特許第6162718号(P6162718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6162718炭素オキシカルコゲナイド及び金属塩の熱分解生成物を含むろ過媒体、このろ過媒体を用いたクロラミンの除去方法、並びにこのろ過媒体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162718
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】炭素オキシカルコゲナイド及び金属塩の熱分解生成物を含むろ過媒体、このろ過媒体を用いたクロラミンの除去方法、並びにこのろ過媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/02 20060101AFI20170703BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20170703BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20170703BHJP
   C01B 32/30 20170101ALI20170703BHJP
【FI】
   B01J20/02 A
   B01J20/30
   C02F1/28 A
   C01B32/30
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-549196(P2014-549196)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-503441(P2015-503441A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】US2012070297
(87)【国際公開番号】WO2013096281
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年10月6日
(31)【優先権主張番号】61/578,971
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】メレディス エム.ドイル
(72)【発明者】
【氏名】アレン アール.シードル
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール.ストウファー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス イー.ウッド
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−062192(JP,A)
【文献】 特表2011−521775(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0296991(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/125504(WO,A1)
【文献】 米国特許第06699393(US,B1)
【文献】 国際公開第2013/039675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
C02F 1/28
C01B 32/00 − 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロラミンを取り除くためのろ過装置の使用であって、前記ろ過装置は、基材を含む流体処理用容器を備え、前記基材は、(i)COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい、炭素基材と、(ii)金属塩と、の熱分解生成物を含むものであり、ここで前記金属塩は、(a)カルボン酸金属塩、(b)硫黄含有アニオン金属塩、及び(c)これらの組み合わせ、からなる群から選択されるものであり、前記金属塩の金属は、銅、鉄、マンガン、及びこれらの組み合わせから選択されものである、クロラミンを取り除くためのろ過装置の使用。
【請求項2】
水溶液からクロラミンを取り除くための方法であって、
クロラミンを含む水溶液を用意することと、
前記水溶液を組成物と接触させることと、
を含み、前記組成物は、COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい、炭素基材と、金属塩と、の熱分解生成物を含むものであり、ここで前記金属塩は、(a)カルボン酸金属塩、(b)硫黄含有アニオン金属塩、及び(c)これらの組み合わせ、からなる群から選択されるものであり、前記金属塩の金属は、銅、鉄、マンガン、及びこれらの組み合わせから選択されものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭素オキシカルコゲナイド及び金属塩の熱分解生成物を含むろ過媒体について説明する。
【背景技術】
【0002】
クロラミンは、遊離塩素による塩素消毒に代わる二次的な消毒剤として、都市用水配水システムにおいて、低濃度で一般的に使用されている。クロラミンにより処理された水の味と臭いに関する懸念に伴い、クロラミン除去能を有するろ水器の需要が増大した。
【0003】
水溶液流からのクロラミン除去には、活性炭粒子等の炭素粒子が用いられている。クロラミン除去は、炭素の平均粒子径を小さくしたり、カーボンベッドとの接触時間を増やしたりすることにより、改善することができる。パラメーター、例えば、接触時間及び平均粒径が、クロラミン除去効率に影響することが知られているが、ろ過媒体の圧力低下を著しく増加させることなくより著しい改善を行なうことが望まれている。
【0004】
米国特許第5,338,458号(Carrubbaら)は、ガス又は液体媒体と、触媒活性な炭素質チャーとを接触させることにより、その媒体からクロラミンを除去する、改良されたプロセスを開示している。
【0005】
米国特許第6,699,393号(Bakerら)は、触媒活性な炭素質チャーに対比して改良された、窒素含有分子の存在下で熱分解をされた活性炭に流動体が接触した場合の、流動体からのクロラミン除去を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
