(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
TSG−6−LMが配列番号360に示すアミノ酸残基20、34、41、54、56、72または84に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含み、ここで、対応するアミノ酸残基は配列番号360に示すTSG−6−LMに対するアラインメントにより同定される、請求項5に記載のTSG−6−LM多量体。
アミノ酸置換がAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)から選択される非塩基性アミノ酸残基へのものである、請求項6に記載のTSG−6−LM多量体。
TSG−6−LMが配列番号360に示すTSG−6−LMのアミノ酸置換K20A、K34AまたはK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基での置換を含む、請求項5〜7のいずれかに記載のTSG−6−LM多量体。
多量体化ドメインが免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、互換性タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール類ならびに安定な多量体を形成する同一または類似サイズの腔内隆起および代償性腔から選択される、請求項1〜9のいずれかに記載のTSG−6−LM多量体。
TSG−6−LM多量体が配列番号211、214または217に示すヌクレオチドの配列または配列番号211、214または217に示すヌクレオチドに対して少なくとも90%配列同一性を示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸の配列を含む、請求項1〜13のいずれかに記載のTSG−6−LM多量体。
ヒアルロナン分解酵素がPH20ヒアルロニダーゼまたはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)付着部位もしくはGPI付着部位の一部を欠くその切断型である、請求項24に記載のキット。
PH20またはその切断型が配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかと少なくとも90%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む、請求項24に記載のキット。
抗ヒアルロナン剤が可溶性PH20ヒアルロニダーゼまたはGPI付着部位の全てまたは一部を欠くヒトPH20ヒアルロニダーゼの切断型である、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
PH20またはその切断型が配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかと少なくとも90%配列同一性を示すアミノ酸の配列である、請求項34に記載の方法。
腫瘍が乳癌、膵癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、甲状腺癌、頚部癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、脳の癌、膀胱癌、胃癌、肝細胞腫、黒色腫、神経膠腫、網膜芽細胞腫、中皮腫、骨髄腫、リンパ腫および白血病から選択される癌である、請求項42に記載の方法。
【発明の概要】
【0006】
要約
ここで提供されるのは、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素で腫瘍を処置する対象を選択する方法である。提供される方法において、腫瘍または癌を有する対象からの組織または体液サンプルを、動物軟骨から調製または単離していないヒアルロナン結合タンパク質(HABP)と接触させる。ヒアルロナン結合タンパク質のサンプルへの結合を検出し、それによりサンプル中のヒアルロナンの量を決定し、サンプル中のヒアルロナンの量が予定した閾値以上であるとき、該対象を抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素での処置に対して選択する。
【0007】
ここで提供されるのは、腫瘍を抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素で処置するための対象を選択する方法であって、ここで、腫瘍または癌を有する対象からの体液を、動物軟骨から調製または単離していないヒアルロナン結合タンパク質(HABP)と接触させ、HABPのサンプルへの結合を比色または蛍光シグナルを伴う固相結合アッセイにより行い、それによりサンプル中のヒアルロナンの量を決定し、これにより、予定した閾値レベルが高HAであるとき、対象を抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置に対して選択する。本方法のいくつかの例において、予定した閾値は少なくともまたは最低0.025μg HA/mlのサンプル、0.030μg/ml、0.035μg/ml、0.040μg/ml、0.045μg/ml、0.050μg/ml、0.055μg/ml、0.060μg/ml、0.065μg/ml、0.070μg/ml、0.08μg/ml、0.09μg/ml。0.1μg/ml、0.2μg/ml、0.3μg/ml以上である。
【0008】
ここで提供されるのは、腫瘍を抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素で処置するための対象を選択する方法であって、ここで、腫瘍または癌を有する対象からの腫瘍組織サンプルを、動物軟骨から調製または単離していないヒアルロナン結合タンパク質(HABP)と接触させ、HABPのサンプルへの結合を組織化学的に行い、それによりサンプル中のヒアルロナンの量を決定し、予定した閾値レベルが、少なくとも+2(HA
+2)または少なくとも+3(HA
+3)のHAスコアであるとき、対象を抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置に対して選択する。いくつかの例において、予定した閾値レベルは少なくとも+3(HA
+3)(高レベル)のHAスコアである。他の例において、予定した閾値レベルが、少なくとも腫瘍(細胞および間質)対腫瘍組織の全染色のパーセントで少なくとも10%、10%〜25%または25%を超える。例えば、予定した閾値が、少なくとも腫瘍(細胞および間質)対腫瘍組織の全染色のパーセントで少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%である。
【0009】
またここで提供されるのは、腫瘍を抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素で処置するための対象を選択する方法であって、対象を、その後抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素で処置する方法である。いくつかの例において、抗ヒアルロナン剤は、正確にまたは約0.01μg/kg(対象の)〜50μg/kg、0.01μg/kg〜20μg/kg、0.01μg/kg〜15μg/kg、0.05μg/kg〜10μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kgの範囲の量の投与量で、投与頻度が1週間に2回、1週間に1回、14日間毎に1回、21日間毎に1回または一ヶ月間に1回で投与するヒアルロナン分解酵素である。本方法の具体例において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素の投与前にまたはヒアルロナン分解酵素の投与後に、典型的に投与したヒアルロナン分解酵素の有害作用を対象において軽減するのに十分な量で投与する。例えば、投与するコルチコステロイドの量は正確にまたは約0.1〜20mg、0.1〜15mg、0.1〜10mg、0.1〜5mg、0.2〜20mg、0.2〜15mg、0.2〜10mg、0.2〜5mg、0.4〜20mg、0.4〜15mg、0.4〜10mg、0.4〜5mg、0.4〜4mg、1〜20mg、1〜15mgまたは1〜10mgである。
【0010】
またここで提供されるのは、対象の抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置の効果を予測する方法である。提供される方法において、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素で処置するまたは処置されている対象の組織または体液サンプルを、動物軟骨から調製または単離していないヒアルロナン結合タンパク質(HABP)と接触させ、ヒアルロナン結合タンパク質のサンプルへの結合を検出し、それによりサンプル中のヒアルロナンの量を決定し、ここで、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置前または直前の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)処置前と比較してヒアルロナンの減少の検出は処置が有効であることの指標である。
【0011】
またここで提供されるのは、対象の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置をモニタリングする方法である。提供される方法において、腫瘍または癌を有する対象からの組織または体液サンプルを、動物軟骨から調製または単離していないヒアルロナン結合タンパク質(HABP)と接触させ、サンプルと結合するヒアルロナン結合タンパク質の量を検出し、それによりサンプル中のヒアルロナンの量を決定し、ヒアルロナンレベルを対照または参照サンプルと比較し、それにより対照または参照サンプルに対するサンプル中のヒアルロナン量を決定し、ここで、ヒアルロナンの量が処置進行の指標である。
【0012】
またここで提供されるのは、対象の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の効果を予測し、対象の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置をモニタリングする方法であって、ここで、サンプル中のヒアルロナン量が対照または参照サンプルの量以上であれば、処置を継続するか投与量および/または投与スケジュールを増やすことにより増進するまたはサンプル中のヒアルロナン量が対照または参照サンプルの量未満であれば、処置を継続する、投与量および/または投与スケジュールを減らすことにより縮小するまたは終了させるように、対照または参照サンプルに対するサンプル中のヒアルロナンの量の決定に基づき処置を変える。いくつかの例において、対照または参照サンプルは健常対象からのサンプルであり、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置前の対象由来のベースラインサンプルでありまたは最終の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与前の対象からのサンプルである。いくつかの例において、対象は腫瘍または癌を有し、サンプルは腫瘍組織サンプルであり、検出を組織化学的に行う。他の例において、対象は腫瘍または癌を有し、サンプルは体液であり、検出を固相結合アッセイにより行う。いくつかの例において、固相結合アッセイはマイクロタイタープレートアッセイであり、結合を比色的にまたは蛍光により検出する。
【0013】
ここに提供する如何なる方法においても、サンプルとHABPを接触させる工程はpH5.6〜6.4またはおよそpH5.6〜6.4で行い得る。例えば、サンプルとHABPを接触させる工程を約5.8、5.9、6.0、6.1または6.2のpHで行う。いくつかの例において、HABPは、(Kd)で少なくともまたは1×10
−7M、9×10
−8M、8×10
−8M、7×10
−8M、6×10
−8M、5×10
−8M、4×10
−8M、3×10
−8M、2×10
−8M、1×10
−8M、9×10
−9M、8×10
−9M、7×10
−9M、6×10
−9M、5×10
−9M、4×10
−9M、3×10
−9M、2×10
−9M、1×10
−9Mまたはそれより低いKdの結合親和性でHAに特異的に結合する。
【0014】
ここに提供する如何なる方法においても、HABPは組み換えにより作製しても、合成により作製してもよい。いくつかの例において、HABPは1個の結合モジュールを含む。他の例において、HABPは2個以上の結合モジュールを含む。さらなる例において、1個または複数個の結合モジュールは分子の唯一のHABP部分である。それゆえに、ここで提供されるのは、HABPがCD44、LYVE−1、HAPLN1/結合タンパク質、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358およびKIAA0527から選択される1個の結合モジュールを含む、方法である。本方法のいくつかの例において、HABPは、結合モジュールまたはHAと結合するのに十分な結合モジュールの一部を含む、CD44、LYVE−1、HAPLN1/結合タンパク質、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358またはKIAA0527の一部を含む。特定の例において、HABPは腫瘍壊死因子−刺激遺伝子(TSG−6)タンパク質またはTSG−6の結合モジュールまたはHAと結合するのに十分なTSG−6の結合モジュールの一部である。ここに記載する方法の他の例において、HABPはタイプCヒアルロナン結合タンパク質のG1ドメイン、例えば、アグリカンG1、バーシカンG1、ニューロカンG1およびブレビカンG1から選択されるG1ドメインを含む。具体例において、G1ドメインは分子の唯一のHABP部分である。
【0015】
ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPは、配列番号207、222、360、361、371〜394、416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列を有するかまたは配列番号207、360、361、371〜394、416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、95%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を有しまたはそのHA結合ドメインでありまたはHAに特異的に結合するために十分なその一部である。一例において、HABPはTSG−6結合モジュール(LM)またはHAと特異的に結合するのに十分なその一部を含む。例えば、TSG−6−LMは配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列または配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含む。方法の具体例において、HABPは配列番号207に示す結合モジュールまたは配列番号207に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸配列を含む。他の例において、HABPは配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、それによりHABPがHAと特異的に結合する、1個の結合モジュールを含む。
【0016】
ここに提供する方法のいくつかの例において、TSG−6結合モジュールは、ヘパリンへの結合を削減または除去するために修飾される。例えば、ヘパリンへの結合は少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上削減される。ここに提供する方法のいくつかの例において、TSG−6結合モジュールは配列番号360に示すアミノ酸残基20、34、41、54、56、72または84に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含み、ここで、対応するアミノ酸残基は配列番号360に示すTSG−6−LMに対するアラインメントにより同定される。例えば、アミノ酸置換は配列番号207に示すTSG−6−LMにあり、1箇所または複数個所アミノ酸置換はアミノ酸残基21、35、42、55、57、73または85である。アミノ酸置換は、Asp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)から選択される非塩基性アミノ酸残基への置換であり得る。さらなる例において、TSG−6結合モジュールは配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AまたはK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基での置換を含む。他の例において、TSG−6結合モジュールは、配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AおよびK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基の置換を含む。例えば、HABPは配列番号361または416に示す結合モジュールまたは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含む。
【0017】
ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示す1個の結合モジュールを含み、これにより、HABPはHAと特異的に結合する。具体例において、HABPは配列番号361または配列番号416に示す1個の結合モジュールを含む。他の例において、結合モジュールはHABPのTSG−6部分のみである。ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPは直接的にまたはリンカーを介して間接的に多量体化ドメインに結合する第一HA結合ドメインおよび直接的にまたはリンカーを介して間接的に多量体化ドメインに結合する第二HA結合ドメインを含む多量体である。例えば、HA結合ドメインは結合モジュールまたはG1ドメインである。第一および第二HA結合ドメインは同一でも異なってもよい。特定の例において、第一および第二HA結合ドメインはTSG−6結合モジュール、その変異体またはHAに特異的に結合するのに十分なその一部である。例えば、TSG−6−LMは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列またはHAと特異的に結合する配列番号207、360、361、416、417もしくは418に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含むアミノ酸の配列を含む。例えば、結合モジュールは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合する。ここに提供するいくつかの方法において、結合モジュールは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列を含む。
【0018】
ここに提供する方法において、HABP類、HA結合ドメイン、結合モジュールまたはその一部は免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、互換性タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール類ならびに安定な多量体を形成する同一または類似サイズの腔内隆起(protuberance-into-cavity)および代償性腔(compensatory cavity)から選択される多量体化ドメインに結合できる。特定の例において、多量体化ドメインは多量体化をもたらすFcドメインまたはその変異体である。例えば、FcドメインはIgG、IgMまたはIgEに由来するかまたはFcドメインは配列番号359に示すアミノ酸の配列を有する。ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPはTSG−6結合モジュールおよび免疫グロブリンFcドメインを含む融合タンパク質である。例えば、HABPは、配列番号212に示すアミノ酸の配列または配列番号212に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合するアミノ酸の配列のような、配列番号212に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を有するTSG−6−LM−Fcである。具体例において、HABPは配列番号212または215に示すアミノ酸の配列を有する。ここに提供するあらゆる方法において、HABPは、配列番号215に示すアミノ酸の配列または配列番号215に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合するアミノ酸の配列のような、配列番号215に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を有するTSG−6−LM−Fc/ΔHepであり得る。
【0019】
ここに提供する具体的方法において、HABPはTSG−6またはそのヒアルロナン結合領域である。ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPまたはTSG−6は、HAに対して少なくとも1×10
8M
−1、2×10
8M
−1、3×10
8M
−1、4×10
8M
−1、5×10
8M
−1、6×10
8M
−1、7×10
8M
−1、8×10
8M
−1、9×10
8M
−1、1×10
9M
−1以上の結合親和性を有する。他の例において、HABPまたはTSG−6は検出可能に標識されているかまたは検出できる、検出可能部分と結合する。例えば、HABPまたはTSG−6はビオチニル化されている。
【0020】
ここに提供する方法のいくつかの例において、サンプルは腫瘍からの間質組織サンプルのような間質組織サンプルである。ここに記載する方法でサンプル採取された組織は固定化でき、パラフィン包埋でき、新鮮であってよくまたは凍結できる。いくつかの例において、サンプルは、例えば、針生検、CT下針生検、吸引生検、内視鏡生検、気管支鏡生検、気管支洗浄、切開生検、切除生検、パンチ生検、薄片生検、皮膚生検、骨髄生検および電気外科的ループ切除法(LEEP)により得た固形腫瘍の生検標本から採る。他の例において、サンプルは、血液、血清、尿、汗、精液、唾液、脳脊髄液またはリンパ液サンプルである体液サンプルである。ここに提供するあらゆる方法において、サンプルは哺乳動物から得ることができる。一例において、哺乳動物はヒトである。
【0021】
ここに提供するあらゆる方法において、腫瘍は乳癌、膵癌、卵巣癌、結腸癌、肺癌、非小細胞性肺癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、甲状腺癌、子宮頚部癌、子宮体部癌、前立腺癌、精巣癌、脳腫瘍、膀胱癌、胃癌、肝細胞癌、黒色腫、神経膠腫、網膜芽細胞腫、中皮腫、骨髄腫、リンパ腫および白血病から選択される癌であり得る。いくつかの例において、腫瘍は末期癌、転移癌および未分化癌である癌である。
【0022】
ここに提供するあらゆる方法において、抗ヒアルロナン剤はヒアルロナンを分解する薬剤であってよくまたはヒアルロナンの合成を阻害する薬剤であってよい。例えば、抗ヒアルロナン剤はヒアルロナン分解酵素であり得る。他の例において、抗ヒアルロナン剤はヒアルロナン合成を阻害する薬剤である。例えば、抗ヒアルロナン剤はHAシンターゼに対するセンスまたはアンチセンス核酸分子のようなヒアルロナン合成を阻害する薬剤または小分子薬物である。例えば、抗ヒアルロナン剤は4−メチルウンベリフェロン(MU)もしくはその誘導体またはレフルノミドもしくはその誘導体である。このような誘導体は、例えば、6,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンまたは5,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンである4−メチルウンベリフェロン(MU)の誘導体である。
【0023】
ここに提供する方法のさらなる例において、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロニダーゼである。いくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素はPH20ヒアルロニダーゼまたはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)付着部位もしくはGPI付着部位の一部を欠くその切断型である。具体例において、ヒアルロニダーゼはヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ラット、マウスまたはモルモットPH20から選択されるPH20である。例えば、ヒアルロナン分解酵素は中性活性かつN−グリコシル化されたヒトPH20ヒアルロニダーゼであり、(a)完全長PH20であるかまたはPH20のC末端切断型であるヒアルロニダーゼポリペプチド(ここで、該切断型は少なくとも配列番号1のアミノ酸残基36〜464、例えば36〜481、36〜482、36〜483を含み、ここで、該完全長PH20は配列番号2に示すアミノ酸の配列を有する);または(b)配列番号2に示すアミノ酸の配列のポリペプチドまたは切断型と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含むヒアルロニダーゼポリペプチド;または(c)アミノ酸置換を含む(a)または(b)のヒアルロニダーゼポリペプチドであって、配列番号2に示すポリペプチドまたは対応するその切断型と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を有するヒアルロニダーゼポリペプチドから選択される。一例において、ヒアルロナン分解酵素は、rHuPH20と命名された組成物を含むPH20である。
【0024】
他の例において、抗ヒアルロナン剤はポリマーへの結合により修飾されているヒアルロナン分解酵素である。ポリマーはPEGであり、抗ヒアルロナン剤はペグ化ヒアルロナン分解酵素であり得る。それゆえに、ここに提供するいくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素はポリマーへの結合により修飾されている。例えば、ヒアルロナン分解酵素はPEGに結合し、それゆえにヒアルロナン分解酵素はペグ化されている。一例において、ヒアルロナン分解酵素はペグ化PH20酵素(PEGPH20)である。ここに提供する方法において、コルチコステロイドはコルチゾン類、デキサメサゾン類、ヒドロコルチゾン類、メチルプレドニゾロン類、プレドニゾロン類およびプレドニゾン類から選択されるグルココルチコイドであり得る。
【0025】
またここで提供されるのは、サンプル中のヒアルロナンの量を検出するためのヒアルロナン結合剤(HABP)を含むキットであって、ここで、HABPは動物軟骨およびヒアルロナン分解酵素から調製されていない。HABPは組み換えにより製造しても、合成により製造してもよい。いくつかの例において、HABPは1個の結合モジュールを含む。他の例において、HABPは2個以上の結合モジュールを含む。いくつかの例において、1個または複数個の結合モジュールは分子の唯一のHABP部分である。例えば、HABPはCD44、LYVE−1、HAPLN1/結合タンパク質、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358およびKIA0527または結合モジュールまたはHAと結合するのに十分な結合モジュールの一部を含むこれらの一部から選択される1個の結合モジュールを含む。他の例において、HABPはタイプCヒアルロナン結合タンパク質のG1ドメイン、例えば、アグリカンG1、バーシカンG1、ニューロカンG1およびブレビカンG1から選択されるG1ドメインを含む。具体例において、G1ドメインは分子の唯一のHABP部分である。
【0026】
いくつかの例において、キットは、配列番号207、222、360、361、371〜394および416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号207、360、361、371〜394、416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、95%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列またはそのHA結合ドメインまたはHAに特異的に結合するために十分なその一部を含むHABPを含む。一例において、HABPはTSG−6結合モジュール(LM)またはHAと特異的に結合するのに十分なその一部を含む。例えば、TSG−6−LMは、配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列または配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含む。いくつかの例において、HABPは配列番号360に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する1個の結合モジュールを含み、それによりHABPがHAと結合する。具体例において、HABPは配列番号207、360、417または418に示す結合モジュールを含む。
【0027】
ここに提供するキットのいくつかの例において、TSG−6結合モジュールは、ヘパリンへの結合を削減または除去するために修飾される。例えば、ヘパリンへの結合は少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上減少される。ある例において、TSG−6結合モジュールは配列番号360に示すアミノ酸残基20、34、41、54、56、72または84に対応するアミノ酸位置にアミノ酸置換を含み、ここで、対応するアミノ酸残基は配列番号360に示すTSG−6−LMに対するアラインメントにより同定される。例えば、アミノ酸置換はAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)から選択される非塩基性アミノ酸残基へのものである。それゆえに、ここで提供されるのは、TSG−6結合モジュールが配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AまたはK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基での置換を含むキットである。例えば、TSG−6結合モジュールは、配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AおよびK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基の置換を含む。またここで提供されるのは、HABPが配列番号361または416に示す結合モジュールまたは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含むキットである。例えば、HABPは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示す1個の結合モジュールを含み、これにより、HABPはHAと特異的に結合する。具体例において、HABPは配列番号361または416に示す結合モジュールを含む。他の例において、結合モジュールはHABPのTSG−6部分のみである。
【0028】
ここに提供するキットのいくつかの例において、HABPは直接的にまたはリンカーを介して間接的に多量体化ドメインに結合する第一HA結合ドメインおよび直接的にまたはリンカーを介して間接的に多量体化ドメインに結合する第二HA結合ドメインを含む多量体である。例えば、HA結合ドメインは結合モジュールまたはG1ドメインである。第一および第二HA結合ドメインは同一でも異なってもよい。特定の例において、第一および第二HA結合ドメインはTSG−6結合モジュール、その変異体またはHAに特異的に結合するのに十分なその一部である。例えば、TSG−6−LMは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列またはHAと特異的に結合する配列番号207、360、361、416、417もしくは418に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含むアミノ酸の配列を含む。例えば、結合モジュールは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合する。ここに提供するいくつかの方法において、結合モジュールは配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列を含む。
【0029】
ここに提供するキットにおいて、HABP類は免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、適合性タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール類ならびに安定な多量体を形成する同一または類似サイズの腔内隆起および代償性腔から選択される多量体化ドメインにより結合できる。特定の例において、多量体化ドメインは多量体化をもたらすFcドメインまたはその変異体である。例えば、FcドメインはIgG、IgMまたはIgEに由来するかまたはFcドメインは配列番号359に示すアミノ酸の配列を有する。ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPはTSG−6結合モジュールおよび免疫グロブリンFcドメインを含む融合タンパク質である。例えば、HABPは、TSG−6−LM−Fcは配列番号212または215に示すアミノ酸の配列を有するまたは配列番号212または215に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合するアミノ酸の配列のような、配列番号212または215に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列である。具体例において、HABPは配列番号212または215に示すアミノ酸の配列を有する。ここに提供するあらゆる方法において、HABPは配列番号215に示すアミノ酸の配列または配列番号215に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、これにより、HABPはHAと特異的に結合するアミノ酸の配列のような、配列番号215に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を有するTSG−6−LM−Fc/ΔHepであり得る。
【0030】
ここに提供するキットの具体例において、HABPはTSG−6またはそのヒアルロナン結合領域である。ここに提供する方法のいくつかの例において、HABPは、結合定数(Ka)で表して、HAに対して、少なくとも10
7M
−1、例えば、少なくとも1×10
8M
−1、2×10
8M
−1、3×10
8M
−1、4×10
8M
−1、5×10
8M
−1、6×10
8M
−1、7×10
8M
−1、8×10
8M
−1、9×10
8M
−1、1×10
9M
−1以上の結合親和性を有する。例えば、HABPは、解離定数(Kd)で表して、HAに対して、少なくともまたは1×10
−7M、9×10
−8M、8×10
−8M、7×10
−8M、6×10
−8M、5×10
−8M、4×10
−8M、3×10
−8M、2×10
−8M、1×10
−8M、9×10
−9M、8×10
−9M、7×10
−9M、6×10
−9M、5×10
−9M、4×10
−9M、3×10
−9M、2×10
−9M、1×10
−9Mまたはそれより低いKdの結合親和性を有する。他の例において、HABPは検出可能に標識されているかまたは検出できる、検出可能部分と結合する。例えば、HABPはビオチニル化されている。
【0031】
またここで提供されるのは、サンプル中のヒアルロナンの量を検出するためのヒアルロナン結合剤(HABP)を含むキットであって、ここで、HABPは動物軟骨および抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)から調製されていない。ここに提供するキットのいずれも、HABPの検出のための試薬をさらに含み得る。ここに提供するキットの例のいずれかにおいて、抗ヒアルロナン剤は本明細書中に記載する任意のものであり得る。例えば、抗ヒアルロナン剤はヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素であり得る。例えば、ヒアルロナン分解酵素はPH20ヒアルロニダーゼまたはC末端グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)付着部位もしくはGPI付着部位の一部を欠くその切断型であり得る。いくつかの例において、PH20はヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ラット、マウスまたはモルモットPH20から選択される。例えば、ヒアルロナン分解酵素は中性活性かつN−グリコシル化されたヒトPH20ヒアルロニダーゼであり、(a)完全長PH20であるかまたはPH20のC末端切断型であるヒアルロニダーゼポリペプチド(当該切断型は配列番号1の少なくともアミノ酸残基36〜464を含み、完全長PH20は配列番号2に示すアミノ酸の配列を含む);または(b)配列番号2に示すアミノ酸の配列のポリペプチドまたは切断型と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を含むヒアルロニダーゼポリペプチド;または(c)アミノ酸置換を含む(a)または(b)のヒアルロニダーゼポリペプチドであって、配列番号2に示すポリペプチドまたは対応するその切断型と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するアミノ酸の配列を有するヒアルロニダーゼポリペプチドから選択される。具体例において、ヒアルロナン分解酵素は、rHuPH20と命名された組成物を含むPH20である。いくつかの例において、ヒアルロナン分解酵素はポリマー例えば、PEGへの結合により修飾されており、ヒアルロナン分解酵素はペグ化されている。それゆえにここで提供されるのは、ヒアルロナン分解酵素がペグ化PH20酵素(PEGPH20)であるキットである。またここで提供されるのは、さらにコルチコステロイドを含むキットである。ここに提供するキットは、いずれもさらにその成分の使用のためのラベルまたは添付文書を含み得る。
【0032】
ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)で腫瘍を処置するための対象を選択するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP)の使用方法であって、ここで、HABPは動物軟骨動物軟骨から調製または単離していない。またここで提供されるのは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)で腫瘍を処置するための対象の選択に使用するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP)を含む医薬組成物であって、ここで、HABPは動物軟骨動物軟骨から調製または単離していない。
【0033】
ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での対象の処置の効果を予測するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP)の使用方法であって、ここで、HABPは動物軟骨動物軟骨から調製または単離していない。またここで提供されるのは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での対象の処置の効果を予測するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP)を含む医薬組成物であって、ここで、HABPは動物軟骨動物軟骨から調製または単離していない。
【0034】
ここに提供される使用または医薬組成物のいずれにおいても、HABPは1個または複数個の結合モジュールまたはG1ドメインを含み得る。いくつかの例において、HABPはTSG−6結合モジュール(LM)、その変異体またはHAと結合するのに十分なその一部を含む。特定の例において、TSG−6結合モジュールは、ヘパリンへの結合を削減または除去するために修飾される。いくつかの例において、HABPは配列番号207、212、215、222、360、361、371〜394および416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号207、212、215、222、360、361、371〜394および416〜418および423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列に対して少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、95%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列またはそのHA結合ドメインまたはHAに特異的に結合するために十分なその一部を含む。
【0035】
またここで提供されるのは、多量体化ドメインに直接的またはリンカーを介して間接的に結合した第一結合モジュールおよび多量体化ドメインに直接的またはリンカーを介して間接的に結合した第二結合モジュールを含むTSG−6−LM多量体であって、ここで、第一および第二ポリペプチドはTSG−6の完全長配列を含まない。いくつかの例において、結合モジュールは第一ポリペプチドおよび第二ポリペプチドのTSG−6部分のみである。第一および第二結合モジュールは同一でも異なってもよい。いくつかの例において、結合モジュールは配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列または配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含む。例えば、結合モジュールは配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、HAと特異的に結合する。いくつかの例において、結合モジュールは配列番号207、360、417または418に示すアミノ酸の配列を含む。
【0036】
いくつかの例において、TSG−6結合モジュールは、ヘパリンへの結合を削減または除去するために修飾される。ヘパリンへの結合は少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上削減できる。いくつかの例において、TSG−6結合モジュールは配列番号360に示すアミノ酸残基20、34、41、54、56、72または84に対応するアミノ酸の位置にアミノ酸置換を含み、ここで、対応するアミノ酸残基は配列番号360に示すTSG−6−LMに対するアラインメントにより同定される。例えば、アミノ酸置換は配列番号207に示すTSG−6−LMにあり、1箇所または複数個所アミノ酸置換はアミノ酸残基21、35、42、55、57、73または85にある。いくつかの例において、アミノ酸置換はAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)およびTrp(W)から選択される非塩基性アミノ酸残基への置換である。例えば、TSG−6結合モジュールは配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AまたはK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基での置換を含む。特定の例において、TSG−6結合モジュールは、配列番号360に示すTSG−6−LMにおけるアミノ酸置換K20A、K34AおよびK41Aに対応するアミノ酸置換または他のTSG−6−LMにおける対応する残基の置換を含む。いくつかの例において、結合モジュールは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列または配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも65%アミノ酸配列同一性を含み、HAと特異的に結合するアミノ酸配列を含む。例えば、結合モジュールは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、HAと特異的に結合する。具体例において、結合モジュールは配列番号361または416に示すアミノ酸の配列を含む。
【0037】
またここで提供されるのは、TSG−6−LM多量体であって、ここで、多量体化ドメインは免疫グロブリン定常領域(Fc)、ロイシンジッパー、相補的疎水性領域、相補的親水性領域、互換性タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオール類ならびに安定な多量体を形成する同一または類似サイズの腔内隆起および代償性腔から選択される。いくつかの例において、多量体化ドメインは多量体化をもたらすFcドメインまたはその変異体である。例えば、FcドメインはIgG、IgMまたはIgE由来である。特定の例において、Fcドメインは配列番号359に示すアミノ酸の配列を有する。
【0038】
またここで提供されるのは、TSG−6結合モジュールおよび免疫グロブリンFcドメインを含むTSG−6−LM多量体である。いくつかの例において、TSG−6−LM多量体は配列番号212または215に示すアミノ酸の配列または配列番号212または215に対して少なくとも65%アミノ酸配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。例えば、TSG−6多量体は列番号212または215に示すアミノ酸の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示し、HAと特異的に結合するアミノ酸の配列を含む。具体例において、TSG−6−LM多量体は配列番号212または215に示すアミノ酸の配列を含む。いくつかの例において、TSG−6−LM多量体はHAに対して少なくとも10
7M
−1、例えば少なくとも1×10
8M
−1、2×10
8M
−1、3×10
8M
−1、4×10
8M
−1、5×10
8M
−1、6×10
8M
−1、7×10
8M
−1、8×10
8M
−1、9×10
8M
−1、1×10
9M
−1以下の結合親和性を有する。
【0039】
またここで提供されるのは、インビボ造影法によりHAを検出するためここに提供されるHABPのいずれかを使用して、対象の選択、効果の予測および/または処置のモニタリングのための方法である。インビボ造影法は磁気共鳴画像法(MRI)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)、電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)、高解像度コンピュータ断層撮影法(HRCT)、下環状断層撮影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、シンチ撮影法、ガンマカメラ、β+ディテクタ、γディテクタ、蛍光造影、弱光造影、X線および/または生物発光造影であってよい。このような方法において、HABPはシグナルを提供する分子に直接的または間接的に結合しているかまたはインビボで検出可能なシグナルを惹起する。
【0040】
詳細な記載
概要
A. 定義
B. ヒアルロナン結合タンパク質およびコンパニオン診断
1. 疾患におけるヒアルロナン蓄積および予後診断との関連
2. 抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での腫瘍の治療および処置に対する応答性
3. ヒアルロナン結合タンパク質(HABP類)試薬および診断
4. コンパニオン診断および予後診断方法
C. コンパニオン診断として使用するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP類)
1. 結合モジュールまたはG1ドメインを有するHA結合タンパク質
a. タイプA:TSG−6サブグループ
i. TSG−6
ii. スタビリン−1およびスタビリン−2
b. タイプB:CD44サブグループ
i. CD44
ii. LYVE−1
c. タイプC:結合タンパク質サブグループ
i. HAPLN/結合タンパク質ファミリー
(1) HAPLN1
(2) HAPLN2
(3) HAPLN3
(4) HAPLN4
(5) アグリカン
(6) ブレビカン
(7) バーシカン
(8) ニューロカン
(9) ホスファカン
2. 結合モジュールを有しないHA結合タンパク質
a. HABP1/C1QBP
b. ライリン
c. RHAMM
d. その他
3. HA結合タンパク質の修飾
a. HABPの多量体
i. ペプチドリンカー
ii. ヘテロ二官能性結合剤
iii. ポリペプチド多量体化ドメイン
(1) 免疫グロブリンドメイン
(a) Fcドメイン
(2) ロイシンジッパー
(3) サブユニット間のタンパク質−タンパク質相互作用
iv. 他の多量体化ドメイン
b. HA結合を改善するための変異
c. 検出のためのHA結合タンパク質修飾
i. 検出可能タンパク質または部分との結合
4. 診断使用のためのHA結合タンパク質の選択
D. アッセイおよび分類
1. ヒアルロナン測定のためのアッセイ
a. 組織化学的および免疫組織化学的方法
b. 固相結合アッセイ
c. インビボ造影アッセイ
2. 対象の分類
E. 選択対象の抗ヒアルロナン剤での処置
1. 抗ヒアルロナン剤
a. ヒアルロナン合成を阻害する薬剤
b. ヒアルロナン分解酵素群
i. ヒアルロニダーゼ群
(1) 哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群
(a) PH20
(2) その他のヒアルロニダーゼ群
(3) その他のヒアルロナン分解酵素群
ii. 可溶性ヒアルロナン分解酵素群
(1) 可溶性ヒトPH20
(2) rHuPH20
iii. ヒアルロナン分解酵素群のグリコシル化
iv. 修飾(ポリマー結合型)ヒアルロナン分解酵素群
2. 医薬組成物および製剤
3. 投与量および投与
a. ペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与
4. 組み合わせ処置
F. ヒアルロナン分解酵素群およびヒアルロナン結合タンパク質の核酸およびコード化ポリペプチドの製造方法
1. ベクターおよび細胞
2. 発現
a. 原核細胞
b. 酵母細胞
c. 昆虫細胞
d. 哺乳動物細胞
e. 植物
3. 精製方法
4. ヒアルロナン分解酵素ポリペプチドのペグ化
G. 抗ヒアルロナン剤の活性評価および効果モニタリングの方法
1. 副作用評価方法
2. 抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素活性)の活性と関連するバイオマーカーの評価
a. ヒアルロナン分解酵素の活性を評価するためのアッセイ
b. HA異化産物の測定
c. 腫瘍代謝活性
d. 見かけの拡散増加および腫瘍灌流亢進
3. 腫瘍サイズおよび体積
4. 薬物動態および薬力学的アッセイ
H. キットおよび製品
I. 実施例
【0041】
A. 定義
別に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して認識されるものと同じ意味を有する。特に断らない限り、本明細書中で引用される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、GENBANK配列、ウェブサイトおよび他の公表物は、引用によりその全体を本明細書に包含させる。本明細書中で使用する用語に複数の定義があるときは、ここに記載したものが優先する。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスが引用されているとき、このような識別子は変化することがあり、インターネット上の特定の情報は消去または挿入されるが、同等な情報は知られており、例えばインターネットおよび/または適当なデータベースの検索により容易に入手できると解釈すべきである。それらの引用は当該情報が入手可能であることおよび公衆に頒布されていることを証明する。
【0042】
ここで使用するコンパニオン診断は、特定の処置での処置に感受性の対象を同定するためまたは処置をモニターするためおよび/または対象または対象のサブグループもしくは他のグループの有効投与量を同定するために使用する診断方法およびまたは試薬である。本発明の目的のために、コンパニオン診断は、サンプル中のヒアルロナンの検出に使用する修飾TSG−6タンパク質のような試薬を言う。コンパニオン診断は試薬およびまた該試薬を用いて行う試験も言う。
【0043】
ここで使用するヒアルロナン(HA;ヒアルロン酸またはヒアルロネートとしても知られる)は、N−アセチルグルコサミンおよびD−グルクロン酸の反復二糖単位の天然に存在するポリマーを言う。ヒアルロナンはある種の腫瘍により産生される。
【0044】
組織または体液サンプル中のHAの量またはレベルに関連してここで使用する“高HA”は、正常または健常組織または体液サンプルと比較した組織または体液サンプル中のHAの程度または範囲を言う。HAの量は、対応する正常または健常組織中のHAの量またはレベルより少なくとも正確にまたは少なくとも約2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍以上の量であるとき、高い。HAの量は固相結合アッセイまたは組織化学的方法のような方法を使用して決定し、定量化または半定量化できる。例えば、量は血漿レベルの比較または組織化学的方法により決定する着色強度(例えば正画素のパーセント)の比較に基づき得る。例えば、組織化学的方法または他の方法によるHAスコアがHA
+3および/または腫瘍切片の25%を超えるHA着色があるならば、高HAである。例えば、総着色面積の合計に対する強着色(例えば褐色着色)の比が、腫瘍組織の総着色に対して25%を超える強度の着色があるとき、高HAである。
【0045】
ここで使用するHAスコアは、腫瘍の細胞種および間質にかかるHA陽性レベルの半定量的スコアを言う。スコアは、ホルマリン固定およびパラフィン包埋組織のような腫瘍組織中の、HABPを使用するHAのための免疫組織化学的または擬似免疫組織化学的方法のような組織化学的方法による、HAの検出により決定できる。細胞および間質上の染色の程度は、顕微鏡下に目視によりまたは利用可能なコンピュータアルゴリズムプログラムおよびソフトウェアにより決定できる。例えば、画像をHA染色のための画素数アルゴリズム(例えばAperio Spectrumソフトウェアおよび着色の程度を測定または定量または半定量する他の標準的方法)を使用して定量的に分析できる。腫瘍は、腫瘍切片の25%を超える強HA着色でHA
高(HA
+3)、腫瘍切片の10〜25%の強HA着色でHA
中(HA
+2)および腫瘍切片の10%未満の強HA着色でHA
低(HA
+1)とグレード化またはスコア化される。例えば、強い正の着色(例えば褐色着色)対総着色面積の合計の比を計算およびスコア化でき、該比が総着色の25%を超える強い正の着色であるとき、腫瘍組織はHA
+3とスコア化され、該比が総着色の10〜25%の強い正の着色であるとき、腫瘍組織はHA
+2とスコア化され、該比が総着色の10%未満の強い正の着色であるとき、腫瘍組織はHA
+1とスコア化され、強い正の染色対総着色の比が0であるとき、腫瘍組織は0とスコア化される。Aperio方法、ならびにそのためのソフトウェアは当業者に知られている(例えば,米国特許番号8,023,714;米国特許番号7,257,268参照)。
【0046】
ここで使用するヒアルロナン結合タンパク質(HA結合タンパク質;HABP)またはヒアルアドヘリンは、HAの検出を可能にするようにHAと特異的に結合する任意のタンパク質を言う。結合親和性は、少なくとも凡そまたは正確に少なくとも10
7M
−1である結合定数Kaを有するものである。ここに提供する方法およびコンパニオン診断製品について、HA結合タンパク質は組み換えにより産生したまたは合成タンパク質であり、軟骨のような生物学的起源または生理的起源に由来するタンパク質ではない。HA結合タンパク質は、HAに結合する結合モジュールおよびHAの検出を可能とするようにHAと特異的に結合するのに十分なその一部を含むHA結合ドメインを含む。それゆえに、HABP類は、ヒアルロナン結合領域またはドメインまたはHAと特異的に結合するのに十分なその一部を含む任意タンパク質を含む。ヒアルロナン結合領域の例は、結合モジュール(結合ドメイン)またはG1ドメインである。結合するのに十分な一部は、結合ドメインまたは結合モジュールの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、95以上の連続アミノ酸を含む。HA結合タンパク質はまたHA結合タンパク質および多量体化ドメインを含む1種以上の付加的ポリペプチドを含む融合タンパク質も含む。HA結合タンパク質の例は、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、TSG−6、TSG−6変異体、例えば、HA結合ドメインおよびHAと結合するその結合モジュールを含むポリペプチドを含むここに提供するものを含むが、これらに限定されない。
【0047】
ここで使用するヒアルロナン結合ドメインまたはHA結合ドメインは、少なくとも凡そまたは正確に少なくとも10
6M
−1または10
7M
−1以上である結合定数Kaまたは多くても10
−6Mまたは10
−7M以下である解離定数Kdを有する結合親和性でヒアルロナンと特異的に結合するHABPポリペプチドの領域またはドメインを言う。ヒアルロナン結合ドメインの例は、例えば、結合モジュール(ここでは結合ドメインとも言う)またはG1ドメインまたはHAと特異的に結合するのに十分な結合モジュールまたはG1ドメインの一部を含む。
【0048】
ここで使用する“唯一のHABP部分”は結合モジュールまたはG1ドメインであるという表現またはその文法的変形は、HABP分子(例えばTSG−6結合モジュール)が結合モジュールまたはG1ドメインから成りまたは実質的にこれから成り、引用HABPの完全な完全長アミノ酸の配列を含まないことを言う。それゆえに、HABPはヒアルロナン結合領域またはHAに特異的に結合するために十分なその一部のみを含む。HABPは、検出可能部分または検出され得る部分または多量体化ドメインに対応する配列を含むが、これらに限定されない付加的非HABPアミノ酸配列を含み得る。
【0049】
ここで使用する修飾HA結合タンパク質に関する修飾は、ここに提供する診断方法における検出に対するHA結合タンパク質の特性の1種以上を変える、典型的に改善するための修飾を言う。修飾は、HAに対するタンパク質の親和性および/または特異性を高める変異を含む。
【0050】
ここで使用するドメインは、構造的におよび/または機能的に区別可能または限定可能なポリペプチドの部分(3個以上、一般的に5個または7個以上のアミノ酸の配列)を言う。例えば、ドメインは、1個以上の構造モチーフ(例えばループ領域により接続されたアルファ螺旋および/またはベータ鎖の組み合わせ)から成るタンパク質内に独立して折りたたみ構造を形成できるおよび/またはキナーゼ活性のような機能的活性により認識されるものを含む。タンパク質は1個、1個以上の異なるドメインを有し得る。例えば、ドメインは、細胞外ドメインを規定する相同性およびモチーフのような、関連するファミリーメンバーに対するその配列の相同性により同定でき、規定できまたは区別できる。他の例において、ドメインは、酵素活性、例えばキナーゼ活性のようなその機能またはDNA結合、リガンド結合および二量体化のような生体分子と相互作用する能力により区別できる。ドメインは個々に、ドメインが個々にまたは他の分子と融合して、例えばタンパク分解性活性またはリガンド結合のような活性を実行できるように、機能または活性を示しうる。ドメインはポリペプチド由来の直鎖アミノ酸の配列または非直鎖アミノ酸の配列であり得る。多くのポリペプチドは多数のドメインを含む。
【0051】
ここで使用する融合タンパク質は、直接的または間接的にペプチド結合を介して結合した2個以上のタンパク質またはペプチド由来の2個以上の部分を含むキメラタンパク質を言う。
【0052】
ここで使用する多量体化ドメインは、相補的多量体化ドメインを含む他のポリペプチド分子とのポリペプチド分子の安定な相互作用を促進するアミノ酸の配列を言い、相補的多量体化ドメインは、第一ドメインと安定な多量体を形成するための同一または異なる多量体化ドメインであり得る。一般的に、ポリペプチドは多量体化ドメインと直接的または間接的に結合する。多量体化ドメインの例は、免疫グロブリン配列またはその一部、ロイシンジッパー、疎水性領域、親水性領域、PKAのRサブユニットおよびアンカリングドメイン(AD)のような互換性タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、2分子間の分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールおよび腔内隆起(すなわち、ノブ・イントゥ・ホール)および安定な多量体を形成する同一または類似サイズの代償性腔を含む。多量体化ドメインは、例えば、免疫グロブリン定常領域であり得る。免疫グロブリン配列は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4サブタイプ、IgA、IgE、IgDおよびIgM由来のFcドメインまたはその一部のような免疫グロブリン定常ドメインであり得る。
【0053】
ここで使用する“ノブ・イントゥ・ホール”(ここでは腔内隆起とも呼ぶ)は、このようなドメイン間の立体的相互作用が、安定な相互作用を促進するだけでなく、また単量体混合物からホモ二量体(またはホモ多量体)よりもヘテロ二量体(または多量体)の形成を促進するように操作された特定の多量体化ドメインを言う。これは、例えば隆起および腔の構築により達成できる。隆起は、第一ポリペプチドの界面の小アミノ酸側鎖を大側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)に置き換えることにより構築できる。隆起と同一または類似サイズの代償性“腔”は、所望により、第二ポリペプチドの界面に、大アミノ酸側鎖を小側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)に置き換えることにより構築してよい。
【0054】
ここで使用する相補的多量体化ドメインは、2個以上の多量体化ドメインを言い、これらは相互作用して互いにこのようなドメインで結合したポリペプチドの安定な多量体を形成する。相補的多量体化ドメインは同じドメインまたは例えば、Fc領域、ロイシンジッパーおよびノブ・アンド・ホールのようなドメインのファミリーのメンバーであり得る。
【0055】
ここで使用する“Fc”または“Fc領域”または“Fcドメイン”は、第一定常領域免疫グロブリンドメイン以外の抗体重鎖の定常領域を含むポリペプチドを言う。それゆえに、Fcは、IgA、IgDおよびIgEの最後の2個の定常領域免疫グロブリンドメインまたはIgEおよびIgMの最後の3個の定常領域免疫グロブリンドメインを言う。所望により、Fcドメインは、これらのドメインの可動性ヒンジN末端の全てまたは一部を含み得るIgAおよびIgMについて、FcはJ鎖を含み得る。例として、IgGのFcドメインは免疫グロブリンドメインCγ2およびCγ3および所望によりCγ1とCγ2の間のヒンジの全てまたは一部を含む。Fc領域の境界は多様であり得るが、典型的に、少なくともヒンジ領域の部分を含む。さらに、Fcはまたあらゆる対立形質または種変異体またはFcRへの結合を変えるまたはFc仲介エフェクター機能を変えるあらゆる変異体または修飾形態のようなあらゆる変異体または修飾形態も含む。修飾Fcドメインを含む他のFcドメインの配列の例は知られている。
【0056】
ここで使用する“Fcキメラ”は、1個以上ポリペプチドが、Fc領域またはその誘導体に直接的または間接的にしているキメラポリペプチドを言う。典型的に、Fcキメラは、ある免疫グロブリンのFc領域と例えばECDポリペプチドのような他のポリペプチドを合わせる。Fcポリペプチドの誘導体または修飾は当業者に知られている。
【0057】
ここで使用するヒアルロナン結合タンパク質に関する“多量体”は、複数HA結合部位、例えば、少なくとも2個、3個または4個のHA結合部位を含むHABPを言う。例えば、HABP多量体は、各々HAに結合できる少なくとも2個の結合モジュールを含むHABPを言う。例えば、多量体は、直接的または間接的に2個以上の結合モジュール(例えばTSG−6結合モジュール)を結合することにより製造できる。結合は、Fcタンパク質のような多量体化ドメインの使用により促進できる。
【0058】
ここで使用する対立形質変異体または対立形質変異は、基準形態の遺伝子と異なる遺伝子によりコードされる(すなわち対立遺伝子によりコードされる)ポリペプチドを言う。典型的に基準形態の遺伝子は、種の基準メンバーの集団または単一のポリペプチドの野生型形態および/または優勢形態をコードする。典型的に、種間の変異体を含む対立形質変異体は、典型的に同じ種の野生型および/または優勢形態と少なくとも80%、90%以上のアミノ酸同一性を有し、同一性の程度は遺伝子および比較が種間または種内であるかによる。一般的に、種内対立形質変異体は、野生型および/または優勢形態と少なくとも約80%、85%、90%または95%以上の同一性を有し、ポリペプチドの野生型および/または優勢形態と96%、97%、98%、99%以上の同一性を含む。
【0059】
ここで使用する種変異体は、種間の同じポリペプチドの変異体を言う。一般的に、種間変異体は、他の種の野生型および/または優勢形態と少なくとも約60%、70%、80%、85%、90%または95%以上の同一性を有し、ポリペプチドの野生型および/または優勢形態と96%、97%、98%、99%以上の同一性を含む。
【0060】
ここで使用するポリペプチドのアミノ酸の配列または核酸分子のヌクレオチドの配列の修飾に関する修飾は、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置換を含む。
【0061】
ここで使用する組成物はあらゆる混合物を言う。それは溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水溶液、非溶液またはこれらの任意の組み合わせを言う。
【0062】
ここで使用する組み合わせは、2個以上の物品のあらゆる結合を言う。組み合わせは2個の組成物または2個の収集物のような2個以上の別々の物品、2個以上の物品の単一混合物のようなそれらの混合物またはこれらのあらゆる変形であり得る。組み合わせの要素は、一般的に機能的に結合しまたは関連する。キットは、所望により組み合わせまたはその要素の使用支持を含んでよい包装された組み合わせである。
【0063】
ここで使用する正常レベルまたは値は当業者に知られた多様な方法により定義できる。典型的に、正常レベルは、健常集団のHA発現レベルを言う。正常レベル(または参照レベル)は、特定の起源(すなわち血液、血清、組織または他の起源)由来のような健常対象の測定に基づく。しばしば、正常レベルは“正常範囲”として特定され、これは典型的に健常集団の中位95%の値の範囲を言う。参考値をここでは正常レベルと同義で使用するが、対象または起源により正常レベルと異なり得る。参照レベルは、典型的に特定の集団の一部の正常レベルによる。それゆえに、本発明の目的のために、正常または参照レベルは、被験患者と比較できる予め決定された標準または対照である。
【0064】
ここで使用する増加したレベルは、HAの量または発現の報告されるまたは正常の閾値を越えるあらゆるレベルを言う。
【0065】
ここで使用する生物学的サンプルは、生体起源またはウイルス起源または高分子および生体分子の他の起源から得られるあらゆるサンプルを言い、核酸またはタンパク質または他の高分子を得ることができる対象のあらゆる細胞型または組織を含む。生物学的サンプルは、生物学的起源から直接得られるサンプルまたは加工したサンプルであり得る。例えば、増幅した単離した核酸は生物学的サンプルを構築する。生物学的サンプルは、生検した腫瘍サンプルを含む動物の血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗のような体液、組織および臓器サンプルを含むが、これらに限定されない。
【0066】
ここで使用する検出は、タンパク質の可視化(眼または機器による)を可能にする方法を含む。タンパク質は、該タンパク質に特異的な抗体を使用して可視化できる。タンパク質の検出はまたエピトープタグを含むタグまたは標識とタンパク質との融合により容易になり得る。
【0067】
ここで使用する標識は、標識ポリペプチドを産生するように直接的または間接的にポリペプチドと結合する検出可能な化合物または組成物を言う。標識はそれ自体検出可能(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)であるか、酵素標識の場合、基質化合物の検出可能組成物への化学変換を触媒できる。標識の例は、蛍光部分、緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼを含むが、これらに限定されない。
【0068】
ここで使用する親和性は、ヒアルロナン結合タンパク質とヒアルロナンのような2分子間の相互作用の強度を言う。親和性は、しばしば、平衡結合定数(Ka)または平衡解離定数(Kd)により測定する。ここに記載する分子の間の結合親和性は、典型的に少なくとも約10
6l/mol、10
7l/mol、10
8l/mol、10
9l/mol以上(一般的に10
7〜10
8l/mol以上)の結合定数(Ka)の結合親和性を有する。ここに記載する分子の間の結合親和性はまた解離定数(Kd)に基づき、少なくとも多くてもまたは多くてもまたは正確に10
−7M、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11M、10
−12M以下と言うこともできる。
【0069】
ここで使用するHAと結合するのに十分なその一部なる記載は、HAに対して少なくとも正確にまたは少なくとも約10
7〜10
8M
−1のKaまたは1×10
−7Mまたは1×10
−8M以下の解離定数(Kd)を示す結合分子を意味する。
【0070】
ここで使用する、ヒアルロナン結合タンパク質とHAに関するような2分子に関する特異性(本明細書では選択的とも言う)は、他の分子との親和性と比較して、2分子が互いに大きな親和性を示すことを言う。それゆえに、HAに大きな特異性のヒアルロナン結合タンパク質(HABP)は、それがヘパリンのような他の分子に、HAと結合するより低い親和性で結合することを意味する。特異的結合は、典型的に選択的結合となる。
【0071】
ここで使用する“G1ドメイン”は、タイプC HA結合タンパク質のHA結合ドメインを言う。G1ドメインはIgモジュールおよび2個の結合モジュールを含む。G1ドメインを含むタンパク質の例は、HAPLN1/結合タンパク質、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンおよびホスファカンを含む。
【0072】
ここで使用する結合モジュールまたは結合ドメインは、同義であり、タンパク質に存在し、HAへの結合を促進し、細胞外マトリックスの集合、細胞接着および遊走に関与するヒアルロナン結合ドメインである。例えば、ヒトTSG−6由来の結合モジュールは、疎水性コアに配置された2個のアルファ螺旋および2個の逆平行ベータシートを含む。これは、CD44、TSG−6、軟骨結合タンパク質、アグリカンおよびここに記載するその他を含む結合モジュールスーパーファミリーのコンセンサスフォールドを規定する。
【0073】
ここで使用する“Igモジュール”は、タイプC HABP類間の結合に関与するタイプC HABP類のG1ドメインの部分を言う。タイプCヒアルロナン類のIgモジュールは互いに相互作用して、ヒアルロナンと安定な三次構造を形成する。
【0074】
ここで使用する“固相結合アッセイ”は、抗原をリガンドと接触させ、ここでで、抗原またはリガンドの一方が固体支持体と結合している、インビトロアッセイを言う。固相は、成分が固体支持体に物理的に固定化されるものであり得る。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレート、膜(例えば、ニトロセルロース)、ビーズ、試験紙、薄層クロマトグラフィープレートまたは他の固体媒体を含むが、これらに限定されない。抗原−リガンド相互作用により、望まないまたは非特異的成分を除去でき(例えば洗浄により)、抗原−リガンド複合体を検出する。
【0075】
ここで使用するヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤での処置の効果を予測は、コンパニオン診断が、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤での処置の予後診断指標であり得ることを意味する。例えば、コンパニオン診断でのヒアルロナンまたは他のマーカーの検出の結果に基づき、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤での処置が、処置対象において何らかの効果を有する可能性があることを検出できる。
【0076】
ここで使用する予後診断指標は、処置が特定の疾患または対象に有効である可能性のような特定の成績の可能性を示すパラメータを言う。
【0077】
ここで使用するサンプル中の上昇したHAは、健常サンプルからの対応するサンプルに存在するレベルと比較してまたは予め決定した標準と比較して増加しているサンプル中のHAの量を言う。
【0078】
ここで使用する上昇したヒアルロナンレベルは、該疾患の結果としてまたは該疾患で別に観察される、疾患または状態によって特定の組織、体液または細胞における、ヒアルロナンの量である。例えば、ヒアルロナン富腫瘍の存在の結果として、ヒアルロナン(HA)レベルは血液、尿、唾液および血清のような体液および/または腫瘍性組織または細胞で上昇し得る。レベルを、腫瘍を有しない対象のようなHA関連疾患を有しない対象からの同等なサンプルのような標準または他の適切な対照と比較できる。
【0079】
ここで使用する対応する残基は、整列させた座に生じる残基を言う。関連するまたは変異体ポリペプチドを、当業者に知られた任意の方法で整列する。このような方法は、典型的に適合を最大化し、手動整列を使用するようなおよび多くの利用可能な整列プログラム(例えば、BLASTP)および当業者に知られたその他を使用するような方法を含む。ポリペプチドの配列の整列により、当業者は、保存されたおよび同一のアミノ酸残基をガイドとして使用して対応する残基を同定できる。対応する位置また、例えばタンパク質構造のコンピュータ・シミュレーションした配列を使用することによる、構造配列にも基づき得る。他の例において、対応する領域を同定できる。
【0080】
ここで使用する抗ヒアルロナン剤は、ヒアルロナン(HA)合成または分解を調節し、それにより組織または細胞中のヒアルロナンレベルを変えるあらゆる薬剤を言う。本発明の目的のために、抗ヒアルロナン剤は、該薬剤の非存在下と比較して組織または細胞のヒアルロナンレベルを減少させる。このような薬物は、HAシンターゼ(HAS)および他の酵素群をコードする遺伝子材料またはヒアルロナン代謝に関与する受容体の発現を調節するまたはHAS機能または活性を含むヒアルロナンを合成または分解するタンパク質を調節する化合物を含む。薬物は、小分子、核酸、ペプチド、タンパク質または他の化合物を含む。例えば、抗ヒアルロナン剤は、アンチセンスまたはセンス分子、抗体、酵素群、小分子阻害剤およびHAS基質アナログを含むが、これらに限定されない。
【0081】
ここで使用するヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナンポリマー(ヒアルロン酸またはHAとも呼ぶ)の小分子量フラグメントへの開裂を触媒する酵素である。ヒアルロナン分解酵素群の例は、ヒアルロニダーゼ群およびヒアルロナンを脱重合する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群である。ヒアルロナン分解酵素群であるコンドロイチナーゼ群の例は、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。コンドロイチンABCリアーゼは、コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)の2酵素群を含む。コンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼ群およびコンドロイチン硫酸ABCエキソリアーゼ群の例は、プロテウス・ブルガリスおよびペドバクター・ヘパリナス由来のもの(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン硫酸ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す;Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)を含むが、これに限定されない。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素群の例は、ペドバクター・ヘパリナス(配列番号99に示す)、ビクチバリス・バデンシス(配列番号100に示す)およびアルスロバクター・アウレッセンス(Tkalec et al. (2000) Applied and Environmental Microbiology 66(1):29-35; Ernst et al. (1995) Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology 30(5):387-444)由来のものを含むが、これらに限定されない。細菌由来のコンドロイチナーゼC酵素群の例は、ストレプトコッカス属およびフラボバクテリウム属由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4;Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8; Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
【0082】
ここで使用するヒアルロニダーゼは、ヒアルロナン分解酵素群のクラスを言う。ヒアルロニダーゼ群は、細菌ヒアルロニダーゼ群(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)、ヒル類、他の寄生虫、および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.36)、および哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.35)を含む。ヒアルロニダーゼ群は、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ、トリ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サカナ、カエル、細菌を含むが、これらに限定されないすべての非ヒト起源、およびヒル類、他の寄生虫、および甲殻類のすべてを含む。非ヒトヒアルロニダーゼ群の例は、ウシ(配列番号10、11、64およびBH55(米国特許5,747,027および5,827,721)、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号26、27、63および65)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア(配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);血清型III(配列番号73)、黄色ブドウ球菌(株COL)(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);株USA300(配列番号81)、肺炎レンサ球菌(配列番号82);株ATCC BAA-255/R6(配列番号83);血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84)、A群溶血レンサ球菌(血清型M1)(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);血清型M28(配列番号92);豚レンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))由来のヒアルロニダーゼ群、およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスヒアルロニダーゼ酵素を含むが、これらに限定されない(Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。ヒアルロニダーゼ群はまたヒト起源のものを含む。ヒトヒアルロニダーゼ群の例は、HYAL1(配列番号36)、HYAL2(配列番号37)、HYAL3(配列番号38)、HYAL4(配列番号39)およびPH20(配列番号1)を含む。ヒアルロニダーゼ群に含まれるのはまた、ヒツジおよびウシPH20、可溶性ヒトPH20および可溶性rHuPH20を含む可溶性ヒアルロニダーゼ群である。市販のウシまたはヒツジ可溶性ヒアルロニダーゼ群の例は、Vitrase(登録商標)(ヒツジヒアルロニダーゼ)、Amphadase(登録商標)(ウシヒアルロニダーゼ)およびHydase
TM(ウシヒアルロニダーゼ)を含む。
【0083】
ここで使用する“精製ウシ精巣ヒアルロニダーゼ”は、ウシ精巣抽出物から精製したウシヒアルロニダーゼを言う(米国特許番号2,488,564、2,488,565、2,806,815、2,808,362、2,676,139、2,795,529、5,747,027および5,827,721参照)。市販の精製ウシ精巣ヒアルロニダーゼ群の例は、Amphadase(登録商標)およびHydase
TMおよびSigma Aldrich、Abnova、EMD Chemicals、GenWay Biotech, Inc.、Raybiotech, Inc.およびCalzymeから入手可能なものを含むが、これらに限定されないウシヒアルロニダーゼ群を含む。また包含されるのは、配列番号190〜192のいずれかに示した核酸分子の発現により産生されるものを含むが、これに限定されない、組み換えにより産生したウシヒアルロニダーゼ群である。
【0084】
ここで使用する“精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ”は、ヒツジ精巣抽出物から精製したヒツジヒアルロニダーゼを言う(米国特許番号2,488,564、2,488,565および2,806,815および国際PCT出願番号WO2005/118799参照)。市販の精製ヒツジ精巣抽出物の例は、Vitrase(登録商標)およびSigma Aldrich、Cell Sciences、EMD Chemicals、GenWay Biotech, Inc.、Mybiosource.comおよびRaybiotech, Inc.から入手可能なものを含むが、これらに限定されないヒツジヒアルロニダーゼ群を含む。また包含されるのは、配列番号66および193〜194のいずれかに示した核酸分子の発現により産生されるものを含むが、これに限定されない、組み換えにより産生したヒツジヒアルロニダーゼ群である。
【0085】
ここで使用する“PH20”は、精子に存在し、天然に活性のヒアルロニダーゼのタイプを言う。PH−20は精子表面および内部アクロソーム膜に結合する場所であるリソソーム由来アクロソームで発生する。PH20は、ヒト、チンパンジー、カニクイザル、アカゲザル、マウス、ウシ、ヒツジ、モルモット、ウサギおよびラット起源のものを含むが、これらに限定されず、あらゆる起源のものを含む。PH20ポリペプチドの例は、ヒト(配列番号1)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)、カニクイザル(配列番号29)、ウシ(配列番号11および64)、マウス(配列番号32)、ラット(配列番号31)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジ(配列番号27、63および65)およびモルモット(配列番号30)のものを含む。
