(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162690
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】高めた抗遊走性を備える管腔内デバイス及び管腔内の方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20170703BHJP
【FI】
A61F2/04
【請求項の数】34
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-512895(P2014-512895)
(86)(22)【出願日】2012年5月18日
(65)【公表番号】特表2014-521390(P2014-521390A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2012038480
(87)【国際公開番号】WO2012162114
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】61/488,194
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/607,338
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513292846
【氏名又は名称】ビーエフケイダブリュ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BFKW, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、ランドル・エス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルバーン、フレデリック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フート、ジェームズ・エイ
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0198237(US,A1)
【文献】
国際公開第2008/101048(WO,A2)
【文献】
特許第2660101(JP,B2)
【文献】
特表2011−509758(JP,A)
【文献】
特表2009−515608(JP,A)
【文献】
特表平08−502428(JP,A)
【文献】
特表2009−520559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側となる端部分を有する壁部によって画成される表面であって、前記端部分が管腔に沿った蠕動運動の方向への軸に沿って間隔をあけて配置された状態で、前記管腔の一部の形状及びサイズに略適合するように構成された表面を備える管腔内デバイスにおいて、
前記壁部は、外方に自己拡張し、且つ、前記端部分同士の間に少なくとも2つの開口部を有し、
前記管腔内デバイスの遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するように、細胞組織が前記少なくとも2つの開口部に入り、
前記少なくとも2つの開口部が、前記管腔の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離だけ前記軸に沿って離して配置され、
前記少なくとも2つの開口部の少なくとも1つの開口部に作用する前記管腔の圧力上昇の領域があり、これにより、前記少なくとも1つの開口部は、前記蠕動波が前記管腔内デバイスを通過するときに前記管腔に係合したままにして、圧力低下の領域が前記少なくとも1つの開口部以外の開口部に作用する状態でも前記壁部を固定し、
前記壁部は支持構造体と該支持構造体を覆うカバーとによって画成され、
前記支持構造体は、複数の交差するメッシュ部分によって画成され、それにより複数の直線で囲まれた多角形を画成し、
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記カバーに画成されるとともに前記カバーによって互いに隔てられる離散した開口であり、また前記多角形による複数の隣接する多角形からなるサイズである、管腔内デバイス。
【請求項2】
前記壁部が、前記軸に関する略円筒状であり、前記少なくとも2つの開口部のそれぞれが、前記壁部の外周の周りで半径方向に分散する複数の開口部から構成される請求項1に記載の管腔内デバイス。
【請求項3】
前記複数の開口部のそれぞれが、1つのパターンで、前記壁部の外周の周りで半径方向に分散する請求項2に記載の管腔内デバイス。
【請求項4】
前記パターンのそれぞれは、前記軸に対して略垂直に配列される請求項3に記載の管腔内デバイス。
【請求項5】
前記パターンは、前記管腔の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離だけ離して配置される請求項4に記載の管腔内デバイス。
【請求項6】
前記パターンは、少なくとも前記管腔の前記蠕動波の波長程度である距離だけ離して配置される請求項5に記載の管腔内デバイス。
【請求項7】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記軸に略垂直に且つ実質的に前記壁部を囲むように延在する開口帯部を含む請求項1に記載の管腔内デバイス。
【請求項8】
前記複数の開口部はそれぞれ、実質的に前記壁部を囲むように延在する複数の離散した開口部を含む請求項2に記載の管腔内デバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの前記開口部は、ひし形、十字形、直線形及び「H」形状から選択される少なくとも1つを含む形状に配列された前記多角形による少なくとも3つの前記隣接する多角形からなるサイズである請求項1に記載の管腔内デバイス。
【請求項10】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記支持構造体での粘膜の増殖を調整するように構成される請求項1に記載の管腔内デバイス。
