特許第6162598号(P6162598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162598
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】潜熱熱交換器及びそれを備えた給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 8/00 20060101AFI20170703BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20170703BHJP
   F24H 1/14 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   F24H8/00
   F24H9/00 B
   F24H1/14 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-268369(P2013-268369)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124920(P2015-124920A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃史
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 英克
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−32369(JP,A)
【文献】 特開2008−138992(JP,A)
【文献】 特開2012−137252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0288813(US,A1)
【文献】 特開2014−70800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 8/00
F24H 1/14
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方開放部を有し、内部が燃焼排気の流路となる略矩形箱状のケース本体と、
前記ケース本体内に収容される複数の吸熱管と、
前記ケース本体の上方開放部を閉塞する天板と、を備え、
前記ケース本体の内部は、燃焼排気の流路と略平行に配設される仕切壁によって、第1配管収容室と、第1配管収容室より小容積の第2配管収容室とに分割されており、
前記第1、第2配管収容室には、直管部と、略半円弧状に曲成された折り返し部とを繰り返し連続させた配管構造を有する第1、第2吸熱管がそれぞれ所定数上下に重なり合うように収容され、
前記直管部は、前記燃焼排気の流路と略直交するように、前記仕切壁とそれに対向する前記第1、第2配管収容室各々の第1、第2側壁とに向かって延びると共に、その上流側端部及び下流側端部はそれぞれ、前記第1、第2側壁に支持固定され、
前記天板は、前記第1、第2配管収容室をそれぞれ閉塞する第1、第2天板本体部が一体に形成されていると共に、その外周縁全域は上方に屈曲されて起立部が形成されており、
前記第1天板本体部は、前記第1側壁側の外周縁の起立部から、前記第1吸熱管の直管部が延在する方向と略平行に連設された上方に凸の凸条からなる第1絞り部を有する潜熱熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の潜熱熱交換器において、
前記第1天板本体部と、前記仕切壁の近傍に位置する最上層の第1吸熱管の折り返し部との間に、前記折り返し部を押圧する押さえ部材が設けられ、
前記第1、第2天板本体部の境界部分の前記仕切壁に沿った位置に、前記天板の外周縁の起立部を連結する上方に凸の凸条からなる境界絞り部が設けられる潜熱熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の潜熱熱交換器において、
前記第2配管収容室に収容されている第2吸熱管の本数は、前記第1配管収容室に収容されている第1吸熱管のそれよりも少なく、且つ上下方向で隣接する第2吸熱管の間隙は、上下方向で隣接する第1吸熱管のそれと略同等に設定されており、