【0086】
ヒアルロナン分解酵素群の記載は、前駆体ヒアルロナン分解酵素ポリペプチドおよび成熟ヒアルロナン分解酵素ポリペプチド(例えばシグナル配列が除去されているもの)、活性を有するその切断型を含み、対立形質変異体および種変異体、スプライス変異体によりコードされる変異体および配列番号1および10〜48、63〜65、67〜102に示す前駆体ポリペプチドまたはその成熟形態と少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示すポリペプチドを含む、他の変異体を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素の記載は、配列番号50〜51に示すヒトPH20前駆体ポリペプチド変異体も含む。ヒアルロナン分解酵素群はまた化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものも含む。このような修飾は、ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化および当分野で知られる他のポリペプチド修飾を含むが、これらに限定されない。切断型PH20ヒアルロニダーゼは、その任意のC末端短縮形態、特に切断され、N−グリコシル化されたとき中性活性である形態である。
【0087】
ここで使用する“可溶性PH20”は、生理学的条件下で可溶性であるPH20のあらゆる形態を言う。可溶性PH20は、例えば、37℃でのTriton(登録商標)X-114溶液の水相へのその分配により同定できる(Bordier et al., (1981) J. Biol. Chem., 256:1604-7)。GPI固定PH20を含む脂質固定PH20のような膜固定PH20は、界面活性剤富相に分配するが、ホスホリパーゼ−Cでの処理後界面活性剤貧または水相に分配する。可溶性PH20に含まれるのは、PH20の膜へのアンカリングと関連する1個以上の領域が除去または修飾されており、ここで、可溶性形態はヒアルロニダーゼ活性を維持する、膜固定PH20である。可溶性PH20はまた組み換え可溶性PH20および、例えばヒツジまたはウシの精巣抽出物のような天然起源に含まれるまたはそこから精製されたものを含む。このような可溶性PH20の例は可溶性ヒトPH20である。
【0088】
ここで使用する可溶性ヒトPH20またはsHuPH20は、発現により、ポリペプチドが生理学的条件下で可溶性となるように、C末端のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー配列の全てまたは一部を欠くPH20ポリペプチドを言う。溶解度は、生理学的条件下溶解度を証明する任意の適切な方法で評価できる。このような方法の例は、水相への分配を評価し、本明細書に記載するTriton(登録商標)X-114アッセイである。さらに、可溶性ヒトPH20ポリペプチドは、CHO−S細胞のようなCHO細胞で産生されるならば、発現され、細胞培養培地に分泌されるポリペプチドである。可溶性ヒトPH20ポリペプチドは、しかしながら、CHO細胞で産生されるものに限定されず、あらゆる細胞でまたは組み換え発現およびポリペプチド合成を含むあらゆる方法で産生できる。CHO細胞における分泌の記載は定義されている。それゆえに、ポリペプチドがCHO細胞で発現および分泌され、可溶性であるならば、すなわちTriton(登録商標)X-114で中移出したとき水相に分配されるならば、このように産生されたかどうかに係らず可溶性PH20ポリペプチドである。sHuPH20ポリペプチドの前駆体ポリペプチドは異種または非異種(すなわち天然)シグナル配列のようなシグナル配列を含み得る。前駆体の例は、アミノ酸位置1〜35の天然35アミノ酸シグナル配列(例えば、配列番号1のアミノ酸1〜35参照)のようなシグナル配列を含むものである。
【0089】
ここで使用する“拡大可溶性PH20”または“esPH20”は、esPH20が生理学的条件下で可溶性であるように、GPIアンカー結合シグナル配列までの残基およびGPIアンカー結合シグナル配列からの1個以上の近接残基を含む、可溶性PH20ポリペプチドを言う。生理学的条件下の溶解度は当業者に知られたあらゆる方法で決定できる。例えば、上におよび実施例に記載したTriton(登録商標)X-114アッセイで評価できる。さらに、上記のとおり、可溶性PH20は、CHO−S細胞のようなCHO細胞で産生されるならば、発現され、細胞培養培地に分泌されるポリペプチドである。可溶性ヒトPH20ポリペプチド、しかしながら、CHO細胞で産生されるものに限定されず、あらゆる細胞でまたは組み換え発現およびポリペプチド合成を含むあらゆる方法で産生できる。CHO細胞における分泌の記載は定義されている。それゆえに、ポリペプチドがCHO細胞で発現および分泌され、可溶性であるならば、すなわちTriton(登録商標)X-114で中移出したとき水相に分配されるならば、このように産生されたかどうかに係らず可溶性PH20ポリペプチドである。ヒト可溶性esPH20ポリペプチドは、残基36〜490に加えて、得られたポリペプチドが可溶性であるように、配列番号1のアミノ酸残基位置491からの1個以上の近接アミノ酸を含む。ヒトesPH20可溶性ポリペプチドの例は、配列番号1のアミノ酸36〜491、36〜492、36〜493、36〜494、36〜495、36〜496および36〜497に対応するアミノ酸残基を有するものである。これらの例は、配列番号151〜154および185〜187のいずれかに示すアミノ酸配列を有するものである。また包含されるのは、中性活性を維持し、可溶性である、配列番号151〜154および185〜187の対応するポリペプチドと40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性のいずれかのような対立形質変異体および他の変異体である。配列同一性の記載は、アミノ酸置換を有する変異体を言う。
【0090】
ここで使用する“esPH20s”は、前駆体esPH20ポリペプチドおよび成熟esPH20ポリペプチド(例えばシグナル配列が除去されているもの)、酵素活性(完全長形態の少なくとも1%、10%、20%、30%、40%、50%以上を維持)を有するその切断型を含み、可溶性であり、対立形質変異体および種変異体、スプライス変異体によりコードされる変異体および配列番号1および3に示す前駆体ポリペプチドまたはその成熟形態と少なくとも40%、45%、50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む他の変異体を含む。
【0091】
ここで使用する“esPH20s”はまた化学的または翻訳後修飾を含むものおよび化学的または翻訳後修飾を含まないものを含む。このような修飾ペグ化、アルブミン化、グリコシル化、ファルネシル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、リン酸化および当分野で知られる他のポリペプチド修飾を含むが、これらに限定されない。
【0092】
ここで使用する“可溶性組み換えヒトPH20(rHuPH20)”は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で組み換えにより発現され、分泌された可溶性形態のヒトPH20を含む組成物を言う。可溶性rHuPH20はシグナル配列を含む核酸分子によりコードされ、配列番号49に示す。可溶性rHuPH20をコードする核酸は成熟ポリペプチドを分泌するCHO細胞で発現される。培養培地で産生されたら、C末端が不均一であり、それゆえに、生成物は種々の豊富さでPH20のアミノ酸36〜481および36〜482の任意の1個以上(例えば、配列番号4〜配列番号9)を含み得る、種々の混合物を含む。
【0093】
同様に、esPH20sのような他の形態のPH20について、組み換えにより発現されたポリペプチドおよびその組成物は、C末端が不均一である多様な種を含み得る。例えば、アミノ酸36〜497を有するesPH20をコードする配列番号151のポリペプチドの発現により産生した組み換えにより発現したesPH20の組成物は、36〜496、36〜495のような少ないアミノ酸の形態を含み得る。
【0094】
ここで使用する“N結合部分”は、ポリペプチドの翻訳後修飾によりグリコシル化できるポリペプチドのアスパラギン(N)アミノ酸残基を言う。ヒトPH20のN結合部分の例は、配列番号1に示すヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393を含む。
【0095】
ここで使用する“N−グリコシル化ポリペプチド”は、少なくとも3個のN結合したアミノ酸残基、例えば、配列番号1のアミノ酸残基N235、N368およびN393に対応するN結合部分のオリゴ糖結合を含む、PH20ポリペプチドまたはその切断型を言う。N−グリコシル化ポリペプチドは、3個、4個、5個および最大で全てのN結合部分がオリゴ糖に結合しているポリペプチドを含む。N結合オリゴ糖類はオリゴマンノース、複合体、ハイブリッドまたは硫酸化オリゴ糖類または他のオリゴ糖類および単糖類を含む。
【0096】
ここで使用する“一部N−グリコシル化されたポリペプチド”は、少なくとも3個のN結合部分に結合したN−アセチルグルコサミングリカンを最小限に含むポリペプチドを言う。一部グリコシル化されたポリペプチドは、ポリペプチドをEndoH、EndoF1、EndoF2および/またはEndoF3で処理して形成したものを含む、単糖類、オリゴ糖類および分枝糖形態を含む、種々のグリカン形態を含み得る。
【0097】
ここで使用する“脱グリコシル化PH20ポリペプチド”は、グリコシル化可能なすべての部位より少ない部位がグリコシル化されているPH20ポリペプチドを言う。脱グリコシル化は、例えば、グリコシル化を除きもしくは妨げることによりまたはグリコシル化部位を除去するようにポリペプチドを修飾することにより行うことができる。特定のN−グリコシル化部位は活性に必要ないが、他の部位は必要である。
【0098】
ここで使用する“ペグ化”は、典型的に、ヒアルロナン分解酵素の半減期を延長するための、ポリエチレングリコール(ペグ化部分PEG)のような重合体分子の、ヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン分解酵素群への共有結合または他の安定な結合を言う。
【0099】
ここで使用する“コンジュゲート”は、1個以上の他のポリペプチドまたは化学的部分に直接的または間接的に結合したポリペプチドを言う。このようなコンジュゲートは、化学的結合により産生された融合タンパク質および任意の他の方法で産生された融合タンパク質を含む。例えば、コンジュゲートは、1個以上の他のポリペプチドまたは化学的部分に直接的または間接的に結合した可溶性PH20ポリペプチドを言い、これにより、コンジュゲートがヒアルロニダーゼ活性を維持する限り、少なくとも1個の可溶性PH20ポリペプチドが他のポリペプチドまたは化学的部分に直接的または間接的に結合する。
【0100】
ここで使用する“融合”タンパク質は、1個の核酸分子由来のコーディング配列および他の核酸分子由来のコーディング配列を含む核酸配列によりコードされたポリペプチドを言い、ここで、これらのコーディング配列は、融合構築物が宿主細胞で転写および翻訳されるとき同じ読み取り枠にあり、害タンパク質は2個のタンパク質を含んで産生される。2個の分子は構築物で隣接しているかまたは、1個、2個、3個以上であるが、典型的に10個、9個、8個、7個または6個より少ないアミノ酸を含むリンカーポリペプチドで離されていてよい。融合構築物によりコードされるタンパク質産物は融合ポリペプチドと言う。
【0101】
ここで使用する“ポリマー”は、ポリペプチドに結合、すなわち直接的またはリンカーを介して間接的に安定に結合しているあらゆる高分子量の天然または合成部分を言う。このようなポリマー類は、典型的に血清半減期を延長し、シアル酸部分、ペグ化部分、デキストランおよびグリコシル化のためのような糖および他の部分を含むが、これらに限定されない。例えば、可溶性PH20またはrHuPH20のようなヒアルロニダーゼ群はポリマーと結合できる。
【0102】
ここで使用するヒアルロニダーゼ基質は、ヒアルロニダーゼ酵素により開裂および/または脱重合する基質(例えばタンパク質または多糖)を言う。一般的に、ヒアルロニダーゼ基質はグリコサミノグリカンである。ヒアルロニダーゼ基質の例はヒアルロナン(HA)である。
【0103】
ここで使用するヒアルロナン関連疾患、障害または状態は、ヒアルロナンレベル上昇が疾患または状態の原因として、結果としてまたは他態様で観察されるあらゆる疾患または状態を言う。ヒアルロナン関連疾患および状態は、組織または細胞の上昇したヒアルロナン発現、上昇した間質性流体圧、低下した血管容積および/または組織中の上昇した含水量と関連する。ヒアルロナン関連疾患、障害または状態は、ヒアルロニダーゼ、例えば、可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を含む組成物を単独でまたは他の処置および/または薬物と組み合わせてまたは加えて投与することにより処置できる。疾患および状態の例は、炎症性疾患および高ヒアルロナン腫瘍を含むが、これに限定されない。高ヒアルロナン腫瘍は、例えば、末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌、結腸癌およびその他の癌のような固形腫瘍を含む腫瘍である。またヒアルロナン関連疾患および状態の例は、排出圧および浮腫と関連する疾患、例えば、臓器移植、卒中、脳外傷またはその他の傷害が原因の浮腫のような上昇した間質性流体圧と関連する疾患を含む。ヒアルロナン関連疾患および状態の例は、癌、排出圧および浮腫を含む、上昇した間質性流体圧、低下した血管容積および/または組織における上昇した含水量と関連する疾患および状態を含む。一例として、ヒアルロナン関連状態、疾患または障害の処置は、上昇した間質性流体圧(IFP)、低下した血管容積および組織における上昇した水含量の1種以上の改善、軽減または他の有益な効果を含む。
【0104】
ここで使用する“活性”は、完全長(完全)タンパク質と関連するポリペプチドまたはその一部の1種またはそれ以上の機能的活性を言う。例えば、ポリペプチドの活性フラグメントは完全長タンパク質の活性を示し得る。機能的活性は、生物活性、触媒的または酵素活性、抗原性(ポリペプチドと結合する抗ポリペプチド抗体に対して結合を競合する能力)、免疫原性、多量体形成能およびポリペプチドに対する受容体またはリガンドと特異的に結合する能力を含むが、これらに限定されない。
【0105】
ここで使用する“ヒアルロニダーゼ活性”は、ヒアルロン酸の開裂を酵素的に触媒する能力を言う。米国薬局方(USP)XXIIのヒアルロニダーゼアッセイは、酵素を30分間、37℃でHAを反応させた後の(HA)基質である高分子量ヒアルロン酸またはヒアルロナンの量を測定することにより間接的にヒアルロニダーゼ活性を測定する(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。あらゆるヒアルロニダーゼの相対的活性を単位で確認するために、アッセイにおいて標品溶液を使用できる。可溶性PH20およびesPH20を含むPH20のようなヒアルロニダーゼ群のヒアルロニダーゼ活性を測定するためのインビトロアッセイは当分野で知られ、ここに記載されている。アッセイの例は、非開裂ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合したときに形成される不溶性沈殿を検出することによりヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸開裂を間接的に測定する微少濁度アッセイおよびストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲートおよび発色性基質を用いてマイクロタイタープレートウェルに非教諭結合的に結合した残っているビオチニル化−ヒアルロン酸を間接的に検出することによりヒアルロン酸の開裂を測定するビオチニル化−ヒアルロン酸アッセイである。試験するヒアルロニダーゼの活性を単位で決定するために、例えば、標準曲線を作成するために、標品を使用できる。
【0106】
ここで使用する比活性は、タンパク質mgあたりの活性の単位を言う。ヒアルロニダーゼのミリグラムは、M
−1cm
−1の単位で分子吸光係数を約1.7として、280nmにおける溶液吸光度により規定する。
【0107】
ここで使用する“中性活性”は、中性pH(例えば正確にまたは約pH7.0)でヒアルロン酸開裂を酵素的に触媒するPH20ポリペプチドの能力を言う。一般的に、中性活性および可溶性PH20、例えば、C末端切断されたまたは一部N−グリコシル化されたPH20は、C末端切断または一部N−グリコシル化されていない対応する中性活性PH20のヒアルロニダーゼ活性と比較して、正確にまたは約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%以上の活性を有する。
【0108】
ここで使用する“GPIアンカー結合シグナル配列”は、ERの管腔内のポリペプチドへの予め形成されたGPIアンカーの付加を指示するC末端アミノ酸の配列を言う。GPIアンカー結合シグナル配列は、GPI固定PH20ポリペプチドのようなGPI固定ポリペプチドの前駆体ポリペプチドに存在する。C末端GPIアンカー結合シグナル配列は、典型的にω−部位またはGPIアンカー結合部位の直ぐ下流に、8〜12アミノ酸の親水性スペーサー領域が先行する8〜20アミノ酸の優勢疎水性領域を含む。GPIアンカー結合シグナル配列は当分野で周知の方法を使用して同定できる。これらは、インシリコ法およびアルゴリズム(例えばUdenfriend et al. (1995) Methods Enzymol. 250:571-582, Eisenhaber et al., (1999) J. Biol. Chem. 292: 741-758, Fankhauser et al., (2005) Bioinformatics 21:1846-1852, Omaetxebarria et al., (2007) Proteomics 7:1951-1960, Pierleoni et al., (2008) BMC Bioinformatics 9:392)であり、ExPASy Proteomics tools site (e.g., the WorldWideWeb site expasy.ch/tools/参照)ようなウェブサイトを含む。
【0109】
ここで使用する“核酸”はペプチド核酸(PNA)およびそれらの混合物を含み、DNA、RNAおよびそれらの類似体を含む。核酸は一本鎖または二本鎖であり得る。所望により蛍光または放射標識のような検出可能な標識で標識されていてよいプローブまたはプライマーを言うとき、一本鎖分子が意図される。このような分子は、典型的にライブラリーのプロービングまたはプライミングのために、その標的が統計学的に独特であるような長さまたは低コピー数(典型的に多くても5、一般的に多くても3)である。一般的にプローブまたはプライマーは、目的の遺伝子に相補的または同一の少なくとも14個、16個または30個の近接ヌクレオチドの配列を含む。プローブおよびプライマーは10、20、30、50、100以上の核酸長であり得る。
【0110】
ここで使用するペプチドは、2以上のアミノ酸長でありおよび40以下のアミノ酸長であるポリペプチドを言う。
【0111】
ここに記載する種々のアミノ酸配列に存在するアミノ酸は、周知の、3文字または1文字略語で示す(表1)。種々の核酸フラグメントにおける溶液存在するヌクレオチドは、当分野で慣用的に使用されている標準1文字記号により記載する。
【0112】
ここで使用する“アミノ酸”は、アミノ基およびカルボン酸基を含む有機化合物である。ポリペプチドは2個以上のアミノ酸を含む。本発明の目的上、アミノ酸は、20個の天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸およびアミノ酸アナログ(すなわち、α−炭素が側鎖を有するアミノ酸)を含む。
【0113】
ここで使用する“アミノ酸残基”は、ポリペプチドのペプチド結合の化学分解(加水分解)により形成されたアミノ酸を言う。ここに記載するアミノ酸残基は、“L”異性体形態であると推定される。“D”異性体形態の残基は、その旨が表記されているが、所望の機能的特性がポリペプチドにより維持する限り、何れかのL−アミノ酸残基と置き換えられ得る。NH
2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基を言う。COOHは、ポリペプチドのカルボキシル末端に存在する遊離カルボキシ基を言う。J. Biol. Chem., 243: 3557-3559 (1968)に記載され、37 C.F.R. §§ 1.821-1.822に再用された標準ポリペプチド命名法を遵守して、アミノ酸残基の略語を表1に示す。
【表1】
【0114】
ここで使用する式で表されるアミノ酸配列は、全て、左から右に、アミノ末端からカルボキシル末端に向かう通常の向きで表されている。また、“アミノ酸残基”という表現は、対応表(表1)に挙げたアミノ酸ならびに修飾アミノ酸および異常アミノ酸、例えば37C.F.R.§§1.821〜1.822で使用され引用により本明細書に組み込まれるものを包含すると定義される。さらにまた、アミノ酸配列の最初または最後にあるハイフン記号は、1つ以上のアミノ酸残基のさらなる配列へのペプチド結合、アミノ末端基(例えばNH
2)またはカルボキシル末端基(例えばCOOH)へのペプチド結合を示す。
【0115】
ここで使用する“天然に存在するα−アミノ酸”とは、ヒトにおけるその関連するmRNAコドンによる負荷tRNA分子の特異的認識によりタンパク質に取り込まれる天然に見られる20種のα−アミノ酸の残基である。天然に存在しないアミノ酸は、それゆえに、例えば、20種の天然に存在するアミノ酸以外のアミノ酸またはアミノ酸のアナログを含み、アミノ酸のD−立体異性体を含むが、これに限定されない。天然に存在しないアミノ酸の例はここに記載されており、当業者に知られている。
【0116】
ここで使用するDNA構築物は、DNAのセグメントが自然界には見いだされない形で組み合わされ隣接して配置されている一本鎖または二本鎖の線状または環状DNA分子である。DNA構築物は、人為的操作の結果として存在し、操作された分子のクローンおよび他のコピーを含む。
【0117】
ここで使用するDNAセグメントは、指定された属性を持つ、より大きなDNA分子の一部分である。例えば、指定されたポリペプチドをコードするDNAセグメントは、プラスミドまたはプラスミドフラグメントのような、より長いDNA分子の一部であって、5’から3’に向かう方向に読んだ場合に、指定されたポリペプチドのアミノ酸配列をコードするものである。
【0118】
ここで使用する用語ポリヌクレオチドは、5’端から3’端に向かって読み取られるデオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基の一本鎖または二本鎖ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドにはRNAおよびDNAが包含され、自然起源から単離するか、インビトロで合成するか、天然分子と合成分子の組合せから製造することができる。ポリヌクレオチド分子の長さは、本明細書では、ヌクレオチド(“nt”と略記)または塩基対(“bp”と略記)で記載される。ヌクレオチドという用語は、文脈に応じて、一本鎖分子および二本鎖分子に使用される。この用語が二本鎖分子に適用される場合、それは全長を表すために使用され、塩基対という用語と等価であると理解される。二本鎖ポリヌクレオチドの2本の鎖の長さがわずかに異なり得ること、およびそれらの末端がずれていてもよいこと、したがって二本鎖ポリヌクレオチド分子内の全てのヌクレオチドが対を形成しているとは限らないことは、当業者が理解している。そのような非対合末端は、一般に、20ヌクレオチド長を超えない。
【0119】
ここで使用する2つのタンパク質または核酸間の“類似性”とは、タンパク質のアミノ酸配列間または核酸のヌクレオチド配列間の類縁性を言う。類似性は、残基の配列およびそこに含まれる残基の同一性および/または相同性の度合いに基づくことができる。タンパク質間または核酸間の類似性の度合いを評価するための方法は、当業者には知られている。例えば、配列類似性を評価する一方法では、2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を、それら配列間の同一性が最大レベルになるように整列させる。“同一性”とは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列が不変である程度を言う。アミノ酸配列の整列では(また、ある程度はヌクレオチド配列の整列でも)、アミノ酸(またはヌクレオチド)の保存的相違および/または頻繁な置換も考慮することができる。保存的相違とは、関与する残基の物理化学的性質が維持されるような相違である。整列はグローバル(配列の全長にわたり、全ての残基を含む、比較配列の整列)またはローカル(配列のうち、最も類似する1または複数の領域だけを含む部分の整列)であり得る。
【0120】
“同一性”そのものは、当技術分野で認められている意味を持ち、公表された技法を使って算出することができる(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991)参照)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド間の同一性を測定するための方法はいくつか存在するが、“同一性”という用語は当業者にはよく知られている(Carrillo, H. and Lipton, D., (1988) SIAM J AppliedMath 48:1073)。
【0121】
ここで使用する相同(核酸および/またはアミノ酸配列に関して)は、約25%以上の配列相同性、典型的には、25%以上の、40%以上の、50%以上の、60%以上の、70%以上の、80%以上の、85%以上の、90%以上のまたは95%以上の配列相同性を意味し、必要であれば正確なパーセンテージを指定することができる。ここで使用するは、“相同性”および“同一性”という用語は、別段の表示がない限り、しばしば互換的に使用される。一般に、相同率または同一率を決定するには、最も高度な一致が得られるように配列が整列される(例えばComputational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991参照)。配列相同性により、保存されているアミノ酸の数は、標準的なアラインメントアルゴリズムプログラムで決定され、各供給者によって設定されたデフォルトギャップペナルティに従って使用することができる。実質的に相同な核酸分子は、典型的には、中ストリンジェンシーまたは高ストリンジェンシーで、目的とする対象の核酸の全長にわたってハイブリダイズする。ハイブリダイズする核酸分子中のコドンの代わりに縮重したコドンを含有する核酸分子も意図される。
【0122】
任意の2分子が、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%“同一”または“相同”なヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を持つかどうかは、“FASTA”プログラムなどの公知コンピュータアルゴリズムを使用し、例えばPearson et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444に記載されているデフォルトパラメータを使って決定することができる(他のプログラムには、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(I):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul, S.F., et al., J Molec Biol 215:403 (1990)); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, ed., Academic Press, San Diego, 1994, and Carrillo et al. (1988) SIAM J Applied Math 48:1073)。例えば、米国国立バイオテクノロジー情報センターデータベースのBLAST機能を使って同一性を決定することができる。他の市販プログラムまたは公に利用可能なプログラムには、DNAStar “MegAlign” program (Madison, WI)およびUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group (UWG) “Gap” program (Madison WI)などがある。タンパク質分子および/または核酸分子の相同率または同一率は、例えば、GAPコンピュータプログラム(例えばNeedleman et al. (1970) J. Mol. Biol. 48:443, as revised by Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482)を使って配列情報を比較することによって決定することができる。簡単に述べると、GAPプログラムは、類似性を、整列させた記号(すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸)のうち、類似しているもの数を、それら2つの配列の短い方の配列中の記号の総数で割ったものと定義する。GAPプログラムのデフォルトパラメータとしては、(1)Schwartz and Dayhoff, eds., ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358 (1979)に記載されているように、単項比較マトリックス(unary comparison matrix)(一致に対して1の値を、不一致に対して0の値を含む)およびGribskov et al. (1986) Nucl. Acids Res. 14:6745の加重比較マトリックス(weighed comparison matix);(2)各ギャップに対して3.0のペナルティおよび各ギャップ中の各記号に対して0.10の追加ペナルティ;ならびに(3)エンドギャップ(end gap)に対するペナルティなしを挙げることができる。
【0123】
したがって、ここで使用する“同一性”または“相同性”という用語は、試験ポリペプチドまたは試験ポリヌクレオチドと基準ポリペプチドまたは基準ポリヌクレオチドの間の比較を表す。本明細書で使用する“〜に少なくとも90%同一”という用語は、そのポリペプチドの基準核酸配列または基準アミノ酸配列に対する90〜99.99%の同一率を言う。90%以上のレベルの同一性とは、例えば、比較される試験ポリペプチドと基準ポリペプチドの長さが100アミノ酸であるとすると、基準ポリペプチド中のアミノ酸と異なる試験ポリペプチド中のアミノ酸が10%(すなわち100個中10個)を上回らないことを示す。同様の比較を、試験ポリヌクレオチドと基準ポリヌクレオチドの間でも行うことができる。そのような相違は、ポリペプチドの全長にわたってランダムに分布する点突然変異として現れる場合も、許容される最大値までの、例えば100個中10個のアミノ酸相違(約90%の同一性)までの、種々の長さを持つ1つ以上の位置にクラスターを形成する場合もあり得る。相違は、核酸またはアミノ酸の置換、挿入または欠失と定義される。約85〜90%を上回る相同性または同一性のレベルでは、結果が、プログラムにも、設定されたギャップパラメータにも、依存しないはずであり、そのような高レベルの同一性は、多くの場合、ソフトウェアに頼らなくても手動での整列によって、容易に評価することができる。
【0124】
ここで使用する、整列された配列とは、ヌクレオチド配列中またはアミノ酸配列中の対応する位置の整列させるために使用した相同性(類似性および/または同一性)を言う。典型的には、50%以上が同一である関係する2つ以上の配列が整列される。整列された一組の配列とは、対応する位置で整列させた2つ以上の配列を指し、RNAに由来する配列、例えばESTおよび他のcDNAを、ゲノムDNA配列と整列させたものを含んでもよい。
【0125】
ここで使用する“プライマー”は、適当な条件下(例えば、4種のヌクレオシド三リン酸類およびDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼまたは逆転写酵素のような重合化剤の存在下)、適当な緩衝液中、適切な温度で鋳型指示DNA合成の開始点として作用できる核酸分子である。当然ながら、ある種の核酸分子は“プローブ”および“プライマー”として作用できる。プライマーは、しかしながら、伸長のために3’ヒドロキシル基を有する。プライマーは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素(RT)−PCR、RNA PCR、LCR、マルチプレックスPCR、パンハンドルPCR、捕獲PCR、発現PCR、3’および5’RACE、インサイチュPCR、ライゲーション仲介PCRおよび他の増幅プロトコルを含む種々の方法において使用できる。
【0126】
ここで使用する“プライマー対”は、増幅すべき(例えばPCRによる)配列の5’末端の補体とハイブリダイズする5’(上流)プライマーおよび増幅すべき配列の3’末端とハイブリダイズする3’(下流)プライマーを含む一組のプライマーを言う。
【0127】
ここで使用する“特異的にハイブリダイズする”は、核酸分子(例えばオリゴヌクレオチド)の標的核酸分子への相補的塩基対形成によるアニーリングを言う。当業者は、特定の分子の長さおよび組成のような特異的ハイブリダイゼーションに影響するインビトロおよびインビボパラメータを熟知する。インビトロハイブリダイゼーションに特に関連するパラメータは、さらにアニーリングおよび洗浄温度、緩衝液組成および塩濃度を含む。高ストリンジェンシーで特異的に結合していない核酸分子を除去するための洗浄条件の例は、0.1×SSPE、0.1%SDS、65℃および中ストリンジェンシーで0.2×SSPE、0.1%SDS、50℃である。同等なストリンジェンシー条件は当分野で知られる。当業者は、特定の適用に適切な核酸分子の標的核酸分子への特異的ハイブリダイゼーションを達成するためのこれらのパラメータを容易に調節できる。相補的とは、2個のヌクレオチド配列について述べるとき、2個のヌクレオチド配列が、典型的に25%、15%または5%未満のミスマッチで対立ヌクレオチドとハイブリダイズできることを意味する。必要であれば、相補性のパーセンテージを特定する。典型的に2分子は、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするように選択する。
【0128】
ここで使用するある生成物と実質的に同一とは、十分に類似しているので、その生成物の代わりに実質的に同一な生成物を使用しても、問題とする性質が十分に維持できることを意味する。
【0129】
また、ここで使用する“実質的に同一”または“類似する”用語は、当業者に知られているように、文脈によってさまざまである。
【0130】
ここで使用する対立遺伝子変異型または対立遺伝子変異は、同じ染色体座を占める遺伝子の2つ以上の変異形態のいずれかを言う。対立遺伝子変異は突然変異によって自然に発生し、集団内の表現型多型をもたらし得る。遺伝子突然変異はサイレント(コードされるポリペプチドを変化させない)であるか、変化したアミノ酸配列を持つポリペプチドをコードすることができる。“対立遺伝子変異型”という用語は、本明細書では、ある遺伝子の対立遺伝子変異型によってコードされるタンパク質を表すためにも使用される。典型的に、基準型の遺伝子は、ある集団から得られるまたはある種の単一の基準メンバーから得られるポリペプチドの野生型および/または優勢型をコードする。典型的に、対立遺伝子変異型(2種間および3種以上の間での変異型を含む)は、同じ種から得られる野生型および優勢型と、典型的には少なくとも80%、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を持つ。また、同一性の度合いは、遺伝子に依存し、比較が種間比較であるか種内比較であるかにも依存する。一般に、種内対立遺伝子変異型は、野生型および/または優勢型と少なくとも約80%、85%、90%または95%以上の同一性(野生型および/または優勢型のポリペプチドと96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を含む)を持つ。本明細書において対立遺伝子変異型は、一般に、同じ種内のメンバー間でのタンパク質中の変異を言う。
【0131】
ここで使用する“対立遺伝子”は、本明細書では“対立遺伝子変異型”と可換的に使用され、遺伝子またはその一部の変異型を言う。対立遺伝子は相同染色体上の同じ座または位置を占める。ある対象がある遺伝子について2つの同一対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子または対立遺伝子に関してホモ接合であるという。ある対象がある遺伝子について2つの異なる対立遺伝子を持っている場合、その対象はその遺伝子についてヘテロ接合であるという。ある特定遺伝子の対立遺伝子は互いに1個のヌクレオチドが異なる場合または数個のヌクレオチドが異なる場合があり、ヌクレオチドの置換、欠失および挿入を含む場合もある。ある遺伝子の対立遺伝子は、突然変異を含有する遺伝子の一形態であることもできる。
【0132】
ここで使用する種変異型は、マウスとヒトのような異なる哺乳動物種間を含む異なる種間のポリペプチドにおける変異型を言う。例えばPH20について言えば、ここに提供する種変異体の例は、ヒト、チンパンジー、マカクおよびカニクイザルを含むが、これらに限定されない、霊長類PH20である。一般的に、種変異体は70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%以上の配列同一性を有する。種変異体間の対応する残基は、例えば、配列間の同一性が95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上となるように、マッチするヌクレオチドまたは残基数が最大になるように配列を比較および整列することにより決定できる。次いで、目的の位置に参照核酸分子の番号を割り当てる。整列は、特に、配列同一性が80%を超えるとき、手動で、特に目視により行うことができる。
【0133】
ここで使用するヒトタンパク質は、ヒトのゲノムに存在する、DNAのような核酸分子によりコードされるものであり、全てのその対立形質変異体および保存的変異を含む。タンパク質の変異体または修飾体は、修飾がヒトタンパク質の野生型または著名な配列に基づくならば、ヒトタンパク質である。
【0134】
ここで使用するスプライス変異体は、ゲノムDNAの一次転写物の異なる処理により生じる、1種を超えるmRNAをもたらす変異体を言う。
【0135】
ここで使用する修飾はポリペプチドのアミノ酸の配列または核酸分子のヌクレオチドの配列の修飾を言い、それぞれアミノ酸およびヌクレオチドの欠失、挿入および置き換え(例えば置換)を言う。修飾の例はアミノ酸置換である。アミノ酸置換ポリペプチドは、アミノ酸置換を含まないポリペプチドと65%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%以上の配列同一性を示し得る。アミノ酸置換は保存的でも非保存的でもよい。一般的に、ポリペプチドへのあらゆる修飾はポリペプチドの活性を維持する。ポリペプチドを修飾する方法は、組換えDNA法を用いる方法など、当業者にとっては日常的である。
【0136】
ここで使用するアミノ酸の適切な保存的置換は当業者に知られ、一般的に得られた分子の生物活性を変えることなく実施できる。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域の一アミノ酸置換は生物活性を実質的に変えないことを認識する(例えば、Watson et al. Molecular Biology of the Gene, 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. co., p.224参照)。このような置換は、次の表2に示すものに従い実施できる。
【表2】
【0137】
他の置換も可能であり、経験的にまたは既知の保存的置換に従って決定できる。
【0138】
ここで使用する用語プロモータは、RNAポリメラーゼの結合および転写開始を起すDNA配列を含む遺伝子を意味する。プロモータ配列は、必ずとは言えないが一般的に、遺伝子の5’非コーディング領域に見られる。
【0139】
ここで使用する単離されたまたは精製されたポリペプチドもしくはタンパク質またはその生物活性部分は、そのタンパク質が得られる細胞または組織に由来する細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合は化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。当業者が純度を評価するために使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの標準的分析方法で検定した場合に調製物が容易に検出できる不純物を含まないと判断されるか、または調製物が十分に純粋であって、さらなる精製を行ってもその物質の物理的および化学的性質(例えば酵素活性および生物活性)が検出できるほどには変化しない場合に、調製物は不純物を実質的に含まないと決定できる。化合物を精製して実質的に化学的に純粋な化合物を製造するための方法は、当業者に知られている。ただし、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であることもある。そのような場合は、さらなる精製により、化合物の比活性が向上することもある。
【0140】
それゆえに、例えば実質的に精製された可溶性PH20のような実質的に精製されたポリペプチドが記載されているとき、それはタンパク質がその単離起源または組換え生産起源となった細胞の細胞構成成分を含む細胞物質から分離されている、タンパク質の調製物である。ある態様において、細胞物質を実質的に含まないという用語は、約30%未満(乾燥重量で)の非酵素タンパク質(ここでは夾雑タンパク質ともいう)、一般的には約20%未満の非酵素タンパク質または約10%未満の非酵素タンパク質または約5%未満の非酵素タンパク質を含む酵素タンパク質の調製物を包含する。酵素タンパク質が組換え生産される場合、それは培養培地も実質的に含まない。すなわち培養培地は、酵素タンパク質調製物の体積の約または正確に20%、10%もしくは5%未満に相当する。
【0141】
本明細書で使用する、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないという用語は、タンパク質がそのタンパク質の合成に関与した化学的前駆体または他の化学物質から分離されている酵素タンパク質の調製物を包含する。この用語は、含まれる化学的前駆体または非酵素化学物質もしくは構成成分が約30%(乾燥重量で)、20%、10%、5%またはそれ以下より少ない酵素タンパク質の調製物を包含する。
【0142】
ここで使用する例えば合成核酸分子または合成遺伝子または合成ペプチドなどに関していう合成とは、組換え法および/または化学合成法によって製造される核酸分子またはポリペプチド分子を言う。
【0143】
ここで使用する組み換え手段または組換えDNA法を使った生産とは、クローン化されたDNAによってコードされるタンパク質を発現させるために、分子生物学で周知の方法を使用することを意味する。
【0144】
ここで使用するベクター(またはプラスミド)は、異種核酸をその発現またはその複製を目的として細胞中に導入するために使用される個々の成分を言う。ベクターは典型的に、エピソームであり続けるが、ゲノムの染色体への遺伝子またはその一部の組込みが達成されるように設計することもできる。酵母人工染色体および哺乳類人工染色体などの人工染色体であるベクターも考えられる。そのような運搬体の選択と使用は当業者にはよく知られている。
【0145】
ここで使用する発現ベクターは、当該DNAフラグメントの発現を達成する能力を持つプロモーター領域などの調節配列に作動的に連結されたDNAを発現させる能力を持つベクターを包含する。そのような追加セグメントはプロモーター配列およびターミネーター配列を含むことができ、場合によっては、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルも含むことができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAから誘導されるか、または両方の要素を含むことができる。したがって、発現ベクターとは、適当な宿主細胞に導入された時にクローン化されたDNAの発現をもたらす、プラスミド、ファージ、組換えウイルスまたは他のベクターなどの組換えDNAまたはRNA構築物を言う。適当な発現ベクターは当業者にはよく知られており、真核細胞および/または原核細胞中で複製可能なものや、エピソームであり続けるもの、または宿主細胞ゲノムに組み込まれるものがある。
【0146】
ここで使用するベクターは、“ウイルスベクター”または“ウイルス様ベクター”も包含する。ウイルス様ベクターは、(運搬体またはシャトルとして)細胞中に外来遺伝子を導入するためにそれら外来遺伝子に作動的に連結された工学的改変ウイルスである。
【0147】
ここで使用するDNAセグメントに関して“作動可能に連結”または“作動的に連結”とは、複数のセグメントが、その意図された目的のために、それらが協力して機能するように、例えば転写がプロモーターの下流かつ任意の転写配列の上流で開始するように、配置されることを意味する。プロモーターとは、通常、転写機構がそこに結合して転写を開始するドメインであり、転写はコードセグメントを経てターミネーターまで進行する。
【0148】
本明細書で使用する、“評価する“という用語は、サンプル中に存在する酵素またはそのドメインのようなタンパク質の活性について絶対値を得るという意味での、そしてまた活性のレベルを示す指数、比、パーセンテージ、視覚化または他の値を得るという意味での、定量的および定性的決定を包含するものとする。評価は直接的または間接的であり得る。例えば、実際に検出する化学的種は、当然、それ自体酵素開裂産物である必要はなく、例えばその誘導体または何らかのさらなる物質であり得る。例えば、開裂産物の検出は、蛍光部分のような検出可能部分であり得る。
【0149】
ここで使用する生物活性とは、化合物のインビボ活性、または化合物、組成物もしくは他の混合物をインビボ投与した時に起こる生理学的応答を言う。したがって生物活性は、そのような化合物、組成物および混合物の治療効果および薬理活性を包含する。生物活性は、そのような活性を試験または使用するために設計されたインビトロ系で観察することができる。それゆえに、本発明の目的のためにヒアルロニダーゼ酵素の生物活性は、そのヒアルロン酸分解である。
【0150】
2つの核酸配列に関してここで使用する等価とは、問題の2つの配列が同じアミノ酸配列または等価なタンパク質をコードすることを意味する。2つのタンパク質またはペプチドに関して等価という場合、それは、それら2つのタンパク質またはペプチドが実質的に同じアミノ酸配列を持ち、そのタンパク質またはペプチドの活性または機能を実質的に変化させないアミノ酸置換だけを有することを意味する。等価が性質を指す場合、その性質は同程度に存在する必要はないが(例えば2つのペプチドは同じタイプの酵素活性を異なる比率で示すことができる)、それらの活性は通常、実質的に同じである。
【0151】
ここで使用する“調節する”および“調節”または“改変”は、タンパク質のような分子の活性の変更を言う。活性の例は、シグナル伝達のような生物活性を含むが、これに限定されない。調節は活性上昇(すなわち、上方制御またはアゴニスト活性)、活性低下(すなわち、下方制御または阻害)または活性の何らかの他の変更(例えば周期性、頻度、持続時間、動力学または他のパラメータの変更)を含み得る。調節は状況に依存的であり得て、典型的に調節は指摘した状態、例えば、野生型タンパク質、構成的状態のタンパク質または指摘した細胞型または状態で発現されるタンパク質にと比較する。
【0152】
ここで使用する組成物はあらゆる混合物を意味する。これは溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0153】
ここで使用する組合せは、2つまたはそれ以上の物の間の任意の関連を言う。組合せは、2つまたはそれ以上の別々の品目、例えば2つの組成物であるか、その混合物、例えばそれら2つまたはそれ以上の品目の単一混合物であるか、それらの任意の変更物であることができる。組合せの要素は、一般に、機能的に関連または関係する。例えば、組み合わせは、ここで提供する組成物の組み合わせであり得る。
【0154】
ここで使用するキットは、ここに記載する組成物と、再構成、活性化および生物活性または特性の送達、投与、診断および評価のための機器/デバイスを目的とするが、これに限定されない他の物品の組み合わせのような要素の組み合わせである。キットは、所望により使用指示書を含んでよい。
【0155】
ここで使用する“疾患または障害”は、感染、後天的状態、遺伝的状態などを含むが、これらに限定されない原因または状態に起因し、同定可能な症状を特徴とする、ある生物における病理学的状態を言う。ここで目的とする疾患および障害はヒアルロナン関連疾患および障害である。
【0156】
ここで使用する、ある疾患または状態を持つ対象を“処置する”とは、処置後に、その対象の症状が部分的にまたは完全に治癒すること、または静的状態を保つことを意味する。したがって、処置は、予防、治療および/または治癒を包含する。予防とは、潜在的疾患の防止および/または症状の悪化もしくは疾患の進行の防止を言う。
【0157】
ここで使用する医薬有効剤は、任意の治療剤または生物活性剤、例えば化学療法剤、麻酔薬、血管収縮薬、分散剤、従来の治療薬(小分子薬および治療用タンパク質を含む)を包含するが、これらに限定されない。
【0158】
ここで使用する処置は、ある状態、障害もしくは疾患または他の適応の症状を寛解するか他の有益な形で変化させる、任意の方法を意味する。
【0159】
ここで使用する治療効果は、疾患または状態の症状を変化(典型的に、改善または寛解)させるか、疾患または状態を治癒させる、対象の処置に起因する効果を意味する。治療有効量とは、対象への投与後に治療効果をもたらす、組成物、分子または化合物の量を言う。
【0160】
本明細書で使用する“対象”という用語は、ヒトなどの哺乳動物を含む動物を言う。
ここで使用する患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象を言う。
ここで使用する“個体”は対象であり得る。
【0161】
ここで使用するほぼ同じは、当業者が同じまたは許容される誤差範囲と見なす量の範囲内を意味する。例えば、典型的に、医薬組成物について、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%または10%以内の量はほぼ同じと見なす。このような量は、対象による特定の組成物の多様性に対する耐容性により変わり得る。
【0162】
ここで使用する投与レジメは薬物、例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えば可溶性ヒアルロニダーゼまたは他の薬物を含む組成物の投与量および投与頻度を言う。投与レジメは処置する疾患または状態に相関し、それゆえに変わり得る。
【0163】
ここで使用する投与頻度は、処置剤を連続的投与間隔の時間を言う。例えば、頻度は日、週または月であり得る。例えば、頻度は1週間に1回を超え、例えば、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回または毎日であり得る。頻度はまた1週間、2週間、3週間または4週間であり得る。特定の頻度は処置する特定の疾患または状態の関数である。一般的に、頻度は1週間に1回を声、一般的に1週間に2回である。
【0164】
ここで使用する“投与サイクル”は、連続的投与で繰り返される本酵素および/または第二剤の投与の投与レジメの反復スケジュールを言う。例えば、投与サイクルの例は、1週間に2回、3週間の投与、続く1週間の休薬の28日サイクルである。
【0165】
ここで使用するmg/対象のkgに基づく投与量の記載について、平均ヒト対象は約70kg〜75kg、例えば70kgの体重を有するとする。
【0166】
ここで使用する医薬組成物または他の治療剤の投与のような処置による特定の疾患または障害の症状の、永続的であるか一時的であるか、持続的であるか一過性であるかを問わない改善、または、例えばペグ化されたヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素の投与と関連する、または投与により起こる有害作用の減少のような有害作用の減少を言う。
【0167】
ここで使用する防止または予防は、疾患または状態が発生するリスクを低下させる方法を言う。
【0168】
ここで使用する“治療有効量”または“治療有効用量”は、少なくとも、治療効果をもたらすのに十分な、薬物、化合物、物質、または化合物を含有する組成物の量を言う。したがって、これは、疾患または障害を防止し、治癒させ、寛解させ、抑止し、または部分的に抑止するのに必要な量である。
【0169】
ここで使用する単位投与形態は、当技術分野で知られているように、ヒトおよび動物対象に適し、個別に包装された、物理的に不連続な単位を言う。
【0170】
ここで使用する一投与量製剤は、1回投与量としての製剤を言う。
ここで使用する直接投与用製剤は、該組成物が投与のためのさらなる希釈を必要としないことを意味する。
【0171】
ここで使用する“製品”は、製造され販売される物品である。本願の全体にわたって使用されるこの用語は、包装品に含まれる抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素および第二剤組成物を意図包含することを意図する。
【0172】
ここで使用する流体は、流動し得る任意の組成物を言う。したがって流体は、半固形、ペースト、溶液、水性混合物、ゲル、ローション、クリームおよび他のそれに類する組成物の形態をとる組成物を包含する。
【0173】
ここで使用する細胞抽出物またはライセートは、溶解または破壊された細胞から製造された調製物または画分を言う。
【0174】
ここで使用する動物には、任意の動物、例えば限定するわけではないが、ヒト、ゴリラおよびサルを含む霊長類;マウスおよびラットなどの齧歯類;ニワトリなどの家禽;ヤギ、ウシ、シカ、ヒツジなどの反芻動物;ブタおよび他の動物が含まれる。非ヒト動物として想定される動物にヒトは含まれない。本明細書に記載するヒアルロニダーゼ群は、任意の供給起源、動物、植物、原核生物および真菌に由来する。大半の酵素は哺乳動物由来を含む動物由来である。一般的にヒアルロニダーゼ群はヒト起源である。
【0175】
ここで使用する抗癌処置は、癌の処置のための薬物および他の薬物の投与およびまた手術および放射線療法のような処置プロトコルを含む。抗癌処置は抗癌剤投与を含む。
【0176】
ここで使用する抗癌剤は、抗癌処置に使用されるあらゆる薬物または化合物を言う。これらは、腫瘍および癌の臨床的症状または診断マーカーを、単独でまたは他の化合物と組み合わせて使用したとき、軽減、減少、寛解、予防または寛解状態にするまたは維持するあらゆる薬物を含み、ここに提供する組み合わせおよび組成物で使用できる。抗癌剤の例は、単独でまたは化学療法剤、ポリペプチド、抗体、ペプチド、小分子または遺伝子治療ベクター、ウイルスまたはDNAのような他の抗癌剤と組み合わせで使用される、ここに提供するペグ化ヒアルロナン分解酵素群のようなヒアルロナン分解酵素群を含むが、これらに限定されない。
【0177】
ここで使用する対照は、それが試験パラメータで処置されない点以外は、またはそれが血漿サンプルである場合は、対象が目的とする状態を有していない健常ボランティアから得られたものである点以外は、試験サンプルと実質的に同一なサンプルを言う。対照は内部対照であることもできる。
【0178】
ここで使用する使用する単数表現は、文脈上そうでないことが明らかでない限り、複数の指示物を包含する。したがって、例えば“細胞外ドメイン”を含むまたは包含する化合物への言及は、1つまたは複数の細胞外ドメインを持つ化合物を包含する。
【0179】
ここで使用する範囲および量は、特定の値または範囲の“約”と表現する場合がある。この“約”には、まさにその量も包含される。したがって“約5塩基”は“約5塩基”を意味すると共に“5塩基”も意味する。一般的に“約”は、実験誤差の範囲内であると推定される量を含む。
【0180】
ここで使用する“任意”または“所望により”は、それに続けて述べられる事象または状況が起こることまたは起こらないこと、およびその説明が、該事象または状況が起こる場合と起こらない場合を包含することを意味する。例えば、場合により置換されている基とは、その基が無置換であるか、または置換されていることを意味する。
【0181】
ここで使用する、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物の略号は、別段の表示がない限り、その一般的使用法、広く認識されている略号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会((1972) Biochem. 11:1726参照)に従う。
【0182】
B. ヒアルロナン結合タンパク質およびコンパニオン診断
ここに提供されるのは、疾患と関連する、特に腫瘍組織の細胞外マトリックス(ECM)におけるヒアルロナン(HA)レベルを検出し、密接にモニターする感受性かつ特異的な方法である。ここに提供されるコンパニオン診断方法は、HA蓄積が、特に癌に関して高悪性度疾患と特に相関し、予測的であるとの知見に基づく。さらに、ここに提供されるコンパニオン診断方法はまたHAがヒアルロニダーゼシンターゼ群またはヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン関連疾患および状態と関連するHA代謝経路に含まれる他のマーカーと比較して、特に優れた予後診断および処置選択情報を提供するとの知見に基づく。それゆえに、ここに提供する方法は、HAの特異的かつ感受性の検出のための特異性、高親和性および低変化性を示す改善されたヒアルロナン結合タンパク質(HABP)試薬を使用する。またここで提供されるのは、改善されたHABP試薬。
【0183】
一例として、セクションCに記載するいずれかのようなここに提供する改善されたHABP類は、セクションEに記載するいずれか(例えばヒアルロニダーゼまたはペグ化PH20、すなわちPEGPH20のような修飾ヒアルロニダーゼ)のような抗ヒアルロナン剤またはヒアルロナン分解酵素で処置するためのHA関連疾患、例えばHA関連腫瘍を有する患者を選択するためのコンパニオン診断であり得る。このような例において、方法は、癌治療のような治療の選択ための患者の分類に有用であり、特に進行腫瘍の患者の処置のための、PEGPH20での治療のような抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素治療での治療の応答性と相関するHAレベルの測定と相関する。
【0184】
他の例において、セクションCに記載するいずれかのようなここに提供する改善されたHABP類はまた処置中のHAのレベルを検出することによる、セクションEに記載するいずれか(例えばヒアルロニダーゼまたはペグ化PH20、すなわちPEGPH20のような修飾ヒアルロニダーゼ)のような抗ヒアルロナン剤またはヒアルロナン分解酵素での処置に対する効果または応答性のモニタリングの方法にも使用できる。それゆえに、改善されたHABPは、HAレベルをモニターし、臨床的応答と相関する方法で特定の患者および疾患の経過によって、患者の個々の処置を個別化するために治療を調節および/または変更するために、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素治療での治療と組み合わせで使用できる。
【0185】
またここで提供されるのは、HA関連疾患および状態、特に癌の選択、モニタリングおよび/または処置に使用するための、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤(例えば下のセクションEにおいてここで提供するいずれか)および改善されたHABP(例えば下のセクションCにおいてここで提供するいずれか)および所望により他の付随試薬を含む組み合わせおよびキットである。
【0186】
1. 疾患におけるヒアルロナン蓄積および予後診断との関連
ヒアルロナン(HA;ヒアルロン酸またはヒアルロネートとも呼ぶ)は、GlcUA−β1,3−GlcNAc−β1,4−結合を介する反復したN−アセチルグルコサミンおよびD−グルクロン酸二糖サブユニットを含む直鎖グリコサミノグリカン(GAG)ポリマーである。ヒアルロナンはヒアルロナンシンターゼ群のクラスであるHAS1、HAS2およびHAS3により合成される。これらの酵素群は、細胞から押し出されるように、新生多糖にグルクロン酸およびN−アセチルグルコサミンを付加することによりヒアルロナンを伸長することにより作用する。HAシンターゼ群に加えて、HAのレベルは、通常、ヒアルロニダーゼ群、特異的にターンオーバー酵素ヒアルロニダーゼ1(Hyal1)によるその異化反応により維持される。HAの動的ターンオーバーは、正常組織における一定濃度を維持するために生合成および異化反応によりバランスを取っている。
【0187】
HAは細胞外マトリックス(ECM)の成分である。これは組織に遍在性に分散し、細胞外、細胞周囲マトリックスならびに細胞内部に局在する。HAは、組織恒常性および生体力学、細胞増殖、免疫接着および動的細胞過程中の活性化および細胞遊走に関与するように広範な生物学的機能を有する。これらの過程は、HAとTSG−6、バーシカン、インターアルファ−トリプシン阻害剤、CD44、リンパ管内皮HA受容体(LYVE−1−1)およびRHAMMのようなヒアルアドヘリン類として知られるHA結合タンパク質の相互作用が仲介する。
【0188】
ヒアルロナン蓄積は多くの悪性および自己免疫性疾患状態と関連する(Jaervelaeinen H, et al. (2009) Pharmacol Rev 61: 198-223; Whatcott CJ, et al. (2011) Cancer Discovery 1:291-296)。例えば、炎症性疾患および癌を含むある種の疾患は、ヒアルロナンの発現および/または産生と関連する。HAは、このような疾患の進行に関与する種々の生物学的過程と関連する(例えばItano et al. (2008) Semin Cancer Biol 18(4):268-274; Tammi et al. (2008) Semin Cancer Biol 18(4):288-295参照)。
【0189】
特に、HAは腫瘍マトリックスの要素であり、多くの固形腫瘍に存在する。腫瘍巣内のHAの蓄積は、細胞−細胞接触を阻止し、上皮性−間葉性遷移を促進し、その受容体RHAMMおよびCD44を介してp53腫瘍サプレッサー経路に関与し、腫瘍関連マクロファージを集める(Itano et al. (2008) Cancer Sci 99: 1720-1725; Camenisch et al. (2000) J Clin Invest 106:349-360; Thompson et al. (2010) Mol. Cancer Ther. 9:3052-64)。HAに富む細胞周囲マトリックスの集合は、転移行動を促進できる間葉性細胞の増殖および遊走のための必要条件である。HA蓄積により特徴付けられる腫瘍はまた腫瘍水取り込みを示し、高間質性流体圧(IFP)を有し、これは化学療法剤のような全身性に適用された治療剤の腫瘍への浸透および接近性を阻止し得る。さらに、Hyal1の分解により産生されたHAオリゴマーも腫瘍病因に関与し得る血管形成またはアポトーシスをもたらすことが示されている。
【0190】
HAの蓄積は、HAS遺伝子発現および/またはHYAL遺伝子発現と関連付けられている(Kosaki et al. (1999) Cancer Res. 59:1141-1145; Liu et al. (2001) Cancer Res. 61:5207-5214; Wang et al. (2008) PLoS 3:3032; Nykopp et al. (2010) BMC Cancer 10:512)。当分野での研究は、HA、HASまたはHyal1が癌の予後診断指標として使用できることをさまざまに示す。また、アンチセンス方法によるようなHyal1の選択的阻害または4−メチルウンベリフェロンを使用するようなHASによるヒアルロナン合成の選択的阻害は、腫瘍の処置方法であることを示す研究もある(Kakizaki et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:33281-33289)。さらに、下記のPH20のようなヒアルロニダーゼ群もヒアルロナン関連疾患および状態の処置に使用されている(例えばThompson et al. (2010) Mol. Cancer Ther 9:3052-3064)。
【0191】
実施例に示すとおり、細胞のHA表現型および特に腫瘍細胞周囲マトリックスの形態が、腫瘍高攻撃性と相関し、HAレベルのアッセイが特異的にHA合成腫瘍細胞が細胞周囲マトリックスを形成する能力を予測することが本発明により判明した。特異的に、HAS1、2,3;Hyal1または2;またはHAを含むHA蓄積の可能性のあるマーカーの中で、HA決定のみが細胞周囲マトリックス形成と相関し、それによりHA−アグリカン仲介細胞周囲マトリックスを形成する腫瘍細胞コンピテンス、それゆえに腫瘍高攻撃性を予測することが本発明により判明した。それゆえに、腫瘍治療の予測または予後診断のための診断の目的で、HA結合タンパク質(HABP)が意図される。ここに記載するとおり、腫瘍HA産生は、プローブとしてHABPを使用して定量的に測定でき、ヒアルロナンに対するHABPは細胞周囲マトリックス形成と相関を示すが、細胞周囲マトリックス形成と関連HASまたはHyal mRNAのレベルには相関が見られなかった。これらの知見は腫瘍細胞関連HAの直接の測定を示し、他のマーカーはHA代謝経路に関連しておらず、細胞周囲マトリックス形成の信頼できる予測因子を提供することを示す。
【0192】
2. 抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での腫瘍の治療および処置に対する応答性
測定したHA蓄積の量または程度はまた、抗ヒアルロナン剤、例えばPH20のようなヒアルロナン分解酵素での処置の応答性と相関することも本発明により判明した。抗ヒアルロナン剤、例えばPH20のようなヒアルロナン分解酵素は、ヒアルロナン(ヒアルロン酸、HA)の蓄積を示す疾患および状態の単剤または組み合わせ治療に有用な特性を示す。このようなヒアルロナン関連疾患、条件および/または障害は癌および炎症性疾患を含む。高ヒアルロナン腫瘍は、固形腫瘍、例えば、末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌、結腸癌および他の癌を含む腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0193】
例えば、ヒアルロニダーゼ、例えばPH20のようなHA分解酵素群はHAを腫瘍から除去し、腫瘍体積減少、IFP減少、腫瘍細胞増殖遅延および腫瘍浸透増加を可能とすることによる併用化学療法剤および生物学的製剤の効果増強をもたらす(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917;Thompson et al. (2010) Mol. Cancer Ther 9:3052-3064参照)。
【0194】
PH20のようなヒアルロニダーゼが、ヒアルロナン関連疾患および障害の治療剤として作用するようにHAを分解する能力は、全身性半減期を延長するように修飾することにより利用できる。延長した半減期はHAの除去だけでなく、血漿への継続した存在およびHA分解能により、腫瘍のような疾患組織内のHAの再生の程度を減少または低下できる。それゆえに、血漿酵素レベル維持は、腫瘍HAのようなHA除去をできるだけでなく、HA再合成と対抗する。ペグ化は、体内での治療剤タンパク質の半減期延長に使用され、それゆえに全身性処置プロトコルに使用することを可能とする確立した技術である。ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素群のような抗ヒアルロナン剤のペグ化は、体内でのその半減期を1分間未満から約48〜72時間まで延長し、HAに富む腫瘍の全身性処置を可能とする(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917;Thompson et al. (2010) Mol. Cancer Ther 9: 3052-3064参照)。
【0195】
抗ヒアルロナン剤および特にPH20またはPEGPH20のようなヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ群の腫瘍細胞に対する増殖阻害活性はHAレベルの程度と相関することが本発明により判明した。実施例に示すとおり、腫瘍は、腫瘍のHAの発現量に基づき表現型群(例えばHA
+1、HA
+2、HA
+3)に特徴づけできる。高腫瘍関連HA(スコア化HA
+3)は、動物モデルで腫瘍増殖加速およびヒアルロナン分解酵素(例えばPEGPH20)による大きな腫瘍阻害となった。例えば、HA
+3表現型と関連する腫瘍増殖阻害は97%であったのに対し、腫瘍HA
+2またはHA
+1表現型ではそれぞれわずか44%および16%であった。本データは、ある腫瘍の継続した増殖は、腫瘍微小環境のHAの密度および量に依存し、HA富(例えばHA
+3)腫瘍からのHA除去は、HAが中程度または少ない腫瘍(例えば、HA
+2、HA
+1)またはHA欠損腫瘍からのHAの枯渇より腫瘍増殖に効果が促進されることを示す。それゆえに、ここに示すとおり、HABPを使用して測定して、腫瘍組織中のHA蓄積の程度は、抗ヒアルロナン剤(例えば、PEGPH20)が仲介するインビボでの腫瘍増殖阻害のレベルの予測である。
【0196】
3. ヒアルロナン結合タンパク質(HABP類)試薬および診断
上記のおよび実施例の結果に基づき、HABPを使用して検出したバイオマーカーHAは、抗ヒアルロナン処置、例えばヒアルロナン分解酵素処置(例えばPEGPH20)に対する応答と特異的に相関する。それゆえに、ここで提供されるのは、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼまたはペグ化PH20、すなわちPEGPH20のような修飾ヒアルロニダーゼ)に対する予後診断およびまた感受性、それゆえに応答性を予測するためにHABPを使用する方法である。
【0197】
試薬としての価値から、HABPの感受性および特異性ならびに同時に低変化性による再現性が望ましい。例えば、組織中のHAの検出および測定は既存試薬を使用して限界がある。現在、免疫組織学的染色を使用して組織中のHAの検出または測定に使用される方法は、主に動物軟骨組織由来HA結合タンパク質またはドメインに依存する。これらは、4MグアニジンHClでの抽出と続くHA結合樹脂を使用する親和性クロマトグラフィーによるウシ鼻軟骨プロテオグリカンから精製されたHABPを含む。得られた動物由来HAは2つの主要な成分であるアグリカンG1ドメインおよび結合モジュールから成る。バッチ間偏差、ならびにHABP調製法で使用される種々の修飾のために、HABP染色パターンの差の点で技術に可変性があり、染色プロファイルの違いは試験間の比較を困難とする。それゆえに、複数成分の不均一混合物として存在し、その産生についての検証された方法が存在しないため、疾患の予後診断のためのコンパニオン診断および抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)と関連した処置の効果の予測において使用するための代替的天然HABPタンパク質をここに提供する。
【0198】
それゆえに、ここに提供する方法において使用するためのHABP試薬は、動物軟骨から精製した、例えばE-Laurent et al. (1985) Ann. Rheum. Dis. 44:83-88)により記載された方法またはその修飾方法を使用して骨鼻軟骨から精製したHABPではないあらゆるHABPを含む。ここでの方法に使用するためのHABP類の例はセクションCに記載する。このようなタンパク質は、例えば、HAと結合するための1個以上の結合モジュールを含む、1個以上のHA結合ドメインを含む、HABP類である。いくつかの例において、HABPは、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、HAPLN−1、HAPLN−2、HAPLN−3、HAPLN−4、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358、KIAA0527またはTSG−6タンパク質のHA結合ドメイン(例えば結合モジュール)を含む。いくつかの例において、HABPはアグリカンG1ドメイン、バーシカンG1ドメイン、ニューロカンG1ドメイン、ブレビカンG1ドメインまたはホスファカンG1ドメインを含む。いくつかの例において、HABPはアグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカンまたはホスファカンのG1ドメインおよびHAPLN−1、HAPLN−2、HAPLN−3またはHAPLN−4から選択される結合タンパク質を含む。いくつかの例において、HABPはTSG−6、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358またはKIAA0527の1個の結合モジュールを含む。
【0199】
いくつかの例において、HABPは、例えば修飾アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、HAPLN−1、HAPLN−2、HAPLN−3、HAPLN−4、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358、KIAA0527または例えばTSG−6−LM−FcのようなTSG−6タンパク質のような、修飾HABPである。いくつかの例において、HABPは、例えば、TSG−6−LM−FcΔHepのように、HAへの結合が改善するように修飾された修飾HABPである。
【0200】
特に、ここに提供するHABPは、1)哺乳動物発現系のような発現系で組み換えにより産生できる;2)安定性および/または溶解度のような改善された生物物理学的特性を示す;3)1工程親和性精製方法のような単純精製方法で精製できる;4)結合アッセイおよび特に免疫組織化学またはELISA方法と互換性を生じることにより検出できる;5)HAに対する増加したまたは高い親和性を示すように多量体形態(例えば二量体化を介して)で発現できる;および/または6)他のGAGsと比較してHAに特異性を示す。
【0201】
一例として、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、発現系で組み換えにより産生できる単一モジュールHAタンパク質であるHABP類である。特に、ここで提供されるのは、結合モジュールを含むHABP試薬である。例えば、ここで提供されるHABP類は、結合モジュール(LM)またはヒアルロナンと結合するのに十分なその一部のみを含むタイプAクラスのHABP類である。このようなHABP類の例は腫瘍壊死因子−刺激遺伝子(TSG)−6−LM(配列番号360に示す結合モジュール)、スタビリン−1−LMまたはスタビリン−2−LM(それぞれ配列番号371または372に示す結合モジュール)、CAB61358−LM(配列番号373に示す結合モジュール)またはKIAA0527−LM(配列番号374に示す結合モジュール)である。
【0202】
他の例において、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、多量体化ドメインに直接的または間接的に結合するHABP類である。HABP類の結合モジュールのようなHA結合ドメインは、2個以上のHA結合ドメインの多量体を形成するために、共有結合的結合、非共有結合的結合または化学的結合のように直接的または間接的に結合する。HA結合ドメインは同一でも異なってもよい。特に、HA結合ドメインは、結合ドメインまたはモジュールである。それゆえに、多量体は、2個以上の結合ドメインの二量体化により形成できる。一例として、多量体は、異なるHA−結合ドメイン上のシステイン残基間で形成されたジスルフィド結合により結合できる。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリン定常領域(Fc)の部分のような免疫グロブリン分子の部分を含み得る。他の例において、多量体は、共有結合または非共有結合的相互作用を介して、ポリペプチドに融合したペプチド部分と結合したHA結合ドメインを含む。このようなペプチドは、多量体化を促進する特性を有するペプチドリンカー(スペーサー)またはペプチドであり得る。さらなる例において、多量体は、例えば、ヘテロ二官能性リンカーを使用するような、化学的結合を介する2個のポリペプチドで形成できる。多量体化ドメインは下に記載する。HABP多量体の例は、Fcに融合した結合モジュール(LM)である。例えば、ここでの方法に使用するためのHABP試薬の例はTSG−6−LM−Fcである。
【0203】
さらなる例において、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、他のGAGsと比較して、ヒアルロナンへの高い特異性を示すようにアミノ酸置換のような修飾をされたHABPである。例えば、ここで提供されるのは、アミノ酸残基20、34、41、54、56、72および/または84および特にアミノ酸残基20、34、41および/または54(配列番号206に示すアミノ酸残基に対応)でのアミノ酸置換を含む変異体TSG−6−LMである。置換アミノ酸はあらゆる他のアミノ酸残基でよく、一般的に非塩基性アミノ酸残基へである。例えば、アミノ酸置換はAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)またはTrp(W)へであり得る。1箇所または複数個所アミノ酸置換はヘパリンへの結合を減少させる。アミノ酸置換を含まないTSG−6−LMのヘパリンへの結合と比較して、結合は少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上減少できる。ここで提供される方法において試薬として使用するためのTSG−6−LM変異体の例は、K20A/K34A/K41Aである。それゆえに、例えば、ヘパリンへの結合は、ヒアルロナンへの特異性が高まるように減少される。変異体TSG−6−LMは多量体化ドメインに直接的または間接的に結合して、多量体を産生する。例えば、ここでの方法に使用するための試薬の例はTSG−6−LM(K20A/K34A/K41A)−Fcである。
【0204】
試薬のいずれもコンパニオン診断方法において単独でまたは組み合わせて使用できる。例えば、サンドイッチELISAまたは競合的ELISAにおいて、上記試薬の2種以上を使用できる。下記のとおり、ここに提供するHABP類のいずれも検出可能な部分に直接的または間接的に結合できる。いくつかの例において、例えば腫瘍サンプル中のHAに結合するHABP類は、HABPに結合する抗体のような二次的試薬を使用して検出できる。いくつかの例において、HABP類はHA結合の検出が可能となるように修飾される。例えば、HABP類は、直接的検出または修飾HABP類と結合し、かつ蛍光プローブのような検出可能タンパク質またはホースラディッシュペルオキシダーゼのような検出可能な酵素群と結合している抗体のような二次的薬物を介する検出を可能にする検出可能分子と結合できる。
【0205】
4. コンパニオン診断および予後診断方法
ここに提供するHABP類は、ヒアルロナン関連疾患または状態を有するかまたはヒアルロナン関連疾患または状態を有するリスクがあるまたは有することが疑われる患者の種々の生物学的サンプルでの結合アッセイを使用した診断、予後診断またはモニタリング方法に個々にまたは組み合わせて使用できる。例えば、HABP類は、固形腫瘍を有するまたは固形腫瘍または他の癌を発症するリスクにある患者のアッセイに使用できる。具体例において、TSG−6−LM、TSG−6−LM−Fcまたはヘパリンへの結合が減少し、ヒアルロナンに対する特異性が高いもののようなその変異体または突然変異体をここでの方法に使用する。診断および予後診断方法は、処置に対して患者を分類および/または選択するまたは処置の経過を改変または修飾するためにヒアルロナン分解酵素での治療と組み合わせて使用できる。
【0206】
ここに提供する方法の例において、診断および予後診断方法は、ヒアルロナン分解酵素のようなPH20またはPEGPH20のような抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼまたは修飾ヒアルロニダーゼでの治療に対するコンパニオン方法である。HA検出は処置選択、開始、投与量カスタマイゼーションまたは停止の情報を提供でき、それゆえに抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置の個別化のために働く。
【0207】
例えば、HABPコンパニオン診断方法は、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば癌)に罹りやすいまたはヒアルロナン関連疾患または状態(例えば癌)を有する対象が、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤での処置の投与に応答するか否かを予測する。本方法において、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば癌)に罹りやすいまたは罹患していることが知られた対象由来のサンプルから発現されるHAのレベルを決定し、対象由来のサンプルで発現されるHAのレベルを予め決定したHAレベルと比較し、これは抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での応答性を分類する。ヒアルロナン分解酵素での処置に対する応答性を分類するためのHAの閾値レベルの決定は当業者のレベルの範囲内である。例えば、本発明により、上昇したHA蓄積と腫瘍増殖阻害に顕著な相関が存在し、それによって腫瘍増殖阻害応答は、腫瘍組織の免疫組織化学により定量されたHA
+3表現型と相関することが判明した。それゆえに、ここに提供されるコンパニオン診断方法において、腫瘍サンプルを、HAレベルについてここで提供されるHABP試薬を使用して免疫組織化学的方法またはスコア化に適する他の方法で評価する。当業者に知られ、ここに記載する方法で決定してHA表現型がHA
+3であるならば、対象をヒアルロニダーゼまたは修飾ヒアルロニダーゼ(例えばPH20またはPEGPH20)のようなヒアルロナン分解酵素での処置の候補として選択する。類似の定量化および分類方法を血液または血漿のような体液中のHAの評価に利用できる。処置のためのPH20またはPEGPH20のようなヒアルロナン分解酵素の投与量およびレジメンをここに提供する。
【0208】
ここに提供するHABP試薬は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはサンドイッチELISAまたは競合的ELISAアッセイを含む他の類似の免疫アッセイ;免疫組織化学(IHC);フローサイトメトリーまたはウェスタンブロットを含むが、これらに限定されない当業者に知られたあらゆる結合アッセイを使用してHAを検出できる。結合アッセイは、血漿、尿、腫瘍または疑われる腫瘍組織(新鮮な、凍結し、固定またはパラフィン包埋組織を含む)、リンパ節組織または骨髄からのものを含む、あらゆるタイプの患者体液、細胞または組織サンプルから得たサンプルで実行できる。
【0209】