現在入手可能なろ過材よりも、より費用がかからず及び/又はより効率的にクロラミンを除去する、ろ過材を提供することが望まれている。場合によっては、クロラミンを除去するための炭素の固体ブロックを提供することも望まれている。別の場合では、充填層に使用してもよい粒状材料を得ることも望まれている。また別の場合では、ウェブ状で使用してもよい材料を提供することも望まれている。
【0007】
1つの態様では、基材を含む流体処理用容器を備えた、ろ過装置であって、基材には、(i)COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい炭素基材と、(ii)金属塩と、の熱分解生成物を含むものである、ろ過装置について説明している。
【0008】
別の態様では、水溶液からクロラミンを取り除くための方法であって、クロラミンを含む水溶液を用意することと、水溶液を組成物と接触させることであって、組成物には、COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい炭素基材と、金属塩と、の熱分解生成物が含まれる、接触させることと、を含む方法が開示されている。
【0009】
更に別の態様では、基材を製造する方法が、(i)炭素基材、(ii)硫黄、セレン、若しくはテルリウム源、又はそれらの組み合わせ、及び(iii)金属塩を含む組成物を用意することと、次いで組成物を加熱することと、を含んでいる。
【0010】
上記の概要は、各実施形態を説明することを目的とするものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。他の特徴、目的、及び利点は、説明文及び「特許請求の範囲」から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用するとき、用語
「a」、「an」、及び「the」は互換可能に使用され、1又はそれよりも多くを意味する。
「及び/又は」は、記載される事例の一方又は両方が起こりうることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。
【0012】
本明細書においては更に、端点による範囲の記載には、その範囲内に含まれるすべての数値が含まれる(例えば、1〜10には、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などが含まれる)。
【0013】
本明細書においては更に、「少なくとも1」の記載には、1以上のすべての数値が含まれる(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)。
【0014】
本開示は、炭素オキシカルコゲナイド及び金属塩の熱分解生成物を含む炭素基材に向けられている。そのような組成物が、水溶液からクロラミンを除去するのに有用であり得るということが見出された。
【0015】
米国仮出願第61/533297号(代理人整理番号67607US002、2011年9月12日に出願)には、炭素オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材を、水溶液からクロラミンを取り除くために使用できることが開示されている。米国仮出願第__________(代理人整理番号67608US002及び67737US007、本出願と同時に出願)には、金属塩の熱分解生成物を含む組成物も水溶液からクロラミンを取り除くために使用され得ることが開示されている。これらの特許出願の3つすべては、本明細書において参照によりその全体において組み込まれている。炭素オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材上の金属塩を熱分解することによって、性能が改善された組成物が得られる場合があることが分かっている。
【0016】
一実施形態では、オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材が提供される。オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材を次に、金属塩と接触させて、加熱して金属塩を熱分解する。
【0017】
他の実施形態では、炭素基材と、硫黄、セレン、又はテルル源と、金属塩とを用意した後に、加熱して基材を形成する。
【0018】
炭素基材
炭素は、ダイアモンド、グラファイト、及び非晶質炭素を含む複数の同素体を持つ。一実施形態において、炭素基材はsp混成炭素を多く含む。すなわち、この炭素基材は、20%以下、15%以下、12%以下、又更には10%以下のsp混成炭素を含む。sp混成炭素の含有量が増えるにつれ、sp混成炭素基材は、次第に、密集した等方性のネットワークを持つ正四面体炭素へと変化する。
【0019】
炭素基材の形態は、特に限定されるものではないが、非粒子状、粒子状、又は凝集体状であってもよい。典型的な形態としては、炭素ブロック、炭素モノリス、発砲体、膜、繊維、及びナノ粒子状、例えば、ナノチューブ及びナノスフェアが挙げられる。非粒子とは、識別可能な別々の粒子により構成されていない基材である。粒子状基材とは、識別可能な粒子を有する基材であって、この粒子の形状は球状でも不規則であってもよく、平均粒子径が0.1μm(マイクロメートル)以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、又更には40μm以上であり、75μm以下、100μm以下、500μm以下、1mm(ミリメートル)以下、2mm以下、4mm以下、6.5mm以下、又更には7mm以下の基材である。凝集体(又は複合体)は、細かい粒子同士の、又は細かい粒子とより大きな担体粒子又は面との結合、若しくは細かい粒子同士を、又は細かい粒子とより大きな担体粒子又は面を集塊状に集めることにより形成される。この凝集体は自立(重力に対し自己支持)していてもよい。
【0020】
一般的に、炭素基材の形態は用途に基づき選択される。例えば、本開示の組成物が、低い圧力損失が要求される用途(例えば、気体又は液体を通過させる層)に使用される場合には、粒径の大きな粒子が望ましい。商標名「RGC」でミードウェストバコ社(Mead Westvaco Corp)(バージニア州、リッチモンド(Richmond))から入手可能な粒状活性炭が、水処理において好ましい場合がある。クラレ(Kuraray)PGWココナッツ殻活性炭、クラレケミカル(Kuraray Chemical)、日本、大阪。
【0021】
炭素基材の孔径は、その用途に応じて選択することができる。炭素基材は、ミクロポーラス炭素、マクロポーラス炭素、メソポーラス炭素、又はこれらの混合物であってもよい。
