特許第6162595号(P6162595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6162595-光検出器 図000002
  • 特許6162595-光検出器 図000003
  • 特許6162595-光検出器 図000004
  • 特許6162595-光検出器 図000005
  • 特許6162595-光検出器 図000006
  • 特許6162595-光検出器 図000007
  • 特許6162595-光検出器 図000008
  • 特許6162595-光検出器 図000009
  • 特許6162595-光検出器 図000010
  • 特許6162595-光検出器 図000011
  • 特許6162595-光検出器 図000012
  • 特許6162595-光検出器 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162595
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】光検出器
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20170703BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20170703BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20170703BHJP
   G01T 1/161 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   H01L31/10 B
   H01L27/14 A
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
   G01T1/161 A
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-262598(P2013-262598)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-119093(P2015-119093A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124291
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 悟
(72)【発明者】
【氏名】永野 輝昌
(72)【発明者】
【氏名】里 健一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 龍太郎
【審査官】 濱田 聖司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/057082(WO,A1)
【文献】 特開2013−88319(JP,A)
【文献】 特開2013−195295(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0056843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/10−31/119
H01L 27/14−27/148
G01T 1/00− 1/40
G01T 1/00− 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、
個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、
複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、
を備え、
前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、
前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、
平面視において、
前記信号読出配線は、
個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線を覆っており、
前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置している、
ことを特徴とする光検出器。
【請求項2】
平面視において、
前記信号読出配線は、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線を全て覆っている、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
平面視において、
前記信号読出配線は、
前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線のうち一部のみを覆っており、
前記信号読出配線における前記覆っている部分の前記信号読出配線の幅方向の寸法は、この部分に隣接する部分の幅方向の寸法よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の光検出器。
【請求項4】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、
個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、
複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、
を備え、
前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、
前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、