サンプル中のHAの量が決定されたら、その量を対照または閾値レベルと比較し得る。例えば、サンプル中でのHAの量が高いと決定されたら、対象を腫瘍治療候補として選択する。処置のために対象を診断、予後診断または選択するための腫瘍サンプルまたは体液サンプルの層別化のための方法の例をここに提供する。
【0210】
一例として、診断方法は、患者からのタンパク質を含む腫瘍組織、腫瘍細胞または体液のサンプルを使用する。本方法において、HAの存在および発現レベルをここに提供するHABP、例えばTSG−6−LM、TSG−6−LM−Fcまたはその変異体または突然変異体を使用して決定できる。HAの発現レベルを、決定および/または疾患と関連する予め決定したHA表現型と比較してスコア化する。下記のとおり、これらの予め決定した値は、同じ検出アッセイで同じHABP試薬を使用して決定した対応する正常サンプルにおけるHAレベルの比較または知識により決定できる。特定の疾患、HA検出に使用するアッセイおよび/または使用するHABP検出試薬により疾患診断の閾値レベルを決定することは当業者のレベルの範囲内である。例えば、血漿のような体液において、0.015μg/mLを超えるおよび一般的に0.02μg/mL、0.03μg/mL、0.04μg/mL、0.05μg/mL、0.06μg/mLを超えるまたはそれ以上のHAレベルは腫瘍または癌の存在と相関する。他の例において、免疫組織化学的方法においてHA
+2またはHA
+3のスコアの腫瘍組織は疾患の決定因であり得る。レベルが疾患を指示するならば、患者を腫瘍を有すると診断する。
【0211】
他の例において、予後診断方法は、患者からのタンパク質を含む腫瘍組織、腫瘍細胞または体液のサンプルを使用する。本方法において、HAの存在および発現レベルをここに提供するHABP、例えばTSG−6−LM、TSG−6−LM−Fcまたはその変異体または突然変異体を使用して決定できる。HAの発現レベルを、決定および/または疾患と関連する予め決定したHA表現型と比較してスコア化する。下記のとおり、これらの予め決定した値は、同じ検出アッセイで同じHABP試薬を使用して決定した対応する対応する正常サンプルまたは疾患対象サンプルにおけるHAレベルの比較または知識により決定できる。特定の疾患、HA検出に使用するアッセイおよび/または使用するHABP検出試薬により疾患予後診断の閾値レベルを決定することは当業者のレベルの範囲内である。HA発現レベルは、患者における予測される疾患の経過進行を示す。例えば、定量的スコアスキームを使用した免疫組織化学的方法で評価して高HAレベル(例えばHA
+3)は、多様な癌タイプにわたる悪性疾患の存在と相関する。他の例において、0.06μg/mL HAより高い血漿のような体液中のHAレベルはまた進行疾患段階と相関する。
【0212】
コンパニオン診断方法のさらなる例において、投与量またはスケジュールを最適化するために、予めヒアルロナン分解酵素で処置した対象由来のサンプルで発現されるHAのレベルをモニターして、投与されている対象が薬物の有効な血液レベルとなっているか否かを決定できる。
【0213】
次のセクションは診断および予後診断方法および特に抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での治療のコンパニオンとして使用するための、HA検出方法を実施するためのHABP試薬およびアッセイを記載する。さらに記載されるのは、処置ヒアルロナン関連疾患および障害の処置に使用するためのヒアルロナン分解酵素剤を含む抗ヒアルロナン剤ならびにHABP試薬とこのような薬物(例えばヒアルロナン分解酵素群)のキットおよび組み合わせである。上記方法のいずれも記載するHABP試薬およびアッセイ検出方法を単独でまたは抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での治療と組み合わせて使用して実施できる。
【0214】
C. コンパニオン診断として使用するためのヒアルロナン結合タンパク質(HABP類)
ここで提供される方法は、ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)を使用する、腫瘍を有するまたは腫瘍を有することが疑われる対象由来の腫瘍または体液サンプルのようなサンプルにおけるヒアルロナンの定量的または半定量的測定に関する。ここに記載するとおり、上昇したまたは高レベルのヒアルロナンを発現する腫瘍は抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置に応答性であり、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での腫瘍阻害の程度ヒアルロナン蓄積の程度または量と相関し、内在性ヒアルロナンシンターゼ群またはヒアルロニダーゼ群の発現のような他のマーカーと相関しない。セクションDに記載するその検出のためのアッセイとともにここに提供する方法において使用するために提供されるHABP類は、サンプル中のHAの特異的かつ感受性の検出を可能にする。
【0215】
ここに提供するHABPコンパニオン診断は、処置に応答することが予測される患者の選択または同定および/または処置および処置の効果のモニターのためにヒアルロナン分解酵素治療剤またはセクションEに記載するいずれかのような抗ヒアルロナン剤での治療と組み合わせて使用でき、それによりヒアルロナン関連疾患または状態の改善した処置レジメンを提供する。例えば、ここで提供するHABPコンパニオン診断は、腫瘍または癌を有する対象または患者の選択および/またはモニターに使用できる。さらに、HABPコンパニオン診断はまた腫瘍または癌のようなヒアルロナン関連疾患または状態の他の診断および予後診断方法に使用できる。
【0216】
ここで提供されるのは、サンプル中のヒアルロナンの検出および定量のためのここに提供する方法で使用するためのヒアルロナン結合タンパク質である。ヒアルロナン結合タンパク質は完全長HABPポリペプチドまたはHABP類のHA結合ドメインまたはHAと結合するのに十分なその一部を含み得る。典型的に、HABP類またはHA結合ドメインを含むその一部またはHAと結合するのに十分なその一部またはその変異体または多量体は、解離定数(Kd)で少なくとも多くてもまたは多くてもまたは正確に1×10
−7Mおよび一般的に少なくとも多くてもまたは多くてもまたは正確に9×10
−8M、8×10
−8M、7×10
−8M、6×10
−8M、5×10
−8M、4×10
−8M、3×10
−8M、2×10
−8M、1×10
−8M、9×10
−9M、8×10
−9M、7×10
−9M、6×10
−9M、5×10
−9M、4×10
−9M、3×10
−9M、2×10
−9M、1×10
−9Mまたはそれより低いKdの結合親和性を示す。ここに記載するとおり、示される親和性は、一般的に最適または最適に近いヒアルロナンへの結合が達成できる条件下で示される。一例として、pH条件は結合に影響し得る。例えば、ここでのコンパニオン診断として、TSG−6−LMまたはHAと結合するのに十分なその一部、その変異体およびその多量体を含むTSG−6試薬を使用する結合アッセイは、一般的に約または正確にpH6.0のような正確にまたは約pH5.8〜6.4のpHで行う。
【0217】
ヒアルロナン結合タンパク質は、1個または2個の結合モジュールを含むHA結合ドメインを有するヒアルロナン結合タンパク質および結合モジュールではないHA結合ドメインを有するヒアルロナン結合タンパク質の2種である。具体例において、ここで提供されるコンパニオン診断は、HA結合に関与する1個のみの結合ドメインを有するHABP結合分子に由来し、これは発現、産生および精製方法を単純化できる。
【0218】
ここに提供するHABP類は既知HABP類由来であってよくまたは合成により産生できる。ある例において、HABP類は、知られたHABP類のHA結合ドメイン保存残基に基づき合成により産生できる。ここに提供するHABP類は、またファージディスプレイまたは親和性に基づくスクリーニング方法のようなHA結合タンパク質のスクリーニング方法から産生されるHABP類である。
【0219】
ここに提供するHABP類のHA結合ドメインまたはHAに結合するのに十分なその一部を含むHABP類は、ここに提供する方法において使用するためのHABP類の1個以上の特性を改善するために修飾できる。例えば、ここに提供するHABP類またはそのHA結合フラグメントは、HAに対する結合能を維持する限り、哺乳動物発現系におけるタンパク質発現増加、安定性および溶解度のような生物物理学的特性改善、タンパク質精製および検出改善、HAに対する特異性増加および/またはHAに対する親和性増加のために改善できる。例えば、本方法において使用するためにここに提供するHABPまたはそのHA結合フラグメントを、他のグリコサミノグリカン類と比較してヒアルロナンへの特異性を高めるために修飾できる。他の例において、本方法において使用するためにここに提供するHABPまたはそのHA結合フラグメントは、分子上のHA結合部位数を増やすために多量体化ドメインと直接的または間接的に結合でき、それによりHAに対する結合親和性を高める。
【0220】
さらに、ここでのコンパニオン診断として使用するために、HABP類またはその一部(例えば結合モジュールまたはHAと結合するのに十分なその一部)のいずれも検出を容易にするために修飾できる。例えば、コンパニオン診断は、直接的または間接的に、ビオチン、蛍光部分、放射性標識または他の検出可能な標識と結合することにより修飾する。
【0221】
ここでのコンパニオン診断として使用するためのHABP類およびその修飾体を下に提供する。
【0222】
1. 結合モジュールまたはG1ドメインを有するHA結合タンパク質
ここに提供する方法において使用するためのコンパニオン診断試薬としてここに提供されるのは、少なくとも1個の結合モジュールまたは結合ドメインを含み、一般的に少なくとも2個以上結合モジュールを含むHA結合タンパク質(HABP)またはその一部である。いくつかの例において、HABPは2個の結合モジュールを含むG1ドメインを含む。HAへの結合は結合モジュールが仲介する。結合モジュールは、プロテオグリカンタンデムリピートとも呼ばれ、約100アミノ酸(aa)長であり、パターンCys1−Cys4およびCys2−Cys3でジスルフィド結合している4個のシステインを含む。結合モジュールの三次元構造は、2個のアルファ−螺旋および2個の三本鎖逆平行ベータ−シートから成る。
【0223】
結合モジュール含有タンパク質は、単一結合モジュールを含むAドメイン型タンパク質、NおよびC末端フランキング領域で伸長した単一結合モジュールを含むBドメイン型タンパク質および1個のN末端V型Ig様ドメインと続く2個の結合モジュールの近接対を含むG1ドメインと呼ばれる伸長された構造を有するCドメイン型タンパク質の3カテゴリーが存在する。モデリングおよび比較試験により、HAの相互作用と相関する結合モジュール含有タンパク質間のある種のアミノ酸の高程度の分割および保存が証明されている(Blundell et al. (2005) J. Biol. Chem., 280:18189-18201)。例えば、配列番号360に示すTSG−6−LMを参照にしたナンバリングでTyr59およびTyr78に対応する中心HA結合アミノ酸残基は、TSG−6−LM(例えば配列番号360に示す)との整列に基づき対応する位置で結合モジュール含有HABP類で同一または保存的アミノ酸(例えば、GlcNAc環に対してまた積み重ねることができる芳香族または大および平面表面疎水性残基、例えば、Phe、His、LeuまたはVal)で保存されている。また、配列番号360に示す位置11および81に対応する位置の塩基性残基も、整列により決定して他の結合モジュールで見られる。
【0224】
ここに提供する方法で使用するための結合モジュールを含むHA結合タンパク質は、TSG−6(例えば前駆体として配列番号206におよびシグナル配列を欠く成熟タンパク質として配列番号222に示す;または文献で報告されているとおり種々の長さのLMを示す、配列番号207、360、417または418に示すLM)、スタビリン−1(例えば配列番号223に示すまたはその成熟形態;または配列番号371に示すLM)、スタビリン−2(例えば配列番号224に示すまたはその成熟形態;または配列番号372に示すLM)、CD44(例えば配列番号227に示すまたはその成熟形態;または配列番号375に示すLM)、LYVE−1(例えば配列番号228に示すまたはその成熟形態;または配列番号376に示す結合モジュール)、HAPLN1(例えばHAPLN1−1およびHAPLN1−2;例えば、配列番号229に示すまたはその成熟形態;または配列番号377または378に示す1個または複数個のLM)、HAPLN2(例えばHAPLN2−1およびHAPLN2−2;例えば配列番号230に示すまたはその成熟形態;または配列番号379または380に示す1個または複数個のLM)、HAPLN3(例えばHAPLN3−1およびHAPLN3−2;例えば配列番号231に示すまたはその成熟形態;または配列番号381または382に示す1個または複数個のLM)、HAPLN4(例えばHAPLN4−1およびHAPLN4−2;例えば配列番号232に示すまたはその成熟形態;または配列番号383または384に示す1個または複数個のLM)、アグリカン(例えばアグリカン1、アグリカン2、アグリカン3およびアグリカン4;例えば配列番号233に示すまたはその成熟形態;または配列番号385、386、387または388に示す1個または複数個のLM)、バーシカン(例えばバーシカン1およびバーシカン2;例えば配列番号235に示すまたはその成熟形態;または配列番号391または392に示す1個または複数個のLM)、ブレビカン(例えばブレビカン1およびブレビカン2;例えば配列番号234に示すまたはその成熟形態;または配列番号389または390に示す1個または複数個のLM)、ニューロカン(例えばニューロカン1およびニューロカン2;例えば配列番号236に示すまたはその成熟形態;例えば配列番号393または394に示す1個または複数個のLM)およびホスファカン(例えば配列番号340に示すまたはその成熟形態)を含むが、これらに限定されない。ここでの方法において使用するために提供されるHABPの例はTSG−6である。
【0225】
ここでの具体例において、ここでの方法に使用するHABPは少なくとも1個の結合モジュールを含み、ある場合には少なくとも2個または少なくとも3個の結合モジュールを含む。HABPは結合モジュールを含む完全長HABPであり得る。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬は、配列番号206および223〜236のいずれかに示すアミノ酸の配列、その成熟形態または配列番号206および223〜236のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含み得る。例えば、ここでのコンパニオン診断として使用するためのHBPAは、配列番号222に示すアミノ酸の配列または配列番号222に示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する完全長TSG−6であり得る。
【0226】
他の例において、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬は、配列番号206および223〜236のいずれかに示す完全長HABPまたはその成熟形態(シグナル配列を欠く)に由来する結合モジュールまたはHAに結合するのに十分な結合モジュールの一部のみを含む。いくつかの例において、1個または複数個の結合モジュールを含むHABPは、配列番号206および223〜236のいずれかに示すHABPの完全配列またはその成熟形態(シグナル配列を欠く)ではない。HABPまたは結合モジュールの部分は、一般的に近接アミノ酸の配列であり、これは一般的に、60、70、80、90、100、200、300以上のアミノ酸長のような少なくとも50アミノ酸であることは理解される。いくつかの例において、1個または複数個の結合モジュールコンパニオン診断結合分子の唯一のHABP部分である。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬完全長HABPの部分のみを含み、配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0227】
ここでの例において、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬はG1ドメインまたはHAと特異的に結合するのに十分なその一部を含む。G1ドメインを含むHABPは配列番号233〜236のいずれかに示す完全長HABPまたはその成熟形態に由来し得る。いくつかの例において、G1ドメインを含むHABPは、配列番号233〜236のいずれかに示すHABPの完全配列またはその成熟形態ではない。G1ドメインを含むHABPの部分は一般的に近接アミノ酸の配列であり、これは一般的に、150、200、250、300、400以上のアミノ酸のような少なくとも100アミノ酸長であることは理解される。いくつかの例において、G1ドメインコンパニオン診断結合分子の唯一のHABP部分である。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬完全長HABPの部分のみを含み、配列番号423〜426のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号423〜426のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を有するG1ドメインである。
【0228】
いくつかの例において、コンパニオン診断は、2個または3個の結合モジュールのような1個を超える結合モジュールを含む。結合モジュールは同一または異なるHABPに由来し得る。コンパニオン診断は、直接的または間接的に結合して単一ポリペプチドを形成する結合モジュールを含み得る。他の例において、コンパニオン診断は、ジスルフィド結合を介するように化学的結合している、別のポリペプチドとして示される結合モジュールであり得る。ここでの方法において使用するために提供されるHABPフラグメントの例は、TSG−6の結合ドメイン(TSG−6−LM)またはHAと結合するのに十分なその一部である。
【0229】
いくつかの例において、HABPは、二量体または三量体分子を形成し、複数HA結合部位を産生するための多量体化ドメインを介して直接的または間接的に結合する2個以上の結合モジュールを含む多量体である。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断は、免疫グロブリンのFc部分のような多量体化ドメインをコードする核酸と直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す結合モジュールまたは配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列をコードする核酸分子の発現により製造する。それゆえに、得られたHABP多量体またはLM−多量体は、多量体化ドメインに直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す第一ポリペプチドまたは配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列;および多量体化ドメインに直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す第二ポリペプチドまたは配列番号207、360、361、371〜394および416〜418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。第一および第二ポリペプチドの結合モジュールの配列は同一でも異なってもよい。ここでの方法において使用するために提供されるHABP多量体の例は、2個のポリペプチド鎖を含む多量体であり、それによって各々が多量体化を行うための多量体化ドメインに直接的または間接的に結合したSG−6−LM、その変異体またはHAに結合するのに十分なその一部を含む。例えば、本方法で使用するためにここで提供されるのはTSG−6−LM:Fc分子(例えば配列番号212または215参照)である。
【0230】
結合ドメインを含むHABP類の構造および機能説明を含む例の記載を下に提供する。記載したHABP類または結合ドメインのみを含むフラグメントまたはHAに結合するのに十分なその一部のようなその一部のいずれも、ここでの方法においてコンパニオン診断試薬として使用できる。結合ドメインまたは他のドメインのドメイン組織を記載するために使用する配列番号として示される特異的配列を含むアミノ酸の記載は説明目的であり、提供される態様の範囲を限定することを意図しないことは理解される。ポリペプチドおよびそのドメインの説明は、類似分子との相同性分析および整列により理論的に導いていることは理解される。それゆえに、正確な座位は変わることがあり、各HABPで必ずしも同じではない。それゆえに、特異的結合ドメインのような特異的ドメインは数アミノ酸(1個、2個、3個または4個)長くても短くてもよい。
【0231】
a. タイプA:TSG−6サブグループ
ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断としてここに提供されるのは、ヒアルロナンに結合する単一結合モジュールを含むタイプAサブグループのメンバーであるHABP類である。タイプA HABP類はHAと6糖類、ヘキササッカライド(HA
6)以上の最小鎖長で結合する。ここに提供する方法においてコンパニオン診断として使用できるタイプAサブグループのメンバーは、TSG−6、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358およびKIAA0527、その結合モジュールまたはHAと結合するのに十分な結合モジュールの一部を含むが、これらに限定されない。
【0232】
i. TSG−6
ここで提供される方法においてコンパニオン診断試薬として使用するために提供されるタイプAサブグループHABPの例は、TSG−6またはその結合モジュール、HAに結合するのに十分な結合モジュールの一部、その変異体またはその多量体である。腫瘍壊死因子刺激遺伝子−6(TSG−6、腫瘍壊死因子アルファ誘発タンパク質6、TNFAIP6;配列番号206)は、単一N末端結合モジュールおよびC末端CUBドメインからなる〜35kDa分泌型糖タンパク質である。TSG−6の発現は多くの細胞型でサイトカイン類および増殖因子を含む炎症メディエーターにより誘発される。その結合モジュールを介して、TSG−6は、多形核白血球遊走の強力な阻害剤である、TSG−6は、セリンプロテアーゼ阻害剤インター−アルファ−阻害剤(IαI)と安定な複合体を形成し、IαIの抗プラスミン活性を促進する。TSG−6はまたHA富細胞周囲コートおよび細胞外マトリックスの形成およびリモデリングに重要である。
【0233】
ヒトTSG−6転写物(配列番号205)は、通常翻訳されて、N末端に17アミノ酸シグナル配列を含む277アミノ酸前駆体ペプチド(配列番号206)を形成する。成熟TSG−6(配列番号222に示す)は、それ故、配列番号206のアミノ酸18〜277を含む260アミノ酸タンパク質である(Lee et al. (1992) J Cell Biol 116:545-557)。TSG−6は2個の主ドメイン、結合モジュールおよびCUBドメインから成る。TSG−6の結合モジュールは、文献で配列番号206のアミノ酸35〜129、36〜128、36〜129または36〜132(それぞれ配列番号207、360、417または418に示す)に位置するとさまざまに報告されている。ドメインの座位の記載は、配列の差異により数アミノ酸変わり得ることは理解される。それゆえに、本発明の目的のために、TSG−6−LMは配列番号207、360、417または418に示すいずれかまたはこのような配列から1個、2個または3個のアミノ酸異なるものである。CUBドメインは、配列番号206のアミノ酸135〜246に位置する。ヒトTSG−6は、配列番号206の残基N118およびN258に2個の可能性のあるN結合グリカン類を有する。さらに、配列番号206の残基T259およびT262はリン酸化される(Molina et al. (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:2199-2204)。ヒトTSG−6は8個の天然システインを含み、これは、プレタンパク質TSG−6(配列番号206)の残基C58−C127、C82−C103、C135−C161およびC188−C210でジスルフィド結合を形成する。
【0234】
TSG−6結合モジュール(配列番号360)は相対的に小さいサイズおよび十分に特徴づけされた構造を有する。TSG−6結合ドメインの三次元構造は決定され、大疎水性コアの周りに配置された2個のアルファ螺旋および2個の逆平行ベータシートを含む、他の知られた結合モジュールと同じ落ち畳であることが判明した(Kohda et al. (1996) Cell 86:767-775)。さらに、TSG−6の結合モジュールとHAの相互作用は試験され、TSG−6の結合ドメイン(配列番号360)のTyr12、Tyr59、Phe70、Tyr78、Trp88の芳香環および塩基性残基Lys11、Lys72、Asp77、Arg81およびGlu86がHAとの結合に重要であることが明らかにされた(例えば、Kahmann et al. (2000) Structure 8:763-774; Mahoney et al. (2001) J Biol Chem 276:22764-22771; Kohda et al. (1996) Cell, 88:767-775; Blundell et al. (2003) J Biol Chem 278:49261-49270; Lesley et al. (2004) J Biol Chem 279:25745-25754; Blundell et al. (2005) J Biol Chem 280:18189-18201参照)。構造的試験はまた結合モジュールに含まれる唯一の単一HA結合部位が存在し、これは、構造的マップに基づき分子の残基Lys11、Tyr12、Tyr59、Phe70およびTyr78の一つの領域に局在し、これがHA結合ともっとも直接的に関与することも示す(例えばMahoney et al. (2001) J Biol Chem 276:22764-22771参照)。
【0235】
TSG−6の結合モジュールは、数グリコサミノグリカン類に結合活性を示す。例えば、結合モジュールのHA、コンドロイチン−4−スルフェート(C4S)、プロテオグリカンアグリカンのG1−ドメイン、ヘパリンおよびIαIのビクニン鎖への結合を明らかにする試験がある(例えば、Milner et al. (2003) Journal of Cell Science, 116:1863-1873; Mahoney et al. (2005) Journal of Biological Chemistry, 280:27044-27055参照)。ヘパリンおよびHAへのTSG−6の結合は、TSG−6のLMの別の結合部位が仲介する。ヒアルロナンへのTSG−6−LM結合に関与する残基はLys11、Tyr12、Tyr59、Phe70およびTyr78であり、それによって変異体K11Q、Y12F、Y59F、F70VおよびY78Fは、野生型と比較してHA結合親和性が10〜100倍低く、ヘパリンへの結合に関与するTSG−6−LM中の残基はLys20、Lys34、Lys41、Lys54、Arg56およびArg84であり、それによって変異体K20A、K34A、K41AおよびK54Aはヘパリン結合特性が障害され、ビクニンへのTSG−6−LM結合に関与する残基はHA結合部位と重複するが、同一ではない(Mahoney et al. (2005) Journal of Biological Chemistry, 280:27044-27055)。
【0236】
TSG−6のヒアルロナンへの結合はpH依存的であり、結合活性は正確にまたは約pH5.8〜pH6.0のような約または正確にpH5.6〜6.4の酸性pHで示される。
【0237】
ここでの方法においてコンパニオン診断として使用するためにここに提供するTSG−6ポリペプチド、そのHA結合ドメイン、例えば、TSG−6結合モジュールまたはHAと結合するのに十分なそのフラグメントは、配列番号206、207、222、360、417または418のいずれかまたは配列番号206、207、222、360、417または418のいずれかと少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示す変異体のようなその変異体を含み得る。変異体の例は、例えば、種変異体、保存的および非保存的アミノ酸変異を含む対立形質変異体および変異体を含む。ヒトTSG−6の天然対立形質変異体は、例えば、アミノ酸置換Q144Rを含むTSG−6を含む(配列番号407、Nentwich et al. (2002) J Biol Chem 277:15354-15362)。TSG−6は種間で高度に保存され、マウスおよびヒトタンパク質は>94%同一である。ここで提供する方法においてコンパニオン診断として使用するためのTSG−6またはそのHA結合フラグメントの種変異体は、マウス(配列番号252)、ウサギ(配列番号253)、ウシ(配列番号254)、ウマ(配列番号409)、チンパンジー(配列番号408)、イヌ(配列番号410)、マウス(配列番号411)、ニワトリ(配列番号412)、カエルであるアフリカツメガエル(配列番号413)、ゼブラフィッシュ(配列番号414)、その成熟形態または結合モジュールまたはHAと結合するのに十分なその一部を含むが、これらに限定されない。
【0238】
ここで提供する方法において使用するためのTSG−6の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸置き換え(置換)、欠失または挿入であるアミノ酸修飾された変異体を含む。修飾の例は、配列番号360、417または418に示すTSG−6の残基に対応するアミノ酸残基4、6、8、13、20、29、34、41、45、54、67、72または96のいずれかでのアミノ酸置換のようなアミノ酸置換を含む。置換アミノ酸は任意の他のアミノ酸残基であり得る。ここで提供する方法においてコンパニオン診断試薬として使用するためのここに提供するTSG−6ポリペプチドまたはそのHA結合フラグメントのアミノ酸置換の例は、配列番号360、417または418に示すTSG−6の残基に対応するH4K、H4S、E6A、E6K、R8A、K13A、K20A、H29K、K34A、K41A、H45S、K54A、N67L、N67S、K72A、H96K、K34A/K54AまたはK20A/K34A/K41に対応する少なくとも1個のアミノ酸置換を含む修飾TSG−6ポリペプチドまたはそのHA結合フラグメントである(例えば、Mahoney et al. (2005) J Biol Chem 280:27044-27055, Blundell et al. (2007) J Biol Chem 282:12976-12988, Lesley et al. (2004) J Biol Chem 279:25745-25754, Kahmann et al. (2000) Structure 15:763-774参照)。上記のまたは当業者に知られたようなTSG−6のHAへの結合に重要なまたは他に必要な残基は、一般的に不変であり、変えることができないことは理解される。それゆえに、例えば、TSG−6の結合モジュールにおける配列番号360のアミノ酸残基11、12、59、70、78および81は一般的に不変であり、変えない。さらに、結合モジュールの不適切な折りたたみまたは折りたたみの混乱をもたらすアミノ酸修飾は一般的に不変であることは理解される。それゆえに、例えば、ここでの方法に使用するために提供される修飾TSG−6は、配列番号360のH4S、H29A、H45A、H45K、R56A、D77A、R84AおよびD89Aの任意の1個以上にアミノ酸修飾を含まない(Mahoney et al. (2005) J Biol Chem 280:27044-27055, Blundell et al. (2007) J Biol Chem 282:12976-12988, Lesley et al. (2004) J Biol Chem 279:25745-25754)。
【0239】
特に、修飾、例えば1箇所または複数個所アミノ酸置換は、修飾を含まないTSG−6と比較して、改善のような改変された活性を提供するものである。このような変異体は、TSG−6のHAへの結合親和性を高める、TSG−6のHAへの特異性を高めるおよび/またはTSG−6の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものである。例えばここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、TSG−6のヘパリン、コンドロイチン−4−スルフェート、ヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸を含む他のグリコサミノグリカン類への結合を低下させることによりTSG−6のHAへの特異性を高めたTSG−6変異体、HA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。ヒアルロナンではない他のグリコサミノグリカンへの結合は、修飾を含まないTSG−6−LMの結合と比較して、少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上減少できる。例えば、ここで提供されるのは、アミノ酸残基20、34、41、54、56、72および/または84および特にアミノ酸残基20、34、41および/または54(配列番号206に示すアミノ酸残基に対応)にアミノ酸置換を含む変異体TSG−6−LMである。置換アミノ酸はあらゆる他のアミノ酸残基でよく、一般的に非塩基性アミノ酸残基へである。例えば、アミノ酸置換はAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)またはTrp(W)へであり得る。1箇所または複数個所アミノ酸置換はヘパリンへの結合を減少させる。例えば、TSG−6のヘパリンへの結合能を減少させた変異体は当業者に知られる。このような変異体は、変異体K34A/K54AまたはK20A/K34A/K41Aを含む、K20A、K34A、K41AおよびK54Aに対応する少なくとも1個の変異を含むものである(Mahoney et al. (2005) J Biol Chem 280:27044-27055)。ヘパリンへの結合が減少または低下した変異体の例は配列番号361または416に示す変異体TSG−6−LMである。
【0240】
ここで提供される方法において使用するためのここで提供されるTSG−6ポリペプチドの例は、少なくとも1個のHA結合ドメイン、例えば、TSG−6結合モジュールを含むTSG−6ポリペプチドである。それゆえに、ここで提供されるのは、ここで提供する方法において使用するための、TSG−6結合モジュールまたはその変異体である。このようなポリペプチド試薬の例は、配列番号207、360、361、416、417または418に示すアミノ酸の配列を有するものまたは配列番号207、360、361、416、417または418のいずれかと少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、95%、99%以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有するものである。例えば、TSG−6結合モジュールは、HAへの結合能が維持されている限り、その特異性、親和性または溶解度を変えるように修飾できる。
【0241】
さらに他の例において、TSG−6結合モジュールの親和性は、例えば、Fcドメインのような多量体化ドメインへの融合によるような二量体化または多量体化により高める(下記セクションC3参照)。それゆえに、TSG−6結合モジュールは2個以上の結合モジュールを含む多量体を産生するように修飾でき、これは多量体化ドメインに直接的または間接的に結合して、二量体または三量体分子の形成および複数HA結合部位の産生をする。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断は、免疫グロブリンのFc部分のような多量体化ドメインをコードする核酸に直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、417または418のいずれかに示す結合モジュールをコードする核酸分子または配列番号207、360、361、417または418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列を有する結合モジュールをコードする核酸の発現により産生する。それゆえに、得られたTSG−6−LM多量体は、多量体化ドメインと直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、417または418のいずれかに示す第一ポリペプチドまたは配列番号207、360、361、417または418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列;および多量体化ドメインと直接的または間接的に結合した配列番号207、360、361、417または418または配列番号207、360、361、417に示す第二ポリペプチドまたは418のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸の配列を含む。一般的に、LMまたはHA結合を行うのに十分なその一部は多量体の唯一のTSG−6部分である。例えば、本方法で使用するためにここで提供されるのはTSG−6−LM:Fc分子(例えば配列番号212または215参照)である。
【0242】
他の例において、TSG−6結合モジュールは、溶解度を高めるためにFcドメインと結合する(下記セクションC3参照)。
【0243】
ii. スタビリン−1およびスタビリン−2
ここで提供される方法においてコンパニオン診断試薬として使用するために提供されるタイプAサブグループHABPの例は、スタビリン−1またはスタビリン−2またはその結合モジュール、HAに結合するのに十分な結合モジュールの一部、その変異体またはその多量体である。スタビリン−1(別名STAB1、CLEVER−1、KIAA0246、FEEL−1、FEX−1およびFELE−1;配列番号223)およびスタビリン−2(別名STAB2、FEEL−2、CD−44様前駆体FELL2、DKFZp434E0321、FEX2およびエンドサイトーシス用ヒアルロナン受容体/HARE;配列番号224)は、ファシクリン様ヒアルロナン(HA)受容体ホモログのファミリーのタイプI膜貫通型メンバーである。両者とも7個のファシクリン様接着ドメイン、複数EGF様反復およびヒアルロナン結合モジュールを含む。スタビリン−1およびスタビリン−2のいずれも類洞内皮およびマクロファージに発現されるが、各々機能的に異なる。スタビリン−1は受容体仲介エンドサイトーシスおよび再利用ならびにエンドソーム区画とトランスゴルジ網(TGN)間の往復の2個の細胞内輸送経路に関与する。スタビリン−2はHAおよびAGE−修飾タンパク質のスカベンジャー受容体として働く。
【0244】
スタビリン−1の前駆体配列は配列番号223に示す。スタビリン−1の結合モジュールは配列番号223の2208〜2300に位置し、配列番号371に示す。スタビリン−2の前駆体配列は配列番号224に示し、スタビリン−2の結合モジュールは配列番号224のアミノ酸2198〜2290に位置し、配列番号372に示す。
【0245】
ここでの方法においてコンパニオン診断として使用するためのここに提供するスタビリン−1またはスタビリン−2ポリペプチド、そのHA結合ドメイン、例えば、スタビリン−LMモジュールまたはHAと結合するのに十分なそのフラグメントは、配列番号371または372に示す結合モジュールまたは配列番号371または372のいずれかと少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示すその変異体を含む。変異体は、HAへの特異的結合を示す変異体を含む。変異体は、対立形質変異体、種変異体またはアミノ酸修飾(例えばHAへの親和性または特異性を挙げるため)を含む他の変異体を含む。ここでの方法において使用するために提供されるスタビリン−1の種変異体は、マウス(配列番号255)およびウシ(配列番号256)を含が、これらに限定されず、ここでの方法において使用するために提供されるスタビリン−2の種変異体は、マウス(配列番号257)およびラット(配列番号258)を含むが、これらに限定されない。
【0246】
ここでの方法においてコンパニオン診断として使用するためにまたここで提供されるのはHAに対する親和性が増加したスタビリン−1−LMまたはスタビリン−1−LM多量体である。例えば、ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断は、免疫グロブリンのFc部分のような多量体化ドメインをコードする核酸に直接的または間接的に結合した、配列番号371または372のいずれかに示す結合モジュールをコードする核酸分子または配列番号371または372のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する結合モジュールをコードする核酸の発現により産生するものである。それゆえに、得られたLM多量体は、多量体化ドメインと直接的または間接的に結合した配列番号371または372に示す第一ポリペプチドまたは配列番号371または372のいずれかに示す配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列;および多量体化ドメインと直接的または間接的に結合した配列番号371または372に示す第二ポリペプチドまたは配列番号371または372のいずれかの配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、84%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。
【0247】
b. タイプB:CD44サブグループ
ここでの方法において使用するためのコンパニオン診断試薬としてここに提供するのは、ヒアルロナンと結合するN−およびC−末端伸張を有する単一結合モジュールを含むHA結合ドメインを有するタイプBサブグループのメンバーであるHABP類である。タイプA/TSG−6サブグループのHA結合ドメインと異なり、結合ドメインのフランキング配列が、タイプBドメインの構造的完全性に必須であり、HAへの結合に必要である。ここに提供する方法において使用するためのHABP類のタイプBサブグループのメンバーは、CD44およびLYVE−1またはそのHA結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0248】
i. CD44
ここでの方法において使用するために提供されるタイプBサブグループHABPは、CD44、CD44のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。CD44は、ヒアルロナンおよび種々の細胞外および細胞表面リガンドと結合する80〜250kDaタイプI膜貫通型糖タンパク質である。CD44は多様な機能を有し、細胞外マトリックスの付着、組織およびターンオーバーに関与し、炎症中のリンパ球遊走を仲介する。CD44がHAと相互作用する能力は、受容体クラスター形成および細胞外ドメインのグリコシル化の変化を含む因子により制限される。CDは、10個の変異体エクソンの交互のスプライシングにより多数のアイソフォームで存在し、その全てが結合モジュールを含むヒアルロナン結合ドメインを含む。CD44完全長配列の例は配列番号227に示す。CD44のヒアルロナン結合ドメインは約160アミノ酸長(配列番号341)であり、ジスルフィド結合(配列番号341に示すCD44 HA結合ドメインのCys9およびCys110)により結合したN−およびC末端伸張が横にある結合モジュールを含む。Arg41およびArg78はHA結合に重要であり(配列番号341に示すCD44 HA結合ドメインのアミノ酸Arg22およびArg59に対応)、Tyr42およびTyr79(配列番号341に示すCD44 HA結合ドメインのアミノ酸Tyr23およびTyr60に対応)はCD44機能的活性に必須である。CD44の結合ドメインは配列番号375に示す。それゆえにここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持するCD44のフラグメント、例えば、結合ドメインおよびN−およびC末端フランキングドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むCD44のフラグメントである。
【0249】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。ここに提供する方法において使用するためのCD44の種変異体は、マウス(配列番号259)、ラット(配列番号260)、ウシ(配列番号261)、イヌ(配列番号262)、ウマ(配列番号263)、ハムスター(配列番号264)、ヒヒ(配列番号265)およびゴールデンハムスター(配列番号266)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのCD44の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないCD44と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、CD44のHAへの結合親和性を高める、CD44のHAへの特異性を高めるおよび/またはCD44の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0250】
ii. LYVE−1
ここで提供される方法において使用するためにここで提供されるのは、LYVE−1、LYVE−1のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプBサブグループHABPである。リンパ管内皮ヒアルロナン(HA)受容体−1(LYVE−1、CRSBP−1、HARおよびXLKD1とも呼ばれる;配列番号228)は、リンパ性内皮の管腔側および反管腔側表面の両者およびまた肝臓血管類洞内皮上に発現される60kDaタイプI膜貫通型糖タンパク質である。LYVE−1は、HAの分解および組織からリンパ管管腔への輸送のためのHA内部移行に関与する。リンパ性表面へのLYVE−1指向HA局在化はまた免疫応答または腫瘍転移の側面にも影響する。LYVE−1の結合モジュールは配列番号228のアミノ酸40〜129に位置し、配列番号376に示す。それゆえにここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持するLYVE−1のフラグメント、例えば、結合ドメインおよびN−およびC末端フランキングドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むLYVE−1のフラグメントである。
【0251】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。LYVE−1の種変異体は、マウス(配列番号267)およびウシ(配列番号268)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのLYVE−1の変異体またはそのHA結合フラグメント、は、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないLYVE−1と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、LYVE−1のHAへの結合親和性を高める、LYVE−1のHAへの特異性を高めるおよび/またはLYVE−1の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0252】
c. タイプC:結合タンパク質サブグループ
ここでの方法においてコンパニオン診断試薬として使用するために提供されるのは、結合タンパク質と他のタイプC HA結合タンパク質およびいずれもHAへの結合への結合に必要な2個の結合モジュールの結合を仲介する免疫グロブリン(Ig)ドメインを含むHA結合ドメインを有するタイプCサブグループのメンバーであるHABP類である。Igドメインおよび2個の結合モジュールは、集合してタイプC HABP類のG1ドメインを構成する。ここに提供する方法において使用するためのHABP類のタイプCサブグループのメンバーは、HAPLN1/結合タンパク質、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンおよびホスファカンまたはそのHA結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0253】
i. HAPLN/結合タンパク質ファミリー
ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質(HAPLN)ファミリーは、ヒアルロナンに結合し、1個のIg型C2セットドメインおよび2個の結合ドメインを含む4個の分泌型プロテオグリカン類から成る。
【0254】
(1) HAPLN1
ここでの方法に使用するためのここに提供するタイプCサブグループHABPは、HAPLN1、HAPLN1のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質1(HAPLN1、結合タンパク質およびCRTL1;配列番号229とも呼ぶ)は、HAとコンドロイチン硫酸プロテオグリカン類の相互作用安定化により細胞外マトリックス安定性および柔軟に関与する。HALPN1は、HAに結合する2個の結合モジュール(配列番号229のアミノ酸159〜253およびアミノ酸260〜350)およびアグリカンのG1ドメインのIgモジュールに結合するIgモジュール(配列番号229のアミノ酸53〜160)を含む。HAPLN1は、HA直鎖骨格と垂直結合したアグリカンおよびHAPLN1を含む三元複合体の形成により、HAとアグリカンの結合を安定化する。アグリカンおよびHAPLN1は互いに平衡に位置するが、HAは2個のHAPLN1結合モジュールおよび2個のアグリカン結合モジュールの間にある。複合体は、変形に抵抗性のゲル様物質を創製する。HAPLN1はまた、HAと、同様にアグリカンに類似したIgモジュールおよび2個の結合モジュールを含むG1ドメインを有するバーシカン、ニューロカンおよびブレビカンのような他のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン類の相互作用も安定化する。
【0255】
HAPLN1のG1ドメインはIgドメインおよび2結合モジュールを含む。HAPLN1のG1ドメインのIgドメインは、配列番号229のアミノ酸53〜160に位置する。HAPLN1のG1ドメインの結合モジュールは、配列番号229のアミノ酸159〜253および259〜350に位置し、配列番号377および378に示す。それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むHAPLN1のフラグメントであるHAPLN1のフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含むHA結合HAPLN1のフラグメントである。
【0256】
典型的に、HAの検出のための診断として使用されるために、HAPLN1は、例えば、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンまたはホスファカンのような他のタイプC HABPのG1ドメインのような、HA結合領域を含む他のHA結合タンパク質との組み合わせで提供される。
【0257】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。HAPLN1の種変異体は、ウシ(配列番号269および273)、マウス(配列番号270)、ラット(配列番号271)、ニワトリ(配列番号272)、ウマ(配列番号274)およびブタ(配列番号275)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのHAPLN1の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHAPLN1と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HAPLN1のHAへの結合親和性を上げる、HAPLN1のHAへの特異性を上げるおよび/またはHAPLN1の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0258】
(2) HAPLN2
ここで提供される方法において使用するためにここで提供されるのは、HAPLN2、HAPLN2のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質2(HAPLN2;配列番号230)は、脳結合タンパク質1としても知られ、脳で優勢に発現される。HAPLN2のG1ドメインはIgドメインおよび2結合モジュールを含む。HAPLN2のG1ドメインのIgドメインは、配列番号230のアミノ酸49〜149に位置する。HAPLN2のG1ドメインの結合モジュールは、配列番号230のアミノ酸148〜241および247〜337に位置し、配列番号379および380に示す。
【0259】
それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むHAPLN2のフラグメントであるHAPLN2のフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含むHA結合HAPLN2のフラグメントである。典型的に、HAの検出のための診断として使用されるために、HAPLN2は、例えば、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンまたはホスファカンのような他のタイプC HABPのG1ドメインのような、HA結合領域を含む他のHA結合タンパク質と組み合わせて提供される。
【0260】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。HAPLN2の種変異体は、マウス(配列番号276)、ラット(配列番号277)およびウシ(配列番号278)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのHAPLN2の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHAPLN2と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HAPLN2のHAへの結合親和性を上げる、HAPLN1のHAへの特異性を上げるおよび/またはHAPLN2の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0261】
(3) HAPLN3
ここでの方法に使用するためのここに提供するタイプCサブグループHABPは、HAPLN3、HAPLN3のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質3(HAPLN3;配列番号231)はヒアルロン酸結合および細胞接着において機能する。HAPLN3は乳癌で上方制御され、それゆえに、癌発生および転移と関連している可能性がある。HAPLN3のG1ドメインはIgドメインおよび2結合モジュールを含む。HAPLN3のG1ドメインのIgドメインは、配列番号231のアミノ酸62〜167に位置する。HAPLN3のG1ドメインの結合モジュールは配列番号231のアミノ酸166〜260および266〜357に位置し、配列番号381および382に示す。
【0262】
それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むHAPLN3のフラグメントである、HAPLN3のフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含むHA結合HAPLN3のフラグメントである。典型的に、HAの検出のための診断として使用されるために、HAPLN3は、例えば、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンまたはホスファカンのような他のタイプC HABPのG1ドメインのような、HA結合領域を含む他のHA結合タンパク質と組み合わせて提供される。
【0263】
また、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。HAPLN3の種変異体は、マウス(配列番号279)、ラット(配列番号280)およびウシ(配列番号281)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのHAPLN3の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHAPLN3と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HAPLN3のHAへの結合親和性を上げる、HAPLN3のHAへの特異性を上げるおよび/またはHAPLN3の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0264】
(4) HAPLN4
ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAPLN4、HAPLN4のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。ヒアルロナンおよびプロテオグリカン結合タンパク質4(HAPLN4;配列番号232)は脳結合タンパク質2としても知られ、脳で優勢に発現される。HAPLN4は、ニューロン周囲マトリックスの発達に関与する。ヒトおよびマウスHAPLN4は91%アミノ酸配列同一性を共有する。HAPLN4のG1ドメインはIgドメインおよび2結合モジュールを含む。HAPLN4のG1ドメインのIgドメインは、配列番号232のアミノ酸60〜164に位置する。HAPLN4のG1ドメインの結合モジュールは、配列番号232のアミノ酸163〜267および273〜364に位置し、配列番号383および384に示す。
【0265】
それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むHAPLN4のフラグメントである、HAPLN4のフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含むHAPLN4のHA結合フラグメントである。典型的に、HAの検出のための診断として使用されるために、HAPLN4は、例えば、アグリカン、バーシカン、ブレビカン、ニューロカンまたはホスファカンのような他のタイプC HABPのG1ドメインのような、HA結合領域を含む他のHA結合タンパク質と組み合わせて提供される。
【0266】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、HAPLN4の変異体である。HAPLN4の種変異体は、マウス(配列番号282)、ウシ(配列番号283)およびラット(配列番号284)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのHAPLN4の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHAPLN4と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HAPLN4のHAへの結合親和性を上げる、HAPLN4のHAへの特異性を上げるおよび/またはHAPLN4の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0267】
(5) アグリカン
ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、アグリカン、アグリカンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。アグリカン(配列番号233)はコンドロイチン硫酸(CS)プロテオグリカンファミリーに属し、これはまたバーシカン、ブレビカン、ニューロカンおよびホスファカンを含む。各アグリカン分子は、それぞれ約100個および30個のケラタン硫酸およびグリコサミノグリカン(GAG)側鎖を含む。アグリカンは、そのN末端において結合モジュールおよびIgドメインを介してヒアルロナンと非共有結合的に結合している。軟骨でもっとも豊富なプロテオグリカンであり、この組織の耐荷重性能力に関与する。
【0268】
アグリカンのG1ドメインは配列番号233のアミノ酸45〜352に位置する。アグリカンのG1ドメインのIgドメインは配列番号233のアミノ酸45〜154に位置し、配列番号423に示す。アグリカンのG1ドメインの結合モジュールは、配列番号233のアミノ酸153〜247および254〜349に位置し、配列番号385および386に示す。結合モジュール3および4は配列番号387および388に示す。それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むアグリカンのフラグメントであるアグリカンのフラグメントである。
【0269】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、アグリカンの変異体である。アグリカンの種変異体は、ブタ(配列番号285)、ニワトリ(配列番号286)、マウス(配列番号287)、ウシ(配列番号288)、イヌ(配列番号289)、ラット(配列番号290)およびウサギ(配列番号291)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのアグリカンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まない修飾を含まないアグリカンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このようなは、アグリカンのHAへの結合親和性を上げる、アグリカンのHAへの特異性を上げるおよび/またはアグリカンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0270】
(6) ブレビカン
ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、ブレビカン、ブレビカンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。ブレビカン(配列番号234)は、マトリックスタンパク質のアグリカン/バーシカンプロテオグリカンファミリーの160kDaメンバーである。脳由来であり、ヒアルロナンとテネイシン類およびフィビュリン類のような他のマトリックス分子の間のリンカーとして働く。ブレビカンのG1ドメインは、配列番号234のアミノ酸51〜356に位置し、配列番号424に示す。ブレビカンのG1ドメインのIgドメインは配列番号234のアミノ酸51〜158に位置する。ブレビカンのG1ドメインの結合モジュールは、配列番号234のアミノ酸157〜251および258〜353に位置し、配列番号389および390に示す。それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むブレビカンのフラグメントである、ブレビカンのフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含む、ブレビカンのHA結合フラグメントである。
【0271】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含むブレビカンの変異体である。ブレビカンの種変異体は、ラット(配列番号292)、マウス(配列番号293)、ウシ(配列番号294)およびネコ(配列番号295)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのブレビカンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないブレビカンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、ブレビカンのHAへの結合親和性を上げる、ブレビカンのHAへの特異性を上げるおよび/またはブレビカンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0272】
(7) バーシカン
ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、バーシカン、バーシカンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。バーシカン(配列番号235)は、種々の組織に存在する大細胞外マトリックスプロテオグリカンである。重要な構造的役割を有し、発達および疾患の間、緩い、水和されたマトリックスを形成する。これはまた細胞と直接的または間接的に相互作用し、細胞接着、生存、増殖および運動性のような生理学的過程を制御する。バーシカンのG1ドメインは、配列番号235のアミノ酸38〜349に位置し、配列番号425に示す。バーシカンのG1ドメインのIgドメインは、配列番号235のアミノ酸38〜151に位置する。バーシカンのG1ドメインの結合モジュールは、配列番号235のアミノ酸150〜244および251〜346に位置し、配列番号391および392に示す。それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むバーシカンのフラグメントである、バーシカンのフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含む、バーシカンのHA結合フラグメントである。
【0273】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、バーシカンの変異体である。バーシカンの種変異体は、マウス(配列番号296)、ラット(配列番号297)、ブタオザル(配列番号298)、ウシ(配列番号299)およびニワトリ(配列番号300)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのバーシカンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないバーシカンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、バーシカンのHAへの結合親和性を上げる、バーシカンのHAへの特異性を上げるおよび/またはバーシカンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0274】
(8) ニューロカン
ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、ニューロカン、ニューロカンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。ニューロカンは、CSPG3および1D1(配列番号236)としても知られ、中枢神経系において主に発現される分泌型コンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。ヒトニューロカンはMet635後に開裂され、N末端(ニューロカン−130)およびC末端(ニューロカン−C)フラグメントを生じると予測される。ニューロカンおよびニューロカン−Cはアストロサイトにより産生され、軸索束および神経細胞体を囲むマトリックスに蓄積する。ニューロカン−130は主にグリア細胞質で見られる。ニューロカンは、種々のマトリックスおよび膜貫通型分子との相互作用を介して神経細胞接着および神経突起成長を阻害する。ニューロカンのG1ドメインは配列番号236のアミノ酸53〜359に位置し、配列番号426に示す。ニューロカンのG1ドメインのIgドメインは配列番号236のアミノ酸53〜161に位置する。ニューロカンのG1ドメインの結合モジュールは配列番号236のアミノ酸160〜254および261〜356に位置し、配列番号393および394に示す。それゆえに、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、HAへの結合能を維持する、例えば、G1ドメインまたはHAへの結合を行うのに十分なその一部を含むニューロカンのフラグメントである、ニューロカンのフラグメントである。例えば、ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、少なくとも2個の結合モジュールを含む、ニューロカンのHA結合フラグメントである。
【0275】
ここで提供する方法において使用するためにまたここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。ニューロカンの種変異体は、マウス(配列番号301)、ラット(配列番号302)およびチンパンジー(配列番号303)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのニューロカンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないニューロカンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、ニューロカンのHAへの結合親和性を上げる、ニューロカンのHAへの特異性を上げるおよび/またはニューロカンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0276】
(9) ホスファカン
ここで提供される方法において使用するためにここで提供されるのは、ホスファカン、ホスファカンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部であるタイプCサブグループHABPである。ホスファカン(配列番号340)は、神経細胞および神経細胞−接着分子に結合し、細胞表面および細胞外マトリックス分子へのヘテロフィリック結合を介しておよび膜貫通型ホスファターゼのリガンドと競合することにより、神経組織における細胞相互作用および他の発生過程を調節するラット脳から単離されたコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである。ホスファカンは、ヒト受容体型タンパク質チロシンホスファターゼ(RPTPゼータ/ベータ)の細胞外部分と76%同一性を示し、大膜貫通型タンパク質のmRNAスプライシング変異体である。
【0277】
またここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。ホスファカンの種変異体は、ラットホスファカン(配列番号237)を含むが、これに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのホスファカンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないホスファカンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、ホスファカンのHAへの結合親和性を上げる、ホスファカンのHAへの特異性を上げるおよび/またはホスファカンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0278】
2. 結合モジュールを有しないHA結合タンパク質
ある例において、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、結合モジュールを含まないHA結合タンパク質である。ここに提供する方法において使用するための結合モジュールがないHA結合タンパク質は、HABP1/C1QBP、ライリン、RHAMM、IαI、CDC37、PHBP、SPACR、SPACRCAN、CD38、IHABP4およびPEP−1またはそのHA結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。
【0279】
a. HABP1/C1QBP
ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、ヒアルロナン結合タンパク質1、HABP1のHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。ヒアルロナン結合タンパク質1(HABP1;配列番号240)はまたC1qBP/C1qRおよびp32としても知られ、精子形成におよび炎症誘発性分子の受容体として機能する遍在性の酸性糖タンパク質である。HABP1は、細胞外ヒアルロナン、ビトロネクチン、補体成分C1q、HMWキニノーゲンおよび細菌およびウイルスタンパク質と結合する。細胞内HABP1は、C1q球状ドメイン、PKCの多数のアイソフォーム、ミトコンドリアHrk、アドレナリンおよびGABA−A受容体、mRNAスプライシング因子ASF/SF2およびCBF転写因子を含む分子と結合する。
【0280】
またここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。ここで提供する方法において使用するためのHABP1の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHABP1と比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HABP1のHAへの結合親和性を上げる、HABP1のHAへの特異性を上げるおよび/またはHABP1の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0281】
b. ライリン
ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、ライリン、ライリンのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。ライリン(配列番号238および239)は、C型レクチン類と相同性を有する膜貫通型タンパク質であり、その膜貫通型セグメントL−A−Y−I−L−Iの6アミノ酸モチーフから名づけられた。ライリンはヒアルロナンと特異的に結合し、ほとんどの動物組織およびの細胞外マトリックスおよび体液に見られる。それは、それゆえに組織リモデリング、発達、恒常性および疾患中の細胞行動および機能を調節できる。
【0282】
またここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。ライリンの種変異体は、マウス(配列番号304)、チャイニーズハムスター(配列番号305)およびラット(配列番号306)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのライリンの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないライリンと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、ライリンのHAへの結合親和性を上げる、ライリンのHAへの特異性を上げるおよび/またはライリンの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0283】
c. RHAMM
ここでの方法に使用するためにここで提供されるのは、RHAMM、RHAMMのHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部である。HA仲介運動性のための受容体(RHAMM;配列番号242)は、〜59〜80kDaの範囲のサイズの膜関連タンパク質である。RHAMMはほとんどの細胞型で発現され、HA結合に応答した接着および細胞運動性の仲介のために機能する。またここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。RHAMMの種変異体は、マウス(配列番号307)およびラット(配列番号308)を含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのRHAMMの変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないRHAMMと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、RHAMMのHAへの結合親和性を上げる、RHAMMのHAへの特異性を上げるおよび/またはHABP1の溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0284】
d. その他
ここで提供する方法において使用できるHAに結合し、そのいくつかはヒアルロナン結合ドメインを含む他のHABP類は、IαI(配列番号243−245)、CDC37(配列番号250)、PHBP(配列番号251)、SPACR(配列番号246)、SPACERCAN(配列番号247)、CD38(配列番号248)、IHABP4(配列番号249)およびPEP−1(配列番号241)またはHA結合ドメインまたはHAへの結合に十分なその一部を含むが、これらに限定されない。またここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、変異体でHAへの結合能が維持される限り、対立形質変異体、種変異体およびアミノ酸修飾を含む他の変異体を含む、変異体である。種変異体は、マウス(配列番号309−311)およびウシ(配列番号312−314)由来のIαI、パン酵母(配列番号326)、ショウジョウバエ(配列番号327)、ラット(配列番号328)、マウス(配列番号329)、分裂酵母(配列番号330)、ショウジョウバエ(配列番号331)、ニワトリ(配列番号332)、ウシ(配列番号333)、カンジダ・アルビカンス(配列番号334)、線虫(配列番号335)およびミドリフグ(配列番号336)由来のCDC37、ニワトリ(配列番号315)およびマウス(配列番号316)由来のSPACR、マウス(配列番号317)、ラット(配列番号318)およびニワトリ(配列番号319)由来のSPACRCAN、マウス(配列番号320)、ラット(配列番号321)およびウサギ(配列番号322)由来のCD38、マウス(配列番号324)およびニワトリ(配列番号325)由来のIHABP4およびマウス(配列番号337)、ラット(配列番号338)およびウシ(配列番号339)由来のPHBPを含むが、これらに限定されない。ここで提供する方法において使用するためのHABP類の変異体またはそのHA結合フラグメントは、アミノ酸修飾を含み、修飾を含まないHABPと比較して、改善のような変えられた活性を示す変異体を含む。このような変異体は、HABPのHAへの結合親和性を上げる、HABPのHAへの特異性を上げるおよび/またはIαI、CDC37、PHBP、SPACR、SPACRCAN、CD38、IHABP4およびPEP−1またはそのHA結合フラグメントのようなHABPの溶解度を上げるアミノ酸修飾を含むものを含む。
【0285】
3. HA結合タンパク質の修飾
修飾HABP類は、ここに提供する方法において使用するためのHABP類の1個以上の特性の改善のためにここで提供される。このような特性は、哺乳動物発現系におけるタンパク質発現増加、安定性および溶解度のような生物物理学的特性改善、タンパク質精製および検出改善および/またはHAに対する融合タンパク質の二量体化を介する親和性増加の修飾を含む。
【0286】
a. HABPの多量体
ここに提供する方法において使用するために提供されるHABP類は、多量体化ドメインと直接的または間接的に結合できる。多量体化ドメインの産生は、HABP類またはそのHA結合ドメインの多量体を産生し、分子上のHA結合部位を増加できる。これは、HAに対するHABPの親和性を増加できる。例えば、HABP多量体の親和性は、多量体化ドメインを含まないHABPポリペプチドと比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍以上増加できる。HAに対するHABP多量体の親和性は、解離定数(Kd)として示したとき、一般的に少なくとも多くてもまたは多くてもまたは正確に1×10
−8M〜1×10
−10M、例えば少なくとも多くてもまたは多くてもまたは正確に9×10
−9M、8×10
−9M、7×10
−9M、6×10
−9M、5×10
−9M、4×10
−9M、3×10
−9M、2×10
−9M、1×10
−9M、9×10
−10M、8×10
−10M、7×10
−10M、6×10
−10M、5×10
−10M、4×10
−10M、3×10
−10M、2×10
−10M、1×10
−10Mまたはそれより低いKdである。
【0287】
ここで提供されるのは、第一HABPのHA結合ドメインまたはHAに結合するのに十分なその一部第二HABPのおよびHA結合ドメインまたはHAに結合するのに十分なその一部を含む多量体を含み、ここで、第一および第二HA結合ドメインは、多量体化ドメインに直接的またはリンカーを介して間接的に結合している。第一および第二HA結合ドメインは同じHABP由来でも異なるHABP由来でもよい。例えば、HA結合ドメインが同一であるならば、ホモ二量体またはホモ三量体が産生できる。HA結合ドメインが異なるならば、ヘテロ二量体またはヘテロ三量体が産生できる。例えば、HABP類の結合ドメインまたはモジュールのようなHA結合ドメインは、2個以上のHA結合ドメインの多量体を形成するために共有結合的結合していても、非共有結合的結合していても、化学的結合していてもよい。結合モジュールは結合して、二量体、三量体またはそれ以上の多量体を形成できる。ある例においては、多量体は、各々HA結合ドメインを含む2個以上のHABPポリペプチドの二量体化により形成できる。
【0288】
HA結合ドメインを含むHABPのあらゆる部分を多量体パートナーとして使用できる。例えば、上記HABP類のいずれかまたは配列番号206〜207、222〜340、407〜414に示すいずれかまたはHA結合ドメイン、例えば、結合ドメインまたはモジュールを含むHABPのあらゆる部分および配列番号341および371〜394に示すHA結合ドメインのいずれかを含むその変異体を使用して、キメラHABPポリペプチドを賛成でき、ここで、HABPポリペプチドの全てまたは一部は多量体化ドメインに結合する。典型的に、HABP部分の少なくとも1個、しかししばしば両者は、多量体化ドメインに結合するHAに結合するために十分なHABPの全てまたは一部である。多量体化パートナーとして使用するHABP類またはその一部の例は本明細書の上に記載し、配列番号206〜207、222〜341、371〜394、407〜414、416〜418または423〜426に示すいずれかである。ある例において、多量体パートナーの少なくとも1個は、HA結合ドメインを含むHABPの全てまたは一部である。例えば、多量体HABPポリペプチドの例は、アグリカン、バーシカン、ニューロカン、ブレビカン、ホスファカン、HAPLN1、HAPLN2、HAPLN3、HAPLN4、スタビリン−1、スタビリン−2、CAB61358、KIAA0527またはTSG−6タンパク質のHA結合ドメイン(例えば結合ドメインまたは結合モジュール)またはその一部の間で形成される多量体である。さらに、HABP多量体の形成に使用するためのキメラHABPポリペプチドは、多量体化ドメインに結合したハイブリッドHABPポリペプチドを含む。ここで提供される多量体の例は、TSG−6の結合モジュール(LM)またはHAに結合するのに十分なその一部の多量体化により産生されたホモ二量体のような多量体である。
【0289】
2個のHABPポリペプチド間の多量体化は、自然に起こることができまたは2個以上のポリペプチドの強制的結合により起こり得る。一例として、多量体は、異なるHABPポリペプチドまたはドメインまたはHAに結合するのに十分なその一部上のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合により結合され得る。他の例において、多量体は、各ポリペプチドに融合したペプチド部分に共有結合的または非共有結合的相互作用を介して結合しているHABPポリペプチドまたはドメインまたはHAに結合するのに十分なその一部を含み得る。このようなペプチドは、多量体化促進特性を有するペプチドリンカー(例えばスペーサー)またはペプチドであり得る。さらなる例において、多量体は、例えば、ヘテロ二官能性リンカーを使用するような、2個のポリペプチド間の化学的結合を介して形成できる。
