(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6162722
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ステントをコーティングするためのデバイス、及び関連するコーティング方法、並びにそのコーティング方法によって作製されるステント
(51)【国際特許分類】
B05D 7/14 20060101AFI20170703BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20170703BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20170703BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20170703BHJP
B05B 1/26 20060101ALI20170703BHJP
A61F 2/82 20130101ALI20170703BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20170703BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
B05D7/14 Z
B05D7/22 Z
B05D1/02 Z
B05D3/00 C
B05B1/26 A
A61F2/82
A61K31/40
A61K31/436
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-552539(P2014-552539)
(86)(22)【出願日】2013年1月19日
(65)【公表番号】特表2015-511169(P2015-511169A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2012074818
(87)【国際公開番号】WO2013110393
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/589,409
(32)【優先日】2012年1月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514185002
【氏名又は名称】コルトロニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュターンベルク、カトリン
(72)【発明者】
【氏名】クローマー、ヘヨ カー.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ、クラウス − ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイトシース、ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】グラボウ、ニールス
(72)【発明者】
【氏名】ハーダー、クラウス
(72)【発明者】
【氏名】リットヴィン、ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バイアー、ダリボール
【審査官】
清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2005/0238829(US,A1)
【文献】
特表2012−501219(JP,A)
【文献】
特表2008−515611(JP,A)
【文献】
再公表特許第2008/114585(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18
7/00−13/06
B05D 1/00−7/26
A61F 2/82−2/97
A61M 25/00−29/04
35/00−36/08
37/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントをコーティングするための方法であって、
a)前記ステントをコーティングするためのデバイスを提供するステップであって、前記デバイスが、前記ステント用のホルダ、スプレー・マンドレルを有するスプレー・ユニット、及び空気ノズルを備え、コーティング中に前記スプレー・マンドレルが前記ステント内に片側から突き出し、前記空気ノズルが前記ステント内に反対側から突き出すように、前記スプレー・マンドレル、前記空気ノズル、及び前記ホルダが設計され、互いに対して配置され、
コーティング中に、前記ステントの位置が、前記スプレー・マンドレル及び前記空気ノズルに対して変えられることができ、或いは、
コーティング中に、前記ステントが、前記スプレー・マンドレルの方向に、又は前記空気ノズルの方向に移動させられることができ、
前記スプレー・ユニットが、前記ステントの反管腔側に向けられたスプレー・ノズルを備える、
ステップと、
b)スプレー・ジェットが向流領域で空気流によって半径方向外側に偏向されるように前記スプレー・マンドレルを介して前記スプレー・ジェットを導入し、前記空気ノズルを介して前記空気流を導入することによって前記ステントの管腔側をコーティングするステップと、
