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特許6162679コモン信号の故障箇所を検出するマトリクス回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162679
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】コモン信号の故障箇所を検出するマトリクス回路
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20170703BHJP
   G01R 31/02 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G06F3/02 380A
   G06F3/02 320B
   G01R31/02
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-257498(P2014-257498)
(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2016-118884(P2016-118884A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】沖田 洋志
【審査官】 加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−149610(JP,A)
【文献】 特開平03−198121(JP,A)
【文献】 特開昭63−261414(JP,A)
【文献】 特開昭61−058025(JP,A)
【文献】 特開昭62−049752(JP,A)
【文献】 特開2005−345546(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/080861(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0181195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/02
G01R 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配線されたm(mは自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつローレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするシンク型のマトリクス回路において、
前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線が1スキャンする間の前記監視用信号線の入力を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力に基づいて前記コモン信号線の地絡、短絡、断線の故障の発生の検出、および、故障が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段と、
を有することを特徴とするマトリクス回路。
【請求項2】
マトリクス状に配線されたm(は自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつローレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするシンク型のマトリクス回路において、
前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線の地絡の検出、および、地絡が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段、
を有することを特徴とするマトリクス回路。
【請求項3】
マトリクス状に配線されたm(mは自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつハイレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするソース型のマトリクス回路において、
前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線が1スキャンする間の前記監視用信号線の入力を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力に基づいて前記コモン信号線の地絡、短絡、断線の故障の発生の検出、および、故障が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段と、
を有することを特徴とするマトリクス回路。
【請求項4】
前記検出手段は、全てのコモン信号線をドライブしていない非スキャン時に前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)でない場合に、前記コモン信号線の地絡の発生と判断し、かつ、前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路。
【請求項5】
前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が、常に1(ローレベル)の場合に、前記コモン信号線の故障が地絡であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路。
【請求項6】
前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が異なる前記コモン信号線のスキャン時に同じであった場合、前記コモン信号線の故障が短絡であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の短絡箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項1または3記載のマトリクス回路。
【請求項7】
