(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記準備の前に、前記カーボンナノチューブの少なくとも一部は互いに束状または塊になっていて、かつ前記準備の間に少なくとも前記の互いに束状または塊になっているカーボンナノチューブの少なくとも一部を前記酸が分離する、請求項1に記載の方法。
前記準備が最初に前記カーボンナノチューブを前記酸と混合し、それから少なくとも1つの多環芳香族部分を含む前記の化合物を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
前記カーボンナノチューブの少なくとも一部は互いに束状または塊になっていて、前記混合の間に前記酸が互いに束状または塊になっている前記カーボンナノチューブの少なくとも一部を分離する、請求項4に記載の方法。
前記準備が最初に少なくとも1つの多環芳香族部分を含む前記の化合物と前記酸を混合し、それから前記カーボンナノチューブを加えることを含む、請求項1に記載の方法。
少なくとも1つの芳香族部分を含む前記化合物がナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、クリセン、トリフェニレン、ペンタセン、ペンタフェン、ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン、アンタントレン、コランヌ
レン、オバレン、フラーレン、およびこれらの一部を含む化合物から成る群から選択された置換および非置換化合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
前記酸が硫酸、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、およびこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
前記の非共有結合および反応から得られたカーボンナノチューブ分散系のカーボンナノチューブの濃度が、分散系の全重量を重量で100%としたものをベースとして、少なくとも重量で0.05%である、請求項1に記載の方法。
前記非共有結合および反応から得られたカーボンナノチューブ分散系が7,000Ω/sq未満のシート抵抗であるフィルムに形成することが可能な、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<発明による方法>
本発明による方法は広くCNT、多環芳香族部分(少なくとも1つの多環芳香族部分を持つ化合物の一部として供給される)、および酸を反応させる方向に向けられている。互いに束状または塊になっている可能性のあるCNTをバラバラにするために先ずCNTを酸に加え、次いで少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物を加える。代案として、少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物を酸と混ぜ合わせ、次いでCNTを加えることも可能である。さらなる選択肢として、少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物およびCNTを先ず混ぜ合わせ、次いで酸を加えることもできる。
【0012】
加える順序にかかわらず混合物は安定した分散が達成されるまで、すなわち分散系が変化せず本質的に安定するまでかき混ぜられなくてはならない。これには一般に約6時間から約4日間を要し、約10時間から約2日間がより好ましく、約12時間から約24時間がさらにより好ましい。この間の混合物の温度は約0℃から約100℃が好ましく、約15℃から約60℃がより好ましく、約20℃から約25℃がさらにより好ましい。
【0013】
この反応処理過程の間、幾つかのことが、通常は同時に起こる。酸はすべての束状または塊のCNTをバラバラに解体する。多環芳香族部分は(可逆的に)CNTと結合する。多環芳香族部分は非共有的にCNTと結合することが好ましい。ここに用いた「非共有結合」という用語は共有結合のように一対の電子を密接に共有することを伴わず、むしろ電磁相互作用のより分散した変化を伴う結合を意味するために用いられる。非共有結合の好適な例には水素結合および静電気的な分子間引力が含まれる。
【0014】
さらに、酸は少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物を機能化することが好ましい(例えば、酸が少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物をスルホン化するとか)。都合のよいことに、この処理過程は超音波処理を伴わずに達成できる。さらにこの反応中にCNTは酸化されずかつまた機能化されないままでいることが望ましい(または少なくとも実証された欠陥の場所で起きることのあるスルホン化の危険性を越えて機能化しすぎない)。