【請求項11】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、制御されていない粘膜の増殖を促進するような量を下回る寸法を有することによって、粘膜の増殖を調整するように構成される請求項10に記載の管腔内デバイス。
【請求項12】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記粘膜に接触するように適応した側部と反対側にある少なくとも1つの前記開口部で前記支持構造体の側部上に延在する前記カバーによって、粘膜の増殖を調整するように構成される請求項10に記載の管腔内デバイス。
【請求項13】
前記支持構造体が、外方に拡がるメッシュを含む請求項1に記載の管腔内デバイス。
【請求項14】
前記表面は、i)食道、ii)腸、iii)ファローピウス管、iv)尿管、v)尿道、vi)精管及びvii)胆管から選択される1つの一部の形状及びサイズに略適合するように構成される請求項1のいずれか一項に記載の管腔内デバイス。
【請求項15】
食道用壁部によって画成され且つ食道の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される食道用表面を有する食道用部材と、胃の噴門部の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される噴門用表面を画成する噴門用壁部を有する噴門用部材と、前記食道用部材及び前記噴門用部材に接続される連結体とを備える肥満症用デバイスにおいて、
i)前記食道用部材及びii)前記噴門用部材から選択される少なくとも1つは、受容者の神経ホルモン機構に影響を及ぼして、食物により引き起こされる膨満を増大させること及び食物がない場合には膨満を装うことによって少なくとも部分的な満腹度を引き起こすように、受容器官を刺激するように適応し、
前記食道用壁部は、外方に自己拡張し、
前記食道用壁部は、前記食道に沿った蠕動運動の方向への軸に沿って離して配置された端部分を有し、且つ、前記端部分同士の間に少なくとも2つの開口部を有し、
前記食道用部材の遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するように、粘膜が前記少なくとも2つの開口部に入り、
前記少なくとも2つの開口部は、前記食道の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離だけ前記軸に沿って離して配置され、
前記少なくとも2つの開口部の少なくとも1つの開口部に作用する前記食道の圧力上昇の領域があり、これにより、前記少なくとも1つの開口部は、前記蠕動波が前記食道用壁部を通過するときに前記食道に係合したままにして、圧力低下の領域が前記少なくとも1つの開口部以外の開口部に作用する状態でも前記食道用壁部を固定し、
前記食道用壁部は支持構造体と該支持構造体を覆うカバーとによって画成され、
前記支持構造体は、複数の交差するメッシュ部分によって画成され、それにより複数の直線で囲まれた多角形を画成し、
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記カバーに画成されるとともに前記カバーによって互いに隔てられる離散した開口であり、また前記多角形による複数の隣接する多角形からなるサイズである、肥満症用デバイス。
【請求項16】
前記食道用壁部が、前記軸に関する略円筒状であり、前記少なくとも2つの開口部のそれぞれが、前記食道用壁部の外周の周りで半径方向に分散する複数の開口部から構成される請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項17】
前記複数の開口部のそれぞれが、1つのパターンで、前記食道用壁部の外周の周りで半径方向に分散する請求項16に記載の肥満症用デバイス。
【請求項18】
前記パターンのそれぞれは、前記軸に対して略垂直に配列される請求項17に記載の肥満症用デバイス。
【請求項19】
前記パターンは、前記食道の蠕動波の波長と同じ桁数の大きさの距離だけ離して配置される請求項18に記載の肥満症用デバイス。
【請求項20】
前記パターンは、少なくとも前記食道の前記蠕動波の波長程度である距離だけ離して配置される請求項19に記載の肥満症用デバイス。
【請求項21】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記軸に略垂直に且つ実質的に前記食道用壁部を囲むように延在する開口帯部を含む請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項22】
前記複数の開口部はそれぞれ、実質的に前記食道用壁部を囲むように延在する複数の離散した開口部を含む請求項16に記載の肥満症用デバイス。
【請求項23】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、ひし形、十字形、直線形及び「H」形状から選択される少なくとも1つを含む形状に配列された前記多角形による少なくとも3つの前記隣接する多角形からなるサイズである請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項24】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記支持構造体での粘膜の増殖を調整するように構成される請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項25】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、制御されていない粘膜の増殖を促進するような量を下回る寸法を有することによって、粘膜の増殖を調整するように構成される請求項24に記載の肥満症用デバイス。
【請求項26】
前記少なくとも2つの開口部のそれぞれは、前記粘膜に接触するように適応した側部と反対側にある少なくとも1つの前記開口部で前記支持構造体の側部上に延在する前記カバーによって、粘膜の増殖を調整するように構成される請求項24に記載の肥満症用デバイス。
【請求項27】
前記支持構造体が、外方に拡がるメッシュを含む請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項28】