前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が全て0(ハイレベル)の状態があった場合、前記コモン信号線の故障が断線であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の断線箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路。
【請求項8】
故障発生時に非スキャン時とスキャン時の前記監視用信号線の入力を表示手段へ出力する、
ことを特徴とする請求項1または3記載のマトリクス回路。
【請求項9】
前記検出手段は、全てのコモン信号線をドライブしていない非スキャン時に前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)でない場合に、前記コモン信号線の地絡の発生を判断し、かつ、前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項2記載のマトリクス回路。
【請求項10】
故障発生時に非スキャン時の前記監視用信号線の入力を表示手段へ出力する、
ことを特徴とする請求項2記載のマトリクス回路。
【請求項11】
前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)の状態があった場合、前記コモン信号線の故障が地絡、または断線であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡、または断線箇所を特定する、
ことを特徴とする請求項3記載のマトリクス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリクス回路に関し、特にコモン信号の故障個所を検出するマトリクス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、マトリクス回路を使用した入力装置が開示されている(例えば、特許文献1)。従来技術における一般的なシンク型マトリクス回路を使用したキーボードの回路を図17に示す。
【0003】
一般的なシンク型マトリクス回路では、コモン信号線(XCOM)と、データ信号線(XKEYD)が格子状に配置され、そこにキースイッチを配置する。図17は、コモン信号線が7本、データ信号線が8本のシンクタイプマトリクス回路の例である。マトリクス回路は、コモン信号線の本数×データ信号線の本数の入力を検出できるので、この回路では、56点のキーの情報を検出することができる。図中のダイオードは複数点のキーが押された際の信号の回りこみを防止するために接続されている。
【0004】
キー情報のスキャンはASICなどを使用して行われ、コモン信号線を順番にドライブし、データ信号線のデータを読み込む。キーが押された場合、そのキーが接続されたコモン信号線がドライブされると、そのキーが接続されたデータ信号線のビットが有効になり、キーが押されたことを認識する。例えば、図17において、丸で囲まれたキースイッチが押された場合、このキースイッチが接続されたコモン信号線XCOM2がドライブされた際に、データ信号線XKEYD4が有効となり、これを検出することで該当する位置のキースイッチが押されたことを認識する。
【0005】
図17の回路はシンク型の回路であり、コモン信号線のスキャンはローにドライブすることによって行われ、その際、データ信号がローになっていれば、該当するキースイッチが押されたと判断する。マトリクス回路にはソース型もあり、ソース型の場合、コモン信号線をハイにドライブすることにより、スキャンを行い、データ信号線のハイ入力でキーが押されたことを認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−058025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マトリクス回路では、より少ない信号の本数で、多くの入力情報を得ることができるが、コモン信号線、データ信号線に地絡、短絡、断線が発生すると、誤った入力が検出され、誤動作の原因となるため、地絡、短絡、断線の発生の確認と、発生箇所の特定が必要とされる。
【0008】
データ信号線で故障が発生した場合、当該故障により発生する現象とデータ線の故障以外で発生する条件は以下の通りである。
<データ信号線の地絡>
●現象:キーを押して無くても、地絡が発生したデータ線につながったキーが全て入力される。
●データ信号線の故障箇所:入力されたキーがつながるデータ信号線
●上記現象が発生するコモン信号線の故障原因:なし
【0009】
<データ信号線の短絡>
●現象:1つのキーを押すと、短絡した別のキーも入力される。
●データ信号線の故障箇所:入力された2つのキーがつながるデータ信号線
●上記現象が発生するコモン信号線の故障原因:コモン信号線の短絡
【0010】
<データ信号線の断線>
●現象:キーを押しても入力が無い。
●データ信号線の故障箇所:入力されないキーがつながるデータ信号線
●上記現象が発生するコモン信号線の故障原因:コモン信号線の断線
【0011】
このように、データ信号線で故障が発生した場合、故障の原因がコモン信号線でないことが分かれば、データ信号線の故障箇所は比較的容易に検出することができるが、一方で、コモン信号線で故障が発生した場合には、故障内容次第では簡単に故障箇所を検出することができないという問題があった。
【0012】
そこで本発明の目的は、コモン信号線で発生した故障原因と故障箇所を特定することが可能なマトリクス回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願の請求項1に係る発明は、マトリクス状に配線されたm(mは自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつローレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするシンク型のマトリクス回路において、前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線が1スキャンする間の前記監視用信号線の入力を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力に基づいて前記コモン信号線の地絡、短絡、断線の故障の発生の検出、および、故障が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段と、を有することを特徴とするマトリクス回路である。