前記第2天板本体部は、第2天板本体部と、最上層の第2吸熱管との間隙を狭めるように下方に凸の第2絞り部を有する潜熱熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の潜熱熱交換器を備えた給湯装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排気中の水蒸気を凝縮させて潜熱を回収する潜熱熱交換器、及び該潜熱熱交換器を備えた給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、器具本体内に、顕熱熱交換器と潜熱熱交換器とを有する、所謂、コンデンシング型の給湯装置が知られている。この種の給湯装置においては、顕熱熱交換器により燃焼排気の顕熱が吸収された後、さらに潜熱熱交換器により燃焼排気の潜熱が吸収される。
【0003】
上記給湯装置に組み込まれる潜熱熱交換器としては、小型化や高熱効率化を実現するため、図6に示すように、ケース本体(4)の両側壁(45)(46)へ向かって延びる直管部(50a)と円弧状の折り返し部(50b)とを繰り返し連続させた配管構造の吸熱管(50)を複数本、上下に重ね合わせて配設し、これら各吸熱管(50)をケース本体(4)の一方の側壁(45)に設けたヘッダ(60)(70)を介して一括して外部配管へ接続し、ケース本体(4)の上方開放部を天板(40)によって被覆して構成されたものが知られている。
【0004】
また、上記のような一方の側壁(45)に設けたヘッダ(60)(70)と吸熱管(50)とを接続させた潜熱熱交換器と顕熱熱交換器とを上下に配設した給湯装置以外に、給湯用の加熱回路と追焚き用あるいは暖房用の加熱回路の複数の加熱回路を備えた給湯装置が知られている(例えば、特許文献2)。この給湯装置に用いられる潜熱熱交換器では、図7に示すように、ケース本体(44)内を仕切壁(W)によって、給湯用の第1吸熱管(5a)を収容させる第1配管収容室(4a)と、追焚き等用の第2吸熱管(5b)を収容させる第2配管収容室(4b)とに分割し、第1吸熱管 (5a)と第2吸熱管(5b)の上流側端部及び下流側端部をそれぞれ、ケース本体(44)の第1側壁(43a)及び第2側壁(43b)に設けたヘッダを介して外部配管に接続している。
【0005】
一般に、給湯用の加熱回路には、追焚き等用の加熱回路よりも大きな供給能力が要求されるため、上記のように第1吸熱管(5a)及び第2吸熱管(5b)を1つのケース本体(44)内に収容させる場合、第1吸熱管(5a)の長さを第2吸熱管(5b)のそれよりも長尺とし、第1配管収容室(4a)が第2配管収容室(4b)よりも大きな容積となるように仕切壁(W)がケース本体(44)の長手方向で第2側壁(43b)寄りに設けられる。
【0006】
ところで、上記のような仕切壁(W)で分割された第1、第2配管収容室(4a)(4b)を有する潜熱熱交換器において、各第1、第2配管収容室(4a)(4b)で高い熱効率を得るためには、ケース本体(44)内で第1、第2吸熱管(5a)(5b)に接触しない燃焼排気の短絡流路が形成されることを防ぎ、燃焼排気をできるだけ、第1、第2吸熱管(5a)(5b)に接触させながら流通させることが望まれる。このため、特許文献2では、仕切壁(W)近傍に側方整流板(51)を設けることが提案されている。
【0007】
しかしながら、側方整流板(51)を設けることにより、ケース本体(44)内での長手方向における燃焼排気の短絡流路の形成は防ぐことができるものの、さらにケース本体(44)内での上下方向における燃焼排気の第1、第2吸熱管(5a)(5b)への接触を改善して熱効率を向上させることが望まれる。
【0008】
また、特許文献2では、給湯用の第1配管収容室(4a)と追焚き等用の第2配管収容室(4b)にそれぞれ、同一本数の第1、第2吸熱管(5a)(5b)が収容されているが、給湯用の加熱回路と追焚き等用の加熱回路とで供給能力に大きな差がある場合、第2配管収容室(4b)に収容される第2吸熱管(5b)は第1配管収容室(4a)に収容される第1吸熱管(5a)よりも少数で足りる。このような第1吸熱管(5a)と第2吸熱管(5b)の本数が異なる場合、熱効率を考慮して上下方向で隣接する第2吸熱管(5b)の間隙を、第1吸熱管(5a)のそれと略同等に設定すると、第2配管収容室(4b)では第2吸熱管(5b)全体の高さが低くなるため、第2吸熱管(5b)と天板(40a)あるいはケース本体(44)の底壁との間隙が広くなり過ぎ、通気抵抗の小さなこれらの間隙を燃焼排気が通過してしまい、短絡流路が形成されて熱効率が低下するという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献1の潜熱熱交換器では、ケース本体(4)の一方の側壁(45)に片持ち状態で吸熱管(50)が支持されていることに起因する運転時の吸熱管(50)の振動を防止するために、ケース本体(4)の両側壁(45)(46)寄りの底壁に、最下位に配設された吸熱管(50)の前記折り返し部を下方から当接支持する支持凸部(図示せず)を突設させると共に、それに対応する天板(40)の両短辺に沿って、ケース本体(4)内の最上位に位置する吸熱管(50)の前記折り返し部を上方から各別に押圧当接するための押さえ部材(図示せず)が具備されている。