平面視において、
前記信号読出配線は、個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、
個々の前記クエンチング抵抗は、屈曲すること無く直線的に延びており、
前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置している、
ことを特徴とする光検出器。
【請求項5】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、
前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、
個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、
複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、
を備え、
前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、
前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、
平面視において、
前記信号読出配線は、
個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、
前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置している、
ことを特徴とする光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジトロンCT装置(Positron Emission Tomography:PET装置)やCT装置などの医療機器に利用可能な光検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な医療機器が用いられている。PET装置は、ポジトロン(陽電子)を放出するアイソトープで標識された薬剤を生体内に導入し、薬剤に起因するγ線を複数の検出器で検出する装置である。PET装置は、リング状のガントリ(架台)、クレードル(寝台)、操作用のコンピュータを備えおり、ガントリ内部には、生体周囲に配置される複数の検出器が内蔵されている。
【0003】
ここで、X線又はγ線の効率的な検出器は、シンチレータと光検出器とを組み合わせることで構成することができる。
【0004】
なお、X線CT装置とPET装置とを組み合わせたCT/PET装置や、これらにMRI(磁気共鳴画像診断)装置を組み合わせた複合診断装置も考えられている。
【0005】
上述のような診断装置に適用される光検出器(フォトダイオードアレイ)は、例えば、特許文献1に記載されている。SiPM(Silicon Photo Multiplier)又はPPD(Pixelated Photon Detector)などのフォトダイオードアレイでは、APD(アバランシェフォトダイオード)をマトリックス状に配置し、複数のAPDを並列に接続し、APD出力の和を読み出す構成を有している。APDをガイガーモードで動作させると、微弱な光を検出することができる。
【0006】
すなわち、光子(フォトン)がAPDに入射した場合、APD内部で発生したキャリアは、クエンチング抵抗及び信号読出用の配線パターンを介して外部に出力される。APDにおける電子雪崩の発生した画素には、電流が流れるが、画素に直列接続された数百kΩ程度のクエンチング抵抗において、電圧降下が発生する。この電圧降下により、APDの増幅領域への印加電圧が低下して、電子雪崩による増倍作用は終息する。このように、1つの光子の入射により、1つのパルス信号がAPDから出力される。
【0007】
PET装置などの機器においては、光検出器からの出力信号のピーク(光子の入射タイミング)と検出された光子量(感度)が利用され、いずれも値が大きいほど好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−311651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光検出器においては、フォトダイオードアレイを構成する各光検出チャンネルの周縁が電位安定化のためにAl等の金属膜で覆われるとともに、クエンチング抵抗が光検出チャンネルの周縁を覆う金属膜の外側に配置されていたため、隣接する光検出チャンネルの間となる領域を小さくしてフォトダイオードアレイの開口率、感度を向上するのには限界があった。また、出力信号のピークを高くすることで、ノイズ等による出力信号のベースラインの揺らぎの影響を低減し、時間分解能を向上することが求められていた。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、出力信号のピークを高めて時間分解能を向上するとともに、高開口率、高感度を実現した光検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、第1の発明の態様に係る光検出器は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、を備え、前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、平面視において、前記信号読出配線は、個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線を覆っており、前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置していることを特徴とする。
【0012】