【0014】
本願の請求項2に係る発明は、マトリクス状に配線されたm(は自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつローレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするシンク型のマトリクス回路において、前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線の地絡の検出、および、地絡が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段、を有することを特徴とするマトリクス回路である。
【0015】
本願の請求項3に係る発明は、マトリクス状に配線されたm(mは自然数)本のコモン信号線とn(nは自然数)本のデータ信号線と、互いに交差する前記コモン信号線と前記データ信号線との間に接続されるm×n個のスイッチを有し、前記コモン信号線を1本ずつハイレベルにドライブしながら前記データ信号線の状態を読み取り、キーの状態をスキャンするソース型のマトリクス回路において、前記コモン信号線の状態を監視するためのp(pは自然数)本の監視用信号線を設け、前記コモン信号線が1スキャンする間の前記監視用信号線の入力を記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力に基づいて前記コモン信号線の地絡、短絡、断線の故障の発生の検出、および、故障が発生した前記コモン信号線を特定する検出手段と、を有することを特徴とするマトリクス回路である。
【0016】
本願の請求項4に係る発明は、前記検出手段は、全てのコモン信号線をドライブしていない非スキャン時に前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)でない場合に、前記コモン信号線の地絡の発生と判断し、かつ、前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路である。
【0017】
本願の請求項5に係る発明は、前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が、常に1(ローレベル)の場合に、前記コモン信号線の故障が地絡であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路である。
【0018】
本願の請求項6に係る発明は、前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が異なる前記コモン信号線のスキャン時に同じであった場合、前記コモン信号線の故障が短絡であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の短絡箇所を特定する、ことを特徴とする請求項1または3記載のマトリクス回路である。
【0019】
本願の請求項7に係る発明は、前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が全て0(ハイレベル)の状態があった場合、前記コモン信号線の故障が断線であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の断線箇所を特定する、ことを特徴とする請求項1記載のマトリクス回路である。
【0020】
本願の請求項8に係る発明は、故障発生時に非スキャン時とスキャン時の前記監視用信号線の入力を表示手段へ出力する、ことを特徴とする請求項1または3記載のマトリクス回路である。
【0021】
本願の請求項9に係る発明は、前記検出手段は、全てのコモン信号線をドライブしていない非スキャン時に前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)でない場合に、前記コモン信号線の地絡の発生を判断し、かつ、前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡箇所を特定する、ことを特徴とする請求項2記載のマトリクス回路である。
【0022】
本願の請求項10に係る発明は、故障発生時に非スキャン時の前記監視用信号線の入力を表示手段へ出力する、ことを特徴とする請求項2記載のマトリクス回路である。
【0023】
本願の請求項11に係る発明は、前記検出手段は、スキャン時の前記監視用信号線の入力が正常時と異なる場合に前記コモン信号線の故障の発生を検出するとともに、前記記憶手段に1スキャン分の前記監視用信号線の入力を記憶し、記憶された前記監視用信号線の入力が、全て0(ハイレベル)の状態があった場合、前記コモン信号線の故障が地絡、または断線であることを判断し、かつ、前記記憶手段に記憶された前記監視用信号線の入力データに基づいて、前記コモン信号線の地絡、または断線箇所を特定する、ことを特徴とする請求項3記載のマトリクス回路である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、マトリクス回路のコモン信号線にp(pは自然数)本の監視用信号線(XCOMD0〜XCOMDp−1)を追加し、コモン信号のスキャンが一巡する際の監視用信号線の入力を記憶して解析することで、従来技術では行うことができなかったコモン信号線上での地絡、短絡、断線の故障の発生の検出と、発生したコモン信号線の特定を可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の正常時の監視用信号線の入力を示す表である。