【0022】
特に有用なのは、炭素基材として、実質的に不規則であり、表面積が大きいものである(例えば、BET(ブルナウアエメットテラー法)窒素吸着に基づいて、少なくとも100、500、600、又は更に700m/gであり、最大で、1000、1200、1400、1500、又は更に1800m/gである)。本明細書に使用される「実質的に不規則」とは、炭素基材が、約10〜50Å(オングストローム)の面内ドメインサイズを有することを意味する。
【0023】
一実施形態において、炭素基材は活性炭、言い換えれば、高い表面積を持たせるように高多孔質(すなわち、単位体積あたり多数の孔を有すること)化処理をされた炭素、により構成される。
【0024】
カルコゲン
カルコゲンは、本明細書で使用する場合、硫黄、セレン、テルル、又はそれらの組み合わせを指す。このようなカルコゲンの供給源について以下に説明する。
【0025】
有用な硫黄含有化合物としては、限定されるものではないが、単体硫黄、SO、SOCl、SOCl、CS、COS、HS、及び硫化エチレンが挙げられる。
【0026】
有用なセレン化合物としては、これらに限定されないが、元素状態で存在するセレン、SeO、及びSeSが挙げられる。
【0027】
有用なテルル化合物としては、これらに限定されないが、元素状態で存在するテルル、TeO、及び(HO)Teが挙げられる。
【0028】
金属塩
本開示の金属塩には、金属塩又は金属合成物が含まれていてもよい。このような塩及び合成物としては、カルボン酸塩、窒素含有オキシアニオン、硫黄含有アニオン、塩化物塩、リン酸塩、及びそれらの組み合わせを挙げてもよい。
【0029】
典型的なカルボン酸塩としては、シュウ酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、及び/又はクエン酸塩が挙げられる。
【0030】
窒素含有オキシアニオン塩として、硝酸塩及び/又は亜硝酸塩イオンを挙げてもよい。
【0031】
硫黄含有アニオンとして、硫酸塩、スルファミン酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、及び/又はチオ硫酸イオンを挙げてもよい。
【0032】
塩化物塩は塩素アニオンを含む塩であり、リン酸塩はリン酸イオンを含む塩である。
【0033】
金属塩の金属部分としては、任意の金属を挙げてもよいが、飲料水中に存在することが許容できる金属が好ましい。典型的な金属として、銅、鉄、銀、及びマンガンが挙げられる。
【0034】
典型的な金属塩として、シュウ酸第二銅、シュウ酸第一鉄、酢酸第二銅、クエン酸第二鉄、及びギ酸銅、硝酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
炭素オキシカルコゲナイド表面を含む炭素基材の調製
一実施形態では、炭素基材の表面には、COが含まれている。ここで、Eは硫黄、セレン、テルル、又はそれらの組み合わせである。一実施形態では、x及びyは0よりも大きい。一実施形態では、xは0である。他の実施形態では、xは少なくとも0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、又は更に0.05であり、最大で0.07、0.08、0.09、0.1、0.12、0.15、又は更に0.2である。一実施形態において、yは0.001以上、0.005以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、又更には0.06以上であり、0.12以下、0.14以下、0.15以下、0.16以下、0.18以下、0.2以下、0.22以下、0.25以下、0.3以下、0.35以下、又更には0.4以下である。
【0036】
一実施形態において、炭素基材は、COを主成分とした表面を有する。これは、この表面が炭素、酸素、及びEを必ず含み、本発明の基本的な性質及び新規な性質に実質的に影響しない限り、他の原子も含んでいてもよいという意味である。言い換えれば、炭素、酸素、及びカルコゲンの他にも、基材の表面は、合計で10%未満、又更には5%未満の他の原子を含む。これらの他の原子は、出発物質に由来してよい。例えば、炭素基材は、本開示に記載されているように、製造中に取り除かれず、したがって最終生成物中にも存在する、カリウム又は少量の他の元素を反応前に含んでいてもよい。
【0037】
オキシカルコゲナイドを含む炭素基材の表面の作製は、炭素基材をカルコゲン又はカルコゲン含有化合物、及び所望により酸素にさらすことによって行なう。カルコゲンを炭素基材上で反応させることを、固体、液体、又は気体形態のカルコゲン又はカルコゲン含有化合物を炭素基材に加熱状態下でさらすことによって行なう。
【0038】
一実施形態において、硫黄化合物、セレン化合物、及びテルル化合物は、複数のカルコゲン元素(例えば、硫黄とセレン)を含むカーボンオキシカルコゲナイドを生成するために、互いに組み合わせて使用してもよい。
【0039】
カルコゲンに加えて、炭素基材の表面には酸素も含まれていてもよい。そのままの状態の炭素基材は、表面の炭素原子に付着した、化学的に重要な量の酸素を含んでいてもよい。例えば、XPS(X線光電子分光)分析によれば、RGCは約2.9原子%の酸素を含む。この酸素量は本開示にとっては十分な量としてもよいが、より多くの量の表面酸素が望ましい場合には、追加の酸素がその炭素に組み込まれてもよい。
【0040】
一実施形態において、追加の酸素は、カルコゲン含有化合物に曝される前に炭素基材に追加されてもよい。例えば、炭素基材は空気中で加熱することもでき、又は硝酸水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、オゾン水溶液、過酸化水素水溶液、過マンガン酸カリウム水溶液、フェントン試薬、又はその他の公知の酸化剤で処理することもできる。
【0041】
他の実施形態では、付加的な酸素を、オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材内に組み込むことが、炭素基材とカルコゲン含有化合物との間の反応を空気又は水分の存在下で行なうことによって可能である。空気の使用量を制限して炭素の燃焼を防止することができる。追加の酸素は、水又は蒸気を加えることで供給されてもよく、この水又は蒸気は、加熱反応中に加えることもでき、又は炭素基材の表面に存在していてもよい(例えば、水を化学吸着する高表面積の炭素質材料、特に親水性の酸化炭の場合)。酸素は、加熱反応中に、二原子酸素、二酸化硫黄、二酸化炭素、又はこれらの組み合わせの形態で追加されてもよい。