この光検出器によれば、信号読出配線が、上記境界線を覆うように、第2半導体領域の周囲をリング状に囲んでいるため、第2半導体領域と信号読出配線との間は非常に近くなり、これらの間にはキャパシタが構成されている。光子の入射に応答して第2半導体領域で発生したキャリアの高周波成分(ピーク成分)は、当該キャパシタを介して、素早く外部に取り出される。また、信号読出配線が、上記境界線を覆うことにより、半導体における境界線近傍の電位が安定し、出力信号が安定になる。ここで、クエンチング抵抗は、第2半導体領域上に形成されているため、信号読出配線を上述の配置とすることができ、配線やクエンチング抵抗によって邪魔されることで、第2半導体領域の開口率を小さくしなくても良いため、画素当たりに検出する光量(感度)を大きくすることができる。
【0013】
このように、本光検出器によれば、出力信号のピークを高めるとともに、高開口率、高感度を実現し、更に出力信号を安定させることができる。
【0014】
また、第2の発明の態様に係る光検出器は、平面視において、前記信号読出配線は、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線を全て覆っていることを特徴とする。
【0015】
この場合、信号読出配線と第2半導体領域との間に形成されるキャパシタの容量を大きくして、信号読出配線を介した出力信号のピークを高くすることができる。
【0016】
また、第3の発明の態様に係る光検出器は、平面視において、前記信号読出配線は、前記第2半導体領域と前記第1半導体領域との間の境界線のうち一部のみを覆っており、前記信号読出配線における前記覆っている部分の前記信号読出配線の幅方向の寸法は、この部分に隣接する部分の幅方向の寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
この場合、信号読出配線は、上記境界線の一部のみしか覆っていないが、幅方向の寸法が大きいので、キャパシタの容量を大きくして、信号読出配線を介した出力信号のピークを高くすることができる。
【0018】
また、第4の発明の態様に係る光検出器は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、を備え、前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、平面視において、前記信号読出配線は、個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、個々の前記クエンチング抵抗は、屈曲すること無く直線的に延びており、前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置していることを特徴とする。
また、第5の発明の態様に係る光検出器は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された第1半導体領域と、前記第1半導体領域内に二次元状に複数形成され、前記第1半導体領域よりも不純物濃度が高い第2半導体領域と、個々の前記第2半導体領域にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗と、複数の前記クエンチング抵抗に電気的に接続された信号読出配線と、を備え、前記半導体基板と前記第1半導体領域との間の界面、又は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であって、前記クエンチング抵抗は、前記第2半導体領域上に位置しており、且つ、平面視において、前記信号読出配線は、個々の前記第2半導体領域の周囲をリング状に囲むと共に、前記クエンチング抵抗は、個々の前記第2半導体領域をリング状に囲む前記信号読出配線の内側に位置している、ことを特徴とする。
【0019】
この光検出器によれば、信号読出配線が、第2半導体領域の周囲をリング状に囲んでいるため、第2半導体領域と信号読出配線との間は近くなり、これらの間にはキャパシタが構成されている。光子の入射に応答して第2半導体領域で発生したキャリアの高周波成分(ピーク成分)は、当該キャパシタを介して、素早く外部に取り出される。ここで、クエンチング抵抗は、第2半導体領域上に形成されているため、信号読出配線を上述の配置とすることができ、配線やクエンチング抵抗によって邪魔されることで第2半導体領域の開口率を小さくしなくても良いため、画素当たりに検出する光量(感度)を大きくすることができる。また、クエンチング抵抗が屈曲することなく直線的に延びていることで、第2半導体領域を覆う部分が小さくなり、開口率が大きくなるという利点もある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光検出器によれば、出力信号のピークを高めるとともに、高開口率、高感度を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】PET装置等の被検体診断装置の構成を示す図である。
図2】シンチレータSCと光検出器D1を備える検出器Dの構造を示す図である。
図3】光検出器D1を構成するフォトダイオードアレイPDAの回路図である。
図4】1つのフォトダイオード及びクエンチング抵抗の回路図(A)と、この構成を実現するための半導体チップ内の単位構造を示す図(B)である。
図5図4に示した単位構造の平面図である。
図6図5に示した単位構造を複数備えてなるフォトダイオードアレイの平面図である。
図7図6又は図11のフォトダイオードアレイのA−A矢印縦断面構成を示す図である。
図8】改良した単位構造の平面図である。
図9図8に示した単位構造を複数備えてなるフォトダイオードアレイの平面図である。
図10図9のフォトダイオードアレイのA−A矢印縦断面構成を示す図である。
図11】別の改良をしたフォトダイオードアレイの平面図である。