図3】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の地絡が発生した際の非スキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図4】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の地絡が発生した際のスキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図5】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の短絡が発生した際のスキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図6】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の断線が発生した際のスキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図7】本発明の第1の実施形態における診断画面の表示例である。
図8】本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路の故障診断処理のフローチャートである。
図9】本発明の第2の実施形態におけるマトリクス回路の構成図である。
図10】本発明の第2の実施形態におけるマトリクス回路の地絡が発生した際の非スキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図11】本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路の構成図である。
図12】本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路の正常時の監視用信号線の入力を示す表である。
図13】本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路の地絡、断線が発生した際のスキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図14】本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路の短絡が発生した際のスキャン時の監視用信号線の入力を示す表である。
図15】本発明の第3の実施形態における診断画面の表示例である。
図16】本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路の故障診断処理のフローチャートである。
図17】従来技術におけるマトリクス回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
<1.第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態におけるマトリクス回路を示す図である。本実施形態は、コモン信号線(XCOM)が7本(XCOM1〜XCOM7)、データ信号線(XKEYD)が8本(XKEYD0〜XKEYD7)のシンクタイプマトリクス回路の例で説明する。本実施形態のマトリクス回路では、図1に示すように、一般的なシンクタイプマトリクス回路に対して監視用信号線(XCOMD)が追加されている。
【0027】
本実施形態では、監視用信号線をコモン信号線のデータをバイナリコードに変換するように接続することで、7本のコモン信号線をXCOMD2、XCOMD1、XCOMD0の3本の監視信号線で監視することができるようにしている。ダイオードは信号の回り込みを防ぐために組み込まれている。スキャンの処理では、コモン信号線をドライブして、キーの情報をデータ信号線から読み込むが、その際、監視用信号線の入力を読み込み、コモン信号線の状態を監視する。
【0028】
図2の表は、監視用信号線の正常時の入力であり、表中の2進数3ケタの数値はXCOMD2、XCOMD1、XCOMD0の値を裏論理(ロー入力が1、ハイ入力が0)で表現し、順に並べたものである。全てのコモン信号線をドライブしない非スキャン時、監視用信号線には「000」が入力され、コモン信号線を順にドライブするスキャン時は、ドライブしているコモン信号線の番号をバイナリ化した信号が監視用信号線から入力される。
【0029】
図1のように構成したマトリクス回路において、コモン信号線に地絡、短絡、断線の故障が発生した場合、図2の表に示した正常時とは異なる入力が検出される。正常時の入力と異なる入力が検出された場合、1スキャン分の入力をASIC1内に設けられたメモリ2に記憶し、故障箇所の特定に使用する。以下に故障箇所の検出方法を故障原因毎にまとめる。
【0030】
<1.1 コモン信号線の地絡箇所検出方法>
図3の表は、非スキャン(全てのコモン信号線をドライブしない状態)時における監視用信号線の入力値を示したものである。図3の表に示すように、コモン信号線が正常な状態であれば、非スキャン時に関し信号線からは「000」の値が入力されるが、いずれかのコモン信号線に地絡が発生した場合、全てのコモン信号線をドライブしていない非スキャン時に監視用信号線の入力の一部に、1(ローレベル)が検出される。図3の表のように、監視用信号線の入力は地絡が発生しているコモン信号線の番号を示す。
【0031】
コモン信号線の地絡が発生した場合の別の検出方法を示す。図4の表は、スキャン時における、コモン信号線の地絡発生時の監視用信号線の入力値を示したものである。コモン信号線の地絡が発生した場合、スキャン時に監視用信号線の入力に常に1固定の信号が見られる。この場合、1スキャン分の監視用信号線のデータをANDすることにより、地絡箇所を特定することができる。例えば、コモン信号線XCOM3が地絡した場合、1スキャンのデータは「011」、「011」、「011」、「111」、「111」、「111」、「111」となる。これを全てANDすると、「011」となり、コモン信号線XCOM3が地絡していることを判別することができる。
【0032】
<1.2 コモン信号線の短絡断箇所検出方法>
図5の表は、スキャン時における、コモン信号線の短絡発生時の監視用信号線の入力値を示したものである。コモン信号線に短絡が発生した場合、監視用信号線に同じ入力が2箇所あるいは3箇所で検出される。
2箇所で検出された場合は、同じ入力が検出された際に、ドライブしていたコモン信号線で短絡が発生している。例えば、コモン信号線XCOM2とコモン信号線XCOM3が短絡した場合、「011」の入力が2箇所で検出される。その2箇所の同じ入力が検出された際にドライブしていたコモン信号線XCOM2とXCOM3とが短絡箇所となる。
【0033】