吸引によって粘膜がその中に捕捉されることを可能にするサイズの少なくとも1つの追加の開口部をさらに含む請求項15に記載の肥満症用デバイス。
【請求項29】
捕捉された前記粘膜の周囲に設けられたゴムバンドを含む請求項28に記載の肥満症用デバイス。
【請求項30】
管腔内デバイスにおいて、
互いに反対側となる端部分を有する壁部によって画成される表面であって、前記端部分が管腔に沿った蠕動運動の方向への軸に沿って間隔をあけて配置された状態で、前記管腔の一部の形状及びサイズに略適合するように構成された表面と、
外方に拡がるメッシュ及び前記メッシュを覆うカバーから構成される前記壁部であって、前記端部分同士の間に複数の開口部を有する前記壁部と
を備え、
前記複数の開口部の少なくとも2つが、前記管腔の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離だけ前記軸に沿って離して配置され、
前記少なくとも2つの開口部の少なくとも1つの開口部に作用する前記管腔の圧力上昇の領域があり、これにより、前記少なくとも1つの開口部は、前記蠕動波が前記管腔内デバイスを通過するときに前記管腔に係合したままにして、圧力低下の領域が前記少なくとも1つの開口部以外の開口部に作用する状態でも前記壁部を固定し、
前記少なくとも2つの開口部はそれぞれ、離散した開口部を含み、前記離散した開口部は、前記メッシュの一部を露出させる、管腔内デバイス。
【請求項31】
前記メッシュは、複数の交差するメッシュ線材によって画成され、それにより複数の直線で囲まれた多角形を画成し、前記少なくとも2つの開口部はそれぞれ、ひし形、十字形、直線形及び「H」形状から選択される少なくとも1つを含む形状に配列された前記多角形による少なくとも3つの前記隣接する多角形からなるサイズである請求項30に記載の管腔内デバイス。
【請求項32】
前記複数の開口部の少なくとも1つは、前記メッシュの開口内にあり、且つ粘膜を捕捉するようなサイズとされ、略円形状の形状である請求項31に記載の管腔内デバイス。
【請求項33】
前記複数の開口部の前記少なくとも1つは、略円形状の形状である請求項30に記載の管腔内デバイス。
【請求項34】
前記表面は、食道用部材のものであり、且つ、食道の一部の形状及びサイズに略適合するように構成され、前記管腔内デバイスが、胃の噴門部の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される噴門用表面を画成する噴門用壁部を有する噴門用部材と、前記食道用部材及び前記噴門用部材に接続される連結体とをさらに含む請求項30に記載の管腔内デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管腔内デバイス及び管腔内の方法を対象とし、具体的には、蠕動波を受ける管腔において、蠕動波の作用によってデバイスが遠位へ遊走することに抗するのに有用であるようなデバイス及び方法を対象とする。本発明は、食道に位置付けられるように適応した食道用部材を有する肥満症用デバイス(bariatric device)及び肥満症用方法として説明されるが、本発明は、食道内の他のデバイス及び方法と共に有用であり、蠕動波を受ける他の管腔において有用なデバイス及び方法と共にでも有用となり得る。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2011年5月20日出願の米国特許出願第61/488,194号明細書、及び2012年3月6日出願の米国特許出願第61/607,338号明細書の優先権を主張し、これらの開示は、それらの全体において参照することにより本願明細書に援用される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様によれば、管腔内デバイス及び管腔内の方法は、蠕動波を受ける管腔内に管腔内デバイスを配置することを含む。管腔内デバイスは、互いに反対側となる端部分を有する壁部によって画成される表面を含む。この表面は、管腔の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される。端部分は、管腔に沿った蠕動運動の方向への軸に沿って間隔をあけて配置される。壁部は、管腔内デバイスの遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するように、端部分同士の間に少なくとも1つの開口部を有する。
【0004】
少なくとも1つの開口部は、管腔内の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさ(at least on the order of magnitude of a wavelength;少なくとも常用対数の指標が同じ大きさ)の距離だけ離して配置される少なくとも2つの開口部であってよい。壁部は、上記軸に関する略円筒形状であってよく、開口部(複数可)は、壁部の外周の周りで半径方向に分散するパターンを含んでよい。開口部(複数可)は少なくとも2つの開口部を含んでよく、このとき、そのパターンは、壁部の外周の周りで半径方向に分散する少なくとも2つのパターンである。パターンは、上記軸に略垂直に配列されてよい。パターンは、管腔の蠕動波の波長と同じ桁数の大きさの距離だけ離して配置されてよく、そして少なくとも管腔の蠕動波の波長程度である距離だけ離して配置されてもよい。各パターンは、上記軸に略垂直に且つ実質的に壁部を囲むように延在する開口帯部であってよい。或いは、各パターンは、実質的に壁部を囲むように延在する複数の離散した開口部であってよい。
【0005】
壁部は、支持構造体と支持構造体を覆うカバーとによって画成されてよく、このとき、カバーには開口部(複数可)が画成されてよい。支持構造体は、複数の交差する線材部分によって画成され、それにより、複数の直線で囲まれた多角形を画成してよく、開口部(複数可)は、上記多角形による複数の隣接する多角形からなるサイズである。開口部(複数可)は、直線で囲まれた多角形内に配列される上記多角形による4つの隣接する多角形からなるサイズであってよい。
【0006】