【0010】
しかしながら、複数の加熱回路を有する潜熱熱交換器で上記のような仕切り壁近傍に押さえ部材を設けると、ロウ付け工程等の製造工程で熱応力がケース本体(44)、天板(40a)や、第1、第2吸熱管(5a)(5b)に働いたときに、前記押さえ部材の反力で、剛性の低い天板(40a)の中央域が変形しやすくなり、第1、第2吸熱管(5a)(5b)と天板(40a)との間に不要な間隙が生じてしまう。このように、天板(40a)と第1、第2吸熱管(5a)(5b)との間に不要な間隙が生じると、運転時に燃焼排気が広くなった間隙へ短絡し、熱効率が低下するだけでなく、吸熱管の振動を十分に抑制できなくなるといった問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−130348号公報
【特許文献2】特開2012−137252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ケース本体内が仕切壁により容積の異なる2つの配管収容室に分割され、各配管収容室にそれぞれ異なる加熱回路を構成する吸熱管が収容された潜熱熱交換器において、各配管収容室での熱効率の向上を図ることが可能な潜熱熱交換器、及びそれを備えた給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
上方開放部を有し、内部が燃焼排気の流路となる略矩形箱状のケース本体と、
前記ケース本体内に収容される複数の吸熱管と、
前記ケース本体の上方開放部を閉塞する天板と、を備え、
前記ケース本体の内部は、燃焼排気の流路と略平行に配設される仕切壁によって、第1配管収容室と、第1配管収容室より小容積の第2配管収容室とに分割されており、
前記第1、第2配管収容室には、直管部と、略半円弧状に曲成された折り返し部とを繰り返し連続させた配管構造を有する第1、第2吸熱管がそれぞれ所定数上下に重なり合うように収容され、
前記直管部は、前記燃焼排気の流路と略直交するように、前記仕切壁とそれに対向する前記第1、第2配管収容室各々の第1、第2側壁とに向かって延びると共に、その上流側端部及び下流側端部はそれぞれ、前記第1、第2側壁に支持固定され、
前記天板は、前記第1、第2配管収容室をそれぞれ閉塞する第1、第2天板本体部が一体に形成されていると共に、その外周縁全域は上方に屈曲されて起立部が形成されており、
前記第1天板本体部は、前記第1側壁側の外周縁の起立部から、前記第1吸熱管の直管部が延在する方向と略平行に連設された上方に凸の凸条からなる第1絞り部を有する潜熱熱交換器である。
【0014】
仕切壁によって二分されたケース本体内の第1、第2配管収容室のそれぞれには、直管部と折り返し部とを有する第1、第2吸熱管が収容される。そして、第1配管収容室を閉塞する第1天板本体部には、第1側壁側の外周縁の起立部から第1吸熱管の直管部が延在する方向と平行に、上方に凸の凸条からなる第1絞り部が設けられている。これにより、燃焼排気がケース内の上方を流通するとき、第1絞り部近傍で乱流を形成することができる。また、上記第1絞り部は燃焼排気の流路と略直交する態様で形成されるから、第1絞り部で燃焼排気の短絡流路が形成されるのも防止できる。しかも、第1絞り部は、天板の中央域よりも変形に対して高い剛性を有する第1側壁側の外周縁の起立部から延在しているから、ロウ付け工程等の製造工程での熱応力による天板の変形も効果的に抑えることができる。これにより、第1配管収容室において、高い熱効率を得ることができる。
【0015】
上記潜熱熱交換器において、好ましくは、
前記第1天板本体部と、前記仕切壁の近傍に位置する最上層の第1吸熱管の折り返し部との間に、前記折り返し部を押圧する押さえ部材が設けられ、
前記第1、第2天板本体部の境界部分の前記仕切壁に沿った位置に、前記天板の外周縁の起立部を連結する上方に凸の凸条からなる境界絞り部が設けられる。
【0016】