【0042】
炭素とカルコゲンの加熱中に酸素源を加えるほかに、一代替的実施形態において、加熱は追加の酸素の非存在下で行われる。
【0043】
単体炭素の反応は、一般的に、高い活性化エネルギーを示すため、高温で行われる。カルコゲン及び所望により酸素を炭素基材表面に導入するために用いる反応を行なう温度は、少なくとも200、250、300、400、又は更に500℃であってもよく、最大で650、700、800、900、1000、1200、又は更に1400℃であってもよい。一実施形態では、反応温度が上がると、本開示の組成物はクロラミンの除去においてより効率的になる。
【0044】
熱化学反応は空気中で起きてもよい。しかし、燃焼を制御するため、真空下、パージしながら(例えば、窒素パージ)、又は吸引機を用いて空気を反応器から引き抜き、それから乾燥窒素を反応器に充填した不活性雰囲気下で、熱化学反応を行う事も可能である。
【0045】
カルコゲン含有化合物は、固体、液体、又は気体状で使用されてもよい。カルコゲン含有化合物の沸点よりも高い反応温度が使用され、固体−気体化学反応に至る。
【0046】
一実施形態において、炭素基材は液状カルコゲン含有化合物で湿潤させ、その後、反応温度、及び任意で酸素、に曝して、カーボンオキシカルコゲナイド表面を形成する。これらの反応は炭素基材の表面で起こる。多孔性炭素基材の場合、炭素オキシカルコゲナイドによって多孔性炭素基材の孔の表面がコーティングされる(又は覆われる)場合がある。
【0047】
炭素オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材は、固体−ガス(又は固体−蒸気)化学反応を介して得られる。この種類の反応では、炭素基材の外側部分だけが反応性ガスに曝される。生成物の被覆層が、そのガスの内側への拡散を抑制するため、そのような反応は自ずと制限できる。そのような場合、生成される新たな化合物は、表面付近の範囲に限られ、表面の化合物を含む。一般的に、これは、反応が炭素基材上の深さ10nm(ナノメートル)以下で起こり、COコーティングを形成することを意味する。
【0048】
炭素基材が大径粒子である場合、コアシェル構造が結果として生じ、ここで、コアは、カーボンオキシカルコゲナイドを含むシェル(すなわち、第二層)に被覆された炭素基材である。
【0049】
反応は表面反応であるので、炭素材料が表面積の大きい小粒子の形状である場合には(例えば、RGC粉末(公称上は−325メッシュ)の公称上の表面積は1400〜1800m/gである)、粒子の表面及び内部は同一の広がりを持つ場合がある。一例において、粒子の外側表面と内部の間に明白な化学的差異がなくてもよい。別の一例において、容積中のカルコゲン含有量は、表面のカルコゲン含有量に近づく、又更には超えることができる。
【0050】
本開示の固−蒸気処理は、小分子反応物質のミクロ細孔への浸透を可能とし、また、非常に不規則な表面により窪みを形成する。これが結果として、有利な、カルコゲンの均一な分布を生じる。
【0051】
カルコゲン含有化合物からのカルコゲナイドがすべて炭素基材表面内に組み込まれるわけではない(例えば、一部はCOE又はHEに転化される場合がある)ので、結果として生じる組成物を分析して、炭素基材表面上での炭素、酸素、及びカルコゲンの原子率を決定することが重要な場合がある。
【0052】
本開示において、炭素基材表面の炭素(C)、酸素(O)、及びカルコゲン(E)の原子分率は、COとして示される。ここで、一実施形態において、xは0、又は0.005以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、又更には0.05以上であり、0.07以下、0.08以下、0.09以下、0.1以下、0.12以下、0.15以下、又更には0.2以下であり、yは0.001以上、0.005以上、0.01以上、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、又更には0.06以上であり、0.12以下、0.14以下、0.15以下、0.16以下、0.18以下、0.2以下、0.22以下、0.25以下、0.3以下、0.35以下、又更には0.4以下である。
【0053】
炭素オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材の一実施形態では、炭素、酸素、及びカルコゲンは、互いに化学的に相互作用する。すなわち、これらの元素は化学結合する場合があるか(すなわち、隣接する元素間の共有化学結合)、又は非連続元素間のより弱い相互作用(例えば水素結合)が存在する場合がある。
【0054】
オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材の分析に基づいて、少なくとも一実施形態では、酸素及びカルコゲンは炭素基材の表面上で化学結合される。酸素及び炭素は、炭素基材の表面の不可欠な部分であり、400℃に加熱することでは容易には取り除かれない。カーボンオキシカルコゲナイドの構造と結合の性質は複雑である。本開示の結果として生じる組成物について、注意深くデコンボリューションされたXPS(X線光電子分光法)スペクトルが示すところによれば、硫黄は、S2p3/2結合エネルギーが約162.0、164.3、165.8、及び168.9eV[C(1s)=285.0eV]の4つの異なる化学環境にある。したがって、これらは4つの異なる化学環境にあり、3つの形式価数(S(VI)、S(IV)、及びS(II))にある、化学的に結合された硫黄を含む。これらの化学環境は、(1)SO2−又は有機スルホン、C−SO−Cの場合と同様のS(VI)、(2)有機スルホキシド、C−SO−Cの場合と同様のS(IV)、(3)チオフェンの場合と同様のS(II)、及び(4)有機硫化物、C−S−C又は二硫化物、C−S−S−Cの場合と同様のS(II)である。
【0055】
一実施形態では、オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材は熱安定性が高い。例えば、炭素硫化カルボニルの場合、窒素下での有意な重量損失は、約200℃(硫黄の沸点よりもかなり上)まで始まらず、すなわち、オキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材は、出発原料の単なる物理的混合物ではない。
【0056】