c)前記ステントの移動、前記スプレー・マンドレルの移動、前記空気ノズルの移動、前記スプレー・ジェットの調整、及び前記空気流の調整から選択される方策の少なくとも1つによって前記ステントに対する前記向流領域の位置を変えるステップと
d)前記ステップb)及びc)の実行中に、前記スプレー・ノズルのスプレー・ジェットが、前記ステントの外側において前記向流領域に向けられ、前記ステントの内部において、前記空気ノズルによって空気流が生成され、前記スプレー・マンドレルによってスプレー・ジェットが生成され、前記空気ノズルによる空気流及び前記スプレー・マンドレルによるスプレー・ジェットが同時に生成されるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記管腔側及び前記反管腔側に異なる活性薬剤がコーティングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治癒促進活性薬剤が前記管腔側に塗布される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治癒促進活性薬剤がアトルバスタチンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
増殖阻止活性薬剤が前記反管腔側に塗布される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記増殖阻止活性薬剤がシロリムス又はその誘導体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性薬剤がキャリア・マトリックス中に包埋される、請求項2から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記キャリア・マトリックスが生体腐食性である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア・マトリックスがPLLAを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントをコーティングするためのデバイス、このデバイスを活用して実行されるコーティング方法、及びこの方法によって作製されるステントに関する。
【背景技術】
【0002】
インプラントは、現代の医療技術で多様な形態で使用されている。インプラント(ステントなど血管内インプラント)は、例えば、血管、中空器官、及び静脈系を支持し、組織インプラントと組織移植部を付着させ、一時的に固定するために使用される他に、爪、板、ねじなど整形外科用にも使用される。
【0003】
ステントの移植は、血管疾患の治療に最も効果的な治癒処置の1つとして確立された。ステントは、患者の中空器官の安定機能を果たす目的を持つ。そのため、従来の構成のステントは、金属支柱で作製された微小の支持構造を有し、金属支柱は、最初は、身体内に導入するために圧縮形態であり、適用部位で拡張される。こうしたステントの主な使用領域の1つは、血管狭窄部、特に冠血管の狭窄部(収縮部)を永久、又は一時的に拡張し、開放状態を保持するものである。加えて、主に動脈瘤のシールに使用される動脈瘤ステントも知られている。支持機能がさらに設けられる。
【0004】
ステントは、狭窄した血管を所望の程度の開放状態に保持するのに十分な耐荷力を有する周囲壁、及び管状ベース本体を備え、血液がそれを通って滞りなく流れ続ける。周囲壁は、全般的に格子様支持構造によって形成され、それによって、ステントが小さい外径を有する圧縮状態で、治療すべき特定の血管の狭窄部までステントを導入し、そこで、例えばバルーン・カテーテルによって拡張して、血管が所望の拡張した内径を有するようにすることができる。別法として、ニチノールなど形状記憶材料は、インプラントを小さい径に保持する復元力が除去されると自己拡張する能力を有する。復元力は、全般的に、インプラントが解放されるまで、保護管によって材料に加えられる。
【0005】
インプラント、特にステントは、インプラント材料で作製されたベース本体を有する。インプラント材料は、非生物材料であり、薬剤の塗布に使用され、生体系と相互作用する。目的通りに使用される場合、身体環境と接触するインプラント材料としての材料の使用の基本的要件は、身体適合性(生体適合性)であることである。生体適合性は、特定の用途で適切な組織反応を誘発する材料の能力を意味することを理解されたい。これは、臨床的に望ましい相互作用をもたらすために、受容者の組織にインプラントの化学的、物理的、生物学的、且つ形態学的な表面特性を適合させることを含む。インプラント材料の生体適合性は、インプラント材料が移植される生物系の反応の時間的経過にも依存する。例えば、刺激、及び炎症が比較的短期間で起こり、組織の変化を招く可能性がある。したがって、インプラント材料の特性によって、生体系が様々に反応する。生物系の反応によって、インプラント材料を生体活性、生体不活性、及び分解性、例えば吸収性の材料に分けることができる。
【0006】