【0290】
i. ペプチドリンカー
ペプチドリンカーを使用して、例えば少なくとも1個の多量体化パートナーがHA結合ドメイン(例えば、結合ドメインまたはモジュール)を含む多量体のような、HABPポリペプチド多量体を産生できる。一例として、ペプチドリンカーを第一ポリペプチドのC末端および第二ポリペプチドのN末端に融合できる。この構造を、少なくとも1個の、好ましくは2個、3個、4個またはそれ以上のポリペプチドが、互いにその各末端でペプチドリンカーを介して結合するように、複数回繰り返し得る。例えば、多量体ポリペプチドは配列Z
1−X−Z
2(ここで、Z
1およびZ
2は、各々HA結合ドメインを含むHABPの全てまたは一部の配列であり、Xはペプチドリンカーの配列である)を有し得る。ある例においては、Z
1および/またはZ
2は、HA結合ドメインを含むHABPの全てである。他の例において、Z
1および/またはZ
2はHA結合ドメインを含むHABPの一部である。Z
1およびZ
2は同一であるかまたは異なる。他の例において、ポリペプチドはZ
1−X−Z
2(−X−Z)
nの配列を有し、ここで“n”は任意の整数、すなわち一般的に1または2である。
【0291】
典型的に、ペプチドリンカーは、一方または両方のHA結合ドメインをヒアルロナン基質に結合させるのにまたはHA結合ドメインの間の相互作用(例えばタイプC HABP類のG1 HA結合ドメインの2個のIgモジュールの相互作用)を可能にするのに十分な長さである。ペプチドリンカーの例は、−Gly−Gly−、GGGGG(配列番号342)、GGGGSまたは(GGGGS)n(配列番号343)、SSSSGまたは(SSSSG)n(配列番号344)、GKSSGSGSESKS(配列番号345)、GGSTSGSGKSSEGKG(配列番号346)、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG(配列番号347)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号348)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号349)またはAlaAlaProAlaまたは(AlaAlaProAla)n(配列番号350)(ここで、nは1〜6、例えば1、2、3または4である)を含むが、これらに限定されない。リンカーの例は次のものを含む。
(1) NcoI末端を有するGly4Ser(配列番号351)
CCATGGGCGG CGGCGGCTCT GCCATGG
(2) NcoI末端を有する(Gly4Ser)2(配列番号352)
CCATGGGCGG CGGCGGCTCT GGCGGCGGCG GCTCTGCCAT GG
(3) NcoI末端を有する(Ser4Gly)4(配列番号353)
CCATGGCCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCGC CATGG
(4) NcoI末端を有する(Ser4Gly)2(配列番号354)
CCATGGCCTC GTCGTCGTCG GGCTCGTCGT CGTCGGGCGC CATGG
【0292】
結合部分は、例えば、Huston et al. (1988) PNAS 85:5879-5883, Whitlow et al. (1993) Protein Engineering 6:989-995, and Newton et al., (1996) Biochemistry 35:545-553に記載されている。他の適切なペプチドリンカーは、本明細書に引用により包含させる米国特許番号4,751,180または4,935,233に記載のあらゆるものを含む。所望のペプチドリンカーをコードするポリヌクレオチドは、適切な慣用の技術のいずれかを使用して、HA結合ドメインを含むHABPの全てまたは一部をコードするポリヌクレオチドの間におよび同じ読み取り枠内に挿入できる。一例として、融合ポリペプチドは、ペプチドリンカーにより分けられた、HA結合ドメインを含むHABPポリペプチドの全てまたは一部であるものを含む、2〜4個のHABPポリペプチドに由来する。
【0293】
ii. ヘテロ二官能性結合剤
ヘテロ多量体融合ポリペプチドを産生するためのHABPポリペプチドの他のHABPポリペプチドへの結合は直接的でも間接的でもよい。例えば、2個以上のHABPポリペプチドの結合は、化学的結合により達成できまたは当分野で知られたまたはここに提供するいずれかのようなヘテロ二官能性リンカーにより促進され得る。
【0294】
アミノ基およびチオール基の間に共有結合的結合を形成するおよびチオール基をタンパク質に導入するために使用する多数のヘテロ二官能性架橋試薬は当業者に知られている(例えば、このような試薬の製造および使用を記載し、このような試薬の販売元を紹介するthe PIERCE CATALOG, ImmunoTechnology Catalog & Handbook, 1992-1993参照;また、例えば、Cumber et al. (1992) Bioconjugate Chem. 3:397-401; Thorpe et al. (1987) Cancer Res. 47:5924-5931; Gordon et al. (1987) Proc. Natl. Acad Sci. 84:308-312; Walden et al. (1986) J. Mol. Cell Immunol. 2:191-197; Carlsson et al. (1978) Biochem. J. 173: 723-737; Mahan et al. (1987) Anal. Biochem. 162:163-170; Wawrzynczak et al. (1992) Br. J. Cancer 66:361-366; Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584-589参照)。これらの試薬は、HA結合ドメインを含むHABPポリペプチドのN末端部分とHA結合ドメインを含む他のHABPポリペプチドのC末端部分の間またはこれらの部分の各々およびリンカーの間の共有結合的結合を形成するのに使用できる。これらの試薬は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオスルフェート(SMBT、ヒンダードジスルフェートリンカー);スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP);スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC);スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;ヒンダードジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド)エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(SAED);スルホ−スクシンイミジル7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル−6−[アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]−ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT、ヒンダードジスルフェートリンカー);スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリミジルジ−チオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(MBS);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル(スルホ−MBS);N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(スルホ−SIAB);スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル−4−(p−マレイミド−フェニル)ブチレート(スルホ−SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)を含むが、これらに限定されない。これらのリンカーは、例えば、柔軟性または溶解度を増加させるまたは立体的障害物のためにまたはそれを除去するために提供されるもののようなペプチドリンカーと組み合わせて使用できる。ポリペプチド分子を他の分子に結合させることが当業者に知られているあらゆる他のリンカーを用いることができる。一般的特性は、得られた分子がHAに結合することである。HABP試薬のインビボ診断使用のために、一般的にリンカーは、ヒトを含む動物への投与のために生体適合性でなければならない。
【0295】
iii. ポリペプチド多量体化ドメイン
2個以上のHABPポリペプチドの相互作用は、それら自体安定な構造を形成するために相互作用できる、任意の部分または他のポリペプチドへの直接的または間接的結合により促進できる。例えば、別々にコードされるHABPポリペプチド鎖を多量体化により結合でき、それによってポリペプチドの多量体化は多量体化ドメインが仲介する。典型的に、多量体化ドメインは、第一HABPポリペプチドと第二HABPポリペプチドの安定なタンパク質−タンパク質相互作用の形成のために提供される。HABPポリペプチドは、例えば、HABPのHA結合ドメイン(例えば結合ドメインまたはモジュール)をコードする核酸と多量体化ドメインをコードする核酸の結合(直接的または間接的)を含む。典型的に、少なくとも1個の多量体化パートナーは、多量体化ドメインと直接的または間接的に結合したHA結合ドメインを含むHABPの全てまたは一部をコードする核酸であり、それゆえにキメラ分子を形成する。ホモまたはヘテロ多量体ポリペプチドは別々のHABPポリペプチドの同時発現により産生できる。第一および第二HABPポリペプチドは同一でも異なってもよい。
【0296】
一般的に、多量体化ドメインは、安定なタンパク質−タンパク質相互作用を形成できるあらゆるものを含む。多量体化ドメインは免疫グロブリン配列(例えばFcドメイン;例えば、国際特許公開番号WO93/10151およびWO2005/063816;米国公開番号2006/0024298;米国特許番号5,457,035)、ロイシンジッパー(例えば核トランスフォーミングタンパク質fosおよびjunまたは癌原遺伝子c−myc由来または窒素の一般的コントロール(GCN4)由来)、疎水性領域、親水性領域またはホモまたはヘテロ多量体のキメラ分子間の分子間ジスルフィド結合を形成する遊離チオールを介して相互作用できる。さらに、多量体化ドメインは、例えば、米国特許番号5、731,168;国際特許公開番号WO98/50431およびWO2005/063816;Ridgway et al. (1996) Protein Engineering, 9:617-621に記載のもののような、穴を含むアミノ酸配列に相補的な隆起を含むアミノ酸配列を含み得る。このような多量体化領域は、立体的相互作用が安定な相互作用を促進するだけでなく、さらにキメラ単量体の混合物からホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成を促進するようにも操作できる。一般的に、隆起は、第一ポリペプチドの界面の小アミノ酸側鎖の大側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)での置き換えにより構築する。隆起と同一または類似サイズの代償性腔は、所望により第二ポリペプチドの界面上に、大アミノ酸側鎖を小アミノ酸(例えば、アラニンまたはスレオニン)で置き換えることにより構築する。多量体化ドメインの例は下に記載する。
【0297】
HABPのあらゆるHA結合ドメイン(例えば、結合ドメインまたはモジュール)を含む、例えばここに提供するいずれかのようなHABPポリペプチドはどこでも結合できるが、典型的にキメラポリペプチドを形成するように、そのN末端またはC末端を介し、多量体化ドメインのN末端またはC末端へである。結合は直接的でもリンカーを介して間接的でもよい。また、キメラポリペプチドは融合タンパク質であってよくまたは共有結合または非共有結合相互作用を介するような化学的結合により形成してよい。例えば、多量体化ドメインを含むキメラポリペプチドを製造するとき、HA結合ドメインを含むHABPの全てまたは一部をコードする核酸を、多量体化ドメイン配列をコードする核酸に、直接的または間接的にまたは所望によりリンカードメインを介して、作動可能に結合できる。典型的に、構築物は、HABPポリペプチドのC末端が多量体化ドメインのN末端に結合するキメラタンパク質をコードする。ある例においては、構築物は、HABPポリペプチドのN末端が多量体化ドメインのN末端またはC末端に結合するキメラタンパク質をコードできる。
【0298】
ポリペプチド多量体は、同一または異なるHABPポリペプチドの2個を、多量体化ドメインに直接的または間接的に結合させることにより製造した、キメラタンパク質を含む。ある例において、多量体化ドメインがポリペプチドであるとき、HABP−多量体化ドメインキメラポリペプチドをコードする遺伝子融合体を適当な発現ベクターに挿入する。得られたHABP−多量体化ドメインキメラタンパク質は該組み換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞で発現でき、多量体に集合し、ここで、多量体化ドメインは相互作用して多価ポリペプチドを形成する。多量体化ドメインのHABPポリペプチドへの化学的結合は、上記のとおりヘテロ二官能性リンカーを使用して行い得る。
【0299】
得られたキメラポリペプチドおよびそこから形成された多量体を、例えば、プロテインAまたはプロテインGカラム上の親和性クロマトグラフィーのような任意の適切な方法で精製できる。異なるHABPキメラポリペプチドをコードする2個の核酸分子を細胞に形質転換したとき、ホモおよびヘテロ二量体の形成が起こる。発現のための条件は、ヘテロ二量体形成がホモ二量体形成より優先されるように調節できる。
【0300】
(1) 免疫グロブリンドメイン
多量体化ドメインは、さらなるアミノ酸配列の多量体化ドメインと分子間ジスルフィド結合を形成するように反応できる遊離チオール部分を含むものである。例えば、多量体化ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgMまたはIgE由来のような免疫グロブリン分子の一部を含み得る。一般的に、このような一部は免疫グロブリン定常領域(Fc)である。抗体由来ポリペプチドの種々の部分(Fcドメインを含む)に融合したポリペプチドを含む融合タンパク質の製造は記載されており、例えば、Ashkenazi et al. (1991) PNAS 88: 10535; Byrn et al. (1990) Nature, 344:667; and Hollenbaugh and Aruffo, (1992)“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins,” in Current Protocols in Immunology, Ch.10, pp. 10.19.1-10.19.11を参照のこと。
【0301】
抗体は、特異的抗原に結合し、ジスルフィド結合により共有結合的に結合した2個の同一重鎖および2個の同一軽鎖を含む。重鎖および軽鎖のいずれも、抗原と定常(C)領域を結合する可変領域を含む。いずれの鎖においても、一ドメイン(V)は、該分子の抗体特異性に依存する可変アミノ酸配列を含む。他のドメイン(C)は、むしろ同じクラスの分子で共通する定常配列である。ドメインは、アミノ末端側から順に番号付けされる。例えば、IgG軽鎖は、V
L−C
L(それぞれ軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを言う)の順でN末端からC末端に結合した2個の免疫グロブリンドメインから成る。IgG重鎖は、V
H−C
H1−C
H2−C
H3(それぞれ可変重ドメイン、定常重ドメイン1、定常重ドメイン2および定常重ドメイン3を言う)の順でN末端からC末端に結合した4個の免疫グロブリンドメインからなる。得られた抗体分子は4鎖分子であり、ここで、各重鎖がジスルフィド結合により軽鎖に結合し、2個の重鎖が互いにジスルフィド結合により結合している。重鎖の結合は、ヒンジ領域として知られる、重鎖の可動性領域が仲介する。抗体分子のフラグメントを、例えば、酵素開裂によるように産生できる。例えば、パパインによるプロテアーゼ開裂により、重鎖定常領域、Fcドメインの二量体は2個のFab領域(すなわち可変領域を含む部分)から開裂される。
【0302】
ヒトにおいて、その重鎖により分類されるデルタ(δ)、ガンマ(γ)、ミュー(μ)およびアルファ(α)およびイプシロン(ε)と命名される5種の抗体アイソタイプが存在し、それぞれIgD、IgG、IgM、IgAおよびIgEクラスの抗体を生じる。IgAおよびIgGクラスはサブクラスIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。免疫グロブリン重鎖間の配列差異は、例えば、Cドメイン数、ヒンジ領域の存在および鎖間ジスルフィド結合の数位置が異なる、種々のアイソタイプをもたらす。例えば、IgMおよびIgE重鎖は、ヒンジ領域を置き換える余分のCドメイン(C4)を含む。IgG、IgDおよびIgAのFc領域は、互いにそのCγ3、Cδ3およびCα3ドメインを介して対となり、一方、IgMおよびIgEのFc領域は、そのCμ4およびCε4ドメインを介して二量体化する。IgMおよびIgAは、それぞれ10個および4個の抗原結合部位を有する多量体構造を形成する。
【0303】
ここで提供するHABP免疫グロブリンキメラポリペプチドは、完全長免疫グロブリンポリペプチドを含む。あるいは、免疫グロブリンポリペプチドは、完全長より短く、すなわち重鎖、軽鎖、Fab、Fab
2、FvまたはFcを含む。一例として、HABP免疫グロブリンキメラポリペプチは単量体またはヘテロまたはホモ多量体および特に二量体または四量体として集合する。種々の構造の鎖または基本単位は単量体およびヘテロおよびホモ多量体の集合に利用できる。例えば、HABPポリペプチドは、免疫グロブリン分子のC
H、C
L、V
HまたはV
Lドメインの全てまたは一部を含む、免疫グロブリン分子の全てまたは一部と融合できる(例えば、米国特許番号5,116,964参照)。キメラHABPポリペプチドは、適当な核酸分子で形質転換した哺乳動物細胞により容易に産生および分泌され得る。分泌型形態は、HABPポリペプチドが重鎖二量体;軽鎖単量体または二量体;および最大全4個までの可変領域アナログが置換されているヘテロ四量体を含む、HABPポリペプチドが1個以上の軽または重鎖に融合している重および軽鎖ヘテロ四量体に存在するものを含む。ある例において、1個または1個を超える核酸融合分子を宿主細胞に形質転換して、多量体のHABP部分が同一または異なる多量体を形成できる。ある例において、非HABPポリペプチド軽−重鎖可変様ドメインが存在し、それによりヘテロ二官能性抗体を産生する。ある例において、キメラポリペプチドは、ヒンジジスルフィドを欠く免疫グロブリン分子の一部に融合させることができ、ここで、2個のHABPポリペプチド部分の非共有結合または共有結合相互作用は、分子をホモまたはヘテロ二量体に会合させる。
【0304】
(a) Fcドメイン
典型的に、HABPキメラタンパク質の免疫グロブリン部分は免疫グロブリンポリペプチドの重鎖、もっとも一般的には重鎖の定常ドメインを含む。ヒトIgGサブタイプの重鎖定常領域の配列の例は配列番号355(IgG1)、配列番号356(IgG2)、配列番号357(IgG3)および配列番号358(IgG4)に示す。例えば、配列番号355に示す重鎖定常領域について、C
H1ドメインはアミノ酸1〜98に対応し、ヒンジ領域はアミノ酸99〜110に対応し、C
H2ドメインはアミノ酸111〜223に対応し、C
H3ドメインはアミノ酸224〜330に対応する。
【0305】
一例として、免疫グロブリンポリペプチドキメラタンパク質は免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含み得る。典型的に、このような融合は、少なくとも官能的に活性なヒンジ、免疫グロブリン重鎖の定常領域のC
H2およびC
H3ドメインを含む。例えば、IgG1の完全長Fc配列は、配列番号355に示す配列のアミノ酸99〜330を含む。hIgG1のFc配列の例は配列番号359およびに示し、配列番号355のアミノ酸100〜110に対応するヒンジ配列のほとんど全ておよび配列番号355に示すC
H2およびC
H3ドメインの完全配列を含む。Fcポリペプチドの他の例は、配列番号212に示すFcポリペプチドである。Fcポリペプチドの他の例は、PCT出願WO93/10151に示され、ヒトIgG1抗体のN末端ヒンジ領域からFc領域の天然C末端に延びる単一鎖ポリペプチドである(配列番号359)。結合が成される正確な部は重要ではない:特定の部位は周知であり、HABPポリペプチドの生物活性、分泌または結合特性を最適化するように選択できる。例えば、Fcポリペプチド配列の他の例は、配列番号355に示す配列のアミノ酸C109またはP113から開始する(例えば、米国公開番号2006/0024298参照)。
【0306】
hIgG1 Fcに加えて、他のFc領域はまたここに提供するHABPキメラポリペプチドに包含され得る。例えば、Fc/FcγR相互作用が仲介するエフェクター機能を最小化するとき、例えば、IgG2またはIgG4のFcのような、補体またはエフェクター細胞をほとんど集合させないIgGアイソタイプとの融合が意図される。さらに、Fc融合体は、IgG(ヒトサブクラスIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4を含む)、IgA(ヒトサブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgEおよびIgMクラスの抗体を含むが、これらに限定されない抗体クラスのいずれかに属する免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる免疫グロブリン配列である。さらに、リンカーを使用して、Fcキメラを産生するためにFcを他のポリペプチドに共有結合的に結合できる。
【0307】
修飾Fcドメインはまたここでは、HABPポリペプチドとのキメラにおける使用のために意図される。いくつかの例において、Fc領域を、FcRへの結合が変えられるように修飾し、それゆえに、野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクター機能から変えられた(すなわち多いまたは少ない)エフェクター機能がもたらされる。それゆえに、修飾Fcドメインは、Fc受容体に対する高または低親和性または親和性なしを含むが、これらに限定されない改変された親和性を有し得る。例えば、異なるIgGサブクラスは、FcγRsに対して異なる親和性を有し、IgG1およびIgG3が典型的にIgG2およびIgG4よりも実質的に良好に受容体に結合する。さらに、異なるFcγRsは異なるエフェクター機能を仲介する。FcγR1、FcγRIIa/cおよびFcγRIIIaは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有する細胞内ドメインを有することにより特徴付けられる、免疫複合体誘発活性化の正のレギュレーターである。FcγRIIbは、しかしながら、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を有し、それゆえに阻害性である。ある例においては、ここで提供されるHABPポリペプチドFcキメラタンパク質は、補体タンパク質C1qへの結合を増強するように修飾され得る。さらに、Fcは、FcRnへのその結合を変えるように、それによりHABP−Fcキメラポリペプチドの薬物動態が改善されるように、修飾できる。それゆえに、受容体に対するFc領域の親和性改変は、Fcドメインと関連するエフェクター機能および/または薬物動態特性を調節できる。修飾Fcドメインは、当業者に知られており、文献に記載されており、修飾の例について例えば米国特許番号5,457,035;米国特許公開番号US2006/0024298;および国際特許公開番号WO2005/063816を参照のこと。
【0308】
典型的に、ポリペプチド多量体は、2個の同一または異なるHABPポリペプチドのFcポリペプチドへの、直接的または間接的結合により創製した、2個のキメラタンパク質の二量体である。ある例において、HABP−Fcキメラタンパク質をコードする遺伝子融合体を適当な発現ベクターに挿入する。得られたHABP−Fcキメラタンパク質は該組み換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞で発現でき、抗体分子そっくりの集合を可能にし、ここで、Fc部分の間に鎖間ジスルフィド結合が形成され、2価HABPポリペプチドが得られる。
【0309】
得られたFc部分を含むキメラポリペプチドおよびそこから形成された多量体プロテインAまたはプロテインGカラム上の親和性クロマトグラフィーにより容易に精製できる。ヘテロ二量体の産生のために、さらなる精製工程が必要であるかもしれない。例えば、異なるHABPキメラポリペプチドをコードする2個の核酸を細胞に形質転換したとき、ヘテロ二量体の形成は、Fcドメインを担持するHABPキメラ分子が同様にジスルフィド結合ホモ二量体として発現されるため、生化学的に達成されなければならない。それゆえに、ホモ二量体は、鎖間ジスルフィドの破壊に好ましいが、鎖内ジスルフィドに作用しない条件下で減少され得る。典型的に、異なるHA結合ドメイン部分を有するキメラ単量体を等モル量で混合し、酸化してホモおよびヘテロ二量体の混合物を形成させる。この混合物の成分をクロマトグラフ法により分離する。あるいは、このタイプのヘテロ二量体の形成を、遺伝子操作により偏向させ、HABPポリペプチド、続いてhIgGのFcドメイン、続いてc−junまたはc−fosロイシンジッパーのいずれかを含むHABP融合分子を発現できる(下記参照)。ロイシンジッパーは優勢にヘテロ二量体を形成するため、望むとき、それらを使用してヘテロ二量体形成を誘導できる。
【0310】
Fc領域を含むHABPキメラポリペプチドはまた金属キレートまたは他のエピトープを有するタグを含むように操作できる。タグ付けされたドメインは、金属キレートクロマトグラフィーおよび/または抗体による急速な精製に使用でき、バイオアッセイにおけるウェスタンブロット、免疫沈殿または活性枯渇/ブロッキングの検出を可能にできる。
【0311】
HABP−Fcキメラポリペプチドの例は、TSG−6結合モジュール(TSG−6−LM)およびFcの融合タンパク質を含む。TSG−6−LM−Fcの例は配列番号212に示し、配列番号211に示すヌクレオチドの配列によりコードされる。さらに、例えばTSG−6−Fc分子の例を含むHABP−Fc分子は、所望によりエピトープタグまたは発現および分泌のためのシグナルを含んでよい。例えば、配列番号212に示すTSG−6−LM−Fcキメラポリペプチドの例は、ヒト免疫グロブリン軽鎖カッパ(κ)リーダーシグナルペプチド配列(配列番号210)、ヒトIgG1重鎖のFcフラグメント(配列番号204)およびヒトTSG−6結合モジュール(配列番号207)を含む。TSG−6−LM−FcキメラポリペプチドをコードするcDNA配列は配列番号211に示す。ヒトIgG1重鎖およびヒトTSG−6結合モジュール領域をコードするDNAは、6bp AgeI制限酵素開裂部位および4個のさらなるアミノ酸(DKTH;配列番号209)をコードする12bp配列であるGACAAAACTCAC(配列番号208)で結合する。
【0312】
(2) ロイシンジッパー
ここに提供する方法において使用するためのHABPポリペプチド多量体の他の製造方法は、ロイシンジッパードメインの使用を含む。ロイシンジッパーは、それらが存在するタンパク質の多量体化を促進するペプチドである。典型的に、ロイシンジッパーは、いくつかのタンパク質における保存ドメインとして存在する4〜5個のロイシン残基を含む反復する七組のモチーフを意味する用語である。ロイシンジッパーは、短、平行コイルドコイルとして折りたたまれ、それらがドメインを形成するタンパク質のオリゴマー化を担うと考えられている。ロイシンジッパードメインにより形成される二量体は、(abcdefg)nと命名された七組反復により安定化され(例えば、McLachlanおよびStewart(1978) J. Mol. Biol. 98:293参照)、ここで残基aおよびdは一般的に疎水性残基であり、dはロイシンであり、これは螺旋の同じ面に並ぶ。逆に荷電された残基が一般に位置gおよびeに存在する。それゆえに、2個の螺旋ロイシンジッパードメインから形成された平行コイルドコイルにおいて、第一螺旋の疎水性側鎖により形成される“ノブ”が、第二螺旋の側鎖間に形成される“穴”に充填されている。
【0313】
ここで多量体化ドメインとして使用するロイシンジッパーの例は、ロイシンジッパードメインを発現する2個の核トランスフォーミングタンパク質であるfosおよびjunのいずれかまたはマウス癌原遺伝子の産物c−mycに由来する。ロイシンジッパードメインはこれらのタンパク質で生物活性(DNA結合)に必須である。核癌遺伝子fosおよびjunの産物は、ヘテロ二量体を優勢に形成するロイシンジッパードメインを含む(O’Shea et al. (1989) Science, 245:646; Turner and Tijian (1989) Science, 243:1689)。例えば、ヒト転写因子c−junおよびc−fosのロイシンジッパードメインは、1:1化学量論で安定なヘテロ二量体を形成することが示されている(例えば、Busch and Sassone-Corsi (1990) Trends Genetics, 6:36-40; Gentz et al., (1989) Science, 243:1695-1699参照)。jun−junホモ二量体も形成されることが示されているが、それらはjun−fosヘテロ二量体より約1000倍安定性が低い。
【0314】
それゆえに、典型的にここで提供されるHABPポリペプチド多量体は、jun−fos組み合わせを使用して産生する。一般的に、c−junまたはc−fosのいずれかのロイシンジッパードメインを、遺伝子操作融合遺伝子により、インフレームでポリペプチドのHABPのC末端と融合する。c−junおよびc−fosロイシンジッパーのアミノ酸配列の例は、それぞれ配列番号362および363に示す。ある例においては、ロイシンジッパーの配列は、ジスルフィド結合の形成を可能にするようなシステイン残基付加またはペプチド濃度測定を容易にするためのC末端へのチロシン残基付加によるように、修飾できる。このような修飾c−junおよびc−fosロイシンジッパーによりコードされるアミノ酸の配列の例を、それぞれ配列番号362および363に示す。さらに、HABPポリペプチドとロイシンジッパーの結合は直接であってよくまたは例えばIgGのヒンジ領域または種々の長さおよび組み合わせのグリシン、セリン、スレオニンまたはアラニンのような小アミノ酸の他のポリペプチドリンカーのような可動性リンカードメインを用い得る。ある例においては、コードされるポリペプチドのC末端からのロイシンジッパーの分離を、例えば、トロンビン開裂部位のようなプロテアーゼ開裂部位をコードする配列との融合により行うことができる。さらに、キメラタンパク質を、金属キレートクロマトグラフィーでの急速な精製を可能にする例えば、6XHisタグおよび/またはウェスタンブロット、免疫沈殿または活性枯渇/ブロッキングバイオアッセイでの検出を可能にするための例えばmycタグのような抗体が接近可能なエピトープによりタグ付けされ得る。
【0315】
多量体化ドメインとして使用するロイシンジッパードメインの他の例は、出芽酵母の窒素の一般的制御(GCN4)代謝に関与する遺伝子のファミリーの転写アクティベーターとして機能する核タンパク質に由来する。タンパク質は二量体化でき、GCN4の認識配列を含むプロモータ配列を結合し、それにより窒素欠乏の際に転写を活性化する。二量体複合体を形成できるGCN4ロイシンジッパーの配列の例を配列番号364に示す。GCN4ロイシンジッパードメインを表す合成ペプチドのaおよびd残基におけるアミノ酸置換(すなわち配列番号364に示す配列におけるアミノ酸置換)は、ロイシンジッパードメインのオリゴマー化特性を変えることが判明している。例えば、位置aの全残基をイソロイシンに変えても、ロイシンジッパーはまだ平行二量体を形成する。この変更に加えて、位置dの全ロイシン残基をイソロイシンに変えたとき、得られたペプチドは、溶液中で三量体平行コイルドコイルを本質的に形成する。三量体を形成できるこのようなGNC4ロイシンジッパードメインの配列の例を配列番号365に示す。位置dの全アミノ酸のイソロイシンでの置換および位置aのロイシンでの置換は、四量体化するペプチドを生じる。このような四量体を形成できるGCN4のロイシンジッパードメインの配列の例を配列番号366に示す。これらの置換を含むペプチドは、オリゴマー形成機構が上に記載し、配列番号364に示すGCN4のような伝統的ロイシンジッパードメインのものと同様であると考えら得るため、なおロイシンジッパードメインと呼ぶ。
【0316】
(3) サブユニット間のタンパク質−タンパク質相互作用
ここでの方法において使用するために提供されるHABPを修飾するために使用する他のタイプの多量体化ドメインの例は、多量体化が、異なるサブユニットポリペプチド間のタンパク質−タンパク質相互作用により促進されるものである。このような多量体化ドメインの例は、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)とAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)のそのアンカリングドメイン(AD)の機構に由来する。それゆえに、ヘテロ多量体HABPポリペプチドは、HABPポリペプチドのHA結合ドメインのようなHABPポリペプチドをコードする核酸と、PKAのRサブユニット配列をコードする核酸(すなわち配列番号367)の結合(直接的または間接的)により産生できる。これは、Rサブユニットにより行われる二量体の自発的形成により、ホモ二量体分子をもたらす。相前後して、他のHABPポリペプチド融合を、他のHABPポリペプチドをコードする核酸とAKAPのAD配列をコードする核酸配列に結合することにより産生できる(すなわち配列番号368)。宿主細胞へのHABPキメラ成分の同時形質移入に続くような2成分の同時発現により、二量体Rサブユニットは、AD配列に結合するためのドッキング部位を形成し、ヘテロ多量体分子をもたらす。この結合事象は、さらに例えば、ジスルフィド結合のような共有結合的結合により安定化できる。ある例において、可動性リンカー残基を、HABPポリペプチドをコードする核酸と多量体化ドメインの間に融合できる。他の例において、HABPポリペプチドをコードする核酸の融合は、共有結合的結合を促進するためにRサブユニットのアミノ末端に隣接して取り込まれたシステイン残基を含むRサブユニットをコードする核酸へである(例えば、配列番号369参照)。同様に、パートナーHABPポリペプチドをコードする核酸の融合は、ADのアミノ末端およびカルボキシル末端両者へのシステイン残基の取り込みを含むADサブユニットをコードする核酸にである(例えば、配列番号370参照)。
【0317】
iv. 他の多量体化ドメイン
ここでの方法において使用するために提供されるHABPの多量体化に使用できる他の多量体化ドメインは当業者に知られており、別々に産生され、HABP融合体として発現される2個以上のポリペプチドのタンパク質−タンパク質相互作用を促進するあらゆるものである。2個のキメラポリペプチドのタンパク質−タンパク質相互作用を提供するために使用できる他の多量体化ドメインの例は、バルナーゼ−バルスターモジュール(例えば、Deyev et al., (2003) Nat. Biotechnol. 21:1486-1492参照);特定のタンパク質ドメインの使用(例えば、Terskikh et al., (1997) Proc Natl Acad Sci USA 94: 1663-1668 and Muller et al., (1998) FEBS Lett. 422:259-264参照);特定のペプチドモチーフの使用(例えば、de Kruif et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:7630-7634 and Muller et al., (1998) FEBS Lett. 432: 45-49);および安定性を高めるためのジスルフィド架橋の使用(de Kruif et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:7630-7634 and Schmiedl et al., (2000) Protein Eng. 13:725-734)を含むが、これらに限定されない。
【0318】
b. HA結合を改善するための変異
さらなる例において、ここでの方法において使用するためにここで提供されるのは、他のGAGsと比較してヒアルロナンへの高い特異性を示すためにアミノ酸置換によってのように修飾されたHABP類である。例えば、ここで提供されるのは、アミノ酸残基20、34、41、54、56、72および/または84および特にアミノ酸残基20、34、41および/または54(配列番号360に示すアミノ酸残基に対応)にアミノ酸置換を含む変異体TSG−6−LMである。置換アミノ酸はあらゆる他のアミノ酸残基でよく、一般的に非塩基性アミノ酸残基へである。例えば、アミノ酸置換はAsp(D)、Glu(E)、Ser(S)、Thr(T)、Asn(N)、Gln(Q)、Ala(A)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Phe(F)、Tyr(Y)またはTrp(W)へであり得る。1箇所または複数個所アミノ酸置換はヘパリンへの結合を減少させる。アミノ酸置換を含まないTSG−6−LMのヘパリンへの結合と比較して、結合は少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍以上減少できる。ここで提供される方法において試薬として使用するためのTSG−6−LM変異体の例は、K20A/K34A/K41A。それゆえに、例えば、ヘパリンへの結合は、ヒアルロナンへの特異性が高まるように減少される。変異体TSG−6−LMは多量体化ドメインに直接的または間接的に結合して、多量体を産生する。例えば、ここでの方法に使用するための試薬の例はTSG−6−LM(K20A/K34A/K41A)−Fcである。
【0319】
c. 検出のためのHA結合タンパク質修飾
ここに提供する診断方法において使用するために、HA結合タンパク質は、検出可能タンパク質または検出を容易にする部分を含むために修飾できる。
【0320】
i. 検出可能タンパク質または部分との結合
ここに提供する診断方法において使用するためのHA結合タンパク質は、ペプチドタグ、放射性標識、蛍光分子、化学発光分子、生物発光分子、Fcドメイン、ビオチン、検出可能な反応を触媒するか検出可能な生成物の形成を触媒する酵素群および検出可能な化合物と結合するタンパク質を含むが、これらに限定されない検出可能な部分と結合するように修飾できる。タンパク質および検出を容易にする化合物または部分を含む検出可能な部分は当業者に知られる。検出可能な部分はHABPの検出および/または精製を容易にするために使用できる。
【0321】
一例として、HA結合タンパク質は、検出可能タンパク質または検出可能シグナルを誘発するタンパク質への結合により修飾する。検出可能タンパク質または検出可能シグナルを誘発するタンパク質は、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質、受容体または検出できる造影剤、発色団、化合物またはリガンドと結合するおよび/または輸送するトランスポータータンパク質から選択できる。例えば、検出可能タンパク質または検出可能シグナルを誘発するタンパク質は緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP)である。
【0322】
検出可能な標識をここに提供する診断方法のいずれでも使用できる。検出可能な標識の例は、例えば、化学発光部分、生物発光部分、蛍光部分、放射性核種および金属を含む。標識を検出する方法は当分野で周知である。このような標識は、例えば、目視により、蛍光スペクトロスコピーにより、反射率測定により、フローサイトメトリーにより、X線により、磁気共鳴画像法(MRI)および磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)のような種々の磁気共鳴方法により検出できる。検出方法はまたコンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)、電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)、高解像度コンピュータ断層撮影法(HRCT)、下環状断層撮影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、スパイラルコンピュータ断層撮影法および超音波断層法を含む種々の断層撮影方法のいずれも含む。
【0323】
このようなタンパク質の例は、例えば、コメツキムシルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼまたはベータ−グルクロニダーゼ(GusA)のようなルシフェラーゼ群のような、検出可能な反応を触媒できるまたは検出可能な生成物の形成を触媒する酵素群である。またこのようなタンパク質の例は、緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP)のような蛍光タンパク質を含む、検出可能シグナルを放出するタンパク質である。冷光または蛍光タンパク質のような検出可能シグナルを放出できるまたは検出可能な反応を触媒できるタンパク質をコードする種々のDNA配列は知られており、ここに提供する方法において使用できる。発光タンパク質をコードする遺伝子の例は、例えば、ビブリオ・ハーベイの細菌ルシフェラーゼ(Belas et al., (1982) Science 218:791-793)、ビブリオ・フィシェリの細菌ルシフェラーゼ(Foran and Brown, (1988) Nucleic acids Res. 16:777)、ホタルルシフェラーゼ(e Wet et al., (1987) Mol. Cell. Biol. 7:725-737))、オワンクラゲのエクオリン(Prasher et al., (1987) Biochem. 26:1326-1332)、ウミシイタケのウミシイタケルシフェラーゼ(Lorenz et al, (1991) Proc Natl Acad Sci USA 88:4438-4442)およびオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(Prasher et al., (1987) Gene 111:229-233)からの遺伝子を含む。細菌ルシフェラーゼのluxAおよびluxB遺伝子を融合して融合遺伝子(Fab
2)を産生でき、これは発現して完全な機能的ルシフェラーゼタンパク質を産生できる(Escher et al., (1989) PNAS 86:6528-6532)。
【0324】
ここに提供する診断方法において使用するためにHA結合タンパク質と結合できる検出可能タンパク質の例はまた、トランスフェリン受容体またはフェリチンのような検出できる造影剤、発色団または化合物またはリガンドと結合できるタンパク質;および大腸菌β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)およびアルカリホスファターゼのようなレポータータンパク質を含む。検出可能タンパク質の例は受容体、金属結合タンパク質(例えば、シデロホア類、フェリチン類、トランスフェリン受容体)、リガンド結合タンパク質および抗体を含むが、これらに限定されない、検出可能な化合物と特異的に結合できるタンパク質である。
【0325】
HABPはまたタンパク質またはペプチドタグと結合できる。一例として、HA結合タンパク質はFcドメインと結合する。タンパク質およびペプチドタグは、ヘキサHisタグ(配列番号54)、赤血球凝集素タグ(配列番号420)、FLAGタグ(配列番号55)、c−mycタグ(配列番号419)、VSV−Gタグ(配列番号421)、HSVタグ(配列番号422)およびV5タグ(配列番号415)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)およびグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)を含むが、これらに限定されない。
【0326】
検出可能な標識を、組み換え方法または化学的方法によりHABPにカップリングまたは結合できる。例えば、結合は、タンパク質を、直接的または間接的にペプチドリンカーまたは化学的リンカーのようなリンカーに結合することにより行うことができる。リンカーは、約5〜200アミノ酸のポリ−グリシン配列のようなポリペプチド配列であり得る。プロリン残基は、リンカーにより顕著な二次的構造要素、すなわち、α−螺旋/β−シートが形成されることを阻止するためにポリペプチドリンカーに取り込むことができる。可動性リンカーの例は、中間部プロリンを伴うグリシン鎖を含むポリペプチドである。他の例において、化学的リンカーを使用して、合成的または組み換えにより産生した結合および標識ドメインサブシーケンスを接続する。このような可動性リンカーは当業者に知られている。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーはShearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alaから入手可能である。これらのリンカーは、所望によりアミド結合、スルフヒドリル結合またはヘテロ官能性結合を含んでよい。
【0327】
4. 診断使用のためのHA結合タンパク質の選択
診断剤として使用するのに適切なHA結合タンパク質は、HAに対する特異性または親和性、溶解度、ペプチド安定性、均一性、発現および精製の容易さ、発現ペプチドのバッチ間最小偏差およびHA結合および検出における低サンプル変動を含むが、これらに限定されない1個以上の所望の特性または活性に基づき選択できる。ある例において、単一ポリペプチド診断剤が、複数ポリペプチド成分を有する診断剤よりも意図される。例えば、完全結合タンパク質の非存在下でHAに結合する結合モジュール。ここに提供するHABPがヒアルロナンに結合する能力は、HA、ヘパリンおよびコンドロイチン硫酸類AまたはC、ヘパラン硫酸類またはデルマタン硫酸類のような他のグリコサミノグリカン類とのELISAベースのアッセイ、競合的結合アッセイを含むが、これらに限定されない当分野で周知の方法により評価できる。HA結合活性を評価するアッセイの例は、ここにセクションDおよび実施例において提供する。
【0328】
D. アッセイおよび分類
ここで提供される方法は、組織サンプルまたは体液サンプルのような1個または複数のサンプル中のヒアルロナン(HA)の発現またはレベルのアッセイに基づく。ここでの方法は、サンプル中のヒアルロナン発現またはレベルを評価する、調べる、決定する、定量化するおよび/または他の方法で特異的に検出するためのヒアルロナン結合タンパク質コンパニオン診断(TSG−6−LM、多量体またはその変異体のようなHABP)を使用する結合方法に基づく。アッセイはインビトロまたはインビボで実施できる。対照または参照サンプルと比較することによりまたは予め決定したレベルに基づき分類することにより、このような値をヒアルロナン関連疾患または状態の診断または予後診断のために、ヒアルロナン分解酵素治療に対するヒアルロナン関連疾患または状態を有する対象の応答性を予測するためにおよび/またはヒアルロナン分解酵素治療で処置しているヒアルロナン関連疾患または状態を有する対象の処置効果をモニターするまたは予測するために使用できる。例えば、ここに記載するとおり、HAレベルおよび程度は、ヒアルロニダーゼまたは修飾ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)のようなヒアルロナン分解酵素での処置への応答性と特異的に関連することが判明した。
【0329】
上記例のいずれにおいても、ヒアルロナン関連疾患または状態は、ヒアルロナンレベル上昇が疾患または状態の原因として、結果としてまたは他で観察される疾患および状態を言う。ヒアルロナン関連疾患または状態の例は、高間質性流体圧、癌および特に高ヒアルロナン腫瘍、浮腫、ディスク圧、炎症性疾患と関連するものおよびヒアルロナンと関連する他の疾患を含むが、これらに限定されない。ある例において、ヒアルロナン関連疾患および状態は、腫瘍のような上昇した間質性流体圧、低下した血管体積および/または組織における上昇した水含量と関連する。特に、ヒアルロナン関連疾患および状態は、高ヒアルロナン腫瘍、例えば、末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌、結腸癌および他の癌のような固形腫瘍を含む腫瘍を含むが、これらに限定されない。
【0330】
一例として、ヒアルロナンのレベルまたは発現に基づき、患者または対象を抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置のために選択できる。例えば、対象からのサンプルを、TSG−6−LM、多量体またはその変異体のようなヒアルロナン結合タンパク質(HABP)コンパニオン診断と接触させ、HABPのサンプルへの結合を、サンプル中のヒアルロナンの量を決定するために検出できる。ここに記載するとおり予め決定した選択または分類基準に基づき、患者をヒアルロナン関連疾患または状態として診断し、それゆえに疾患または状態の処置のために選択できる。また、ここに記載するとおり予め決定した選択または分類基準に基づき、ここでの方法は対象の予後診断に使用できる。疾患または状態の経過によって、治療剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の投与量、処置スケジュールおよび/または投与レジメをそれに応じて最適化し、調節できる。ここでの具体例において、ここに記載するとおり予め決定した選択または分類基準に基づき、患者または対象を、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼまたは修飾ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)のようなヒアルロナン分解酵素での処置に応答性でると予測される処置に対して選択できる。それゆえに、本方法は、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素による処置の効果の予測に使用できる。
【0331】
ここでの方法の例において、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置の効果は、処置の経過中のヒアルロナンの発現またはレベルのモニタリングにより決定できる。それゆえに、本方法は、疾患状態および/または回復をモニタリングする処置後方法であり、この情報を使用して、個々の状態情報により対象の処置の経過を変えることができる。例えば、対象からのサンプルを、ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)コンパニオン診断、例えばTSG−6−LM、多量体またはその変異体と接触させて、HABPのサンプルへの結合を、サンプル中のヒアルロナンの量を決定するために検出できる。サンプル中のヒアルロナンの発現またはレベルを、ヒアルロナンレベルまたは発現の差を評価するために参照または対照サンプルと比較できる。例えば、健常または正常対象と比較した疾患対象における上昇したまたは蓄積したヒアルロナンレベルはヒアルロナン関連疾患または状態(例えば腫瘍または癌)の指標であり、ヒアルロナン発現またはレベルの程度は疾患高攻撃性と相関する。このような方法において、対照または参照サンプルは健常対象からのサンプルであり、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置前の対象由来のベースラインサンプル(処置前参照)または対象からの抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の直前の投与の前のサンプルである。例えば、患者応答モニタリングのために、アッセイを治療開始時に行い、サンプル(例えば組織または体液)におけるヒアルロナンベースライン(または予定された)レベルを確立できる。同じサンプル(例えば組織または体液)を次いで同じアッセイでサンプリングして、ヒアルロナンのレベルをベースラインまたは予定されたレベルと比較する。
【0332】
1. ヒアルロナン測定のためのアッセイ
ここに記載するとおりTSG−6−LM、多量体(例えばTSG−6LM−Fc)またはその変異体のようなHABPコンパニオン診断をしようして、サンプル中のヒアルロナンレベルを評価、定量、決定および/または検出するのは当業者のレベルの範囲内である。アッセイはインビトロまたはインビボアッセイを含む。サンプル中のヒアルロナンの発現またはレベルを評価する、調べる、決定する、定量するおよび/または他の点で特異的に検出するために使用できる結合アッセイの例は、固相結合アッセイ(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射定量アッセイ、蛍光アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイ、ウェスタンブロットおよび免疫組織化学(IHC)または非抗体結合剤を使用する擬似免疫組織化学のような組織化学的方法を含むが、これらに限定されない。ELISA方法のような固相結合アッセイ方法において、例えば、アッセイはサンドイッチ形式でも競合的阻害形式でもよい。他の例において、インビボ造影法を使用できる。
【0333】
a. 組織化学的および免疫組織化学的方法
ヒアルロナン蓄積を評価する方法は、結合するHABPコンパニオン診断の量がサンプル中のHAの量と相関するように、HABPコンパニオン診断がサンプル、例えば組織または細胞サンプル中のHAと結合する能力に基づく。ここに提供するあらゆるHABPコンパニオン診断を使用して、免疫組織化学(IHC)のような細胞化学的または組織化学的方法または非抗体結合剤(例えば擬似免疫組織化学)を使用する組織化学を含むが、これらに限定されない、当業者に知られる組織染色方法を使用して、HAを検出できる。このような組織化学的方法は、腫瘍組織サンプルのようなサンプル中のHAと結合するHABPの量の定量的または半定量的検出を可能にする。このような方法において、組織サンプルを、ここで提供されるHABP試薬および特に組織または細胞関連HAとの結合を可能にする条件下で、検出可能に標識されているまたは検出できるものと接触できる。
【0334】
組織化学により決定したここに提供する方法において使用するためのサンプルは、組織または細胞サンプルのような、そのHAレベルを分析できるあらゆる生物学的サンプルであり得る。例えば、組織サンプルは、新鮮、凍結および/または保存臓器または組織サンプルまたは生検試料または吸引物または細胞を含む、固形組織であり得る。いくつかの例において、組織サンプルは、乳房、結腸、直腸、肺、胃、卵巣、頸、子宮、精巣、膀胱、前立腺、甲状腺および肺の癌腫瘍を含むが、これらに限定されない原発および転移腫瘍のような固形腫瘍から得られる組織または細胞である。具体例において、サンプルは、末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞肺癌、乳癌、結腸癌である癌の組織サンプルである。他の例において、組織サンプルは、原発または培養細胞または細胞株由来の細胞である。細胞は種々の分化段階でよく、正常、前癌性または癌性であってよく、新鮮組織、分散細胞、幹細胞を含む未成熟細胞、中程度の成熟度の細胞および完全に成熟した細胞であり得る。典型的に、ここで提供される方法において使用するために選択される細胞は、癌細胞である。
【0335】
腫瘍が固形腫瘍であるとき、腫瘍細胞の単離は、典型的に外科生検である。対象から腫瘍細胞を回収するために使用できる生検技術は、針生検、CT下針生検、吸引生検、内視鏡生検、気管支鏡生検、気管支洗浄、切開生検、切除生検、パンチ生検、薄片生検、皮膚生検、骨髄生検および電気外科的ループ切除法(LEEP)を含むが、これらに限定されない。典型的に、100mgより多いが、多くても100mg、50mg以下、10mg以下または5mg以下であるように小さくてもよい;または100mg、200mg以上または500mg以上、1gm以上、2gm以上、3gm以上、4gm以上または5gm以上のように大きくてもよい非壊死性、無菌生検または検体を得る。アッセイのために抽出すべきサンプルサイズは、実施するアッセイ数、組織サンプルの健康、癌のタイプおよび対象の状態を含むが、これらに限定されない、多くの因子により得る。腫瘍組織を無菌チューブまたは培養プレートのような無菌容器に入れ、所望により適当な媒体に浸漬できる。
【0336】
生検後に患者から得た組織は、しばしば、通常ホルマリン(ホルムアルデヒド)またはグルタルアルデヒド、例えばまたはアルコール浸漬により固定化する。組織化学的方法のために、腫瘍サンプルを、腫瘍組織の脱水およびパラフィン蝋または当業者に知られた他の固体支持体への包埋(Plenat et al., (2001) Ann Pathol January 21(1):29-47)、染色に適切な切片への組織のスライスおよび、例えば有機溶媒により包埋用固体支持体の除去および保存組織の再水和を含む、選択した組織化学的染色方法による切片の染色のための処理のような、既知技術を使用して処理できる。それゆえに、ここでの方法に使用するためのサンプルは、例えば、防腐剤、抗凝血剤、緩衝液、固定液、栄養剤および抗生物質を含む、組織または細胞サンプルに天然に存在しない化合物を含み得る。
【0337】
ヒアルロナン分解酵素で処置するために対象を選択する方法の例において、腫瘍組織の採取を、一般的に対象をヒアルロナン分解酵素で処置する前に行う。ヒアルロナン分解酵素での腫瘍の治療をモニタリングする方法の例において、対象からの腫瘍組織の採取を、対象がヒアルロナン分解酵素での処置を1回以上受ける前、間または後に行い得る。
【0338】
ここで提供される方法において使用するためのアッセイは、サンプルに存在するHAを組織化学または免疫組織化学を使用して検出するものを含む。組織化学(HC)は、組織抗原またはバイオマーカー、例えば、HAのような細胞または特異的タンパク質を検出するために、抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル抗体)または他の結合パートナーのような結合パートナーを使用する酵素反応に基づく染色方法である。例えば、ここでの方法で使用するための組織化学アッセイは、HABPを細胞または組織と関連するHAの検出のための結合パートナーとして使用するものを含む。典型的に、組織化学プロトコルは、定性的または定量的分析のために、ヒト眼または自動化走査系のいずれかのためにマーカーの存在を可視化する検出系を含む。直接HCアッセイにおいて、結合を、標識された試薬の使用による、組織またはバイオマーカーへの結合パートナー(例えば一次抗体)の結合により直接測定する。間接的HCアッセイにおいて、二次抗体または第二の結合パートナーが、第一結合パートナーの結合の検出のために、それが標識されていないため必要である。
【0339】
このような方法において、一般的にスライドに乗せた組織サンプルを、一般的組織化学技術を使用して標識結合試薬(例えば標識HABP)で染色する。それゆえに、ここで提供するHC方法の例において、HABPコンパニオン診断を、検出され得る部分を含むように修飾する(上のセクション3Cに記載のとおり)。いくつかの例において、HABPコンパニオン診断を、標識結合パートナーまたは抗体を介して検出できる小分子、例えば、ビオチンに結合する。いくつかの例において、IHC方法は、ホースラディッシュペルオキシダーゼでの酵素染色により検出されるHABPタンパク質で染色する。例えば、HABPをビオチニル化し、ストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼのような検出可能タンパク質と結合したアビジンまたはストレプトアビジンを用いて検出できる(下記実施例6参照)。他の例において、HABPコンパニオン診断を、例えば、蛍光タンパク質、生物発光タンパク質または酵素と結合したHABPコンパニオン診断のような直接検出を可能にする検出可能タンパク質と結合する。目的のタンパク質を検出するための、種々の酵素染色方法が当分野で知られる。例えば、酵素相互作用を、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼのような種々の酵素群またはDAB、AECまたはFast Redのような異なる色素原を使用して可視化できる。他の例において、HABPコンパニオン診断を、標識結合パートナーまたは抗体を介して検出できるペプチドまたはタンパク質と結合できる。
【0340】
他の例において、HAを、HABP類の1個以上のエピトープ、HABP結合ドメインまたはそのHA結合フラグメントを認識する標識抗体のような標識二次試薬によりHABPコンパニオン診断を検出する、ここに提供するHABPコンパニオン診断を使用するHC方法により検出する。他の例において、HABPコンパニオン診断を抗HABP抗体を使用して検出する。HABPを検出するために、あらゆる抗HABP抗体を、それがHA検出に使用するHABP、HABP結合ドメインまたはそのHA結合フラグメントに使用する限り、使用できる。例えば、TSG−6またはTSG−6−LMの検出のために、A38およびQ75と命名された抗体のような抗TSG−6結合モジュールモノクローナル抗体を使用できる(Lesley et al. (2002) J Biol Chem 277:26600-26608参照)。抗HABP抗体を検出するために標識してよくまたは一次抗体と結合する二次的抗体を用いて検出してよい。適当な抗HABP抗体の選択は当業者のレベルの範囲内である。
【0341】
得られた染色された抗体を、各々、染色のデジタル画像のような、検出可能シグナルを可視化し、画像を獲得するシステムを使用して可視化する。画像を獲得する方法は当業者に周知である。例えば、サンプルが染色されたら、例えば、正立または倒立光学顕微鏡、走査共焦点顕微鏡、カメラ、走査またはトンネル電子顕微鏡、走査プローブ顕微鏡および赤外線撮像ディテクタのような、あらゆる光学または非光学造影装置を使用して、染色またはバイオマーカー標識を検出できる。いくつかの例において、画像デジタル化により捕獲できる。得られた画像を、次いで、サンプル中のHAの量の定量的または半定量的決定に使用できる。免疫組織化学で使用するのに適切な種々の自動化サンプル処理、走査および分析システムは当分野で利用可能である。このようなシステムは、自動化染色および顕微鏡的走査、コンピュータ化画像分析、連続切片比較(サンプルの配向およびサイズの多様性を制御するために)、デジタル報告作成およびサンプルの記録および追跡(例えば組織切片が置かれるスライド)を含み得る。免疫染色サンプルを含む、細胞および組織上で定量的分析を行うためのデジタル画像処理システムを備えた慣用の光学顕微鏡と組み合わせた細胞造影システムは市販されている。例えば、CAS−200システム(Becton, Dickinson & Co.)参照。特に、検出は手動でも、コンピュータ・プロセッサおよびソフトウェアを含む画像処理技術によってもよい。このようなソフトウェアを使用して、例えば、当業者に知られた方法を使用して、例えば、染色品質または染色強度を含む因子に基づき、画像を設定し、校正し、標準化し、/または確認することができる(例えば公開米国特許出願番号US20100136549参照)。
【0342】
画像を定量的または半定量的に分析し、サンプルの染色強度に基づきスコア化できる。定量的または半定量的組織化学は、抗原または他のタンパク質(例えばHA)のような特定のバイオマーカーの存在を同定および定量するために組織化学に付されているサンプルを、走査およびスコア化する方法を言う。定量的または半定量的方法は、染色密度または染色の量を検出するための造影ソフトウェアまたは熟練技師が数字として結果をランク付けするヒト眼による染色を検出する方法を用い得る。例えば、画像を、画素数アルゴリズム(例えばAperio Spectrumソフトウェア、Automated QUantitatative Analysisプラットフォーム(AQUA(登録商標)プラットフォーム)および染色の程度を測定もしくは定量化または半定量化する他の標準的方法を使用して定量的に分析できる(例えば米国特許番号8,023,714;米国特許番号7,257,268;米国特許番号7,219,016;米国特許番号7,646,905;公開米国特許出願番号US20100136549および20110111435;Camp et al. (2002) Nature Medicine, 8:1323-1327; Bacus, et al.(1997) Analyt Quant Cytol Histol, 19:316-328参照)。強い正の染色(例えば褐色染色)対総染色面積の合計の比を計算し、スコア化できる。
【0343】
免疫組織化学的方法または擬似免疫組織化学的方法のような組織化学的方法を使用して、検出したHAの量を定量し、HA正画素のパーセンテージおよび/またはスコアとして示す。例えば、サンプル中の検出したHAの量を、HA正画素のパーセンテージとして定量できる。いくつかの例において、サンプルに存在するHAの量を、染色面積のパーセンテージ、例えば、HA正画素のパーセンテージとして定量する。例えば、サンプルは、総染色面積と比較して、少なくともまたは凡そ少なくともまたは約0、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上のHA正画素であり得る。
【0344】
ある例において、サンプルにサンプルの組織化学的染色の強度または量の数値表現であり、サンプルに存在する標的バイオマーカー(例えば、HA)の量を表すスコアを付ける。光学密度または面積パーセンテージ値は、例えば整数スケール、例えば、0〜10、0〜5または0〜3で、等級付けしたスコアをもたらし得る。具体例において、サンプル中のヒアルロナンの量を0〜3のスケール、例えば0、HA
+1、HA
+2およびHA
+3で分類する。存在するHAの量はHA画素のパーセンテージと関連し、すなわち、低パーセンテージのHA画素は低レベルのHAを示し、一方高パーセンテージのHA画素は高レベルのHAを示す。スコアを、染色された面積パーセンテージがそれぞれ染色なし、10%未満の染色、10〜25%染色および25%を超える染色を表す0、HA
+1、HA
+2およびHA
+3としてスコア化されるように、パーセンテージのHA正画素と相関させ得る。例えば、比率(例えば強画素染色対総染色面積)が25%を超えるならば、腫瘍組織をHA
+3とスコア化し、比率が10〜25%の強い正の染色対総染色であるならば腫瘍組織をHA
+2とスコア化し、比率が10%未満の強い正の染色対総染色であるならば、腫瘍組織をHA
+1とスコア化し、強い正の染色対総染色が0であるならば、腫瘍組織を0とスコア化する。0またはHA
+1のスコアは、試験サンプル中の低レベルのHAを示し、一方HA
+2またはHA
+3のスコアは、試験サンプル中の高いレベルのHAを示す。
【0345】
b. 固相結合アッセイ
ヒアルロナン蓄積を評価する方法は、結合するHABPコンパニオン診断の量がサンプル中のHAの量と相関するように、HABPコンパニオン診断がサンプル中のHAと結合する能力に基づく。特に固相結合アッセイを使用できる。サンプル中のヒアルロナンの発現またはレベルを評価する、調べる、決定する、定量するおよび/または他の点で特異的に検出するために使用できる結合アッセイの例は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射定量アッセイ、蛍光アッセイ、化学発光アッセイ、生物発光アッセイを含むが、これらに限定されない。例えば、ここで提供されるHABPコンパニオン診断は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)またはサンドイッチELISAまたは競合的ELISAアッセイを含む他の類似の免疫アッセイを含むが、これらに限定されない、当業者に知られるあらゆる結合アッセイを使用して、HA検出に使用できる。ここに提供される方法の例は、腫瘍を有するまたは腫瘍を有することが疑われる対象からの腫瘍組織サンプルまたは体液サンプルのようなサンプル中のHAと結合する、HABPの量の定量的または半定量的検出のためのELISAベースの方法を含む。固相結合アッセイは、HAを体液中で検出するとき、使用できる。
【0346】
ここに記載するとおり、腫瘍組織において高レベルのヒアルロナン産生を示す患者はまた血液で高レベルのヒアルロナンを示す。従って、ここに提供される方法は、腫瘍を有する患者または腫瘍を有することが疑われる患者からの体液サンプル中のヒアルロナン蓄積評価を含む、ヒアルロナン分解酵素での処置に対する対象の応答性を予測する、ヒアルロナン分解酵素での処置について対象を選択するまたはヒアルロナン分解酵素での処置をモニターする方法を包含する。
【0347】
癌のようなHA関連疾患におけるHA産生分析のための体液サンプルは、血清、尿、血漿、脳脊髄液およびリンパ液を含むが、これらに限定されない。対象は、乳房、結腸、直腸、肺、胃、卵巣、頸、子宮、精巣、膀胱、前立腺、甲状腺、肺における原発および転移腫瘍のような癌を有してもまたは有することが疑われてもよい。具体例において、癌は末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌または結腸癌である。
【0348】
ヒアルロナン分解酵素での処置について対象の応答性を予測するまたはヒアルロナン分解酵素での処置について対象を選択する方法の例において、対象からの体液サンプル採取は、一般的に対象をヒアルロナン分解酵素で処置する前に行う。腫瘍のヒアルロナン分解酵素での治療をモニタリングする方法の例において、対象からの体液サンプル採取は、対象がヒアルロナン分解酵素での1回以上の処置を受けている前、途中または後に行い得る。体液サンプル採取はまた対象が1ラウンド以上の放射線および/または化学療法処置のような抗癌治療を受けている前、途中または後にも行い得る。
【0349】
体液サンプルを、次いで、固相結合アッセイを使用して、HAの存在または量について評価する。固相結合アッセイは、体液サンプルの基質(例えばHA)を、固体表面に固定化または不動化された結合剤への基質の結合により検出できる。検出可能な標識(例えば酵素)に結合した基質特異的抗体または結合タンパク質(例えばここに提供するHABP)を適用し、基質と結合させる。抗体または結合タンパク質の量を、次いで検出し、定量する。検出および定量化方法は、比色、蛍光、冷光または放射性方法を含むが、これらに限定されない。検出方法の選択は、使用する検出可能な標識による。ある例において、抗体に結合した酵素を用いる比色反応。例えば、本方法で一般的に用いる酵素群は、ホースラディッシュペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。サンプルに存在する基質の量は生じる色の量に比例する。基質標準を一般的に用いて、定量的精度を改善する。サンプル中のHAの濃度は、標準曲線にデータを内挿することにより計算できる。HAの量を体液サンプルの濃度として表し得る。
【0350】
方法の例において、一般的に標識されていないHABP試薬を、最初に固体支持体に固定化し(例えばマイクロタイタープレートのウェルへのコート)、続いてHAを含む体液サンプル(例えば血清または血漿)とインキュベートしてHAを捕捉する。体液サンプを適当な緩衝液で洗浄後、結合したHAを検出できる。結合したHAを検出するためのある例において、ビオチニル化HABPのような固定化HABPと同一または異なり、標識されている第二のHABP(標識HABP)を使用して、プレート上のHAを結合する。結合していない標識HABPの除去後、結合した標識HABPを検出試薬を使用して検出する。例えば、ビオチンはアビジン検出試薬を使用して検出できる。いくつかの例において、プレートに結合したHABPは、検出に使用するHABPと異なる。他の例において、プレートに結合したHABPおよび検出用HABPは同一である。結合したHAを検出するための他の例において、結合したHAをHABPの添加および続く抗HABP抗体の添加により検出する。例えば、TSG−6またはTSG−6−LMの検出のために、A38およびQ75と命名された抗体のような抗TSG−6結合モジュールモノクローナル抗体を使用できる(Lesley et al. (2002) J Biol Chem 277:26600-26608参照)。抗HABP抗体を検出するために標識してよくまたは一次抗体と結合する二次的抗体を用いて検出してよい。結合したHAを検出するためのさらに別の例において、結合したHAを抗HA抗体で直接検出する。抗HA抗体は当業者に周知であり、例えば、ヒツジ抗ヒアルロン酸ポリクローナル抗体(例えば、Abcam #53842または#93321)を含む。
【0351】
c. インビボ造影アッセイ
ここでのいくつかの例において、HAの量をインビボ造影法を使用して検出する。このような方法において、TSG−6−LM、その多量体(例えばTSG−6LLM−Fc)または変異体のようなHABPを、検出可能部分または造影法により検出され得る部分と結合する。造影法の例は、蛍光造影、X線、磁気共鳴画像法(MRI)および磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)のような磁気共鳴方法およびコンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)、電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)、高解像度コンピュータ断層撮影法(HRCT)、下環状断層撮影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、スパイラルコンピュータ断層撮影法および超音波断層法を含む断層撮影方法を含むが、これらに限定されない。例えば、蛍光造影のために、蛍光シグナルを蛍光顕微鏡または蛍光立体顕微鏡で分析できる。また、高感度造影カメラも使用できる。
【0352】
特に、TSG−6−LM、その多量体(例えばTSG−6LLM−Fc)または変異体のようなHABPを、磁気共鳴画像法(MRI)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放出断層撮影法(PET)、シンチ撮影法、ガンマカメラ、β+ディテクタ、γディテクタ、蛍光造影および生物発光造影を含むが、これらに検出されない方法で撮像するとき、シグナルを提供するかインビボで検出可能なシグナルを誘発する部分で標識するかまたはそれと結合させる。造影/モニタリング方法の例は、磁気共鳴画像法(MRI)および磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)のような種々の磁気共鳴方法のいずれかを含み、またコンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ体軸断層撮影法(CAT)、電子ビームコンピュータ断層撮影法(EBCT)、高解像度コンピュータ断層撮影法(HRCT)、下環状断層撮影法、陽電子放出断層撮影法(PET)、ガンマ線(PET走査でポジトロンおよび電子消滅後)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、スパイラルコンピュータ断層撮影法および超音波断層法を含む種々の断層撮影方法のいずれかも含む。造影法の他の例は、弱光造影、X線、超音波シグナル、蛍光吸収および生物発光を含む。さらに、タンパク質を、蛍光化合物または分子のような発光または他の電磁スペクトル放出化合物で標識できる。検出は発光または他の電磁放射線放出の検出により行い得る。
【0353】
検出可能な標識は、直接検出可能な元素(例えば放射性標識)を含む試薬および間接的に検出可能な元素(例えば反応生成物)を含む試薬を含む。セクションC.3.cはまた検出可能な標識を含む。検出可能な標識の例は放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレートおよび酵素群を含む。検出可能な標識を、化学的または組み換え方法によりHABPに取り込み得る。
【0354】
X線造影に適当な標識は当分野で知られ、例えば、ビスマス(III)、金(III)、ランタン(III)または鉛(II);67銅、67ガリウム、68ガリウム、111インジウム、113インジウム、123ヨウ素、125ヨウ素、131ヨウ素、197水銀、203水銀、186レニウム、188レニウム、97ルビジウム、103ルビジウム、99テクネチウムまたは90イットリウムのような放射性イオン;コバルト(II)、銅(II)、クロム(III)、ジスプロシウム(III)、エルビウム(III)、ガドリニウム(III)、ホルミウム(III)、鉄(II)、鉄(III)、マンガン(II)、ネオジム(III)、ニッケル(II)、サマリウム(III)、テルビウム(III)、バナジウム(II)またはイッテルビウム(III)のような核磁気スピン共鳴同位体;またはローダミンまたはフルオレセインを含む。
【0355】
造影剤は磁気共鳴画像法のために使用される。造影剤の例は、鉄、金、ガドリニウムおよびガリウムを含む。磁気共鳴画像法に適当な標識は当分野で知られ、例えば、鉄、ガリウム、金、ガドリニウム、マグネシウム、
1H、
19F、
13Cおよび
15N標識化合物のような、例えば、フッ素、ガドリニウムキレート、金属および金属酸化物を含む。造影剤におけるキレートの使用は当分野で知られる。断層撮影造影法に適当な標識は当分野で知られ、例えば、
1lC、
13N、
15Oまたは
64Cuのようなβ−エミッターまたは(b)
123Iのようなγ−エミッターを含む。例えば、PETのトレーサーとして、使用できる放射性核種の他の例は、
55Co、
67Ga、
68Ga、
60Cu(II)、
67Cu(II)、
99Tc、
57Ni、
52Feおよび
18Fを含む。TSG−6またはそのFC部分のような試薬を適切な標識に結合できおよび/またはタンパク質はその構成物分子内に放射性標識を含み得る。
【0356】
ここで提供する造影法で有用な放射性核種は、例えば、
11炭素、
11フッ素、
13炭素、
13窒素、
15窒素、
15酸素、
18フッ素、
19フッ素、
24ナトリウム、
32ホスフェート、
42カリウム、
51クロム、
55鉄、
59鉄、
57コバルト、
60コバルト、
64銅、
67ガリウム、
68ガリウム、
75セレン、
81クリプトン、
82ルビジウム、
89ストロンチウム、
92ストロンチウム、
90イットリウム、
99テクネチウム、
103パラジウム、
106ルテニウム、
111インジウム、
117ルテチウム、
123ヨウ素、
125ヨウ素、
131ヨウ素、
133Xenon、
137セシウム、
153サマリウム、
153ガドリニウム、
165ジスプロシウム、
166ホルミウム、
169イッテルビウム、
177Leutium
186レニウム、
188レニウム、
192イリジウム、
198金、
201タリウム、
211アスタチン、
212ビスマスおよび
213ビスマス。当業者は、異なる放射性核種/金属を可視化するために異なる造影法(MRI、例えば)で使用するパラメータを改変できる。
【0357】
蛍光標識も使用できる。これらは、蛍光タンパク質、蛍光プローブまたは蛍光基質を含む。例えば、蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)またはそのホモログまたはRFPのような蛍光タンパク質;蛍光色素(例えば、フルオレセインおよびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)およびOregon Green(登録商標)のような誘導体、ローダミンおよび誘導体(例えば、Texas redおよびテトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC))、ビオチン、フィコエリトリン、AMCA、Alexa Fluor(登録商標)、Li-COR(登録商標)、CyDyes(登録商標)またはDyLight(登録商標)Fluors);tdTomato、mCherry、mPlum、Neptune、TagRFP、mKate2、TurboRFPおよびTurboFP635(Katushka)を含むが、これらに限定されない。蛍光試薬を、使用者の所望の励起および発光スペクトルに基づき選択できる。蛍光開裂生成物を生じる蛍光基質も使用できる。
【0358】
インビボ造影法はHA関連腫瘍または癌の診断に使用できる。このような技術は、生検を使用しない診断を可能にする。HABPの腫瘍への結合の程度またはレベルに基づくインビボ造影法は、癌患者の予後診断にも使用できる。インビボ造影法はまた、体の他の部分への転移癌または循環腫瘍細胞(CTCs)の検出にも使用できる。腫瘍ではない組織の背景ヒアルロナンレベルを確認するのは当業者のレベルの範囲内である。ヒアルロナン発現腫瘍は背景組織より高いレベルのシグナルを有する。ある例において、閾値基準を、正常または健常対象で検出したシグナルとの比較により決定できる。
【0359】
2. 対象の分類
サンプル中のヒアルロナンの量が決定されたら、量を対照または閾値レベルと比較し得る。対照または閾値レベルは、一般的にヒアルロナン関連疾患または状態(例えば腫瘍または癌)の指標である予定した閾値または量である。このようなレベルまたは量は当業者により経験的に決定できる。ここでの方法のための特定の予め決定した選択または分類基準は、ヒアルロナン検出に使用する特定のアッセイおよび試験する特定のサンプルによることは当然である。アッセイが特定のサンプルの試験と適合性があるか否かを決定するのは当業者のレベルの範囲内である。一般的に、インビトロ固相アッセイは体液サンプルの試験に使用する。組織化学または免疫組織化学のような固相アッセイは、一般的に組織サンプルの試験に使用する。予め決定したレベルもしくは量または対照もしくは参照サンプルとの比較を含む方法において、参照は同じタイプのサンプルから同じアッセイおよびHABP試薬(同じ検出可能な部分および検出方法を含む)を使用して製造することも理解される。
【0360】
例えば、予定した閾値は、レベルまたは発現の差異を評価するために、対象集団におけるマーカーの中央または平均レベルまたは量のような参照または対照サンプルにおけるマーカーのレベルまたは量に基づき決定できる。一例として、予定した閾値は、健常対象またはヒアルロナン関連疾患または状態(例えば腫瘍または癌)を有することが知られた対象のサンプル中のヒアルロナンの平均または中央レベルまたは量である。一つの態様において、正常組織または体液サンプルからのヒアルロナンの予定されたレベルまたは量は正常サンプルで観察される平均レベルまたは量である(例えば、分析した全正常サンプル)。他の態様において、正常組織または体液サンプルのヒアルロナンのレベルまたは量は、正常サンプルで観察されるレベルまたは量の中位値である。予定した閾値はまた細胞株または他の対照サンプル(例えば腫瘍細胞株)におけるヒアルロナンのレベルまたは量に基づき得る。下記のとおり、これらの予め決定した値は、同じ検出アッセイで同じHABP試薬を使用して決定した対応する正常サンプルにおけるHAレベルの比較または知識により決定できる。
【0361】