カーボンオキシカルコゲナイド表面を炭素基材上に組み込むために固−蒸気処理を用いることで、いくつかの利点を実現できる。反応は、無溶媒であってもよく、又は少なくとも有機溶媒を用いなくともよいため、生成物を分離するために乾燥作業が必要とされない。更に、残留して固体の細孔に詰まる不揮発性の副生成物が、通常存在しない。溶媒が使用されない場合、本明細書に記載の処理は、費用の低減及び/又は処理能力の増加を可能とする連続処理として行うことを想定できる。
【0057】
金属塩の熱分解生成物
熱分解は、金属塩の加熱を、金属塩が、金属に結合した水(もしあれば)を失い始める温度以上で、及び化合物の塩部分が分解し始める温度以上で行なうことを伴う。本明細書で使用する場合、「熱分解生成物」は、熱による化合物の解離又は分解によってもたらされる生成物を指す。この熱分解プロセスによって、金属塩の性質は、異なる化学量論及び組成物並びに異なる化学的性質を有する材料に変化すると考えられ、塩の少なくとも一部は、熱的に分解されて、揮発によってガスとして取り除かれる。
【0058】
一実施形態では、熱分解すると、金属の酸化状態が変化する。例えば、本開示の一実施形態では、熱分解生成物中の金属において、金属の少なくとも一部が、例えば、Cu、Cu+1、又はFe+2の酸化状態を伴っている。
【0059】
理論に束縛されるものではないが、他の実施形態では、金属塩の熱分解は、クロラミンの分解に触媒作用を及ぼす活性の増強を示す活性表面サイトを有する材料を生成するものと考えられる。金属塩の熱分解によってこれらの表面サイトを作製する結果得られる材料は、クロラミン除去特性が、非熱分解的方法(例えば、より従来の方法又は超微粒子金属から得られる金属酸化物)によって作製される同様の金属化合物(例えば、熱分解生成物のX線回折分析によって観察されるもの)を用いることによって得られるものよりも優れている。
【0060】
金属塩を、炭素基材の存在下で、又はオキシカルコゲナイドを含む表面を有する炭素基材の存在下で熱処理してもよい。金属塩を支持体中に含浸させることを、熱分解前に行なってもよい。例えば、金属塩を溶媒中に溶解させて、結果として生じる溶液を支持体と接触させてもよい。含浸された支持体を次に、加熱して、支持体の表面上に配置された熱分解生成物を形成してもよい。
【0061】
他の実施形態では、金属塩として、溶媒中に溶解するのに十分に可溶性ではないもの(すなわち、実験で用いる溶媒の体積中に完全に溶解するわけではないもの)を支持体中に含浸させることを、金属塩及び支持体を溶媒に加えることによって行なってもよい。そのうち、溶媒中に溶解した金属塩が支持体中に拡散してその上に堆積し、その結果、金属塩が時間とともに支持体中又は支持体上に組み込まれる可能性がある。
【0062】
金属塩を炭素の存在下で熱処理する。熱処理を、空気環境中又は不活性環境中(例えば、窒素又はアルゴン環境中)で行なってもよい。
【0063】
熱分解温度(熱分解反応が行なわれる温度)を行なう温度は、少なくとも200、250、300、400、又は更に500℃であってもよく、最大で650、700、800、900、1000、1200、又は更に1400℃であってもよい。一般的に、熱分解が行なわれる温度の決定は、最初に、処理すべき材料(例えば、金属塩又は金属塩含浸支持体)を分析することによって行なう。分析は、制御された条件(雰囲気及び加熱速度)下で示差熱分析/熱重量分析(DTA/TGA)を実施することで行なって、その熱分解挙動を決定する。そして試験を次に、材料の熱分解を種々の温度(分解の開始温度から始まる)で行なうことによって実施して、どの時点及びどの条件(温度、時間、及び雰囲気)下で最も活性な物質が形成されるのかを決定してもよい。
【0064】
一実施形態では、反応温度が変わると金属塩の熱分解生成物が変化し、金属塩及び使用する支持体に基づく選択温度(クロラミンのより効率的な除去が得られる)が存在する場合がある。例えば、金属塩を過剰に加熱すると、反応生成物の「過燃焼」に至る可能性があり、材料の活性が小さくなる可能性がある。一実施形態では、熱分解処理中に炭素支持体が存在することによって分解温度が変わる可能性がある。
【0065】
調製方法
一実施形態では、オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材を用意することを、本明細書で説明する調製に従って行なう。オキシカルコゲナイドの表面を含む炭素基材を次に、金属塩と(例えば、含浸によって)接触させ、加熱して、本明細書で説明するように金属塩を熱分解する。
【0066】
他の実施形態では、炭素基材を、硫黄、セレン、又はテルル源及び金属塩の存在下で加熱して、本開示の組成物を形成する。
【0067】
組成物
本開示の組成物には、炭素支持体と、S、Se、及びTeの少なくとも1種から選択されたカルコゲンと、金属塩と、の熱分解生成物が含まれる。少量の他の元素が存在することが、不純物が金属塩、炭素支持体、カルコゲン源中に、及び/又は熱処理の間に用いる雰囲気中に存在するために起きる場合がある。不純物は一般的に、組成物の重量を基準として、特定の不純物原子の5%、2%、1%、0.1%、0.05%、又は更に0.01%未満である。
【0068】
一実施形態では、組成物には、組成物の全重量を基準として、1.2、1.3、1.5、1.8、2.0、4.0、6.0、8.0、又は更に10.0重量%を上回る硫黄が含まれている。
【0069】
一実施形態では、本開示の組成物には、組成物の全重量を基準として、0.50、0.30、0.10、0.05、0.01、又は更に0.005重量%未満の硫黄が含まれている。
【0070】
一実施形態では、本開示の組成物には、組成物の全重量を基準として、0.90、0.80、0.70、0.50、0.30、0.10、0.05、0.01、又は更に0.005重量%未満の窒素が含まれている。
【0071】
一実施形態では、本開示の組成物には、実質的に水素が無く、組成物の全重量を基準として、0.40、0.30、0.20、0.10、0.05、又は更に0.01重量%未満の水素が含まれている。
【0072】
使用法
一実施形態において、本開示の組成物はろ過材として使用されてもよい。本開示の基材はクロラミンを取り除くことができるために、一実施形態では、基材をろ過媒体として用いてもよい。当該技術分野において周知のろ過方法が使用可能である。
【0073】
基材は、単独で用いてもよいし、又は不活性希釈剤若しくは機能的に活性な材料、例えば、吸着剤と混合してもよい。例えば、基材を、揮発性有機化合物の吸着に対する容量がより大きい炭素と均密に混合してもよいし、又は炭素と床内で層状にしてもよい。このように、複数の機能性を有する吸着システムを製造することができる。