インプラント材料は、(例えばコーティングとして)ポリマー、金属材料、及びセラミック材料を含む。永久インプラント用の生体適合性金属、及び金属合金は、例えば、(316Lなど)ステンレス鋼、(CoCrMo鋳造合金、CoCrMo鍛造合金、CoCrWNi鍛造合金、及びCoCrNiMo鍛造合金など)コバルト基合金、工業用純チタン(technical pure titanium)、及び(cpチタン、TiA16V4、又はTiA16Nb7など)チタン合金、及び金合金を含む。生体腐食性(biocorrodible)ステントの分野では、マグネシウム、又は工業用純鉄、並びに元素マグネシウム、鉄、亜鉛、モリブデン、及びタングステンの生体腐食性ベースの合金が提案される。
【0007】
(局所薬物送達(LDD:local drug delivery)システムと呼ばれる)活性薬剤を局所で溶出させるためのコーティングを含むステントは、かなり以前から知られており、実際に広範に使用されている。薬物は、再狭窄を防止し、場合によっては、さらに治癒経過をサポートすることが意図されている。そのため、再狭窄を防止するための抗増殖性活性薬剤を本質的に反管腔側だけに与えることが有利である。なぜなら、抗増殖性活性薬剤が効果をもたらすべき血管壁内に主に溶出するからである。その意図は、抗増殖性活性薬剤によって、ステントの管腔側の治癒経過の遅れを大幅に防ぐためである。治癒経過を、管腔側にコーティングされた適切な第2の活性薬剤によってさらに促進することができる。管腔側と反管腔側のコーティングの組合せは、さらに、形状適合性のあるコーティングを行うことができる利点を有し、それによってコーティングの機械的安定性が大幅に向上する。
【0008】
活性薬剤の溶出の局所での差異化は、一部は、ステントの表面上に配置された活性薬剤リザーバを活用して行われる。さらに、ポリマー、及び活性薬剤で作成された単に反管腔側だけにコーティングが施されたステントの変形形態が知られている。その上、様々な活性薬剤がポリマー・コーティングから反管腔側、及び管腔側に溶出されるシステムも記載されている。特許文献1には、管腔側に反管腔側とは異なるコーティングの厚さを有するステントが記載されている。ステントは、例えば、生体腐食性インプラント材料の腐食挙動に影響を与えるなど、他の理由でもコーティングされる。
【0009】
活性薬剤、及びキャリア・マトリックスとして、又は腐食防止の目的で働くポリマーなど他の材料をステントにコーティングする産業界で幾つかの方法が確立された。これらには、キャリア・ガスに基づくスプレー・コーティング、超音波スプレー、回転スプレー及びローリング、並びに、インク・ジェット・プリンティングに基づく方法が含まれる。
【0010】
特許文献2には、管腔側(ステントの内側)と反管腔側(ステントの外側)の表面の両方をコーティングすることができるコーティング装置が記載されている。これは、ステントがコーティング中に回転されるインク・ジェット・プリンタを活用して行われる。この方法を使用して、幾つかの層を含むコーティングを施すこともできる。
【0011】
特許文献3には、ステントが回転され、ノズルがステントから距離6.5mmに配置される、スプレー・コーティングによるステントのコーティングが記載されている。
【0012】
特許文献4には、ステントの管腔側表面をコーティングするためのデバイスが記載されている。このデバイスは、コーティング工程中にステントを収容するスリーブを備え、ステントはスリーブの内部に隣接するように着座する。ステントの管腔側のスプレー・コーティングは、可動に取り付けられたスプレー・マンドレルによって行われ、スプレー・マンドレルは、ステントに設けられたスリーブ内に挿入される。
【0013】
従来技術のコーティング方法、及び装置は、ステントの管腔側、及び反管腔側へのコーティングを差異化して施すことが不可能であり、又は難しいという不利な点がある。さらに、別々に施される管腔側、又は反管腔側のコーティングは、安定性が低いことが多いため、制御不能にインプラントから分離する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2010/120552号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0226812号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0288088号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0073036号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様は、ステントをコーティングするためのデバイスであって、ステント用のホルダと、スプレー・マンドレル及び空気ノズルを有するスプレー・ユニットとを備えるデバイスの提供に関する。コーティング中にスプレー・マンドレルがステント内に片側から突き出し、空気ノズルがステント内に反対側から突き出るように、スプレー・マンドレル、空気ノズル、及びホルダが設計され、互いに対して配置される。
【0016】
本発明のさらなる態様は、ステントをコーティングするための方法であって、
a)ステントをコーティングするための上記のデバイスを提供するステップと、
b)スプレー・ジェットが向流領域で空気流によって半径方向外側に偏向されるようにスプレー・マンドレルを介してスプレー・ジェットを導入し、空気ノズルを介して空気流を導入することによってステントの管腔側をコーティングするステップと、