参照または対照サンプルは、正常組織、細胞または体液、例えば、試験するサンプルに順ずるが、異なる対象から単離した組織、細胞または体液のような他の組織、細胞または体液であり得る。対照または参照対象は、正常(すなわち疾患または状態を有しない)である対象または対象の集団、疾患を有するが、検査を受ける対象が有するまたは有することが疑われる疾患または状態のタイプは有しない対象、例えば、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば腫瘍または癌)を有しない対象または類似疾患または状態を有するが、その疾患は重度ではないおよび/または相対的に低いヒアルロナンを発現する他の対象からの類似組織であり得る。例えば、試験する細胞、組織または体液が、癌を有する対象または対象の集団であるとき、マーカーのレベルまたは量を、初期段階のような重篤ではない癌、区別されるまたは他のタイプの癌を有する対象の組織、細胞または体液のマーカーのレベルまたは量と比較できる。他の例において、対照または参照サンプルは、サンプル、低レベルのHAを発現する腫瘍細胞株の例、例えば、HCT 116細胞株、HT29細胞株、NCI H460細胞株、DU145細胞株、Capan−1細胞株およびこのような細胞株を使用して産生した腫瘍モデルからの腫瘍のような相対的に低レベルのHAを発現することが知られる例えば腫瘍細胞株のような、知られた量または相対的量のヒアルロナンを含む体液、組織、抽出物(例えば細胞または核抽出物)、核酸またはペプチド調節物、細胞株、生検、標準または他のサンプルである。
【0362】
ここでの全ての方法において、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば、癌)を有することが疑われるまたは知られた対象からのサンプル中のヒアルロナンのレベルは、参照または正常組織のヒアルロナンレベルの決定と同時に決定してよい。あるいは、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば癌)を有することが疑われるまたは知られた対象からのサンプル中のヒアルロナンのレベルを、正常組織または体液で予め決定したヒアルロナンのレベルと比較してよい。それゆえに、あらゆる検出、比較、決定または評価に用いる正常または健常サンプルまたは他の参照サンプル中のヒアルロナンのレベルは、ヒト患者からのサンプル中のヒアルロナンのレベルまたは量の検出、決定または評価の前に決定されたレベルまたは量であり得る。
【0363】
ヒアルロナンのレベルまたは量を、決定および/またはスコア化し、疾患と関連するヒアルロナンの予め決定した表現型と比較する。特定の疾患、ヒアルロナンの検出に使用するアッセイおよび/または使用するHABP検出試薬により疾患診断の閾値レベルを決定することは当業者のレベルの範囲内である。抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の応答性を分類するためにヒアルロナンの閾値レベルを決定することは当業者のレベルの範囲内である。処置のために対象を診断、予後診断または選択するための腫瘍サンプルまたは体液サンプルの層別化のための方法の例をここに提供する。
【0364】
ヒアルロナンの特定の変化、例えば増加または減少は使用するアッセイによることは理解される。ELISAにおいて、特定の波長の吸光度またはタンパク質の量(例えば標準曲線を使用して決定)の増加または減少の倍率を対照に対して表し得る。RT−PCRのようなPCRアッセイにおいて、発現レベを、標準化のような当分野で知られた方法をしようして、対照発現レベルと比較できる(例えば変化倍率として表す)。
【0365】
ここでの方法の具体例において、対象を、ヒアルロナンの量がサンプル中で上昇していると決定されたならば、抗ヒアルロナン剤での治療の候補として選択する。例えば、健常または正常対象と比較した疾患対象における上昇したまたは蓄積したヒアルロナンレベルはヒアルロナン関連疾患または状態(例えば腫瘍または癌)の指標である。ヒアルロナンは0.5倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍以上上昇し得る。それゆえに、ここでの方法の例において、対象からのサンプル中のヒアルロナンの量を試験するとき、マーカーの検出は、対象からのサンプル中のHAの量(例えば癌性細胞、組織または体液)が、予め決定したレベルまたは量または対照サンプルと比較した決定であり得る。一例として、対象は、予定されたレベルまたは量または対照サンプルと比較して、組織、細胞または体液におけるHAの量が正確にまたは約0.5倍、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、20倍以上上昇しているならば、ヒアルロナン関連疾患または状態を有すると決定する。
【0366】
対象は、対象からのサンプル中(例えば体液または他の体液)のヒアルロナンのレベルまたは量に基づき抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での治療の候補として選択できる。0.010μg/mL、0.015μg/mLおよび一般的に0.02μg/mL、0.03μg/mL、0.04μg/mL、0.05μg/mL、0.06μg/mLを超えるまたはそれ以上のHAは腫瘍または癌の存在と相関する。このような方法を使用して、ここに提供する方法の例において、対象は、血清サンプルのような体液サンプル中のHAの濃度が、0.010μg/mL、0.015μg/mLおよび一般的に0.02μg/mL、0.03μg/mL、0.04μg/mL、0.05μg/mL、0.06μg/mLを超えるまたはそれ以上のHAレベルを含むならば、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置に選択できる。
【0367】
対象は、細胞または組織サンプル中のヒアルロナンのレベルまたは量に基づき、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での治療の候補として選択できる。このような例において、レベルが疾患を示すならば、患者をヒアルロナン関連疾患または状態を有すると診断する。例えば、腫瘍組織の免疫組織化学的方法を使用して、HA
+2またはHA
+3のスコアは疾患の決定因であり得る。例えば、10%を超える、例えば10〜25%または25%を超えるHAの染色対総腫瘍面積のパーセンテージは疾患の指標である。ここでの方法において、サンプルの等級化スコアがHA
+2またはHA
+3サンプルであるならば、対象を抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置に選択する。例えば、高スコア、例えば、HA
+3は、対象がHA富腫瘍を有することを示し、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置から利益を受ける腫瘍の存在の指標であり、それゆえに抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での治療の候補である。他の例において、対象は、染色のパーセンテージに基づき、例えば、HA染色の程度が総染色面積の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%以上および一般的に少なくとも25%以上であるならば、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置に選択できる。
【0368】
抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の効果または処置に対する応答性も、経時的に対象のヒアルロナンのレベルまたは量を比較することによりモニターできる。ヒアルロナンのレベルまたは量の変化は、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の用量またはスケジューリングの最適化に使用できる。本方法において、処置対象からのサンプルにおける、特に腫瘍組織(例えば免疫組織化学または他の類似方法で)評価したHAの発現レベルを予め決定したHAの発現レベルと比較する。ヒアルロナン分解酵素、特に長い半減期(例えばPEGPH20)を有するものの投与後の処置をモニタリングする目的で、モニターするサンプルは、全身レベルの酵素が存在し得る体液ではない。
【0369】
処置モニタリングの目的で、予定されたレベルのHAは正常または健常対象、処置前のベースラインHA値、処置後の同じ対象から前に測定した以前のHAレベルまたは疾患進行または緩解と関連することが知られるHAレベルの分類または層別化であり得る。例えば、参照または対照サンプルと比較してヒアルロナンレベルがほぼ同じまたは低い(または減少している)ならば、処置は有効である可能性があり、処置を継続もしくは中断または変更してよい。例えば、予定されたレベルのHAは正常または健常組織サンプルからのHAレベルであってよく、処置後の対象で測定したHAレベルが正常HAレベルより高いならば、処置を再開または継続する。例えば、予定されたレベルのHAは処置前にベースラインHA値から決定したHAレベルであり、処置の経過をそれに応じて決定できる。例えば、HAのレベルがベースラインHAと同じならば、処置を継続または再開する;HAのレベルがベースラインHAより高いならば、処置を継続または再開するまたは処置を加速または増加する(例えばヒアルロナン分解酵素投与量増加または投与量レジメンサイクルの投与スケジュールを増やすことにより);HAのレベルがベースラインHAより低いならば、処置を継続または再開する、終了するまたは減少または低下させる(例えばヒアルロナン分解酵素の投与量減少または投与量レジメンサイクルの投与スケジュールを減らすことにより)。さらなる例において、予定されたレベルのHAは、同じ対象で前の処置経過中の以前に測定において決定したHAレベルであり得る。例えば、HAのレベルが先に測定したHAと同じならば、処置を継続または再開する;HAのレベルが先に測定したHAより高いならば、処置を継続または再開するまたは処置を加速または増加する(例えばヒアルロナン分解酵素投与量増加または投与量レジメンサイクルの投与スケジュールを増やすことにより);HAのレベルが先に測定したHAより低いならば、処置を継続または再開する、終了するまたは減少または低下させる(例えばヒアルロナン分解酵素の投与量減少または投与量レジメンサイクルの投与スケジュールを減らすことにより)。
【0370】
モニタリング方法または処置の効果を決定する方法において、特定の治療を、個々の応答を最大化するために処置経過中に変えてよい。処置の投与およびスケジューリングを、レベル変動に応じて修飾できる。他の抗癌剤を使用する組み合わせ治療もこのような処置方法で用い得る。詳細な処置計画を決定することは処置をする医師の技術領域の範囲である。例えば、処置を、中止、減少または頻度を減らすまたは疾患または状態のための他の処置と組み合わせるように、適宜投与量、スケジュール(例えば投与頻度)またはレジメを調節するように変更できる。他方で、ヒアルロナンレベルが比較参照または対照サンプルより高いならば、患者は処置に応答していない可能性がある。このような場合、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)または組み合わせ治療の特定の性質およびタイプを修飾または改変できる。他の例において、投与、量、スケジュールおよび/またはレジメを、適宜、増加または頻度を増やすように調節できる。正確な処置経過を決定することは処置医のレベルの範囲内である。
【0371】
処置の効果をモニタリングする目的で、ヒアルロナンの予定されたレベルまたは量を経験的に決定でき、それによって該レベルまたは量は処置が有効であることを示す。これらの予め決定した値は、同じ検出アッセイで同じHABP試薬を使用して決定した対応する対応する正常サンプルまたは疾患対象サンプルにおけるHAレベルの比較または知識により決定できる。例えば、定量的スコアスキームを使用した免疫組織化学的方法で評価して、高HAレベル(例えばHA
+3)または25%を超えるヒアルロナンに対する腫瘍染色パーセンテージは、広範な癌タイプの悪性疾患の存在と相関し、患者が処置に応答していないことを示す。他の例において、血漿のような体液における0.015μg/mLを超えるおよび一般的に0.02μg/mLを超える、例えば0.03μg/mL、0.04μg/mL、0.05μg/mLまたは0.06μg/mL HAのHAレベルは進行した疾患段階と関連する。他方で、サンプルの等級化スコアが多くてもHA
+2またはHA
+3またはHA染色パーセンテージが多くても25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%以下であるならば、対象は処置に応答性の可能性がある。血漿のような体液におけるHAレベルが多くても0.03μg/mL、0.02μg/mL、0.01μg/mL以下であるならば、対象は処置に応答性の可能性がある。
【0372】
ここでの方法において、予め決定したレベルまたは対照または参照サンプルのレベルとの比較は、当業者に知られるあらゆる方法により決定できる。例えば、ヒアルロナンのレベルの参照、対照または予定されたレベルとの比較は、アッセイを実施する機器(例えばコンピュータプラットフォーム)の一部であるまたはそれと互換性があるソフトウェアプログラムまたはインテリジェンスシステムのような自動化システムにより実施できる。あるいは、この比較は、医師または他の訓練されたもしくは経験のある専門家もしくは技術者が実施できる。
【0373】
E. 選択対象の抗ヒアルロナン剤での処置
ここに提供される方法は、腫瘍担持対象の抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置方法を含み、ここで、対象は、腫瘍で検出されたHAのレベルに基づき処置について選択されている。処置方法はまた、例えば、腫瘍阻害または緩解のような処置の効果または例えば、筋骨格副作用のような処置の副作用のような、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での処置の効果を評価する方法も含む。1種以上の別の抗癌剤または抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での治療の副作用の1つ以上を処置するための1種以上の薬物との組み合わせ治療も提供される。
【0374】
1. 抗ヒアルロナン剤
抗ヒアルロナン剤は、ヒアルロナン合成を阻害するまたはヒアルロナンを分解する薬剤を含む。ヒアルロナン分解酵素群のような抗ヒアルロナン剤は、腫瘍および癌または炎症性疾患または状態を含むヒアルロナン関連疾患または状態の処置に使用できる。例えば、ヒアルロナン代謝、分配および機能の変更によるようなHA蓄積は、関節炎、免疫および炎症性障害、肺および血管疾患および癌と関連する(Morohashi et al. (2006) Biochem. Biophys. Res. Comm., 345:1454-1459)。このような疾患はHA合成阻害またはHA分解により処置できる(例えばMorohashi 2006;米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917参照)。ある例において、細胞および組織のヒアルロナンレベルを減少させるこのような処置は、筋骨格副作用のような有害副作用と関連し得る。それゆえに、抗ヒアルロナン剤での処置は、さらにこのような副作用を寛解または減少のコルチコステロイドでの処置を含み得る。
【0375】
a. ヒアルロナン合成を阻害する薬剤
HAは、has−1、has−2およびhas−3と命名されるHAシンターゼ群として同定された3種の関連する哺乳動物遺伝子の生成物である3酵素群により合成される。異なる細胞型は異なるHAS酵素群を発現し、HAS mRNA発現はHA生合成と相関する。腫瘍細胞におけるHAS遺伝子サイレンシングが腫瘍増殖および転移を阻害することが知られている。抗ヒアルロナン剤は、HAシンターゼの発現またはレベルを阻害、減少または下方制御するあらゆる薬物を含む。このような薬物は当業者に知られているまたは同定できる。
【0376】
例えば、HASの下方制御は、HASをコードする1個以上の核酸分子と特異的にハイブリダイズするまたは他に相互作用するオリゴヌクレオチドの提供により達成できる。例えば、ヒアルロナン合成を阻害する抗ヒアルロナン剤は、has遺伝子に対するアンチセンスまたはセンス分子を含む。このようなアンチセンスまたはセンス阻害は、典型的に少なくとも1個の鎖またはセグメントが開裂、分解または他に操作不能となるように、オリゴヌクレオチド鎖またはセグメントの水素結合ベースのハイブリダイゼーションに基づく。他の例において、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、RNAi、リボザイムおよびDNAザイムを用いることができる。HAS1(配列番号219に示す)、HAS2(配列番号220に示す)またはHAS3(配列番号221に示す)の配列に基づきこのような構築物を産生するのは、当業者のレベルの範囲内である。アンチセンスまたはセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能となるためにその標的核酸と100%相補的でなくてもよいことは当分野で理解される。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように、1個以上のセグメントを超えてハイブリダイズできる(例えばループ構造またはヘアピン構造)。一般的に、アンチセンスまたはセンス化合物は、標的核酸内の標的領域と少なくとも70%配列相補性、例えば、75%、80%、85%、90%、95%または100%のように75%〜100%相補性である。センスまたはアンチセンス分子の例は当分野で知られる(例えばChao et al. (2005) J. Biol. Chem., 280:27513-27522; Simpson et al. (2002) J. Biol. Chem., 277:10050-10057; Simpson et al. (2002) Am. J Path., 161:849; Nishida et al. (1999) J. Biol. Chem., 274:21893-21899; Edward et al. (2010) British J Dermatology, 162:1224-1232; Udabage et al. (2005) Cancer Res., 65:6139;および公開米国特許出願番号US20070286856参照)。
【0377】
HA合成阻害剤である抗ヒアルロナン剤の他の例は4−メチルウンベリフェロン(4−MU;7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン)またはその誘導体である。4−MUは、HA合成に必要なUDP−GlcUA前駆体プールを減少させることにより働く。例えば、哺乳動物細胞において、HAはUDP−グルクロン酸(UGA)およびUDP−N−アセチル−D−グルコサミン前駆体を使用してHASにより合成される。4−MUは、UGAが産生される工程を妨害し、それによりUGAの細胞内プールを枯渇させ、HA合成阻害に至る。4−MUは抗腫瘍活性を有することが知られる(例えばLokeshwar et al. (2010) Cancer Res., 70:2613-23; Nakazawa et al. (2006) Cancer Chemother. Pharmacol., 57:165-170; Morohashi et al. (2006) Biochem. Biophys. Res. Comm., 345-1454-1459参照)。600mg/kg/dでの4−MUの経口投与は、B16黒色腫モデルで転移を64%減少させた(Yoshihara et al. (2005) FEBS Lett., 579:2722-6)。4−MUの構造は下に示す。また、4−MUの誘導体、特に6,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンおよび5,7−ジヒドロキシ−4−メチルクマリンは抗癌活性を示す(例えばMorohashi et al. (2006) Biochem. Biophys. Res. Comm., 345-1454-1459参照)。
4−メチルウンベリフェロン(4−MU;C
10H
8O
3)
【化1】
【0378】
さらに抗ヒアルロナン剤の例は、レフルノミド(Arava)、ゲニステインまたはエルブスタチンのようなチロシンキナーゼ阻害剤である。レフルノミドはまたピリミジン合成阻害剤でもある。レフルノミドはリウマチ性関節炎(RA)処置剤として知られ、同種移植ならびに異種移植の拒絶反応の処置にも有効である。HAはRAに直接的または間接的に関与することが知られている(例えばStuhlmeier (2005) J Immunol., 174:7376-7382参照)。チロシンキナーゼ阻害剤はHAS1遺伝子発現を阻害する(Stuhlmeier 2005)。
【0379】
一例として、レフルノミドまたはその誘導体、一般的に1〜100mgの活性薬物、例えば、1mg、5mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mgまたは100mgの薬物を含む錠剤として入手可能である。ヒアルロナン関連疾患および状態、例えばリウマチ性関節炎または腫瘍または癌の処置のために、それを10〜500mg/日、典型的に100mg/日で投与する。疾患または状態の処置の必要に応じて投与を続けてよくまたは連続的に低投与量までテーパリングまたは減少してよい。例えば、関節リウマチの処置のために、レフルノミドを、3日間100mg/日の処置負荷投与量で投与し、その後20mg/日の継続投与量で投与し得る。
【0380】
b. ヒアルロナン分解酵素群
ヒアルロナンは、細胞外マトリックスの必須成分であり、間質性バリアの主な構成物である。ヒアルロナンの加水分解を触媒することにより、ヒアルロナン分解酵素群はヒアルロナンの粘性を下げ、それにより組織透過性を上げ、非経腸的に投与された流体の吸収速度を増加させる。このようなものとして、ヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン分解酵素群は、例えば、他の薬剤、薬物およびタンパク質と共にその分散および送達を促進する展着剤または分散剤として使用される。
【0381】
ヒアルロナン分解酵素群は、交互のβ−1→4およびβ−1→3グリコシド結合を介して互いに結合している二糖類単位であるD−グルクロン酸(GlcA)およびN−アセチル−D−グルコサミン(GlcNAc)の反復からなるヒアルロナンポリマー類を開裂することにより、ヒアルロナンを分解するように働く。ヒヒアルロナン鎖は約25,000二糖反復以上の長さに達し、ヒアルロナンのポリマー類のサイズはインビボで約5,000〜20,000,000Daの範囲であり得る。従って、ここで提供する使用および方法のためのヒアルロナン分解酵素群は、ヒアルロナン二糖鎖またはポリマーの開裂を触媒する能力を有するあらゆる酵素を含む。ある例において、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロナン鎖またはポリマーにおけるβ−1→4グリコシド結合の開裂をする。他の例において、ヒアルロナン分解酵素はヒアルロナン鎖またはポリマーにおけるβ−1→3グリコシド結合の開裂を触媒する。
【0382】
それゆえに、ヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン分解酵素群は、細胞外マトリックスの必須成分であり、間質性バリアの主な構成物であるヒアルロン酸を分解する酵素群のファミリーである。間質性バリアの主構成物であるヒアルロン酸の加水分解を触媒することにより、ヒアルロナン分解酵素群はヒアルロン酸の粘性を下げ、それにより組織透過性を高める。このようなものとして、ヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン分解酵素群は、例えば、他の薬剤、薬物およびタンパク質と共にその分散および送達を促進する展着剤または分散剤として使用される。ヒアルロナン分解酵素群はまた他の注射剤の吸収および分散を高めるアジュバントとして、皮下点滴療法(皮下流体投与)のためにおよび放射線不透過性剤の吸収を改善するために皮下尿路造影における補助剤としても使用される。ヒアルロナン分解酵素群、例えば、ヒアルロニダーゼは眼への適用法、例えば、眼の手術前の局所麻酔における眼球周囲およびテノン嚢下ブロックにおいて使用できる。ヒアルロニダーゼはまた、例えば、眼瞼形成術およびフェースリフトのような美容整形において無動を促進することにより、他の治療および美容的使用も有する。
【0383】
種々の形態のヒアルロニダーゼ群を含むヒアルロナン分解酵素群が製造されており、ヒトを含む対象における治療使用が承認されている。提供する組成物および方法は、これらのおよび他の治療使用を介して、ヒアルロナン関連疾患および状態を処置するために使用できる。例えば、動物由来ヒアルロニダーゼ調製物は、Vitrase(ISTA Pharmaceuticals)、精製ヒツジ精巣ヒアルロニダーゼ、Amphadase(Amphastar Pharmaceuticals)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼおよびHydase(Prima Pharm Inc.)、ウシ精巣ヒアルロニダーゼを含む。あらゆる動物由来ヒアルロニダーゼ調製物をここで提供する方法および使用において使用できると理解される(例えば、米国特許番号2,488,564、2,488,565、2,676,139、2,795,529、2,806,815、2,808,362、5,747,027および5,827,721および国際PCT出願番号WO2005/118799参照)。Hylenex(Halozyme Therapeutics)は、rHuPH20と命名される、可溶性形態のPH20をコードする核酸を含む遺伝子操作されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞から産生されたヒト組み換えヒアルロニダーゼでる。
【0384】
ここで提供される組成物および方法におけるヒアルロナン分解酵素群の例は、可溶性ヒアルロニダーゼ群である。ヒアルロナン分解酵素群の他の例は、ヒアルロナンを開裂する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群を含むが、これらに限定されない。
【0385】
下記のとおり、ヒアルロナン分解酵素群は、膜結合型または細胞から分泌される可溶性形態で存在する。本発明の目的のために、可溶性ヒアルロナン分解酵素群は、ここでの方法、使用、組成物または組み合わせで使用するために提供される。それゆえに、ヒアルロナン分解酵素群がグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを含むおよび/または他の点で膜固定または不溶性であるならば、このようなヒアルロナン分解酵素群は、酵素を分泌型および可溶性とするためにGPIアンカーの切断または欠失により、ここでは可溶性形態で提供される。それゆえに、ヒアルロナン分解酵素群は、切断型変異体、例えばGPIアンカーの全てまたは一部を除去するための切断を含む。ここで提供されるヒアルロナン分解酵素群はまた、可溶性ヒアルロナン分解酵素の対立形質または種変異体または他の変異体を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素群は、アミノ酸置換、付加および/または欠失のような1個以上の変異を一次配列に含み得る。ヒアルロナン分解酵素の変異体は、一般的に変異を含まないヒアルロナン分解酵素と比較して、少なくともまたは約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を示す。酵素がヒアルロニダーゼ活性を変異を含まないヒアルロナン分解酵素の活性と比較して、例えば少なくともまたは約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の活性を維持する限り、あらゆる変異が本発明の目的でヒアルロナン分解酵素に導入され得る(当分野で知られたおよびここに記載するインビトロおよび/またはインビボアッセイで測定)。
【0386】
ここに提供する方法および使用が可溶性ヒアルロニダーゼ、したがって、あらゆるヒアルロナン分解酵素の使用を記載するとき、一般的に可溶性ヒアルロナン分解酵素を使用できる。あらゆるヒアルロニダーゼをここに提供する方法および使用で使用できることは理解される(例えば、米国特許番号7,767,429および米国公開番号US20040268425およびUS20100143457参照)。
【0387】
i. ヒアルロニダーゼ群
ヒアルロニダーゼ群はヒアルロナン分解酵素群の大ファミリーのメンバーである。ヒアルロニダーゼ群には哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群、細菌ヒアルロニダーゼ群およびヒル類、他の寄生虫および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群の3種がある。このような酵素群をここに提供される組成物、組み合わせおよび方法に使用できる。
【0388】
(1) 哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群
哺乳動物型ヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.35)は、ヒアルロナンのβ−1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼ類である。これらの酵素群は加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両者を有し、ヒアルロナンおよびコンドロイチン硫酸(CS)、一般的にC4−SおよびC6−Sを分解できる。このタイプのヒアルロニダーゼ群は、ウシ(ウシ属)(配列番号10、11および64およびBH55(米国特許番号5,747,027および5,827,721)、配列番号190〜192に示す核酸分子)、ヒツジ(Ovis aries)(配列番号26、27、63および65、配列番号66および193〜194に示す核酸分子)、スズメバチ(配列番号12および13)、ミツバチ(配列番号14)、北米産スズメバチ(配列番号15)、アシナガバチ(配列番号16)、マウス(配列番号17〜19、32)、ブタ(配列番号20〜21)、ラット(配列番号22〜24、31)、ウサギ(配列番号25)、オランウータン(配列番号28)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102)およびヒトヒアルロニダーゼ群(配列番号1〜2、36〜39)からのヒアルロニダーゼ群を含むが、これらに限定されない。ここで提供される組成物、組み合わせおよび方法におけるヒアルロニダーゼ群の例は、可溶性ヒアルロニダーゼ群である。
【0389】
哺乳動物ヒアルロニダーゼ群は、さらに、主に精巣抽出物で見られる中性活性のもの、および主に肝臓のような臓器で見られる酸活性のものにさらに細分できる。中性活性ヒアルロニダーゼ群は、例えば、ヒツジ(配列番号27、63および65)、ウシ(配列番号11および64)およびヒト(配列番号1)のような種由来のPH20を含むが、これらに限定されないPH20を含む。ヒトPH20(SPAM1または精子表面タンパク質PH20としても既知)は、一般的にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合している。これは精子−卵付着に天然で関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞の層への精子浸透を助ける。
【0390】
ヒトPH20(SPAM1とも呼ぶ)以外に、5種のヒアルロニダーゼ様遺伝子、HYAL1、HYAL2、HYAL3、HYAL4およびHYALP1がヒトゲノムで同定されている。HYALP1は偽遺伝子であり、HYAL3(配列番号38)はあらゆる既知の基質に対して酵素活性を示さない。HYAL4(配列番号39に示す前駆体ポリペプチド)はコンドロイチナーゼであり、ヒアルロナンに対してわずかに活性を示す。HYAL1(配列番号36に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ酸活性酵素であり、PH20(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド)はプロトタイプ中性活性酵素である。酸活性ヒアルロニダーゼ群、例えばHYAL1およびHYAL2(配列番号37に示す前駆体ポリペプチド)は、一般的に中性pH(すなわちpH7)で触媒活性を欠く。例えば、HYAL1は、インビトロでpH4.5を超えるとほとんど触媒活性を有しない(Frost et al. (1997) Anal. Biochem. 251:263-269)。HYAL2は、インビトロで極めて低比活性の酸活性酵素である。ヒアルロニダーゼ様酵素群はまた一般的にヒトHYAL2およびヒトPH20のようなグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して原形質膜に結合するもの(Danilkovitch-Miagkova, et al. (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100(8):4580-5)、およびヒトHYAL1のように一般的に溶解性であるもの(Frost et al. (1997) Biochem Biophys Res Commun. 236(1):10-5)により特徴付けもできる。
【0391】
(a) PH20
PH20は、他の哺乳動物ヒアルロニダーゼ群と同様、ヒアルロン酸のβ1→4グリコシド結合を四糖類および六糖類のような種々のオリゴ糖長に加水分解するendo−β−N−アセチル−ヘキソサミニダーゼである。これは加水分解性およびトランスグリコシダーゼ活性の両者を有し、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、例えばC4−SおよびC6−Sを分解できる。PH20は精子−卵付着に天然で関与し、ヒアルロン酸を消化することにより卵丘細胞の層への精子浸透を助ける。PH20は精子表面およびリソソーム由来アクロソームに見られ、アクロソームでそれは内アクロソーム膜に結合する。原形質膜PH20は、中性pHでのみヒアルロニダーゼ活性を有するのに対し、内アクロソーム膜PH20は、中性および酸pHのいずれでも活性を有する。ヒアルロニダーゼである以外に、PH20はまたHA誘発細胞シグナリングの受容体、および卵母細胞を囲む透明帯の受容体であると報告されている。
【0392】
PH20タンパク質類の例は、ヒト(配列番号1に示す前駆体ポリペプチド、配列番号2に示す成熟ポリペプチド)、チンパンジー(配列番号101)、アカゲザル(配列番号102) ウシ(配列番号11および64)、ウサギ(配列番号25)、ヒツジPH20(配列番号27、63および65)、カニクイザル(配列番号29)、モルモット(配列番号30)、ラット(配列番号31)およびマウス(配列番号32)PH20ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。
【0393】
ウシPH20は553アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号11)である。ウシPH20とヒトPH20のアラインメントはわずかな相同性しか示さず、ウシポリペプチドにおけるGPIアンカーの不存在により、アミノ酸470から各カルボキシ末端まで複数ギャップが存在する(例えば、Frost GI (2007) Expert Opin. Drug. Deliv. 4: 427-440参照)。実際、明らかなGPIアンカーはヒト以外の多くの他のPH20種で予測されない。それそれゆえに、ヒツジおよびウシから産生されたPH20ポリペプチド類は、本来可溶性形態として存在する。ウシPH20は原形質膜への極めて緩い結合で存在するが、ホスホリパーゼ感受性アンカーを介して固定されていない(Lalancette et al. (2001) Biol Reprod. 65(2):628-36)。ウシヒアルロニダーゼのこの独特な特徴は臨床使用のための抽出物としての可溶性ウシ精巣ヒアルロニダーゼ酵素の使用を可能にする(Wydase(登録商標)、Hyalase(登録商標))。
【0394】
ヒトPH20mRNA転写物は通常翻訳されて、N末端に35アミノ酸シグナル配列(アミノ酸残基1〜35位)およびC末端に19アミノ酸グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー付着シグナル配列(アミノ酸残基491〜509位)を含む509アミノ酸前駆体ポリペプチド(配列番号1)を生じる。成熟PH20は、それそれゆえに、配列番号2に示す474アミノ酸ポリペプチドである。ERの前駆体ポリペプチドへの輸送およびシグナルペプチドの除去に続き、C末端GPI付着シグナルペプチドは開裂され、GPIアンカーの配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの490位に対応するアミノ酸位置に新たに形成されたC末端アミノ酸との共有結合が促進される。それそれゆえに、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する474アミノ酸GPIアンカー型成熟ポリペプチドが産生される。
【0395】
ヒトPH20は中性および酸pHでヒアルロニダーゼ活性を示す。一つの面において、ヒトPH20は、一般的にGPIアンカーを介して原形質膜に固定されているプロトタイプ中性活性ヒアルロニダーゼである。他の面において、PH20は、内アクロソーム膜上に発現され、そこで、中性および酸pHでヒアルロニダーゼ活性を有する。PH20は、ポリペプチドのペプチド1およびペプチド3領域の2カ所の領域に二つの触媒部位を含む(Cherr et al., (2001)Matrix Biology 20:515-525)。配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸107〜137位に対応するPH20のペプチド1領域および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの142〜172位が、中性pHでの酵素活性に必要である証拠がある。この領域内の111位および113位のアミノ酸(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)が、アミノ酸置換による変異原性が、それぞれ野生型PH20と比較してPH20ポリペプチド類の3%ヒアルロニダーゼ活性および検出不能なヒアルロニダーゼ活性を生じるために、活性に必須であると報告されている(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0396】
配列番号2に示す成熟ポリペプチドのアミノ酸242〜262位に対応するペプチド3領域、および配列番号1に示す前駆体ポリペプチドの277〜297位は、酸性pHでの酵素活性に重要であると報告されている。この領域内で、成熟PH20ポリペプチドの249位および252位のアミノ酸は活性に必須であり、このいずれかの変異原性は、本質的に活性を欠くポリペプチドとなると報告されている(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0397】
触媒部位に加えて、PH20またはヒアルロナン結合部位を含む。実験的証拠は、この部位が配列番号1に示す前駆体ポリペプチドのアミノ酸205〜235位および配列番号2に示す成熟ポリペプチドの170〜200位に対応するペプチド2領域に位置することを示す。この領域はヒアルロニダーゼ群で高度に保存され、ヘパリン結合モチーフと類似する。アルギニン残基176位(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドに対応)のグリシンへの変異は、野生型ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の約1%しか活性がないポリペプチドとなる(Arming et al., (1997) Eur. J. Biochem. 247:810-814)。
【0398】
ヒトPH20において配列番号1に例示するポリペプチドのN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に、7カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位を含むグリコシル化部位がある。配列番号1のアミノ酸36〜464が活性が最小のヒトPH20ヒアルロニダーゼドメインを含むように見えるため、グリコシル化部位S−490は適切なヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。ヒトPH20において6個のジスルフィド結合があると報告されている。配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C60とC351およびC224とC238の間の2個のジスルフィド結合(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C25とC316、およびC189とC203に対応)がある。さらに4カ所のジスルフィド結合が配列番号1に例示するポリペプチドのシステイン残基C376とC387;C381とC435;C437とC443;C458とC464(それぞれ配列番号2に示す成熟ポリペプチドの残基C341とC352;C346とC400;C402とC408;およびC423とC429に対応)に形成される。
【0399】
(2) その他のヒアルロニダーゼ群
細菌ヒアルロニダーゼ群(EC 4.2.2.1またはEC 4.2.99.1)はヒアルロナン、および種々の程度で、コンドロイチン硫酸およびデルマタン硫酸を分解する。細菌から単離されたヒアルロナンリアーゼ群は、作用機序がヒアルロニダーゼ群と異なる(他の起源由来、例えば、ヒアルロノグルコサミニダーゼ群、EC 3.2.1.35)。ヒアルロナンのN−アセチル−ベータ−D−グルコサミンとD−グルクロン酸残基の間のβ1→4−グリコシド結合の加水分解ではなく、脱離反応を触媒するendo−β−N−アセチルヘキソサミニダーゼ類であり、3−(4−デオキシ−β−D−グルコ−4−エヌロノシル)−N−アセチル−D−グルコサミンテトラ−および六糖類、および二糖最終産物を生じる。反応は、非還元末端に不飽和ヘキスロン酸残基を伴うオリゴ糖類の形成を生じる。
【0400】
ここで提供される組成物、組み合わせおよび方法で使用するための細菌由来のヒアルロニダーゼ群の例は、アルスロバクター属、デロビブリオ属、クロストリジウム属、ミクロコッカス属、レンサ球菌属、ペプトコッカス属、プロピオニバクテリウム属、バクテロイデス属、およびストレプトマイセス属の株を含む微生物におけるヒアルロナン分解酵素群を含むが、これらに限定されない。このような酵素群の具体例は、アルスロバクター属(株FB24)(配列番号67)、ブデロビブリオ・バクテリオヴォルス(配列番号68)、プロピオニバクテリウム・アクネス(配列番号69)、ストレプトコッカス・アガラクチア((配列番号70);18RS21(配列番号71);血清型Ia(配列番号72);血清型III(配列番号73))、黄色ブドウ球菌(株COL)(配列番号74);株MRSA252(配列番号75および76);株MSSA476(配列番号77);株NCTC 8325(配列番号78);株ウシRF122(配列番号79および80);株USA300(配列番号81)、肺炎レンサ球菌((配列番号82);株ATCC BAA-255/R6(配列番号83);血清型2、株D39/NCTC 7466(配列番号84)、A群溶血レンサ球菌(血清型M1)(配列番号85);血清型M2、株MGAS10270(配列番号86);血清型M4、株MGAS10750(配列番号87);血清型M6(配列番号88);血清型M12、株MGAS2096(配列番号89および90);血清型M12、株MGAS9429(配列番号91);血清型M28(配列番号92);豚レンサ球菌(配列番号93〜95);ビブリオ・フィッシェリ(株ATCC 700601/ES114(配列番号96))、およびヒアルロン酸に特異的であり、コンドロイチンまたはコンドロイチン硫酸を開裂しないストレプトマイセス・ヒアルロノリチクスヒアルロニダーゼ酵素を含むが、これらに限定されない(Ohya, T. and Kaneko, Y. (1970) Biochim. Biophys. Acta 198:607)。ヒル類、他の寄生虫、および甲殻類由来のヒアルロニダーゼ群(EC 3.2.1.36)は、四糖類および六糖類最終産物を生じるendo−β−グルクロニダーゼ群である。これらの酵素群は、ヒアルロナートのβ−D−グルクロネートとN−アセチル−D−グルコサミン残基の間の1→3−架橋の加水分解を触媒する。ヒル類由来のヒアルロニダーゼ群は、例えば、Hirudinidae(例えば、ドイツ蛭)、イシビル科(例えば、Nephelopsis obscuraおよびErpobdella punctata)、Glossiphoniidae(例えば、Desserobdella picta、Helobdella stagnalis、Glossiphonia complanata、Placobdella ornateおよびテロミゾン属)およびヘモピ科(Haemopis marmorata)を含むが、これらに限定されない(Hovingh et al. (1999) Comp Biochem Physiol B BiochemMol Biol. 124(3):319-26)ヒアルロニダーゼである。ヒルヒアルロニダーゼと同じ作用機序を有する細菌由来のヒアルロニダーゼの例は、シアノバクテリア、シネココックス属(株RCC307、配列番号97)由来のものである。
【0401】
(3) その他のヒアルロナン分解酵素群
ヒアルロニダーゼファミリーに加えて、他のヒアルロナン分解酵素群をここで提供する組成物、組み合わせおよび方法において使用できる。例えば、ヒアルロナンを開裂する能力を有する特定のコンドロイチナーゼ群およびリアーゼ群を含む酵素群を用いることができる。ヒアルロナンを分解できるコンドロイチナーゼ群は、例えば、コンドロイチンABCリアーゼ(コンドロイチナーゼABCとしても知られる)、コンドロイチンACリアーゼ(コンドロイチン硫酸リアーゼまたはコンドロイチン硫酸エリミナーゼとしても知られる)およびコンドロイチンCリアーゼを含むが、これらに限定されない。このような酵素群のここに提供する組成物、組み合わせおよび方法において使用するための産生および精製方法は知られている(例えば、米国特許6,054,569;Yamagata, et al. (1968) J. Biol. Chem. 243(7):1523-1535;Yang et al. (1985) J. Biol. Chem. 160(30):1849-1857)。
【0402】
コンドロイチンABCリアーゼは、2種の酵素群、コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ(EC 4.2.2.20)およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ(EC 4.2.2.21)(Hamai et al. (1997) J Biol Chem. 272(14):9123-30)を含み、コンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸タイプの種々のグリコサミノグリカン類を分解する。コンドロイチン硫酸、コンドロイチン−硫酸プロテオグリカンおよびデルマタン硫酸はコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼの好ましい基質であるが、本酵素はまたヒアルロナン上で低速で作用する。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼはコンドロイチン−硫酸−およびデルマタン−硫酸型の種々のグリコサミノグリカン類を分解し、種々のサイズのΔ4−不飽和オリゴ糖類の混合物を生じ、それは最終的にΔ4−不飽和四糖類および二糖類に分解される。コンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼは、類似の基質特異性を有するが、重合体コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼにより産生されるそのオリゴ糖フラグメントの両方の非還元末端から二糖残基を事除去する(Hamai, A. et al. (1997) J. Biol. Chem. 272:9123-9130)。コンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼ群およびコンドロイチン−硫酸−ABCエキソリアーゼ群は、例えばプロテウス・ブルガリスおよびペドバクター・ヘパリナス(プロテウス・ブルガリスコンドロイチン−硫酸−ABCエンドリアーゼは配列番号98に示す)を含むが、これらに限定されない(Sato et al. (1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 41(1):39-46)。
【0403】
コンドロイチンACリアーゼ(EC 4.2.2.5)は、コンドロイチン硫酸AおよびC、コンドロイチンおよびヒアルロン酸に活性であるが、デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)に活性ではない。細菌由来のコンドロイチナーゼAC酵素群は、例えば、それぞれ配列番号99および100に示すペドバクター・ヘパリナスおよびビクチバリス・バデンシスおよびアルスロバクタ・オウレセンス由来のものを含むが、これらに限定されない(Tkalec et al. (2000) Applied and EnvironmentalMicrobiology 66(1):29-35;Ernst et al. (1995) Critical Reviews in BiochemistryおよびMolecular Biology 30(5):387-444)。
【0404】
コンドロイチナーゼCはコンドロイチン硫酸Cを分解し、四糖と不飽和6−硫酸化二糖(デルタジ−6S)を産生する。それはまたヒアルロン酸を開裂し、不飽和非硫酸化二糖(デルタジ−OS)を産生する。細菌由来のコンドロイチナーゼC酵素群は、例えば、レンサ球菌およびフラボバクテリウム由来のものを含むが、これらに限定されない(Hibi et al. (1989) FEMS-Microbiol-Lett. 48(2):121-4;Michelacci et al. (1976) J. Biol. Chem. 251:1154-8;Tsuda et al. (1999) Eur. J. Biochem. 262:127-133)。
【0405】
ii. 可溶性ヒアルロナン分解酵素群
ここでの組成物、組み合わせおよび方法で提供されるのは、可溶性ヒアルロニダーゼ群を含む可溶性ヒアルロナン分解酵素群である。可溶性ヒアルロナン分解酵素群は、発現により細胞(例えばCHO細胞)から分泌され、可溶性形態で存在するあらゆるヒアルロナン分解酵素群を含む。このような酵素群は、非ヒト動物可溶性ヒアルロニダーゼ群、細菌可溶性ヒアルロニダーゼ群およびヒトヒアルロニダーゼ群、Hyal1、ウシPH20およびヒツジPH20、対立形質その変異体および他のその変異体を含む、非ヒト可溶性ヒアルロニダーゼ群を含む、可溶性ヒアルロニダーゼ群を含む。例えば、可溶性ヒアルロナン分解酵素群に包含されるのは、可溶性であるように修飾されているあらゆるヒアルロナン分解酵素群である。例えば、GPIアンカーを含むヒアルロナン分解酵素群は、GPIアンカーの全てまたは一部の切断および除去により可溶性にできる。一例として、通常GPIアンカーを介する膜アンカー型であるヒトヒアルロニダーゼPH20を、C末端のGPIアンカーの全てまたは一部の短縮化および除去により溶解性にできる。
【0406】
可溶性ヒアルロナン分解酵素群はまた中性活性および酸活性ヒアルロニダーゼ群を含む。投与後の所望の酵素の活性レベルおよび/または投与部位を含むが、これらに限定されない因子によって、中性活性および酸活性ヒアルロニダーゼ群を選択できる。特定の例において、ここでの組成物、組み合わせおよび方法で使用するヒアルロナン分解酵素は可溶性中性活性ヒアルロニダーゼである。
【0407】
可溶性ヒアルロニダーゼの例は、ヒアルロニダーゼが可溶性(発現により分泌)であり、ヒアルロニダーゼ活性を維持する限り、あらゆる種由来のPH20、例えば配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65および101〜102に示すいずれか、またはC末端GPIアンカーの全てまたは一部を欠くその切断型形態である。また可溶性ヒアルロニダーゼ群に包含されるのは、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65および101〜102のいずれかの対立形質変異体または他の変異体またはその切断型である。対立形質変異体および他の変異体は当業者に知られており、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63〜65および101〜102のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を有するポリペプチドまたはその切断型を含む。アミノ酸変異体include 保存的および非保存的変異。アミノ酸変異体は保存的および非保存的変異を含む。重要であるか、他の点でヒアルロニダーゼの活性に必要である残基、例えば上記のまたは当業者に知られたいずれかは、一般的に不変であり、変化できないことは理解されよう。これらは、例えば、活性部位残基を含む。それそれゆえに、例えば、ヒトPH20ポリペプチド、またはその可溶性形態のアミノ酸残基111、113および176(配列番号2に示す成熟PH20ポリペプチドの残基に対応)は一般的に不変であり、変えられない。グリコシル化および適切な折りたたみに必要なジスルフィド結合形成に関与する他の残基も不変であり得る。
【0408】
ある例においては、可溶性ヒアルロナン分解酵素は通常GPI固定(例えば、ヒトPH20のような)であり、C末端での切断により可溶性となる。このような切断はGPIアンカー付着シグナル配列の全ての除去またはGPIアンカー付着シグナル配列の一部のみの除去であり得る。得られたポリペプチドは、しかしながら、可溶性である。可溶性ヒアルロナン分解酵素がGPIアンカー付着シグナル配列の一部を保持する例において、ポリペプチドが可溶性である限り、GPIアンカー結合シグナル配列における1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個以上のアミノ酸残基を残し得る。GPIアンカーの1個以上のアミノ酸を残すポリペプチドは、拡大可溶性ヒアルロナン分解酵素群と呼ぶ。当業者は、当分野で周知の方法を使用して、ポリペプチドがGPI固定であるか否かを決定できる。このような方法は、GPIアンカー結合シグナル配列およびω−部位の存在および位置を予測するためのアルゴリズムの使用およびホスファチジルイノシトール−特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC)またはD(PI−PLD)での消化前および後の溶解度分析の実施を含むが、これらに限定されない。
【0409】
拡大可溶性ヒアルロナン分解酵素群は、得られたポリペプチドが可溶性であり、GPIアンカー結合シグナル配列の1個以上のアミノ酸残基を含むように、あらゆる天然のGPI固定ヒアルロナン分解酵素をC末端切断することにより製造できる(例えば、米国公開特許出願番号US20100143457参照)。C末端切断されているが、GPIアンカー付着シグナル配列の一部を含む拡大可溶性ヒアルロナン分解酵素群の例は、例えば、ヒトおよびチンパンジーesPH20ポリペプチドのような霊長類起源の拡大可溶性PH20(esPH20)ポリペプチドを含むが、これらに限定されない。例えば、esPH20ポリペプチドは、配列番号1、2または101に示す成熟または前駆体ポリペプチドのいずれかまたはその活性フラグメントを含むその対立形質または他の変異のC末端切断により製造でき、ここで、得られたポリペプチドは可溶性であり、GPIアンカー結合シグナル配列の1個以上のアミノ酸残基を保持する。対立形質変異体および他の変異体は当業者に知られており、配列番号1または2のいずれかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%以上の配列同一性を有するポリペプチドを含む。ここで提供するesPH20ポリペプチドは、得られたesPH20ポリペプチドは可溶性であり、GPIアンカー結合シグナル配列からの1個以上のアミノ酸残基を保持する限り、配列番号1、2または101に示す配列を有するポリペプチドのような野生型ポリペプチドと比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個以上のアミノ酸のC末端切断型であり得る。
【0410】
典型的に、ここでの組成物、組み合わせおよび方法において使用するために、可溶性ヒトPH20のような可溶性ヒトヒアルロナン分解酵素を使用する。他の動物からのPH20のようなヒアルロナン分解酵素群を使用できるが、このような調製物は、動物タンパク質であるために潜在的に免疫原性である。例えば、相当な割合の患者が摂取食物に二次的な事前感作を示し、これらが動物タンパク質であるために、全患者に事後感作の危険性がある。それゆえに、非ヒト調製物は慢性使用に適切ではない可能性がある。非ヒト調製物が望まれるならば、このようなポリペプチドを低免疫原性となるように製造できることがここでは意図される。このような修飾は当業者のレベルの範囲内であり、例えば、分子上の1個以上の抗原性エピトープの除去および/または置換を含み得る。
【0411】
ここでの方法において使用するヒアルロニダーゼ群を含むヒアルロナン分解酵素群(例えば、PH20)は組み換えにより産生できまたは例えば、精巣抽出物のような天然起源からの精製または一部精製であり得る。組み換えヒアルロナン分解酵素群を含む組み換えタンパク質の産生方法は本明細書のいずれかの場所に提供し、当分野で周知である。
【0412】
(1) 可溶性ヒトPH20
可溶性ヒアルロニダーゼの例は可溶性ヒトPH20である。可溶性形態の組み換えヒトPH20は産生されており、ここに記載する組成物、組み合わせおよび方法において使用できる。このような可溶性形態のPH20の産生は、米国公開特許出願番号US20040268425;US20050260186、US20060104968、US20100143457および国際PCT出願番号WO2009111066に記載されている。例えば、配列番号1におけるアミノ酸の配列を有するまたは配列番号1におけるアミノ酸の配列と少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、95%、97%、98%配列同一性を有するC末端切断型変異体ポリペプチドを含む可溶性PH20ポリペプチドはヒアルロニダーゼ活性を維持し、可溶性である。これらのポリペプチドに包含されるのは、GPIアンカー結合シグナル配列の全てまたは一部を完全に欠く可溶性PH20ポリペプチドである。
【0413】
また包含されるのは、GPIアンカーの少なくとも1個のアミノ酸を保持する拡大可溶性PH20(esPH20)ポリペプチドである。それゆえに、ERにおいてタンパク質のC末端と共有結合的に結合したGPIアンカーを有し、原形質膜の細胞外小葉に固定されている代わりに、これらのポリペプチドは分泌型および可溶性である。C末端切断型PH20ポリペプチドは、配列番号1または2に示す配列を有する完全長野生型ポリペプチドまたはその対立形質または種変異体または他の変異体のような完全長野生型ポリペプチドと比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個以上のアミノ酸がC末端切断されていてよい。
【0414】
例えば、可溶性形態は、配列番号1に示すアミノ酸の配列のC末端アミノ酸残基467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482および483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499または500を有する配列番号1に示すヒトPH20のC末端切断型ポリペプチドまたはそれと少なくとも85%同一性を示すポリペプチドである。可溶性形態のヒトPH20は、一般的に配列番号1に示すアミノ酸36〜464を含むものを含む。例えば、哺乳動物細胞において発現されたとき、35アミノ酸N末端シグナル配列は、処理中に開裂され、成熟形態のタンパク質は分泌される。それゆえに、成熟可溶性ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸36〜467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482および483を含む。表3は、C末端切断型可溶性PH20ポリペプチドを含むC末端切断型PH20ポリペプチドの例の非限定的例を提供する。下記表3において、C末端切断型PH20タンパク質の前駆体および成熟ポリペプチドのアミノ酸配列の例を示す、前駆体および成熟ポリペプチドの長さ(アミノ酸の)および配列識別子(配列番号)を提供する。野生型PH20ポリペプチドもまた比較のために表3に包含させる。特に、可溶性ヒアルロニダーゼ群の例は、配列番号4〜9に示すいずれかのような442、443、444、445、446または447アミノ酸長の可溶性ヒトPH20ポリペプチドまたはその対立形質または種変異体または他の変異体である。
【0416】
例えば、細胞から分泌され、可溶性であるヒアルロニダーゼ活性を示すC末端切断型PH20ポリペプチドの例は、表3に示す成熟形態の切断型ヒトPH20のいずれかまたはヒアルロニダーゼ活性を示すその変異体を含む。例えば、PH20またはその切断型は、配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかに示すアミノ酸の配列または配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかと少なくとも85%配列同一性を示すアミノ酸の配列を含む。例えば、PH20ポリペプチドは、配列番号4〜9、47、48、150〜170および183〜189のいずれかと少なくとも85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示し得る。
【0417】
一般的に可溶性形態のPH20は、グリコシル化がヒアルロニダーゼ群の触媒的活性および安定性に重要であるため、ポリペプチドが活性を保持することを確実にするために正確なN−グリコシル化を促進するタンパク質発現系を使用して産生する。このような細胞は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えばDG44 CHO細胞)を含む。
【0418】
(2) rHuPH20
組み換え可溶性形態のヒトPH20が産生されており、ここに提供される組成物、組み合わせおよび方法において使用できる。このような可溶性形態の組み換えヒトPH20の産生は、例えば、米国公開特許出願番号US20040268425;US20050260186;US20060104968;US20100143457;および国際PCT出願番号WO2009111066に記載されている。このようなポリペプチドの例は、アミノ酸1〜482(配列番号3に示す)をコードする核酸分子の発現により産生する。このような核酸分子の例を配列番号49に示す。翻訳後処理は35アミノ酸シグナル配列を除き、447アミノ酸可溶性組み換えヒトPH20(配列番号4)をもたらす。培養培地で産生されるため、rHuPH20と命名された生成物が種々の量で配列番号4〜9のいずれか1種以上を含み得る種の混合物を含むように、C末端に不均一性がある。典型的に、rHuPH20は、活性を維持するための正確なN−グリコシル化を促進する細胞、例えばCHO細胞(例えばDG44 CHO細胞)で産生される。
【0419】
iii. ヒアルロナン分解酵素群のグリコシル化
ヒアルロニダーゼ群を含むいくつかのヒアルロナン分解酵素群の、N−およびO架橋グリコシル化を含むグリコシル化は、その触媒活性および安定性に重要である。糖タンパク質を修飾するグリカンのタイプの変更はタンパク質の抗原性、構造的折りたたみ、溶解性、および安定性に大きな影響を与え得るが、ほとんどの酵素群は、最適酵素活性のためにグリコシル化は不要であると考えられている。あるヒアルロニダーゼ群について、N架橋グリコシル化の除去は、ヒアルロニダーゼ活性をほぼ完全に不活化する。それそれゆえに、このようなヒアルロニダーゼ群にとって、N架橋グリカン類の存在は活性酵素産生に重要である。
【0420】
N架橋オリゴ糖類は大きく数種(オリゴマンノース、複合体、ハイブリッド、硫酸化)に分けられ、その全てが、−Asn−Xaa−Thr/Ser−配列(ここで、XaaはProではない)に入るAsn残基のアミド窒素を介して結合した(Man)
3−GlcNAc−GlcNAc−コアを有する。−Asn−Xaa−Cys−部位でのグリコシル化は、凝固タンパク質Cについて報告されている。ある例において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼはN−グリコシド架橋およびO−グリコシド架橋の両者を含み得る。例えば、PH20はO架橋オリゴ糖類ならびにN架橋オリゴ糖類を含む。配列番号1に例示するヒトPH20のN82、N166、N235、N254、N368、N393、N490に7カ所の潜在的N架橋グリコシル化部位がある。アミノ酸残基N82、N166およびN254は、複合体型グリカンで占拠され、アミノ酸残基N368およびN393は高マンノース型グリカンで占拠されている。アミノ酸残基N235は約80%高マンノース型グリカンおよび20%複合体型グリカンで占拠されている。上記のとおり、N490でのN架橋グリコシル化はヒアルロニダーゼ活性に必須ではない。
【0421】
いくつかの例において、ここで提供される組成物、組み合わせおよび/または方法において使用するためのヒアルロナン分解酵素群グリコシル化は、グリコシル化部位の1カ所または全てでグリコシル化されている。例えば、ヒトPH20、またはその可溶性形態について、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。数例において、ヒアルロナン分解酵素群は、1箇所以上の天然グリコシル化部位でグリコシル化される。他の例において、ヒアルロナン分解酵素群は、1箇所以上の付加的部位でポリペプチドのグリコシル化を付与するために1箇所以上の非天然グリコシル化部位で修飾される。このような例において、付加的糖分子の付着は、分子の薬物動態学的特性を亢進でき、例えば半減期を改善し、/または活性を改善する。
【0422】
他の例において、ここで提供される組成物、組み合わせおよび/または方法において使用するためのヒアルロナン分解酵素群は、部分的脱グリコシル化(または一部N−グリコシル化されたポリペプチド)されている。例えば、完全にグリコシル化されたヒアルロニダーゼのヒアルロニダーゼ活性の全てまたは一部を保持する部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチドを、ここに提供される組成物、組み合わせおよび/または方法において使用できる。部分的脱グリコシル化ヒアルロニダーゼ類の例は、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63、65および101〜102に示すいずれかまたはその対立形質変異体、切断型変異体または他の変異体のような、あらゆる種由来の可溶性形態の部分的脱グリコシル化PH20ポリペプチドを含む。このような変異体は当業者に知られており、配列番号1、2、11、25、27、29〜32、63、65および101〜102のいずれいかと60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%以上の配列同一性を有するポリペプチドまたはその切断型を含む。ここで提供する部分的脱グリコシル化ヒアルロニダーゼ群はまたハイブリッド、融合およびキメラ部分的脱グリコシル化ヒアルロニダーゼ群および部分的脱グリコシル化ヒアルロニダーゼコンジュゲートを含む。
【0423】
グリコシダーゼ群、またはグリコシドヒドロラーゼ群は、2個の小さな糖類を産生するためにグリコシド結合の加水分解を触媒する酵素群である。N−グリカン類の主なタイプは高マンノースグリカン、ハイブリッドグリカンおよび複合体グリカンを含む。部分的タンパク質脱グリコシル化しか生じない数種のグリコシダーゼ群は以下のものを含む。高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoF1;二分岐複合体型グリカンを開裂するEndoF2;二分岐およびさらに分岐した複合体グリカンを開裂するEndoF3;および高マンノースおよびハイブリッド型グリカンを開裂するEndoH。これらのグリコシダーゼ群の1個または全てでの可溶性PH20のような可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素での処理は、一部しか脱グリコシル化されていない、それゆえに、ヒアルロニダーゼ活性の保持をもたらし得る。
【0424】
部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群、例えば部分的脱グリコシル化可溶性ヒアルロニダーゼ群を、1種以上のグリコシダーゼ群、一般的に全てのN−グリカンを除去せず、タンパク質を部分的脱グリコシル化するグリコシダーゼで消化させることにより製造できる。例えば、PH20(例えばrHuPH20と命名した組み換えPH20)の上記グリコシダーゼ群の1個または全て(例えばEndoF1、EndoF2および/またはEndoF3)での処理は部分的脱グリコシル化をもたらす。これらの部分的脱グリコシル化PH20ポリペプチドは、完全グリコシル化ポリペプチドと同等なヒアルロニダーゼ酵素活性を示すことができる。対照的に、PH20を、全N−グリカン類を開裂するグリコシダーゼであるPNGaseFで処置すると、全N−グリカン類の完全な除去がもたらされ、それによりPH20酵素が不活性となる。それゆえに、全N−結合グリコシル化部位(例えば、配列番号1に例示するヒトPH20のアミノ酸N82、N166、N235、N254、N368およびN393のような)はグリコシル化できるが、1種以上のグリコシダーゼ群処理はグリコシル化程度を、1種以上のグリコシダーゼ群で消化していないヒアルロニダーゼと比較して、減少させ得る。
【0425】
部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチド類を含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群は、完全グリコシル化ポリペプチドのグリコシル化レベルの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%または80%を有し得る。一例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所または6箇所のN−グリコシル化部位は、高マンノースまたは複合体型グリカンをもはや含まないが、少なくとも1個のN−アセチルグルコサミン部分を含むように、部分的脱グリコシル化される。数例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166およびN254に対応するN−グリコシル化部位の1箇所、2箇所または3箇所が脱グリコシル化され、すなわち、それは糖部分を含まない。他の例において、配列番号1のアミノ酸類N82、N166、N235、N254、N368、およびN393に対応する3箇所、4箇所、5箇所、または6箇所のN−グリコシル化部位がグリコシル化される。グリコシル化アミノ酸残基はN−アセチルグルコサミン部分を最小限含む。典型的に、部分的脱グリコシル化可溶性PH20ポリペプチド類を含む部分的脱グリコシル化ヒアルロナン分解酵素群は、完全グリコシル化ポリペプチドのヒアルロニダーゼ活性の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%、300%、400%、500%、1000%またはそれ以上であるヒアルロニダーゼ活性を示す。
【0426】
iv. 修飾(ポリマー結合型)ヒアルロナン分解酵素群
一例として、提供される組成物および組み合わせは、典型的に、ヒアルロナン分解酵素の半減期を延長するために、例えば、対象における長期の/十分な処置効果を促進するために、1個以上の重合体分子(ポリマー)への結合により修飾されているヒアルロナン分解酵素群、特に可溶性ヒアルロニダーゼ群を含む。
【0427】
ポリエチレングリコール(ペグ化部分(PEG))のような重合体分子のヒアルロニダーゼ群のようなヒアルロナン分解酵素群への共有結合または他の安定な付着(結合)は、得られたヒアルロナン分解酵素−ポリマー組成物に有益な特性を付与する。このような特性は、改善された生体適合性、対象内の血液、細胞および/または他の組織におけるタンパク質(および酵素活性)半減期延長、プロテアーゼ群および加水分解からのタンパク質の有効な遮蔽、改善された体内分布、薬物動態および/または薬力学亢進および水溶解度増加を含む。
【0428】
それゆえに、ここでの具体例において、ヒアルロナン分解酵素をポリマーと結合する。ポリマーの例は、ポリオール類(すなわちポリ−OH)、ポリアミン類(すなわちポリ−NH
2)およびポリカルボキシル酸類(すなわちポリ−COOH)のような重合分子およびさらにヘテロポリマー、すなわち1個以上の異なるカップリング基、例えばヒドロキシル基およびアミン基を含むポリマー類である。適切な重合体分子の例は、ポリプロピレングリコール類(PEG)、メトキシポリエチレングリコール類(mPEG)およびポリプロピレングリコール類を含むポリアルキレングリコール類(PAG)のようなポリアルキレンオキシド類(PAO)、PEG−グリシジルエーテル類(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(Cジ−PEG)分枝ポリエチレングリコール類(PEGs)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート類、ポリビニルピロリドン、ポリ−D,L−アミノ酸、ポリエチレン−コ−マレイン酸無水物、ポリスチレン−コ−マレイン酸無水物、カルボキシメチル−デキストラン類を含むデキストラン類、ヘパリン、相同アルブミン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカルボキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むセルロース類、キトサンの加水分解産物、ヒドロキシエチル−デンプン類およびヒドロキシプロピル−デンプン類のようなデンプン類、グリコーゲン、アガロース類およびその誘導体、グアーガム、プルラン、イヌリン、キサンタンガム、カラゲナン、ペクチン、アルギン酸加水分解産物および生体高分子から選択される重合体分子を含む。
【0429】
特に、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。ヒアルロニダーゼ群を含むヒアルロナン分解酵素群への付着に適切な重合体分子は、ポリエチレングリコール(PEG)およびメトキシ−ポリエチレングリコール類(mPEG)、PEG−グリシジルエーテル類(Epox−PEG)、PEG−オキシカルボニルイミダゾール(Cジ−PEG)、分枝PEGsのようなPEG誘導体およびポリエチレンオキシド(PEO)を含むが、これらに限定されない(例えばRoberts et al., Advanced Drug Delivery Review (2002) 54: 459-476; Harris and Zalipsky, S (eds.) "Poly(ethy1ene glycol), Chemistry and Biological Applications" ACS Symposium Series 680, 1997; Mehvar et al., J. Pharm. Pharmaceut. Sci., 3(1):125-136, 2000; Harris, (2003) Nature Reviews Drug Discovery 2:214-221; and Tsubery, (2004) J Biol. Chem 279(37):38118-24参照)。重合体分子は、典型的に約3kDa〜約60kDaの範囲の分子量であり得る。ある態様において、rHuPH20のようなタンパク質に結合している重合体分子は、5kDa、10kDa、15kDa、20kDa、25kDa、30kDa、35kDa、40kDa、45kDa、50kDa、55kDa、60kDaまたは60kDaを超える分子量を有する。
【0430】
PEGまたはPEG誘導体(すなわち“ペグ化”)を共有結合的に結合(コンジュゲート)することによりポリペプチドを修飾する種々の方法は当分野で知られる(例えば、U.S.2006/0104968;U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照)。このような技術は本明細書のいずれかの場所に記載されている。
【0431】
2. 医薬組成物および製剤
ここに提供されるのは、ここに提供する処置方法において使用するための抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素またはその修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼ群のようなペグ化ヒアルロナン分解酵素群)の医薬組成物である。またここで提供されるのは、癌のようなヒアルロナン関連疾患または状態と関連する疾患または障害を処置するために使用する第二剤を含む医薬組成物である。このようなの例は、薬物、ポリペプチド、核酸、抗体、ペプチド、小分子、遺伝子治療ベクター、ウイルスおよび他の治療剤を含む抗癌剤である。抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素またはその修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼ群のようなペグ化ヒアルロナン分解酵素群またはPEGPH20)は、このような第二剤の医薬製剤と共製剤または共投与して、所望のヒアルロナン過剰または蓄積と関連する体内の部位または組織への送達を亢進できる。
【0432】
薬学的に許容される組成物は、一般的に動物およびヒトでの使用のための認められた薬局方に従い、準備される規制当局または他の当局の承認の観点で製造される。化合物は、溶液、懸濁液、粉末または徐放性製剤のような経口および静脈内投与のいずれかのための任意の適切な医薬に製剤できる。典型的に、化合物は、当分野で周知の技術および方法を使用して医薬組成物に製剤する(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms, Fourth Edition, 1985, 126参照)。製剤は投与方法に適合させるべきである。
【0433】
一例として、医薬製剤は液体形態、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液であり得る。液体形態で提供されるならば、医薬製剤は、使用前に治療的有効濃度に希釈すべき濃縮製剤として提供できる。このような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化可食脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル類または分画植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエート類またはソルビン酸)のような薬学的に許容される添加剤と慣用法で製造できる。他の例において、医薬製剤は、使用前に水または他の適当な媒体で再構成するための凍結乾燥形態で提供できる。
【0434】
医薬組成物は、それらを用いて組成物(例えばコルチコステロイドまたはペグ化ヒアルロナン分解酵素群のような抗ヒアルロナン剤)を投与する希釈剤、アジュバント、添加物または媒体のような担体を含み得る。適切な医薬担体の例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences” by E. W. Martinに記載されている。このような組成物は、治療有効量の化合物または薬物を、一般的に精製形態または一部精製形態で、適切な量の担体とともに含み、患者への投与に適切な形態を提供する。このような医薬担体は滅菌液体、例えば水および石油、動物、植物または合成起源のものを含む油、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱油、およびゴマ油を含む。水は、医薬組成物を静脈内投与するときの典型的担体である。食塩水溶液および水性のデキストロースおよびグリセロール溶液も、特に注射液のための液体担体として使用できる。組成物はまた活性成分とともに:ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムまたはカルボキシメチルセルロースのような希釈剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムおよびタルクのような滑沢剤;およびデンプン、アカシアガムのような天然ゴム類、ゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリジン、セルロース類およびその誘導体、ポビドン、クロスポビドン類および当業者に知られる他のこのような結合剤のような結合剤を含む。適切な医薬添加物は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水およびエタノールを含む。例えば、適切な添加物は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロールまたはエタノールである。組成物は、所望により、また湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解促進剤および例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリン類のような他のこのような薬物のような他の少量の非毒性補助物質を含み得る。
【0435】
非経腸製剤で使用される薬学的に許容される担体は、水性媒体、非水性媒体、抗菌剤、等張剤、緩衝液、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁および分散剤、乳化剤、封鎖剤またはキレート剤および他の薬学的に許容される物質を含む。水性媒体の例は、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロースおよび乳酸リンゲル注射を含む。非水性非経腸媒体は、植物起源の固定油、綿実油、コーン油、ゴマ油およびピーナツ油を含む。静菌性または静真菌性濃度の抗菌剤を、多数回投与容器に包装された非経腸製剤に添加でき、それはフェノール類またはクレゾール類、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル類、チメロサール、塩化ベンザルコニウムおよび塩化ベンゼトニウムを含む。等張化剤は塩化ナトリウムおよびデキストロースを含む。緩衝剤はリン酸およびクエン酸を含む。抗酸化剤は硫酸水素ナトリウムを含む。局所麻酔剤は塩酸プロカインを含む。懸濁および分散剤はナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含む。乳化剤はポリソルベート80(TWEEN 80)を含む。金属イオンの封鎖またはキレート剤はEDTAを含む。医薬担体はまた水混和性媒体のためのエチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールおよびpH調節のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸または乳酸を含む。
【0436】
注射剤は、慣用の形態で、液体溶液または懸濁液、注射前に液体で溶液または懸濁液とするのに適切な固体形態またはエマルジョンとして製造できる。前立腺内投与用製剤は、皮下組織錠剤、調整済み注射用無菌懸濁液、使用前に媒体と併せるための無菌乾燥不溶性生成物、無菌エマルジョンを含む、調整済み注射用無菌溶液、使用直前に溶媒と合わせるための凍結乾燥粉末のような無菌乾燥可溶性生成物を含む。溶液は水性でも非水性でもよい。
【0437】
3. 投与量および投与
