えたときにモータ31を停止させる。なお、第1の実施の形態においてもモータ31の電流値に基づいてモータ31を停止させてもよい。この場合、押し部材67が第1および第2の位置P1,P2にそれぞれ達したとき、押し部材37が当接する2つのストッパを設ける。この構成を採用する場合、第1および第2の位置センサ41,42を省略してもよい。
【0071】
・第2の実施の形態における回転機構62の構成は適宜変更してもよい。たとえば二段歯車65を省略してウォーム64を歯車66に直接噛み合わせてもよい。逆にウォーム64と歯車66との間に二段歯車65以外にも単数または複数の他の歯車をさらに介在させてもよい。すなわち、モータ31の回転力が押し部材67の回転に変換されればよく、動力伝達機構としては適宜の構成を採用すればよい。
【0072】
・第1および第2の実施の形態では、第1および第2の位置センサ41,42により押し部材67が検出されたときにモータ31を停止するようにしたが、つぎのようにしてもよい。すなわち図6に二点鎖線で示されるように、モータ31の回転角を検出する回転角センサ43を設ける。押し部材37,67はモータ31の回転角(回転量)に応じて移動するため、制御回路52は回転角センサ43を通じて検出されるモータ31の回転角に基づき押し部材37,67の位置を検出することができる。制御回路52は押し部材37,67が第1の位置P1または第2の位置P2に至った旨検出されるときモータ31を停止させる。この構成を採用する場合、第1および第2の位置センサ41,42を省略してもよいし、回転角センサ43と併せて有効に利用するようにしてもよい。たとえば、モータ31の回転角に基づきモータ31が停止されたとき、何らかの原因で押し部材37,67が第1の位置P1または第2の位置P2と異なる位置で停止することも考えられる。この場合、制御回路52は、第1の位置センサ41または第2の位置センサ42によって押し部材37,67が第1の位置P1または第2の位置P2まで移動したことが検出されるまでモータ31をさらに回転させる。
【0073】
・第1および第2の実施の形態では、押し部材37,67の駆動源として回転アクチュエータであるモータ31を採用したが、リニアアクチュエータを採用してもよい。リニアアクチュエータとしてはプランジャを直線的に移動させるリニアソレノイドなどがある。
【0074】
・第1および第2の実施の形態において、受け部材38はダイヤルノブ14の半径方向へ突出させたが、受け部材38の突出方向は半径方向に限られない。たとえばダイヤルノブ14の下面あるいは上面に受け部材38に相当するカム突部などを設け、当該カム突部が押し部材37,67によって押されるようにする。
【0075】
<他の技術的思想>
次に、前記実施の形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)押し部材が第1の位置から第2の位置へ直線移動したとき、受け部材は押し部材の側面に当接することを前提としたうえで、第2の位置に位置する押し部材において受け部材が当接する側面と反対側の側面に当接する支持壁を有すること。
【0076】
(ロ)押し部材が第1の位置から第2の位置へ回転移動したとき、受け部材の先端側面は押し部材の先端に設けられた平面に当接すること。
(ハ)受け部材の先端側面が押し部材の先端に設けられた平面に当接した状態において、ダイヤルノブの軸線に沿った方向からみたとき、ダイヤルノブの中心を通る受け部材の中心線と、押し部材の中心線とは互いに直交すること。
【0077】
(ニ)制御回路は、車両の走行用駆動源を停止させるための操作が検出される場合には押し部材を第1の位置から第2の位置へ移動させるために、また車両の走行用駆動源を始動させるための操作が検出される場合に前記規制の解除条件が成立するときには押し部材を第2の位置から第1の位置へ移動させるために、アクチュエータを駆動させること。
【符号の説明】
【0078】
11,61…シフト装置、14…ダイヤルノブ、20…戻り止め機構、31…モータ(アクチュエータ)、36…壁(支持壁)、37…押し部材、38…受け部材(ノブの一部)、41…第1の位置センサ、42…第2の位置センサ、52…制御回路、55…変速機、P1…第1の位置、P2…第2の位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13