開口部(複数可)は、支持構造体上での粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。開口部(複数可)は、粘膜の増殖を促進するような量を下回る上記軸に沿った寸法を有することによって、粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。開口部(複数可)は、粘膜と接触するように適応した側部と反対側にある開口部(複数可)で支持構造体の側部上に延在するカバーによって、粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。
【0007】
支持構造体はメッシュであってよい。メッシュは、外方に拡がるメッシュであってよい。メッシュは不均一なセル構造を有してよい。セル構造は、遠位よりも近位で密度が低く、それにより移行ゾーンを画成してよい。カバーは、メッシュを越えて近位に延在し、それにより移行ゾーンを少なくとも部分的に画成してよい。カバーは、端部分の一方又は双方で、厚さを増す。
【0008】
上記表面は、i)食道、ii)腸、iii)ファローピウス管、iv)尿管、v)尿道、vi)精管、又はvii)胆管の一部の形状及びサイズに略適合するように構成されてよい。
【0009】
本発明の態様によれば、少なくとも部分的な満腹度(satiety)を引き起こす肥満症用デバイス及び肥満症用方法は、食道用壁部がもつと共に食道用壁部によって画成され且つ食道の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される食道用表面を有する食道用部材と、噴門用部材とを含む。噴門用部材は、胃の噴門部の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される噴門用表面を画成する噴門用壁部を有する。連結体が、食道用部材及び噴門用部材を連結する。食道用部材及び/又は噴門用部材は、受容者の神経ホルモン機構に影響を及ぼして、食物によって引き起こされる膨満(fullness)を増大させること及び食物がない場合には膨満を装うことによって、少なくとも部分的な満腹度を引き起こすように、受容器官を刺激するように適応する。食道用壁部は、食道に沿った蠕動運動の方向への軸に沿って間隔をあけて配置された端部分を有し、且つ食道用部材の遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するように、上記端部分同士の間に少なくとも1つの開口部を有する。
【0010】
少なくとも1つの開口部は、食道の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離だけ離して配置される少なくとも2つの開口部であってよい。食道用壁部は、上記軸に関する略円筒状であってよく、開口部(複数可)は、壁部の外周の周りで半径方向に分散するパターンを含んでよい。開口部(複数可)は少なくとも2つの開口部を含んでもよく、このとき、そのパターンは、壁部の外周の周りで半径方向に分散する少なくとも2つのパターンであってよい。パターンは、上記軸に略垂直に配列されてよい。パターンは、管腔の蠕動波の波長と同じ桁数の大きさの距離だけ離して配置されてよく、そして少なくとも管腔の蠕動波の波長程度である距離だけ離して配置されてもよい。各パターンは、上記軸に略垂直に且つ実質的に食道用壁部を囲むように延在する開口帯部であってよい。或いは、各パターンは、実質的に食道用壁部を囲むように延在する複数の離散した開口部であってよい。
【0011】
食道用壁部は、支持構造体と支持構造体を覆うカバーとによって画成され、このときカバーには開口部(複数可)が画成されてよい。支持構造体は、複数の交差する線材部分によって画成され、それにより、複数の直線で囲まれた多角形を画成してよく、開口部(複数可)は、上記多角形による複数の隣接する多角形からなるサイズである。開口部(複数可)は、直線で囲まれた多角形内に配列される上記多角形による4つの隣接する多角形からなるサイズであってよい。
【0012】
開口部(複数可)は、支持構造体上での粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。開口部(複数可)は、粘膜の増殖を促進するような量を下回る上記軸に沿った寸法を有することによって、粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。開口部(複数可)は、粘膜に接触するように適応する側部と反対側にある開口部(複数可)で支持構造体の側部上に延在するカバーによって、粘膜の増殖を調整するように構成されてよい。
【0013】
支持構造体はメッシュを含んでよい。メッシュは、外方に拡がるメッシュであってよい。メッシュは不均一なセル構造を有してよい。セル構造は、遠位よりも近位で密度が低く、それにより移行ゾーンを画成してよい。カバーは、メッシュを越えて近位に延在し、それにより、移行ゾーンを少なくとも部分的に画成してよい。カバーは、端部分の一方又は双方で、厚さを増す。
【0014】
本発明の態様によれば、管腔の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される表面を有する管腔内デバイスを展開する方法は、管腔内に内視鏡デバイスを配置するステップと、管腔内デバイスが取り付けられた展開デバイスを内視鏡デバイスを用いて管腔に案内するステップとを含む。管腔内デバイスは、管腔内で展開デバイスから少なくとも部分的に展開される。少なくとも部分的に展開された管腔内デバイスは、内視鏡デバイスを用いて管腔内デバイスの位置を見えるようにしつつ、展開デバイスを用いて位置決めされる。
【0015】
管腔内デバイスの展開は、位置決め後に完了してよい。展開デバイスは、開口部を囲む展開壁部を含んでよい。展開デバイスは、内視鏡デバイスを覆うように開口部を位置決めすることによって、案内されることができる。管腔内デバイスは、展開壁部の周りに位置決めされてよい。この方法は、X線透視の使用を伴わずに実施されることができる。
【0016】