典型的に、抗ヒアルロナン剤、例えば、ヒアルロナン分解酵素の投与量は、癌のようなヒアルロナン関連疾患または状態の処置に有効な治療も達成するものである。それゆえに、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵の組成物素は、治療的に有用な効果を発揮するのに十分な量で包含される。活性剤を含む組成物は薬学的に許容される担体を含み得る。抗ヒアルロナン剤の組成物はまた第二治療剤を含み得る。
【0438】
抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素の治療的有効濃度は、経験的に化合物を、ここに提供するアッセイのようなインビトロおよびインビボシステムで試験することにより決定できる。例えば、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤またはその修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素)の濃度は、吸収、不活性化および排出率、物理化学的特性、投与スケジュールおよび投与される量ならびに当業者に知られた他の因子による。例えば、正確な投与量および処置の持続時間は、処置する組織、処置する疾患または状態、投与経路、患者または対象および特定の抗ヒアルロナン剤の関数であり、経験的に既知試験プロトコルを使用してまたはインビボまたはインビトロ試験データの外挿により決定できおよび/または特定の薬物の既知投与レジメから決定できることは理解される。疾患または状態、例えばHA富腫瘍のようなヒアルロナン関連疾患または状態の処置のために投与すべき抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはその修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素)の量は標準的臨床的技術により決定できる。さらに、インビトロアッセイおよび動物モデルを最適投与量範囲の決定を補助するために用い得る。経験的に決定できる正確な投与量は、特定の酵素、投与経路、処置する疾患のタイプおよび疾患の重症度に依存し得る。
【0439】
例えば、ヒアルロナン関連疾患および状態の処置のためにヒアルロナン分解酵素群のような抗ヒアルロナン剤またはその修飾形態(例えばペグ化形態)を使用する方法は当分野で周知である(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917参照)。それゆえに、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤の投与量は、ある投与経路についてのその薬物の標準的投与レジメに基づき選択できる。
【0440】
ヒアルロナン関連疾患または状態の処置のための抗ヒアルロナン剤の有効量の例は、0.01μg〜100g/体重kgの範囲の投与量である。例えば、有効量の抗ヒアルロナン剤は0.01μg〜100mg/体重kg、例えば0.01μg〜1mg/体重kg、1μg〜100μg/体重kg、1μg〜10μg/体重kgまたは0.01mg〜100mg/体重kgの範囲の投与量である。例えば、有効量は、少なくともまたは凡そ少なくともまたは約または0.01μg、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000μg/kg体重を含む。他の有効量の例は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100g/kg体重を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)を正確にまたは約0.1μg/kg〜1mg/kg、例えば0.5μg/kg〜100μg/kg、0.75μg/kg〜15μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kgで投与してよい。他の例において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼのような抗ヒアルロナン剤(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)を正確にまたは1mg/kg〜500mg/kg、例えば、100mg/kg〜400mg/kg、例えば200mg/kgで投与してよい。例えば、組成物は、0.5mg〜100gの抗ヒアルロナン剤、例えば、20μg〜1mg、例えば100μg〜0.5mgを含みまたは1mg〜1g、例えば5mg〜500mgを含み得る。
【0441】
例えば、抗癌剤のようなヒアルロナン関連疾患および状態の処置のための薬物および処置は当分野で周知である(例えば米国公開出願番号20100003238および国際公開PCT出願番号WO2009/128917参照)。それゆえに、組成物中のヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼまたは他の第二剤の投与量、ある投与経路についてのその薬物の標準的投与レジメに基づき選択できる。
【0442】
ヒアルロナン分解酵素の有効量の例は、0.01μg〜100g/体重kgの範囲の投与量である。例えば、有効量のヒアルロナン分解酵素は、0.01μg〜100mg/体重kg、例えば0.01μg〜1mg/体重kg、1μg〜100μg/体重kg、1μg〜10μg/体重kgまたは0.01mg〜100mg/体重kgの範囲の投与量である。例えば、有効量は、少なくともまたは凡そ少なくともまたは約または0.01μg、0.05、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000μg/kg体重を含む。他の有効量の例は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100g/kg体重を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)は、正確にまたは約0.1μg/kg〜1mg/kg、例えば0.5μg/kg〜100μg/kg、0.75μg/kg〜15μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kgで投与できる。他の例において、ヒアルロナン分解酵素、例えばヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロニダーゼ)は正確にまたは1mg/kg〜500mg/kg、例えば、100mg/kg〜400mg/kg、例えば200mg/kgで投与できる。一般的に、組成物は0.5mg〜100gのヒアルロナン分解酵素、例えば、20μg〜1mg、例えば100μg〜0.5mgを含みまたは1mg〜1g、例えば5mg〜500mgを含み得る。
【0443】
投与量または組成物は一回投与量投与または複数投与量投与のためであり得る。投与量または組成物を単一投与で1回、週に数回、1週間に2回、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間または30日間毎に1回、月に1回、年に数回または毎年投与できる。他の例において、投与量または組成物を分割し、1回、週に数回、1週間に2回、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、25日間、26日間、27日間、28日間、29日間または30日間毎に1回、月に1回、年に数回または毎年投与できる。ヒアルロナン分解酵素組成物を液体組成物として製剤できまたは凍結乾燥してよい。組成物はまた錠剤またはカプセル剤としても製剤できる。
【0444】
下に提供するのは、ここでの方法に使用するためのポリマーに結合した(例えばペグ化)ヒアルロナン分解酵素群の例の投与量および投与量レジメンの説明である。ヒアルロナン分解酵素群は単独で単剤治療としてまたは癌のようなHA関連疾患または状態の処置に使用する他の薬物と組み合わせて使用できる。本明細書のいずれかの場所、特にここでの方法および使用の実施例に記載するとおり、本薬物を、抗ヒアルロナン剤の処置と関連する副作用を寛解するためにコルチコステロイドと組み合わせて投与してよい。
【0445】
a. ペグ化ヒアルロナン分解酵素の投与
ペグ化ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ)のようなヒアルロナン分解酵素を全身的に、例えば、静脈内(IV)、筋肉内またはあらゆる他の全身性経路により投与できる。具体例において、低投与量を局所的に投与できる。例えば、ペグ化ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロニダーゼ(例えばPH20)のようなヒアルロナン分解酵素の局所投与は、低絶対投与量で局所作用を高めることができる、腫瘍内投与、動脈内注射(例えば肝動脈)、腹腔内投与、膀胱内投与および他の癌治療のための局所経路を含む。
【0446】
投与量範囲の例は正確にまたは約0.3単位/kg〜320,000単位/kg、例えば10単位/kg〜320,000単位/kgのペグ化ヒアルロニダーゼまたは機能的等価量の他のペグ化ヒアルロナン分解酵素である。ここでは、活性の単位は、標準的活性、例えば、ヒアルロニダーゼ活性をアッセイする微小濁度(マイクロturbidity)アッセイで測定した活性に対して基準化されていることは理解される。ペグ化可溶性ヒアルロニダーゼは、そのように結合していない天然可溶性ヒアルロニダーゼと比較して、総タンパク質mgあたり低い活性を示し、すなわち低い比活性を示し得ることは理解される。例えば、rHuPH20製剤の例は、120,000単位/mgの比活性を示すのに対し、rHuPH20のペグ化形態は、正確にまたは約32,000単位/mgの比活性を示す。典型的に、ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素のペグ化形態、例えばrHuPH20は、正確にまたは約18,000から正確にまたは約45,000U/mgの範囲の比活性を示す。一例として、PEG−ヒアルロナン分解酵素は、PEG対タンパク質モル比5:1〜9:1、例えば、7:1で112,000U/mL(〜32,000U/mg)で、例えば、3.5mg/mLの原液として提供できまたはそれより低濃度の形態で提供できる。本発明の目的のために、投与量は単位を基準とする。
【0447】
例えば、ペグ化されたヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素、例えばPEGPH20は、静脈内に1週間に2回、1週間に1回または21日間毎に1回投与できる。典型的に、ペグ化ヒアルロナン分解酵素は1週間に2回投与する。投与サイクルは一定期間であり、一般的に3週間または4週間である。投与サイクルは、投与量レジメで少なくとも1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、1年間以上繰り返し得る。一般的に、投与サイクルは処置医の裁量で繰り返してよく、疾患または状態の寛解、疾患または状態の重症度、有害事象および他の因子のような因子に依存し得る。他の例において、その後の投与サイクルにおいて、ヒアルロナン分解酵素を低頻度で投与してよい。例えば、第一サイクルにおいてヒアルロナン分解酵素は1週間に2回、4週間投与し、その後の投与サイクルにおいてヒアルロナン分解酵素を1週間に1回または2週間に1回、3週間に1回(例えば21日間毎に1回)または4週間に1回投与する。ここに記載するとおり、コルチコステロイドの投与量または投与レジメはヒアルロナン分解酵素の投与レジメによる。
【0448】
投与量は疾患および患者により変わり得るが、ペグ化ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、一般的に正確にまたは約0.01μg/kg、例えば0.0005mg/kg(0.5μg/kg)〜10mg/kg(320,000U/kg)、例えば、0.02mg/kg〜1.5mg/kg、例えば、0.05mg/kgの範囲の量で投与する。ペグ化ヒアルロニダーゼは、例えば、正確にまたは約0.0005mg/kg(対象の)、0.0006mg/kg、0.0007mg/kg、0.0008mg/kg、0.0009mg/kg、0.001mg/kg、0.0016mg/kg、0.002mg/kg、0.003mg/kg、0.004mg/kg、0.005mg/kg、0.006mg/kg、0.007mg/kg、0.008mg/kg、0.009mg/kg、0.01mg/kg、0.016mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.30mg/kg、0.35mg/kg、0.40mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg.kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、5.5mg/kg、6mg/kg、6.5mg/kg、7mg/kg、7.5mg/kg、8mg/kg、8.5mg/kg、9mg/kg、9.5mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg以上の投与量を、典型的に体重約70kg〜75kgの、平均的成人対象に投与する。具体例において、ヒアルロナン分解酵素を、多くても20μg/kg、例えば0.01μg/kg〜15μg/kg、0.05μg/kg〜10μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kgのような低量で投与する。
【0449】
ここで提供されるペグ化されたヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素(例えばPH20)、例えば、PEGPH20は、投与する対象の重量あたり、正確にまたは約1単位/kg〜800,000単位/kg、例えば10〜800,000単位/kg、10〜750,000単位/kg、10〜700,000単位/kg、10〜650,000単位/kg、10〜600,000単位/kg、10〜550,000単位/kg、10〜500,000単位/kg、10〜450,000単位/kg、10〜400,000単位/kg、10〜350,000単位/kg、10〜320,000単位/kg、10〜300,000単位/kg、10〜280,000単位/kg、10〜260,000単位/kg、10〜240,000単位/kg、10〜220,000単位/kg、10〜200,000単位/kg、10〜180,000単位/kg、10〜160,000単位/kg、10〜140,000単位/kg、10〜120,000単位/kg、10〜100,000単位/kg、10〜80,000単位/kg、10〜70,000単位/kg、10〜60,000単位/kg、10〜50,000単位/kg、10〜40,000単位/kg、10〜30,000単位/kg、10〜20,000単位/kg、10〜15,000単位/kg、10〜12,800単位/kg、10〜10,000単位/kg、10〜9,000単位/kg、10〜8,000単位/kg、10〜7,000単位/kg、10〜6,000単位/kg、10〜5,000単位/kg、10〜4,000単位/kg、10〜3,000単位/kg、10〜2,000単位/kg、10〜1,000単位/kg、10〜900単位/kg、10〜800単位/kg、10〜700単位/kg、10〜500単位/kg、10〜400単位/kg、10〜300単位/kg、10〜200単位/kg、10〜100単位/kg、16〜600,000単位/kg、16〜500,000単位/kg、16〜400,000単位/kg、16〜350,000単位/kg、16〜320,000単位/kg、16〜160,000単位/kg、16〜80,000単位/kg、16〜40,000単位/kg、16〜20,000単位/kg、16〜16,000単位/kg、16〜12,800単位/kg、16〜10,000単位/kg、16〜5,000単位/kg、16〜4,000単位/kg、16〜3,000単位/kg、16〜2,000単位/kg、16〜1,000単位/kg、16〜900単位/kg、16〜800単位/kg、16〜700単位/kg、16〜500単位/kg、16〜400単位/kg、16〜300単位/kg、16〜200単位/kg、16〜100単位/kg、160〜12,800単位/kg、160〜8,000単位/kg、160〜6,000単位/kg、160〜4,000単位/kg、160〜2,000単位/kg、160〜1,000単位/kg、160〜500単位/kg、500〜5000単位/kg、1000〜100,000単位/kgまたは1000〜10,000単位/kgで投与できる。ある例において、ここで提供されるペグ化ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素(例えばPH20)、例えば、PEGPH20は、正確にまたは約1単位/kg〜1000単位/kg、1単位/kg〜500単位/kgまたは10単位/kg〜50単位/kgで投与し得る。
【0450】
一般的に、ペグ化ヒアルロニダーゼの比活性が、対象の体重あたり正確にまたは約18,000U/mg〜45,000U/mg、一般的に正確にまたは約1単位/kg(U/kg)、2U/kg、3U/kg、4U/kg、5U/kg、6U/kg、7U/kg、8U/kg、8U/kg、10U/kg、16U/kg、32U/kg、64U/kg、100U/kg、200U/kg、300U/kg、400U/kg、500U/kg、600U/kg、700U/kg、800U/kg、900U/kg、1,000U/kg、2,000U/kg、3,000U/kg、4,000U/kg、5,000U/kg、6,000U/kg、7,000U/kg、8,000U/kg、9,000U/kg、10,000U/kg、12,800U/kg、20,000U/kg、32,000U/kg、40,000U/kg、50,000U/kg、60,000U/kg、70,000U/kg、80,000U/kg、90,000U/kg、100,000U/kg、120,000U/kg、140,000U/kg、160,000U/kg、180,000U/kg、200,000U/kg、220,000U/kg、240,000U/kg、260,000U/kg、280,000U/kg、300,000U/kg、320,000U/kg、350,000U/kg、400,000U/kg、450,000U/kg、500,000U/kg、550,000U/kg、600,000U/kg、650,000U/kg、700,000U/kg、750,000U/kg、800,000U/kg以上であるものを投与する。
【0451】
ある面において、少なくとも3U/mLのペグ化ヒアルロニダーゼを血漿中に維持するように、ペグ化ヒアルロナン分解酵素を製剤し、投与する(例えば公開米国特許出願番号US20100003238および公開国際特許出願番号WO2009128917参照)。例えば、血漿に少なくともまたは約3U/mL、一般的に3U/mL〜12U/mL以上、例えば、少なくともまたは約または正確に4U/mL、5U/mL、6U/mL、7U/mL、8U/mL、9U/mL、10U/mL、11U/mL、12U/mL、13U/mL、14U/mL、15U/mL、16U/mL、17U/mL、18U/mL、19U/mL、20U/mL、25U/mL、30U/mL、35U/mL、40U/mL、45U/mL、50U/mL以上のレベルを維持する十分な量でペグ化可溶性ヒアルロニダーゼを全身投与のために製剤する。一般的に、少なくとも3U/mLのヒアルロニダーゼを血漿で維持するためのここでの目的のために、正確にまたは約0.02mg/kg(対象の)、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.06mg/kg、0.07mg/kg、0.08mg/kg、0.09mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.30mg/kg、0.35mg/kg、0.40mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg.kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg以上を投与する。一般的に、修飾ヒアルロニダーゼの比活性が正確にまたは約20,000U/mg〜60,000U/mg、一般的に正確にまたは約35,000U/mg、60,000U;70,000U;80,000U;90,000U;100,000U;200,000U;300,000U;400,000U;500,000U;600,000U;700,000U;800,000U;900,000U;1,000,000U;1,500,000U;2,000,000U;2,500,000U;3,000,000U;3,500,000U;4,000,000U以上を投与する。このようなレベルを維持するために、投与は毎日、週に数回、1週間に2回、毎週または毎月でよい。
【0452】
血液に少なくとも3U/mLのヒアルロニダーゼを維持するためのペグ化ヒアルロン分解酵素、例えば、ペグ化PH20の量の決定は、当業者のレベルの範囲内である。血液中のヒアルロニダーゼのレベルは、十分な量のヒアルロニダーゼが血液に存在することを確実にするために経時的にモニターできる。血漿中のヒアルロニダーゼを測定するための当業者に知られるあらゆるアッセイを実施できる。例えば、ここでの実施例に記載する微小濁度アッセイまたは酵素アッセイを、血漿中のタンパク質で実施できる。血漿は、通常ヒアルロニダーゼ酵素群を含むことは理解される。このような血漿ヒアルロニダーゼ酵素群は、典型的に酸性pHで活性を有する(米国特許番号7,105,330)。それゆえに、修飾酵素での処置前に、血漿レベルのヒアルロニダーゼを決定し、ベースラインとして使用すべきである。処置後のその後の血漿ヒアルロニダーゼ測定レベルを処置前のレベルと比較できる。あるいは、アッセイを、通常酸性pHで活性を示す内在性リソソームヒアルロニダーゼ活性を抑制するpH条件で行ってよい。それゆえに、修飾可溶性ヒアルロニダーゼは中性pHで活性(例えばヒトPH20)とき、修飾中性活性可溶性ヒアルロニダーゼのみのレベルが測定される。
【0453】
他の例において、血液において維持される検出可能レベルのヒアルロニダーゼがなくても、ヒアルロナン関連疾患または状態に対する治療効果を有することが本発明により判明した、ペグ化ヒアルロナン分解酵素を製剤し、低投与量で投与する。例えば、ペグ化可溶性ヒアルロニダーゼを、多くても20μg/kg、例えば0.01μg/kg〜15μg/kg、0.05μg/kg〜10μg/kg、0.75μg/kg〜7.5μg/kgまたは1.0μg/kg〜3.0μg/kg、例えば正確にまたは約0.01μg/kg(対象の)、0.02μg/kg、0.03μg/kg、0.04μg/kg、0.05μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、2.5μg/kg、3.0μg/kg、3.5μg/kg、4.0μg/kg、4.5μg/kg、5.0μg/kg、5.5μg/kg、6.0μg/kg、7.0μg/kg、7.5μg/kg、8.0μg/kg、9.0μg/kg、10.0μg/kg、12.5μg/kgまたは15μg/kgである量で投与する。一般的に、修飾ヒアルロニダーゼの比活性が正確にまたは約20,000U/mg〜60,000U/mg、一般的に正確にまたは約35,000U/mg、200単位〜50,000(U)、例えば200U、300U;400U;500U;600U;700U;800U;900U;1,000U;1250U;1500U;2000U;3000U;4000U;5,000U;6,000U;7,000U;8,000U;9,000U;10,000U;20,000U;30,000U;40,000U;または50,000Uを投与する。このようなレベルを維持するために、投与は毎日、週に数回、1週間に2回、毎週または毎月でよい。
【0454】
典型的に、ここで意図されるペグ化ヒアルロニダーゼの注射または点滴体積は、正確にまたは約0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、15mL、20mL、30mL、40mL、50mL以上である。ペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素は、原液として、正確にまたは約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、400U/mLまたは500U/mL(または機能的等価量)で提供してよくまたは直接使用または使用前に有効濃度まで希釈するためにより濃縮された形態、例えば正確にまたは約1000U/mL、2000単位/mL、3000U/mL、4000U/mL、5000U/mL、6000U/mL、7000U/mL、8000U/mL、9000U/mL、10,000U/mL、11,000U/mL、12,000U/mLまたは12,800U/mLで提供してよい。投与するペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素の体積は必要投与量の関数であるが、利用可能な可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素原液製剤の濃度により変わり得る。例えば、ここでは、ペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素を約50mLより多い体積で投与することは意図せず、典型的に5〜30mLの体積、一般的に約10mLを超えない体積で投与する。ペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素は、液体または凍結乾燥製剤として提供できる。凍結乾燥製剤は大きな単位投与量のペグ化ヒアルロナン分解酵素群の保存に理想的である。
【0455】
4. 組み合わせ処置
ヒアルロナン分解酵素群またはその修飾形態(例えばPEGPH20のようなペグ化ヒアルロナン分解酵素またはペグ化ヒアルロニダーゼ)のような抗ヒアルロナン剤を、例えば、癌のようなヒアルロナン関連疾患または状態の処置のための、組み合わせ処置において投与できる。抗ヒアルロナン剤の組成物は、ヒアルロナン関連疾患または状態、例えばヒアルロナン関連癌を処置するための薬物または処置のような過程のような他の治療剤または薬物または処置と共製剤または、前に、間欠的にまたは続けて共投与できる。このような薬物は、他の生物製剤、抗癌剤、小分子化合物、分散剤、麻酔剤、血管収縮剤および手術およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ここに例示する全てを含む疾患または状態の処置に利用可能なこのような他の薬物および処置は当業者に知られているまたは経験的に決定できる。
【0456】
1種以上の第二剤の製剤または1種以上の処置剤を一度に投与してよくまたは一定間隔で数回投与するために複数の小投与量に分けてよい。選択した薬物/処置製剤を、処置過程において、例えば数時間、数日間、数週間または数ヶ月にわたり1回以上の投与量で投与してよい。ある例において、連続的投与が有用である。確な投与量および投与の経過は適応および患者の耐容性によることは理解される。一般的に、ここでの第二剤/処置の投与レジメは当業者に知られる。
【0457】
一例として、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素)を、疾患または状態の処置のために第二剤または処置と投与する。一例として、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素)および第二剤または処置を共製剤し、一緒に投与してよい。他の例において、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素)を第二剤または処置製剤の後に、間欠的にまたは同時に投与する。一般的に、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素(例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素)を、第二剤または処置製剤の前に、該薬物が組織または細胞関連ヒアルロナンのレベルまたは量の減少を可能にするように投与する。例えば、ヒアルロナン分解酵素、例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素を、該酵素が例えば、間質腔、細胞外マトリックス、腫瘍組織、血液または他の組織のような対象の細胞、組織または体液におけるヒアルロン酸の減少または分解をするように第二剤または処置の前に投与する。例えば、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素)を、第二剤製剤投与の0.5分間、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、20分間、30分間、1時間以上前に投与してよい。ある例において、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化ヒアルロナン分解酵素)を第二剤製剤と一緒に投与する。当業者には当然であるが、共投与の所望の近接は、特定の組織設定および処置する特定の疾患におけるこれらの薬物の有効半減期に相当部分依存し、適切な動物モデルのような適切なモデルにおけるさまざまな時間のこれらの薬物の投与の効果の試験により容易に最適化できる。いくつかの状況で、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素またはそのポリマー結合修飾形態(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなペグ化ヒアルロナン分解酵素)の最適な投与タイミングは60分間を越える。
【0458】
例えば、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素を抗癌剤と組み合わせて投与してよい(例えば米国公開番号US2010−0003238参照)。ヒアルロナン分解酵素と組み合わせで使用する抗癌剤または処置は、手術、放射線、薬物、化学療法剤、ポリペプチド、抗体、ペプチド、小分子または遺伝子治療ベクター、ウイルスまたはDNAを含むが、これらに限定されない。
【0459】
他の例において、ここに提供される処置方法は、ヒアルロナン分解酵素に加えて、1種以上のさらなる抗ヒアルロナン剤を治療のために投与する方法を含む。抗ヒアルロナン剤は、腫瘍におけるHAの蓄積を減少させるまたは除去するあらゆる薬物を含む。このような薬物は、ここに記載するヒアルロナン分解酵素群およびまたHAの合成を阻害する薬物を含むが、これらに限定されない。例えば、ヒアルロナン合成を阻害する抗ヒアルロナン剤は、has遺伝子に対するアンチセンスまたはセンス分子を含む。このようなアンチセンスまたはセンス阻害は、典型的に少なくとも1個の鎖またはセグメントが開裂、分解または他に操作不能となるように、オリゴヌクレオチド鎖またはセグメントの水素結合ベースのハイブリダイゼーションに基づく。他の例において、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)、RNAi、リボザイムおよびDNAザイムを用いることができる。HAS1(配列番号195に示す)、HAS2(配列番号196に示す)またはHAS3(配列番号197または198に示す)の配列に基づきこのような構築物を産生するのは、当業者のレベルの範囲内である。アンチセンスまたはセンス化合物の配列は、特異的にハイブリダイズ可能となるためにその標的核酸と100%相補的でなくてもよいことは当分野で理解される。さらに、オリゴヌクレオチドは、介在または隣接セグメントがハイブリダイゼーション事象に関与しないように、1個以上のセグメントを超えてハイブリダイズできる(例えばループ構造またはヘアピン構造)。一般的に、アンチセンスまたはセンス化合物は、標的核酸内の標的領域と少なくとも70%配列相補性、例えば、75%、80%、85%、90%、95%または100%のように75%〜100%相補性である。センスまたはアンチセンス分子の例は当分野で知られる(例えばChao et al. (2005) J. Biol. Chem. 280:27513-27522; Simpson et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:10050-10057; Simpson et al. (2002) Am. J Path. 161:849; Nishida et al. (1999) J. Biol. Chem. 274:21893-21899; Edward et al. (2010) British J Dermatology 162:1224-1232; Udabage et al. (2005) Cancer Res. 65:6139;および公開米国特許出願番号US20070286856参照)。HA合成阻害剤の他の例は抗ヒアルロナン剤は4−メチルウンベリフェロン(4−MU;7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン)またはその誘導体である。4−MUは、HA合成に必要なUDP−GlcUA前駆体プールを減少させることにより働く。抗ヒアルロナン剤のさらなる例はレフルノミド(Arava)、ゲニステインまたはエルブスタチンのようなチロシンキナーゼ阻害剤である。
【0460】
ある例において、組み合わせ治療において、コルチコステロイドを、ヒアルロナン分解酵素の副作用または有害事象を寛解するために投与できる(例えば米国特許出願番号13/135,817参照)。いくつかの例において、グルココルチコイドはコルチゾン類、デキサメサゾン類、ヒドロコルチゾン類、メチルプレドニゾロン類、プレドニゾロン類およびプレドニゾン類から選択される。特定の例において、グルココルチコイドはデキサメサゾンである。典型的に、コルチコステロイドは経口投与されるが、コルチコステロイドのあらゆる投与方法が意図される。典型的に、グルココルチコイドは、正確にまたは約0.4および20mg、例えば、投与量あたり正確にまたは約0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.75mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mgまたは20mgの量で投与する。
【0461】
F.ヒアルロナン分解酵素群の核酸およびコード化ポリペプチドおよびヒアルロナン結合タンパク質の製造方法
ここに示す処置のための提供する組成物および方法において使用するためのヒアルロナン結合タンパク質のポリペプチドまたは可溶性ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素は、タンパク質精製および組み換えタンパク質発現について当分野で周知の方法により得ることができる。所望の遺伝子をコードする核酸を同定するための、当業者に知られるあらゆる方法を使用できる。当分野で利用可能なあらゆる方法を使用して、例えば、細胞または組織起源から、ヒアルロナン結合タンパク質またはヒアルロニダーゼをコードする完全長(すなわち、完全コーディング領域を包含)cDNAまたはゲノムDNAクローンを得ることができる。修飾または変異体ヒアルロナン結合タンパク質またはヒアルロニダーゼ群は、部位特異的変異誘発によるように野生型ポリペプチドから操作できる。
【0462】
ポリペプチドは、核酸分子クローニングおよび単離のための当分野で知られるあらゆる利用可能な方法を使用してクローン化または単離できる。このような方法は、核酸のPCR増幅および核酸ハイブリダイゼーションスクリーニング、抗体ベースのスクリーニングおよび活性ベースのスクリーニングを含むライブラリーのスクリーニングを含む。
【0463】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)方法を含む、核酸を増幅する方法を使用して、所望のポリペプチドをコードする核酸分子を単離できる。核酸含有物質を、所望のポリペプチドコード化核酸分子を単離できる出発物質として使用できる。例えば、DNAおよびmRNA製剤、細胞抽出物、組織抽出物、体液サンプル(例えば血液、血清、唾液)、健常および/または疾患対象からのサンプルを増幅方法に使用できる。核酸ライブラリーも出発物質の起源として使用できる。プライマーは、所望のポリペプチドを増幅するために設計できる。例えば、プライマーは、所望のポリペプチドが産生される発現配列に基づき設計できる。プライマーは、ポリペプチドアミノ酸配列の逆翻訳に基づき設計できる。増幅により産生した核酸分子を配列決定し、所望のポリペプチドのコードを確認できる。
【0464】
ベクター、例えば、タンパク質発現ベクターまたはコアタンパク質コーディングDNA配列の増幅のために設計したベクター内への合成遺伝子のクローニングを目的として、制限エンドヌクレアーゼ部位を含むリンカー配列を含むさらなるヌクレオチド配列をポリペプチドコード化核酸分子と連結できる。さらに、機能的DNA要素を特定する付加的ヌクレオチド配列を、ポリペプチドコード化核酸分子に作動可能に結合できる。このような配列の例は、細胞内タンパク質発現および分泌配列を促進するために設計したプロモータ配列、例えばタンパク質分泌を促進するために設計した異種シグナル配列を含むが、これらに限定されない。このような配列は当業者に知られている。タンパク質結合領域と特定する塩基対の配列のような付加的ヌクレオチド残基配列を、酵素コード化核酸分子に結合できる。このような領域は、特異的標的細胞への酵素取り込みを促進するまたは促進するタンパク質をコードするまたは他の点で合成遺伝子の生成物の薬物動態を変える残基の配列を含むが、これらに限定されない。例えば、酵素群はPEG部分と結合できる。
【0465】
さらに、例えばポリペプチドの検出またはアフィニティ精製を助けるためなどの目的で、タグまたは他の部分を付加することもできる。例えば、エピトープタグまたは他の検出可能マーカーを指定する塩基配列などの追加ヌクレオチド残基配列も、酵素コード核酸分子に連結することができる。そのような配列の典型例には、Hisタグ(例えば6×His、HHHHHH;配列番号54)またはFlagタグ(DYKDDDDK;配列番号55)などがある。
【0466】
次に、同定され単離された核酸を適当なクローニングベクターに挿入することができる。当技術分野で知られる多数のベクター−宿主系を使用することができる。考えられるベクターには、プラスミドまたは改変ウイルスなどがあり、これらに限定されないが、ベクター系は使用する宿主細胞と適合しなければならない。そのようなベクターには、ラムダ誘導体などのバクテリオファージ、またはpCMV4、pBR322もしくはpUCプラスミド誘導体などのプラスミド、またはBluescriptベクター(Stratagene, La Jolla, CA)などがあるが、これらに限定されない。他の発現ベクターには、本明細書に例示するHZ24発現ベクターがある。クローニングベクターへの挿入は、例えば、相補的付着末端を持つクローニングベクター中に、DNAフラグメントをライゲートすることによって達成することができる。挿入はTOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使って達成することができる。DNAをフラグメント化するために使用される相補的制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合は、DNA分子の末端を酵素的に修飾することができる。あるいは、ヌクレオチド配列(リンカー)をDNA末端にライゲートすることによって所望する任意の部位を作り出すこともでき、これらのライゲートされたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコードする特異的な化学合成オリゴヌクレオチドを含有することができる。これに代わる方法として、切断されたベクターおよびタンパク質遺伝子を、ホモポリマーテーリング(homopolymer tailing)によって修飾することもできる。組換え分子は、例えば形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションおよびソノポレーションなどによって、その遺伝子配列のコピーが数多く生成するように、宿主細胞中に導入することができる。
【0467】
特別な態様では、宿主細胞を、単離されたタンパク質遺伝子、cDNA、または合成DNA配列を組み込んだ組換えDNA分子で形質転換することにより、その遺伝子のコピーを多数生成させることができる。こうして、形質転換体を成長させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要であれば、単離した組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することにより、遺伝子を大量に得ることができる。
【0468】
1. ベクターおよび細胞
本明細書に記載するあらゆるヒアルロナン結合タンパク質またはヒアルロナン分解酵素のような所望のタンパク質の1つ以上を組換え発現させるために、タンパク質をコードするヌクレオチド配列の全部または一部を含有する核酸を、適当な発現ベクター中に、すなわち挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有するベクター中に、挿入することができる。必要な転写および翻訳シグナルは、酵素遺伝子の天然プロモーターおよび/またはそれらの隣接領域によって供給され得る。
【0469】
酵素をコードする核酸を含有するベクターも提供する。ベクターを含有する細胞も提供する。細胞には真核細胞および原核細胞が含まれ、ベクターはそこでの使用に適した任意のベクターである。
【0470】
ベクターを含有する原核細胞および真核細胞(内皮細胞を含む)を提供する。そのような細胞には、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、古細菌、植物細胞、昆虫細胞および動物細胞などがある。細胞は、コードされているタンパク質が細胞によって発現されるような条件下で上述の細胞を成長させ、発現されたタンパク質を回収することにより、そのタンパク質を生産するために使用される。本発明では、例えば酵素を、培地中に分泌させることができる。
【0471】
天然のまたは異種のシグナル配列に結合されたヒアルロナン分解酵素ポリペプチド、ある例では可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列ならびにその複数コピーを含有するベクターを提供する。ベクターは酵素タンパク質が細胞中で発現されるように選択するか、酵素タンパク質が分泌タンパク質として発現されるように選択することができる。
【0472】
種々の宿主−ベクター系を使って、タンパク質コード配列を発現させることができる。これらには、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスおよび他のウイルス)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換された細菌などがあるが、これらに限定されない。ベクターの発現要素はその強さおよび特異性がさまざまである。使用する宿主−ベクター系に依存して、数ある適切な転写および翻訳要素のどれでも1つを使用することができる。
【0473】
ベクター中にDNAフラグメントを挿入するための当業者に知られる任意の方法を使用して、適当な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列とを含むキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNAおよび合成技法、ならびにインビボ組換え体(遺伝子組換え)を含めることができる。タンパク質またはそのドメイン、誘導体、フラグメントもしくはホモログをコードする核酸配列の発現は、遺伝子またはそのフラグメントが組換えDNA分子で形質転換された宿主中で発現されるように、第2の核酸配列によって調節することができる。例えば、タンパク質の発現は、当技術分野で知られる任意のプロモーター/エンハンサーで制御することができる。具体的一態様では、プロモーターが、所望するタンパク質の遺伝子にとって天然のプロモーターではない。使用することができるプロモーターには、SV40初期プロモーター(Bernoist and Chambon, Nature 290:304-310 (1981)))、ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列(long terminal repeat)に含まれるプロモーター(Yamamoto et al. Cell 22:787-797 (1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1441-1445 (1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al., Nature 296:39-42 (1982));原核発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター(Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:5543)または
tacプロモーター(DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:21-25 (1983));Gilbert and Villa-Komaroff “Useful Proteins from Recombinant Bacteria” Scientific American 242:74-94 (1980))も参照;ノパリンシンテターゼプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 303:209-213 (1984))またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーター(Gardner et al., Nucleic Acids Res. 9:2871 (1981))、および光合成酵素リブロースビスリン酸カルボキシラーゼのプロモーター(Herrera-Estrella et al., Nature 310:115-120 (1984))を含有する植物発現ベクター;酵母および他の真菌由来のプロモーター要素、例えばGal4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示し、トランスジェニック動物で使用されてきた、以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞中で活性なエラスターゼI遺伝子制御領域(Swift et al., Cell 38:639-646 (1984); Ornitz et al., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409 (1986); MacDonald, Hepatology 7:425-515 (1987));膵β細胞中で活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan et al., Nature 315:115-122 (1985))、リンパ球様細胞中で活性な免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedl et al., Cell 38:647-658 (1984); Adams et al., Nature 318:533-538 (1985); Alexander et al., Mol. Cell Biol. 7:1436-1444 (1987))、精巣、乳房、リンパ球様細胞およびマスト細胞中で活性であるマウス乳房腫瘍ウイルス制御領域(Leder et al., Cell 45:485-495 (1986))、肝臓中で活性なアルブミン遺伝子制御領域(Pinkert et al., Genes and Devel. 1:268-276 (1987))、肝臓中で活性なα−フェトプロテイン遺伝子制御領域(Krumlauf et al., Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648 (1985); Hammer et al., Science 235:53-58 1987))、肝臓中で活性なα−1アンチトリプシン遺伝子制御領域(Kelsey et al., Genes and Devel. 1:161-171 (1987))、骨髄性細胞中で活性なβグロビン遺伝子制御領域(Magram et al., Nature 315:338-340 (1985); Kollias et al., Cell 46:89-94 (1986))、脳の希突起膠細胞中で活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readhead et al., Cell 48:703-712 (1987))、骨格筋中で活性なミオシン軽鎖−2遺伝子制御領域(Shani, Nature 314:283-286 (1985))、および視床下部の性腺刺激細胞中で活性な性腺刺激ホルモン放出ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(Mason et al., Science 234:1372-1378 (1986))を含むが、これらに限定されない。
【0474】
特異的態様において、所望のタンパク質またはそのドメイン、フラグメント、誘導体またはホモログをコードする核酸に作動可能に結合したプロモータ、1箇所以上の複製起点および所望により、1個以上の選択可能マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターを使用する。大腸菌細胞の形質転換のためのプラスミドベクターの例は、例えば、pQE発現ベクター(Qiagen, Valencia, CAから入手可能;また本システムを記載するQiagenにより公開された文献も参照)を含む。pQEベクターは、ファージT5プロモータ(大腸菌RNAポリメラーゼにより認識)および大腸菌内での厳しく制御された、組み換えタンパク質の高レベル発現を禎子湯するための二重lacオペレーター抑制モジュール、効率的翻訳のための合成リボソーム結合部位(RBS II)、6XHisタグコーディング配列、t
0およびT1転写ターミネーター、ColE1複製起点およびアンピシリン耐性を付与するためのベータ−ラクタマーゼ遺伝子を含む。pQEベクターは、組み換えタンパク質のN末端またはC末端への6xHisタグ設置を可能とする。このようなプラスミドは、全3個の読み取り枠のための複数クローニング部位を提供し、N末端6xHis−タグ付けされたタンパク質の発現を提供するpQE 32、pQE 30およびpQE 31を含む。大腸菌細胞形質転換のためのプラスミドベクターの他の例は、例えば、pET発現ベクター(米国特許4,952,496;Novagen, Madison, WIから入手可能参照;また本システムを記載するNovagenにより公開された文献も参照)。このようなプラスミドは、T7lacプロモータ、T7ターミネーター、誘導可能大腸菌lacオペレーターおよびlacリプレッサー遺伝子を含むpET 11a;T7プロモータ、T7ターミネーターおよび大腸菌ompT分泌シグナルを含むpET 12a-c;およびHisカラムでの精製に使用するためのHis−タグ
TMリーダー配列およびカラム上で精製後、開裂を可能にするトロンビン開裂部位、T7−lacプロモータ領域およびT7ターミネーターを含むpET 15bおよびpET19b(Novagen, Madison, WI)を含む。
【0475】
哺乳動物細胞発現のためのベクターの例は、HZ24発現ベクターである。HZ24発現ベクターはpCIベクター骨格から由来した(Promega)。それは、ベータ−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)、F1複製起点、サイトメガロウイルス最初期エンハンサー/プロモータ領域(CMV)およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)をコードするDNAを含む。発現ベクターはまたECMVウイルス(Clontech)由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含む。
【0476】
2. 発現
ヒアルロナン結合タンパク質および可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドを含むヒアルロナン分解酵素ポリペプチドは、インビボ法およびインビトロ法を含む、当業者に知られる任意の方法によって製造することができる。所望のタンパク質は、要求される量および形態(例えば投与および処置に必要とされる量および形態)でそのタンパク質を生産するのに適した任意の生物中で発現させることができる。発現宿主には、原核生物および真核生物、例えば大腸菌、酵母、植物、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞株およびトランスジェニック動物を含む)が含まれる。発現宿主は、そのタンパク質産生レベルが異なり得ると共に、発現されたタンパク質上に存在する翻訳後修飾のタイプも異なり得る。発現宿主の選択は、これらの因子および他の因子、例えば調節および安全性の問題、生産コスト、ならびに精製の必要性および精製の方法などに基づいて行うことができる。
【0477】
多くの発現ベクターが利用可能であり、当業者に知られており、それらをタンパク質の発現に使用することができる。発現ベクターの選択は、宿主発現系の選択によって左右されるだろう。一般に発現ベクターは、転写プロモーターを含み、場合によってはエンハンサー、翻訳シグナル、ならびに転写および翻訳終結シグナルを含み得る。安定形質転換に使用される発現ベクターは、典型的に、形質転換細胞の選択と維持を可能にする選択可能マーカーを持つ。複製起点を使用してベクターのコピー数を増幅することができる場合もある。
【0478】
ヒアルロナン結合タンパク質および可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドのようなヒアルロナン分解酵素ポリペプチドは、タンパク質融合物として利用し、または発現させることもできる。例えば、酵素に付加的機能を加えるために、酵素融合物を作製することができる。酵素融合タンパク質の例には、シグナル配列、タグ、例えば位置確認(localization)用のタグ、例えばhis
6タグもしくはmycタグ、または精製用タグ、例えばGST融合物、ならびにタンパク質分泌および/または膜会合を指示するための配列の融合物などがあるが、これらに限定されない。
【0479】
a. 原核細胞
原核生物、特に大腸菌は、大量のタンパク質を生産するための系になる。大腸菌の形質転換は当業者に周知の簡便で迅速な技法である。大腸菌用の発現ベクターは誘導性プロモーターを含有することができ、そのようなプロモーターは、高レベルのタンパク質発現を誘導するのに有用であり、宿主細胞に対して何らかの毒性を示すタンパク質を発現させるのにも有用である。誘導性プロモーターの例には、lacプロモーター、trpプロモーター、ハイブリッドtacプロモーター、T7およびSP6 RNAプロモーター、ならびに温度感受性λPLプロモーターなどがある。
【0480】
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)は、大腸菌の細胞質環境中で発現させることができる。細胞質は還元的環境であり、一部の分子にとって、これは不溶性封入体の形成をもたらし得る。タンパク質を再可溶化するにはジチオスレイトールやβ−メルカプトエタノールなどの還元剤およびグアニジン−HClや尿素などの変性剤を使用することができる。代替的アプローチは、酸化的環境ならびにシャペロニン様イソメラーゼおよびジスルフィドイソメラーゼを提供し、可溶性タンパク質の産生をもたらすことができる周辺腔におけるタンパク質の発現である。典型的に、タンパク質をペリプラズムに向かわせるリーダー配列が、発現されるべきタンパク質に融合される。その場合、リーダーは、ペリプラズム内で、シグナルペプチダーゼによって除去される。ペリプラズムを標的とする(periplasmic-targeting)リーダー配列には、ペクチン酸リアーゼ遺伝子由来のpelBリーダー、およびアルカリホスファターゼ遺伝子由来のリーダーなどがある。ペリプラズム発現により、発現されたタンパク質の培養培地への漏出が可能になる場合もある。タンパク質の分泌は培養上清からの迅速かつ簡便な精製を可能にする。分泌されないタンパク質は浸透圧溶解によってペリプラズムから得ることができる。細胞質発現と同様に、時には、タンパク質が不溶性になることもあり、可溶化および再フォールディングが容易になるように、変性剤および還元剤を使用することができる。誘導温度および成長温度も、発現レベルおよび溶解性に影響を及ぼすことがあり、典型的に、25℃〜37℃の温度が使用される。典型的に、細菌は非グリコシル化タンパク質を産生する。タンパク質が機能するためにグリコシル化を要求する場合は、宿主細胞から精製した後に、インビトロでグリコシル化を追加することができる。
【0481】
b. 酵母細胞
サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの酵母は、タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)の生産に使用することができる周知の酵母発現宿主である。酵母は、エピソーム複製ベクターで形質転換させるか、相同組換えによる安定染色体組込みで形質転換させることができる。典型的に、遺伝子発現を調節するために、誘導性プロモーターが使用される。そのようなプロモーターの例には、GAL1、GAL7およびGAL5、ならびにメタロチオネインプロモーター、例えばCUP1、AOX1、または他のピキア(Pichia)プロモーターもしくは他の酵母プロモーターがある。発現ベクターは、多くの場合、形質転換されたDNAを選択し維持するために、LEU2、TRP1、HIS3およびURA3などの選択可能マーカーを含む。酵母中で発現されたタンパク質は溶解性であることが多い。Bipなどのシャペロニン類およびタンパク質ジスルフィドイソメラーゼとの共発現により、発現レベルおよび溶解性が改善され得る。また、酵母中で発現されるタンパク質は、例えばサッカロミセス・セレビシェに由来する酵母接合型α因子分泌シグナルなどの分泌シグナルペプチド融合物、およびAga2p接合付着受容体(mating adhesion receptor)またはアークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)グルコアミラーゼなどの酵母細胞表面タンパク質との融合物を使って、分泌するように指示することもできる。発現されたポリペプチドが分泌経路を出た時に、融合された配列を発現されたポリペプチドから除去するために、プロテアーゼ切断部位、例えばKex−2プロテアーゼの切断部位を、工学的に作ることができる。酵母はAsn−X−Ser/Thrモチーフでグリコシル化を行う能力も持つ。
【0482】
c. 昆虫細胞
昆虫細胞、特にバキュロウイルス発現を用いるものは、ヒアルロナン結合タンパク質および可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドのようなヒアルロナン分解酵素ポリペプチドを含むポリペプチドを発現させるのに有用である。昆虫細胞は高レベルのタンパク質を発現し、高等真核生物が使用する翻訳後修飾の大半を行う能力を持つ。バキュロウイルスは宿主域が制限されており、それが安全性を向上させ、真核細胞発現に関する規制上の懸念を減少させる。典型的な発現ベクターは、高レベル発現用のプロモーター、例えばバキュロウイルスのポリヘドリンプロモーターを使用する。よく使用されるバキュロウイルス系は、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多核体病ウイルス(AcNPV)およびカイコ(Bombyx mori)核多核体病ウイルス(BmNPV)などのバキュロウイルスと、例えばツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)に由来するSf9、シューダレチア・ユニパンクタ(Pseudaletia unipuncta)(A7S)およびオオカバマダラ(Danaus plexippus)(DpN1)などの昆虫細胞株を含む。高レベル発現には、発現されるべき分子のヌクレオチド配列を、ウイルスのポリヘドリン開始コドンのすぐ下流に融合する。哺乳類分泌シグナルは昆虫細胞では正確にプロセシングされ、発現されたタンパク質を培養培地中に分泌させるには、これらのシグナルを使用することができる。加えて、細胞株シューダレチア・ユニパンクタ(A7S)およびオオカバマダラ(DpN1)は、哺乳動物細胞系と類似するグリコシル化パターンを持つタンパク質を産生する。
【0483】
昆虫細胞におけるもう一つの発現系は安定形質転換細胞の使用である。発現には、シュナイダー(Schneider)2(S2)細胞およびKc細胞(キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))およびC7細胞(ヒトスジシマカ(Aedes albopictus))などの細胞株を使用することができる。カドミウムまたは銅による重金属誘導の存在下で高レベル発現を誘導するために、ショウジョウバエ(Drosophila)メタロチオネインプロモーターを使用することができる。発現ベクターは、典型的には、ネオマイシンやハイグロマイシンなどの選択可能マーカーの使用によって維持される。
【0484】
d. 哺乳動物細胞
ヒアルロナン結合タンパク質および可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチドのようなヒアルロナン分解酵素ポリペプチドを含むタンパク質を発現させるために、哺乳類発現系を使用することができる。発現構築物は、アデノウイルスなどのウイルス感染によって、またはリポソーム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランなどの直接的DNA導入によって、また、エレクトロポレーションやマイクロインジェクションなどの物理的手段によって、哺乳動物細胞に導入することができる。哺乳動物細胞用の発現ベクターは、典型的に、mRNAキャップ部位、TATAボックス、翻訳開始配列(コザック(Kozak)コンセンサス配列)およびポリアデニル化要素を含む。選択可能マーカーなどのもう一つの遺伝子との2シストロン性発現が可能になるように、IRES要素も加えることができる。そのようなベクターは、多くの場合、高レベル発現のための転写プロモーター−エンハンサー、例えばSV40プロモーター−エンハンサー、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)の末端反復配列などを含む。これらのプロモーター−エンハンサーは多くの細胞タイプにおいて活性である。発現には、組織型および細胞型のプロモーターおよびエンハンサー領域も使用することができる。典型的なプロモーター/エンハンサー領域には、エラスターゼI、インスリン、免疫グロブリン、マウス乳房腫瘍ウイルス、アルブミン、αフェトプロテイン、α1アンチトリプシン、βグロビン、ミエリン塩基性タンパク質、ミオシン軽鎖2、および性腺刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子制御領域(gonadotropic releasing hormone gene control)などの遺伝子に由来するものがあるが、これらに限定されない。発現構築物を持つ細胞を選択し、維持するために、選択可能マーカーを使用することができる。選択可能マーカー遺伝子の例には、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、アデノシンデアミナーゼ、キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼなどがあるが、これらに限定されない。例えば、DHFR遺伝子を発現させる細胞だけを選択するために、メトトレキサートの存在下で発現を行うことができる。TCR−ζやFc
εRI−γなどの細胞表面シグナリング分子との融合により、細胞表面上で活性な状態にあるタンパク質の発現を指示することができる。
【0485】
哺乳類発現には、マウス細胞、ラット細胞、ヒト細胞、サル細胞、ニワトリ細胞およびハムスター細胞など、多くの細胞株を利用することができる。典型的細胞株には、CHO、Balb/3T3、HeLa、MT2、マウスNS0(非分泌性)および他の骨髄腫細胞株、ハイブリドーマおよびヘテロハイブリドーマ細胞株、リンパ球、線維芽細胞、Sp2/0、COS、NIH3T3、HEK293、293S、2B8、およびHKB細胞などがあるが、これらに限定されない。細胞培養培地からの分泌タンパク質の精製を容易にする無血清培地に適応した細胞株も利用できる。例として、CHO−S細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA, cat # 11619-012)および無血清EBNA−1細胞株(Pham et al., (2003) Biotechnol. Bioeng. 84:332-342)が挙げられる。発現量が最大になるように最適化された特別な培地での成長に適応した細胞株も利用できる。例えばDG44 CHO細胞は、動物性産物を含まない合成培地における懸濁培養での成長に適応している。
【0486】
e. 植物
タンパク質(例えば本明細書に記載する任意のタンパク質)を発現させるために、トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物を使用することができる。発現構築物は、典型的に、微粒子銃(マイクロprojectile bombardment)やプロトプラストへのPEGによる導入などといった直接的DNA導入を使って、またアグロバクテリウムによる形質転換を使って、植物に導入される。発現ベクターは、プロモーターおよびエンハンサー配列、転写終結要素および翻訳制御要素を含むことができる。発現ベクターおよび形質転換技法は、通常は、アラビドプシス(Arabidopsis)やタバコなどの双子葉植物宿主用と、トウモロコシやイネなどの単子葉植物宿主用とに分けられる。発現に使用される植物プロモーターの例には、カリフラワーモザイクウイルスプロモーター、ノパリンシンターゼプロモーター、リボース二リン酸カルボキシラーゼプロモーター、ならびにユビキチンプロモーターおよびUBQ3プロモーターなどがある。形質転換細胞の選択と維持が容易になるように、ハイグロマイシン、ホスホマンノースイソメラーゼおよびネオマイシンホスホトランスフェラーゼなどの選択可能マーカーが、多くの場合、使用される。形質転換植物細胞は、細胞、凝集体(カルス組織)として培養維持するか、全植物体に再生させることができる。トランスジェニック植物細胞には、ヒアルロニダーゼポリペプチドを産生するように工学的に操作された藻類も含めることができる。植物は哺乳動物細胞とは異なるグリコシル化パターンを持つので、これは、これらの宿主中で生産されたタンパク質の選択に影響を及ぼし得る。
【0487】
3. 精製方法
ヒアルロナン結合タンパク質およびヒアルロナン分解酵素ポリペプチド(例えば可溶性ヒアルロニダーゼポリペプチド)または他のタンパク質を含むポリペプチドを宿主細胞から精製するための方法は、選択した宿主細胞と発現系に依存するだろう。分泌される分子の場合、タンパク質は一般に、細胞を除去した後に、培養培地から精製される。細胞内発現の場合は、細胞を溶解し、タンパク質を抽出物から精製することができる。トランスジェニック植物やトランスジェニック動物などのトランスジェニック生物を発現に使用する場合は、組織または臓器を、溶解細胞抽出物を作るための出発物質として使用することができる。また、トランスジェニック動物生産には、乳または卵におけるポリペプチドの生産を含めることができ、それらは、収集し、必要であれば、当技術分野における標準的方法を使って、タンパク質を抽出し、さらに精製することができる。
【0488】
タンパク質は、当技術分野において知られる標準的なタンパク質精製技法、例えば限定するわけではないが、SDS−PAGE、サイズ分画およびサイズ排除クロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、およびアニオン交換などのイオン交換クロマトグラフィーなどを使って精製することができる。効率および調製物の純度を改善するためにアフィニティ精製技法を利用することもできる。アフィニティ精製では、例えばヒアルロナン結合タンパク質またはヒアルロニダーゼ酵素を結合する抗体、受容体および他の分子を使用することができる。発現構築物を工学的に操作して、mycエピトープ、GST融合物またはHis
6などのアフィニティタグをタンパク質に付加し、それぞれmyc抗体、グルタチオン樹脂およびNi樹脂を使ってアフィニティ精製することもできる。純度は、当技術分野で知られる任意の方法、例えばゲル電気泳動および染色および分光測光技法などによって評価することができる。ここで提供する精製rHuPH20組成物は、典型的に少なくとも70,000〜100,000単位/mg、例えば、約120,000単位/mgの比活性を有する。比活性は、ポリマーでのような修飾により変わり得る。
【0489】
4. ヒアルロナン分解酵素ポリペプチドのペグ化
ポリエチレングリコール(PEG)は、主に典型的に非免疫原性である生体適合性、非毒性、水可溶性ポリマーであることを理由として、生体材料、バイオテクノロジーおよび医薬で広く使用されている(Zhao and Harris, ACS Symposium Series 680: 458-72, 1997)。薬物送達の分野において、PEG誘導体は、免疫原性、タンパク質分解および腎クリアランスを下げ、溶解度を上げるためにタンパク質への共有結合付着(すなわち“ペグ化”)で使用されている(Zalipsky, Adv. Drug Del. Rev. 16:157-82, 1995)。同様に、PEGは、低分子量の相対的に疎水性薬物に、溶解度を上げ、毒性を下げ、体内分布を変えるために結合されている。典型的に、ペグ化薬物は溶液として注射される。
【0490】
密接に関連する適用は、分解可能、可溶性薬物担体の設計に使用するのと同じ化学のほとんどが、分解性ゲルの設計にも使用できるため、薬物送達に使用するための架橋分解性PEGネットワークまたは製剤の合成である(Sawhney et al., Macromolecules 26: 581-87, 1993)。高分子内複合体が、2個の相補的ポリマーの溶液の混合により形成できることも知られている。このような複合体は、一般的に関与する複数ポリマー間の静電気的相互作用(ポリアニオン−ポリカチオン)および/または水素結合(ポリ酸−ポリ塩基)および/または水性環境の複数ポリマー間の疎水相互作用により安定である(Krupers et al., Eur. Polym J. 32:785-790, 1996)。例えば、ポリアクリル酸(PAAc)およびポリエチレンオキシド(PEO)の溶液の適切な条件下での混合は、ほとんど水素結合により複合体形成をもたらす。解生理的条件下でのこれらの複合体の離が遊離薬物(すなわち、非ペグ化)送達に使用されている。さらに、相補的ポリマーの複合体はホモポリマーおよびコポリマーの両者から形成されている。
【0491】
ペグ化のための多数の試薬が当分野で記載されている。このような試薬は、N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化PEG、スクシンイミジルmPEG、mPEG
2−N−ヒドロキシスクシンイミド、mPEGスクシンイミジルアルファ−メチルブタノエート、mPEGスクシンイミジルプロピオネート、mPEGスクシンイミジルブタノエート、mPEGカルボキシメチル3−ヒドロキシブタン酸スクシンイミジルエステル、ホモ二官能性PEG−スクシンイミジルプロピオネート、ホモ二官能性PEGプロピオンアルデヒド、ホモ二官能性PEGブチルアルデヒド、PEGマレイミド、PEGヒドラジド、p−ニトロフェニル−カーボネートPEG、mPEG−ベンゾトリアゾールカーボネート、プロピオンアルデヒドPEG、mPEGブチルアルデヒド、分枝mPEG
2ブチルアルデヒド、mPEGアセチル、mPEGピペリドン、mPEGメチルケトン、mPEG“リンカーレス”マレイミド、mPEGビニルスルホン、mPEGチオール、mPEGオルトピリジルチオエステル、mPEGオルトピリジルジスルフィド、Fmoc−PEG−NHS、Boc−PEG−NHS、ビニルスルホンPEG−NHS、アクリレートPEG−NHS、フルオレセインPEG−NHSおよびビオチンPEG−NHSを含むが、これらに限定されない(例えば、Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6:62-69, 1995; Veronese et al., J. Bioactive Compatible Polymers 12:197-207, 1997;U.S.5,672,662;U.S.5,932,462;U.S.6,495,659;U.S.6,737,505;U.S。4,002,531;U.S。4,179,337;U.S.5,122,614;U.S.5,324、844;U.S.5,446,090;U.S.5,612,460;U.S.5,643,575;U.S.5,766,581;U.S.5,795、569;U.S.5,808,096;U.S.5,900,461;U.S.5,919,455;U.S.5,985,263;U.S.5,990、237;U.S.6,113,906;U.S.6,214,966;U.S.6,258,351;U.S.6,340,742;U.S.6,413,507;U.S.6,420,339;U.S.6,437,025;U.S.6,448,369;U.S.6,461,802;U.S.6,828,401;U.S.6,858,736;U.S.2001/0021763;U.S.2001/0044526;U.S.2001/0046481;U.S.2002/0052430;U.S.2002/0072573;U.S.2002/0156047;U.S.2003/0114647;U.S.2003/0143596;U.S.2003/0158333;U.S.2003/0220447;U.S.2004/0013637;US2004/0235734;WO05000360;U.S.2005/0114037;U.S.2005/0171328;U.S.2005/0209416;EP1064951;EP0822199;WO01076640;WO0002017;WO0249673;WO9428024;およびWO0187925参照)。
【0492】
一例として、ポリエチレングリコールは約3kD〜約50kD、典型的に約5kD〜約30kDの範囲の分子量を有する。PEGの薬物への共有結合付着(“ペグ化”として知られる)は既知化学的合成技術により達成できる。例えば、タンパク質のペグ化は、NHS−活性化PEGとタンパク質の適切な反応条件下での反応により達成できる。
【0493】
多数の反応がペグ化について記載されているが、ほとんど一般的に適応可能であるものは、方向性として、穏やかな反応条件の利用を示し、毒除去のために性触媒または副生成物大規模下流処理を必要としない。例えば、モノメトキシPEG(mPEG)は1個の反応性末端ヒドロキシルしか有さず、それゆえにその使用は、得られたPEG−タンパク質生成物混合物の不均一性を幾分制限する。ポリマーの末端メトキシ基と逆の末端のeヒドロキシル基の活性化が、一般的に効率的タンパク質ペグ化に必要であり、目的は誘導体化PEGを求核性攻撃に対してより感受性とすることである。攻撃求核試薬は、通常リジル残基のイプシロン−アミノ基であるが、局所条件が望ましいならば、他のアミン類も反応できる(例えばヒスチジンのN末端アルファ−アミンまたは環アミン類)。より直接的付着は、単一リシンまたはシステインを含むタンパク質で可能である。後者の残基を、チオール−特異的修飾のためにPEG−マレイミドにより標的化できる。あるいは、PEGヒドラジドを過ヨウ素酸酸化ヒアルロナン分解酵素と反応させて、NaCNBH
3の存在下減少できる。さらに具体的に、ペグ化CMP糖類を、適当なグリコシル−トランスフェラーゼ類の存在下でヒアルロナン分解酵素と反応させ得る。一つの方法は、多くの重合体分子を問題のポリペプチドと結合する“ペグ化”である。この方法を使用するとき、免疫系は、抗体形成を担うポリペプチド表面上のエピトープ認識が困難となり、それにより免疫応答が低減する。特定の生理学的効果を与えるためにヒト体内の循環器に直接導入されたポリペプチドについて(すなわち医薬)、典型的潜在的免疫応答はIgGおよび/またはIgM応答であるが、呼吸器から吸入されたポリペプチド(すなわち産業的ポリペプチド)は潜在的にIgE応答(すなわちアレルギー性応答)を起し得る。免疫応答減少を説明する一つの理論は、重合体分子が抗体形成に至る免疫応答を担うポリペプチド表面上のエピトープを遮蔽することである。他の理論または少なくとも一部の因子は、コンジュゲートが重いほど、免疫応答が減少することである。
【0494】
典型的に、ペグ化ヒアルロニダーゼ群を含むここで提供されるペグ化ヒアルロナン分解酵素群を製造するために、PEG部分を、共有結合付着を介して、ポリペプチドに結合させる。ペグ化の方法は、特定化リンカーおよびカップリング化学(例えば、Roberts, Adv. Drug Deliv. Rev. 54:459-476, 2002参照)、単一結合部位への複数PEG分子の付着(例えば、分枝PEGの使用を介する;例えば、Guiotto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 12:177-180, 2002参照)、部位特異的ペグ化および/またはモノ−ペグ化(例えば、Chapman et al., Nature Biotech. 17:780-783, 1999参照)、および部位特異的酵素ペグ化(例えば、Sato, Adv. Drug Deliv. Rev., 54:487-504, 2002参照)を含むが、これらに限定されない。文献に記載された方法および技術により、一タンパク質分子に結合した1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個または10個を超えるPEGまたはPEG誘導体を有するタンパク質類が産生される(例えば、U.S.2006/0104968参照)。
【0495】
ペグ化ヒアルロニダーゼ群のようなペグ化ヒアルロナン分解酵素群の製造方法の説明の例として、PEGアルデヒド類、スクシンイミド類およびカーボネート類が、各々PEG部分、典型的にスクシンイミジルPEGsをrHuPH20に結合するために適用されている。例えば、rHuPH20は、mPEG−スクシンイミジルプロピオネート類(mPEG−SPA)、mPEG−スクシンイミジルブタノエート類(mPEG−SBA)および(“分枝”PEGs結合のために)mPEG2−N−ヒドロキシルスクシンイミドを含む例示的スクシンイミジルモノPEG(mPEG)試薬と結合されている。これらのペグ化スクシンイミジルエステル類は、PEG基と活性化クロスリンカーの間に種々の長さの炭素骨格を有し、単一または分枝PEG基である。これらの差異を使用して、例えば、結合工程中のrHuPH20へのPEG付着に利用可能な異なる反応動力学および潜在的制限部位を提供できる。
【0496】
直鎖または分枝鎖PEGsを含むスクシンイミジルPEGs(上記)をrHuPH20と結合できる。PEGsを使用して、平均してヒアルロニダーゼあたり約3〜6または3〜6PEG分子を有する分子を含むrHuPH20sを再現性よく産生できる。このようなペグ化rHuPH20組成物は、容易に精製して約25,000または30,000単位/mgタンパク質ヒアルロニダーゼ活性の比活性を有する組成物を得られ、実質的に非ペグ化rHuPH20が存在しない(多くても5%非ペグ化)。
【0497】
種々のPEG試薬を使用して、例示したヒアルロナン分解酵素群、特に可溶性ヒト組み換えヒアルロニダーゼ群(例えばrHuPH20)を、例えば、mPEG−SBA(30kD)、mPEG−SMB(30kD)およびmPEG2−NHS(40kD)およびmPEG2−NHS(60kD)に基づく分枝変異体を使用して製造できる。rHuPH20のペグ化型は、NHS化学を使用して、ならびにカーボネート類およびアルデヒド類は各々試薬を使用して製造できる:mPEG2−NHS−40K分枝、mPEG−NHS−10K分枝、mPEG−NHS−20K分枝、mPEG2−NHS−60K分枝;mPEG−SBA−5K、mPEG−SBA−20K、mPEG−SBA−30K;mPEG−SMB−20K、mPEG−SMB−30K;mPEG−butyrアルデヒド;mPEG−SPA−20K、mPEG−SPA−30K;およびPEG−NHS−5K−ビオチン。ペグ化ヒアルロニダーゼ群はまた、Dowpharmaのp−ニトロフェニル−カーボネートPEG(30kDa)およびプロピオンアルデヒドPEG(30kDa)でのヒアルロニダーゼ群ペグ化を含む、Dow Chemical Corporationの一部であるDowpharmaから入手可能なPEG試薬を使用しても製造されている。
【0498】
一例として、ペグ化は、mPEG−SBA、例えば、mPEG−SBA−30K(約30kDaの分子量を有する)またはPEGブタン酸誘導体の他のスクシンイミジルエステル類の可溶性ヒアルロニダーゼへの結合を含む。mPEG−SBA−30KのようなPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステル類は、タンパク質のアミノ基に容易に結合する。例えば、m−PEG−SBA−30KおよびrHuPH20(約60KDaサイズ)の共有結合的結合は、下記スキーム1に示すとおりrHuPH20とmPEGの安定なアミド結合を提供する。
【化2】
【0499】
典型的に、mPEG−SBA−30Kまたは他のPEGを、ヒアルロナン分解酵素、ある場合にはヒアルロニダーゼに、PEG:ポリペプチドモル比10:1で、適切な緩衝液、例えばpH6.8の130mM NaCl/10mM HEPESまたは70mMリン酸緩衝液、pH7中で添加し、続いて滅菌、例えば無菌濾過し、例えば、一夜、4℃の冷室で、撹拌しながら、結合を続ける。一例として、結合PEG−ヒアルロナン分解酵素を濃縮し、緩衝液交換する。
【0500】
MPEG−SBA−30KのようなPEGブタン酸誘導体のスクシンイミジルエステル類をカップリングする他の方法は当分野で知られる(例えば、U.S.5,672,662;U.S.6,737,505;およびU.S.2004/0235734参照)。例えば、ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロニダーゼ)のようなポリペプチドを、NHS活性化PEG誘導体と、ホウ酸緩衝液(0.1M、pH8.0)中、1時間、4℃で反応させることによりカップリングできる。得られたペグ化タンパク質を限外濾過により精製できる。あるいは、ウシアルカリホスファターゼのペグ化を、ホスファターゼとmPEG−SBAを、0.2Mリン酸ナトリウムおよび0.5M NaCl(pH7.5)含有緩衝液中、4℃で30分間混合することにより達成できる。未反応PEGを限外濾過により除去できる。他の方法は、ポリペプチドとmPEG−SBAを、脱イオン水中で反応させ、そこにトリエチルアミンをpHを7.2〜9に上げるために添加する。得られた混合物を室温で数時間撹拌して、ペグ化を完了させる。
【0501】
例えば、動物由来ヒアルロニダーゼ群および細菌ヒアルロナン分解酵素群を含むヒアルロナン分解ポリペプチドのペグ化方法は当業者に知られる。例えば、ウシ精巣ヒアルロニダーゼおよびコンドロイチンABCリアーゼのペグ化を記載する欧州特許番号EP0400472参照。また、米国公開番号2006014968は、ヒトPH20由来ヒトヒアルロニダーゼのペグ化を記載する。例えば、ペグ化ヒアルロナン分解酵素は、一般的に分子あたり少なくとも3個のPEG部分を含む。例えば、ヒアルロナン分解酵素は、5:1〜9:1、例えば、7:1のPEG対タンパク質モル比であり得る。
【0502】
G. 抗ヒアルロナン剤の活性評価および効果モニタリングの方法
