(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シランは、数ある用途の中でも、有効なカップリング剤、架橋剤、接着促進剤、および疎水化剤としての用途が見出されてきた。シランは、有機置換基のバリエーションが豊富であることから用途が多く、幅広いポリマーマトリックスに適合できる。しかし、固体状で使用できるシランはほとんどないため、液体、さらに言えば有害液体を扱う態勢が整っていなければ、大部分のシランは使用できない。こうしたことから、固体状のシランを調製する工程が所望されている。
【0003】
特に関心の寄せられるシラン群は、一般式RnSiOR(4−n)を有するアルコキシシランである(式中、Rは、疎水基(例えばアルキル、メタクリレート)または親水基(例えばアミノ、グリシド)であり得る有機基である)。
【0004】
アルコキシシランは種々の用途で使われており、最もよく見られる用途は次の通りである。
−架橋剤(R=ビニル、メチル、またはスルフィド)
−疎水化剤(R=アルキル)
−カップリング剤(R=グリシド、メタクリレート、またはアミノ)
−接着促進剤(R=アミノまたはグリシド)
【0005】
アルコキシシランは、水と接触したときに以下の2つの連続した反応をする。加水分解ステップ(a)によるシラノール基(Si−OH)の形成と、後続の、2つのシラノール基間の縮合(b1)またはシラノール基とアルコキシシラン基の間の縮合(b2)によるシロキサン(−Si−O−Si−)の形成である。
【化1】
【0006】
上記の反応は、アルコキシシランの大部分の用途で非常に重要である。すなわち、小型のアルコキシシランが、シラノール末端を有する分子同士を縮合により橋かけするとき、架橋結合(crosslinking)が発生する。接着促進剤およびカップリング剤は、それぞれの有機官能基を通じて有機マトリックスと相互作用し、それぞれのシラノール末端によりガラス、金属、または鉱物の表面と共有結合する(
図1参照)。したがって、これらの用途では、シラノール基が未縮合のままでなければ、アルコキシシランの効果がなくなる。
【0007】
アルコキシシランは、有機置換基の性質やアルコキシ脱離基の性質等の種々のパラメーターによって、加水分解と縮合に対する様々な反応レベルが観察される。特に、主としてカップリング剤または接着促進剤として使われるアミノ含有アルコキシシランの場合、加水分解と縮合を起こしやすく、その結果、オリゴマーまたはポリマーを形成する。こうしたオリゴマーは、モノマーより反応性が低く、関連の用途でまったく反応性がない場合もある。
【0008】
一般的なアミノ含有アルコキシシランの1つは、γ−アミノプロピル−β−アミノエチルトリメトキシシラン[ダウコーニング社Z−6020シラン]である。
図2〜4に、酸性水溶液、アルカリ水溶液、中性水溶液中のそれぞれのγ−アミノプロピル−β−アミノエチルトリメトキシシランの
29SiNMRスペクトルを示す。各スペクトルの共鳴(ppm単位)は、以下のSi種を表す。
−41:Si(O−Si)
0/(T
0)
−50:Si(O−Si)
1/(T
1)
−58:Si(O−Si)
2/(T
2)
−67:Si(O−Si)
3/(T
3)
【0009】
したがって、Si(O−Si)
1を表す−50のピークは、ケイ素原子において加水分解と縮合が1回発生してこの共鳴を発生させ、それにより1つのSi−O−Si架橋結合が生じたことを示す。これらの様々な種の割合は条件によって異なるが、いずれの場合でも、(加水分解/縮合がまったく発生していない)T
0として現れるSiがほとんどない状態で縮合が発生していることが分かる。
【0010】
ゆえに、固体状のアルコキシシランを調製する工程においては、縮合を発生させる可能性のある条件を回避すべきであり、特に、水との接触を回避すべきである。さらに、この固体状そのものが、加水分解と縮合に対して可能な限り安定であるべきである。
【0011】
固体状のシランを調製する方法は、当該技術分野において公知である。ある工程は、シランを混合および/または乳化して高分子水溶液にしてから、スプレー乾燥により水を除去することを伴う(例えば国際公開第2004/098898号および米国特許公開第20040019141号を参照)。一般に、この高分子水溶液(バインダー)は、ポリマーを形成する皮膜(例えばポリビニルアルコール(PVA))である。これらの工程は、疎水化剤として使われるシランに適しており(たいていはアルキルシラン)、このシランは加水分解に対する感受性が高くないため、水溶液中で調製できる。しかし、水に対する感受性が高いシランの場合(上記のアルコシキシランを含む)、水性バインダーに接触すると、著しい加水分解と縮合が生じることになるため、この手法は適切でない。
【0012】
この点に関して、水性バインダー(PVA)に分散したγ−アミノプロピルトリエトキシシラン[ダウコーニング社Z−6011シラン]の
29SiNMRスペクトルを
図5に示す。このスペクトルでは、−67ppmの共鳴で高レベルの縮合があり、ケイ素の80%超がSi(O−Si)
3(T
3)として存在することを示し、−41の共鳴は欠如しており、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(未縮合のアルコキシシラン−Si(O−Si)