また、3箇所で同じ入力が検出された場合は、その入力が示すコモン信号線(正常時において、ドライブ時に当該入力が監視用信号線から検出されるコモン信号線)以外の2箇所で短絡が発生している。例えば、XCOM3とXCOM4が短絡した場合、「111」の入力が3箇所で検出される。この場合、「111」が示すXCOM7以外のXCOM3とXCOM4が短絡箇所となる。
なお、図5の表では、隣り合った信号の短絡のみをまとめているが、その他の組み合わせで短絡の可能性がある場合は、当該組み合わせを図5の表に加えて短絡の検出に用いればよい。
【0034】
<1.3 コモン信号線の断線箇所検出方法>
図6の表は、スキャン時における、コモン信号線の断線発生時の監視用信号線の入力値を示したものである。コモン信号線に断線が発生した場合には、断線が発生しているコモン信号線をドライブした際の監視用信号線の入力が「000」となる。監視用信号線の入力に「000」が検出されたときにドライブしていたコモン信号線が断線箇所とし検出できる。
【0035】
<1.4 監視用信号線の画面表示>
メモリ2に保存した監視用信号線の状態は、正常時に監視用信号線から検出される期待値と合わせて診断画面として表示可能とする。図7は、診断画面の表示例である。図に示すように、ドライブするコモン信号線と、正常時に監視用信号線から検出される期待値、監視用信号線から検出された実測値とを並べて表示することで、オペレータはコモン信号線に発生している障害を把握することができる。
【0036】
<1.5 監視用信号線による故障診断処理のフローチャート>
図8は、監視用信号線を用いた故障診断処理のフローチャートである。
●[ステップSA01]コモン信号線の非スキャン時における監視用信号線の入力が「000」であるか否かを判定する。「000」でない場合にはステップSA02へ進み、「000」である場合にはステップSA05へ進む。
●[ステップSA02]非スキャン時の監視用信号線の入力が図3の表に該当するパターンがあるか否かを判定する。図3の表に該当するパターンがある場合にはステップSA03へ進み、無い場合にはステップSA04へ進む。
●[ステップSA03]図3の表の該当するコモン信号線で地絡が発生していると判定する。
●[ステップSA04]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
【0037】
●[ステップSA05]コモン信号線のスキャン時における監視信号線の入力が正常値と同じか否かを判定する。スキャン時における監視信号線の入力が正常値と同じ場合にはステップSA01へ戻り、異なる場合にはステップSA06へ進む。
●[ステップSA06]コモン信号線1スキャン分の監視用信号線の入力をメモリに記憶する。
【0038】
●[ステップSA07]ステップSA06で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力の中に「000」の値があるか否かを判定する。「000」の値がある場合にはステップSA08へ進み、無い場合にはステップSA11へ進む。
●[ステップSA08]ステップSA06で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力が図6の表のいずれかのパターンに該当するか否かを判定する。図6の表に該当するパターンがある場合にはステップSA09へ進み、無い場合にはステップSA10へ進む。
●[ステップSA09]図6の表の該当するコモン信号線で断線が発生していると判定する。
●[ステップSA10]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
【0039】
●[ステップSA11]ステップSA06で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力に同じ入力の箇所があるか否かを判定する。同じ入力の箇所がある場合にはステップSA12へ進み、無い場合にはステップSA15へ進む。
●[ステップSA12]ステップSA06で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力が図5の表のいずれかのパターンに該当するか否かを判定する。図5の表に該当するパターンがある場合にはステップSA13へ進み、無い場合にはステップSA14へ進む。
●[ステップSA13]図5の表の該当するコモン信号線で短絡が発生していると判定する。
●[ステップSA14]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
●[ステップSA15]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
【0040】
<2.第2の実施形態>
図9は、本発明の第2の実施形態におけるマトリクス回路を示す図である。本実施形態は、コモン信号線(XCOM)が7本(XCOM1〜XCOM7)、データ信号線(XKEYD)が8本(XKEYD0〜XKEYD7)のシンクタイプマトリクス回路の例で説明する。本実施形態のマトリクス回路は、第1の実施形態と比較して、故障箇所検出対象を地絡のみに限定し、監視用信号線(XCOMD)から入力される信号のみを用いることで地絡の検出を実現する。なお、ダイオードは信号の回り込みを防ぐために組み込まれている。
【0041】
全てのコモン信号線をドライブしない非スキャンにおいて、正常時には監視用信号の入力は「000」が検出されるが、地絡が発生した場合、図10の表に示すように、監視用信号の入力が「000」以外の入力値となるため、監視用信号線を監視することでコモン信号線に地絡が発生していることを検出することができる。
【0042】
<3.第3の実施形態>
図11は、本発明の第3の実施形態におけるマトリクス回路を示す図である。本実施形態は、コモン信号線(COM)が7本(COM1〜COM7)、データ信号線(KEYD)が8本(KEYD0〜KEYD7)のソースタイプマトリクス回路の例で説明する。本実施形態のマトリクス回路では、図11に示すように、一般的なシンクタイプマトリクス回路に対して監視用信号線(COMD)が追加されている。
【0043】