【0015】
安定した反応混合物が完成した後、混合物の温度は約−5℃から約40℃の範囲に下げられることが好ましく、約−5℃から約10℃がさらにより好ましい。これはでき上がった分散系を氷または氷のように冷たい水に移すことで達成できる。この段階で分散物のpHは約0から約1で、約0から約0.5がより好ましい。pHは塩基(例えば、濃い水酸化アンモニウム)を酸性の強い分散系に加え、pHを約0から約10の範囲まで調整することが好ましく、約0から約8までがさらにより好ましい。次いで溶液をろ過しさらに脱イオン(「DI」)水および希薄水酸化アンモニウムで洗浄して本発明によるカーボンナノチューブの固体または分散物(クロスフローろ過が用いられたかどうかにより)を得ることができ、これは例えばインク類の作成に用いることができる。
【0016】
<発明による方法を実施するための原材料>
本発明による方法に用いる適当なCNTには全ての単層、二層、または多層のCNT(それぞれ、SWCNTs、DWCNTs、およびMWCNTs)が含まれる。CNTは新品同様、すなわちCNTに側壁欠陥、機能性付与の存在、またはドーピングがほとんどか、または全くないことが好ましい。新品同様ではないCNTを使用する場合もあるが、存在する機能性またはドーピングは酸処理により損傷する可能性があり、このため結果的に導電性が影響を受ける可能性がある。この処理過程用のCNTの典型的なタイプにはCG200 CNTおよびSG65 CNT(SWeNT社から入手可能)、XBC3350 CNT (CCNI社から入手可能)、HiPco
TM CNT(Nanointegris社から入手可能)、同様にThomas Swan社 および Cheap Tubes社から入手可能なものが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明による方法に用いる少なくとも1つの多環芳香族部分を含む適切な化合物はCNTの表面に非共有的に結合することが可能な物理的および電子的構造を持つ任意の非置換または置換された多環芳香族を含む。多環芳香族部分は平面的または大きな平面部分がありかつ含まれる炭素の範囲は約C
10から約C
100であることが好ましく、約C
12から約C
30がより好ましく、約C
16から約C
20がさらにより好ましい。典型的な多環芳香族化合物にはナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、ピレン、テトラセン、テトラフェン、クリセン、トリフェニレン、ペンタセン、ペンタフェン、ペリレン、ベンゾ[a]ピレン、コロネン、アンタントレン、コランヌレン、オバレン、グラフェン、フラーレン、シクロパラフェニレン、ポリパラフェニレン、シクロフェン、および類似の分子類、同様に前述の一部を含む化合物から成る群から選択された化合物の置換(全ての位置で)および非置換型が含まれる。典型的な置換多環芳香族化合物には1−ピレン酪酸、1−ピレンメチルアミン塩酸塩、ルブレン、ピレン、およびトリフェニレンから成る群から選択されたものが含まれる。
【0018】
本発明の処理過程に用いる適当な酸類には全ての強酸(および好ましくはスルホン酸化強酸)または超酸が含まれる。好ましくは酸のpKaが約−1未満で、約−12未満が好ましく、さらに約−12から−14がより好ましい。典型的な酸には硫酸(発煙硫酸)、クロロスルホン酸、トリフル酸、p−トルエンスルホン酸、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
CNTおよび少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物は本発明による方法において、好ましくはCNTの多環芳香族部分に対するモル比が約25:75から約75:25の様なレベルで用いられ、約35:65から約65:35が好ましく、約45:55から約55:45がより好ましく、約50:50がさらにより好ましい。酸(または酸類、もしも酸の混合物が用いられるなら)は分散系の全重量を重量で100%としたものをベースとして、重量で約90%から約99.99%のレベルで用いられることが好ましく、重量で約95%から約99.9%がより好ましく、重量で約98%から約99.8%がさらにより好ましい。
【0020】
一つの実施態様において、でき上がった分散系は実質的に界面活性剤を含まない。すなわち、CNTの全重量を重量で100%としたものをベースとして、この方法で用いられおよび/または最終分散系内に含まれる界面活性剤は重量で約1%未満で、重量で約0.5%未満が好ましく、さらに重量で約0%がより好ましい。