0すなわちT
0)が完全に反応したことを示している。
【0013】
代替方法として、凝集手法を使用することもできる。凝集手法では、活性物質をバインター(ポリマーまたはワックスを形成する水性皮膜)中に分散させ、得られた乳濁液を担体粉末上に噴霧する(例えばダウコーニング社の特許出願である国際公開第2008/062018号に、セメント系材料用の疎水化剤として使われる粉末の調製工程が記述されている)。この凝集手法は、部分的に縮合しても効果を保つ疎水化剤に対しては使用できるが、他のシラン(特に、加水分解に対する感受性が高いアルコキシシラン)の場合、水性または高温のバインダーに接触すると、高レベルの加水分解および縮合が生じるため、生成物中の効果を著しく失うことになる。
【0014】
別の工程では、シランを担体粉末に吸収させることを伴う(例えばドイツ特許第195 03 779号、ドイツ特許第44 35 311号、および欧州特許第0 426 073号を参照)。この工程は、ゴム(メルカプトシラン)、ビチューメン(アルキル、アミノ、イソシアネート、ハロゲノ、陽イオン性アルコキシシラン)、またはPEX(ビニルシラン)に使用できる。この担体はシリカまたはカーボンブラック(得られる粉末は黒色なので、ゴムまたはビチューメンの外面の塗布には適さない)でよい。しかし、反応性の高いシラン(例えば、アミノシラン)をこうした担体に吸収させた場合、アルコキシシランの反応部位がシリカのSiOH基と共有結合を形成するため、例えばカップリング剤としての使用では、このアルコキシシランは有用でなくなる。上記の加水分解や縮合反応等の他の反応も急速に開始し、その結果、元のシランと同じようには挙動しない、もはや使用不能となった新規の種が生じる可能性がある。したがって、この方法で担体に吸収させることのできるシランは、比較的安定なシランのみとなると考えられる。
【0015】
さらなる方法では、シランを多孔質物質、例えばメンブラーナ(Membrana)が提供するAccurel(登録商標)等の多孔質ポリオレフィンに吸収させるステップを含む。こうした微孔質ポリマー製品は、市販の樹脂から作られる。微孔質状で提供される一般的な樹脂の例として、ポリプロペン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、およびポリアミドがある。こうした微孔質製品は微小スポンジのように機能し、自身の数倍の重量のシランを、毛細管吸収によりミクロンサイズの空隙中に吸収することができる。この技術は、加水分解と縮合反応を回避できるという点では、シランを固体状に変換する最も効率の高い方法であるが、多孔質ポリマーが高価格であることがこのアプローチの欠点であり、このポリマーはポリオレフィンの性質を持つため、プラスチック以外の用途に適さない。よって、この工程の用途は限られている。
【0016】
要約すると、従来技術において、シランを含む固体生成物を調製するいくつかの工程が説明されている。これらの工程は、概して、加水分解と縮合に対する感受性がないシラン疎水化を指向している。この種のシランは、最終用途において有機部分が機能部分であるため、部分的に加水分解され縮合しても十分な活性を残す。すなわち、ケイ素での若干の反応は容認され得る。
【0017】
親水性シラン(エポキシ、アミノ等)や架橋剤(すなわちビニルまたはメチルアルコキシシラン)等の他のシランに関しては、固体状のシランを調製する従来技術の手法は効果がない。その理由は、シランの水分散または高温ワックスへの分散を伴うため、結果として高レベルの加水分解と縮合が生じるからである。加えて、微孔質ポリマーに吸収させると副反応を最小化できるが、工程が高コストであるために、この手法は広く使われてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
上記のように、本発明は、ワックスと反応性シランとを含むんでなる組成物であって、反応性シランと固体状のワックスが組み合わされてなる組成物を提供する。このワックスが雰囲気中の水分を阻止するに足るバリアとなり、シランの加水分解と縮合を防止する。
【0027】
好適な実施形態では、各固体粒子は、ワックスの層で囲まれたシラン核を含み、当該ワックスがシラン核を取り囲むようにする。しかし、本発明は工業的な方法に関するものであり、実際上、ワックスおよびシランの位置に関して各粒子が異なっていてよい。
【0028】
本発明は、特定のシランに限定されるものではない。しかし、本発明は、シランを含む固体状の組成物に関し、また得られる物質は、雰囲気縮合による加水分解に対する耐性、特に加水分解に対する耐性を有し、さらにこのような加水分解を回避する固体形態の調製方法に関する。こうしたことから、シランは反応性シランである。本発明において、反応性シランとは、加水分解と縮合を起こしやすく、それによりシロキサン結合を形成するシランのことであり、例えばシランの有機側鎖位置で反応するシランも含む。反応性シランの意味するものの定義については、特に、一定条件下での反応速度を用いて本明細書に規定する。
【0029】