食道用表面をもつ食道用部材を有する肥満症用デバイスの展開方法は、食道の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される食道用壁部と噴門用部材とによって画成される。噴門用部材は、胃の噴門部の一部の形状及びサイズに略適合するように構成される噴門用表面を画成する噴門用壁部を有する。連結体が食道用部材及び噴門用部材を連結する。本発明の態様によれば、この方法は、経口的に胃内に内視鏡デバイスを配置するステップと、内視鏡デバイスを用いて、肥満症用デバイスが取り付けられた展開デバイスを胃に案内するステップとを含む。肥満症用デバイスは、胃内で、展開デバイスから少なくとも部分的に展開される。肥満症用デバイスは、内視鏡デバイスを用いて肥満症用デバイスの位置を見えるようにしつつ、展開デバイスを用いて位置決めされる。
【0017】
肥満症用デバイスの展開は、位置決め後に完了してよい。展開デバイスは、開口部を囲む展開壁部を含んでよい。展開デバイスは、内視鏡デバイスを覆うように開口部を位置決めすることによって、案内されることができる。肥満症用デバイスは、展開壁部の周りに位置決めしてよい。この方法は、X線透視の使用を伴わずに実施されることができる。
【0018】
本発明のこれらの並びに他の目的、利点及び特徴は、図面と併せて以下の明細書を精査することにより、明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の態様による管腔内デバイスの側面図である。
【
図2】
図1のIIで示した領域の拡大斜視図である。
【
図3】代替の実施形態のもので
図1と同じ図である。
【
図4】本発明の態様による肥満症用デバイスの側面図である。
【
図6】肥満症用デバイスの代替の実施形態の食道用部材をその側方からとらえた斜視図である。
【
図8】
図6の食道用部材を組み込んでいる肥満症用デバイスの側面図である。
【
図9】受容者内で展開された
図8の肥満症用デバイスの図である。
【
図10】その壁部にある開口部のパターンを示す、平らにされた食道用部材の側面図である。
【
図20】代替の実施形態のもので
図1と同じ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本明細書に示される図面及び図解する実施形態を参照すると、管腔内デバイス20は、食道用部材22のような部材を含み、この部材は、近位端部分30及び遠位端部分32で構成された互いに反対側となる端部分を有する壁部26によって画成された表面24を有している(
図1及び
図2)。表面24は、その中で表面24が展開されるべき管腔の一部の形状及びサイズに略適合するように構成されている。具体的には、表面24は、蠕動を受ける管腔の部分の形状及びサイズに略適合するように構成されている。そのような管腔の例は、食道、結腸、腸の他の部分、尿管、尿道、胆管、ファローピウス管、精管などを含む。
【0021】
端部分30,32は、デバイス20がその中で展開される管腔に沿った蠕動運動の方向への軸Aに沿って間隔をあけて配置されている。壁部26は、ニチノールワイヤなどから作製されたワイヤメッシュ34のような支持構造体と、支持構造体34の上を覆うカバー35とによって画成されている。図示の実施形態では、カバー35は、シリコーン又はその他の可撓性のある生物学的に不活性な物質の発泡体であり、この発泡体は、例えば約0.4ミリメートルの厚さで適用される。カバー34は、近位端部分及び/又は遠位端部分32に1つ以上の重なり合った部分を有してもよい。カバー35の層は、一般的に、接着領域37を除いて、重なり合っている箇所が互いに接着していない。これにより、近位端部分30及び/又は遠位端部分32をより柔軟にでき、このことは、デバイス20が展開される管腔とデバイス20との間に移行ゾーン28を生成する。そのような移行ゾーンは、同一出願人による2010年10月1日出願の米国特許出願第61/388,857号明細書(この明細書の開示はその全体において参照することにより本願明細書に援用される)に開示されているように痙攣を最小限にすると考えられている。近位端部分30における移行ゾーン28は、メッシュ34となるパターン68をさらに含んでもよく、このパターンは、メッシュ34の残りの部分のパターンよりも密度が低い、すなわちより開放的である。
【0022】
管腔内デバイス20は、カバー35に少なくとも1つの開口部75を含む。開口部75は、端部分30及び32の間にあり、且つデバイス20の遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するために設けられている。開口部75は、管腔の粘膜が開口部75内に入り込むことによって端部分30及び32の間でデバイス20を把持することができる領域を与える。このことは管腔の粘膜の捕捉を与え、この管腔内では、MUCOSAL CAPTURE FIXATION OF MEDICAL DEVICE(医療デバイスの粘膜捕捉固定)と題する米国特許出願公開第2010/0198237号明細書(この明細書の開示は参照することにより本願明細書に援用される)に説明されている原理を使用して、デバイス20が位置決めされる。端部分30及び32の間における開口部75の配置はさらに、管腔内における管腔内デバイス20の固定を補助する。作用の原理は完全に分かっているわけではないが、蠕動波が管腔を下方へと通過すると、蠕動波は、内向き圧力が上昇した領域(複数)と圧力が低下した領域(複数)とが交互になった通り過ぎる領域を生成すると考えられる。開口部75がない場合には、端部分30及び32のすぐ近くに圧力低下領域(複数)を伴って端部分30及び32の間に圧力上昇領域(単数)を有し、それにより、端部分30,32が覆われていないままであったとしても、遠位への遊走に抗するようないかなる部分もデバイス20に有さない可能性があるかもしれない。
【0023】
図示の実施形態では、開口部75は、蠕動波の移動方向と一致したデバイス20の軸Aに平行な幅Wを有している。開口部75は、壁部26の周囲に半径方向に分散されているパターンを形成している。このことは、図示の実施形態では、開口部75が壁部を囲むように延在する帯の形態にあることによって達成される。しかしながら、下記で詳細に説明するように、他の形状も可能である。
【0024】