図12】時間(ns)とフォトダイオードアレイの出力信号の強度(a.u.)を示すグラフであり、(A)は比較例のデータを、(B)は実施例のデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態に係る光検出器について説明する。なお、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、実施形態に係る光検出器が適用可能な被検体診断装置について説明する。
【0024】
図1は、PET装置やCT装置などの被検体診断装置の概略図である。この被検体診断装置は、一般的なものであり、実施形態に係る光検出器は、このようなタイプの被検体診断装置に適用することができる。
【0025】
被検体診断装置は、クレードル101と、クレードル101が内部に位置する開口を有するガントリ102と、制御装置103とを備えている。制御装置103は、クレードル101を移動させる駆動モータ104を、駆動モータ制御信号によって制御し、クレードル101のガントリ102に対する相対位置を変化させる。クレードル101上には、診断が行われる被検体105が配置される。被検体105は、駆動モータ104の駆動によって、ガントリ102の開口の内部へと搬送される。駆動モータ104は、クレードル101を移動させてもよいが、ガントリ102を移動させてもよい。
【0026】
ガントリ102の開口を囲むように、検出装置106が複数配置されている。検出装置106は、それぞれが複数の検出器D(図2参照)を有する。
【0027】
図2は、検出器Dの構造を示す図である。基板SB上に複数の検出チップD0が配置されている。1つの検出チップD0は、光検出器D1と、光検出器D1上に固定されたシンチレータSCからなる。シンチレータSCに、X線やγ線などのエネルギー線(放射線)が入射すると、蛍光が発生し、かかる蛍光を光検出器D1が検出する。
【0028】
再び、図1を参照する。制御装置103からは、検出装置106を制御する制御信号がガントリ102に出力され、ガントリ102からは検出装置106からの検出信号が制御装置103に入力される。
【0029】
まず、被検体診断装置が、PET装置の場合について説明する。
【0030】
PET装置では、ガントリの開口を囲むように、複数の検出器Dがリング状に配置されている。各検出器Dに含まれる光検出器D1は、二次元状に配置された複数のフォトダイオードアレイPDA(図3参照)を有している。被検体105には、陽電子(ポジトロン)を放出するタイプの放射性同位元素(RI)(陽電子放出核種)が注入されている。なお、PET装置において使用されるRIは、炭素、酸素、フッ素、窒素などの生体中に存在する元素である。陽電子は、体内の陰電子と結合して消滅放射線(γ線)を発生する。すなわち、被検体105からは、γ線が出射される。検出器Dは、出射されたγ線を検出し、制御装置103における信号処理回路50に検出信号を出力する。
【0031】
検出器Dは、複数のフォトダイオードアレイPDA(図3参照)の集合体である。信号処理回路50は、検出器Dからの検出信号を処理して、(1)各検出器Dから出力される総エネルギーE、(2)複数のフォトダイオードアレイPDAの中で、γ線の入射した位置P、(3)γ線の入射に応じて、シンチレータから出射された蛍光が、光検出器に入射した際に、初期の段階で光検出器から出力される検出信号の波形ピークのタイミングTを出力する。
【0032】
被検体105から出射されたγ線に応じて、出力された情報であるエネルギーE、位置P、タイミングTは、図示しないAD変換回路で、デジタル信号に変換された後、コンピュータ51に入力される。コンピュータ51は、ディスプレイ52、記憶装置53、中央処理装置(CPU)54、入力装置55、ソフトウエアから構成される画像処理回路56を備えている。入力装置55から、CPU54に処理命令を入力すると、記憶装置53に格納されたプログラムに基づいて、各検出器Dに制御信号が送信され、検出器DのON/OFFが制御できる。
【0033】
画像処理回路56は、各検出器Dから出力された検出信号(エネルギーE、位置P,タイミングT)を画像処理し、被検体105の内部情報に関する画像、すなわち断層化した画像を作成する。画像処理のアルゴリズムは複数のものが従来から知られているので、それを適用すればよい。作成された画像は、記憶装置53内に格納され、ディスプレイ52上に表示することができる。記憶装置53には、画像処理等を行うプログラムが格納されており、CPU54からの指令により、当該プログラムは動作する。検査に必要な一連の操作(制御信号(検出器のON/OFF)の検出器Dへの出力、駆動モータの制御、検出器Dからの検出信号の取り込み、画像処理、作成画像の記憶装置への格納、ディスプレイへの表示)は、入力装置55によって行うことができる。
【0034】
被検体105の内部におけるRI位置Pからは、γ線が一方向とこれとは逆方向に向けて出射される。複数の検出器Dは、リング状に配置されており、特定の検出器D(n)と、RI位置を挟んで、これに対向する検出器D(k)にγ線が入射する。N個の検出器Dを1つのリング上に配置している場合には、最も高い位置にある検出器Dから、時計まわりに数えてn番目の検出器D(n)と、k番目の検出器D(k)にγ線が入射するが、RI位置Pがリングの中心にあり、リングの面内においてγ線が互いに逆方向に向かう場合には、k=n+(2/N)となる。なお、n、k、Nは自然数である。
【0035】
PET装置が、TOF型(Time Of Flight)である場合、RIを含む物質を人体や動物及び植物などに投与し、その測定対象中において電子・陽電子対消滅で生成される放射線対(γ線)を計測することにより、測定対象内のその投与物質の分布についての情報を得るものである。すなわち、対向位置に配置された検出器Dのそれぞれの各信号処理回路50から出力されるタイミングTが判明すれば、タイミングの差分が、対向する検出器D間の対角線上における、リングの重心位置からのRI位置Pの変位距離に対応するため、位置検出ができる。