上記潜熱熱交換器では、第1配管収容室における仕切壁側に位置する吸熱管の折り返し部が振動するのを防止するために、第1天板本体部と、最上層の第1吸熱管の折り返し部との間に、折り返し部を押圧する押さえ部材が設けられているから、ロウ付け工程等の製造工程における押さえ部材の反力により天板の中央域が変形し、天板と仕切壁近傍の最上層の第1及び第2吸熱管との間隙が広がりやすい。
しかしながら、上記潜熱熱交換器によれば、第1、第2天板本体部の境界部分であって、燃焼排気の流路と略平行に配設されている仕切壁に沿った位置に、天板の長手方向に沿った外周縁の起立部相互を連結する上方に凸の凸条からなる境界絞り部が設けられているから、天板の中央域の剛性を向上させることができ、天板の変形を抑えることができる。これにより、仕切壁近傍における天板と最上層の吸熱管との間隙の広がりが抑えられ、第1、第2配管収容室いずれでも高い熱効率を得ることができる。
【0017】
上記潜熱熱交換器において、好ましくは、
前記第2配管収容室に収容されている第2吸熱管の本数は、前記第1配管収容室に収容されている第1吸熱管のそれよりも少なく、且つ上下方向で隣接する第2吸熱管の間隙は、上下方向で隣接する第1吸熱管のそれと略同等に設定されており、
前記第2天板本体部は、第2天板本体部と、最上層の第2吸熱管との間隙を狭めるように下方に凸の第2絞り部を有する。
【0018】
第2配管収容室に収容されている第2吸熱管の本数が第1配管収容室に収容されている第1吸熱管の本数よりも少ないが、上下方向で隣接する第1、第2吸熱管の各間隙が略同程度に設けられている場合、第1吸熱管全体の高さよりも第2吸熱管全体の高さが低くなる。その結果、天板と最上層に位置する第2吸熱管との間の間隙が大きくなり、第2配管収容室内の上方で燃焼排気の短絡流路が形成されてしまい、燃焼排気が最上層の第2吸熱管と十分に接触せず、熱効率が低下する。
しかしながら、上記潜熱熱交換器では、本数の少ない第2吸熱管が収容されている第2配管収容室を閉塞する第2天板本体部は、最上層に位置する第2吸熱管と第2天板本体部との間隙を狭めるよう下方に凸の第2絞り部が設けられているから、燃焼排気の短絡流路の形成を防いで、最上層の第2吸熱管に燃焼排気を十分に接触させることができる。これにより、本数の少ない第2吸熱管が収容された第2配管収容室でも高い熱効率を得ることができる。
【0019】
そして、本発明によれば、上記に記載の潜熱熱交換器を用いることにより、2つの加熱回路を有する高熱効率の給湯装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、ケース内を燃焼排気が流通するときの最上層の第1吸熱管への燃焼排気の接触を改善できる。また、第2吸熱管の本数が第1吸熱管の本数よりも少ない場合でも、最上層への第2吸熱管への燃焼排気の接触を改善できる。さらに、製造工程における天板の変形を抑えて、最上層の第1、第2吸熱管への燃焼排気の接触が低下するのを防止できる。これにより、高い熱効率を有する潜熱熱交換器、及びそれを用いた給湯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る潜熱熱交換器の分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る潜熱熱交換器の斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る給湯装置を示す構成図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る潜熱熱交換器の分解斜視図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る潜熱熱交換器の断面図である。
図6】従来の潜熱熱交換器の斜視図である。
図7】他の従来の潜熱熱交換器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態に係る潜熱熱交換器、およびその潜熱熱交換器を備えた給湯装置について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1及び図2に示すものは、本実施の形態に係る潜熱熱交換器であり、図3に示す給湯用と追焚き等用の2つの加熱回路を有する給湯装置に用いることができる。