【0021】
別の実施態様において、CNT分散系はCNT、少なくとも1つの多環芳香族部分、および酸から基本的に成る、またはこれらのみから成る(ここに酸の少なくとも一部あるいは全てが少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物と反応している)。
【0022】
<でき上がった分散系およびその用途>
上に説明した二重に機能性が付与される本発明による方法によりCNTはその望ましい電子特性を損なうことなく約0.5g/L(重量で約0.05%)を越える濃度で分散することが可能となり、約1g/L(重量で約0.10%)を越えることが好ましく、約1.5g/Lを越えることが好ましく、約1.5g/Lから約3g/Lがより好ましい。その上、処理後にCNTをさらに分散するとかインクを作成するとか、などのために何らかの溶媒を加えること以上のさらなる措置は必要ない。すなわち、ひとたびCNTが分散してしまうと導電添加物類またはドーパント類は必要ない。
【0023】
この処理過程の間のCNTに対する損傷を最小限に、または回避すらできるので、でき上がった分散系内のCNTのD/G比は本発明による分散系を作成するために使用した生原料CNTのD/G比の約0.2以内で、約0.1以内が好ましく、約0.05以内がより好ましい。
【0024】
でき上がった溶液または分散系は少なくとも約2週間は常温保存が可能で(すなわち、目に付くような束状化がない)、少なくとも約3ヶ月が好ましく、少なくとも約6ヶ月がより好ましい。さらに、CNTの機能性付与が非共有であるため、これがπネットワークを邪魔することがなく、それどころか代わりに電子構造を完全なままに残すのででき上がったCNTから作られたフィルムの導電性は非常に高い。少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物に対する機能性の付与もまた、でき上がったCNT分散系から形成されたフィルムの導電性を増大するために役立っている。この機能性の付与により少なくとも1つの多環芳香族部分を含む化合物の溶解性が増大しこれにより機能性を付与した多環芳香族炭化水素およびCNTの間にπ−π相互作用をもたらす。
【0025】
分散系はエレクトロニクス印刷用途の導電性が非常に高い配線を印刷するインク類を形成するために用いることができる。分散系またはインクから既知の方法(例えば、インクジェット、スクリーン、フレキソ、グラビア印刷、またはスピンおよびスプレーコーティングを含む)を用いてフィルムを形成することができる。でき上がったフィルムの導電性は高くかつシート抵抗は低い。より具体的には、シート抵抗は85%Tにおいて約7,000Ω/sq未満となり、85%Tにおいて約2,000Ω/sq未満が好ましく、85%Tにおいて約300Ω/sqから約600Ω/sqがより好ましい。さらに、本発明による方法を用いれば、塗膜を堆積し終えた後の洗浄段階が不要である。上の特性が本発明の分散系およびフィルムを相互配線、集積回路、マイクロエレクトロニクス、光電子工学、フォトエレクトロニクス、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)、太陽光発電、センサー、およびLEDを含む多くの電子機器に対して有用にしている。
【0026】
以下の実施例は本発明に合致した好適な方法を説明する。しかし当然ながら、これらの実施例は実例として示すものであり、その内容のいかなるものも発明全体の適用範囲を制約するものではない。
【0027】
<実施例1>
カーボンナノチューブの1−ピレン酪酸との反応
この手順において、203mgのCG200カーボンナノチューブ(製品番号724777、SouthWest NanoTechnologies社、オクラホマ州ノーマン)および205mgの1−ピレン酪酸(製品番号257354、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を250mlのシュレンクフラスコに入れ窒素を吹き込んだ。次いで、60mlの発煙硫酸(20%遊離SO
3、製品番号435597、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)をフラスコ内にカニューレで入れた。溶液を室温で一晩中かき混ぜた。溶液を冷水中に入れて急冷する試みを行ったが、カニューレが詰まった。発煙硫酸をフラスコ内に溶液が自由流動するまでカニューレで入れ、それから溶液を再度室温で一晩中かき混ぜた。溶液は自由流動しかつ均一であった。この溶液を300mLの氷のように冷たいDI水内に滴状にカニューレで入れた。次いでこの溶液のpHを350mLの濃水酸化アンモニウム(重量で29%、製品番号5820、J.T. Baker社、ニュージャージー州フィリップスバーグ)で4.5まで調整した。溶液を常時機械的にかき混ぜることによりバッキーペーパーがフィルター表面に形成することを防ぎながら10−μmポリカーボネートフィルター(Isopore