【0036】
また、コンピュータ51では、2つのタイミングTが求められた場合には、これが電子・陽電子消滅に起因して発生したものかどうかも判定する。この判定は、一方の検出器D(n)においてγ線が検出された検出時刻の前後の一定時間の間に、他方の検出器D(k)においてγ線が検出されたか否かによりなされる。この条件で検出された場合には、同一の電子・陽電子対消滅に伴って発生したγ線対であると判定でき、有効な値として画像処理回路56における画像処理に採用することができる。
【0037】
タイミングTの測定においては、所定の閾値(SHとする)を、検出器Dの信号強度が超えた場合には、γ線の入射があったと判定し、そうでない場合には、入射が無かったと判定する。閾値SHは、例えば電子・陽電子対消滅に伴って発生する一対のγ線の光子エネルギーである511keVの付近に設定される。これにより、電気的ノイズ信号や、散乱ガンマ線(消滅γ線の一方或いは両方が散乱物質により方向を変えられたγ線であり、散乱のためにエネルギーが減少している)に起因するノイズ信号等が除かれる。
【0038】
タイミングTの判定後も、シンチレータからの光検出器への蛍光入射は持続するため、蛍光入射光量の積算値を求めれば、入射した蛍光の強度、すなわち、エネルギーEを求めることができる。各検出器D内における蛍光の入射位置Pは、信号処理回路50において各フォトダイオードアレイからの信号強度の二次元的な重心位置を求めることにより、算出することができる。この位置Pは、必要に応じて、より精密な画像解析を行う場合に、用いることができる。
【0039】
TOF−PET装置は、複数の検出器Dからなる放射線検出器アレイ(検出装置106)と、信号処理回路50と、信号処理回路50の出力に基づいて、画像処理を行うコンピュータ51を有している。これらの構成は、リング状に配置された全ての検出器Dに採用されているが、説明の明確化のため、同図では1つの信号処理回路50を代表して示している。
【0040】
次に、被検体診断装置が、X線CT装置の場合について説明する。
【0041】
X線CT装置も、上述の構造のクレードル101とガントリ102を備えているが、ガントリ102はX線を出射するX線源(図示せず)を内蔵している。X線源からのX線が入射する位置に、複数の検出器Dが配置され、検出装置106が構成されている。
【0042】
図1のガントリ102の開口内に位置するクレードル101には被検体105が配置され、被検体105にはX線源からX線が照射される。被検体105を透過したX線は、複数の検出器Dにて検出され、この検出信号を、アンプ等を内蔵する信号処理回路50を介して、コンピュータ51に入力し、画像処理することで、被検体105の内部情報に関する画像、すなわちコンピュータ断層画像を得ることができる。X線CT装置の場合、検出器Dはガントリ102の開口軸の回りに回転させる構成としてよい。
【0043】
PET装置とX線CT装置を一体化している場合には、制御装置103は、PET装置で得られた画像と、X線CT装置で得られた画像とを重ねることができる。X線CT装置においては、実施形態に係る検出器Dを用いているので、高品質な画像を取得することが可能である。
【0044】
被検体105は、リング状に配置された検出装置106の中心に配置される。検出装置106は、回転軸AXを中心に回転する。図示しないX線源からは、被検体105にX線が照射され、これを透過したX線が複数の検出器D(n)に入射する。各検出器の出力は、信号処理回路50を経て、コンピュータ51に入力される。X線CT装置の制御装置103は、PET装置と同様に機能するディスプレイ52、CPU54、記憶装置53、入力装置55、画像処理回路56を備えている。
【0045】
入力装置55により、撮影の開始が指示されると、記憶装置53に格納されたプログラムが起動し、X線源駆動回路が制御され、この駆動回路からX線源に駆動信号が出力され、X線源からX線が出射される。また、記憶装置53に格納されたプログラムが起動し、ガントリ駆動モータを駆動し、検出装置106、ガントリ開口軸の周りに回転させ、更に、制御信号(検出器のON/OFF)を検出器Dに出力して、検出器DをONさせ、検出信号を、信号処理回路50を介して、コンピュータ51の画像処理回路56に入力する。画像処理回路56では、記憶装置53に入力された断層画像作成プログラムにしたがって、コンピュータ断層画像を作成する。作成された画像は、記憶装置53に格納され、ディスプレイ52に表示することができる。
【0046】
上述のように、記憶装置53には、画像処理等を行うプログラムが格納されており、中央処理装置(CPU)54からの指令により、当該プログラムは動作する。検査に必要な一連の操作(制御信号(検出器のON/OFF)の検出器Dへの出力、各種駆動モータの制御、検出器Dからの検出信号の取り込み、検出信号の画像処理、作成画像の記憶装置への格納、ディスプレイへの表示)は、入力装置55によって行うことができる。
【0047】
なお、各種プログラムは、従来の装置に搭載されているものを用いることができる。
【0048】
図3は、フォトダイオードアレイPDAの回路図である。
【0049】
光検出器D1は半導体チップを備えており、半導体チップの光感応領域内にフォトダイオードアレイPDAが形成されている。フォトダイオードアレイPDAは、複数のフォトダイオードPDと、各フォトダイオードPDにそれぞれ直列に接続されたクエンチング抵抗R1とを有している。各フォトダイオードPDのカソード同士は共通接続されており、アノード同士はクエンチング抵抗R1を介して共通接続されている。複数のフォトダイオードPDは、二次元的に配置される。
【0050】