c)ステントの移動、スプレー・マンドレルの移動、空気ノズルの移動、スプレー・ジェットの調整、及び空気流の調整から選択される方策の少なくとも1つによってステントに対する向流領域の位置を変えるステップと
を含む方法の提供に関する。
【0017】
本発明は、空気ノズルによって向流が生成されるスプレー方法を使用する、非常に単純、且つ信頼できる方法で管腔側、及び/又は反管腔側のコーティングを行うことができるという認識に基づくものである。そのため、デバイスは、スプレー・マンドレルを有するスプレー・ユニットを備え、スプレー・マンドレルの外径はステントの内径よりも小さい。さらに、空気ノズルが存在し、空気ノズルの外径は、同様に、ステントの内径よりも小さい。コーティング工程中、ステントはホルダに収容されて、ステントの横方向の開口にアクセス可能であり、横方向の壁が遮蔽されないようになされる。次いで、スプレー・マンドレがステント内に片側から、空気ノズルが反対側から挿入される。コーティング工程中、スプレー・ジェットがスプレー・マンドレルによって生成され、空気流が空気ノズルによってこのスプレー・ジェットに向けられる。スプレー・ジェットと空気流が合流する(本明細書で向流領域と呼ばれる)領域内で、スプレー・ジェットが半径方向外側に偏向され、したがってこの領域内のステントの管腔側の表面がコーティングされる。様々な方策を使用して、ステントの位置に対する向流領域を変えることができるようになり、それによって、ステントの局所的の差異化された管腔側のコーティングが可能になる。こうした方策には、ステント、スプレー・マンドレル、又は空気ノズルの移動、スプレー・ジェット、及び空気流の調整が含まれる。本発明によるコーティング方法は、形状適合性のある、機械的に非常に安定したコーティングをもたらす。
【0018】
デバイスは、好ましくは、ステントのスプレー・マンドレル、及び空気ノズルに対する位置をコーティング中に変えることができるように設計される。ホルダは、特に、コーティング中にステントをスプレー・マンドレルの方向に、又は空気ノズルの方向に移動させることができるように設計される。換言すれば、この変形形態によれば、ステントは、コーティング工程中にホルダによって、スプレー・マンドレルと空気ノズルにより形成される軸に沿って移動される。位置、及び向流領域中の流量の調整を、この領域中で実験によって特に容易に決定することができ、工業生産過程でのこの方法の実施を簡単にすることができる。
【0019】
スプレー・ユニットが、ステントの反管腔側に向けられたスプレー・ノズルを備えることがさらに好ましい。関連する方法の変形形態によれば、ステップa)で、ステントをコーティングするためのデバイスが提供され、スプレー・ユニットは、ステントの反管腔側に向けられたかかるスプレー・ノズルを備える。反管腔側のコーティングを上記の管腔側のコーティングと(ii)同時に、(i)その前に、又は(iii)その後に行うことができる。ステントの反管腔側を同時にコーティングするには、ステップb)及びc)の実行中に、スプレー・ノズルのスプレー・ジェットが向流領域に向けられる。しかし、反管腔側のコーティングを、管腔側のコーティング工程の前、又は後に行うこともでき、その場合、スプレー・ジェットはステントの外側に向けられる。管腔側の表面に不慮に到達するコーティング材料の量を空気ノズルからの空気流によって、又は活性薬剤を使用せずに作動される空気ノズル及びスプレー・マンドレルによって生成される向流領域によって選択的に低減することができる。
【0020】
上記を踏まえて、この変形形態によれば、本発明によるデバイスのスプレー・ユニットは、ステントの外側に向けられた追加のスプレー・ノズルを備える。反管腔側のコーティング・ステップ中、向流領域中の半径方向外側に向けられた流れは反管腔側のコーティング・ステップのコーティング材料がステントの内部に入るのを大幅に防ぐことができる。別法として、又は追加として、超過圧力が、スプレー・マンドレル、又は空気ノズルによってステントの内部に生成され、この超過圧力は、スプレー・ノズルによって生成されるスプレー・ジェットが貫通するのを防ぎ、又は貫通した材料を横方向に排出するものである。
【0021】
反管腔側のコーティング・ステップ中、スプレー・マンドレルによって生成されるスプレー・ジェットは、反管腔側のコーティングに少量の混合が望ましい場合を除いて、キャリア材料、又は活性薬剤を含まなくてもよい。ステントの管腔側、及び反管腔側のコーティングの組成物は、全般的に互いに異なり、すなわち、それらは異なるキャリア材料、及び/又は活性薬剤を含む。例えば、好ましくは、成長阻止活性薬剤はステントの反管腔側の上面に堆積され、治癒促進物質は管腔側の表面に塗布される。管腔側と反管腔側に異なる活性薬剤がコーティングされることが好ましい。具体的には、アトルバスタチンが管腔側に塗布され、シロリムスが反管腔側に塗布される。
【0022】
活性薬剤を特にキャリア・マトリックスに埋め込むことができる。キャリア・マトリックスは生体腐食性でもよく、好ましくはPLLAを含む。
【0023】
本発明のさらなる態様は、上記の方法で作製されるステントに関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ステントの管腔側をコーティングするための本発明によるデバイスを示す概略図である。