TMメンブレンフィルター、カタログ番号TCTP04700、直径47mm、Millipore社、マサチューセッツ州ビレリカ)を通してろ過した。ろ過は連続的に100mLのDI水を溶液が透明になるまで加えながら実施した。
【0028】
次に、670mgのウェットチューブを1リットルのpH8.5の3℃の水酸化アンモニウム内で一晩中超音波処理した。濃度(フィルター板で測定した)は0.364g/Lであった。溶液を22.5krpmで30分間遠心分離したが、顕著な残渣が析出することはなかった。D/G比を測定し0.082であった(633−nmレーザー;
図1参照)。金属含有量は熱重量分析により3.1%の金属であることが判った(TGA;
図2参照)。比較として、生原料のカーボンナノチューブはTGAで8.4%の金属であった(
図3)。TGAはウェットサンプル(固形分0.7449%)で実施した。分解ピークは294.66℃で起こった。T
Onset は503.94℃であった。幾つかのピークが526.90℃、539.44℃および554.32℃で起きた。
【0029】
溶液をガラス上にスプレーコートし、フィルムのシート抵抗は%透過率について測定した(%T;表1)。%Tは塗膜数が増えるにしたがって減少した。でき上がったフィルのシート抵抗が低いことが非共有の機能性付与を示唆していて、それは共有の機能性付与は欠陥を発生させ、欠陥は導電性を減少させるからである。
【0031】
<実施例2>
カーボンナノチューブの1−ピレン酪酸およびグラフェンとの反応
この実施例において、200mgのCG200カーボンナノチューブ、200mgの1−ピレン酪酸、および200mgのxGnP
TMグラフィンナノプレートレット(直径25ミクロン、ロットSU52909、XG Sciences社、ミズリー州ランシング)を250mLのシュレンクフラスコに入れ窒素を吹き込んだ。次いで、276mgの発煙硫酸(20%遊離SO
3)をフラスコ内にカニューレで入れた。溶液を2日間かき混ぜた。溶液は自由に流れかつ均一であった。この溶液を滴状に250mLの氷のように冷たいDI水内にカニューレで入れた。次に、それから300mLの水酸化アンモニウム(重量で24%、製品番号09870,Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を滴状で加えた。次いででき上がった溶液を常時機械的にかき混ぜることによりバッキーペーパーがフィルター表面に形成することを防ぎながら10−μmポリカーボネートフィルターを通してろ過した。ろ過は継続的に100mLのDI水を溶液が透明になるまで加えながら実施した。
【0032】
回収した湿った固体を250mLのpH8.8の水酸化アンモニウム内に超音波処理し22.5krpmで30分間遠心分離した。でき上がった溶液の光学密度(OD)は550nmで1.85であった。フィルターディスクによる濃度は0.089g/Lであった。D/G比は0.119と測定された(633nmレーザー;
図4参照)。比較のため、生原料のCG200チューブのD/G比は0.016であった(633nmレーザー;
図5参照)。ラマンスペクトルはチューブが高度には機能付与されていないことを示した。ラジアルブリージングモードで有意なピークは192.6nm、217.7nm、および254.0nmで観察された(633nmレーザー;
図6)。生原料のCG200チューブでは有意なラジアルブリージングモードのピークが215.5nm、241.5nm、254.3nm、335.7nm、および344.4nmで観察された(633nmレーザー;
図7)。
【0033】
溶液をガラス上にスプレーコートし、それからフィルムのシート抵抗を%透過率に関して測定した(%T;
図2参照)
【0035】
<実施例3>
半導体カーボンナノチューブの1−ピレン酪酸との反応
この手順において、320mgのSG65カーボンナノチューブ(South West NanoTechnologies社、オクラホマ州ノーマン)、および170mgの1−ピレン酪酸を250mLのシュレンクフラスコに入れ窒素を吹き込んだ。次いで、328.2グラムの発煙硫酸(20%遊離SO