本発明の一実施形態では、このシランはアルコキシシランである。多くの場合、アルコキシシランは、上記の加水分解縮合反応を起こしやすい。アルコキシシランの反応性は、水中加水分解の速度で測定できる。実施例2に、シランの水中加水分解の速度を測定する方法を示す(NMR−Spectroscopic Investigations on the Hydrolysis of Functional Trialkoxysilanes,M.Brand,A.Frings,P.Jenkner,R.Lehnert,H.J.Metternich,J.Monkiewicz,J.Schram,Z.Naturforsch.54b,155−164(1999);eingegangen am 9.September 1998)。この手法は速度定数K(h
−1単位)の測定を伴い、速度定数の値が高いほど加水分解が高速であることを示す。
【0030】
本発明の一実施形態では、実施例2の方法(pH4.0、HCl)で測定した場合の反応性シランの加水分解の速度定数は、1h
−1超、2h
−1超、または5h
−1超である。本発明の一実施形態では、実施例2の方法(pH7.0)で測定した場合の反応性シランの加水分解の速度定数は、0.1h
−1超、0.5h
−1超、または1h
−1超である。
【0031】
特許請求の範囲におけるシランの加水分解速度への言及は、実施例2(pH 4.0、HCl)の方法で測定した加水分解速度を指す。
【0032】
本発明の一実施形態では、このシランはアミノ含有アルコキシシランである。実施例2から、アミノ含有アルコキシシランは特に加水分解速度が高いことが分かる。表2のサンプル1A(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)と1B(アミノプロピルトリエトキシシラン)を参照のこと。ここでは、酸条件での加水分解が高速すぎて測定できていない。
【0033】
さらに
図7に、アミノプロピルトリエトキシシラン[APES、ダウコーニング社コンパウンドZ−6011シラン]、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPMS)、オクチルトリエトキシシラン(OES)、および3−メルカプトプロピル トリメトキシシラン(MRPMS)の加水分解速度を図示する(Marie−Christine Brochier Salon a,Pierre−Alain Bayle b,Makki Abdelmouleh c,Sami Boufic,Mohamed Naceur Belgacem,Colloids and Surfaces A:Physicochem.Eng.Aspects 312(2008)83−91)。
【0034】
図7から、他のアルコキシシランと比べて、アミノプロピルトリエトキシシラン[ダウコーニング社コンパウンドZ−6011]の加水分解がはるかに高速であることが分かる。このことは、アミノ含有アルコキシシランによく見られる。ゆえに、本発明の粒状生成物への調合には、アミノ含有アルコキシシランが特に適しており、よって本発明の一実施形態におけるシランは、アミノ含有アルコキシシランである。
【0035】
本発明のある実施形態において、アミノ基含有アルコキシシランは下記の式(I)のアルコキシシランであり、
【化2】
式中、xは0、1、又は、2の整数であり、R
1は
【化3】
の基を表し、式中、yは0、1、2、又は、3の整数であり、R
5、R
6、及び、R
7は互いに独立してC
1〜C
4アルキル基より選択され、
R
2、R
3、及び、R
4は互いに独立して水素、及び、
【化4】
から選択され、式中、yは0、1、2、又は、3の整数であり、R
5、R
6、及び、R
7は互いに独立してC
1〜C
4アルキル基より選択される。
【0036】
本発明のある実施形態において、xは1であり、したがって、式(I)の分子の中核は1,2ジアミノエチル部分である。しかしながら、その他の長さの炭素鎖を使用することができ、特にxはまた2であることもでき、その場合、式(I)の分子の中核は1,3ジアミノプロピル部分である。
【0037】
本発明のある実施形態において、yは2であり、したがって、3つのCH
2基を含むリンカーが窒素原子とケイ素原子を隔てる。しかしながら、再びその他の長さの炭素鎖を使用することができ、特にyは1であることもでき、したがって、2つのCH
2基を含むリンカーが窒素原子とケイ素原子を隔て、又は、yは3であることができ、したがって、4つのCH
2基を含むリンカーが窒素原子とケイ素原子を隔てる。
【0038】
本発明はまた、上述したxとyのあらゆる可能な組合せの例を含む。しかしながら、xは1であり、yは2であるのが好ましい。
【0039】
R
5、R
6、及び、R
7はC
1〜C
4のアルキル基である。常識ではあるが、C
1〜C
4のアルキル基にはメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、又は、t−ブチル基が含まれ、そして、これらの選択肢のいずれかよりR
5、R
6、及び、R
7は互いに独立して選択され得る。しかしながら、特に、R
5、R
6、及び、R
7は全てメチル基である。
【0040】