開口部75は、構造体34を画成する線材の周りでの細胞増殖を促進する貫通開口部として説明される。或いは、開口部75は、例えば除去を容易にするために、メッシュ34への粘膜の増殖付着量を調整するように構成され得る。このことは、管腔からデバイス20を除去するために必要な労力量を低減する。粘膜の増殖を調整するための1つの方法は、開口部75の幅Wを特定の幅よりも小さくするように選択することである。図示の実施形態では、幅Wは約7.5ミリメートルであるが、他の寸法も可能である。その代わりに、又はそれに加えて、カバー35は本質的には、開口部75において、メッシュ34の外側では除去されるが、メッシュ75の内側で存在することができる。このことは、粘膜が開口部75内に入り込むがメッシュのストランドの周りでは通常成長しないように抑制されることを可能にする。しかしながら、メッシュのストランドの周りでの粘膜の増殖が発生した場合でも(これは、メッシュ34のストランドを取り囲むかたちで粘膜の一部同士が互いの中に成長するときに発生し、このことは、デバイス20の長期的な配置における助けとなる)、焼灼のような増殖を除去する技術が既知である。また、開口部75から粘膜を穏やかに引き離すために、内視鏡などのツールも、壁部26と食道との間に挿入することができる。
【0025】
図示の実施形態では、壁部26は、軸Aに関する略円筒状をしており、開口部75は、壁部26の実質的に全周にわたり軸Aに略垂直に延在する開放した帯の形状である。しかしながら、当業者にとって他の形状は明らかであろう。例えば、下記で詳細に説明するように、壁部26の実質的に全周にわたり軸Aに略垂直に延在するパターンで、複数の離散した開口部を配列することができる。
【0026】
代替の実施形態では、管腔内デバイス120は、カバー135により覆われたメッシュ134のような支持構造体で構成される壁部126によって画成される表面124を含む(
図3)。デバイス120は複数の開口部を含み、これら開口部は、蠕動波の移動方向に延在する軸Aに垂直に且つ壁部126の外周の周りに延在するパターン(複数)を形成する。これらのパターンは、近位端部分130と遠位端部分132との間の開口した帯部175(複数)の形態をしている。帯部175は、軸Aに略垂直に且つ実質的に壁部126を囲むように延在する。各開口部175は、粘膜の増殖を調整する傾向がある軸Aに垂直な寸法Wを有するが、他の寸法が選択されてもよい。帯部175は、蠕動波の波長(の値)と同じ桁数の大きさ(の値)をした距離Sだけ離して配置されている。図示の実施形態では、距離Sは、蠕動波の波長以上の大きさである。このことは次のことを確実にする、つまり、蠕動波によって引き起こされる管腔壁の圧力低下の領域が一方の帯部175を越えて通過するとき、管腔壁の圧力上昇の領域は同時に他方の帯部175を越えて通過し、そして逆も同様に生じることである。これにより、次のことが確実になる、つまり、遠位への遊走に抗するために、蠕動波が通過するときに圧力低下の領域が1つの帯部175に作用する状態でも、壁部を固定するように他の帯部175に作用する圧力上昇の領域が通常あることである。図解する実施形態では、帯部(複数)175は、蠕動波の波長よりも大きい距離Sだけ離れて配置されている。例として、蠕動波の波長が約1〜2センチメートルの場合、距離Sは約2〜3センチメートル又はそれ以上である。2つの帯部175を備えてデバイス120が説明されているが、3つ以上の帯部が用いられてもよいことは理解されるべきである。また、離散した開口部(複数)のような他のパターンも用いられてもよい。
【0027】
1つの適用例では、管腔内デバイス20は肥満症用デバイスであり、部材22は、食道の遠位部分の形状及びサイズに略適合するように構成された食道用部材である。同一出願人による米国特許出願公開第2007/0293716号明細書に開示されているように(この明細書の開示は参照することにより本願明細書に援用される)、そのような肥満症用デバイスは、食物により引き起こされる膨満を増大させること及び食物がない場合には膨満を装うことによって、少なくとも部分的な満腹度を引き起こすのに十分であるように受容者の神経ホルモン機構に影響を与えるために、表面24を用いて受容器官を刺激する。しかしながら、管腔内デバイス20は、その代わりとして、食道内の狭窄、瘻孔などを治療するように構成された食道用ステントとすることができる。或いは、管腔内デバイス20は、結腸内の狭窄、瘻孔などを治療するように構成された大腸用ステントとすることができる。当業者には、尿管、尿道、胆管、ファローピウス管、精管などのために構成されたステントを含んだ他の適用は明らかであろう。
【0028】
別の代替実施形態では、管腔内デバイス220は、食道用壁部336によって画成される食道用表面324をもつ食道用部材322を有する肥満症用デバイスの形態をしている(
図4及び
図5)。食道用表面324は、食道の一部の形状及びサイズに略適合するように構成されている。食道用壁部336は、蠕動波の移動方向である食道の延長方向への軸Aに沿って離れて配置される端部分330,332を有している。壁部336は、メッシュ334及びメッシュ334を上から覆うカバー335による形態の支持構造体によって画成されている。カバー335は、既に説明した帯部75及び175と同様の様式で食道用部材322の遠位への遊走を引き起こす蠕動波に抗するために、カバー335内において端部分330及び332の間に少なくとも1つの開口部375を含む。
【0029】
肥満症用デバイス220は、噴門用表面352を画成する噴門用壁部354を有する噴門用部材350をさらに含み、この噴門用表面352は、胃の噴門部の一部の形状及びサイズに略適合するように構成されている。噴門用表面352及び/又は食道用表面324は、食物により引き起こされる膨満を増大させること及び食物がない場合には膨満を装うことによって、少なくとも部分的な満腹度を引き起こすのに十分であるように受容者の神経ホルモン機構に影響を与えるためのものである。肥満症用デバイス220は、食道用部材322及び噴門用部材350に接続される連結体356をさらに含む。連結体356は、胃食道接合部の偽括約筋(pseudo-sphincter)との干渉を最小限にするかたちで、偽括約筋を通る。米国特許出願公開第2010/0030017号明細書に開示されているように(この明細書の開示は参照することにより本願明細書に援用される)、(複数の)繋留デバイス(tether devices)が、食道用部材322と連結体356の反対側の噴門用部材350との間の本来の位置に取り付けられることができる。連結体356は、肥満症用デバイス220を展開している間において連結体356を適切に位置決めすることを可能にするために、連結体356に沿って延在する金糸などのX線不透過性マーカーを有することができる。