本実施形態では、監視用信号線をコモン信号線のデータをバイナリコードに変換するように接続することで、7本のコモン信号線をCOMD2、COMD1、COMD0の3本の監視信号線で監視することができるようにしている。ダイオードは信号の回り込みを防ぐために組み込まれている。スキャンの処理では、コモン信号線をドライブして、キーの情報をデータ信号線から読み込むが、その際、監視用信号線の入力を読み込み、コモン信号線の状態を監視する。
【0044】
図12の表は監視用信号線の正常時の入力であり、表中の2進数3ケタの数値はCOMD2、COMD1、COMD0の値を正論理(ロー入力が0、ハイ入力が1)で表現し、順に並べたものである。全てのコモン信号線をドライブしない非スキャン時、監視用信号線には「000」が入力され、コモン信号線を順にドライブするスキャン時は、ドライブしているコモン信号線の番号をバイナリ化した信号が監視用信号線から入力される。
【0045】
図11のように構成したマトリクス回路において、コモン信号線に地絡、短絡、断線の故障が発生した場合、図12の表に示した正常時とは異なる入力が検出される。正常時の入力と異なる入力が検出された場合、1スキャン分の入力をASIC1内に設けられたメモリ2に記憶し、故障箇所の特定に使用する。以下に故障箇所の検出方法を故障原因毎にまとめる。
【0046】
<3.1 コモン信号線の地絡、断線箇所検出方法>
図13の表は、スキャン時におけるコモン信号線に地絡、あるいは断線が発生した場合の監視用信号線の入力値を示したものである。コモン信号線に地絡、あるいは断線が発生すると、故障が発生しているコモン信号線をドライブした際に監視用信号線の入力が「000」となる。したがって、監視用信号線の入力に「000」が検出されたときにドライブしていたコモン信号線が地絡、あるいは断線が発生している箇所となる。
【0047】
<3.2 コモン信号線の短絡断箇所検出方法>
図14の表は、スキャン時における、コモン信号線の短絡発生時の監視信号線の入力値を示したものである。コモン信号線に短絡が発生した場合、監視用信号線に同じ入力が2箇所あるいは3箇所で検出される。
2箇所で検出された場合は、同じ入力が読めた際に、ドライブしていたコモン信号線で短絡が発生している。例えば、コモン信号線COM2とコモン信号線COM3が短絡した場合、「011」の入力が2箇所で検出される。その2箇所の同じ入力が検出された際にドライブしていたコモン信号線COM2とCOM3とが短絡箇所となる。
【0048】
また、3箇所で同じ入力が検出された場合は、その入力が示すコモン信号線(正常時において、ドライブ時に当該入力が監視用信号線から検出されるコモン信号線)以外の2か所で短絡が発生している。例えば、COM3とCOPM4が短絡した場合、「111」の入力が3箇所で検出される。この場合、「111」が示すCOM7以外のCOM3とCOM4が短絡箇所となる。
なお、図14の表では、隣り合った信号の短絡のみをまとめているが、その他の組み合わせで短絡の可能性がある場合は、当該組み合わせを図14の表に加えて短絡の検出に用いればよい。
【0049】
<3.3 監視用信号線の画面表示>
メモリ2に保存した監視用信号線の状態は、正常時に監視用信号線から検出される期待値と合わせて診断画面として表示可能とする。図15は、診断画面の表示例である。図に示すように、ドライブするコモン信号線と、正常時に監視用信号線から検出される期待値、監視用信号線から検出された実測値とを並べて表示することで、オペレータはコモン信号線に発生している障害を把握することができる。
【0050】
<3.4 監視用信号線による故障診断処理のフローチャート>
図16は、監視用信号線を用いた故障診断処理のフローチャートである。
●[ステップSB01]コモン信号線のスキャン時における監視信号線の入力が正常値と同じか否かを判定する。スキャン時における監視信号線の入力が正常値と同じ場合にはステップSB01へ戻り、異なる場合にはステップSB02へ進む。
●[ステップSB02]コモン信号線1スキャン分の監視用信号線の入力をメモリに記憶する。
【0051】
●[ステップSB03]ステップSB02で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力の中に「000」の値があるか否かを判定する。「000」の値がある場合にはステップSB04へ進み、無い場合にはステップSB07へ進む。
●[ステップSB04]ステップSB02で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力が図13の表のいずれかのパターンに該当するか否かを判定する。図13の表に該当するパターンがある場合にはステップSB05へ進み、無い場合にはステップSB06へ進む。
【0052】
●[ステップSB05]図13の表の該当するコモン信号線で断線、或いは地絡が発生していると判定する。
●[ステップSB06]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
【0053】
●[ステップSB07]ステップSB02で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力に同じ入力の箇所があるか否かを判定する。同じ入力の箇所がある場合にはステップSB08へ進み、無い場合にはステップSB11へ進む。
●[ステップSB08]ステップSB02で記憶した1スキャン分の監視信号線の入力が図14の表のいずれかのパターンに該当するか否かを判定する。図14の表に該当するパターンがある場合にはステップSB09へ進み、無い場合にはステップSB10へ進む。
●[ステップSB09]図14の表の該当するコモン信号線で短絡が発生していると判定する。
●[ステップSB10]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
●[ステップSB11]地絡、短絡、断線以外の故障が発生していると判定する。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例に限定されることなく、適宜の変更を加えることにより、その他の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ASIC
2 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17