【
図2】ステントの反管腔側をコーティングするための本発明によるデバイスを示す概略図である。
【
図3】別々の内側と外側のコーティングを順次組み合わせた後の管腔側、及び反管腔側の層の厚さを有する横方向に切断したインプラントの断面を示す概略図である。
【
図4】長手方向の層の厚さの一貫性を分析するための、4つの横方向の切断面でのインプラントの断面の外側コーティングの層の厚さの評価を示す図である。
【
図5】長手方向の層の厚さの一貫性を分析するための、4つの横方向の切断面でのインプラントの断面の内側コーティングの層の厚さの評価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明によるデバイスを使用する、ステント10の管腔側のコーティングの原理を概略的に示している。そのため、デバイスは、コーティング工程中にステント10を収容するのに使用されるホルダ12を備える。ホルダ12は、この図で詳細には示していないアクチュエータによって横方向の移動を行うように設計される。
【0026】
デバイスは、さらに、スプレー・マンドレル22を備えるスプレー・ユニット20を含む。コーティング材料、及び適したキャリアから成るスプレー・ジェット24が、スプレー・ユニット20によって生成される。スプレー・ジェット24は、スプレー・マンドレル22によってステント10の内部に案内される。
【0027】
空気流32を生成する空気ノズル30は、ステントの反対側に配置される。
【0028】
スプレー・ジェット24と空気流32は向流領域40で合流し、ここで空気流32と混合されたスプレー・ジェット24は、したがって、半径方向外側に向けられ、そこでコーティングすべきステント10の管腔側表面上に衝突する。この半径方向外側に向けられた混合流42の一部もステント10の微小支持構造の開口を通って入る。
【0029】
管腔側コーティングの位置を変えるため、ホルダ12はスプレー・マンドレル22と空気ノズル30によって形成される軸に沿って移動される。したがって、向流領域40のステント10に対する相対位置が変わる。ステント10の幾つかの管腔側部分では、スプレー・ジェット24の組成物を変えることによって、管腔側コーティングの組成物を調整することができる。層の厚さは、ステント10の管腔側表面の任意の周囲部分のコーティング工程の長さ、及びコーティング組成物によって影響を受ける可能性がある。
【0030】
図2は、コーティング・デバイスの変形形態を示すものであり、スプレー・ユニットはステント10の外側のコーティングに使用される追加のスプレー・ノズル52を備える。スプレー・ジェット54は、スプレー・ノズル52によって、反管腔側のコーティング・ステップ中に、ステント10上に案内される。ステント10の微小構造を通る半径方向外側に向けられる空気流を起こす超過圧力を、スプレー・マンドレル22、及びこの図で示していない空気ノズル30によってステント10の内部に生成することができる。この空気流を調整して、スプレー・ジェット54の貫通を防ぎながら、ステント10の反管腔側表面をコーティングすることができるようにする。同様に、反管腔側の層材料の管腔側表面への望ましくない付着を空気ノズル、又はスプレー・マンドレルによって生成される空気流によって低減することができる。
(例示の実施例)
【0031】
上記のデバイスを使用して、先ず、ステントの管腔側にPLLAのアトルバスタチンから成るコーティングを施し、次いで反管腔側にPLLAのシロリムスから成るコーティングを施す。ステントの内側のコーティングの厚さは、外側のコーティングの厚さの約2倍から3倍でなければならない。
【0032】
図3は、別々の内側と外側のコーティングの順次の組合せを行った後の管腔側、及び反管腔側の層の厚さを有する横方向に切断したインプラントの断面を概略的に示す図である。
【0033】
図の中心はステント支柱(1)の断面を示している。支柱の表面は、内側層(4、6)によって包囲され、管腔側の層の厚さ(4)は反管腔側の層の厚さ(6)よりもかなり厚い。とはいえ、反管腔側の層の厚さ(6)はゼロよりも大きく、内側層(4、6)が共に管腔側にかなり堆積し、内側層の機械的安定性を向上させる形状適合性のあるものになる。同様に、外側層(5、7)も形状適合性を示し、反管腔側の層の厚さ(7)は管腔側の層の厚さ(5)よりも僅かに薄い。
【0034】
長手方向の層の厚さの一貫性、及び管腔側/反管腔側のコーティングの選択性を分析するため、4つの横方向の切断面でのインプラントの断面の、
図4は、外側コーティングの層の厚さの評価を示し、
図5は、内側コーティングの層の厚さの評価を示している。
図4の薄灰色で示されているのは、反管腔側のインプラントの表面上に堆積した層材料の層の厚さであり、暗灰色で示されているのは、管腔側のインプラントの表面上に堆積した層材料の層の厚さである。
図5の薄灰色で示されているのは、管腔側のインプラントの表面上に堆積した層材料の層の厚さであり、暗灰色で示されているのは、反管腔側のインプラントの表面上に堆積した層材料の層の厚さである。
【0035】
例示の実施例は、本発明の単に一つの特定の実施例であり、保護の範囲の全般的な性質を限定するものではない。