3)をフラスコ内にカニューレで入れた。この溶液を室温で一晩中かき混ぜた。この溶液を滴状に250mLの氷のように冷たいDI水内にカニューレで入れた。次いで、250mLの29%w/vの水酸化アンモニウムを滴状で加えた。この溶液を10リットルの反応容器内において8Lの脱イオン水で希釈した。溶液をクロスフローろ過を用いてろ過しそれから8リットルの脱イオン水内に回収した。次に、3mLの29%w/vの水酸化アンモニウムを加え、溶液を2時間超音波処理した。再度、溶液をクロスフローろ過を用いてろ過し8リットルの脱イオン水内に回収した。このろ過をもう一度繰り返し、チューブを4リットルの脱イオン水内に回収し、それから29%w/vの水酸化アンモニウムによりpHを8.5に調整した。
【0036】
この溶液を細かく分散した。これを2回、2.5krpmで30分間遠心分離にかけた。でき上がった溶液のODは550nmで0.60であった。濃度は0.030g/Lであった(フィルターディスクで測定して)。D/G比は0.226と測定された(633nmレーザー;
図8参照)。生原料のSG65チューブのD/G比は0.18であった(633nmレーザー;
図9参照)。ラジアルブリージングモードの有意なピークは216.7nm、255.0nm、281.8nm、293.6nm、306.0nm、332.5nm、および417.3nmにあった(633nmレーザー;
図10参照)。生原料のSG65チューブのラジアルブリージングモードの有意なピークは189.7nm、213.4nm、252.5nm、279.6nm、303.8nm、および332.2nmにあった(633nmレーザー;スペクトル9)。
【0037】
溶液をガラス上にスプレーコートし、それからフィルムのシート抵抗を%透過率に関して測定した(表3参照)。シート抵抗は半導体フィルムとしてはかなり低かった。
【0039】
<実施例4>
カーボンナノチューブの1−ピレンメチルアミン塩酸塩との反応
この実施例において、840mgのCG200カーボンナノチューブおよび1,230mgの1−ピレンメチルアミン塩酸塩(製品番号401633、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を3リットル、3つ首の丸底フラスコ内に入れ窒素を吹き込んだ。次いで、1.35リットルの濃硫酸(製品番号435589、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)をフラスコに注ぎ入れた。この溶液を容積で50%の水酸化アンモニウム(重量で29%)がDI水内に入った氷のように冷たい3.0リットルの溶液中に滴状にカニューレで入れた。でき上がった溶液を一晩中かき混ぜた。かき混ぜた後、溶液を10リットルの反応容器内において8リットルのDI水で希釈した。この溶液を温度を3℃に設定して2時間超音波処理した(Neptune Ultrasonics社の超音波発生器 モデルN1500−C−XHSKA−120−480/12 付の Blackstone−Ney Ultrasonics社、モデルPROHT1212 ソニケーターでポテンショメーターを最大に設定し、測定した出力は40〜45W/in
2であった)。溶液を超音波処理しながらクロスフローろ過を用いてろ過し、それから8リットルの脱イオン水内に回収することを2回おこなった。次に、3mLの29%w/vの水酸化アンモニウムを加え、溶液を超音波処理しながらクロスフローろ過を用いてろ過し、それから4リットルの脱イオン水内に回収した。最後に、3mLの29%w/vの水酸化アンモニウムを加え、溶液を2時間超音波処理した。
【0040】
でき上がった溶液は高度に分散していた。これを22.5krpmで30分間遠心分離した。この溶液を1:2でDI水内に希釈したものの550nmにおけるODは1.42であった。その濃度はフィルターディスクで0.132g/Lと測定された。ろ過の後、3.4753gの湿った製品が回収できた。このサンプルはTGAにより固形分が18.67%と判定され、その結果全重量が0.649グラム、または収率が81%であることが判った。272.62℃でわずかな分解が観測された。T
0nset は500.48℃と判明し、さらに残渣は12.91%であった。
【0041】
D/G比は0.010と測定された(633nmレーザー;
図11参照)。生原料のCG200チューブのD/G比は0.016であった(633nmレーザー;
図5参照)。ラジアルブリージングモードにおいて有意なピークは197.3nm、220.4nm、255.8nm、284.5nm、および336.8nmにあった(633nmレーザー;
図12参照)。生原料のCG200のラジアルブリージングモードにおいて有意なピークは215.5nm、241.5nm、254.3nm、335.7nm、および344.4nmにあった(633nmレーザー;
図7参照)。
【0042】