本発明のある実施形態において、R
2、R
3、及び、R
4は
【化5】
である。本発明のこの実施形態において、R
2、R
3、及び、R
4のいずれも水素ではない。
【0041】
本発明のある実施形態において、R
2、及び、R
3は
【化6】
であり、そして、R
4は水素である。本発明のこの実施形態において、前記分子の中核の窒素原子のうちの1つは1つの水素原子に結合し、他方の窒素原子は水素原子と結合しない。
【0042】
本発明のある実施形態において、R
2は
【化7】
であり、そして、R
3、及び、R
4は水素である。本発明のこの実施形態において、前記分子の中核の窒素原子のうちの1つは2つの水素原子と結合し、したがって、アミノ基であり、他方の窒素原子は水素原子と結合しない。
【0043】
本発明のある実施形態において、R
3は
【化8】
であり、そして、R
2、及び、R
4は水素である。本発明のこの実施形態において、前記分子の中核の窒素原子の各々は1つの水素原子と結合する。
【0044】
本発明のある実施形態において、R
2、R
3、及び、R
4はそれぞれ水素である。本発明のこの実施形態において、前記分子の中核の窒素原子のうちの1つは2つの水素原子と結合し、したがって、アミノ基であり、他方の窒素原子は一つの水素原子と結合する。
【0045】
本発明のある実施形態において、式Iのアミノ基含有アルコキシシラン化合物は
【化9】
から選択される。
【0046】
特に、最も好ましい式Iのアミノ基含有アルコキシシラン化合物は
【化10】
[ダウコーニング社Z−6020シラン]
である。
【0047】
もう1つのアミノ基含有アルコキシシランとして
【化11】
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン
[ダウコーニング社Z−6011シラン]
を挙げることができる。
【0048】
特に興味深いその他の反応性アルコキシシラン類は、比較的小さいアルキル置換基を有するトリアルコキシシラン類である。例えば、9A(メチルトリメトキシシラン)、及び、14A(ビニルトリメトキシシラン)のようなアルコキシシラン類では加水分解速度が速いことを実施例2から理解することができる。
【0049】
したがって、本発明のある実施形態において、反応性シランはトリメトキシシラン、又は、トリエトキシシランである。ある実施形態において、トリメトキシシラン、又は、トリエトキシシランは式(II)
【化12】
を有し、式中、R
8は、所望によりアミノ基、−O−CH
2−CH(O)CH
2、又は、−OC(O)C(CH
3)=CH
2により置換されてもよいC
1〜8ヒドロカルビル基であり、そして、R
9はC
1〜2ヒドロカルビル基である。当業者に周知ではあるが完璧を期すと、ヒドロカルビル基とは炭化水素から1つの水素原子を除去することにより形成される一価の基のことである。好ましくは、R
8はC
1〜6ヒドロカルビル基であり、より好ましくはC
1〜4ヒドロカルビル基である。R
8の特定の例としてメチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ビニル基、及び、フェニル基を含む例を挙げることができる。
【0050】
メチル基はそのサイズが比較的小さいため、メトキシシラン類はその他のアルコキシシラン類よりも速く加水分解する。実施例2は、加水分解速度はトリメトキシシラン類で特に速いことを示す。pH=4(塩酸)でkがそれぞれ20.71、及び、2.19である実施例9A(メチルトリメトキシシラン)、及び、9B(メチルトリエトキシシラン)を参照のこと。したがって、R
9はC
1ヒドロカルビル基、又は、メチル基であるのが好ましい。
【0051】
特に好ましくは、式(II)のトリアルコキシシランは、
【化13】
メチルトリメトキシシラン
[ダウコーニング社Z−6070シラン]、
【化14】
ビニルトリメトキシシラン
[ダウコーニング社Z−6300シラン]、又は、
【化15】
プロピルトリメトキシシラン
[ダウコーニング社Z−6264シラン]
【化16】
[ダウコーニング社Z−6040シラン]
【化17】
[ダウコーニング社Z−6042シラン]
【化18】
[ダウコーニング社Z−6030シラン]
【化19】
[ダウコーニング社Z−9805シラン]
【化20】
[ダウコーニング社Z−6124シラン]
から選択される。
【0052】
先に議論したように、ワックスの役割は、反応性シランを保護し、それが加水分解と縮合によって雰囲気と、特に雰囲気中の水と反応するのを防ぐために、後に反応性シランを実質的にカプセル化する(又は包括する、又は包囲する、又は封入する)ことである。結果的に、ワックスは基本的に不透水性の物質でできていなくてはならない。
【0053】
ワックスという用語は任意の特定の化学組成物を意味するわけではない。どちらかというと、ワックスは、室温では固形物であるが、液体シランと混合するのに十分に低い温度で溶融する化学種を意味する意図である。本発明のある実施形態において、ワックスは200℃未満の温度で溶融し、そして、好ましくは150℃未満で溶融する。少なくとも25℃の融点、より好ましくは少なくとも35℃、そして、最も好ましくは45〜100℃の範囲の融点である。