抗ヒアルロナン剤、例えばヒのようなアルロニダーゼまたは修飾ヒアルロニダーゼ(例えばPH20またはPEGPH20)ヒアルロナン分解酵素群は、単独でまたはヒアルロナン関連疾患および状態、特に癌の処置のための化学療法剤のような第二剤と組み合わせて治療剤である(例えば、US2010/0003238およびWO09/128917参照)。さらに、本明細書のいずれかに記載するとおり、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素での治療は、ペグ化ヒアルロニダーゼの全身性、例えば筋骨格副作用を最小化するためにコルチコステロイドでの処置を伴い得る。ここで提供するTSG−6−LMまたはTSG−6−LM:Fcまたはその変異体のようなHABPコンパニオン診断を、癌のようなヒアルロナン関連疾患または障害の処置に使用する抗ヒアルロナン剤治療、例えばヒアルロナン分解酵素治療と組み合わせて、該薬物(例えばヒアルロナン分解酵素)に対する応答性および処置効果をモニタリングできる。さらに、補助剤または補足方法もまた、単独またがコルチコステロイドとの組み合わせ処置における抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素群)の効果の評価に利用できる。コルチコステロイドによる副作用改善の評価、ならびにヒアルロナン分解酵素治療を含む抗ヒアルロナン剤治療の効果、耐容性および薬物動態試験は当業者のレベルの範囲内である。このセクションは、ヒアルロナン分解酵素治療の効果、応答性、耐容性および/または薬物動態の評価に使用できる補助剤または補足方法を説明する。
【0503】
1. 副作用評価方法
インビボアッセイは、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素または全身性半減期延長を示すように修飾したヒアルロニダーゼ(例えばPH20またはPEGPH20)が原因であり得る筋骨格副作用の改善または除去に対するコルチコステロイドの効果の評価に使用できる。評価し得る副作用は、例えば、筋肉および関節痛、上肢および下肢硬直、筋痙攣、筋炎、筋肉ひりひり感および全身の圧痛、脱力、疲労および/または膝または肘関節可動域減少を含み得る。副作用を評価するためのアッセイは、動物が運動減少、行動または姿勢変化、X線検査知見、組織病理学的変化および他の顕著な臨床的観察について観察できるものである、動物モデルを含み得る。他のアッセイは、患者に症状に関して質問し、理学的検査、造影(例えばMRIまたはPETによる)または放射線学的評価により評価できる、ヒト対象における臨床試験であり得る。抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素剤)の投与が原因の副作用の改善は、コルチコステロイド存在下で、それが不在のときと比較して副作用が寛解し、除かれ、軽減しまたは減少したとき観察される。
【0504】
このような例において、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)および/またはコルチコステロイドの投与量は、活性を達成するのに必要であるが、副作用を改善する最適または最小投与量を同定するために変わり得る。このような試験は当業者のレベルの範囲内である。さらに、投与量レジメは変わり得る。例えば、試験は、ヒアルロナン分解酵素の月に1回、隔週、1週間に1回、1週間に2回、1週間に3回、1週間に4回以上の投与スケジュールを使用して実施できる。さらに、コルチコステロイドを、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の投与前、同時および/または後に投与してよい。
【0505】
例えば、インビボ動物モデルを利用して、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドが、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与と関連する副作用を寛解するまたはなくす能力を評価できる。動物モデルは、カニクイザルまたはアカゲザルのような非ヒト霊長類、イヌ、例えばビーグル犬または抗ヒアルロナン剤(例えばペグ化ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素、例えばPEGPH20)処置での処置に応答して有害副作用を他の動物を含み得る。動物モデルに、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)をコルチコステロイド存在下または非存在下に投与し、筋骨格効果を観察または測定し得る。
【0506】
観察可能または測定可能な筋骨格事象が可能な例えば、カニクイザル、ビーグルまたは他の類似の動物モデルのような動物を、コルチコステロイド存在下または非存在下ヒアルロナン分解酵素で処置する。一例として、一群の動物、例えばカニクイザルまたはビーグルにヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤単独、例えばペグ化ヒアルロニダーゼを、静脈内投与によるように投与する。例えば、投与は1週間に2回であり得る。膝および肘関節で肢関節可動域に変化が見られるまでまたは硬直または運動減少が見られるまで処置を津図ける。次いで、他の群の動物を、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)およびコルチコステロイド投与により、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与と同日のデキサメサゾンまたは他のコルチコステロイドの経口投与によるように処置する。これらの群の動物を、次いで、例えば、当業者に知られた関節可動域または他の運動減少、関節の病理組織学、硬直についての触診または造影の理学的検査を介して比較して、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドが、ヒアルロナン分解酵素仲介のような抗ヒアルロナン剤仲介筋骨格副作用を寛解する能力を評価し得る。デキサメサゾンのようなコルチコステロイドの投与量、投与頻度、投与経路および投与のタイミングは、コルチコステロイドの有効性を最適化するために変化し得る。
【0507】
他の例において、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与と関連する有害副作用の改善または除去に対するデキサメサゾンのようなコルチコステロイドの効果を、固形腫瘍を有するヒト患者で評価し得る。例えばヒト患者に、筋肉および関節痛/上肢および下肢硬直、筋痙攣、筋肉、筋炎筋肉ひりひり感および全身の圧痛、脱力および疲労の一つ以上を含むが、これらに限定されない抗ヒアルロナン剤仲介(例えばヒアルロナン分解酵素仲介)有害事象の寛解および/または除去する能力を試験するためにコルチコステロイドを投与し得る。患者は、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドの共処置有りまたは無しで抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)で処置し得る。抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与中および後、両処置群の副作を評価できる。医師は、例えば、患者愁訴、バイタルサイン、体重変化、12−リードECG、心エコー図、臨床化学または造影(MRI、PETまたは放射線学的評価)を含む対象の理学的検査により症状の重症度を決定できる。症状の重症度を、次に、NCI有害事象共通用語規準(CTCAE)等級付けシステムを使用して定量できる。CTCAEは、有害事象(AE)報告にしようする記述用語である。等級付け(重症度)スケールは各AE用語について提供される。CTCAEは、次の一般的ガイドラインに基づく各有害事象の重症度についての臨床的説明により、グレード1〜5を示す:グレード1(軽度AE);グレード2(中程度AE);グレード3(重度AE);グレード4(生命を脅かすまたは無力にするAE);およびグレード5(AEと関連する死)。コルチコステロイドが抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)投与と関連する有害副作用を寛解する能力は、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)およびコルチコステロイドで処置されている対象におけるCTCAEスケールの1個以上の有害副作用の等級付けまたは重症度の、同じ抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)単独で処置されている対象と比較した減少により毒低でき、すなわち、副作用の重症度は、グレード3からグレード1またはグレード2に減少する。
【0508】
他の例において、ヒト患者に抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の投与量を増加させながら投与して耐容性を評価し、副作用の重症度による指標として用量規制毒性を評価し得る。このような例において、コルチコステロイドのような寛解剤存在下で耐容できる抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の最大耐量を決定できる。処置レジメンは、患者は同じ投与量レベルのコルチコステロイドでヒアルロナン分解酵素の投与量を上げていく、投与量漸増を含み得る。患者は、副作用がもはや耐容性ではなくなる前にコルチコステロイドと併用できるヒアルロナン分解酵素の最高投与量について決定するために有害事象をモニターできる。耐容性は、処置中および後に現れる症状の重症度に基づき測定できる。抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の投与量を、有害効果が予め決定したレベル、例えば、グレード3に到達するまで増加してよい。投与レジメンはまたコルチコステロイドの継続的必要性および生じる副作用に関する抗ヒアルロナン剤の蓄積の可能性を試験するために、コルチコステロイドの量のテーパリングも含み得る。
【0509】
2. 抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素活性)の活性と関連するバイオマーカーの評価
ここに記載するとおり、HA表現型の程度およびレベルは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の効果および活性と関連および相関するバイオマーカーである。例えば、進行固形腫瘍のような腫瘍を有する癌患者において、腫瘍および間質関連のHAレベルの低下は、投与したヒアルロナン分解酵素活性のバイオマーカーである。本明細書のいずれかに記載するとおり、組織(例えば腫瘍生検)または体液(例えば血漿)に存在するHAを検出するためのHABP結合アッセイは、抗ヒアルロナン(例えばヒアルロナン分解酵素)の治療効果を評価およびモニターするために実施できる。
【0510】
さらに、アッセイは、ヒアルロナン阻害または分解活性に対する抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)の効果をさらに評価するために、組織(例えば腫瘍生検)または体液(例えば血漿)中のHAの検出に使用するHABPアッセイと独立してまたは組み合わせて実施できる。特に、癌のようなヒアルロナン関連疾患または状態の処置について、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロナン分解酵素活性の活性と関連する臨床的指標またはバイオマーカー関連は、腫瘍代謝活性減少、見かけの拡散増加および腫瘍灌流亢進および/またはHA異化産物増加を含むが、これらに限定されない。このようなバイオマーカーを測定するさらなるアッセイは、血液または尿中のヒアルロナン異化産物の測定、血漿中のヒアルロニダーゼ活性測定または腫瘍中の間質性流体圧、血管体積または水含量の測定を含むが、これらに限定されない。このようなアッセイを実施するのは当業者のレベルの範囲内である。
【0511】
これらのアッセイは、ヒアルロナン分解酵素で処置された動物モデルまたはヒト患者で実施できる。例えば、ヒアルロナン関連疾患、障害または状態の動物モデルを使用して、抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素または半減期延長のために修飾したヒアルロニダーゼ(例えばPH20またはPEGPH20)の投与のインビボでの影響を評価し得る。化学療法剤のような他の薬物も本活性評価に包含してよい。適当な動物モデルを使用できるヒアルロナン関連疾患の例は、固形腫瘍、例えば、末期癌、転移癌、未分化癌、卵巣癌、上皮内癌(ISC)、扁平上皮細胞癌(SCC)、前立腺癌、膵癌、非小細胞性肺癌、乳癌、結腸癌および他の癌を含む。またヒアルロナン関連疾患および障害の例は、炎症性疾患、ディスク圧、癌および浮腫、例えば、臓器移植、卒中、脳外傷または他の傷害が原因の浮腫である。
【0512】
動物モデルは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、モルモットおよびカニクイザルまたはアカゲザルのような非ヒト霊長類モデルを含むが、これらに限定されないものであり得る。ある例において、ヌードマウスまたはSCIDマウスのような免疫欠損マウスに、ヒアルロナン関連癌からの腫瘍細胞株を移植し、該癌の動物モデルを確立する。ヒアルロナン関連癌由来の細胞株の例は、PC3前立腺癌細胞、BxPC-3膵腺癌細胞、MDA-MB-231乳癌細胞、MCF-7乳房腫瘍細胞、BT474乳房腫瘍細胞、Tramp C2前立腺腫瘍細胞およびMat-LyLu前立腺癌細胞およびここにヒアルロナン関連である、例えば増加したレベルのヒアルロナンを含むと記載されている他の細胞株を含むが、これらに限定されない。次いで、ヒアルロナン分解酵素のような抗ヒアルロナン剤を、例えば、ヒアルロナンレベルまたは含量の測定により、抗ヒアルロナン活性に対するコルチコステロイドの影響を評価するために、デキサメサゾンのようなコルチコステロイドと共にまたは無しで動物に投与してよい。ヒアルロナン含量は、ヒアルロナンについて腫瘍組織サンプルを染色することによりまたは血漿中の可溶性ヒアルロナンレベルを測定することにより測定できる。抗ヒアルロナン活性の他の測定は、腫瘍体積、ハローの形成またはサイズ、間質性流体圧、水含量および/または血管体積の評価を含む。
【0513】
他の例において、ビーグル犬のようなイヌを、デキサメサゾンのようなコルチコステロイド存在下または非存在下で抗ヒアルロナン剤で処置し得る。皮膚または骨格筋組織のような組織を組織診し、ヒアルロナンについて染色し、目視により評価する。次いで、抗ヒアルロナン剤単独で処置した動物の組織を、抗ヒアルロナン活性に対するコルチコステロイドの影響を測定するために抗ヒアルロナン剤およびコルチコステロイドで処置した動物由来の組織と比較する。
【0514】
ヒアルロナン分解酵素活性のような抗ヒアルロナン剤の活性のアッセイはヒト対象でも実施し得る。例えば、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)活性と関連するバイオマーカーを測定するためのアッセイを、ヒアルロナン関連疾患または状態(例えば癌)を有することが知られているまたは有することが疑われ、ヒアルロナン分解酵素(例えばPEGPH20)で処置されているヒト対象で実施し得る。
【0515】
a. ヒアルロナン分解酵素の活性を評価するためのアッセイ
ヒアルロナン分解酵素の活性は当技術分野で周知の方法を使って評価することができる。例えば、ヒアルロニダーゼに関するUSP XXIIアッセイでは、酵素をHAと37℃で30分間反応させた後に残存する未分解ヒアルロン酸またはヒアルロナン(HA)基質の量を測定することにより、活性が間接的に決定される(USP XXII-NF XVII (1990) 644-645 United States Pharmacopeia Convention, Inc, Rockville, MD)。アッセイでは、ヒアルロニダーゼ参照標準(USP)または国民医薬品集(National Formulary)(NF)標準ヒアルロニダーゼ溶液を使って、任意のヒアルロニダーゼの活性を単位数として確認することができる。ある例では微小濁度アッセイを使って活性を測定する。これはヒアルロン酸が血清アルブミンと結合した時に起こる不溶性沈殿物の形成に基づく。活性は、ヒアルロニダーゼまたはヒアルロニダーゼを含むサンプルをヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)と共に設定された時間(例えば10分間)インキュベートした後、酸性化血清アルブミンを添加して未消化のヒアルロン酸ナトリウムを沈殿させることによって測定される。得られたサンプルの濁度をさらなる発現期間後に640nmで測定する。ヒアルロン酸ナトリウム基質に対するヒアルロニダーゼ活性に起因する濁度の低下が、ヒアルロニダーゼ酵素活性の尺度である。
【0516】
もう一つの例では、ヒアルロニダーゼまたはヒアルロニダーゼを含むサンプル、例えば、血液または血漿と共にインキュベートした後に残存ビオチン化ヒアルロン酸を測定するマイクロタイターアッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性が測定される(例えばFrost and Stern (1997) Anal.Biochem. 251:263-269、米国特許出願公開第20050260186号参照)。ヒアルロン酸のグルクロン酸残基上の遊離カルボキシル基をビオチン化し、そのビオチン化ヒアルロン酸基質をマイクロタイタープレートに共有結合させる。ヒアルロニダーゼと共にインキュベートした後、アビジン−ペルオキシダーゼ反応を使って残存ビオチン化ヒアルロン酸基質を検出し、既知の活性を持つヒアルロニダーゼ標品による反応後に得られるものと比較する。ヒアルロニダーゼ活性を測定するための他のアッセイも当技術分野では知られており、本発明の方法において使用することができる(例えばDelpech et al., (1995) Anal. Biochem. 229:35-41; Takahashi et al., (2003) Anal. Biochem. 322:257-263参照)。
【0517】
例えば化学療法剤のための、展着剤または拡散剤として作用する修飾可溶性ヒアルロニダーゼ(例えばペグ化PH20)のようなヒアルロナン分解酵素の活性も評価できる。例えば、トリパンブルー色素を、ヌードマウスの左右の外側皮膚に、ヒアルロナン分解酵素と共にまたは伴わず、皮下または皮内のように注射し得る。次いで、染色面積を、マイクロキャリパーでのより測定して、展着剤として作用するヒアルロナン分解酵素の能力を決定する(例えば米国公開特許番号20060104968参照)。
【0518】
b. HA異化産物の測定
他の例において、血液および尿を、患者の処置中の種々の時点で採取し、ヒアルロナンの異化産物についてアッセイし得る。異化産物の存在はヒアルロナン分解の指標であり、それゆえにヒアルロニダーゼ活性を測定する。血漿酵素もまた投与後経時的に評価し、測定し得る。例えば、HA−二糖分解生成物であるHA異化産物を、サッカライドピーク面積の分離および測定のために高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して評価できる。実施例15はこのアッセイの例である。
【0519】
c. 腫瘍代謝活性
腫瘍代謝活性の減少は、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)活性と関連する。腫瘍代謝活性を、当分野で知られた標準的方法を使用して評価し得る。例えば、[18F]−フルオロデオキシグルコース陽電子放出断層撮影法(FDG−PET)を使用できる。PETは、画像および灌流、細胞生存能、増殖および/または組織の代謝活性の定量的パラメータを提供する非侵襲性診断である。画像は、陽電子放出放射性同位体で標識した種々の生物学的物質(例えば糖類、アミノ酸、代謝前駆体、ホルモン)に由来する。例えば、FDGはグルコースの類似体であり、正常グルコース経路の第一段階として生存細胞に取り込まれる。癌において、解糖活性が増加しており、癌細胞におけるFDGの捕捉がもたらされる。FDG捕捉の減少は、腫瘍代謝活性の減少および抗腫瘍原性活性と相関する。PET造影のガイドラインは当業者に知られており、全ての処置医または技術者は従わなければならない。
【0520】
d. 見かけの拡散増加および腫瘍灌流亢進
抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)活性を評価するさらなる方法は、組織中の水拡散を評価するアッセイを含む。本明細書のいずれかの場所に記載するとおり、ヒアルロナンを蓄積する組織は、付随する水蓄積により、正常組織よりも一般的に間質性流体圧が高い。それゆえに、腫瘍のようなHAを蓄積する組織は高間質性流体圧を有し、これは、当分野で知られる種々の方法により測定できる。例えば、ADCMRIまたはDCEMRIのような拡散MRIを使用できる。水の拡散をこれらの方法で評価し、固形腫瘍のようなヒアルロナン富組織の存在と直接的に評価させ得る(例えばChenevert et al. (1997) Clinical Cancer Research, 3:1457-1466参照)。例えば、ヒアルロナンを蓄積する腫瘍は、灌流の増加のために、ADCMRIまたはDCEMRIで識別可能に増加する。このようなアッセイをヒアルロナン分解酵素の存在下および非存在下で実施し、結果を比較し得る。拡散を測定する方法は、このような治療後の細胞変化の評価に有用な測定である。
【0521】
3. 腫瘍サイズおよび体積
抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素群)活性は、腫瘍サイズおよび/または体積の減少と関連する。腫瘍サイズおよび体積を、当業者に知られた技術に基づきモニターできる。例えば、腫瘍サイズおよび体積をX線検査、超音波造影、検死、ノギスの使用、マイクロCTまたは
18F−FDG−PETによりモニターできる。腫瘍サイズはまた目視により評価できる。具体例において、腫瘍サイズ(直径)をノギスを使用して直接測定する。
【0522】
他の例において、腫瘍体積を、ノギスまたは超音波評価により得られた腫瘍直径(D)の測定値の平均を使用して測定できる。例えば、腫瘍体積は、VisualSonics Vevo 770高解像度超音波または他の類似の超音波を使用して決定できる。体積を、式V=D
3×π/6(ノギスを使用して測定する直径について)またはV=D
2×d×π/6(超音波を使用して測定する直径について、dは深さまたは厚さである)から決定できる。例えば、ノギス測定は腫瘍長(l)および幅(w)から成り、腫瘍体積を長さ×幅
2×0.52として計算し得る。他の例において、マイクロCT走査を使用して腫瘍体積を測定できる(例えばHuang et al. (2009) PNAS, 106:3426-3430参照)。一例として、マウスにOptiray Pharmacyイオベルソール注射74%造影剤(例えば741mgのイオベルソール/mL)を注射し、マウスを麻酔し、CT走査を、MicroCat 1Aスキャナーまたは他の類似のスキャナー(例えばIMTek)(40kV、600μA、196回転ステップ、全回転角度=196)を使用して実施し得る。画像を、ソフトウェア(例えばRVA3ソフトウェアプログラム;IMTek)を使用して再構築する。腫瘍体積を、利用可能なソフトウェア(例えばAmira 3.1ソフトウェア;Mercury Computer Systems)を使用して決定できる。腫瘍体積またはサイズはまた腫瘍の重量に基づいて決定することもできる。
【0523】
腫瘍増殖阻害パーセントを、次の式を使用して体積に基づき計算できる:%TGI=[1−(T
n−T
0)÷(C
n−C
0)]×100%(式中、“T
n”は、ヒアルロナン分解酵素最終投与から“n”日後の処置群の平均腫瘍体積であり;“T
0”はその処置群の処置前0日の平均腫瘍体積であり;“C
n”は“n”日の対応する対照群の平均腫瘍体積であり;“C
0”は対照群の処置前0日の平均腫瘍体積である)。腫瘍体積の統計学的分析により決定できる。
【0524】
4. 薬物動態および薬力学的アッセイ
薬物動態または薬力学的試験を、動物モデルを使用して実施してよくまたは抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素または修飾ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20)の薬物動態特性を評価するための患者の試験中に実施してよい。動物モデルは、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、モルモットおよびカニクイザルまたはアカゲザルのような非ヒト霊長類モデルを含むが、これらに限定されない。ある例においては、薬物動態または薬力学的試験は健常動物を使用して実施する。他の例において、試験は、あらゆるヒアルロナン関連疾患または障害の動物モデル、例えば腫瘍モデルのようなヒアルロナンでの治療が考慮される疾患の動物モデルを使用して実施する。
【0525】
抗ヒアルロナン剤(例えば修飾ヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素)の薬物動態特性を、投与後の最大(ピーク)濃度(C
max)、ピーク時間(すなわち最高濃度になるとき;T
max)、最小濃度(すなわち投与間の最小濃度;C
min)、排出半減期(T
1/2)および曲線下面積(すなわち時間対濃度のプロットにより作成した曲線下面積;AUC)のようなパラメータの測定により評価できる。薬物または酵素(例えばヒアルロニダーゼ)の絶対的バイオアベイラビリティは、皮下送達後の曲線下面積(AUC
sc)と静脈内送達後のAUC(AUC
iv)の比較により決定できる。絶対的バイオアベイラビリティ(F)は、式:F=([AUC]
sc×投与量
c)/([AUC]
iv×投与量
iv)を使用して計算できる。一定範囲の投与量および異なる投与頻度を薬物動態試験で用い、投与における抗ヒアルロナン剤、例えばヒアルロニダーゼのようなヒアルロナン分解酵素または修飾ヒアルロニダーゼ(例えばペグ化PH20)の濃度増加または減少の影響を評価し得る。
【0526】
H. キットおよび製品
ここに提供されるのは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置について患者を選択するために、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の効果を予測するために、HA関連疾患を有する患者の予後を決定するためにまたはHA関連疾患、特に癌の処置について抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の効果をモニタリングするために使用するキットである。ここで提供するキットは、サンプル中のヒアルロナンの検出および定量のためのここで提供されるHABP試薬および所望により該方法を実施するための試薬を含む。例えば、キットは、さらに、抗体、緩衝液、酵素染色のための基質、色素原のような検出試薬またはスライド、容器、マイクロタイタープレートのような他の材料および所望により、方法を実施するための指示を含むが、これらに限定されない、組織の採取、組織の調製および処理のための試薬ならびにサンプル中のHAの量を定量するための試薬を含み得る。当業者は、種々の物質の接触に使用できる他の可能な容器およびプレートおよび試薬を認識する。キットはまた試験サンプルの比較および分類のための種々のHAのレベルまたはHA含量染色についての参照サンプルの組織を表す対照サンプルも含み得る。提供されるHABP診断は凍結乾燥または診断剤の他の安定な製剤で提供され得る。いくつかの例において、キットは、アッセイ検出のための自動化細胞造影システム(ACIS)蛍光光度計、ルミノメーターまたは分光光度計のような装置を含む。
【0527】
また提供されるのは、提供される改善されたHABP試薬を含むここで提供されるHABP試薬およびヒアルロナン分解酵素の組み合わせである。ここに記載するとおり、HABP類は、ヒアルロナン分解酵素での処置のコンパニオン診断剤として用いることができる。このような組み合わせは、所望により抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置について患者の選択に使用するためおよびこのような患者の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置のため、患者の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置の効果を予測するためおよびこのような患者の抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置のため、HA関連疾患を有する患者の予後診断を決定するためおよびこのような患者を抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)で処置するためまたはHA関連疾患、特に癌の処置について抗ヒアルロナン分解酵素(例えばヒアルロナン分解酵素)での患者の処置効果をモニタリングするためおよび処置効果に基づきこのような患者を抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)で処置するためのキットとして包装され得る。キットとして包装され得る組み合わせは、抗癌剤のような治療のための1種以上の付加的薬物または抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)での処置と関連する筋骨格副作用の処置のためのコルチコステロイドを含む治療の副作用の処置のための1種以上の付加的薬物を含み得る。キットは、抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)または1種以上の付加的治療剤のための包装材を含み得る。例えば、キットは、単腔および二腔容器を含む容器を含み得る。容器は、チューブ、ビンおよびシリンジを含むが、これらに限定されない。容器は、さらに皮下投与用針のような投与のための物質を含み得る。抗ヒアルロナン剤(例えばヒアルロナン分解酵素)または1種以上の付加的治療剤を一緒にまたは別々に提供し得る。キットは、所望により、投与量、投与レジメンを含む投与の指示および投与方法の指示を含み得る。
【0528】
ここで提供するキットはまた、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、アルファ−フェトプロテイン(AFP)、CA125、CA19−9、前立腺特異的抗原(PSA)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、HER2/neu抗原、CA27.29、CYFRA 21−2、LASA−P、CA15−3、TPA、S−100およびCA−125を含むが、これらに限定されない、例えば1個以上の付加的癌マーカーのようなサンプルの1個以上の付加的タンパク質の発現またはコード化RNAを検出するための試薬を含み得る。
【0529】
I. 実施例
以下に掲載する実施例は例示を目的とし、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0530】
実施例1
rHuPH20発現細胞株
A. 最初の可溶性rHuPH20発現細胞株の産生
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をHZ24プラスミド(配列番号52に示す)でトランスフェクトした。可溶性rHuPH20を発現させるためのHZ24プラスミドベクターは、pCIベクターバックボーン(Promega)、ヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸1〜482をコードするDNA(配列番号49)、ECMVウイルス由来の配列内リボソーム進入部位(IRES)(Clontech)、およびマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子を含有する。pCIベクターバックボーンは、ベータ−ラクタマーゼ耐性遺伝子(AmpR)をコードするDNA、f1複製起点、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー/プロモーター領域(CMV)、キメライントロン、およびSV40後期ポリアデニル化シグナル(SV40)も含んでいる。可溶性rHuPH20構築物をコードするDNAは、ヒトPH20のネイティブ35アミノ酸シグナル配列のアミノ酸位置1のメチオニンをコードするDNAの前にNheI部位とコザックコンセンサス配列とを含有し、配列番号1に記載のヒトPH20ヒアルロニダーゼのアミノ酸位置482に対応するチロシンをコードするDNAの後に停止コドンを含有し、その後ろに、BamHI制限部位が続いている。したがって、構築物pCI−PH20−IRES−DHFR−SV40pa(HZ24)は、CMVプロモーターによって駆動される単一のmRNA種であって、配列内リボソーム進入部位(IRES)によって分離された、ヒトPH20のアミノ酸1〜482(配列番号3に記載)とマウスジヒドロ葉酸レダクターゼのアミノ酸1〜186(配列番号53に記載)とをコードするものをもたらす。
【0531】
トランスフェクションの準備として、4mMのグルタミンおよび18ml/L Plurionic F68/L(Gibco)を補足したDHFR(−)細胞用のGIBCO変法CD−CHO培地で成長させた非トランスフェクトCHO細胞を、0.5×10
6細胞/mlの密度でシェーカーフラスコに播種した。細胞を湿潤インキュベータ中、5%CO
2下、37℃において、120rpmで振とうしながら成長させた。トランスフェクションに先立ち、対数増殖期の非トランスフェクトCHO細胞を、生存能について調べた。
【0532】
非トランスフェクトCHO細胞培養の生細胞6千万個をペレット化し、2×トランスフェクションバッファー(2×HeBS:40mMのHEPES、pH7.0、274mMのNaCl、10mMのKCl、1.4mMのNa
2HPO
4、12mMのデキストロース)0.7mLに、2×10
7細胞の密度で再懸濁した。再懸濁した細胞の各アリコートに、0.09mL(250μg)の線状HZ24プラスミド(ClaI(New England Biolabs)で終夜消化することによって線状化したもの)を加え、その細胞/DNA溶液を、室温で、間隙0.4cmのBTX(Gentronics)エレクトロポレーションキュベットに移した。陰性対照エレクトロポレーションは、プラスミドDNAを細胞と混合せずに行った。細胞/プラスミド混合物を、330Vおよび960μFまたは350Vおよび960μFのコンデンサ放電でエレクトポレートした。
【0533】
細胞をエレクトロポレーション後のキュベットから取り出して、4mMのグルタミンおよび18ml/L Pluronic F68/L(Gibco)を補足した5mLのDHFR(−)細胞用変法CD−CHO培地に移し、湿潤インキュベータ中、5%CO
2下、37℃において、選択圧を加えずに、6穴組織培養プレートのウェルで2日間成長させた。
【0534】
エレクトロポレーションの2日後に、0.5mLの組織培養培地を各ウェルから取り出し、実施例3に記載の微小濁度アッセイを使って、ヒアルロニダーゼ活性の存在について試験した。最高レベルのヒアルロニダーゼ活性を発現する細胞を組織培養ウェルから集め、計数し、1mLあたり1×10
4〜2×10
4個の生細胞になるように希釈した。5枚の96穴丸底組織培養プレートの各ウェルに、細胞懸濁液を0.1mLずつ移した。4mM GlutaMAX(商標)−1補助剤(GIBCO(商標)、Invitrogen Corporation)を含有しヒポキサンチンおよびチミジン補助剤を含有しないCD−CHO培地(GIBCO)100マイクロリットルを、細胞を含むウェルに加えた(最終体積0.2mL)。
【0535】
メトトレキサート無しで増殖させた5個のプレートから10クローンを同定した。これらのHZ24クローンの6個を拡大培養し、単一細胞懸濁液としてシェーカーフラスコに移した。クローン3D3、3E5、2G8、2D9、1E11、および4D10を、左上のウェルの5000細胞から開始して、細胞をプレートの縦方向に1:2希釈し、プレートの横方向に1:3希釈する二次元無限希釈法を使って、96穴丸底組織培養プレートにプレーティングした。培養の初期に必要な成長因子を供給するために1ウェルあたり500個の非トランスフェクトDG44 CHO細胞のバックグラウンドで、希釈クローンを成長させた。50nMメトトレキサートを含有する5枚とメトトレキサートを含有しない5枚で、1サブクローンあたり10枚のプレートを作製した。
【0536】
クローン3D3は、24個の目に見えるサブクローンを産生した(メトトレキサート処理なしから13個、および50nMメトトレキサート処理から11個)。それら24個のサブクローンのうち8個から得られる上清に、有意なヒアルロニダーゼ活性(>50単位/mL)が測定され、それら8個のサブクローンをT−25組織培養フラスコに拡大培養した。メトトレキサート処理プロトコルから単離されたクローンは、50nMメトトレキサートの存在下で拡大培養した。クローン3D35Mをさらに、500nM メトトレキサート中、シェーカーフラスコで拡大培養して、1,000単位/mlを超えるヒアルロニダーゼ活性を産生するクローン(クローン3D35M;またはGen1 3D35M)を得た。次に、3D35M細胞のマスター細胞バンク(master cell bank)(MCB)を調製した。
【0537】
B. 可溶性rHuPH20を発現する第二世代細胞株の産生
実施例1Aに記載の第1世代3D35M細胞株を、さらに高いメトトレキサートレベルに適応させて、第2世代(Gen2)クローンを作出した。樹立メトトレキサート含有培養物から、4mM GlutaMAX−1(商標)および1.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地に、3D35M細胞を播種した。37℃、7%CO
2湿潤インキュベータ中で、46日間にわたって、細胞を成長させ、それらを9回継代することにより、細胞を、より高いメトトレキサートレベルに適応させた。2.0μMメトトレキサートを含む培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法により、増幅された細胞集団をクローンアウト(clone out)した。約4週間後に、クローンを同定し、クローン3E10Bを拡大培養のために選択した。4mM GlutaMAX−1(商標)および2.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で、継代20代にわたって、3E10B細胞を成長させた。3E10B細胞株のマスター細胞バンク(MCB)を作製し、凍結し、以後の研究に使用した。
【0538】
4mM GlutaMAX−1(商標)および4.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地中で3E10B細胞を培養することによって、この細胞株の増幅を続けた。12回目の継代後に、細胞を研究用細胞バンク(research cell bank)(RCB)としてバイアル中で凍結した。RCBのバイアルを1本融解し、8.0μMメトトレキサートを含有する培地で培養した。5日後に、培地中のメトトレキサート濃度を16.0μMに増加させ、次いで18日後に20.0μMに増加させた。20.0μMメトトレキサートを含有する培地における8回目の継代培養から得た細胞を、4mM GlutaMAX−1(商標)および20.0μMメトトレキサートを含有するCD CHO培地が入っている96穴組織培養プレートでの限界希釈法によってクローンアウトした。5〜6週間後にクローンを同定し、クローン2B2を20.0μMメトトレキサートを含有する培地での拡大培養のために選択した。11回目の継代後に、2B2細胞を研究用細胞バンク(RCB)としてバイアル中で凍結した。
【0539】
得られた2B2細胞は、可溶性組換えヒトPH20(rHuPH20)を発現させるジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損性(dhfr−)DG44 CHO細胞である。可溶性PH20は2B2細胞中に、約206コピー/細胞のコピー数で存在する。SpeI、XbaIおよびBamHI/HindIIIで消化したゲノム2B2細胞DNAを、rHuPH20特異的プローブを使ってサザンブロット解析したところ、以下の制限消化プロファイルが明らかになった:SpeIで消化したDNAでは1本の主要ハイブリダイズバンド約7.7kbと4本の副ハイブリダイズバンド(約13.9、約6.6、約5.7および約4.6kb);XbaIで消化したDNAでは、1本の主要ハイブリダイズバンド約5.0kbと2本の副ハイブリダイズバンド(約13.9および約6.5kb);BamHI/HindIIIで消化した2B2 DNAを使うと、約1.4kbの単一ハイブリダイズバンドが観察された。mRNA転写物の配列解析により、得られたcDNA(配列番号56)は、位置1131における1塩基対の相違(これは予想されるシトシン(C)の代わりにチミジン(T)であることがわかった)を除いて、基準配列(配列番号49)と同一であることが示された。これはサイレント突然変異であり、アミノ酸配列には影響しない。
【0540】
実施例2
rHuPH20の産生および精製
A. 300Lバイオリアクター細胞培養中のGen2可溶性rHuPH20の産生
HZ24−2B2細胞(実施例1B)融解し、シェーカーフラスコから36Lスピナーフラスコを通して20μMのメトトレキサートおよびGlutaMAX−1(商標)(Invitrogen)添加CD−CHO培地(Invitrogen、Carlsbad, CA)に拡大した。簡単に述べると、細胞のバイアルを37℃の水浴で融解し、培地を加え、細胞を遠心分離した。細胞を、20mLの新鮮培地が入っている125mL浸透フラスコに再懸濁し、37℃、7%CO
2のインキュベータに入れた。細胞を125mL振とうフラスコ中で40mLまで拡大培養した。細胞密度が1.5×10
6細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を125mLスピナーフラスコに100mLの培養体積で拡大した。フラスコを37℃、7%CO
2でインキュベートした。細胞密度が1.5×10
6細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を250mLスピナーフラスコに200mLの培養体積で拡大し、フラスコを37℃、7%CO
2でインキュベートした。細胞密度が1.5×10
6細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を1Lスピナーフラスコに800mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO
2でインキュベートした。細胞密度が1.5×10
6細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を6Lスピナーフラスコに5000mLの培養体積で拡大し、37℃、7%CO
2でインキュベートした。細胞密度が1.5×106細胞/mLを上回る密度に達したら、培養物を36Lスピナーフラスコに32Lの培養体積で拡大し、37℃、7%CO
2でインキュベートした。
【0541】
400Lリアクターを滅菌し、230mLのCD CHO培地を加えた。使用前に、リアクターを汚染についてチェックした。約30Lの細胞を36Lスピナーフラスコから400Lバイオリアクター(Braun)に、1mlあたり4.0×10
5個の生細胞という接種密度および260Lの総体積で移した。パラメータは温度設定値:37℃;インペラー速度40〜55RPM;容器圧:3psi;空気散布量0.5〜1.5L/分;空気オーバーレイ:3L/分とした。細胞数、pH確認、培地分析、タンパク質の生産および貯留を調べるために、リアクターから毎日サンプルを採取した。また、運転中に栄養フィードを加えた。120時間(5日目)の時点で、10.4Lの第1フィード培地(4×CD−CHO+33g/Lグルコース+160mL/L GlutaMAX−1(商標)+83mL/Lイーストレート(Yeastolate)+33mg/L rHuインスリン)を加えた。168時間(7日目)の時点で、10.8Lの第2フィード(2×CD−CHO+33g/Lグルコース+80mL/L GlutaMAX−1(商標)+167mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36.5℃に変えた。216時間(9日目)の時点で、10.8Lの第3フィード(1×CD−CHO+50g/Lグルコース+50mL/L GlutaMAX−1(商標)+250mL/Lイーストレート+1.80g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を36℃に変えた。264時間(11日目)の時点で、10.8Lの第4フィード(1×CD−CHO+33g/Lグルコース+33mL/L GlutaMAX−1(商標)+250mL/Lイーストレート+0.92g/L酪酸ナトリウム)を加え、培養温度を35.5℃に変えた。フィード培地の添加は生産の最終段階における可溶性rHuPH20の生産を劇的に強化することが観察された。14日時点もしくは15日時点で、または細胞の生存能が40%未満に低下した時に、リアクターを収集した。このプロセスにより、1200万細胞/mLの最大細胞密度で17,000単位/mlの最終生産能力が得られた。マイコプラズマ、生物汚染度、エンドトキシンならびにインビトロおよびインビボでのウイルス、ウイルス粒子に関するTEM、ならびに酵素活性を調べるために、収集時に、培養物をサンプル採取した。
【0542】
それぞれが4〜8μmに分級された珪藻土の層と1.4〜1.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、並列した4つのMillistak濾過系モジュール(Millipore)に、培養物を蠕動ポンプで通し、次に、0.4〜0.11μmに分級された珪藻土の層と、<0.1μmに分級された珪藻土の層とを含有し、その後にセルロースメンブレンが設けられている、第2の単一Millistak濾過系(Millipore)に通し、次に0.22μm最終フィルターを通して、350Lの容量を持つ滅菌使い捨てフレキシブルバッグ中に入れた。その収集細胞培養液に10mMのEDTAおよび10mMのTrisをpHが7.5になるように補足した。培養物を、4つのSartoslice TFF 30kDa分子量分画(MWCO)ポリエーテルスルホン(PES)フィルタ(Sartorius)を使用するタンジェンシャルフロー濾過(TFF)装置で10倍濃縮した後、10mMのTris、20mMのNa
2SO
4、pH7.5で10回のバッファー交換を行い、0.22μm最終フィルターを通して、50L滅菌保存バッグに濾過した。
【0543】
濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、ウイルスに関して不活化した。ウイルス不活化に先だって、10%Triton X-100、3%リン酸トリ(n−ブチル)(TNBP)の溶液を調製した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した収集物を、Qカラムで精製する直前に、36Lガラス反応容器中で、1%Triton X-100、0.3%TNBPに1時間曝露した。
【0544】
B. Gen2可溶性rHuPH20の精製
Q Sepharose(Pharmacia)イオン交換カラム(樹脂9L、H=29cm、D=20cm)を調製した。pHおよび伝導度の決定ならびにエンドトキシン(LAL)アッセイのために洗浄液サンプルを集めた。カラムを5カラム体積の10mMのTris、20mMのNa
2SO
4、pH7.5で平衡化した。濃縮しダイアフィルトレーションに付した(実施例2A)を、ウイルス不活化後に、100cm/時間の流速でQカラムに負荷した。カラムを、5カラム体積の10mMのTris、20mMのNa
2SO
4、pH7.5および10mMのHEPES、50mMのNaCl、pH7.0で洗浄した。タンパク質を10mMのHEPES、400mMのNaCl、pH7.0で溶出させ、0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに濾過した。溶出液サンプルを生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。この交換の最初と最後にA
280吸光度を読み取った。
【0545】
次にPhenyl-Sepharose(Pharmacia)疎水相互作用クロマトグラフィーを行った。Phenyl-Sepharose(PS)カラム(樹脂19〜21L、H=29cm、D=30cm)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用のサンプルを採取した。カラムを5カラム体積の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、0.1mMのCaCl
2、pH7.0で平衡化した。Q Sepharoseカラムから得たタンパク質溶出液に2M硫酸アンモニウム、1Mのリン酸カリウムおよび1MのCaCl
2保存液を補足して、最終濃度をそれぞれ5mM、0.5Mおよび0.1mMにした。タンパク質を100cm/時間の流速でPSカラムに負荷し、素通り画分を集めた。100cm/時間の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムおよび0.1mMのCaCl
2 pH7.0でカラムを洗浄し、その洗浄液を、集めた素通り画分に加えた。カラム洗浄液と合わせた素通り画分を0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに入れた。生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性を調べるために素通り画分のサンプルを採取した。
【0546】
アミノフェニルボロネートカラム(ProMedics)を調製した。洗浄液を集め、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)用のサンプルを採取した。カラムを5カラム体積の5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウムで平衡化した。精製タンパク質を含有するPS素通り画分を100cm/時間の流速でアミノフェニルボロネートカラムに負荷した。カラムを5mMのリン酸カリウム、0.5M硫酸アンモニウム、pH7.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、0.5M硫酸アンモニウム、pH9.0で洗浄した。カラムを20mMビシン、100mM塩化ナトリウム、pH9.0で洗浄した。タンパク質を50mMのHEPES、100mMのNaCl、pH6.9で溶出させ、滅菌フィルターを通して滅菌バッグに入れた。溶出したサンプルを生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
【0547】
ヒドロキシアパタイト(HAP)カラム(BioRad)を調製した。洗浄液を集めて、pH、伝導度およびエンドトキシン(LALアッセイ)について調べた。カラムを5mMのリン酸カリウム、100mMのNaCl、0.1mMのCaCl
2、pH7.0で平衡化した。アミノフェニルボロネートで精製したタンパク質を、最終濃度が5mMのリン酸カリウムおよび0.1mMのCaCl
2になるように補足し、100cm/時間の流速でHAPカラムに負荷した。カラムを5mMのリン酸カリウム、pH7、100mMのNaCl、0.1mMのCaCl
2で洗浄した。次に、カラムを10mMのリン酸カリウム、pH7、100mMのNaCl、0.1mMのCaCl
2で洗浄した。タンパク質を70mMのリン酸カリウム、pH7.0で溶出させ、0.22μm滅菌フィルターを通して滅菌バッグに入れた。溶出したサンプルを生物汚染度、タンパク質濃度および酵素活性について調べた。
【0548】
次に、HAPで精製したタンパク質をウイルス除去フィルターに通した。滅菌したVirosartフィルタ(Sartorius)を、まず、2Lの70mMのリン酸カリウム、pH7.0で洗浄することによって調製した。使用前に、pHおよび伝導度を調べるために、濾過されたバッファーをサンプル採取した。HAPで精製したタンパク質を蠕動ポンプで20nMウイルス除去フィルターに通した。70mMのリン酸カリウム、pH7.0中の濾過されたタンパク質を0.22μm最終フィルターを通して滅菌バッグに入れた。ウイルス濾過されたサンプルをタンパク質濃度、酵素活性、オリゴ糖、単糖およびシアル酸プロファイリングについて調べた。サンプルをプロセス関連不純物についても試験した。
【0549】
実施例3
可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性の決定
細胞培養、血漿、精製フラクションおよび精製溶液のようなサンプル中の可溶性rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性を、ヒアルロン酸が血清アルブミンと結合したとき不溶性沈殿を形成することに基づく比濁法アッセイまたは可塑性多ウェルマイクロタイタープレートに非共有結合的に結合したビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質の消化により酵素的に活性なrHuPH20またはPEGPH20の量を測定するビオチニル化−ヒアルロン酸基質アッセイのいずれかを使用して決定した。
【0550】
A. 微小濁度アッセイ
本アッセイにおいて、rHuPH20のヒアルロニダーゼ活性を、可溶性rHuPH20とヒアルロン酸ナトリウム(ヒアルロン酸)を一定時間(10分間)インキュベートし、次いで未消化ヒアルロン酸ナトリウムを酸性化血清アルブミン添加により沈殿させることにより測定した。得られたサンプルの濁度を、640nmで30分間展開時間後に測定した。ヒアルロン酸ナトリウム基質上の酵素活性由来の濁度の減少は可溶性rHuPH20ヒアルロニダーゼ活性の指標であった。本方法を、可溶性rHuPH20アッセイ作業標品の希釈により作成した検量線を使用して行い、サンプル活性測定をこの検量線に対して行った。サンプル希釈を酵素希釈剤溶液で調製した。
【0551】
酵素希釈剤溶液を、33.0±0.05mgの加水分解ゼラチンを25.0mLの50mMのPIPES反応緩衝剤(140mMのNaCl、50mMのPIPES、pH5.5)および25.0mLの注射用滅菌水(SWFI;Braun, product number R5000-1)に溶解し、0.2mLの25%ヒト血清アルブミン(US Biologicals)溶液で混合物を希釈し、30秒間ボルテックス処理することにより調製した。これを使用前2時間以内に行い、必要となるまで氷上で保存した。サンプルを概算1〜2U/mLまで希釈した。一般的に、工程あたりの最大希釈は1:100を超えず、最初の希釈用の初期サンプルサイズは少なくとも20μLであった。アッセイを実施するのに必要な最少サンプル容積は、工程内サンプル、FPLCフラクション:80μL;組織培養上清:1mL;濃縮物質80μL;精製または最終工程物質:80μLであった。希釈を低タンパク質結合96ウェルプレートで3連で行い、各希釈物の30μLをOptilux黒色/透明底プレート(BD BioSciences)に移した。
【0552】
濃度2.5U/mLの既知可溶性rHuPH20を、標準曲線作成のために酵素希釈剤溶液で作製し、Optiluxプレートに3連で添加した。希釈は0U/mL、0.25U/mL、0.5U/mL、1.0U/mL、1.5U/mL、2.0U/mL、および2.5U/mLを含んだ。60μLの酵素希釈剤溶液を含む“無試薬”ウェルを、プレートにネガティブコントロールとして包含させた。次いで、プレートを覆い、ヒートブロックで5分間、37℃で加温した。覆いを取り、プレートを10秒間振盪させた。振盪後、プレートをヒートブロックに戻し、MULTIDROP 384 Liquid Handlingデバイスを温かい0.25mg/mLのヒアルロン酸ナトリウム溶液(100mgのヒアルロン酸ナトリウム(LifeCore Biomedical)を20.0mLのSWFIに溶解することにより作製した。これを2〜8℃で2〜4時間または完全に溶解するまで穏やかな回転および/または振盪により混合した)で開始させた。反応プレートをMULTIDROP 384に移し、30μLのヒアルロン酸ナトリウムを各ウェルに分配させるためにスタートキーを押して、反応を開始させた。次いでプレートをMULTIDROP 384から除き、10秒間振盪させ、プレートカバーを置き換えたヒートブロックに移した。プレートを37℃で10分間インキュベートした。
【0553】
MULTIDROP 384を、血清作業溶液で機械をプライミングし、容積設定を240μLに変えることにより反応を停止させる準備をした。(25mLの血清ストック溶液[1容積のウマ血清(Sigma)を9容積の500mM酢酸緩衝液で希釈し、塩酸でpHを3.1に調節した]の75mLの500mM酢酸緩衝液)。プレートをヒートブロックから除き、MULTIDROP 384に置き、240μLの血清作業溶液をウェルに分配した。プレートを除き、プレートリーダー上で10秒間振盪させた。さらに15分間後、サンプルの濁度を640nmで測定し、各サンプルのヒアルロニダーゼ活性(U/mL)を標準曲線に適合させることにより決定した。
【0554】
比活性(単位/mg)を、ヒアルロニダーゼ活性(U/ml)をタンパク質濃度(mg/mL)で割ることにより計算した。
【0555】
B. ビオチニル化ヒアルロナンアッセイ
ビオチニル化−ヒアルロン酸アッセイは、可塑性多ウェルマイクロタイタープレートに非共有結合的に結合した大分子量(〜1.2メガダルトン)ビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質の消化による、生物学的サンプル中の酵素的に活性なrHuPH20またはPEGPH20の量を測定する。標準およびサンプル中のrHuPH20またはPEGPH20を、b−HAでコートしたプレート中、37℃でインキュベートする。一連の洗浄後、残った未開裂/結合b−HAをストレプトアビジンホースラディッシュペルオキシダーゼコンジュゲート(SA−HRP)で処理する。固定化SA−HRPと発色性基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)の反応は青色溶液をもたらす。酸で反応停止後、可溶性黄色反応生成物の形成を、マイクロタイタープレート分光光度計を使用して450nmの吸光度を読むことにより決定する。ビオチニル化ヒアルロン酸(b−HA)基質の酵素活性由来の450nmでの吸光度減少は、可溶性rHuPH20ヒアルロニダーゼ活性の指標である。本方法を、可溶性rHuPH20またはPEGPH20参照標準の希釈により作成した較正曲線を使用して行い、サンプル活性測定をこの較正曲線と比較する。
【0556】
サンプルおよびキャリブレーターの希釈物をアッセイ希釈剤中で調製した。アッセイ希釈剤を、1%v/v貯蔵血漿(適当な種から)を0.1%(w/v)BSAのHEPES溶液に、pH7.4に添加することにより調製した。これを毎日調製し、2〜8℃で保存した。種タイプならびに予測ヒアルロニダーゼレベルによって、1回または複数希釈を調製し、少なくとも1個のサンプル希釈が較正曲線の範囲内に入るようにする。試験サンプル希釈選択の指針として、投与されたヒアルロニダーゼ投与量、投与経路、該種の凡その血漿体積および時点に関して知られた情報をヒアルロニダーゼ活性レベルの概算に使用した。各サンプル希釈を、短いパルス−ボルテックスで調製されるように混合し、ピペットチップを各希釈毎に変えた。一般に、希釈は最初の50または100倍希釈から初め、その後さらに連続希釈した。rHuPH20またはPEGPH20の7点較正曲線(投与処置量による)を、rHuPH20について0.004〜3.0U/mLおよびPEGPH20について0.037〜27U/mLの範囲の濃度で調製した。100マイクロリットル(100μL)の各試験サンプル希釈および較正曲線点を、予め100μL/ウェルのb−HAで0.1mg/mLでコーティングし、250μLの1.0%(w/v)ウシ血清アルブミンのPBSでブロックした96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 4HBX, Thermo)にトリプリケートで適用した。プレートを接着性プレートシールで覆い、37℃で約90分間インキュベートした。インキュベーション時間の最後に、接着性シールをプレートから外し、サンプルを吸引し、ウェルあたり300μLの洗浄緩衝液(10mMリン酸緩衝液、2.7mM塩化カリウム、137mM塩化ナトリウム、pH7.4、0.05%(v/v)Tween 20含有、PBST)で自動化プレートウォッシャー(BioTek ELx405 Select CW、プログラム‘4HBX1’)を使用して5回洗浄した。100マイクロリットルのストレプトアビジン−HRPコンジュゲート作業溶液[20mM Tris−HCl、137mM塩化ナトリウム、0.025%(v/v)Tween 20、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン中ストレプトアビジン−HRPコンジュゲート(1:5,000v/v)]をウェルあたりに添加した。プレートを密閉し、環境温度で約60分間、振盪せず、遮光してインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、接着性シールをプレートから外し、サンプルを吸引し、プレートを上記のとおり、ウェルあたり300μLの洗浄緩衝液で5回洗浄した。TMB溶液(環境温度で)を各ウェルに添加し、5分間、室温で遮光しながらインキュベートした。TMB停止溶液(KPL、Catalog # 50-85-06)を100μL/ウェルで添加した。各ウェルの450nmでの吸光度をマイクロタイタープレート分光光度計を使用して決定した。各プレート上の較正曲線の応答を、4−パラメータロジスティック曲線適合を使用してモデル化した。各未知のヒアルロニダーゼ活性を、較正曲線の内挿により計算し、サンプル希釈計数で補正し、U/mLで示した。
【0557】
実施例4
ペグ化rHuPH20の製剤
本実施例において、rHuPH20をメトキシポリ(エチレングリコール)ブタン酸の直鎖N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−SBA−30K)との酵素反応によりペグ化した。
【0558】
A. mPEG−SBA−30Kの製造
PEGPH20を産生するために、rHuPH20(約60KDaサイズ)を、分子量約30kDaを有するメトキシポリ(エチレングリコール)ブタン酸の直鎖N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(mPEG−SBA−30K)と共有結合的に結合させた。mPEG−SBAの構造を下に示す(ここで、n≒681である)。
【化3】
【0559】
rHuPH20のペグ化に使用したmPEG−SBA−30Kの製造方法は、例えば、米国特許番号5,672,662に記載されている。簡単に言うと、mPEG−SBA−30Kを次の方法に従い製造する。
ジオキサンに溶解したマロン酸エチル(2当量)溶液を水素化ナトリウム(2当量)およびトルエンに窒素雰囲気下滴下する。mPEGメタンスルホネート(1当量、MW 30kDa、Shearwater)をトルエンに溶解し、上記混合物に添加する。得られた混合物を約18時間還流する。反応混合物を元の体積の半分まで濃縮し、10%NaCl水溶液で抽出し、1%塩酸水溶液で抽出し、水性抽出物を併せる。回収した水層をジクロロメタン(3×)で抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、蒸発乾固する。得られた残渣を塩化ナトリウム含有1N水酸化ナトリウムに溶解し、混合物を1時間撹拌する。混合物のpHを6N塩酸の添加により約3に調節する。混合物をジクロロメタン(2×)で抽出する。
【0560】
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、濃縮し、冷ジエチルエーテルに注加する。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥する。得られた化合物をジオキサンに溶解し、8時間還流し、濃縮乾固する。得られた残渣を水に溶解し、ジクロロメタン(2×)で抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶液を回転蒸発により濃縮し、冷ジエチルエーテルに注加する。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥する。得られた化合物(1当量)をジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシスクシンイミド(2.1当量)を添加する。溶液を0℃に冷却し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(2.1当量)のジクロロメタン溶液を滴下する。液を室温で約18時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濃縮し、ジエチルエーテルで沈殿させる。沈殿を濾過により回収し、減圧下乾燥して、粉末mPEG−SBA−30Kを得て、これを≦−15℃で凍結する。
【0561】
B. mPEG−SBA−30KのrHuPH20への結合
PEGPH20を製造するために、下記のとおり(ここで、n≒681である)、mPEG−SBA−30KをrHuPH20のアミノ基と共有結合的結合によりカップリングさせ、rHuPH20とmPEGの安定なアミド結合を得た。
【化4】
【0562】
結合の前に、実施例2Bで製造したrHuPH20精製バルクタンパク質を、0.2m
2濾過面積の10kDaポリエーテルスルホン(PES)接線流濾過(TFF)カセット(Sartorius)を使用して〜10mg/mLに濃縮し、緩衝液をpH7.2で70mMリン酸カリウムに対して交換した。濃縮したタンパク質を使用するまで2〜8℃で保存した。
【0563】
rHuPH20を結合させるために、mPEG−SBA−30K(Nektar)を、室温で、暗所で2時間を越えない時間融解した。バッチサイズによって、無菌3”撹拌子を1または3リットルエレンマイヤーフラスコに入れ、緩衝液交換したrHuPH20タンパク質を添加した。1グラムあたりのrHuPH20に対し5グラムの乾燥mPEG−SBA−30K粉末(mPEG−SBA−30K:rHuPH20の10:1モル比)をバキュームフード下にフラスコに添加し、混合物を10分間またはmPEG−SBA−30Kが完全に溶解するまで混合した。撹拌速度は、泡立たずに渦が起こるように設定した
【0564】
次いで、溶液をクラス100フード下に、溶液を、蠕動ポンプを介して、0.22μmポリスチレン、セルロースアセテートフィルターカプセル(Corning 50mLチューブトップフィルター)を介して、無菌3”撹拌子を含む新しい1または3リットルエレンマイヤーフラスコに濾過して入れた。PEGPH20反応混合物の体積を質量(1g/mL密度)により決定し、濾過に使用した0.22μmフィルターを使用後完全性試験で試験した。
【0565】
次いで混合物を撹拌プレートに2〜8℃で、20±1時間、暗所で入れた。撹拌速度は、再び、泡立たずに渦が起こるように設定した。全部のエレンマイヤー容器をホイルで包み、溶液を遮光した。混合後、1Mグリシンを最終濃度25mMまで添加して、反応停止させた。サンプルを容器から取って、pHおよび伝導率を試験した。pHおよび伝導率を、5mM Tris Base(5.65L/L)および5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0(13.35L/L)の添加により調節して、Q Sepharose精製を行った。
【0566】
QFF Sepharose(GE Healthcare)イオン交換カラム(高さ=21.5〜24.0cm、直径=20cm)を、5カラム体積(36L)の5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0での平衡化により調節した。結合した生成物を、QFFカラムに95cm/時間の流速で充填した。カラムを11Lの平衡緩衝液(5mM Tris、10mM NaCl、pH8.0)で95cm/時間の流速で洗浄し、続いて25Lの平衡緩衝液で268cm/時間の流速で洗浄した。次いでタンパク質生成物を5mM Tris、130mM NaCl、pH8.0で268cm/時間の流速で溶出した。得られた精製PEGPH20を、0.2m
2濾過面積の30kDaポリエーテルスルホン(PES)接線流濾過(TFF)カセット(Sartorius)を使用して3.5mg/mLに濃縮し、10mMヒスチジン、130mM NaCl、pH6.5に対して緩衝液交換した得られた物質を実施例3に記載のとおり酵素活性について試験した。3.5mg/mLの濃度のペグ化rHuPH20物質(最終酵素活性140,000U/mL)を、3mL体積で、シリコン処理ブロモブチルゴム栓およびアルミニウムフリップオフシールを備えた5mLガラスバイアルに充填し、凍結(−20℃冷凍庫で一夜凍結、次いで−80℃冷凍庫に長期貯蔵のために入れる)させた。ペグ化rHuHP20は、rHuPH201モルあたり約4.5モルのPEGを含んだ。
【0567】
B. ペグ化rHuPH20の分析
ペグ化rHuPH20(PEGPH20)物質を、ゲル電気泳動でアッセイした。上の実施例4Aのとおりに製造したPEGPH20の3バッチは、同一パターンの複数バンドを明らかにし、種々の距離で移動する未反応PEGおよび複数種のPEGPH20コンジュゲートを示す。分子量マーカーの移動との比較により、バンドは、約90KDa〜300KDaの範囲の種と、240KDaマーカーの上に移動する3個の暗バンドを示した。これらのデータは、mPEG−SBA−30Kの共有結合的結合により製造したPEGPH20が、おそらくモノ−、ジ−およびトリ−ペグ化タンパク質を含む、PEGPH20種の不均一混合物を含むことを示す。60KDaの可視バンドの欠失は、全タンパク質がPEGと反応し、検出可能な天然rHuPH20が混合物中になかったことを示した。
【0568】
実施例5
細胞周囲マトリックスを形成する腫瘍細胞の適格性および腫瘍細胞ヒアルロナン(HA)含量、ヒアルロナンシンターゼ(HAS)のレベルおよびヒアルロニダーゼ(Hyal)発現との相関
A. 腫瘍細胞HA含量、HAS1、2、3ならびにHyal1および2発現および細胞周囲マトリックス形成の比較
本実施例において、腫瘍細胞における内在性HA合成酵素群、ヒアルロナンシンターゼ(HAS)1、2および3、ヒアルロニダーゼ(Hyal)1および(Hyal)2の量およびヒアルロナン(HA)蓄積量を比較して、腫瘍細胞による細胞周囲マトリックス形成との各相関を示した。
【0569】
1. 研究に使用した細胞株
種々の組織起源(例えば、前立腺、乳房、卵巣、膵臓および肺)および種起源(例えば、ヒト、マウスおよびラット)の腫瘍の10種の細胞株本研究で試験した。次の細胞株を得られたアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)から得た:4T1マウス乳房腫瘍(ATCC CRL-2539)、PC-3ヒト前立腺腺癌(ATCC CRL-1435)、BxPC-3ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1687)、MDAMB 231ヒト乳腺癌(ATCC HTB-26)、Mat-LyLuラット悪性前立腺癌(ATCC JHU-92)、AsPc-1ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1682)、DU-145ヒト前立腺癌(ATCC HTB-81)およびMIA PaCa 2ヒト膵癌(ATCC CRL-1420)。ATCC細胞株を、10%FBSを含む推奨培養培地で、5%CO
2/95%空気を供給する37℃の加湿インキュベーターで培養した。北アメリカホタルルシフェラーゼ遺伝子を発現するMDA-MB-231-Luc(Cat. No. D3H2LN)細胞をCaliper Life Sciences Inc.から購入し、10%FBS含有RPMIで増殖した。
【0570】
DU-145/HAS2およびMDA-MB-231-Luc/HAS2細胞株を、DU-145およびMDA-MB-231-Luc細胞株の、ヒアルロナンシンターゼ2(HAS2)(配列番号195)をコードするレトロウイルスへの形質導入により賛成した。HAS2レトロウイルスを産生するために、N末端His6−タグhHAS2 cDNA(配列番号196)を、ネオマイシン耐性遺伝子を含むベクターpLXRN(配列番号197;Clontech、Cat. No. 631512)のAvrIIおよびNotI部位に挿入し、pLXRN-hHAS2(配列番号201)を創製した。pLXRN-hHAS2 Hisプラスミドを、次いでリポフェクタミン2000試薬(Life Technologies)を使用して、pVSV-Gエンベロープベクター(配列番号198;Clontech、Cat. No. 631530の一部)とGP-293細胞に同時形質移入した。DU-145偽細胞株も、空LXRNプラスミドおよびpVSV-Gエンベロープベクターの同時形質移入により産生した。
【0571】
ウイルス力価を、定量的PCR方法(Retro-XTM qRT-PCR Titration Kit;Clontech、Catalog No. 631453)により、次のプライマー(Clontech Catalog No. #K1060-E)を使用して決定した:
pLXSN 5’プライマー(1398−1420):5’-CCCTTGAACCTCCTCGTTCGACC-3’(配列番号199);
pLXSN 3’プライマー(1537−1515):5’-GAGCCTGGGGACTTTCCACACCC-3’(配列番号200)。
【0572】
HAS2発現細胞株を確立するために、70%コンフルエント癌細胞、DU-145またはMDAMB 231 Lucを、10%FBS含有DMEM(Mediatech)中、レトロウイルス60:1〜6:1比で72時間インキュベートした。培養を、200μg/mLのG418を含む選択培地で維持した。安定なHAS2発現癌細胞は、2週間のG418条件培地選択後に産生した。
【0573】
2. ヒアルロン酸の定量化
ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)ベースのアッセイを用いて、腫瘍細胞により産生されるヒアルロナンの量を決定した。HABPベースのアッセイは、HABPが、ヒアルアドヘリン類(HA結合タンパク質)と結合する能力がある少なくとも15(n−アセチルグルコース−グルクロン酸)二糖類から成るHAを優勢に検出するために、腫瘍微小環境(TME)バイオマーカーとしてHAを測定するための化学的方法に好ましい(例えば、Haserodt S, et al. (2011) Glycobiology 21:175-183参照)。
【0574】
腫瘍細胞を、1×10
6細胞で75cm
2フラスコに播種し、24時間インキュベートした。組織培養上清を、HA捕捉として組み換えヒトアグリカンおよび検出試薬(組み換えヒトアグリカンG1-IGD-G2ドメイン、Accession No. NP_037359のVal20-Gly676(配列番号202)とC末端10−HISタグ、R&D Systems、Catalog No. 1220-PG)を使用する、酵素結合HABPサンドイッチアッセイ(R&D Systems、Catalog No. DY3614)を使用するHAの定量化のために回収した。HA検出のためのアッセイを製造者の指示に従い行った。簡単に言うと、アッセイプレートを組み換えヒトアグリカンでコートし、HAを含むサンプル(すなわち組織培養上清)をプレートに添加した(各細胞株を個々に3反復で試験した)。プレートを洗浄し、結合したHAをビオチニル化組み換えヒトアグリカンを使用して検出した。未結合プローブ除去後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に結合したストレプトアビジンを二次的検出試薬として添加した。プレート洗浄後、結合したHRPを、1:1 H
2O
2/テトラメチルベンジジン基質溶液(R&D Systems)とのインキュベーションにより検出し、スペクトルMaxM3マルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices, CA)を使用して450nmで光学密度検出して定量化した。培養培地中の各腫瘍細胞型のHA濃度を、培養培地中のHA濃度(ng/mL)として表した(表5)。
【0575】
3. HAS1、HAS2、HAS3、HYAL1およびHYAL2 mRNA発現の定量化
RNAを、RNeasy(登録商標)Mini Kit(Qiagen GmbH)を製造者の指示に従い使用して、細胞ペレットから抽出した。次いで、抽出したRNAをNanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies, Wilmington, DE)を使用して定量した。遺伝子特異的プライマーを使用する定量的実時間PCR(qRT-PCR)を使用して、各ヒアルロナンシンターゼおよびヒアルロニダーゼの相対的mRNAレベルを定量した。qRT−PCRプライマーをBio Applied Technologies Joint, Inc.(San Diego, CA)から購入した。個々のPCR反応に使用するプライマーについてのDNA配列は次のとおりであった。
【表4】
【0576】
PCR反応について、サンプルをiQ SYBR Green master mix(Bio-Rad)および各遺伝子について指定したプライマー対と混合した。PCR反応をBio-Rad Chromo 4 qPCR装置で行った。第一鎖合成を次の条件下で行った:DNA脱離反応について42℃で2分間、逆方向−転写のために42℃で15分間および逆転写酵素の3分間、95℃での不活性化。増幅のために、95℃での3分間初期変性、45サイクルの15秒間の変性および1分間、58℃でのアニーリング伸長を使用した。各サンプルの遺伝子発現CT値を、内部ハウスキーピング遺伝子GAPDHで標準化することにより計算し、相対値をプロットした。表5は、アッセイした各遺伝子について各腫瘍細胞型のCT値を示す。
【0577】
4. 細胞周囲マトリックス形成のアッセイ
10種の細胞株の単層培養物を増殖し、アグリカン促進細胞周囲マトリックス形成について試験した。アグリカン仲介HA細胞周囲マトリックスをインビトロで可視化するために、Thompson CB, et al. (2010) Mol Cancer Ther 9: 3052-3064に以前に記載された粒子排除アッセイを幾分改変して使用した。簡単に言うと、細胞を、6ウェルプレートのウェルあたり1×10
5細胞で24時間播種し、培養細胞培地単独または1000U/mLrHuPH20含有で37℃で1時間処置した。rHuPH20での前処置は細胞周囲マトリックスの形成を阻止し、それゆえに、これを各細胞型の細胞周囲マトリックス形成の負対照として使用した。次いで、細胞を0.5mg/mLのウシアグリカン(Sigma-Aldrich)と、37℃で1時間インキュベートした。続いて、培地を除去し、Balb/cマウス(Taconic, Hudson, NY)から単離した2%グルタルアルデヒド固定マウス赤血球(RBCs)のPBS、pH7.4中10
8/mL懸濁液と置き換えた。粒子を15分間沈降させた。次いで、カメラスキャナーおよび造影プログラム(Diagnostic Instruments)と連結した位相差顕微鏡を用いて培養物を撮像した。粒子排除面積および細胞面積をSPOT Advanceプログラム(Diagnostic Instruments, Inc., Sterling Heights, MI)を使用して測定した。細胞周囲マトリックス面積を、マトリックス面積から細胞面積を減算することにより計算し、μm
2として示した(表5)。
【0578】
5. 結果:細胞周囲マトリックス形成に対する腫瘍細胞HA含量およびHASおよびHYAL発現の比較
HABPベースの検出アッセイで決定した条件培地中のHA濃度は、単層培養中の腫瘍細胞により形成されるアグリカン仲介細胞周囲マトリックスの面積と相関することが判明した(表5、P<0.0029)。さらに、ヒアルロナンシンターゼ2(HAS2)を発現するように操作した細胞株であるDU-145/HAS2およびMDA-MB-231/HAS2は、各親細胞株と比較した増加したHA産生および亢進した細胞周囲マトリックス形成をインビトロで示した。対照的に、細胞周囲マトリックス形成とHAS 1、2もしくは3またはHyal 1もしくは2のmRNA発現の相対レベルの間に相関は見られなかった。これらの知見は、腫瘍細胞関連HAの直接測定は、特異的に細胞周囲マトリックス形成の予測因子を提供することを示す。
【0579】
【表5】
NE:評価せず
1 粒子排除アッセイにより評価した細胞周囲マトリックス面積(μm
3)。
2 培養培地(n=3、別個の培養)中の平均HA濃度(ng/mL)。
3、4 実時間RT−PCRにより決定したヒアルロナンシンターゼ(HAS)およびヒアルロニダーゼ(Hyal)発現。Ct値をGAPDH mRNAにより基準化し、差の倍率はBxPC3発現に相対的である。
【0580】
実施例6
腫瘍細胞ヒアルロナン濃度の測定およびPEGPH20の抗腫瘍活性との関係
本実施例において、種々の腫瘍細胞株中のヒアルロナン濃度を免疫組織化学的分析により評価し、PEGPH20が腫瘍細胞株から産生した異種移植腫瘍の腫瘍増殖およびHA富腫瘍細胞株の腫瘍コロニー増殖を阻害する能力を比較した。
【0581】
A. 種々の異種移植腫瘍モデルにおけるHA含量とPEGPH20効果の比較
1. 異種移植腫瘍モデル
14種の腫瘍細胞株由来異種移植腫瘍を次の腫瘍細胞株から産生した:DU-145ヒト前立腺癌(空pLXRNプラスミドで偽遺伝子導入したATCC HTB-81、実施例5.A.1参照)、DU-145 HAS2(実施例5.A.1参照)、MDAMB 231ヒト乳腺癌(ATCC HTB-26)、MDA-MB-231/Luc(D3H2LN、Caliper Life Sciences)、MDAMB 231 Luc/HAS2(実施例5.A.1参照)、SKOV3ヒト卵巣癌(ATCC HTB-77)、AsPc-1ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1682)、MIA PaCa 2ヒト膵癌(ATCC CRL-1420)、4T1マウス乳房腫瘍(ATCC CRL-2539)、BxPC-3ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1687)、Mat-LyLuラット悪性前立腺癌(ATCC JHU-92)およびPC-3ヒト前立腺腺癌(ATCC CRL-1435)。腫瘍細胞株を実施例5に記載のとおり維持した。LUM 697およびLUM 330ヒト腫瘍外植片をCrown Bioscience, Beijing Chinaから得た。
【0582】
6〜8週齢nu/nu(Ncr)無胸腺ヌードマウス(Taconic)またはBalb/c(Harlan)またはBalb/cヌードマウス(Shanghai Laboratory Animal Center, CAS(SLACCAS);実施例7参照)を、Micro-isolatorケージで、12時間明/12時間暗サイクルの環境制御された部屋で飼育し、無菌餌および水を自由に摂取させた。全動物試験を、承認されたIACUCプロトコルに準拠して行った。
【0583】
腫瘍産生について、マウスに腫瘍細胞を、下記表6に従い、脛骨周囲(peritibially)(右脛骨骨膜に隣接した筋肉内注射)、皮下(s.c.、右後肢)または乳房脂肪体に接種した。
【表6】
H:ヒト;M:マウス;R:ラット
【0584】
脛骨周囲腫瘍について、腫瘍体積をVisualSonics Vevo 770高解像度超音波を使用して決定した。皮下および乳房脂肪体腫瘍について、腫瘍体積を、固形腫瘍塊の長(L)および幅(W)のノギス測定により計算した。腫瘍体積(TV)を(L×W
2)/2として計算した。腫瘍体積が〜400〜500mm
3に達したとき、動物をPEGPH20処置に選択した。次いで、動物を処置群と対照群に無作為化した(n≧6マウス/群)。
【0585】
PEGPH20での処置および腫瘍増殖阻害(TGI)の分析を記載されているとおりに行った(Thompson et al.)。マウスを、表7に示すスケジュールに従い、媒体(10mMヒスチジン、pH6.5、130mM NaCl)またはPEGPH20で2〜3週間処置した。腫瘍体積を1週間に2回測定した。腫瘍サイズが2,000mm
3に達したとき、動物を実験から外し、人道的に屠殺した。
【0587】