また、全てのクエンチング抵抗R1は、電極又は配線E3を介して、電極パッドPADに接続されている。半導体チップでは、フォトダイオードPDのカソード側の電位(+)が、アノード側の電位(−)よりも相対的に高く設定される。アノードとなる電極パッドPADから信号が取り出される。なお、フォトダイオードにおけるカソードとアノードは置換して用いることもできるし、半導体チップにおける導電型には、N型とP型があるが、これらは互いに置換しても、同様の機能を奏することができる。
【0051】
なお、フォトダイオードPDは、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオード(APD)である。ガイガーモードでは、APDのブレイクダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)をAPDのアノード/カソード間に印加する。すなわち、アノードには基準値よりも低い(−)電位を、カソードには基準値よりも高い(+)電位を印加する。これらの電位の極性は相対的なものであり、一方の電位をグランド電位とすることも可能である。
【0052】
図4は、1つのフォトダイオードPD及びクエンチング抵抗R1の回路図(A)と、この構成を実現するための半導体チップ内の単位構造を示す図(B)である。半導体チップ内には、フォトダイオードアレイが形成されているので、同図の単位構造が二次元的に複数形成されている。
【0053】
半導体基板を構成する半導体領域12は、Siからなる、N型(第1導電型)の半導体基板である。フォトダイオードPDのアノードはP型(第2導電型)の半導体領域13(14)であり、カソードはN型の半導体領域12である。APDとしてのフォトダイオードPDに光子が入射すると、基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。半導体領域13のpn接合界面の近傍領域において、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は半導体領域12の裏面に形成された電極E4に向けて流れる。この電極E4は表面側に設けられていてもよい。すなわち、フォトダイオードPDに光子が入射すると、増倍されて、信号として、クエンチング抵抗R1に電気的に接続された電極又は配線E3から取り出される。配線E3は、上述の電極パッドPADに接続される。
【0054】
なお、クエンチング抵抗R1は、2層からなる絶縁層16、17のうち、上部の絶縁層17上に形成されており、半導体領域13よりも高不純物濃度の半導体領域14(光検出チャンネル)に電気的に接続されている。半導体基板の裏面には基板電位を与える電極E4が設けられており、電極E4は例えば正電位に接続されている。
【0055】
絶縁層16及び17には、コンタクトホールが設けられており、半導体領域14とクエンチング抵抗R1とは、コンタクトホール内のコンタクト電極及び配線E1を介して、電気的に接続されている。なお、配線E1及びE3は、絶縁層16上に形成されている。
【0056】
図5は、図4に示した単位構造の平面図である。なお、以下の平面図では絶縁層16,17の記載を省略して、内部構造をより明瞭に図示することとする。
【0057】
配線E1は絶縁層16,17(図7参照)に設けられたコンタクトホールを介して、クエンチング抵抗R1に接続されている。クエンチング抵抗R1は、絶縁層17に設けられたコンタクトホールを介して、その下層に位置する配線E3に接続されている(図7参照)。配線E3は、信号読出用の配線であって、絶縁層16上に形成され、半導体領域14の周囲を囲んでおり、四角環状の形状を有している。
【0058】
ここで、クエンチング抵抗R1は、半導体領域14上に位置しており、且つ、平面視において(XY平面をZ軸方向から見た場合において)、信号読出配線E3は、半導体領域14の周囲をリング状に囲むと共に、クエンチング抵抗R1は、屈曲すること無く直線的に延びている。
【0059】
図6は、複数の単位構造を備えてなるフォトダイオードアレイの平面図であり、図7は、図6のフォトダイオードアレイのA−A矢印縦断面構成を示す図である。
【0060】
全ての信号読出用の配線E3は、電極パッドPADに電気的に接続される。電極パッドPADは、絶縁層16上に形成されている。同図では、2行2列のフォトダイオードアレイが形成されているが、これはN行×M列であってもよい(N、Mは2以上の整数)。複数のフォトダイオードを備える構造では、1つの半導体領域13内に複数の半導体領域14が形成されている。なお、図7の断面図では、実際にはクエンチング抵抗R1は見えないが、説明を明瞭にするため、クエンチング抵抗R1を鎖線で示す。
【0061】
上述のように、クエンチング抵抗R1は、半導体領域14上に絶縁層16,17を介して位置しており、且つ、平面視において、信号読出配線E3は、個々の半導体領域14の周囲をリング状に囲むと共に、個々のクエンチング抵抗R1は、屈曲すること無く直線的に延びている。
【0062】
この光検出器によれば、信号読出配線E3が、半導体領域14の周囲をリング状に囲んでいるため、半導体領域14と信号読出配線E3との間は近くなり、これらの間にはキャパシタが構成されている。光子の入射に応答して半導体領域14で発生したキャリアの高周波成分(ピーク成分)は、当該キャパシタを介して、素早く外部に取り出される。ここで、クエンチング抵抗R1は、半導体領域14上に形成されているため、信号読出配線E3を上述の配置とすることができ、配線やクエンチング抵抗によって邪魔されることで半導体領域14の開口率を小さくしなくても良いため、画素当たりに検出する光量(感度)を大きくすることができる。また、クエンチング抵抗R1が屈曲することなく直線的に延びていることで、半導体領域14を覆う部分が小さくなり、開口率が大きくなるという利点もある。
【0063】