【0030】
さらに別の実施形態では、肥満症用デバイス420は、食道の全体的なサイズ及び形状に拡がる円筒形状の壁部426を有する食道用部材422と、胃の噴門部の全体的なサイズ及び形状に拡がる噴門用部材450とを含む(
図6〜
図9)。部材422及び450は、GE(胃食道)接合部の働きを抑制しないかたちでGE接合部を通る連結体456に接続されている。食道用壁部426は、メッシュ434のような支持体によって画成され、このメッシュ434は、蠕動波の伝播に関する近位端部分430及び遠位端部分432を規定するシリコーンカバー435のようなカバーによって覆われている。食道用壁部426は、端部分430及び432の間に固定用開口部475(複数)を含む。開口部475(複数)は、距離Sで分かれた2つのパターンで壁部426の外周の周りに配列される離散した開口部(複数)である。前述のように、距離Sは、蠕動波長と同じ桁数の大きさであり、そして蠕動波長以上の大きさであるが、開口部475は端部分430,432の内側にある。3つの開口部475が壁部426の外周の周りで半径方向にほぼ等距離で間隔をあけて配置されている開口部475の1つのパターンが、
図7に示されている。各パターンにおいて3つの開口部が示されているが、それよりも多数又は少数の開口部を用いることができる。また、2つのパターンの各々の開口部475は、軸Aの方向で互いと略一直線上に並べられているが、それら開口部は互いからにオフセットされることもできる。
【0031】
図示の実施形態では、各開口部475は、ひし形形状のような直線で囲まれた多角形の形態をして、メッシュ434における4つの隣接するセルで構成されている。これにより、食道用部材422を即座に固定するように粘膜が開口部475に入り込むことが可能となり、且つ、長期間の固定のために各開口部475の内部の線材の周りで細胞増殖が生じることが可能になる。細胞増殖を促進するために、メッシュのストランドの周りに侵入する膨隆部の成長も共に促進するように粘膜を刺激する技術を用いることができる。例えば、膨隆粘膜を粗い状態にするために、内視鏡下でブラシを食道用部材422の内部に挿入してもよい。また、米国特許出願公開第2010/0198237号明細書に説明されているように、硬化剤のような様々な薬剤を、膨隆粘膜に適用してもよい。また、各開口部475に対して吸引を行うこと又は食道用部材全体に対して吸引を行うことのいずれかによって静脈瘤を生成するように、膨隆粘膜の各セクションを内視鏡を使用するなどして個々に吸引してもよい。内視鏡の端部などから、ゴムバンドなどの帯状体を粘膜の周囲に加えて、細胞が各開口部475内に成長するまで肥満症用デバイスを保持してもよい。そのようなとき、静脈瘤は、ゴムバンドと共に脱落し、胃腸管を通過することができる。或いは、開口部475の中に膨隆する粘膜の各セクションは、様々な形態の注射用コラーゲンなどのような充填剤を注入することで処理されてもよい。充填剤は最終的には体に吸収されることになるが、充填剤は、細胞増殖を生じさせるのを可能にするのに十分に、膨隆粘膜を拡大することになる。当業者には他の技術は明らかであろう。
【0032】
連結体456は、GE(胃食道)接合部の働きに干渉しないかたちで食道用部材420及び噴門用部材450を連結する。図示の実施形態では、連結体456は、2つ以上の引張材又は突張材456a及び456bで構成され、これらは、食道用部材422の遠位開口部と噴門用部材450との間でほぼ等しい半径方向距離だけ離れて間隔をあけて配置されている。突張材456a,456bは、前額面内において左右に方向付けられて示されている。前額面内で方向付けられる場合、噴門用部材を食道用部材に対して角度を付けて方向付けることを可能にするために、より大きい方の湾曲で方向付けられた突張材の方が長くなる。また、湾曲が大きい方の突張材456a,456b(単数)は、大きくなった湾曲の曲率に適合させるために、他方の突張材(単数)よりも可撓性のある材料からなることができる。或いは、突張材(複数)は、矢状面内において前後方向に方向付けられてもよい。突張材が矢状面上で方向付けられる場合、それら突張材は両方とも、ほぼ同じ長さのものとすることができる。噴門用部材は、突張材456a,456bの矢状面を中心に自由に旋回できるため、胃の噴門部分に接触して適切な向きに旋回することになる。
【0033】
図示の実施形態では、引張材456aは、引張材456bの約2倍の長さであるが、寸法は変化してもよい。これにより、
図9から最もよく分かるように、食道用部材422を通る軸Aと噴門用部材450との間に傾斜が生じる。このことは、食道用部材422が、胃の大きな湾曲及び小さな湾曲からなる生来の傾斜にも関わらずにGE接合部を囲繞する噴門の全ての部分に対して圧力を加えるかたちで、引張材456a,456bを介して噴門用部材450を引き付けることを可能にする。このような方法では、噴門用部材450は、開口部475により食道用部材422を食道に単に固定することによって、胃の噴門部分に圧力を加えることができる。このことは、米国特許出願公開第2010/0030017号明細書に開示されている繋留なわのような追加の固定機構を使用する必要性をなくす。しかしながら、噴門用部材450の噴門用表面452などに形成される細胞増殖特性のような他の固定機構を使用することができる。図示の実施形態では、引張材456aは14ミリメートルであり、引張材456bは7ミリメートルである。引張材456a,456bは、米国特許出願公開第2010/0030017号明細書に開示される原理を使用して長さを調整可能に作製されることができ、それにより、米国特許第8,100,931号明細書(この明細書の開示は参照することにより本願明細書に援用される)に説明されているように、受容者によって達成される満腹度の量を設定することができる。
【0034】