各腫瘍モデルのTGIを、表7に示す実験終了日の体積に基づき計算した。各腫瘍モデルの腫瘍増殖阻害(TGI)パーセンテージを次の式を使用して計算した:
%TGI=[1−(T
n−T
0)÷(C
n−C
0)]×100%
式中、“T
n”はペグ化rHuPH20最終投与“n”日後の処置群(ペグ化rHuPH20を受けている動物)の平均腫瘍体積であり;“T
0”は処置前、0日の該処置群の平均腫瘍体積であり;“C
n”は“n”日目の対応する対照群の平均腫瘍体積であり;“C
0”は処置前、0日の対照群の平均腫瘍体積である。対照群と処置群の腫瘍体積の統計学的分析を、一方向ANOV試験を使用して行い、P≦0.05のP値を統計学的有意と定義した。
【0588】
2. 腫瘍組織中のHAの組織化学染色およびHA含量の半定量化
腫瘍増殖阻害実験終了時、14種の産生した異種移植腫瘍の各々を、HA検出用プローブとしてビオチニル化ヒアルロナン結合タンパク質(B−HABP)を使用する組織化学によりHA含量を分析し、デジタル定量化した。
【0589】
腫瘍組織を採取し、10%中性緩衝化ホルマリン溶液(NBF)に固定し、パラフィンに包埋し、5μm切片に切断した。組織化学的分析について、切片を脱パラフィン化し、再水和した。内在性ペルオキシダーゼ類をperoxo-block溶液(Invitrogen, CA, USA)で2分間遮断した。非特異的染色を、1時間、室温(RT)で2%正常ヤギ血清PBS中2%BSAで遮断し、2.5μg/ml ビオチニル化HA結合タンパク質(B-HABP, Catalog No. 400763, Seikagaku, Tokyo, Japan)と1時間、37℃でインキュベートした。染色特異性を確認するために、切片のサブセットを、rHuPH20(1000U/mL)で、PIPES緩衝液(25mM PIPES、70mM NaCl、0.1%BSA、pH5.5)中、37℃で1時間前処理し、B−HABPを添加した。一次試薬を除去するための洗浄後、サンプルをストレプトアビジン−ホースラディッシュペルオキシダーゼ溶液(BD Pharmingen, Catalog No. 550946)と30分間、RTでインキュベートし、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB;Dako, Catalog No. K3467)で検出した。次いで、切片をギルのヘマトキシリン(Vector Labs, Catalog No. H-3401)で対比染色し、脱水和し、Cytoseal 60媒体(American MasterTech)にマウントした。
【0590】
Aperio T2 Scanscope(Aperio)を使用して、組織切片の高解像度画像を作成した。画像を、褐色(HA)数についての画素数アルゴリズムを使用するAperio Spectrumソフトウェアを使用して定量的に分析した。切片中の10%未満の腫瘍細胞または50%を超える壊死性組織の組織コアを本評価から除外した。PC3(HA
+3)異種移植腫瘍組織を正対象として使用した。強い正(褐色)染色面積対総染色面積の合計の比を計算し、それぞれ該比率が25%、10〜25%、10%未満または0であるとき、+3、+2、+1または0とスコア化した。
【0591】
スピアマンの順位相関係数を使用して、HA発現とPEGPH20処置に対する応答の相関を評価した。
【0592】
3. 結果:PEGPH20処置後の腫瘍HA含量および腫瘍増殖阻害の比較
表8に示す結果は、異種移植腫瘍から採った組織切片で測定したHAのレベルおよびPEGPH20による腫瘍増殖阻害(TGI)パーセンテージの比較である。結果は、少なくとも1mg/kg PEGPH20で処置した腫瘍由来である。1mg/kgより高い投与量は腫瘍増殖阻害を増やさなかった。PC-3(HA
+3)およびBxPC3(HA
+2)動物モデルにおいて、それぞれ10μg/kgおよび100μg/kgより高い投与量で効果の顕著な増加は見られなかった。
【0593】
腫瘍細胞型の多様性にも係らず(ヒト、マウスおよびラット起源)、B−HABP仲介HA染色強度とPEGPH20のインビボ抗腫瘍活性には顕著な相関(P<0.001、スピアマンのr=8、n=14)があった(表8)。
【表8】
H:ヒト;M:マウス;R:ラット
【0594】
B. HAS2過発現の異種移植腫瘍モデルにおけるHA含量とPEGPH20効果の比較
腫瘍細胞中のHA産生増加の、PEGPH20処置に対する腫瘍感受性増加に対する効果を、さらに、外来性ヒアルロナンシンターゼ2(HAS2)を発現する腫瘍異種移植で試験した。実施例5に示すとおり、DU-145腫瘍細胞株によるHA産生は、インビトロで細胞周囲マトリックス形成にいたる、HAS2をコードする遺伝子を細胞に形質導入することにより増加できた。さらに、DU142-HAS2は上記のとおりHA染色増加および異種移植モデルにおけるPEGPH20による腫瘍阻害増加を示した。本実施例において、経時的なPEGPG20処置の効果を、DU-145対DU-145-HAS2異種移植で比較した。
【0595】
マウス異種移植モデルを、実施例6Aに上記のとおり製造した。簡単に言うと、マウスにDU-145/ベクター対照またはDU-145/HAS2細胞を表6に示すとおり接種した。腫瘍が約500mm
3サイズに到達したとき、マウスを処置群(n=8)に分け、媒体単独またはPEGPH20で処置した。PEGPH20処置について、マウスに、1週間に2回、3週間、4.5mg/kgの投与量を尾静脈から注射した。腫瘍体積を上記のとおりノギス測定によりモニターした。異種移植腫瘍を、PEGPH20での最後の処置24時間後、上記のとおりHA含量についてビオチニル化ヒアルロナン結合タンパク質(B−HABP)を使用する組織化学により分析した。
【0596】
HAS2過発現DU-145前立腺腫瘍異種移植は、先の報告(表7)(Thompson et al.(2010))と同様、ヌードマウスで空ベクター(DU-145偽)を遺伝子導入した親細胞株より激しく増殖した。PEGPH20はDU-145-HAS2腫瘍で腫瘍増殖を阻害したが(TGI=50%、P<0.001、n=8)、DU-145ベクター対照腫瘍ではしなかった(TGI=0.7%、P>0.05、n=8)。さらに、PEGPH20処置腫瘍のB−HABPでの組織化学染色は、対照腫瘍と比較した腫瘍サンプル中のHA除去を示した。これらのデータは、ECMへのHA蓄積が腫瘍発達を促進し、促進された腫瘍関連HA蓄積は、PEGPH20の抗腫瘍活性と相関することを示す。
【0597】
C. ヒアルロナン富腫瘍におけるPEGPH20処置の投与関連効果
本実験において、HA富腫瘍の腫瘍増殖阻害におけるPEGPH20の投与量依存的効果を試験した。マウス異種移植モデルを、実施例6Aに上記のとおり製造した。簡単に言うと、マウスにBxPC-3ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1687)またはPC-3ヒト前立腺腺癌(ATCC CRL-1435)細胞を表6に従い接種した。腫瘍が約500mm
3サイズに達したとき、マウスを処置群(n=10)に分け、媒体単独またはPEGPH20で処置した。PEGPH20処置について、マウスに1週間に2回、2週間、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、4.5mg/kgおよび15mg/kg(それぞれ350U/kg、3,500U/kg、35,000U/kg、157,500U/kgおよび500,000U/kg)の投与量を尾静脈に全身的に注射した。腫瘍体積を上記のとおりノギス測定によりモニターした。
【0598】
PEGPH20の最大有効投与量は1mg/kg以下であることが観察された。PC-3異種移植モデルにおいて全投与量のPEGPH20(媒体に対して0.1mg/kg、1mg/kg、4.5mg/kg、15mg/kg投与量でP<0.001;0.01mg/kg投与量でP<0.01)およびBxPC-3異種移植モデルで0.01 mg/kgより多い全投与量のPEGPH20(媒体に対して0.1mg/kg、1mg/kg、4.5mg/kg、15mg/kg投与量でP<0.001)で有意な腫瘍阻害が観察された。0.01μg/kg(PC3、HA
+3)または0.1mg/kg(BxPC3、HA
+2)を超える投与量で効果の有意な増加は観察されなかった。
【0599】
D. ヒアルロナン富腫瘍細胞のインビトロでのコロニー増殖に対するペグ化rHuPH20の効果
PEGPH20が、インビトロでヒアルロナン富前立腺腫瘍細胞(PC3)の足場非依存性増殖および拡散を阻止できるか否かを決定するために、三次元クローン原性アッセイを細胞で行った。PC3細胞を、約80%集密度で、トリプシン処理し、回収し、1回完全培地で洗浄した。細胞密度を8×10
4/mL細胞に調節し、氷上でMatrigel(登録商標)(BD Biosciences, San Jose, CA)に懸濁した。0.025mLのこの細胞/Matrigel(登録商標)混合物を、Matrigel(登録商標)で0.1mL/ウェルで予めコートしている48ウェル細胞培養プレートに播種し、37℃で1時間固化させた。対照API緩衝液および0.6mL/ウェルのAPI緩衝液含有完全培地の種々の濃度のPEGPH20で、17日間連続的曝露のために、1U/mL、3U/mL、10U/mLおよび100U/mLのPEGPH20を適当なウェルの頂上に添加した。ウェルを、37℃で、加湿雰囲気下、空気中5%CO
2で17日間インキュベートし、適当なとき、適当な濃度の酵素を含む処置媒体を、17日間の期間中3〜4日間毎に置き換えた。
【0600】
17日目、コロニーの増殖を、Insight FireWireデジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Michigan)と組み合わせたNikon Eclipse TE2000U倒立顕微鏡で画像を捕捉することにより評価した。コロニー数および各コロニーの直径(μm)をImageJソフトウェア(オープンソースソフトウェア、画像表示および分析、面積および画素値計算に利用可能な公開プログラム)および組み合わされた較正関数を使用して測定した(コロニー体積をコロニー直径および式:4/3πr
3を使用して計算)。
【0601】
各条件のウェルの平均コロニー体積を決定し、対照サンプル(酵素無しのAPI(活性医薬成分)緩衝液(10mM Hepesおよび130mM NaCl、pH7.0))における平均コロニー体積を、ペグ化rHuPH20存在下でインキュベートしたサンプルと比較して、コロニー体積に対するPEGPH20の効果を決定した。阻害比を式:
(対照の平均体積−処置の平均体積)/(対照の平均体積)*100
を使用して計算した。
【0602】
ペグ化rHuPH20は、対照と比較して少ないコロニー体積により証明される、増殖の投与量依存性阻害を誘発した。上記式を使用して計算した阻害比に基づき、1U/mL、3U/mL、10U/mLおよび100U/mLのPEGPH20存在下でインキュベートした培養物は、対照緩衝液とインキュベートした培養物と比較して、それぞれ平均でコロニー体積を39%、67%、73%および75%減少させた(3Uおよび10Uサンプルについてはp<0.01;100Uサンプルについてはp<0.001;n=6)。統計学的差異をマン・ホイットニー検定を使用して分析した。
【0603】
Graphpad Prism(登録商標)4プログラム(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)を使用して決定したコロニー体積減少におけるPEGPH20のIC
50は約1.67U/mLであった。コロニーの平均数は、媒体処置(対照)培養で10.17±1.56/ウェルおよびPEGPH20100U/mL処置培養で11.50±0.89/ウェルであった。コロニー数の差異は対照と100U/mL培養で有意ではなかった(n=6、p>0.05)。これらの結果は、PEGPH20が高ヒアルロナン腫瘍細胞の増殖および/または生存を阻害できることを示す。
【0604】
別の実験において、PC3細胞を上記のとおり再構成基底膜(Matrigel)に藩主し、媒体または0.1U/mL、1U/mL、10U/mL、100U/mLおよび1000U/mLのPEGPH20に19日間暴露した。次いで画像をデジタル処理で捕捉し、コロニー体積をImageJプログラムを使用して捕捉した。対照と比較したコロニー体積の阻害は、それぞれ22%、45%、63%、73%および74%であった(媒体と比較して1U/mlについてP<0.01、10U/mLについてP<0.001およびそれ以上;n=3)。
【0605】
実施例7
PEGPH20に対するヒトNSCLC腫瘍の応答を予測するバイオマーカーとしてのHAの評価
A. NSCLC患者生検におけるHAの発現
先の研究は、上昇したHAの蓄積が非小細胞性肺癌(NSCLC)で起こることを示している(Hernandez JR, et al. (1995) Int J Biol Markers 10: 149-155 and Pirinen R, et al. (2001) Int J Cancer 95: 12-17)。それに反してNSCLC由来細胞株は低レベルであり、NSCLC株化細胞がインビトロで継代中にHA発現を失うことを示唆する。それゆえに、初代腫瘍生検におけるHA発現を試験した。
【0606】
190種のNSCLC生検の組織マイクロアレイ(TMA)パネル(USBiomax, Inc.)を、組織型およびHA蓄積について試験した。HA含量は、実施例6に記載のとおりB−HABP組織化学染色により決定した。強い正(褐色)染色面積対総染色面積の合計の比がそれぞれ25%を超える、10〜25%、10%未満または0であるとき、サンプルを+3、+2、+1または0とスコア化した。このパネルにおいて、USBiomaxにより提供される病理診断に基づき、腺癌(ADC)、扁平上皮細胞癌(SCC)および大細胞癌(LCC)細胞型がそれぞれ32%、51%および3%の頻度で観察された(表9)。他の未同定サブタイプは、試験した190サンプルの約11%を構成した。
【0607】
腫瘍関連HA蓄積の分析は、全組織型が、HA
+3高HA表現型を発現する細胞のサブセットを有し、約27%の全体的割合であることを示した(表9)。特に、SCC症例の40%がHA
+3表現型を示し、一方ADC症例の11%およびLCC症例の33%がHA
+3とスコア化された。SCC症例の34%はHA
+2表現型を示し、一方ADC症例の48%およびLCC症例の50%がHA
+2とスコア化された。SCC症例の25%はHA
+1表現型を示し、一方ADC症例の36%およびLCC症例の17%はHA
+2とスコア化された。このデータセットにおいて、正常肺組織サンプル発現のいずれもHA
+3表現型とはならなかったが、検出可能なHAはほとんどの正常肺組織サンプルで見られた。
【0608】
【表9】
1 HAスコアは、正HA染色強度の%に基づき規定した
2 ADC:腺癌
3 SCC:扁平上皮細胞癌
4 LCC:大細胞癌
【0609】
B. NSCLC患者外植片におけるHAの発現およびPEGPH20効果の予測
NSCLCのHA過発現とPEGPH20仲介HA枯渇に対する抗腫瘍応答の関係を前向き試験するために、HA蓄積程度が種々のヒトNSCLC患者腫瘍外植片を選択し、異種移植腫瘍モデルにおけるPEGPH20処置に対する応答性を評価した。HA蓄積により特徴付けられる初代外植片を、外植片モデルが無処置腫瘍の遺伝的多様性のより代表的なサンプルを含み、天然腫瘍様間質の側面を保持するはずであるために、本研究で使用した。
【0610】
腫瘍生検を16名のNSCLC患者から得て、ヌードマウス(Crown Bioscience, Beijing, China)において低継代数で皮下的に維持した。NSCLC腫瘍外植片を、1〜4継代で外植片組織におけるHA蓄積をスクリーニングし、上記のとおりB−HABP組織化学染色によりHA表現型(すなわち、+1、+2または+3)を割り当てた。HA
+3(LUM697)表現型、HA
+2(LUM330)表現型およびHA
+1(LUM858)表現型を表す3種の扁平上皮細胞型(SCC)外植片を、異種移植について前向きに選択した。
【0611】
選択した腫瘍外植片について播種腫瘍が500〜700mm
3サイズに達したら、マウスを屠殺し、腫瘍を抽出し、3×3×3mm
3フラグメントに刻んだ。表6に示すとおり、各腫瘍につき1フラグメントを、メスBalb/cヌードマウスの右ひ腹に皮下的にインプラントした(各群n=10)。腫瘍体積を、最大長手直径(長(L))および最大横断直径(幅(W))のノギス測定により決定し、(L×W
2)/2の計算を使用して概算した。平均腫瘍サイズが500mm
3(300〜600mm
3範囲)に達したとき、動物を2群に無作為化した。治療のために、動物を、上の表7に示すとおり、媒体またはPEGPH20で4.5mg/kgを1週間に2回、5投与で処置した。パーセンテージ腫瘍増殖阻害(%TGI)および統計学的分析を実施例6に記載のとおりに行った。
【0612】
組織化学により決定したHA表現型の順番(すなわち、+1、+2または+3)は、PEGPH20による腫瘍増殖阻害の予測となることが判明した(表9)。例えば、増殖阻害パーセンテージはLUM697(HA
+3)で97%、LUM330(HA
+2)で44%およびLUM858(HA
+1)で16%であった。さらに、腫瘍緩解がLUM697(HA
+3)腫瘍外植片軍で観察されたが、LUM330(HA
+2)群およびLUM858(HA
+1)群では観察されなかった:LUM697(HA
+3)腫瘍を有する10匹中4匹の動物が、治療前と比較して腫瘍負荷が減少した。
【0613】
実施例8
異種移植腫瘍細胞DNA合成および腫瘍微小環境(TME)に対するPEGPH20処置の効果
A. 腫瘍細胞DNA合成に対するHA枯渇の効果
HA枯渇がインビボで腫瘍細胞に対する抗増殖性効果を有するか否かを試験するために、PEGPH20処置PC-3(HA
+3)腫瘍異種移植をDNA合成のレベルについて試験した。
【0614】
6〜8週齢nu/nu(Ncr)無胸腺ヌードマウスに、実施例6に記載のとおり、PC-3腫瘍細胞を脛骨周囲内(intraperitibially)にインプラントした(0.05mL中1×10
6細胞/マウス)。腫瘍体積をノギス測定でモニターした。腫瘍が〜400mm
3に達したら、マウスを、100μLの媒体またはPEGPH20(1mg/kg(35,000U/kg)または4.5mg/kg(157,500U/kg);20gマウス体重に基づき約700U/投与量または3150U/投与量)で、1週間に2回、2週間尾静脈への注射により処置した。実験終了24時間前、マウスに10mg/kg BrdU(0.2mL)(Invitrogen, Cat#00-0103)を腹腔内投与した。腫瘍をマウスから切除し、10%緩衝化ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。組織を5μm切片に切断し、細胞増殖を抗BrdU抗体(BrdU染色キット;Invitrogen, Cat#93-3943)で染色後、製造者の指示に従い評価した。
【0615】
PEGPH20で処置した動物を媒体処置動物と比較した。媒体処置腫瘍と比較して、PEGPH20処置腫瘍において合成活性核の58.3%減少が観察された(BrdU陽性核は4.8%から2%に減少した)。この結果は、PEGPH20処置の結果として前立腺PC3(HA
+3)または膵臓BxPC3(HA
+2)異種移植での観察される増殖阻害と一致した(1mg/kg以上の投与量で〜50%TGI)(実施例6参照)。
【0616】
B. 腫瘍微小環境関連タンパク質の発現に対するHA枯渇の効果
先の試験は、HA
+3腫瘍のPEGPH20での処置が腫瘍間質性流体圧(IFP)に、それそれゆえに腫瘍とその外部環境の流体圧差に劇的な効果を有することを示している(Thompson et al.(2010)参照)。TMEにおける物理的変化は遺伝子発現に影響を有する(Shieh AC (2011) Ann Biomed Eng 39:1379-1389)。HA除去がTMEタンパク質のターンオーバーまたは発現に影響を有するか否かを試験するために、活性にリモデリングするマトリックスで見られるマウスコラーゲンI(Col1α1)、マウスコラーゲンV(Col5α1)およびテネイシンC(TNC)のようなTMEタンパク質の発現を試験した。
【0617】
1. 腫瘍組織におけるコラーゲンの局在化および半定量化
実施例8Aにおいて産生したPC-3腫瘍由来の隣接皮膚を伴う腫瘍組織を10%中性緩衝化ホルマリンに48時間固定化し、組織処理装置(TISSUE-TEKVIP, Sakura Finetek, CA)を使用して処理し、パラフィンブロックに包埋した。パラフィン包埋組織サンプルを5μm切片に切断し、脱脂し、脱イオン水で再水和した。抗原回復を、スライドをEDTA緩衝液中、pH8.0、100℃で25分間過熱することにより処理した。スライドをPBS−Tで濯ぎ、2%PBS/BSA中2%正常ヤギ血清で30分間遮断し、続いてウサギポリクローナル抗コラーゲンタイプ1抗体(1:200、Abcam, Cat#ab34710)と2時間、室温でインキュベートした。次いで、切片をTexas redタグ付ヤギ抗ウサギIgG(1:200、Vector Laboratories, Cat# F1-1000)と1時間、室温でインキュベートし、対比染色し、DAPI(Invitrogen, CA)と共にProLong(登録商標)Gold antifade試薬を用いてマウントした。顕微鏡写真をRT3カメラ(Diagnostic Instruments, MI)と組み合わせたZeiss Axioskop顕微鏡下に捕捉した。各セクションからの無作為5視野をコラーゲン陽性強度について、Image-Pro plusプログラムを使用して分析した。
【0618】
2. PC3異種移植腫瘍組織における遺伝子発現のcDNAアレイ分析
実施例6Aに記載のとおりPC3腫瘍担持Ncr nu/nuマウスを産生し、媒体またはPEGPH20で処置した。動物を、媒体またはPEGPH20で処置8時間および48時間後に屠殺した。腫瘍組織を無菌条件下で切除し、液体窒素で急速冷凍した。総RNAを、Asuragenの標準的操作法に従い凍結組織から単離した。総RNAサンプルの純度および量を、NanoDrop ND-1000UV分光光度計を使用する260nmおよび280nmの吸光度解読により決定した。総RNAの完全性を、Agilent Bioanalyzer 2100マイクロフルイディック電気泳動により定量した。mRNAプロファイリング試験のためのサンプルを、Asuragen, Inc.により、Affymetrix Mouse 430 2.0およびHuman U133 plus 2.0アレイを使用して処理した。
【0619】
3. 結果
PC-3腫瘍におけるCol1α1の腫瘍特異的減少が、PEGPH20での処置によるHA枯渇後に観察された。媒体処置腫瘍と比較したCol1α1染色の80%減少が観察された(P<0.05 t検定)。PEGPH20処置マウスからの皮膚におけるCol1α1染色は、しかしながら、安定なままであった。さらに、Col1α1、Col5α1およびTNCについてマウス(間質)mRNAのレベル減少が、mRNA発現アレイ分析で祖k低して観察された。TNC mRNAは最も顕著に影響を受け(66%減少)、続いてCol1α1(53%減少)およびCol5α1(45%減少)であった。これらの結果は、TME内のHA枯渇がタンパク質発現の顕著な変化をもたらすことを示唆する。
【0620】
実施例9
TSG−6結合モジュールIgG Fc融合タンパク質の産生
TSG−6の結合モジュールおよびIgGのFcドメインを含む融合タンパク質DearuTSG−6−LM−Fcを産生した。TSG−6結合モジュールのヘパリン結合領域が変異した変異体融合タンパク質TSG−6−LM−Fc/ΔHepも産生した。
【0621】
A. 組み換えヒトTSG−6結合モジュール融合タンパク質のベクター構築
DNA新規合成(GenScript, NJ)を用いて、TSG−6−LM−Fc融合タンパク質をコードする核酸を産生した。核酸は、ヒト免疫グロブリン軽鎖カッパ(κ)リーダーシグナルペプチド配列(配列番号210)をコードするDNA、ヒトIgG1重鎖の669bp長cDNAフラグメント(GI No. 5031409;配列番号203、配列番号204に示すペプチド配列をコードする)およびヒトTSG−6結合モジュール領域の285bp長cDNAフラグメント(配列番号216、配列番号207に示すペプチド配列をコードし、これは配列番号205(mRNA)および配列番号206(タンパク質)に示すTSG−6プレタンパク質、GI No. 315139000のアミノ酸位置35〜129に対応)を含む。ヒトIgG1重鎖およびヒトTSG−6結合モジュール領域を、6bp AgeI制限酵素開裂部位および元々IgG1 Fc配列の一部として公開された4個のさらなるアミノ酸(DKTH;配列番号209)をコードする12bp配列、GACAAAACTCAC(配列番号208)を含む(Nucleic Acids Research, 1982, Vol. 10, p4041)。融合タンパク質配列にフランキングな、5’末端のNheIおよび3’末端のBamHIの2個の特有の制限酵素開裂部位を合成した。合成したフラグメントは、配列番号217に示す配列を有する。フラグメントは、タンパク質発現改善および新規DNA合成による合成について最適化されたコドンであった。コドン最適化フラグメントは、配列番号211に示す配列を有する。コードされるTSG−6−LM−Fc融合タンパク質のタンパク質配列は配列番号212に示す。
【0622】
合成したコドン最適化フラグメントを、NheIおよびBamHI開裂部位を介して、周知の組み換えDNA法(New England Biolabs, Ipswich, MAから得られた制限酵素およびライゲーション試薬)を使用してpHZ24 IRESバイシストロニック哺乳動物発現ベクター(配列番号52)に挿入し、pHZ24-TSG−6−LM−Fc構築物(配列番号213)を産生した。このベクターでの組み換えタンパク質発現はCMVプロモータにより駆動される。
【0623】
ヒアルロナン(HA)結合特異性を亢進し、他のGAG鎖の結合を減少するために、TSG−6結合モジュールのアミノ酸位置55、69、76に3箇所のリシンからアラニン変異を含む変異体融合タンパク質であるTSG−6−LM−Fc/ΔHepをコードする構築物を構築した。変異はTSG−6結合モジュールのヘパリン結合活性を減少させるが、HA結合活性に影響しない(ヘパリン結合部位における三重変異体;K20A/K34A/K41Aの10倍低いヘパリン結合活性を報告するMahoney DJ et al. (2005) J Biol Chem. 280:27044-27055参照)。TSG−6−LM−Fc/ΔHepを、TSG−6−LM−Fc融合タンパク質をコードする核酸フラグメントの変異誘発およびpHZ24-TSG−6−LM−Fc/ΔHep(配列番号218)を産生するためのpHZ24 IRESベクターへの挿入により産生した。TSG−6−LM−Fc/ΔHepフラグメントの配列を配列番号214に示し、これは、配列番号215に示すSG-6-LM−Fc/ΔHep融合タンパク質をコードする。
【0624】
B. 組み換えタンパク質発現および精製
FreeStyle CHO-S懸濁細胞(Invitrogen)をTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHep融合タンパク質の発現に使用した。遺伝子導入前、FreeStyle CHO-S懸濁細胞株をCHO-S CD培養培地(Invitrogen)に維持した。遺伝子導入および組み換えタンパク質発現のための細胞を調製するために、FreeStyle CHO-S細胞を、8mM L−グルタミン添加FreeStyle CHO発現培地(Invitrogen)で、振盪フラスコ中、37℃で空気中8%CO
2の加湿雰囲気下、125rpmで回転するオービタルシェーカープラットフォームで、通気を可能にするためフラスコのキャップを緩めて培養した。
【0625】
懸濁細胞の一過性遺伝子導入を製造者の指示に従い行った。簡単に言うと、細胞を遺伝子導入24時間前に密度6×10
5/mlに分け、DNA/脂質比1:1でFreeStyleMax脂質を使用して遺伝子導入した。遺伝子導入96時間後、細胞を4,000gで20分間で回収し、上清を回収した。一過性遺伝子導入後のタンパク質発現レベルの時間経過分析は、タンパク質発現レベルが遺伝子導入96時間後プラトーに達することを確認した。それゆえに、組み換えタンパク質を遺伝子導入96時間後に回収した。
【0626】
回収した上清中の発現したTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHep融合タンパク質を、製造者の指示に従いプロテインA樹脂(Bio-Rad, Hercules, CA)による親和性精製により回収した。簡単に言うと、回収した上清を1M Tris−HCl、pH7.4(Teknova Catalog No. T1074)および5M NaCl(Sigma)を用いてpH7.4、0.15M NaClに調節し、プロテインAカラムへの充填前に結合緩衝液で3倍希釈した。溶出した生成物を直ぐに1M Tris−HCl、pH8.5で中和し、リン酸平衡化溶液(PBS、137mM NaCl、2.7mM KCl、8mM Na
2HPO
4、1.46mM KH
2PO
4およびpH7.4)に対して4℃で透析し、−20℃で保存した。一工程プロテインA親和性カラムを介した上清からの精製タンパク質の収量は3〜5mg/リットルであった。
【0627】
C. 発現組み換えタンパク質のSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析
精製融合タンパク質の純度、サイズおよび同一性を、還元および非還元条件下のSDS−PAGE4〜20%勾配ゲルおよびウェスタンブロット分析により決定した。60ngの精製タンパク質を本分析に使用した。精製融合タンパク質のサイズは還元条件下で約40kDaおよび非還元条件下で約80kDaであり、発現タンパク質がIgG Fcのヒンジ領域におけるジスルフィド結合を介するホモ二量体を形成することを示唆する。タンパク質サンプルの純度は95%を超えた。精製タンパク質はPBS中、少なくとも1ヶ月間、4℃で、何らかの目に見える分解または結合活性喪失なく安定であった。
【0628】
TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepにおけるTSG−6結合モジュールの同一性をヤギ抗ヒトTSG−6IgG(R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)、続いてウサギ抗ヤギIgG−HRP(EMD, San Diego, CA)とのウェスタンブロットにより評価した。組み換え完全長ヒトTSG−6タンパク質(R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を陽性対象として用いた。還元および非還元条件下のウェスタンブロット分析により検出されたタンパク質のパターンは、非還元条件下で少量の上部バンド(分子量サイズから、組み換えタンパク質の四量体を表す可能性が最も高い)が観察された以外SDS−PAGE分析のものと同じであった。
【0629】
精製組み換えタンパク質のFc部分の同一性を、HRP−ウサギ抗ヒトIgGFcを用いるウェスタンブロット分析で確認した(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)。検出されたタンパク質のパターンはSDS−Pageおよび抗TSG−6分析と同じであり、精製タンパク質がTSG−6結合モジュール(LM)ならびにhIgGFcの両者を含むことを示した。
【0630】
タンパク質がグリコシル化されているか否かを分析するために、精製タンパク質を、タンパク質からN結合オリゴ糖類を除去するグリコシダーゼPNGase F(0.5単位/ngタンパク質)で処理し、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットで分析した。PNGase F処置前後でタンパク質分子量で5kDaの差異が見られ、該発現タンパク質がグリコシル化されていることを示した。
【0631】
実施例10
TSG−6のヒアルロナンおよびヘパリンへの結合
TSG−6−LM−Fcおよびその変異体の両者のHAおよびヘパリンへの結合を試験するために2形態を使用した。第一形態において、TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの、マイクロプレート上の固定化HAまたはヘパリンへの結合を用いた。第二形態において、ビオチニル化HAおよびヘパリンの、マイクロプレート上の固定化組み換えTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepタンパク質への結合を用いた。
【0632】
A. 組み換えTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの固定化HAおよびヘパリンへの結合
野生型および変異体TSG−6−LM Fc融合ホモ二量体を、HAまたはヘパリン被覆マイクロプレートを使用して、そのHA結合およびヘパリン結合活性を試験した。簡単に言うと、平均MW約1000kDaのヒアルロナン(Lifecore, Chaska, MN)または平均MW15kDaのヘパリン(Calbiochem, San Diego, CA)を、.5M 炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.6中100μg/mlの濃度で96ウェルプレートに2個ずつ100μl/ウェルで分配し、4℃で一夜インキュベートした。プレートを1%BSAのPBS溶液で遮断して、非特異的結合を減少させた。
【0633】
TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHep精製タンパク質サンプルを希釈して、HA被覆プレートへの結合について0.31〜40ng/ml、ヘパリン被覆プレートへの結合について0.78〜100ng/mlの濃度範囲とした。各サンプルについて、100μl/ウェルを2個ずつマイクロプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを0.05%Tween 20含有PBSで5回洗浄して、未結合タンパク質を除去した。ヒアルロナンまたはヘパリン結合したTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepをウサギ抗ヒトIgG Fc−HRP(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、続いてTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質(KPL, Gaithersburg, MD)で検出した。サンプルを、ウサギ抗ヒトIgG Fc−HRP抗体と60分間インキュベートした。洗浄後、結合したHRPを、10〜15分間の発色時間の間TMB溶液で検出し、続いて発色停止のためにリン酸試薬を添加した。吸光度を、Molecular Devices, Spectra M3分光光度計を使用してOD450で測定した。
【0634】
TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepのいずれでも、同じHA結合活性をHA被覆プレートで示し、HA結合活性のこれらの滴定曲線はほとんど重複し、これら2種の発現タンパク質が、HA結合の滴定曲線からのEC
50値に基づきHAに高親和性で結合することを示した。ヘパリン結合部位における3重変異はHA結合に影響しなかった。対照的に、ヘパリン被覆プレートへの2種のタンパク質の結合は、有意な差を示した。野生型TSG−6−LM−Fcはヘパリンに結合するがそのHAへの結合と比較して相対に低い結合活性であり、これは、プレート上を被覆する2個のGAG鎖のサイズ差によるものであり得る。変異体TSG−6−LM−Fcタンパク質は、野生型と比較して約10%のヘパリン結合活性を示し、これは、三重変異TSG−6−LM単量体の報告されている結果と一致した(Mahoney DJ et al. (2005))。
【0635】
B. ビオチニル化HAおよびヘパリンの固定化組み換えTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepへの結合
野生型TGS6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepのGAG結合特性を、さらにマイクロプレートを組み換えタンパク質でコーティングし、ビオチニル化HAおよびビオチニル化ヘパリンへのその結合を評価することにより試験した。
【0636】
マイクロプレートの調製のために、1×PBS緩衝液中2μg/ml濃度のTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを96ウェルプレートに2個ずつ100μl/ウェルで分配し、4℃で一夜インキュベートした。プレートを1%BSAのPBS溶液で遮断して、非特異的結合を減少させた。
【0637】
TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHep精製タンパク質サンプルを希釈して、HA被覆プレートへの結合について0.31〜40ng/ml、ヘパリン被覆プレートへの結合について0.78〜100ng/mlの濃度範囲とした。各サンプルの100μl/ウェルを2個ずつマイクロプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。ヒアルロナンまたはヘパリン結合したTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを抗ヒトIgG Fc−HRP(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、続いてTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質(KPL, Gaithersburg, MD)で検出した。
【0638】
HAのビオチニル化について、HAのカルボキシル基をヒドラジド化学を介する結合に使用した。簡単に言うと、ビオチン−ヒドラジドをDMSOに25mM濃度で溶解し、体積比6:100で、1000kDaまたは150kDa分子量HA(Lifecore Biomedical, LLC Chaska, MN)を、0.1MMES、pH5.0中1mg/mlで含むHA溶液に添加した。1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロライド(ECD)およびスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(スルホ−NHS)を結合反応にそれぞれ40μMおよび850μMの濃度まで添加し、ビオチン−ヒドラジドおよびHAの結合を仲介させた。反応物を、撹拌しながら4℃に一夜維持した。過剰量の化学物を透析によりビオチニル化HAから除去した。ビオチニル化ヘパリンをEMD, San Diego(Catalog No. 375054)から購入した。
【0639】
ビオチニル化ヒアルロナンまたはヘパリンを、PBS中、0.78ng/ml〜100ng/mlの濃度範囲に希釈し、100μl/ウェルで分配し、室温で1時間インキュベートした。プレートプレートを0.05%Tween 20含有PBSで5回洗浄して、未結合タンパク質を除去した。結合したビオチニル化ヒアルロナンおよびヘパリンを、上記のとおり抗ストレプトアビジン−HRP(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、続いてTMB基質(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質(KPL, Gaithersburg, MD)で検出した。吸光度をOD450で測定した。
【0640】
観察された結合の結果は、固定化HAおよびヘパリンおよび遊離TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを使用する実施例10Aで実施した結合アッセイと類似した。ビオチニル化HAに対する固定化TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの結合活性またはTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの結合滴定曲線に顕著な差はなく、野生型タンパク質と比較して変異体TSG−6−LM−Fc/ΔHepのビオチニル化ヘパリンへの結合の顕著な減少も観察された。それ故、野生型TSG−6−LM−Fcおよびその変異体のHAおよびヘパリン結合特性をGAG被覆または組み換えタンパク質被覆形態で評価でき、両形態とも類似結合パターンを確認した。
【0641】
C. TSG−6−LM−Fcの結合親和性の計算
TSG−6−LM−FcのHA結合親和性を、Bio-Layer Interferometry(BLI)技術を使用して、Octet QKe装置(ForteBio, Menlo Park, CA)により計算した。完全長TSG−6組み換えタンパク質(R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を対照として使用した。簡単に言うと、平均分子量の150kDaのビオチニル化HAをストレプトアビジン被覆バイオセンサー上に240秒間固定化した。次いで、TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを固定化HAと180秒間、PBS中、種々の濃度でpH6.0またはpH7.4で結合させ、続いて結合タンパク質を、PBS中、pH6.0またはpH7.4で240秒間解離させた。結合動力学の結果を製造者により提供されるソフトウェアにより分析した。計算した結合親和性の結果を表10に示す。
【表10】
【0642】
実施例11
他のグリコサミノグリカン類によるヒアルロナンおよびヘパリンへのTSG−6の結合の競合的阻害評価
TSG−6結合モジュールのHAおよびヘパリンGAG結合部位は、結合モジュールの異なる領域に位置する。2個の結合部位が、TSG−6結合モジュールとの相互作用中または他のGAG鎖の存在下で互いに妨害されるか否かを決定するために、競合的阻害アッセイを実施して、他のGAG鎖の存在下HAまたはヘパリンの結合を評価した。
【0643】
HAおよびヘパリン被覆96ウェルマイクロプレートを実施例10Aに記載のとおり調製した。TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを、HA被覆プレートについて40ng/mlおよびヘパリン被覆プレートについて100ng/mlの濃度で、HA(Lifecore Biomedical, LLC Chaska, MN)、コンドロイチン硫酸A(EMD, San Diego, CA、Catalog No. 230687)コンドロイチン硫酸C(EMD, San Diego, CA、Catalog No. 2307)およびヘパリン硫酸(EMD, San Diego, CA、Catalog No. 375095)の4種のGAG鎖と3濃度(0.11μg/ml、0.33μg/ml、1.0μg/ml)でまたは対照としてGAG鎖無しで、室温で10分間インキュベートした。次いで、サンプルをHAおよびヘパリン被覆96ウェルマイクロプレートに2個ずつ分配し(100μl)、室温で1時間インキュベートした。プレートプレートを0.05%Tween 20含有PBSで5回洗浄して、未結合タンパク質を除去した。結合したTSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepを、上記のとおり抗ヒトIgG Fc−HRP(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、続いてTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質(KPL, Gaithersburg, MD)で検出した。吸光度をOD450で測定した。
【0644】
HA被覆プレートについて、TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの両者とも類似の競合的阻害パターンを証明した。TSG−6−LM−Fcの固定化HAへの結合は、同量のタンパク質と種々の量の遊離HAのプレインキュベーションで効率的に阻害されたが(0.11μg/ml、0.33μg/ml、1.0μg/ml量でそれぞれ約68%、85%および93%阻害)、種々の量の遊離ヘパリンまたはコンドロイチン硫酸Cとのプレインキュベーションでは影響を受けなかった。TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepの幾分かの阻害がコンドロイチン硫酸Aとのプレインキュベーションで観察されたが、HAより少なかった(0.11μg/ml、0.33μg/ml、1.0μg/ml量で約23%、43%および63%阻害)。それゆえに、約10倍高量のコンドロイチン硫酸Aが阻害に必要であった(別の実験では、30倍高量のコンドロイチン硫酸AがHAと同等の阻害に必要であった)。TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepがコンドロイチン硫酸Aとのプレインキュベーションで類似の阻害を示すため、TSG−6結合モジュールにおけるHA結合部位はコンドロイチン硫酸A結合を担う可能性がある。
【0645】
ヘパリン被覆プレートについて、TSG−6−LM−Fcのヘパリンへの結合はヘパリンとのプレインキュベーションだけでなく、HAまたはコンドロイチン硫酸Aとのプレインキュベーションでも効率的に阻害された。このデータは、TSG-6-Fc-LMのHAへの結合がそのヘパリン結合活性を遮断することを示す。予測とおり、変異体TSG−6−LM−Fc/ΔHepはヘパリンと結合せず、それゆえに対照およびプレインキュベーションサンプルの背景に近い読み取りとなった。
【0646】
この研究は、TSG−6の結合モジュールのHAへの結合が遊離ヘパリンまたは予め形成されたTSG−6ヘパリン複合体により影響を受けないが、そのヘパリンへの結合は、遊離HAまたは予め形成されたTSG−6HA存在下で有意に阻害されることを証明する。これらの観察に基づき、TSG−6−LMはHAおよびヘパリンに同時に結合するまたはTSG−6−LMのHAへの結合はそのヘパリンへの結合より強いと結論付けることができる。HAおよびTSG−6−LM複合体形成は、ヘパリンへの結合に好ましくないタンパク質配座変化または他のタンパク質の配置を生じ得る。
【0647】
実施例12
TSG−6−LM−Fc、TSG−6−LM−Fc/ΔHepおよびHABPのグリコサミノグリカン結合特性の比較
本実施例において、TSG−6−LM−Fc、TSG−6−LM−Fc/ΔHepおよびHA結合タンパク質(HABP)のHA、ヘパリンおよび他のGAGへの特異性および結合活性を比較した。この実験のために、ビオチニル化−TSG−6−LM−Fcおよびビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHep HA結合タンパク質を産生し、市販のビオチニル化−HA結合タンパク質(HABP)(Seikagaku, Tokyo, Japan)と、GAG鎖被覆プレート上の結合活性について比較した。
【0648】
A. TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepのビオチニル化
無作為標識アプローチを使用して、HA結合部位を保護するために遊離HAとのプレインキュベーションなしで、ビオチンをタンパク質中の1級アミン含有残基(Lys)に結合した。TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepのビオチニル化のために、1級アミン活性試薬NHS−PEG
4−ビオチン(Thermo Fisher Scientific, Chicago, IL)の直接結合を製造者の指示に従い行った。PBS中1mg/ml濃度の0.5mgタンパク質および10μlの20mM ビオチニル化試薬をビオチニル化反応に使用した。NHS−PEG
4−ビオチンのN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)基は特異的におよび効率的にリシンおよびN末端アミノ基とpH7〜9で反応して、安定なアミド結合を形成する。親水性ポリエチレングリコール(PEG)スペーサーアームは水溶解度を与え、これはビオチニル化分子に移され、それゆえに溶液で貯蔵する標識タンパク質の凝集を減少させる。PEGスペーサーアームはまた試薬に長くかつ可動性の結合を与え、アビジン分子への結合に関与する立体的障害を最小化する。未反応NHS−PEG
4−ビオチンを1×PBSでの透析により除去し、−20℃で保存した。
【0649】
比較のために、TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepタンパク質もまた、NaIO
4、続いてビオチン−ヒドラジドを使用してタンパク質上の多糖鎖を酸化することにより、タンパク質上の糖鎖にビオチン単位を結合させる志向性標識アプローチを使用してビオチニル化した。簡単に言うと、0.1M リン酸緩衝液、pH7.2中1mg/ml濃度の1mlタンパク質を、最初に最終濃度5mg/mlの過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO
4)で、4℃で30分間酸化した。本反応は糖類上の2個の隣接する1級ヒドロキシル基を、対応するアルデヒド反応性基に変換すする。酸化タンパク質を0.1M リン酸緩衝液、pH7.2に対して透析した。次いで、透析したタンパク質を、体積比9:1でDMSO中に調製した50mMヒドラジド−ビオチンと混合し、反応中5mMヒドラジド−ビオチンとし、室温で2時間インキュベートして、アルデヒド基とヒドラジド基の間にヒドラゾン結合を形成させた。標識タンパク質を1×PBSに対して透析し、−20℃で保存した。
【0650】
結合および遊離ビオチン除去後、ビオチン−TSG−6−LM−Fcおよびビオチン−TSG−6−LM−Fc/ΔHepの両者のHA結合活性を非標識の対応するタンパク質と共に試験して、HA被覆プレートを使用する実施例10Aに記載の結合アッセイを使用して標識がHA結合活性を減少させるか否かを試験した。標識対非標識タンパク質でHA結合活性の差は見られなかった。
【0651】
B. ビオチニル化−TSG−6−LM−Fc、ビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHepおよびビオチニル化−HABPのGAGへの結合
GAG被覆マイクロプレートの調製のために、HA、ヘパリン、コンドロイチン硫酸Aまたはコンドロイチン硫酸Cを、0.5M 炭酸ナトリウム緩衝液中100μg/mlの濃度で、100μl/ウェルで96ウェルプレートに2個ずつ分配し、4℃で一夜インキュベートした。プレートを1%BSAのPBS溶液で遮断して、非特異的結合を減少させた。ビオチニル化−TSG−6−LM−Fc、ビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHepおよびビオチニル化−HABPの3種のビオチニル化タンパク質をHA、コンドロイチン硫酸Aおよびコンドロイチン硫酸C被覆プレートへのために結合0.05〜100ng/mlおよびヘパリン被覆プレートへの結合のために0.23〜500ng/mlの濃度範囲まで希釈した。希釈したタンパク質サンプルを、プレートに、100μl/ウェルで2個ずつ分配し、室温で1時間インキュベートした。GAG被覆プレートに結合したタンパク質を、上記のとおりストレプトアビジン−HRP(Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)、続いてTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)基質(KPL, Gaithersburg, MD)で検出した。吸光度をOD450で測定した。
【0652】
全3種のビオチニル化GAG結合タンパク質は、HA被覆プレートで強HA結合活性を示した。HAの最大結合濃度(すなわち33.3ng/mlおよび100ng/ml)より低い一つの希釈を表す11.1ng/mlタンパク質濃度で、ビオチニル化−TSG−6−LM−Fcおよびビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHepのHAへの結合は背景の約14倍であり、B−HABPHAへの結合は背景の約9倍であった。
【0653】
ビオチニル化−HABPおよびビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHepのいずれもヘパリン被覆プレートに対してほとんど結合活性を示さなかった。ビオチニル化−野生型TSG−6−LM−Fcもまたヘパリン結合活性は陰性であり、NHS−PEG
4−ビオチンを用いる無作為標識アプローチはヘパリン結合活性を喪失させることを示唆した。TSG−6−LM−Fcを上記のとおり志向性標識アプローチによりビオチニル化したとき、ヘパリンへの結合は回復し、タンパク質は、非標識TSG−6−LM−Fcと類似のヘパリン結合活性を示した。それゆえに、TSG−6−LM−Fcのヘパリン部位におけるリシンのビオチン修飾は、そのヘパリン結合活性をなくす。
【0654】
全3種のタンパク質ともコンドロイチン硫酸C被覆プレートへの結合活性を示さなかったが、コンドロイチン硫酸A被覆プレートに対する強い結合を示した。ビオチニル化−TSG−6−LM−Fcおよびビオチン−TSG−6−LM−Fc/ΔHepはビオチン−HABPより数倍高い結合活性を示すことが観察された。11.1ng/mlタンパク質濃度で、ビオチニル化−TSG−6−LM−Fcおよびビオチニル化−TSG−6−LM−Fc/ΔHepのHAへの結合は、それぞれ背景の約20倍および12倍であり、B−HABPHAへの結合は背景の約6倍であった。それにもかかわらず、TSG−6−LM−FcおよびTSG−6−LM−Fc/ΔHepのいずれもGAG競合的アッセイにおいて示されるとおり、HAへの結合についてはるかに強い優先性を有した。実施例11に示すとおり、少なくとも10倍のコンドロイチン硫酸AがHAと同等の競合的阻害のために必要であった。さらに、別の実験において、GAG競合的アッセイにおいてビオチニル化−HABPをビオチニル化−TSG−6−LM−Fcと比較し、ビオチン−HABPのHAへの結合対TSG−6−LM−FcのHAへの結合で、4種のGAG鎖(HA、ヘパリンコンドロイチン硫酸類AおよびC)の類似の阻害パターンが観察された。
【0655】
実施例13
アグリカン結合アッセイによるK
3−EDTAヒト血漿におけるヒアルロナンの定量化
ヒアルロナンの濃度を、サンドイッチ結合アッセイを使用して臨床的ヒト血漿サンプルで決定した。血漿サンプルを、進行段階の種々の腫瘍タイプの固形腫瘍を有し、デキサメサゾン存在下または非存在下での患者におけるPEGPH20の漸増投与量を評価する臨床試験(相1−101および相1−102;表11参照)に参加している19名の対象から得た。さらに、血漿サンプルをまた20名の正常患者から得た(BioReclamation, Hicksville, NYから得た)。PEGPH20での処置前に、HAのベースラインレベルを次のとおり決定した。
【0656】
Immulon 4HBX96ウェル平底マイクロタイタープレート(Immulon/Thermo;Catalog No. 3855)を、捕獲試薬としての組み換えヒトアグリカン(rHu−アグリカン)(R&D Systems, Catalog No. 842162)で被覆した。使用前に、rHu−アグリカンを1バイアルに250μlの試薬希釈剤を添加することにより再構成し、2〜8℃で最大1ヶ月保存した。次いで、rHu−アグリカンの0.5μg/mL溶液を産生するために、原液の240倍希釈を調整した(例えば41.7μL原液に対し約10mLPBS)。希釈直後、100μLを4HBXプレートの各ウェルに分配し、プレートをプレートシーラーで覆い、一夜または最大3日間、室温でインキュベートした。インキュベーション後、プレートの各ウェルを1×PBST洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20)で、ELx405Select CWプレートウォッシャーを使用して5回洗浄した。次いでアッセイプレートを遮断緩衝液(PBS中5%Tween 20)で、各ウェルに300μLの遮断緩衝液を添加することにより遮断した。プレートを付着性プレートカバーで覆い、環境温度で少なくとも1時間、振盪せずにインキュベートした。
【0657】
プレートをサンプルと共にインキュベートする前に、血漿サンプルおよび標準曲線を作製した。簡単に言うと、血漿試験サンプルを得て、分析するまで≦60℃で貯蔵した。分析直前に、試験サンプルを氷水上で融解し、希釈直前にボルテックス処理により短く混合した。次いで、少なくとも1個のサンプル希釈が、試薬希釈剤(5%Tween-20 PBS溶液、6.5mL Tween-20(Sigma;Catalog No. P7949)を123.5mLリン酸緩衝化食塩水(PBSに添加することにより作製;CellGro;Catalog No. 21-031-CV))で希釈した較正曲線の範囲内に入ることを確実にするために、血漿試験サンプル希釈の数回連続希釈を作製した。アッセイの正当性を評価するために、2個の品質対照サンプルもアッセイのために希釈した。対照は、K
3−EDTA(貯留ヒトK
3−EDTA血漿;“低品質対照”)中に回収した貯留ヒト血漿および外来性ヒアルロナン(HA)添加貯留ヒトK
3−EDTA血漿(“高品質対照”)であった。ヒトK
3−EDTA血漿(対照として使用)のための最小必要希釈(MRD)は1:4であった。希釈はポリプロピレンチューブ(例えば、BioRad Titerチューブ;BioRad, Catalog No. 223-9391)中であり、500μlの総体積(サンプルおよび希釈剤)とした。各希釈物を、パルス−ボルテックスにより製造したとおり混合した。ピペットを各希釈毎に変えた。
【0658】
標準曲線のために、ヒアルロナン原液(132kD、1800ng/mL;R& D Systems, Catalog No. 842164)を500ng/mL、167ng/mL、55.6ng/mL、18.5ng/mL、6.2ng/mL、2.1ng/mLおよび0.68ng/mLの最終濃度まで試薬希釈剤(PBS中5%Tween 20)で連続希釈することにより希釈した。試薬希釈剤を含むブランクウェルも標準に包含させた。
【0659】
次いで、遮断段階の最後に、各ウェルを1×PBST洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20)でELx405Select CWプレートウォッシャーを使用して5回洗浄した。試験サンプル、対照および標準曲線を、100μLの各々をプレートの各ぅ得るに添加することにより被覆し、遮断したプレートに添加した。プレートを接着性プレートシーラーで覆い、環境温度で約2時間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルを1×PBST洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20)でELx405Select CWプレートウォッシャーを使用して5回洗浄した。
【0660】
HAの被覆rHu−アグリカンへの結合を検出するために、ビオチニル化rHuアグリカン検出試薬(72μg/mL;R& D Systems, Catalog No. 842163)をプレートに添加した。最初に、10mLの0.3μg/mLビオチニル化−アグリカン溶液を、原液を試薬希釈剤(5%Tween/PBS)で240倍希釈することにより調製した。次いで、100μLの検出試薬を各ウェルに添加した。プレートを接着性シールで覆い、環境温度で約2時間インキュベートした。各ウェルを1×PBST洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20)でELx405Select CWプレートウォッシャーを使用して5回洗浄した。次いで、ストレプトアビジン−HRP(SA−HRP;R&D Systems、Catalog No. 890803)作業溶液を、原液を200倍に希釈することにより試薬希釈剤中で調製した。次いで、100μLの希釈したSA−HRP作業溶液を各ウェルに添加した。プレートを接着性シールで覆い、環境温度で約20分間、500rpmで振盪しながらインキュベートした。SA−HRPインキュベーション時間の最後に、各ウェルを1×PBST洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%Tween 20)でELx405Select CWプレートウォッシャーを使用して5回洗浄した。次いで、遮光しながら環境温度で平衡化した100μLのTMB基質(KPL;Catalog No. 52-00-03)を各ウェルに添加し、環境温度で20分間、500rpmで振盪しながらインキュベートした。次いで、100μLのTMB停止溶液(KPL;Catalog No. 50-85-06)を少なくとも5分間、しかし最大30分間各ウェルに添加し、450nmでの光学密度(OD 450nm)をマイクロタイタープレート分光光度計およびSoftMax Proソフトウェアを使用して決定した。
【0661】
OD450nm値に基づき、各サンプルの無処置ヒアルロナン濃度を、標準曲線からの内挿により決定した。結果をサンプル希釈係数で乗算した。データを、較正曲線の定量限界の範囲内の全数値の平均として報告した(ng/mL)。結果を表11および12に示す。結果は、健常ヒトの中央血漿HAは0.015μg/mLであり、第1相対象では0.06μg/mLであることを示す。これは、p<0.0001で統計学的有意差を表す。
【0664】
実施例14
HAの組織化学的検出
HAの組織化学的検出を、1.6μg/kg PEGPH20+デキサメサゾンを4週間投与した患者からの生検前腫瘍検体および処置後転移肝臓生検サンプルを得た。投与前生検(前生検)は、2007年に得られた記録されたサンプルであった(PEGPH20での処置3.5年前)。処置後生検サンプルを、肝転移を有する女性結腸癌患者からPEGPH20+デキサメサゾン処置レジメンにおける最後の投与(8回目投与)3日後に得た間。具体的に、患者処置後生検を、デキサメサゾン共処置の投与サイクルについて1週間に2回スケジュールで1.6μg/kgのPEGPH20処置の1サイクル後に得た。処置サイクルは28日間と規定され、PEGPH20を静脈内投与し(IV)、デキサメサゾンを経口投与した。各投与日に、4mgのデキサメサゾンの前投薬レジメンをPEGPH20の投与1時間前に経口投与し、続いて4mgデキサメサゾンの2回目の投与を、PEGPH20投与8〜12時間後に行った。
【0665】
簡単に言うと、腫瘍生検を中性緩衝ホルマリン(NBF)に固定し、5μm切片に切断し、ビオチン標識ヒアルロナン結合タンパク質(HABP-bio)(Seikagaku, Japan)を使用して染色した。一次試薬を除去するための洗浄後、標識二次試薬を使用した。核をDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)試薬を使用して対比染色した。顕微鏡写真を、Insight FireWireデジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Michigan)または同じ造影システムを有するZEISSオーバーヘッドスコープ(Carl Zeiss, Inc.)と組み合わせたNikon Eclipse TE2000U倒立蛍光顕微鏡により捕捉した。
【0666】
ビオチニル化−HA結合タンパク質でのサンプルの組織化学的染色は、1サイクルのPEGPH20処置後の細胞周囲および間質HAレベルの減少を示した。結果を表13に溶訳する。Hスコアは、細胞周囲および間質HAの相対的強度を示す。本データは、処置後の腫瘍生検におけるHA染色の減少により証明されるとおり、PEGPH20が腫瘍関連HAを分解する能力を証明する。
【表13】
**腫瘍関連間質
【0667】
実施例15
血漿中のヒアルロナン(HA)レベルの概算のためのHPLC方法
本実施例は、PEGPH20の酵素活性後の分解生成物であるHA異化産物の指標として、血漿中のHA−二糖含量を決定する方法を記載する。本方法は、HA−二糖類を遊離するためのHAのコンドロイチナーゼABCでの加水分解、2−アミノアクリドン(AMAC)でのそれらの誘導体化および蛍光検出と組み合わせた逆相HPLCでの分析を用いる。HA−二糖類の定量化は、HA−二糖標準との比較により達成する。本アッセイは、PEGPH20の処置後の患者から予定回数、患者の血漿におけるヒアルロナン異化産物の濃度をモニタリングすることによりPEGPH20の酵素活性の測定に使用した。
【0668】
1. 作業標準
本方法において、作業標準溶液を作製した。最初に、希釈原液(DSS)をHA−二糖原液(SS)から作製した。HA二糖SSを、1mLの水を2mgの凍結乾燥粉末を含むHA-Disac(V-labs, Cat. No. C3209)のバイアルに添加し、均一懸濁液を作製することにより産生した。希釈原液を作製するために、5μlのSS溶液を125μlの水で希釈して、DSS1溶液(200pmoles/μl HA-Disac含有;200nmoles/ml HA-Disac)を作製した。水での5倍連続希釈を行い、DSS2(40pmoles/μl HA-Disac含有;40nmoles/ml HA-Disac)、DSS3(8pmoles/μl HA-Disac含有;8nmoles/ml HA-Disac)を作製した。次に、表14および15に示すとおり、25%ヒト血清アルブミン(HSA)(ABO Pharmaceuticals, Cat. No. 1500233)または正常マウス血漿(Bioreclamation, Cat. No. MSEPLEDTA2-BALB-M)に示す作業標準溶液を作製した。
【0671】
2. サンプルの加水分解および誘導体化
次に、サンプルを加水分解した。サンプル(例えば血漿)を、約100μgのタンパク質をポリプロピレンチューブに入れ、体積を水で340μlに調節した。マトリックスブランクもサンプルと当体積の希釈緩衝液(1.59g HEPES、5.07g NaCl、1800mL水、pH7.0)をとり、体積を340μlに調節することにより製造した。サンプルおよびマトリックスブランクの加水分解を、60μlのTFAをサンプルチューブおよびマトリックスブランクチューブに添加し、中身を混合し、100℃で4時間インキュベートすることにより行った。バイアルを室温に冷却した。バイアルを、speed vacを使用して蒸発乾固した。次いで、300μlの水を各チューブに添加し、サンプルを再懸濁するためにボルテックス処理した。
【0672】
加水分解サンプル、ブランクおよび作業サンプルの誘導体化のために、45μlの各サンプル(サンプル、ブランクまたは作業サンプル)をspeed vacで蒸発乾固した。次いで、10μlのSASを乾燥したサンプル、ブランクおよび作業標準に添加した。次いで、50μl ABA/NaCNBH3標識溶液を添加した。チューブsをボルテックス処理し、短く遠心分離した。次いで、440μlの移動相Aを添加し、チューブをよく混合した。移動相Aを次のとおり調製した:132mLの1M 酢酸アンモニウム緩衝液(Sigma、Cat。No。A7330)を、1L容積測定フラスコに添加し、水を添加してフラスコを満たした。誘導体化後、作業標準の20μlの注入あたり、名目上オンカラム充填は、表16に示すとおりである。
【表16】
【0673】
3. HPLC
HPLCカラムを表17に略記する初期移動相設定で1.0mL/分の流速で平衡化した。システムをベースラインが一定になるまで平衡化させた。HPLC分析を、表17に示す装置パラメータ内で行った。
【表17】
【0674】
サンプル分析の順番は次のとおりであった:カラム条件付け/平衡化/検出器獲得のためのWSS5(1注入);水注入(1注入);WSS3(3注入);WSS1(1注入);WSS2(1注入);WSS4(1注入);WSS5(1注入);水(1注入);マトリックスブランク(1注入);サンプル1(1注入);サンプル2(1注入);WSS3(3注入);水(1注入)。システムは、許容される分離品質がある、WSS1サンプルにおける短い単糖ピークに対するシグナル対ノイズ比が10以上、WSS3の6注入の各単糖標準についてのピーク面積相対標準偏差(RSD)が4%以下、相関係数(r)が0.99(rはWSS3標準の最初の3回の注入を使用したオンカラム負荷(pmolとして表す)に対する各作業標準のピーク面積をプロットし、直線状最小二乗回帰モデルを使用する作業標準の傾斜、切片および相関係数を計算するためのソフトウェアを使用して、測定)、単糖類に対応するピークのピーク面積が、WSS5について測定したピーク面積の2%を超えず、水注入における単糖類に対応するピークのピーク面積がWSS5で測定したピーク面積の0.5%を超えないとき、適切であると見なした。
【0675】
4. サンプル分析
各サンプル製剤中の各単糖の平均補正ピーク面積を決定した。谷−谷組込みをGalNピークに使用した。これを決定するために、作業標準から作成した線状曲線(linear curve)を使用して、各サンプル製剤に充填された各単糖の量を計算した。各タイプの単糖について、各サンプルの単糖類/タンパク質分子の平均モル比を計算した。次いで、各サンプルについて、全5種の単糖類の平均モル比の全体的合計を決定した。計算は次の式のものに基づいた:非グリコシル化ヒアルロニダーゼタンパク質の分子量(MW)は51106g/mol;各サンプルの総体積は500μl;サンプル希釈係数は0.15;各注入体積は20μl;およびmgからpgへの変換係数は10
9。計算を、各単糖について次のとおり行った:
【0676】
各製剤の単糖の量を次の式を使用して計算した:
【数1】
タンパク質分子あたりの単糖類の数を次の式を使用して計算した:
【数2】
各サンプルについて、各サンプルの結果を、5種の単糖の比とともに各単糖について単糖類/タンパク質比として報告する。
【0677】
5. 結果
上記二糖アッセイを使用して、デキサメサゾンと共にまたは伴わず、投与量レジメサイクルで0.5μg/kg〜50μg/kgの範囲の投与量でPEGPH20のIV投与を受けている第I相臨床的試験に参加している患者からのHAおよびその異化産物を測定した。PEGPH20投与前の血漿HA濃度は典型的に、治験の全患者で多くても1μg/mLまたは定量限界以下(0.5μg/mL)であった。
【0678】
PEGPH20の1回50μg/kg投与を受けた患者から採取した血漿を処置後経時的に評価した。結果は、ヒアルロナンの血漿濃度が顕著に増加することを示す。この患者で、PEGPH20濃度は2日間の最終半減期で減少するが、HA異化産物の上昇した濃度はゆっくり蓄積され、PEGPH20処置後2週間まで維持し、最高HA血漿濃度はPEGPH20投与約200時間後に観察された。
【0679】
血漿をまた0.5μg/kg PEGPH20を1週間に2回(1患者)、0.5μg/kgを21日毎(3患者)、0.75μg/kgを21日間毎(4患者)、1.0μg/kを21日毎(3患者)または1.5μg/kを21日毎(1患者)の処置である最初のPEGPH20投与後24時間から開始して、さらに12名の患者から採取した。結果は、0.5μg/kg〜1.5μg/kg範囲のPEGPH20の1回または複数投与後、HA異化産物レベルは投与量依存的方法で、1週間の経過で増加することを示す。最大HA濃度(C
ma×)および1週間曲線下面積概算(AUC
0−168h)も、薬力学的応答を定量するために各患者で決定した。結果は、最高血漿濃度または曲線下面積で測定して、HA異化産物への全身性曝露がPEGPH20の投与量が多い患者で増加することを示した。さらに、デキサメサゾンをPEGPH20投与が原因の筋骨格効果を排除または寛解するための前投薬として投与レジメに付加したPEGPH20を投与された患者からの血液サンプルを得た。処置サイクルは28日間と規定され、PEGPH20は静脈内(IV)投与され、デキサメサゾンは経口投与された。PEGPH20およびデキサメサゾンの投与は、28日サイクルの1日目、4日目、8日目、11日目、15日目、18日目、22日目および25日目に行った。各投与日に、4mgのデキサメサゾンの前投薬レジメンを、PEGPH20投与1時間前に経口投与し、続いてPEGPH20投与8〜12時間後2回目の4mgデキサメサゾンを投与した。血漿を、処置の第1週のPEGPH20投与後種々の時点で取った。上記のPH20のみを投与された患者から得たサンプルでの観察と一致して、血漿HA濃度対時間データはPEGPH20の投与後増加した。投与の第1週目に測定した血漿HA濃度は、PEGPH20の投与量の増加により増加した。全サイクルの処置を完了し、8投与のPEGPH20を受けた3患者において、結果は、投与期間をとおして測定して、全3患者でサンプルにおける血漿HA濃度の持続した増加を示した。
【0680】
これらの結果は、PEGPH20活性の予測される機構と一致し、PEGPH20薬力学のバイオマーカーとしてのHAの役割を支持する。
【0681】
実施例16
磁気共鳴造影
拡散強調MRIを、見かけの拡散係数のための画素毎の値を概算するために一ショットスピンエコー配列を使用して行った。動的造影磁気共鳴画像法(DCE−MRI)は、造影剤の輸液中の造影を含んだ。較正は、内部チューブおよび氷/水混合物を含む2部ファントムを使用して達成した。走査を処置前および処置後に行った。
【0682】
1. 見かけの拡散係数磁気共鳴造影(ADC−MRI)
見かけの拡散係数磁気共鳴造影(ADC−MRI)は、処置前および処置後走査に由来する計算に基づき、細胞膜を超えて移動する水の体積を測定する。ADC−MRI走査を、デキサメサゾン前投薬なしのPEGPH20処置を評価する第I相臨床試験の14名の患者中計10名およびデキサメサゾン前投薬有りのPEGPH20処置を評価する第I相臨床試験の5名の患者中4名で完了した。各患者から獲得した画像の分析を、放射線科医が Imaging Endpoints(Scottsdale, AZ)で行い、ADCの定量的概算を、各患者における組織について算出した。腫瘍領域と関連するADC−MRI知見の要約を表18に示す。該表に示すとおり、ADC−MRIの増加が、PEGPH20投与後14名の患者のうち7名(50%)で観察された。ADC値増加はPEGPH20の作用機序と一致する。ADC値は、しかしながら、14名の患者のうち5名で変化せず、14名の患者のうち2名で値が減少した。
【0684】
2. 動的造影磁気共鳴造影(DCE−MRI)
動的造影磁気共鳴画像法(DCE−MRI)は、腫瘍の血管増生の変化を示す血流を測定する。走査は、デキサメサゾン前投薬有りのPEGPH20処置を評価する第I相臨床試験の4患者で完了した。各患者から獲得した画像の分析を、放射線科医がImaging Endpoints(Scottsdale, AZ)で行い、体積移動係数(K
trans)、血液体積(Vp)および細胞外体積分画(Ve)の定量的概算を各患者の組織について算出した。腫瘍領域と関連するDCE−MRI知見を表19に示す。K
transパラメータの顕著な増加がPEGPH20投与日に走査した2名の患者で観察された。投与1時間以内のK
trans増加は、PEGPH20が血管除圧および血流増加を示す前臨床データと一致する(Thompson et al. (2010) Mol. Cancer Ther., 9:3052-64)。
【0686】
CE−MRI造影もまた、28日間投与サイクルで3.0μg/kg+デキサメサゾン/wkを受けている第I相臨床試験に参加した膵腫瘍のさらなる患者で行った。造影を投与前および投与後に次のとおり行った:
8時間(1日目)、24時間(2日目)およびサイクル1におけるPEGPH20投与の4週目の毎週投与3日後(サイクル1の最後)。結果を表20に示す。結果は、連続DCE−MRIで測定して、PEGPH20が腫瘍K
transを増加させることを示す。
【表20】
【0687】
3. FDG−PET造影
グルコースと類似のFDGを使用する陽電子放出断層撮影法(PET)を使用して、局所グルコース取り込みの観点で組織代謝活性を得た。FDG−PET造影を、28日間の投与サイクルで3.0μg/kg+デキサメサゾン;2x/wkを受けている第I相臨床試験に参加した肺転移を有する転移直腸癌の患者で行った。造影は投与前、投与8時間後、投与24時間後およびサイクルの最後(8回目の投与の1日後)に行った。FDG標準化取り込み値(SUV)を、標準的方法を使用して行った。結果を表21に示す。結果は、患者が肺転移目印のPEGPH20処置後腫瘍代謝活性減少を示すことを示した。
【0689】
4. 要約
結果は、種々の腫瘍造影モダリティを、腫瘍組織におけるPEGPH20の活性の証明およびモニターに使用できることを示す。
【0690】
実施例17
HA富癌診断および処置のためのTSG−6−Fc腫瘍標的造影
ヒアルロナン富腫瘍担持マウスまたは対照マウスにDyLight 755 Fluor Labeling試薬で標識したTSG−6−LM−Fc/ΔHep(TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755)を投与し、マウスを撮像して、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755の腫瘍結合および分配を評価した。IgG
DL755対照と染色および分配を比較することにより特異性も評価した。BxPC3脛骨周囲腫瘍担持マウスを作製するために、マウスにBxPC-3ヒト膵腺癌(ATCC CRL-1687)腫瘍細胞を皮下(s.c.、右後肢)に1×10
7細胞/0.1mLで接種した。HA
+3Du145-Has2およびHA-DU145腫瘍担持マウスを作製するために、マウスにDu145-Has2細胞(上記のとおり作製)およびDu145細胞を脛骨周囲(いずれかの側の右脛骨骨膜に隣接した筋肉内注射)に5×10
6/0.05mLで接種した。
TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755を、製造者のプロトコルに従い、Thermo Scientific DyLight 755 Amine-Reactive Dye(Catalog No. 84538;Thermo Scientific, Rockford, IL)を使用してTSG−6−LM−Fc/ΔHep(実施例9に記載のとおり作製)をDyLight 755で蛍光標識して作製した。
【0691】
A. PEGPH20での前処置有りまたは無しでのTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755の分配
直径約18〜20mmのHA
+2BxPC3脛骨周囲腫瘍を担持するマウスに、1μg、5μgまたは10μg TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755を静脈内注射した。一群のマウスにおいて、マウスをTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755投与3時間前に4.5mg/kgのPEGPH20の静脈内投与により前処置した。
【0692】
蛍光全身画像システム(IVIS Lumina XR, Caliper Life Sciences, Mountain View, CA)を使用して、動物の蛍光を追跡した。DyLight 755の選択的励起を、D745nm帯域通過フィルターを使用して行い、発光された蛍光を長通過D800nmフィルターを介して集めた。3群のマウス(非注射、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755およびPEGPH20+TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755)を、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755後種々の時点で撮像した(1時間、4時間、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目および6日目)。造影のために、非注射対照マウスも評価した。蛍光画像を、超冷却、高感受性、デジタルカメラで捕捉した。蛍光画像を後にLiving Image(Caliper Life Sciences, Mountain View, CA)で分析した。
【0693】
結果は、注射後1時間および4時間まで、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755は血流中の循環物として検出され、また腫瘍に結合し始めていることも検出された。腫瘍への結合は投与量依存性であり、染色強度の増加が10μg投与量で見られた。腫瘍結合は、全投与量および全時点でPEGPH20で処置されたマウスにおける造影で少なかった。注射後遅い時点で(例えば1日目または2日目)、肝臓結合も検出されたが、これは、低投与量の1μg TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL75を注射されたマウスで少なかった。TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755は、画像分析で評価して1〜2日目にピークレベルに達した。低投与量処置マウスにおいて、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755は注射後3日目に除去された。高投与量処置マウスにおいて、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755は注射5日後もまた循環しており、腫瘍への全結合は注射6日後減少した。
【0694】
要約すると、インビボ造影結果は、TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755結合が投与量依存性であり、ピークレベルに注射1〜2日後に到達することを示した。さらに、PEGPH20によるHA除去は、少ないG-6-LM−Fc/ΔHep
DL755結合をもたらした。TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755結合は、腫瘍から注射6日後に除去された。
【0695】
B. Du145腫瘍+/−Has2のTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755結合の比較
HA
+3Du145-Has2およびHA-DU145腫瘍担持マウスに、5μg TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755を静脈内注射した。マウスをTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755注射後毎日撮像した。HA-DU145腫瘍の低レベル背景染色は観察されたが、画像結果から評価して、HA富Du145-Has2へのTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755結合ははるかに多かった。結合は、染色強度で決定して、1〜2日後ピークであった。それゆえに、結果は、腫瘍に存在するHAが多いほど、多くのTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755が腫瘍に結合することを示す。
【0696】
C. TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755の標的特異性
HA富腫瘍へのTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755の特異性を、さらにTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755またはIgG
DL755のHA
+2BxPC3脛骨周囲腫瘍担持マウスへの結合を比較することにより評価した。HA++BxPC3脛骨周囲腫瘍担持マウスに、5μg TSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755または5μg IgG
DL755を静脈内注射した。マウスを注射後毎日撮像した。造影結果は、IgG
DL755の腫瘍への検出可能染色はほとんどまたはまったくないことを示し、それゆえにIgG
DL755よりも大きなTSG−6−LM−Fc/ΔHep
DL755のPC3腫瘍への結合を示した。
【0697】
修飾は当業者には明白であるため、本発明は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。