以上、説明したように、本実施形態の光検出器は、半導体基板12と、半導体基板12上に形成された半導体領域13(第1半導体領域)と、半導体領域13内に二次元状に複数形成され、半導体領域13よりも不純物濃度が高い半導体領域14(第2半導体領域)と、個々の半導体領域14にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗R1と、複数のクエンチング抵抗R1に電気的に接続された信号読出配線E3と、を備えている。
【0064】
ここで、半導体基板12と半導体領域13との間の界面、又は、半導体領域13と半導体領域14との間の界面において、pn接合を形成することができ、これらのpn接合によって、ガイガーモードで動作するAPDを構成している。
【0065】
半導体領域14は、不純物を半導体領域13内に拡散することによって形成される拡散領域であり、半導体領域13よりも高い不純物濃度を有している。本例(タイプ1)では、n型の半導体基板12(半導体領域)上に、p型の半導体領域13が形成され、半導体領域13の表面側に、高濃度にp型不純物が添加された半導体領域14が形成されている。したがって、フォトダイオードを構成するpn接合は、半導体領域12と半導体領域13との間に形成されている。
【0066】
なお、半導体基板の層構造としては、上記とは導電型を反転させた構造を採用することもできる。すなわち、(タイプ2)の構造は、p型の半導体領域12上に、n型の半導体領域13を形成し、半導体領域13の表面側に、高濃度にn型不純物が添加された半導体領域14を形成してなる。
【0067】
また、pn接合界面を、表面層側において形成することもできる。この場合、(タイプ3)の構造は、n型の半導体領域12上に、n型の半導体領域13が形成され、半導体領域13の表面側に、p型不純物を高濃度に添加した半導体領域14が形成される構造となる。なお、この構造の場合には、pn接合は、半導体領域13と半導体領域14との界面において形成される。
【0068】
もちろん、かかる構造においても、導電型を反転させることができる。すなわち、(タイプ4)の構造は、p型の半導体領域12上に、p型の半導体領域13が形成され、半導体領域13の表面側に、n型不純物を高濃度に添加した半導体領域14が形成される構造となる。
【0069】
図8は、改良した単位構造の平面図である。
【0070】
配線E1は絶縁層16,17(図10参照)に設けられたコンタクトホールを介して、クエンチング抵抗R1に接続されている。クエンチング抵抗R1は、絶縁層17に設けられたコンタクトホールを介して、その下層に位置する配線E3に接続されている(図10参照)。配線E3は、信号読出用の配線であって、絶縁層16上に形成され、半導体領域14の周囲を囲んでおり、四角環状の形状を有している。
【0071】
上述の実施形態と同様に、クエンチング抵抗R1は、半導体領域14上に位置しており、且つ、平面視において(XY平面をZ軸方向から見た場合において)、信号読出配線E3は、半導体領域14の周囲をリング状に囲むと共に、クエンチング抵抗R1は、屈曲すること無く直線的に延びているため、図5図7の構造の場合と同様の効果を奏する。
【0072】
この単位構造の図5に示したものとの相違点は、信号読出配線E3の形状のみであり、他の構造は、同一である。
【0073】
すなわち、平面視において、半導体領域14の外縁を規定する境界線BYは、信号読出配線E3によって覆われている。なお、前述の図5に示した構造の場合、境界線BYは、信号読出配線E3によって覆われていない。
【0074】
図9は、図8に示した単位構造を複数備えてなるフォトダイオードアレイの平面図であり、図10は、図9のフォトダイオードアレイのA−A矢印縦断面構成を示す図である。
【0075】
このフォトダイオードアレイの図6及び図7に示したものとの相違点は、信号読出配線E3の形状のみであり、他の構造は、同一である。
【0076】
すなわち、平面視において、信号読出配線E3は、半導体領域14と第1半導体領域13との間の境界線BY(半導体領域14の外縁)を覆っている。
【0077】
この光検出器によれば、信号読出配線E3が、境界線BYを覆うように、半導体領域14の周囲をリング状に囲んでいるため、半導体領域14と信号読出配線E3との間は非常に近くなり、これらの間にはキャパシタが構成されている。光子の入射に応答して半導体領域14で発生したキャリアの高周波成分(ピーク成分)は、当該キャパシタを介して、素早く外部に取り出される。
【0078】
また、信号読出配線E3が、上述の境界線BYを覆うことにより、半導体における境界線近傍の電位が安定し、出力信号が安定になる。ここで、クエンチング抵抗R1は、半導体領域14上に形成されているため、信号読出配線E3を上述の配置とすることができ、配線やクエンチング抵抗によって邪魔されることで、半導体領域14の開口率を小さくしなくても良いため、画素当たりに検出する光量(感度)を大きくすることができる。
【0079】
このように、上述の構造の光検出器によれば、出力信号のピーク及び感度を、同時に高め、また、更に安定性も得ることができる。
【0080】
また、この光検出器は、平面視において、信号読出配線E3は、半導体領域14と半導体領域13との間の境界線BYを全て覆っている。この場合、信号読出配線E3と半導体領域14との間に形成されるキャパシタの容量を大きくして、信号読出配線を介した出力信号のピークを高くすることができる。
【0081】
図11は、別の改良をしたフォトダイオードアレイの平面図である。なお、図11のA−A矢印断面構造は、図7と同一である。
【0082】
このフォトダイオードアレイの構造は、図6及び図7の構造と比較して、信号読出配線E3の形状のみが異なり、その他の構造は同一である。
【0083】
この光検出器は、平面視において、信号読出配線E3は、半導体領域14と半導体領域13との間の境界線BYのうち一部のみ(図面の右下の角部のみ)を覆っている。そして、信号読出配線E3における境界線BYを覆っている部分の信号読出配線E3の幅方向の寸法(X軸に沿って延びる配線に対してはY軸方向の寸法、Y軸に沿って延びる配線に対してはX軸方向の寸法)は、この部分に隣接する部分の幅方向の寸法よりも大きい。