この潜熱熱交換器は、ステンレス等の耐腐食性を有する薄肉金属板製のケース本体(1)と、ケース本体(1)の上方開口部を閉塞する天板(2)とを備えている。ケース本体(1)は、一枚の金属板を絞り加工することにより、前後壁(17)(16)、両側壁(11a)(12a)、及び底壁(18)が一体成形され、上方に上方開放部を有する略矩形箱状に形成されており、ケース本体(1)の内部は、ケース本体(1)の上方開放部が天板(2)で閉塞されたときに、ケース本体(1)内を流通する燃焼排気の流路と略平行に配設される仕切壁(3)により、ケース本体(1)の一方の第1側壁(11a)側に位置する第1配管収容室(11)と、他方の第2側壁(12a)側に位置する第2配管収容室(12)とに分割されている。仕切壁(3)がケース本体(1)の長手方向の中心よりも第2側壁(12a)寄りに配置されることにより、第1配管収容室(11)の容積の方が第2配管収容室(12)よりも大きく構成されている。なお、本明細書では、略矩形箱状のケース本体(1)の長辺が延在する方向を長手方向、ケース本体(1)高さ方向を上下方向という。
【0024】
これら第1、第2配管収容室(11)(12)各々に収容される第1、第2吸熱管(31)(32)はいずれも、ステンレス等の耐腐食性を有する金属から形成されており、ケース本体(1)の長手方向に延びる断面円形状の直管部(31a)(32a)と、これら直管部(31a)(32a)の端部から半円弧状に曲がる断面楕円形状の折り返し部(31b)(32b)とが同一平面状で繰り返し連続する蛇行配管構造を有しており、それぞれ上下に6本ずつ等間隔(例えば、ピッチ8mm)に重なり合った状態で第1、第2配管収容室(11)(12)内に収容されている。
なお、第1配管収容室(11)に収容される第1吸熱管(31)の直管部(31a)は、第2配管収容室(12)に収容される第2吸熱管(32)の直管部(32a)よりも長く設定されている。
【0025】
第1、第2吸熱管(31)(32)の上流側端部はそれぞれ、第1、第2側壁(11a)(12a)に形成されている上流端挿通孔(図示せず)に挿通されると共に、流入ヘッダ(13a)(13b)と接続され、下流側端部は、下流側挿通孔(図示せず)に挿通されると共に、流出ヘッダ(14a)(14b)に接続される。これにより、第1、第2吸熱管(31)(32)はそれぞれ、第1、第2側壁(11a)(12a)に片持ち状態で取り付けられる。流入ヘッダ(13a)(13b)へ供給された水が複数の第1、第2吸熱管(31)(32)を介して流出ヘッダ(14a)(14b)側へ流れ、燃焼排気中の水蒸気が第1、第2吸熱管(31)(32)の表面で凝縮する際にその潜熱が回収される。
【0026】
ケース本体(1)の上方開放端には、その内周縁からさらに外方へ向かって水平に屈曲させた天板載置部(15)が張り出しており、この天板載置部(15)の上面に、後述する天板(2)の外周縁に設けられるフランジ部(24)が載置されてネジ止め及びツメカシメにより接合される。
【0027】
仕切壁(3)は、図1に示すように、第1配管収容室(11)を構成する第1壁(3a)と、第2配管収容室(12)を構成する第2壁(3b)とを備えた上方に開放する断面略コ字状に形成されている。仕切壁(3)の第1、第2壁(3a)(3b)の上端からは、天板(2)の下面とスポット溶接等により接続するための第1、第2フランジ片(30a)(30b)がそれぞれ、仕切壁(3)近傍に位置する第1、第2吸熱管(31)(32)の折り返し部(31b)(32b)の上方を覆うように、第1、第2配管収容室(11)(12)側に向かって張り出している。なお、図示しないが、仕切壁(3)は、ケース本体(1)の上方開放部を天板(2)で閉塞したときに、仕切壁(3)の下端がケース本体(1)の底壁(18)から僅かに離間する長さに設定されている。これにより、運転時に第1、第2配管収容室(11)(12)で発生するドレンが底壁(18)上を流れ、ドレン排水口から外部に排出される。
【0028】
また、第1配管収容室(11)内の最上層に配設された第1吸熱管(31)の、第1壁(3a)近傍に位置する折り返し部(31b)は、天板(2)の下面の、第1フランジ片(30a)よりもやや中央寄りに設けられた押さえ部材(33)によって上方から押圧される。さらに、第1側壁(11a)側に位置する折り返し部(31b)に対応する天板(2)の下面にも、同様な押さえ部材(34)が配設されている。これら押さえ部材(33)(34)は、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板によって形成された上下方向に所定の弾性を有する板バネであり、天板(2)の下面にスポット溶接等により取り付けられる。
【0029】