溶液をガラスの上にスプレーコートし、それからフィルムのシート抵抗を%透過率に関して測定した。
【0044】
<実施例5>
カーボンナノチューブの1−ピレンメチルアミン塩酸塩との反応
この実施例において、458mgのXBC3350カーボンナノチューブ(Continental Carbon Nanotechnologies, Inc社、77084テキサス州ヒューストン パークロウ16850)および484mgの1−ピレンメチルアミンHCl(製品番号401633、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を窒素下で150mLのクロロスルホン酸(製品番号571024、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)内に入れた。これを3日間かき混ぜた。溶液を滴状に409グラムの氷内にカニューレで入れ、氷浴内で冷たく保った。フラスコ内に残ったカーボンナノチューブは20mLのDI水と共に冷却した溶液内に洗い流した。添加ロートを用い、290mLの29%w/v水酸化アンモニウム(重量で29%、製品番号5820、J.T. Baker社、ニュージャージー州フィリップスバーグ)を滴状で加えた。溶液はこの処理過程の間氷浴で低温に保った。溶液を室温で一晩中かき混ぜた。次いで溶液を氷内で冷却しそれから250mLの29%w/v水酸化アンモニウムを滴状で加えた。この処理過程の終わりでpHを測定したら9.8であった。
【0045】
次いでこのカーボンナノチューブのスラリーの一部を10μmのポリカーボネートフィルターを通して2日間ろ過した。でき上がったカーボンナノチューブのケーキは部分的に乾燥してしまい見掛けも挙動も粘土のようであった。スラリーの残りはフラスコを100mLのDI水で洗いフィルター内に入れることでろ過に加えた。粘土状のカーボンナノチューブをフィルターから取り出しpHが10.3のDI水内の水酸化アンモニウム250mLを少量ずつ、激しくかき混ぜながら加えた。この添加は1回に5mLずつから始まり、粘土と水酸化アンモニウムが均質になるまで混合した。やがて、これはゲル状になった。溶液が十分に流動性を帯びたとき、1回50mLずつを激しくかき混ぜながら加えた。250mLすべての水酸化アンモニウムが加えられると同時に、混合物を10μmポリカーボネートフィルターに通しろ過した。
【0046】
このCNT粘土をpH10.3のDI水中の水酸化アンモニウム600mL内に300mLずつで2回超音波処理した。超音波処理条件はブースターアタッチメント付の1インチプローブにより90%出力で45分間であった。この処理過程の間、溶液は5℃に設定した冷却浴内にあった。この溶液を23.5krpmで30分間遠心分離した。最終の溶液を遠心分離管の上部からピペットで取り出した。
【0047】
この溶液の濃度はフィルターディスクベースで1.088g/Lと測定された。溶液は非常によく分散していて、10μmポリカーボネートフィルターを全く残渣を残さず容易に通り抜けた。溶液を10倍に希釈してガラス上にスプレーコートしシート抵抗対%透過率を測定した(表5に示す)。D/G比を測定したら0.109であった(633nmレーザー;
図13参照)。生原料のXBC3350チューブのD/G比は0.057であった(633nmレーザー;
図13参照)。ラジアルブリージングモードの有意あるピークは164.6nm、221.8nm、255.1nm、および338.2nmにあった(633nmレーザー;
図14参照)。生原料のXBC3350チューブのラジアルブリージングモードの有意あるピークは154.5nm、166.0nm、218.6nm、256.5nm、および337.2nmにあった(633nmレーザー;
図14参照)。
【0049】
<実施例6>
カーボンナノチューブのルブレンとの反応
この手順において、220mgのカーボンナノチューブおよび230mgのルブレン(製品番号R2206、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を窒素下で100mLの発煙硫酸(20%遊離SO