【0084】
この場合、信号読出配線E3は、上記境界線BYの一部のみしか覆っていないが、幅方向の寸法が大きいので、キャパシタの容量を大きくして、信号読出配線を介した出力信号のピークを高くすることができる。
【0085】
図12は、時間t(ns)とフォトダイオードアレイの出力信号の強度I(a.u.)を示すグラフである。(A)は比較例の場合のデータを示し、(B)は実施例(図9の構造)の場合のデータを示す。
【0086】
なお、横軸の1つのメモリは5(ns)を示し、グラフの初期値の時刻t0は、−5(ns)の時刻を示す。また、画素サイズ(信号読出配線E3から構成される1つの環状の四角の一辺の長さ)は、50(μm)である。
【0087】
比較例では、図6の構造において、クエンチング抵抗の位置を、リング状の信号読出配線E3の外側に配置し、個々のリング状の信号読出配線E3を別の信号読出配線で接続して信号を読み出す構造とした。
【0088】
実施例の構造の場合、上述のように、第2半導体領域と信号読出配線が近接しているので、キャパシタを介した信号読出しが容易に行われ、信号強度Iのピークの高さが、比較例よりも高くなっていることが分かる。すなわち、シンチレータから出射された蛍光が光検出器に入射した際に、初期の段階で光検出器から出力される検出信号の波形ピークが、比較例よりも高くなっている。なお、入光量が増加すればピークの高さは増加する。
【0089】
以上、説明したように、上述の検出器は、半導体基板12と、半導体基板12上に形成された第1半導体領域13と、第1半導体領域13内に二次元状に複数形成され、第1半導体領域13よりも不純物濃度が高い第2半導体領域14と、個々の第2半導体領域14にそれぞれ電気的に接続された複数のクエンチング抵抗R1と、複数のクエンチング抵抗R1に電気的に接続された信号読出配線E3と、を備え、半導体基板12と第1半導体領域13との間の界面、又は、第1半導体領域13と第2半導体領域14との間の界面において、ガイガーモードで動作するAPDを構成するpn接合が形成された光検出器であり、クエンチング抵抗R1は、第2半導体領域14上に位置しており、且つ、平面視において、信号読出配線E3は、個々の第2半導体領域14の周囲をリング状に囲み、出力信号強度ピークが高くなっている。
【0090】
最後に、各要素の材料について説明する。
【0091】
上述のクエンチング抵抗R1は、これが接続される信号読出配線E3よりも抵抗率が高い。クエンチング抵抗R1は、たとえばポリシリコン等からなる。抵抗R1の形成方法としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。抵抗R1を構成する抵抗体としては、その他、SiCr、NiCr、TaNi、FeCrなどが挙げられる。
【0092】
上述の電極はアルミニウムなどの金属からなる。半導体基板がSiからなる場合には、電極材料としては、アルミニウムの他に、AuGe/Niなどもよく用いられる。なお、信号取出構造として、貫通電極とバンプを用いることもできる。
【0093】
Siを用いた場合におけるp型不純物としては、Bなどの3族元素が用いられ、n型不純物としては、N、P又はAsなどの5族元素が用いられる。半導体の導電型であるn型とp型は、互いに置換して素子を構成しても、当該素子を機能させることができる。これらの不純物の添加方法としては、拡散法やイオン注入法を用いることができる。
【0094】
上述の絶縁層の材料としては、SiO又はSiNxを用いることができ、絶縁層の形成方法としては、各絶縁層がSiOからなる場合には、熱酸化法又はスパッタ法を用いることができる。
【0095】
なお、上述の半導体構造における各層の導電型、不純物濃度及び厚みの好適な範囲は以下の通りである。
【0096】
(タイプ1)半導体領域12
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ2)
半導体領域12
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ3)
半導体領域12
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
(タイプ4)
半導体領域12
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/5×1011〜1×1020cm−3/30〜700μm)
半導体領域13
(導電型/不純物濃度/厚み)
(p型/1×1014〜1×1017cm−3/2〜50μm)
半導体領域14
(導電型/不純物濃度/厚み)
(n型/1×1018〜1×1020cm−3/10〜1000nm)
【0097】
なお、上記実施形態では、信号読出配線が第2半導体領域の外縁を構成する境界線の全てを覆っていたが、多少、覆っていない箇所があっても、基本的には上記と同様の効果を奏する。この場合、第2半導体領域の周縁において、信号読出配線に覆われていない境界線の長さよりも、信号読出配線に覆われた境界線の長さの方が長くなり、信号読出配線が第2半導体領域の外縁を構成する複数辺において境界線を覆うことになる。
【0098】
以上説明したように、上述の光検出器によれば、出力信号のピーク及び光量を、同時に高め、また、更に安定性も向上させることができる。また、かかる光検出器を有する検出器は、PET装置やCT装置などの被検体診断装置に適用することができ、その出力信号から高精度な画像を形成することができる。
【符号の説明】
【0099】
SC…シンチレータ、R1…クエンチング抵抗、D1…光検出器、12…半導体基板、13…第1半導体領域、14…第2半導体領域(光検出チャンネル)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12