【0074】
本開示の基材を、粉末状、顆粒状で用いてもよいし、又は所望の形状に成形してもよい。例えば、本開示の基材は、基材及びバインダ材料(例えば、ポリエチレン、例えば、超高分子量PE、又は高密度ポリエチレン(HDPE))を含む炭素基材の圧縮ブレンドであってもよい。他の実施形態では、本開示の基材を、ウェブ(例えば、ブローンマイクロファイバ)内に充填してもよい。ウェブは、圧縮してもよいし又はしなくてもよい。これは、例えば、米国公開特許出願第2009/0039028(Eatonら)に説明されている。なおこの文献は、本明細書においてその全体が組み込まれる。
【0075】
基材には強磁性材料が含まれていてもよいため、一実施形態では、基材は炭素支持体、例えば、炭素粒子の一部であってもよい。炭素支持体を誘導加熱によって加熱して複合物ブロックを形成することができる。一般的に、炭素ブロックモノリスを作製する際、炭素粒子を炉内で加熱して、炭素粒子を一緒に溶融させる。強磁性材料を用いた場合、高周波磁界を用いて基材を加熱することで、炭素支持体を溶融させて炭素ブロックモノリスを形成させてもよい。一実施形態では、磁界の振動周波数は約10Hz〜約1015Hzの範囲であってもよい。
【0076】
誘導加熱を用いて複合物ブロックを調製することによって、複合炭素ブロックのコアに対するより均一な加熱及びより良好な熱浸透が可能になる場合があり、及び/又は炭素ブロック複合物の製造スループットが向上する場合がある。鉄塩対他の金属塩のレベルを変えて、材料の強磁性特性及びクロラミン除去特性を最適化してもよい。
【0077】
一実施形態では、基材を流体管内に配置し、流体管は、流体入口及び流体出口に流体的に接続されている。このようなシステムには充填層が含まれていてもよい。基材を含む容器は、容器を通して流体を移動させる圧力又は重力であってもよい。
【0078】
一実施形態では、基材を用いて、クロラミンを流体ストリーム(特に、液体流体ストリーム、より具体的には、水性流体ストリーム)から取り除いてもよい。クロラミンは、アンモニアと塩素(次亜塩素酸塩)との水性反応により生成される。したがって、アンモニア(NH)が塩素消毒システムに加えられると、塩素はクロラミンに変換される。具体的には、低濃度のモノクロラミン(以下「クロラミン」と呼ぶ)は、飲用水源の消毒により発生する。一実施形態では、本明細書で開示したように、水溶液を組成物と接触させた後、結果として生じる水溶液に含まれるクロラミンの量は減少しており、例えば、少なくとも10、20、25、30、又は更に50%のクロラミン減少である。これは、以下の実施例セクションで説明するクロラミン除去試験(180秒における)で測定した結果である。
【0079】
以前の出版物、例えば、Vikeslandら、Environmental Science and Technologies、200、34、83〜90には、水溶性型の第一鉄イオンがクロラミンの除去を担うことが示唆されている。本開示の一実施形態では、クロラミン除去を担う分解された金属塩の金属は、水に対する溶解性が限定されていることが分かっている(言い換えれば、溶解性として、生成する金属イオン濃度が2ppm、1ppm、0.5ppm、又は更に0.1ppm未満のものである)。基材を水分を用いて洗浄した場合、洗浄水中に存在する金属は皆無かそれに近く、洗浄された基材はクロラミン除去に対するその活性を保持する。不溶性又は溶解性が限定された熱分解生成物を有していると、優位な場合がある。なぜならば、金属が固定化されて、処理水中への侵出が防止され、基材を使用前にコンディショニングすることができ、及び/又はろ過媒体の寿命が長くなるからである。
【0080】
一実施形態では、基材を流体管内に配置してもよい。流体管は流体入口及び流体出口を有し、ろ過媒体(例えば、炭素基材)がそれらの間に配置される。クロラミン含有溶液は、その後、ろ過材と接触させるために、流体入口から流体導管の中を通されてもよい。ろ液(流体出口を通り過ぎた溶液)は、1ppm(パーツパーミリオン)未満、0.5ppm未満、0.1ppm未満、又更には0.05ppm未満のクロラミンを含むべきである。
【0081】
本開示の典型的な実施形態の非限定列挙及び典型的な実施形態の組み合わせを以下に開示する。
【0082】
実施形態1.基材を含む流体処理用容器を備えた、ろ過装置あって、基材は、(i)COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい炭素基材と、(ii)金属塩と、の熱分解生成物を含むものである、ろ過装置。
【0083】
実施形態2.金属塩には、(i)金属カルボン酸塩、(ii)窒素含有オキシアニオン、(iii)硫黄含有アニオン、(iv)金属塩化物、(v)金属リン酸塩、及び(vi)それらの組み合わせが含まれる、実施形態1のろ過装置。
【0084】
実施形態3.窒素含有オキシアニオン金属塩には、硝酸塩、亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態2のろ過装置。
【0085】
実施形態4.硫黄含有アニオン金属塩には、硫酸塩、スルファミン酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態2のろ過装置。
【0086】
実施形態5.金属カルボン酸塩には、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩及びそれらの組み合わせが含まれる実施形態2のろ過装置。
【0087】
実施形態6.金属塩の金属は、銅、鉄、マンガン、銀、及びそれらの組み合わせである、実施形態1〜5のいずれか1つのろ過装置。
【0088】
実施形態7.xが0.1以下であり、yは0.005〜0.3である、実施形態1〜6のいずれか1つのろ過装置。
【0089】
実施形態8.xが0.01〜0.1である、実施形態1〜7のいずれか1つのろ過装置。
【0090】
実施形態9.Eが硫黄であり、硫黄が炭素と化学的に結合している、実施形態1〜8のいずれか1つのろ過装置。
【0091】
実施形態10.ろ過装置が、水ろ過装置である、実施形態1〜9のいずれか1つのろ過装置。
【0092】
実施形態11.基材には、基材の全重量を基準として、0.90重量%未満の窒素が含まれる、実施形態1〜10のいずれか1つのろ過装置。
【0093】