【0054】
ワックスは120℃で300cP未満、好ましくは200cP未満、及び、より好ましくは100cP未満の(1°の角度を有する直径40mmのコーンプレートスピンドルを取り付けたレオメーターを用い、100s
−1のずり速度で測定した)粘度を有することができる。
【0055】
ある実施形態において、ワックスは、水に不溶性であるが非極性有機溶剤に溶解する炭化水素、脂肪酸、若しくは、脂肪酸のエステル、脂肪族アルコール、若しくは、エトキシル化脂肪族アルコールのような脂肪族アルコールのエーテル、又は、脂肪族アミン、若しくは、脂肪族アミドから一般に構成される温度感受性の物質である。ワックスの例としてモノグリセリド、ジグリセリド、及び、トリグリセリド、ポリエチレングリコール類(例えば、PEG、モノステアリン酸PEG、例えば、オレオン(Oleon)社のラジアサーフ(radiasurf)7473、ジステアリン酸PEG、例えば、ラジアサーフ(radiasurf)7454)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、又は、その他のC12〜C22脂肪酸、例えば、オレオン社のラジアシッド(Radiacid)414)、ポリオールエステル、脂肪族アルコール(例えば、ステアリルアルコール、例えば、サソール社のナコール(Nacol)18〜98)、脂肪族エステル(例えば、エチレングリコールエステル、例えば、モノステアリン酸エチレングリコール、又は、ジステアリン酸エチレングリコール(すなわち、ラジア(Radia)7268、又は、ラジアサーフ(Radiasurf)7270)、グリセリド、例えば、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、トリステアリン酸グリセリド、又は、モノベヘン酸グリセリド、ジベヘン酸グリセリド、トリベヘン酸グリセリド(すなわち、ラジア(Radia)7515)、アミド(例えば、エルカミド、例えば、クロダ(Croda)社のクロダミドER)、及び、エトキシレート(例えば、オレート(Oleth)20(クロダ(Croda)社のBRIJ O20)、又は、ステアレート20(クロダ(Croda)社のBRIJ S20))を含む例を挙げることができる。さらに、蜜蝋、又は、カルナウバ蝋のような天然のワックスを挙げることができる。
【0056】
ワックスは極性官能基を有することができる。極性基の例としてアルコール基が挙げられ、そして、ワックスの例として、脂肪族アルコール、好ましくは、飽和アルコール、エトキシル化脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルキルフェノール、及び、ポリオールの部分的エステルである脂肪族アルコールを含む長鎖1級アルコール、2級アルコール、又は、3級アルコールが挙げられる。
【0057】
さらに、極性基はカルボキシル基、例えば、8個から36個の炭素原子を有する脂肪酸基、好ましくは、飽和脂肪酸基、例えば、ステアリン酸基、パルミチン酸基、ベヘン酸基、又は、12−ヒドロキシステアリン酸基であることができる。脂肪酸基の混合物を用いることができる。あるいは、極性基はアミド、例えば、12個から36個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、又は、不飽和脂肪酸のモノアミド、例えば、ステアリン酸アミド、又は、クロダミドの商標で販売されるアミドであることができる。極性基はまた、アミノ基、例えば、1−オクチルアミン、及び、1−ドデシルアミン、又は、ステアリルアミンのような8個から30個の炭素原子を有するアルキルアミンであることができる。
【0058】
ワックスはまた非極性であってもよい、例えば、ポリオールエステルであることができる。ポリオールエステルは各々7個から36個の炭素原子を有するカルボン酸基で実質的に完全にエステル化されることができる。ポリオールエステルは、好ましくはグリセロールトリエステル、又は、ペンタエリスリトール、若しくは、ソルビトールのような高級ポリオールのエステルであり、しかし、エチレングリコール、又は、プロピレングリコールのようなグリコールのジエステルであることができ、好ましくは少なくとも16個の炭素原子を有する脂肪酸とのジエステル、例えば、ジステアリン酸エチレングリコールであることができる。好ましいグリセロールトリエステルの例は、トリステアリン酸グリセロール、トリパルミチン酸グリセロール、及び、54℃の融点を持つ物質のような20個、又は、22個の炭素原子を有する飽和カルボン酸のグリセロールトリエステルである。その他の適切なポリオールエステルはテトラベヘン酸ペンタエリスリトール、及び、テトラステアリン酸ペンタエリスリトールのようなペンタエリスリトールのエステルである。ポリオールエステルは天然産物に共通する様々な鎖長の脂肪酸を好都合なことに含むことができる。ポリオールエステルがそれぞれ14個から22個の炭素原子を有するカルボン酸基で実質的に完全にエステル化されることが最も好ましい。実質的に完全にエステル化されるという表現で、エチレングリコールのようなジオール、又は、グリセロールのようなトリオールについて、ポリオールのヒドロキシル基の少なくとも90%、及び、好ましくは少なくとも95%がエステル化されるということを意味する。高級ポリオール、特に立体障害を示すペンタエリスリトールのようなものは、ポリオールのヒドロキシル基の少なくとも70%、又は、75%がエステル化されるとき、実質的に完全にエステル化されることができる。例えば、トリステアリン酸ペンタエリスリトールは完全にエステル化されたポリオールエステルの作用を有する。