3、製品番号435597、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)の中で2日間かきまぜた。次いでこれを250mLの氷のように冷やされたDI水内に滴状に入れて急冷した。次に、250mLの水酸化アンモニウム(重量で24%、製品番号09870、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を1時間かけて滴状で加えた。この溶液を10リットルの反応器内に4リットルのDI水と共に注ぎ込み17時間超音波処理した。この時点のpHを測定したら1.98であった。溶液をクロスフローろ過によりろ過しそれから2リットルのDI水内に回収した。6mLの水酸化アンモニウム(24%w/v)でpHを調整し2時間超音波処理し、次いでクロスフローろ過によりろ過した。再度、溶液を2リットルのDI水内に回収し、6mLの水酸化アンモニウム(24%w/v)で塩基性にし、2時間超音波処理した。次いで溶液を再度ろ過して2リットルのDI水内に回収し、それから6mLの水酸化アンモニウム(24%w/v)で塩基性にした。この溶液を一晩中超音波処理した。最後に、この溶液の250mLを取り出して23.5krpmで30分間遠心分離した。
【0050】
この溶液のODを測定したら550nmにおいて1.34であった。溶液をガラス上にスプレーコートし、そのシート抵抗を透過性に対して測定した(表6)。
【0052】
最初の溶液による塗膜は染みだらけで、このことは導電性を改善するためにはもっと洗浄が必要であることを示していた。反応器内に残っていた溶液をクロスフローろ過を用いてろ過し、2リットルのDI水内に回収し、3mLの29%w/v水酸化アンモニウムで塩基性にし、それから24時間超音波処理した。次に、この溶液250mLを反応器から取り出し、23.5krpmで30分間遠心分離した。
【0053】
2回目の溶液のODを測定したら550nmにおいて1.21であった。濃度を測定したら0.612g/L(フィルターディスクで判定)ベースであった。この溶液をスプレーコートし、そのシートの抵抗を透過率に対して測定した(表7参照)。塗膜は均一であった。D/G比を測定したら0.138であった(633nmレーザー;
図15参照)。生原料のCG200チューブのD/G比は0.075であった(633nmレーザー;
図15参照)。ラジアルブリージングモードの有意性のあるピークは192.4nm、216.0nm、254.9nm、282.5nm、および334.2nmで観察された(633nmレーザー;
図16参照)。生原料のCG200チューブのラジアルブリージングモードの有意性のあるピークは193.5nm、218.6nm、257.1nm、283.7nm、337.5nm、および346.1nmにあった(633nmレーザー;
図16参照)。
【0055】
<実施例7>
カーボンナノチューブの発煙硫酸との反応(芳香族炭化水素なし)
この実施例において、219mgのCG200カーボンナノチューブを窒素下で182.8グラムの発煙硫酸(20%遊離SO
3、製品番号435597、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)の中に入れ一晩中かき混ぜた。溶液を250mLの氷のように冷たいDI水中にカニューレで入れた。それからこの溶液を250mLの29%w/vの水酸化アンモニウム(重量で29%、製品番号5820、J.T. Baker社、ニュージャージー州フィリップスバーグ)で中和した。次いでこの混合物または分散系をフィルター表面にバッキーペーパーが形成することを防止するためにかき混ぜながら10μmポリカーボネートフィルター(Isopore
TMメンブレンフィルター、カタログ番号TCTP04700、直径47mm、Millipore社、マサチューセッツ州ビレリカ)を通してろ過した。でき上がったチューブを500mLのDI水中にかき混ぜながら入れそして3回ろ過した。次いでチューブをpH10.5の水酸化アンモニウム500mLの中に入れ超音波浴槽内で一晩中超音波処理した。溶液はひどく束状になっていて分散せず、CNTの発煙硫酸との反応はチューブに機能性を付与するためには不十分であることを示している。
【0056】
<実施例8>
CG200カーボンナノチューブの1−ピレンメチルアミン塩酸塩との反応(酸なし)
この手順において、202mgのCG200カーボンナノチューブ、210mgの1−ピレンメチルアミン塩酸塩、および1リットルのpH10.2のDI水内の水酸化アンモニウムを10リットルの反応器内で混ぜ合わせた。溶液を超音波浴槽内で12時間超音波処理してから、分散をチェックした。混合物は分散していなかった。混合物をさらに17時間超音波処理して分散をチェックした。混合物はまだ分散していなかった。1リットルのDI水を加えて濃度を下げた。次いで混合物をさらに24時間超音波処理して分散をチェックした。それでも混合物はまだ分散しておらず、強酸が不在の上記の条件の下では1−ピレンメチルアミンHClはCNTを溶解または分散させるためには不十分であることを示している。
【0057】
<実施例9>
カーボンナノチューブの1,3,6,8−ピレンテトラスルホン酸四ナトリウム塩水和物との反応(酸なし)