実施形態12.基材には、基材の全重量を基準として、2.0重量%を上回る硫黄が含まれる、実施形態1〜11のいずれか1つのろ過装置。
【0094】
実施形態13.水溶液からクロラミンを取り除くための方法であって、クロラミンを含む水溶液を用意することと、水溶液を組成物と接触させることと、を含み、組成物は、COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい、炭素基材と、金属塩と、の熱分解生成物を含むものであるまれる、方法。
【0095】
実施形態14.金属塩には、(i)金属カルボン酸塩、(ii)窒素含有オキシアニオン金属塩、(iii)硫黄含有アニオン金属塩、(iv)金属塩化物、(v)金属リン酸塩、及び(vi)それらの組み合わせが含まれる、実施形態13の方法。
【0096】
実施形態15.窒素含有オキシアニオン金属塩には、硝酸塩、亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態14の方法。
【0097】
実施形態16.硫黄含有アニオン金属塩には、硫酸塩、スルファミン酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態14の方法。
【0098】
実施形態17.金属カルボン酸塩には、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態14の方法。
【0099】
実施形態18.金属塩の金属が、銅、鉄、マンガン、銀、及びそれらの組み合わせである、実施形態14〜17のいずれか1つの方法。
【0100】
実施形態19.xは0.1以下であり、yは0.005〜0.3である、実施形態14〜18のいずれか1つの方法。
【0101】
実施形態20.xが0.01〜0.1である、実施形態14〜18のいずれか1つの方法。
【0102】
実施形態21.組成物には、組成物の全重量を基準として、0.90重量%未満の窒素が含まれる、実施形態14〜20のいずれか1つの方法。
【0103】
実施形態22.組成物には、組成物の全重量を基準として、2.0重量%を上回る硫黄が含まれる、実施形態14〜20のいずれか1つの方法。
【0104】
実施形態23.基材を製造する方法であって、
(i)炭素基材、(ii)硫黄、セレン、若しくはテルル源、又はそれらの組み合わせ、及び(iii)金属塩を含む、組成物を用意することと、
組成物を加熱することと、を含む方法。
【0105】
実施形態24.炭素基材と、硫黄、セレン、若しくはテルル源、又はそれらの組み合わせとを反応させて、COの表面を有する炭素基材であって、EはS、Se、及びTeの少なくとも1種から選択され、x及びyは0よりも大きい炭素基材を形成することと、COの表面を有する炭素基材を金属塩と接触させることと、次いで組成物を加熱することと、が更に含まれる実施形態23の方法。
【0106】
実施形態25.金属塩には、(i)金属カルボン酸塩、(ii)窒素含有オキシアニオン金属塩、(iii)硫黄含有オキシアニオン金属塩、(iv)金属塩化物、(v)金属リン酸塩、及び(vi)それらの組み合わせが含まれる、実施形態23〜24のいずれか1つの方法。
【0107】
実施形態26.窒素含有オキシアニオン金属塩には、硝酸塩、亜硝酸塩、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態25の方法。
【0108】
実施形態27.硫黄含有オキシアニオン金属塩には、硫酸塩、スルファミン酸塩、亜硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態25の方法。
【0109】
実施形態28.金属カルボン酸塩には、シュウ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、及びそれらの組み合わせが含まれる、実施形態25の方法。
【0110】
実施形態29.金属塩の金属は、銅、鉄、マンガン、銀、及びそれらの組み合わせである、実施形態24〜28のいずれか1つの方法。
【0111】
実施形態30.xが0.1以下であり、yが0.005〜0.3である実施形態24〜29のいずれか1つの方法。
【0112】
実施形態31.xが0.01〜0.1である、実施形態24〜29のいずれか1つの方法。
【実施例】
【0113】
本開示の利点及び実施形態を以降の実施例によって更に例示するが、これら実施例において列挙される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例では、比率、割合及び比はすべて、特に断らないかぎり重量に基づいたものである。
【0114】
材料はいずれも、例えば、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee、WI)から市販されているものか、あるいは特に断らない又は明らかでない限り、当業者には既知のものである。
【0115】
これらの略語を以下の実施例で用いる。g=グラム、hr=時間、in=インチ、kg=キログラム、min=分、mol=モル、M=モルの、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、ml=ミリリットル、L=リットル、N=垂直、psi=圧力/平方インチ、MPa=メガパスカル、及びwt=重量である。
【0116】
試験方法
見掛け密度測定
サンプル(本開示による比較例又は実施例に従って調製した)の見掛け密度を、重量を計ったサンプルをメスシリンダー内に軽く叩いて入れることを最密充填が実現されるまで行なうことによって決定した。軽く叩いても炭素基材サンプルの体積がそれ以上減少しなかったときに、もっとも密な充填が成されたとみなした。
【0117】
クロラミン試験
水サンプル中の全塩素含有量から、水サンプル中のクロラミン含有量を求めた。全塩素(OCl及びクロラミン)濃度は、Hach Companyが米国環境保護庁公定法(USEPA方法)330.5に相当すると主張するHach Method 8167及び全塩素分析DPD法(DPD Total Chlorine Method)により測定した。遊離塩素(OCl−)濃度は、Hach Companyが米国環境保護庁公定法330.5に相当すると主張するHach Method 8021及び遊離クロラミン分析DPD法(DPD Free Chloramine Analysis)により定期的に測定した。遊離塩素は無視できる程の低濃度(<0.2ppm)に保たれたため、全塩素分析は、水中のクロラミン濃度の良い推量となると考えられた。すべての試薬及び器具は、Hach Company(Loveland,CO)より入手可能であり、standard Hach Methodに記載されたものであった。