図2に示すように、ケース本体(1)の後壁(16)には、給湯装置の器具本体側から供給される燃焼排気をケース本体(1)の第1配管収容室(11)内へ導入するための第1排気入口(10a)と、第2配管収容室(12)内へ導入するための第2排気入口(10b)が、バーリング加工により、ケース本体(1)の長手方向に沿って略矩形状に開放しており、それに対向する前壁(17)には、図1に示すように、1つの略長円形状の排気出口(10c)がケース本体(1)の長手方向に沿って開放している。
これにより、ケース本体(1)と天板(2)とを接合した状態において、ケース本体(1)の内部空間には、上記した排気入口(10a)(10b)から排気出口(10c)に至る燃焼排気の流路が、第1、第2吸熱管(31)(32)の直管部(31a)(32a)と略直交する態様で第1、第2配管収容室(11)(12)をそれぞれ横切るように形成される。
【0030】
天板(2)は、ケース本体(1)と同じく、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板を絞り加工することによって、第1配管収容室(11)の上方を覆う第1天板本体部(21)と、第2配管収容室(12)の上方を覆う第2天板本体部(22)とが一体的に連続する略平板状であり、天板(2)全体の外周縁を上方に屈曲させて起立部(23)を形成すると共に、起立部(23)の上端から水平にフランジ部(24)が外方へ張り出している。
起立部(23)は、ケース本体(1)全体の上方開口部の内周縁に内嵌する大きさに形成されており、フランジ部(24)は、上記したように、ケース本体(1)の天板載置部(15)に載置され、気密性を確保しながらネジ止め及びツメカシメされる。
【0031】
第1天板本体部(21)には、第1側壁(11a)寄りの起立部(23)から仕切壁(3)側に向かって、上方に凸の凸条からなる2本の第1絞り部(25a)(25b)が、天板(2)の長手方向に対して略平行に形成されている。この第1絞り部(25a)(25b)は、ケース本体(1)の上方開放部を天板(1)で閉塞させたときに、一方の第1絞り部(25a)が、図1における最上層の第1吸熱管(31)の直管部(31a)の左から2本目と3本目との間に位置し、他方の第1絞り部(25b)が、4本目と5本目との間に位置するようにそれぞれ設けられている。
また、天板(2)における仕切壁(3)の第1、第2壁(3a)(3b)間に対応する箇所には、第1、第2天板本体部(21)(22)の境界部分に沿った箇所を上方へ絞ることにより、1本の凸条からなる境界絞り部(20)が形成されている。
これら第1絞り部(25a)(25b)及び境界絞り部(20)を、天板(2)の起立部(23)に連設するように設けることにより、天板(2)の剛性を向上することができる。なお、第1絞り部は、1本でもよいし、3本以上であってもよい。
【0032】
本実施の形態1の潜熱熱交換器を製造するにあたっては、所定形状に成形したケース本体(1)の第1配管収容室(11)に第1吸熱管(31)を、第2配管収容室(12)に第2吸熱管(32)をそれぞれ収容し、それらの上流側端部及び下流側端部をそれぞれ第1、第2側壁(11a)(12a)に形成されている上流端挿通孔及び下流端挿通孔に挿通させると共に、第1、第2側壁(11a)(12a)の外面に配置させた流入ヘッダ(13a)(13b)及び流出ヘッダ(14a)(14b)と接続させ、それぞれの境界部分にロウ材を塗布して仮固定する。
【0033】
上記とは別に、所定形状に成形した天板(2)の下面に、仕切壁(3)、及び押え部材(33)(34)を接合する。そして、天板(2)の起立部(23)がケース本体(1)の上方開放部の内周縁に内嵌するように、天板(2)をケース本体(1)の上方開放部に被覆させ、天板載置部(15)にフランジ部(24)を載置する。次いで、フランジ部(24)を天板載置部(15)にネジ止め及びツメカシメすることにより、ロウ付け処理されるサブアセンブリが形成される。このとき、第1配管収容室(11)内の最上層に配設された第1吸熱管(31)の、第1壁(3a)近傍に位置する折り返し部(31b)は押さえ部材(33)によって上方から押圧され、第1側壁(11a)側に位置する折り返し部(31b)は押さえ部材(34)によって押圧される態様となる。この状態のサブアセンブリを炉中に投入してロウ付け処理を行うことにより、潜熱熱交換器を製造することができる。
【0034】