この実施例において、367mgのCG200カーボンナノチューブ、267mgの1,3,6,8−ピレンテトラスルホン酸四ナトリウム塩水和物(製品番号82658、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)、および250mLのpH10.0の水酸化アンモニウムを15時間超音波処理し一晩中放置した。この溶液を22.5krpmで30分間遠心分離し、それから分散した液体を集めた。でき上がった溶液のODを測定したところ550nmにおいて0.53であった。この溶液をガラス上にスプレーコートしたが、どのスライドも導電性はなかった。このことはスルホン酸化ピレン化合物がカーボンナノチューブを溶解はできるが,できた溶液は非常に希薄であることを示している。さらに、この処理過程ででき上がった溶液はスプレーコートした場合に導電性塗膜を作り出さない。
【0058】
<実施例10>
反応生成物を特徴づけるための1−ピレンメチルアミン塩酸塩の発煙硫酸との反応
この実施例において、1.958グラムの1−ピレンメチルアミン塩酸塩(製品番号401633、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を窒素下で75mLの発煙硫酸(20%遊離SO
3、製品番号435597、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)の中に入れ室温で24時間かき混ぜた。この混合物を氷浴内で冷却した75mLのDI水内にカニューレで入れた。次いで、75mLの24%w/v水酸化アンモニウム(製品番号09870、Sigma Aldrich社、ミズリー州セントルイス)を冷却を続けながら、滴状に加えた。pHを測定したら0.3であった。次いで水酸化アンモニウムをpHが7.7になるまでゆっくり加えた。全ての行程の間温度は25℃未満に保たれた。
【0059】
5日間後、黄色の沈殿物を形成した。溶液を振り、それから少量の分割量を採取して溶解特性を検査した。24%w/Vの水酸化アンモニウムを0.5mL加えると沈殿物は速やかに溶解した。沈殿物を10μmのポリカーボネートフィルターを通してろ過し、固形分を集めた。この固体は200mLのDI水に容易に溶解した。溶液を400mLビーカーに入れ107℃に設定したホットプレートを用いて空気流の下でかき混ぜた。この液体が析出するまで約3mLまで濃縮し、これに続けてろ過して銀色した湿った固体を得た。これを3mLのDI水に溶解しシンチレーション用バイアルに入れた。析出するまで溶液を再度蒸発した。固体を集め真空下で乾燥した。
【0060】
次に、10mgの乾燥固形物を0.7mLのNMR管内の1.0mLの重水に入れた。スペクトルを400MHZ INOVA 400 Varian NMRで採った。有意性のあるピークは 8.976ppm(s)、8.748(d,JH=6.0Hz)、8.692(d,JH=6.0Hz)、8.522(d,JH=6.3Hz)、8.245(s)、7.707(d,JH=5.8Hz)、4.624(s,isotopic satellites JD=26.5Hz)、および4.401(s)で観察された。このスペクトルを
図17に示した。
【0061】
マススペクトルはサンプルをメタノール:水 50:50に溶解してからろ過したサンプルを直接ESI質量分析計に注入して得た。
図18は反応生成物のマススペクトルを示している。表8は分子質量域の等方性イオンの存在度を示す。
【0063】
反応生成物の分子量は471Daであった。等方性の存在度は分子式がC
17H
13N0
9S
3であることを示唆している。
1H NMR およびマススペクトルに基づくと、反応生成物は 1−ピレンメチルアミン−3,6,8−トリスルホン酸であった(
図19参照)。
【0064】
<実施例11>
カーボンナノチューブの1−ピレンメチルアミン−3,6,8−トリスルホン酸との溶解の試み
実施例10で説明したように合成した1−ピレンメチルアミン−3,6,8−トリスルホン酸の精製したサンプル(1.58グラム)を213mgのXBC3350カーボンナノチューブ(Continental Carbon Nanotechnologies, Inc.社、テキサス州ヒューストン)と共に250mLのpH10.3の水酸化アンモニウム中に入れた。スラリーを1インチプローブで出力を90%に設定して冷却浴内で45分間超音波処理し、それから溶液を放置して冷却した。スラリーをさらに1時間超音波処理し、次いで23.5krpmで30分間遠視分離した。でき上がった溶液を550nmにおいて測定した光学密度は2.25であった。濃度(フィルターディスクで測定)は0.0736g/Lであった。溶液のODおよび濃度の両方とも実施例5の発明の処理過程で得られたものより1桁低かった。