【0059】
あるいは、非極性ワックスはエーテルワックス、又は、炭化水素ワックスであることができる。例えば、そのワックスは少なくとも1つのパラフィンワックスを含むことができ、所望によりマイクロクリスタリンワックスと混合して良い。
【0060】
ワックスは任意の組合せと数に先に記載した例を含むことができる。
【0061】
本発明の組成物は固形粒子の形態をとる。「粒子」という用語にいかなる精確な幾何学的な意味を暗に持たせる意図はなく、それは単に固形物が複数の分離した部分であることを意味する。
【0062】
具体的には、粒子という用語は、顆粒、薄片、小球などを包含することを意図する。
【0063】
粒子は約50μmから約5000μmまでの平均直径を有することが典型的である。組成物のそれぞれ個々の粒子は100μmより大きい直径を有することが好ましく、200μmより大きい直径を有することがより好ましく、そして、500μmより大きい直径を有することが最も好ましい。典型的には本発明の好ましい実施形態において、平均直径は約50μmから約5000μmまであり、そして、約500μmから約4000μmまでであるのがより好ましい。所与の組成物の範囲内にある各粒子の直径はもちろんある程度変化するであろう。粒子が球状であることを直径という用語が暗に示しているとの意図はなく、むしろ直径という用語は粒子の最も長い寸法を意味する。
【0064】
トリベヘン酸グリセリルでカプセル化されたZ−6020を含む本発明による粒子の走査電子顕微鏡(SEM)像は
図6に示される。
【0065】
必要に応じて組成物は粉体を含むことができ、そして、本発明のもう1つの実施形態は組成物と粉体を提供する。粉体は特に限定されず、顆粒化固形物を支持することができるどのようなものも用いることができる。粉体の一例はシラノール官能基性を有する任意の鉱物を除く鉱物である。炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウムドロマイト、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、アルミナ、水酸化カルシウム、酢酸ナトリウム、泥炭、木粉、糖及び糖派生物、デンプン及び天然デンプン、トウモロコシ穂軸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、砂状ポリスチレンビーズ及びポリアクリル酸ビーズ、フライアッシュが例として挙げられる。粉体状粒子が0.2μmから1000μmまでの平均直径を有することが好ましく、0.2μmから50μmの平均直径を有することがより好ましく、1μmから10μmの平均直径を有することが最も好ましい。粉体状粒子は非水溶性、水溶性、又は、水分散性であり得る。
【0066】
本発明はまた、架橋剤、疎水化剤、カップリング剤、又は、接着促進剤としての組成物の使用を提供する。驚くべきことに、ワックス中にカプセル化されたシランがその活性を保持することを我々は発見した。純粋なシランと比較して活性を失うことなく顆粒状のシランを架橋剤として用いることができる実施例4を参照のこと。
【0067】
さらなる態様において、本発明は本発明による組成物の調製方法を提供する。
【0068】
第1の実施形態において、本発明は、
(i)溶融したワックスと反応性シランを乾燥雰囲気下で混合し、そして、
(ii)工程(i)の産物を放冷して固形物を形成する
工程を含んでなる、本発明による組成物の調製方法を提供する。
【0069】
第2の実施形態において、本発明は、
(i)溶融したワックスと反応性シランを150℃より低い温度で混合し、そして、
(ii)工程(i)の産物を放冷して固形物を形成する
工程を含んでなる、本発明による組成物の調製方法を提供する。
【0070】
第3の実施形態において、本発明は、
(i)溶融したワックスを反応性シランと150℃より低い温度および乾燥雰囲気下で混合し、そして、
(ii)工程(i)の産物を放冷して固形物を形成する
工程を含んでなる、本発明による組成物の調製方法を提供する。
【0071】
したがって、混合物が常に150℃より低い温度である方法は、本発明の範囲内に含まれる。さらに、混合物が150℃より低い温度に冷却されるまで常に無水雰囲気下にある方法も、また本発明の範囲内である。しかしながら、混合物の温度が150℃よりも高く、無水雰囲気下にない方法は本発明の範囲内にない。
【0072】
混合するという用語は広い意味を有し、そして、本発明に関してその用語はワックスとシランが組み合わされて本発明の固形粒子を生産する任意の方法を含む。上述したように、粒子はワックスで被覆されたシランの核を含むことが好ましく、そして、混合するという用語はそのような工程を包含すると解釈されてよい。
【0073】