上記のようにして製造される潜熱熱交換器において、第1吸熱管(31)の直管部(31a)は、第1配管収容室(11)内で、仕切壁(3)とそれに対向する第1側壁(11a)との間にて、燃焼排気の流路と略直交するよう、ケース本体(1)の長手方向と略平行に配置されている。一方、第1配管収容室(11)を閉塞する第1天板本体部(21)には、最上層の隣接する第1吸熱管(31)の直管部(31a)の間隙と対向する位置に、第1側壁(11a)側の外周縁に形成した起立部(23)から第1吸熱管(31)の直管部(31a)が延在する方向と略平行な凸条の第1絞り部(25a)(25b)が設けられているから、ケース本体(1)内の上方開放部を天板(2)で閉塞させた状態では、第1絞り部(25a)(25b)は燃焼排気の流路と略直交する態様で配置される。従って、上方に凸状の第1絞り部(25a)(25b)を設けても、ケース本体(1)の上方で燃焼排気の短絡流路が形成され難い。また、上方に凸の第1絞り部(25a)(25b)を設けることにより、燃焼排気がケース本体(1)内の上方を流通するとき、第1絞り部(25a)(25b)近傍で乱流を形成することができるから、燃焼排気と第1吸熱管(31)との接触を向上させることができる。これにより、第1配管収容室(11)において、高い熱効率を得ることができる。
【0035】
また、境界絞り部(20)は、燃焼排気の流路と略平行に形成されているが、境界絞り部(20)は、第1配管収容室(11)と第2配管収容室(12)を仕切る仕切壁(3)の第1、第2壁(3a)(3b)間に設けられているから、排気入口(10a)(10b)からの燃焼排気は境界絞り部(20)を通過しない。よって、境界絞り部(20)により燃焼排気の短絡流路が形成されることもない。
【0036】
さらに、上記ロウ付け工程においては、ケース本体(1)、天板(2)や、第1、第2吸熱管(31)(32)に働く熱応力により生じた押さえ部材(33)(34)の反力が、剛性の低い天板(2)に作用する。しかしながら、押さえ部材(33)の配設位置近傍の、仕切壁(3)に沿った所定位置には、天板(2)の長手方向に沿って位置する起立部(23)相互を連結するように境界絞り部(20)が形成され、押さえ部材(34)が設けられている第1天板本体部(21)には、第1側壁(11a)側の起立部(23)から延在する2本の第1絞り部(25a)(25b)が形成されて、天板(2)の剛性を向上させているから、押さえ部材(33)(34)の反力による天板(2)の変形を防ぐことができる。その結果、製造工程における天板(2)と最上層の第1、第2吸熱管(31)(32)の間隙の広がりが抑えられ、ケース本体(1)内の上方で短絡通路が形成されるのを防止できる。これにより、第1、第2配管収容室(11)(12)いずれでも高い熱効率を得ることができる。また、押さえ部材(33)(34)を第1吸熱管(31)の折り返し部(31b)に確実に当接させることができるので、運転時における第1吸熱管(31)の振動に起因する騒音等を防止できる。
【0037】
図3は、上記潜熱熱交換器を有する給湯装置の一例を示す構成図である。
この給湯装置においては、第1ガスバーナ(35a)によって発生された燃焼排気が送風ファン(36a)によって第1顕熱熱交換器(37a)に送られて顕熱が回収され、さらに潜熱熱交換器の第1配管収容室(11)に送られて潜熱が回収される。同様に、第2ガスバーナ(35b)によって発生された燃焼排気が送風ファン(36b)によって第2顕熱熱交換器(37b)に送られて顕熱が回収され、さらに潜熱熱交換器の第2配管収容室(12)に送られて潜熱が回収される。従って、この給湯装置によれば、例えば、一方の加熱回路を給湯用の温水加熱回路に使用し、他方の加熱回路を追い焚き用の風呂加熱回路に使用することができる。
【0038】
なお、本実施の形態の潜熱熱交換器と、第1絞り部(25a)(25b)及び境界絞り部(20)を設けていない天板を用いた潜熱熱交換器で、ガス種、大気圧、気温、酸素濃度、窒素濃度、燃焼排気の総発熱量、燃焼排気の比重、燃焼排気の温度等の各種条件が等しい試験環境で水基準の熱効率を比較してみたところ、第1絞り部(25a)(25b)及び境界絞り部(20)のない天板を有する潜熱熱交換器を用いたときの熱効率と比較して、本実施の形態1の潜熱熱交換器を用いたときの熱効率を約0.4%向上できることが確認された。
【0039】
(実施の形態2)
図4及び図5に示すものは、本発明の第2番目の実施の形態に係る潜熱熱交換器である。
この潜熱熱交換器は、第2吸熱管(32)の本数が第1吸熱管(31)よりも少ないこと、第2天板本体部(22a)に第2絞り部(26)が形成されていること、境界絞り部が形成されていないこと、及び排気入口がケース本体の底壁に形成されていること以外は、上記第1番目の実施の形態の潜熱熱交換器と同様である。このため、第1番目の実施の形態と異なる部分のみを説明し、同様の構成については、同一の引用番号を使用して、説明を省略する。