受容者は、開口部75、175及び475内にあるメッシュ線材の周りに細胞が増殖することができるようにするために、1週間又は2週間、固形食を避けるように指示され得る。細胞増殖の形成前にデバイスが遊走した場合には、デバイスが胃に存在するため、受容者は傷つけられない。医師は、デバイスを適所に引き戻すことができる。或いは、デバイスは、とり除くように移動させられ、食道部分の周りに巻き付けられる縫合糸を用いて再展開されてもよい。縫合糸は、受容者の臼歯、又は、歯科矯正医によって使用されるタイプのものであり且つ歯に一時的に固定される矯正金具などに取り付けられることができる。そのような縫合糸は、受容者によって十分我慢できるものであり、そして、細胞増殖が起こった後にもはや必要なくなると切り取られることができる。
【0035】
図10は、よりよく説明するために平らにされているが粘膜捕捉開口部をもたない食道用部材422を有する肥満症用デバイスを示している。
【0036】
図11は、よりよく説明するために平らにされており粘膜捕捉開口部475a(複数)をもつ食道用部材422aを有する肥満症用デバイスを示し、これら粘膜捕捉開口部475aは、食道用壁部にある隣接する開放したセルにより形成される「Z」のパターンによって画成される。
【0037】
図12は、粘膜捕捉開口部475b(複数)をもつ平らにされた食道用部材422bを有する肥満症用デバイスを示し、これら粘膜捕捉開口部475bは、隣り合うひし形形状のパターンで配列され、ひし形形状のそれぞれは食道用壁部にある4つの開放したセルで構成される。
【0038】
図13は、粘膜捕捉開口部475c(複数)をもつ平らにされた食道用部材422cを有する肥満症用デバイスを示し、これら粘膜捕捉開口部475cはひし形形状であり、ひし形形状のそれぞれは、メッシュの4つの隣接する開放したセルで構成され、このとき、開口部475cが、食道内の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離「S」だけ離すように間隔をあけて配置されるパターンで配列されている。
【0039】
図14は、開口部475e(複数)をもつ平らにされた食道用部材422eを有する肥満症用デバイスを示し、これら開口部475eはそれぞれ、メッシュの3つの隣接する開放したセルをそれぞれが含む3つの交差するラインで構成された「H」の形状である。
【0040】
図15は、複数の開口部475fをもつ平らにされた食道用部材422fを有する肥満症用デバイスを示し、これら開口部475fはそれぞれ、開口部475eと同様の「H」の形状であるが、これら開口部475fは、食道の蠕動波の波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離「S」だけ離すように間隔をあけて配置されるパターンで配列されている。
【0041】
図16は、複数の開口部475gをもつ平らにされた食道用部材422gを有する肥満症用デバイスを示し、これら開口部475gはそれぞれ、開口部475e及び475fと同様の「H」の形状であるが、これら開口部475gは、互いに対して異なる向きを有する形状を伴っている。
【0042】
図17、
図18及び
図19はそれぞれ、開口部475h、475i及び475jをもつ平らにされた食道用部材422h、422i及び422jを有する肥満症用デバイスを示し、各開口部475h、475i及び475jは、3つの開放したセルによる交差するラインによってそれぞれが画成される十字形状である。しかしながら、開口部は、各食道用部材において異なって配列されている。他の開口部の形状及び配列は技能者には明白であろう。
【0043】
図20に示す食道用部材520は、可撓性のある突張材456を用いて共に結合されるセクション520a,520b,520cで構成されている。各セクション520a,520b,520cは開口部175(単数)を有し、その結果、これら開口部175は、食道の蠕動波長と少なくとも同じ桁数の大きさの距離Sだけ離すように間隔をあけて配置される。このような方法では、少なくとも1つの開口部175が、蠕動波が通過するときに食道によって堅固な係合を受けることになる。それらセクションは、別々に分かれている突張材556によって連結されるように示されているが、共通のカバーによって結合されることができ、そうでなく別れたメッシュセクションで単に構成されることもできる。そして、これらメッシュセクションは、それら自体がニチノールワイヤメッシュ、ステンレス鋼又はポリマーで構成されることができる。また、食道用部材520は、食道用部材520を噴門用部材(
図20には図示せず)と連結する2つの突張材556a,556bを備えて示されてもいる。しかしながら、各セクション520a、520b及び520cは、突張材によって噴門用部材に個々に連結されることができ、その結果、食道蠕動波が通過するときには噴門用部材に加えられる張力が常に存在するということは、理解されるべきである。
【0044】
図21〜26は、なんらかの形態の開口部475L、476N、475P、475R及び475Tをそれぞれが備える様々な平らにされた食道用部材422K、422M、422O、422Q、422S及び422Tを示し、これらの開口部は、メッシュの線材の周りでの粘膜捕捉及び粘膜増殖のために、1つのカバー表面上でメッシュの少なくとも一部を露出させる開口部をもたらす。平らにされた食道用部材の少なくともいくつかは、メッシュセクションによる横切りを受けず且つ主に粘膜捕捉を目的とした開口部475K、475M、475O、475Q及び475Sを有している。開口部475K、475M、475O、475Q及び475Sは、次のような程度に十分に大きくなっている、つまり、粘膜のより大きい部分が、開口部の全てに細胞増殖が発生するまでの一時的な固定のために開口部に捕捉されることができ、且つ、吸引による補助、粘膜の直径を大きくするためのコラーゲン充填剤の注入による補助などを受けることができる程度である。
【0045】
上述の説明は、本発明のいくつかの実施形態を説明するものであるが、当業者には、特許請求の範囲で別に定義するような本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに、これらの実施形態に対して変形及び変更がなされ得ることが理解されるであろう。本発明は、本明細書で説明した様々な実施形態又は本発明の態様の全ての組み合わせを包含する。本発明のあらゆる実施形態は、任意の他の実施形態と併用することで、本発明の追加の実施形態を説明することできるということが理解される。さらに、追加の実施形態を説明するのに、実施形態のいかなる要素も、いずれの実施形態におけるあらゆる他の要素と組み合わせることができる。