好ましくは、不活性無水ガス、例えば、窒素、又は、アルゴンを適用することにより、混合物に乾燥雰囲気が適用される。
【0074】
ある実施形態において、120℃より低い温度、好ましくは90℃より低い温度、及び、より好ましくは65℃より低い温度で溶融したワックスと反応性シランを混合する。
【0075】
顆粒を固化させる方法は特に限定されない。本質的には、顆粒を単に放冷することで可能であるが、好ましくは顆粒に冷たい空気を吹き付けて冷却工程の速度を速める、又は、混合物を表面に、特に冷たい表面に当てる。
【0076】
議論したように、溶融したワックスと接触するとき、シランが加水分解と縮合を起こす傾向にあることがシラン及びワックスを含む固形物を形成するときの問題であるということを我々は見出した。ワックスとシランがそのワックスを溶融させるのに必要な高温度である間に、湿った雰囲気下でワックスとシランを接触させる時間を制限することでこの問題を克服することを我々は見出した。
【0077】
本発明は、熱いワックスとシランが接触する時間(この間、熱いワックスとシランとが湿った雰囲気に曝されている)を制限するという、2つの好ましい方法を提供する。
【0078】
第1の方法では、溶融したワックスとシランを混合する工程、及び、ワックスとシランの混合物を放冷する工程を無水雰囲気下で行う。好ましくは、その方法は乾燥雰囲気下での薄片化工程(flaking process)であり、そして、調製される固形物は薄片状である。
【0079】
第2の方法では、溶融したワックスとシランを混合してシランとワックスの混合物を形成する工程を実行する温度を制御する。
【0080】
第2の方法の3つの実施形態について述べれば:
・シランと溶融したワックスを細粒の流動層中に吹きかけて顆粒状物質を形成する流動層造粒方法
・シランと溶融したワックスを共に押し出して液滴を形成し、冷たい空気中でその液滴が冷却して固形物質を形成する噴射造粒方法、又は、マイクロカプセル化方法
・ワックス、シラン、及び、粉体を混合して、多孔性が減少した顆粒状物質を形成する混合用機器を用いる造粒方法
である。
【0081】
ノズルから溶融したワックスとシランを急速に噴出させることで溶融したワックスとシランを混合してシランとワックスの混合物を形成し、それにより工程(i)と工程(ii)の時間をできるだけ短縮するのが好ましい。
【0082】
好ましくは、例えば、ガス(例えば、窒素)を加えて、超音波を用いて、圧力、又は、回転を用いて顆粒状製品の形成を促進するようにノズルをさらに改造する。適切に改造したノズルの例として、空気を供給することができるシュリック(Schlick)社の3流体ノズル、若しくは、4流体ノズル、例えば、ソノ‐テク(Sono−tek)社の二重液体供給装置を持ち、超音波を用いる音波ノズル、例えば、SwRI研究所により開発された回転を用いる遠心押し出しノズル、ニスコ(Nisco)社、ビューラー(Buhler)社、若しくは、ブレイス(Brace)社の振動ノズル、又は、スプレイSAS(Sprai SAS)社により開発された回転円盤が挙げられる。
【0083】
この方法の使用が、カプセル化を実行する前のワックスとシランの間の接触時間を減らし、それによって雰囲気によるシランの加水分解の機会を最小化することが明らかにされた。この点に関して、実施例4と
図8を参照されたい。これらは、本発明による方法を用い、トリベヘン酸グリセリルで被覆されたZ−6020を含む顆粒状固形物を、この反応性シランを加水分解することなく形成することができることを示している。
【0084】
議論したように、本発明の方法の利点は、これらのシラン類の能力が顆粒状製品において維持される、すなわち、顆粒状固形物を調製する工程の間、シラン類は加水分解反応と縮合反応を起こさないことである。その改善された結果は、水性バインダーの代わりにワックスを使用し、シランをワックスと混合する前に反応性シランの加水分解を防ぐ工程条件を選択することに由来する。
【0085】
本方法は、ノズルにワックスを供給し、ノズルから霧に吹くまでに十分に低減された粘度をそのワックスが有する温度にまで加熱することから行われる。使用される明確な温度はワックスの性質、及び、特に温度によるそのワックスの粘度の変化に依存するであろう。しかしながら、ワックスは少なくとも50℃の温度にまで加熱されることが典型的である。
【0086】
顆粒状製品をノズルから押し出した後、顆粒が固化する。したがって、ワックスは、ノズルへの供給とノズルからの押し出しを可能にするのに十分に低い粘度を高温度で持つことに加えて、シランの周りを被覆したままでいるために十分に低い粘度を、比較的低い温度、例えば40℃よりも低い、又は30℃よりも低い温度で持たなくてはならない。
【0087】
必要に応じて、追加の工程で顆粒を同じワックス、又は、もう一つのワックスで再度、例えば、顆粒に適切なワックスをスプレーすることにより被覆することができる。これによりさらに均一なワックスが提供される。
【0088】
また、必要に応じて、前記固形物及び粉体を調製するために、顆粒化を、本明細書において定義された粉体に適用することができる。
【0089】