【0040】
図に示すように、ケース本体(1a)の底壁(18)の後壁(16)寄りには、図示しないが、第1配管収容室(11)に燃焼排気を導入するための第1排気入口と、第2配管収容室(12)に燃焼排気を導入するための第2排気入口がバーリング加工により長手方向に沿った略矩形状に開放している。従って、ケース本体(1a)の内部空間には、下方の排気入口から排気出口(10c)に至る燃焼排気の流路が、第1、第2吸熱管(31)(32)の直管部(31a)(32a)と略直交する態様で形成される。
【0041】
ケース本体(1a)内は、仕切壁(3)によって第1配管収容室(11)と第2配管収容室(12)に分割され、第2配管収容室(12)に収容されている第2吸熱管(32)の本数が、第1配管収容室(11)に収容されている第1吸熱管(31)よりも少なく設定されている。
【0042】
具体的には、第1吸熱管(31)は、上記と同様に、6本上下に重ねられて収容されているのに対し、第2吸熱管(32)は4本収容されている。従って、熱効率を考慮して各吸熱管(31)(32)を同じ間隔(例えば、ピッチ8mm)で上下に重ね合わせると、第1吸熱管(31)全体の高さは、第2吸熱管(32)全体の高さよりも、配管2本分ほど高くなる。それゆえ、平板状の天板を用いると、天板と最上層の第2吸熱管(32)との間隙が大きくなり、この間隙の通気抵抗が低くなるため、燃焼排気の短絡流路が形成されてしまう。
【0043】
このため、本実施の形態では、第2天板本体部(22a)に、外周縁を除く全体が下方に凸状に突出するよう深絞りした第2絞り部(26)が形成されている。これにより、第2天板本体部(22a)と最上層の第2吸熱管(32)全体との間隙を狭めることができる。また、第2絞り部(26)は、第2天板本体部(22a)の外周縁の起立部(23)から連設して形成されているから、ロウ付け工程等の製造工程で第1、第2吸熱管(31)(32)に熱応力が働いても、天板(2)の中央域における変形を効果的に抑えることができる。
【0044】
従って、第1配管収容室(11)に収容される加熱回路に要求される供給能力と、第2配管収容室(12)に収容される加熱回路に要求される供給能力とに大きな差がある給湯装置で、第1吸熱管(31)よりも少ない第2吸熱管(32)が収容された潜熱熱交換器が用いられる場合でも、第2配管収容室(12)における熱効率の低下を顕著に改善することができる。
【0045】
なお、第2吸熱管(32)の上流側端部及び下流側端部を第2側壁(12a)の上方に接続し、ケース本体(1a)内の上方に第2吸熱管(32)群を収容することにより、平板状の天板(2)を用いることも考えられるが、この場合、ケース本体(1)の底壁(18)を上方に凸状に深絞りする必要がある。それゆえ、第1配管収容室(11)と第2配管収容室(12)で底壁(18)に段差が生じ、ドレンの排出が困難となる。従って、本実施の形態のように第2絞り部(26)を形成した第2天板本体部(22a)を有する天板(2a)を用いることにより、いずれの配管収容室からもドレンを円滑に排出させることができる。
【0046】
また、上記実施の形態2では、第1天板本体部(21)と第2天板本体部(22a)との間に上方に凸状の境界絞り部が設けられていないが、必要に応じて、境界絞り部を設けてもよい。
上記実施の形態では、第1絞り部(25a)(25b)は、第1吸熱管(31)の隣接する直管部(31a)間の隙間に対向する位置に設けるようにしたが、直管部(31a)に対向する位置に設けても良い。
【符号の説明】
【0047】
(1)(1a) ・・・・・・・・ケース本体
(11)(12)・・・・・・第1、第2配管収容室
(11a)(12a)・・・・・第1、第2側壁
(12)・・・・・・・・第2配管収容室
(2)(2a) ・・・・・・天板
(20)・・・・・・・・境界絞り部
(21)・・・・・・・・第1天板本体部
(22)(22a) ・・・・・第2天板本体部
(23)・・・・・・・・起立部
(25a)(25b)・・・・・第1絞り部
(26)・・・・・・・・第2絞り部
(3) ・・・・・・・・仕切壁
(31a)(32a)・・・・・直管部
(31b)(32b)・・・・・折り返し部
(31)(32)・・・・・・第1、第2吸熱管
(33)(34)・・・・・・押さえ部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7