【0118】
クロラミンの調製
3ppm+/−0.3ppmクロラミンの調製を、適切な量の市販の漂白剤(5.25% NaOCl)を脱イオン水に添加することによって行なった。攪拌しながら、1.5当量の塩化アンモニウム水溶液を漂白剤溶液に加え、1時間攪拌した。pHを、7.6+/−0.2にNaOH又はHCを添加することによって調製し、そしてpHメータ(入手元は、サーモフィッシャ−サイエンティフィック社(Thermo Fisher Scientific,Inc.)、マサチューセッツ州、ウォルサム(Waltham)、商標名「ORION 3−STAR」)を用いて試験した。
【0119】
クロラミン除去試験
クロラミン試験水溶液として、3ppmのNHClを、pH 7.6で、27℃において含むものを調製した(前述したように調製)。試験の直前に、クロラミン試験水溶液の初期全塩素含有量を、前述のクロラミン試験で説明したように測定した。連続攪拌によって、0.46gアリコートの炭素基材サンプル(すなわち、本開示による比較例又は実施例に従って調製されたサンプル)。混合の直後に、タイマをスタートさせた。30秒後に、5mLの分量の混合物を取り出し、懸濁した固体を取り除くため、取り出し後5秒以内にその混合物を1μmのシリンジフィルターに通した。5mLの分量を上記のとおり取り出してから30秒以内に、そのろ過した一定分量中のクロラミン含有量を計測した。一定分量を5分間に亘って混合物から定期的に取り出し、その一定分量を上記のとおりクロラミン試験を用いて分析した。クロラミン除去効率を下記数式により求め、%クロラミン減少量として報告した。
【0120】
【数1】
【0121】
【表1】
【0122】
比較例A
炭素基材Aの試験を、更に処理することなく、クロラミン除去試験を用いて行なった。結果を表1に示す。
【0123】
比較例B
比較例Bの調製は、シュウ酸第二銅半水和物(0.63g)を炭素基材A(5g)と、75mL水中のスラリーとして混合することによって行なった(目標は4.7%充填)。混合物の撹拌を、5日間、室温で行なった。シュウ酸第二銅半水和物のわずかな溶解性のために、青色粒子が溶液から消えたときに含浸の終了を示していた(この場合は5日後)。粉末をろ過によって分離して、室温で一晩中乾燥させた。サンプルを、炉内で、300℃において、1時間、窒素下で加熱した。炉を窒素でパージすることを、加熱前に行なった。サンプルを次に、室温まで冷却して、クロラミン除去試験を用いて試験した。結果を表1に示す。
【0124】
比較例C
10gの炭素基Aを1gの微粉状硫黄と十分に混合して(公称上は、10wt%)、反応器に移した。反応器は、15×1.5インチ(381mm×38.1mm)のガラスチューブを、20mmのソルブシールジョイント(Solv-Seal joint)(アンドリュースガラス社(Andrews Glass Co.)、ニュージャージー州、バインランド(Vineland))を介して、10mmのグリースレス高真空ストップコック及び真空ラインインターフェースに接続したものからなっていた。巻き込まれた固体の損失を防ぐため、コックの手前に、ガラスウールの栓を差し込んだ。脱ガスを30分行なった後、反応器及び内容物を垂直炉内で400℃で1時間加熱した。室温まで冷却した後、反応器を再び、液体窒素冷却されたトラップを通して15分間排気した後、開けて生成物を分離した。生成物をX線光電子分光法(XPS)によって分析して、C(1s)、O(1s)、及びS(2p3/2)ピークを積分して、生成物の表面組成物を測定したところ、92.6原子%のC、3.4原子%のO、及び3.4原子%のSを含んでいた。燃焼分析によって判定された生成物のバルクカルコゲン含有量は、8±1%のSであった。
【0125】
(実施例1)
シュウ酸第二銅半水和物(0.63g)を比較例C(5g)の硫化炭素の一部と、75mL水中のスラリーとして混合した(目標は4.7%充填)。混合物の撹拌を5日間、室温で行なった。シュウ酸第二銅半水和物のわずかな溶解性のために、青色粒子が溶液から消えたときに含浸の終了を示していた(この場合は5日後)。粉末をろ過によって分離して、室温で一晩中乾燥させた。サンプルを次に、前述した硫化炭素を調製するのに用いたのと同じチューブ反応器内で加熱しながら、N下で、300℃において、1時間封止した。サンプルを次に、室温まで冷却して、クロラミン除去試験を用いて試験した。表1に、表示時間(秒)が経過した後の水サンプルから除去された%クロラミンをまとめる。
【0126】
【表2】
【0127】
比較例D
炭素基材Bの試験を、更なる処理を行なうことなく、クロラミン除去試験を用いて行なった。結果を表2に示す。
【0128】
比較例E
MnSO・HOを脱イオン水に、激しく攪拌しながら添加した。硫酸マンガン水溶液を次に、炭素基材Aに加えた。含浸炭素を次に、窒素パージされたマッフル炉内で、875℃において、15分間加熱した。坩堝を次に、取り出して、窒素パージ下で冷却した。含浸の結果、約6.3%のマンガン(Mnとして)が炭素上に形成された。サンプルをクロラミン除去試験を用いて試験した。結果を表2に示す。
【0129】
(実施例2)
炭素基材Aを180℃まで加熱した。硫黄粉末を、加熱された炭素に加えて、混合物の撹拌を、硫黄が炭素中に溶融されるまで行なった。硫黄含有炭素を次に、550℃に加熱することを、15分間、マッフル炉内で、窒素のパージ下で行なった。サンプルを窒素パージ下で冷却した。
【0130】
MnSO・HOを脱イオン水に、激しく攪拌しながら添加した。硫酸マンガン水溶液を、前述の硫黄で処理した炭素に添加した。含浸炭素を次に、窒素パージされたマッフル炉内で、875℃において、15分間、加熱した。坩堝を次に取り出して、窒素パージ下で冷却した。含浸の結果、約6.3wt%のマンガン(Mnとして)が炭素上に形成された。
【0131】
実施例2のサンプルをクロラミン除去試験を用いて試験した。結果を表2に示す。
【0132】
【表3】
【0133】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明に予測可能な改変及び変更を行いうることは当業者には明らかであろう。本発明は、説明を目的として本出願に記載される各実施形態に限定されるべきものではない。参照により本明細書に援用したいずれかの文書内での仕様と開示との間の不一致及び矛盾が存在するという点に関して、本仕様書が統制する。