前記表面は円筒状であることができ、その実施形態において、円筒状であるという用語はいかなる精確な幾何学的な形状ということではなく実質的に円筒状であることを意味すると意図される。
【0090】
固形物を放冷した後、その固形物を後に5000μm未満の、又は、2500μm未満の直径を有する顆粒に分割することができる。
【0091】
本発明はまた、本発明による方法のいずれか1つの方法により得られる組成物を提供する。
【実施例】
【0092】
実施例1
実施例5により形成された固形粒子のうちの小部分を、試料台上の炭素系接着テープに噴霧して、そして、12nmの金/パラジウムで被覆することによりSEMの試料を調製した。JEOL社のJSM−5600LV SEMを14mmの作動距離、レンズ口径1で用いた。二次電子像モードでデジタル画像を取得した。その結果の画像は
図6に示される。
【0093】
実施例2
必要に応じて酸を含む22mlの水/重水と28mlのアセトンの混合物に1.0mlのシランを加え、約500rpmで撹拌した。所要の時間間隔で約0.6mlのその混合物を取り出し、そのNMRスペクトラムを測定して加水分解の程度を判定した。加水分解していない物質を検出することができなかったとき、その実験を停止した。
【0094】
表1は、様々なシラン類の加水分解速度定数を示し、表2は使用されたシラン類の名称を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例3
40mm、1°のスピンドルを用いるフィジカ(Physica)社のレオメーターMCR300を使用してワックスの粘度を測定することができる。温度プロファイルが実行された。(cPの単位で)粘度を100s
−1のずり速度の下で120℃から60℃まで5℃ごとに記録した。その値を下記の表3に記録する。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例4
グラット(Glatt)社の流動層を用いて固形粒子を調製した。3流体ノズルを使用して流動化細粒の層の底にラジア(Radia)7515(トリベヘン酸グリセリル)と共にZ−6020をスプレーした。
【0100】
室温でペリスタポンプにより内側のチューブを通してシランを供給し、ペリスタポンプにより外側のチューブを通して90℃に加熱されたトリベヘン酸グリセリルを供給した(内部、及び、外部チューブはほぼ同心円状に位置する。)。1バールの圧力の窒素ガスをノズルの3番目の穴を通して当て、粒子の形成を促進した。
【0101】
調製された粒子は漸進的にサイズが大きくなり、そして、十分に大きくなると(典型的には100μmよりも大きい直径であるが、より大きい粒子が好ましい。)流動層からそれらを連続的に取り除いて、微粒子状製品を得た。
【0102】
実施例5
噴霧型冷却装置に2流体ノズルを用いてZ−6020をラジア(Radia)7515(トリベヘン酸グリセリル)と共にスプレーして固形粒子を調製した。
図8は純粋なZ6020(上)とZ6020顆粒状製品(下)の
29Si NMRスペクトラムを比較する図である。その固形粒子製品について、縮合が起こらなかったことを理解することができる。観察された唯一のピークは縮合していないシロキシ基に相当する。
【0103】
実施例6
噴霧型冷却装置に2流体ノズルを用いてZ−6011をラジア(Radia)7515(トリベヘン酸グリセリル)と共にスプレーして固形粒子を調製した。
【0104】
アルミニウム3水和物(ATH)は効率が良い難燃剤であることが知られているが、熱可塑性の物質、例えば、熱可塑性の物質に一般に用いられるエチレン酢酸ビニル(EVA)に組み込み難い。
【0105】
この実施例において、ブラベンダーミキサーを用いてATHをEVAと混合した。EVA(99.6部)、抗酸化剤(チバ(CIBA)社のイルガノックス1010、0.4部)、ATH(150部)、及び、存在すれば、Z−6011(1.2部)、又は、実施例4に類似の方法で調製されたZ−6011の粒子(50%活性の粒子、2.4部)の割合で成分を混合した。
【0106】
カップリング剤の使用により、前記充填剤をATHによく組み込ませることができ、したがって、最終産物の均一性を良くすることができ、機械的特性を改善することとなる。
【0107】
図9と
図10はカップリング剤を使用せずに調製したEVA/ATH混合物(基準)、及び、また液体のZ−6011であるカップリング剤を使用して調製したEVA/ATH混合物、又は、トリベヘン酸グリセリルでカプセル化されたZ−6011を含む固形粒子であるカップリング剤を用いて調製したEVA/ATH混合物の機械的特性(引張強度、及び、破断点伸度)を比較する。
【0108】
図9は各EVA/ATH混合物の引張強度を示す図であり、
図10は各EVA/ATH混合物の破断点伸度を示す図である。開始時の結果(対の左側の棒)を70℃で7日間のエイジングをした後の結果(対の右側の棒)と比較する。
【0109】
液体のZ−6011と固形粒子製品を使用した両方で、引張強度が開始時とエイジング後で増大することとなった。固形粒子製品は液体と同じ効果を提供する。さらに、基準がエイジングから悪影響を受ける(破断点伸度のかなりの増大、及び、引張強度のかなりの減少)一方、シランで処理された化合物はその有益な特性のほとんどを維持する。